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▼プロメテウスの罠「がれきの行方 14」 朝日新聞2012年9月19日朝刊

『環境省は防潮林へのがれき活用には冷淡だった。しかし、自らが構想した広域処理には熱心に動いた。

 その方針に従い、宮城県や岩手県では瓦礫の1割以上を県外処理する計画を立てた。これで環境省がいう「3年以内の処理」に間に合わせることができるのではないか。』

防潮林を選ばずに、広域がれき処理をすることを選んだのは、利権の大きさなのだろう。

そして、これに続く内容が、まず僕には衝撃的だった。

『その上で宮城県は昨年9月5日、環境省の聞き取り調査に対し、こう答えた。

ーー広域処理に関して放射能が大きな問題だ。

ーー打診した反応では、西日本ではほとんど受け入れられないのではないかと考えている。

ーー環境省のガイドラインでは受け入れ先を説得できない。広域処理のためのエージェントが必要だ。』

これも僕には驚きの事実だ。2011年9月の段階で、宮城県は、がれきの広域処理は困難であるという姿勢を示していたのだ。だが、その後、がれき広域処理の一大キャンペーンが行われることとなった。

▽参考:通販番組のごとく細野豪志・黒岩祐治らが「がれき」の安全を証明ーーだが証明されたのは彼らが偽物だということだった

通販番組のようなセットと立ち位置と、振る舞いで、がれきが安全であるというアピールをする細野環境大臣をはじめとする政治家たち。だが、この振る舞いは、広告代理店(この時期は博報堂か)が準備したものだったのではないか。

『 こうした要望を受けて環境省が頼ったのは、広告会社だった。

 昨年11月9日、環境省はがれきの広域処理や除染についての広報企画案を公募した。

 電通と博報堂、東急エージェンシーの広告3社が応募し、博報堂の案が採用された。公募は今年度も行われ、電通が選ばれた。』

  • 2012年3月末まで・・・博報堂
  • 2012年4月から・・・電通

上記の通販番組のようながれき安全アピールは、博報堂によるものと見ていいだろう。

そして2012年からは、電通が仕切りだしたということになる。

ここで興味深いのは、2012年8月の細野大臣の発言だ。細野大臣は、次のように発言している。

▽参考:細野豪志 評判向上失敗 国民に手抜きのお詫び | たむごん

『私は、いままでの環境省は、みなさまとのコミュニケーションのやり方や情報の出し方が十分ではなかったと反省しています。』

勘ぐるならば、これはつまるところ、代理店がうまくやらなかった、と細野大臣が言っているようにも受け取れるのではないか。

話は「プロメテウスの罠」に戻して。

環境省が代理店に投げた事業は以下のとおり。

『 業務は広域処理と除染の広報、除染情報プラザの運営などだ。博報堂に9億6千万円が支払われ、電通とは契約30億円の契約が結ばれた。』

広報は、博報堂と電通が行なっていたわけだ。やはり、上記の細野大臣の反省は、つまりところ、代理店が悪かった、と言っているに過ぎないのだ。

『 その多額の予算で、広告会社は何をしているのだろうか。

 手元に、博報堂が今年3月31日、環境省に提出した業務報告書がある。文書の一部をそのまま記載する。

 「除染、並びに災害廃棄物の広域処理に関して、まず報道論調を共有し把握することからはじめた」

 博報堂が下請けに出した広報会社が、「広域処理」「除染」「原子力規制庁」に関する新聞記事やテレビ番組についてのリポートを、環境政務官の高山智司(42)らに毎朝、電子メールで送っている。』

原子力規制庁に関することまでレポートしていたことに驚く。

そしてついに、ここで、がれき拡散請負人・高山智司氏が出てくる。

▽参考:ガレキ拡散請負人・高山智司政務官の正体

やはり、彼が、一手に代理店とコンタクトを取って、仕切っていたわけだ。

さらに「プロメテウスの罠」は、代理店の暗躍について説明している。

『 「その上で、大きな誤認報道とネガティブ報道、説明不足報道、好意的報道にその場で分類した」』

かなり細かく報道が分類されている。

  • 大きな誤認報道・・・事実誤認がある報道
  • ネガティブ報道・・・批判的・否定的な報道
  • 説明不足報道・・・説明が不足していて、ネガティブに捉えかねない報道
  • 好意的報道・・・褒め称える報道

ここで僕が問題としたいのは「ネガティブ報道」という分類があることだ。「ネガティブ」というニュアンスは、それを判断する側の主観が強く影響する。誤認報道とネガティブ報道の明確なラインを引くのはなかなか難しいのではないか。

例えば放射能の影響について、どこまでが事実誤認でどこまでがネガティブなのか、みなさんは明確なラインを引くことができるだろうか。

それはさておき、これらの報道に対して、広告代理店はどのように振舞ったのか。

『 「誤認報道」については、そのメディアのディレクターや主筆クラスに接触し、誤認の指摘をした、としている。しかし、どのメディアにどう誤認の指摘をしたのか、具体的な記載はない。

 「除染、並びに災害廃棄物の広域処理に関して、……地上戦でここにその誤認をつぶす作業を実施した」

 博報堂が接触した「ディレクター、主筆クラス」とは誰か。環境省も博報堂も回答しない。(吉田啓)』

「メディアのディレクターや主筆クラス」に接触し、「誤認をつぶす作業を実施」し、国債に対して好意的な報道をしてもらうように要請する、という流れだろう。

つまり、テレビや新聞で報じられる、がれきの広域処理への好意的な意見は、広告代理店によって作られたものである可能性があるということになる。

そしてそれに踊らされる出演者や国民たちがいるわけだ。

そもそも2011年9月の段階で、宮城県はがれきの広域処理の困難さを知っていた。だが、がれきの広域処理の「絆」による一大キャンペーンが行われた。

被災地の流木で作られたとうたったメダルをオリンピック選手の方にかけたのも、代理店の仕事だ。

彼らはテレビに映る子供たちに「泣いてください」とまで強要することが仕事だ。

そういうふうに巨額な資金が国から代理店に流れ、その代わりに代理店は国を代理して、国策を遂行する。

=====【追記:2012年9月24日午前10時13分】

続編を書きました。

▼続き:【追記アリ】プロメテウスの罠が暴く津田大介を用いた「がれき広域処理PR」の裏側……環境省と博報堂によるメディアコントロール

=====【追記ここまで】

いつもUst番組「電通のメディアコントロールを暴く」でご一緒させていただいている本間龍さんは次のように発言している。

『本間龍:博報堂としては当然のことですが、誤認報道の「ディレクターや主筆クラスをつぶす作業を実施」という部分が朝日で報道されたのは恐らく初めてでしょう。朝日の担当は拙著を読んでくれていると感じてます。』

『本間龍:今朝の「プロメテウスの罠」が衝撃的。環境省の委託を受けて、昨年博報堂がメディアチェックを実施していたことを指摘。博報堂が環境省に提出した報告書には、「特に誤認報道に関してはそのメディアのディレクターや主筆に事実関係を指摘した」とあるが、具体的にどのメディアの誰に対してそのような行為をしたのかは明らかにしていない。これぞ拙著で指摘した通りのお話で、各メディアには相当なプレッシャーになったはず。これを指摘した朝日取材班、代理店に対して相当不信感を持っていると感じる。明日からの続編が楽しみ!』

ここに来て、僕が大好きなこの本の売れ行きも伸びているという。

電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ

しかもこんなイベントもやるという。

【イベント】『電通と原発報道』刊行記念対談 「メディアコントロールと言論の自由」 鈴木邦男さんVS.本間龍さん 開催決定 | 亜紀書房ZERO事業部

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本間さんが好きだから宣伝しちゃうわけですね。僕は生中継しに行こうと思います。
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