2012年1月25日(水)、小出裕章氏が毎日放送「たね蒔きジャーナル」に出演。志賀原発2号機の運転差止め裁判で住民勝訴の判決を出した、当時の裁判長井戸謙一氏と原発裁判の実態について話しています。

小出裕章 原発と憲法9条

=====(文字おこし、続き)

※「伊達市被曝調査2人年間20mSv超・9443人中33人推定10mSv超「(京都大学原子炉実験所には)年10mSvを超えて被曝をする職員はほぼいません」小出裕章 1/25(1)」からの続き。

水野「小出先生、今日はですね、」

小出「はい」

水野「私どものスタジオに、元金沢地裁裁判長で現在弁護士でいらっしゃいます、井戸謙一さんがいらっしゃっております」

小出「はい…」

水野「井戸さんとも是非お話ししていただきたいと思います」

小出「はい。ありがとうございます」

水野「井戸さんどうぞ」

井戸「小出先生。はじめまして」

小出「こちらこそ」

井戸「よろしくお願い致します」

小出「よろしくおねがいします」

水野「え…小出先生が、あの元々は原発の未来を信じて、京都大学はいられて。その後女川原発の裁判、あたりが発端で原発のあり方に疑問をもたれたというふうに聞いたと思うんですが」

小出「はい」

水野「あの…裁判も色々と見てこられて……その原発裁判というものに対してはどんな考えを小出先生はもってはりますか。」

小出「え……私は女川、でも、え……工事を妨害したということで、え……刑事…事件の被告側にたって、あの…裁判を担ったことがあります、し」

水野「はい」

小出「え…そのあとで京都大学原子炉実験所にきてから、え…伊方原子力発電所の裁判というものに関わりまして」

水野「はい」

小出「え…私自身も証人として裁判に出廷したりしたことがあります。」

水野「はい」

小出「で……少なくともでも伊方の裁判…では、」

水野「ええ」

小出「原告側、まあようするに住民側と国側というの…ものが」

水野「はい」

小出「科学…をベースにして論争をずうっとしました。」

水野「はい」

小出「え…まあ井戸さん側のやってくださったもんじゅの裁判もそうですけれども。え……科学的な問題をめぐってずうっと論争を続け、たのです。んで……私が見る限りは伊方の裁判では、住民側が圧勝したと私はおもっているのですけれども(苦笑)。」

水野「それは、あの、論争の上でですか」

小出「そうです。」

水野「はい」

小出「国側の証人…も出てきたわけですけれども。え…ほとんど国側の証人は反対尋問にたえられずに、え……証人席で突っ伏してしまうというような人たちが山ほどいたと。で…証拠を求めれば全部白塗り…墨塗りがされて出てくるというような、状況で」

水野「証拠を求めると墨でぬられて出てくる」

小出「はい」

水野「部分があるんですね」

小出「はい。要するにもう、国の方は立証するつもりもないと、そういう態度で出てきてですね。ん……いわゆる挙証責任(※でいいのか?)を彼らが、国のほうが放棄してきたわけで。」

水野「はい」

小出「どうやったら、国のほうを勝たせることができるのかなと(苦笑)、そういうふうに思うくらい、でしたが。やはり判決になると、国がかってしまうと、いう……ことになりました。あ、それで私は、あ、なるほどなと。原子力というものは、国家の基本的な方向性を決めるというか」

水野「ええ」

小出「え……非常に基礎…基本的な役割を担っているので、司法がそれに楯突くことができないということなんだというふうに、私は受け止め、ました。え…それ以降わたしは、原子力に関する会議では裁判はやらないと決めまして。え…井戸さんがになってくださったもんじゅの裁判に関しても一切わたし自身は関わりませんでした。」

水野「ん……。井戸さんは、裁判長でいらした、お立場でね、今の小出さんのように、まあ…ある種司法に非常にこう、絶望を持っていらっしゃるというふうに私には聞こえましたが」

井戸「はいはい」

小出「どんなふうに、井戸さんはお聞きになりましたか」

井戸「あの、まず……小出さん、あの…もんじゅっていうふうに言われましたけれども。私がしたのは、あの、」

小出「あ、ごめんなさい。あ、ごめんなさい。失礼しましたね。志賀でしたね、はい」

水野「志賀原発2号機の時に、あの、住民側に、まあ、住民が勝訴、の判決を下された、あの…運転差し止めの命令を出された、ですよね」

井戸「それであの原告側の勝った裁判はこの志賀2号機ともんじゅの控訴審と2件だけで。ま、それも上級審でひっくり返されまして。最終的には全敗ということですから。そしてその…小出さんが言われたように中身的には原告側が勝っていて。原告団なる弁護団は当然勝つだろうと思っていたのに蓋をあけたら負けていたというような話も訊きますし。そういう意味ではその今小出さんが言われたような、あの、感想を持たれるのは、ん……まあ、それは仕方が無いのかなっていうふうに思いますが。」

水野「はい」

井戸「しかしあの、私、は、ああいう判決を出来たし。で…それでその何か、特別にあの、スーパーマンでも、特別に頑張ったわけでもなくて。え……事件、の主張と証拠を見て、え…そこから素直に考えてああいう判決をして、それにそれをすることについて、何の妨害も圧力も何もなかったわけですから。」

水野「ふーーん」

井戸「まあ、やはり司法…のそれなりの健全性といいますか…裁判官が自分だけの判断で結論をだすことができるという、そういう健全性は私は保たれているというふうに思っているので」

水野「保たれて、いるけれども、住民側勝訴というのは、まあ、他には無いというのがまあ現実……」

井戸「うん、それはやはり個々の裁判官が、あの、なかなか、それは個人の判断として踏み…きれなかった

水野「そこの難しさって、どういう部分なんでしょう。具体的には」

井戸「それはやはり、内容が余りに専門的でですね。」

水野「はい」

井戸「あの……まあ肩書きのある…まあ専門家の方々が沢山バックに付いて、それでその、国の、原子炉設置許可処分というのが出てるわけですから。それを…覆す素人の裁判官が覆すということについての

水野「はあ……」

井戸「あの、おののき…といいますかね。」

水野「はい」

井戸「そういうような気持ち…だろうと思います」

水野「あの、ラジオネームかわのそこさんというかた、も聞いてらっしゃるのは、文系のかたが多いであろう裁判官のかたが、こうしたこう理系の高度な話、に対して、どうやって判断をくだすのかむつかしいでしょうね、ってくださったんですけど。正直やはりそのところは、あの、立派な肩書きの先生がどんどん出してくる、それをやっぱりある程度それも信じるというか、信頼するということになるんですかね」

井戸「いや」

水野「そこを疑うってのは……」

井戸「いやもちろんその…疑うべき事情、原告が出してくるんだから、その双方の言い分を虚心坦懐に見なきゃいけないわけですけどね、はい。ただその…問題点は、その原発が安全かどうかなんです。で、安全というのは、あの、100%の安全というのはありえない…ありえないわけでしょ?」

水野「はい」

井戸「うん。そうなると、あの、社会的に許容されてる、される程度の安全かどうかという問題なんですよね」

水野「はあ」

井戸「それはやはり国民から見てですね、それは100%安全とは言えないけれど、これだけのその、安全対策をとってくれれば、まああの、周囲の住民も、国民も、それなりに安心して生活できるね、っていう程度の安全対策を獲ってるかどうかが問題だと思うので。そういう意味ではその、自然的…な、知見はベースにするけれども最終的には社会的判断であってね」

水野「社会的判断……」

井戸「で、それは裁判官ができることだというふうに私は考えてるんです。」

水野「はあ……。小出さんはいかがですか。やっぱり、科学としての論争とこの社会的判断…というようなお話が今出てきましたよねえ」

小出「はい。え…裁判の場所で、そのお互いに証拠を出しなら、え……反対尋問もあるわけですね。そういう時にどういう、答えをするかということを見ていて頂けるならば、え……その主張が正しいのかどうなのかということは私は分かって頂けるものだ、と思ってきました

水野「あの、素人でもですか」

小出「そうです。」

水野「ほおー」

小出「えーっとですから、私自身は、あの……原子力……私は反対してきましたし、国がまあ進めてるといってきたわけですけど。え……私の意見をただ聞く、そして国の意見をただ聞く、のではなくて、その…同じ場所で論争をさせてくだされば、どちらが正しいか皆さんわかるということをずうっと言ってきてですね。え……1対1の論争であればどこにでも行きますと私は、今まで言ってきましたし、え……、出ていくようにしてきた…のですけれども。え……内容が科学的に難しいものであったとしても、それを論争している…両者がですね、論争しているところを聞いていただければ、どちらに理があるかということが、多分ほとんどのかたに分かって頂けるものだと思ってきました」

水野「そうですか……。」

小出「はい」

水野「あの…井戸さんね」

井戸「はい」

水野「この…情報、証拠となる方法が、こう、墨塗りに潰されているというような話……これは、そんなの、う、う、うそでしょ、と思うぐらいに信じがたい話なんです、あたしからみたら。これは、あの、双方が争う、双方がおんなじだけの情報を持ってやってるんですか」

井戸「いや、あのー、安全性に対する、情報はほとんど被告側がもってますよね」

水野「つまり電力会社側や国側が持っていて。じゃあ住民側は十分な情報は持てない……」

井戸「はい、それはあの、いろいろもちろん調べて情報収集はしますけど、やはりあの、情報量の格差っていうのは圧倒的な違いがあるので。」

水野「はあ……」

井戸「で、先日もあの……」

近藤「先生?」

水野「近藤さん?」

近藤「あの……井戸さんのその判決のいきさつはわたしなりに理解してるんですが」

井戸「はい」

近藤「ま、今回その3.11のああいう……事故がおきてね」

井戸「はい」

近藤「で、その結果を踏まえて、え……もうそれはその出した裁判の判決ってのはどうも、疑問があるというようなことで裁判官を辞めたとか、そんな動きっちゅうのはいまんとこ、ないんですか」

井戸「あ、あの……そのあとですか」

近藤「はい」

井戸「原発…を担当した裁判官がですか」

近藤「はい」

井戸「あ、それは聞いたことないです」

近藤「んあ…その人達は、あの、どういう解釈の中で生きてるんですかねえ。」

水野「ほんまですねえ」

井戸「……それは……内心はわかりませんけど……、ん、建前としては、あの……ん……(※)を立証を…に照らして適切に判断したと思いますけれども」

近藤「ようするに法定の中での、」

井戸「はい」

近藤「……あの、いどさんの場合はやはり今回の事故…を、それなりのお考えなさって」

井戸「はい」

近藤「自分の判断に、いわばまあ自身を得たっていいますか、あの、そういう思考の流れってのはあるわけでしょ?」

井戸「……そうですね、それはあの、もう言い渡した時から、あの、あの裁判における主張と立証、からすれば、あの、この結論しかないと。自分としてはもう、自信を持って判断してましたので。その気持自体は揺るがないです」

近藤「事故が起きたときに、やはり、はたして起きたかっていう気持ちはございましたですか

井戸「ああ、それはありましたね。はい」

近藤「だとすれば、あの、本当に良心に基づいて判決をみなさんがそれはなさったにしても。今度の事故をそれなりに受け止める、気持ちってのはやっぱりなんかこう、知りたいところは私らにはありますねえ」

井戸「あの…お1人、ちょっとねえ、取材などに応じておられるかたがいますけども。ええ。でやはり認識が甘かったっていうような反省の弁は述べておられました

近藤「ああそうですか。ははあ」

水野「ねえ。そういうこれがこう出てきてくださることで、あたしたちにしたら司法が変わっていくのかな、と、あり方が変わっていくのかな…と見えてくるかもしれません。え…小出先生、どうもありがとうございました」

小出「はい、ありがとうございました。あの、井戸さん、本当失礼しました。もんじゅ…と私が間違えていました。井戸「いえいえ」

小出「はい。今後もよろしくおねがいします」

井戸「はい。よろしくお願い致します」

水野「京都大学原子炉実験所助教、小出裕章先生に伺いました」

=====(文字おこし、ここまで)

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