昨日は「福島第一原発の停電 発表が3時間 会見が15時間も遅れたウラの理由」というエントリで、東電のメディアコントロールに疑いの目を向けた。今回のエントリーはその延長線上にある。

なぜ、東京電力は、トラブルを遅く発表し、トラブル解決を迅速に発表するのか。

この一見矛盾した姿勢にイライラする人は少なくないだろう。というより、1億人がイライラしているだろう。

だけどもこれは、理にかなっているのだ。東京電力にとっては。

誤解されない話し方、炎上しない答え方


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僕のブログエントリに次のような興味深い内容のコメントが付いた。

福島第一原発の停電 発表が3時間 会見が15時間も遅れたウラの理由

『多分、座間宮さんの推測がアタリ、もしくは近い感じなのだろうとは思うのですが、自分の経験から少し…

企業が事件の発生を確認してから発表するまで、2時間程度の遅れがあるのはある程度止むを得ないかと…

事実確認、情報収集、そして発表資料作製(ニュースリリース)、随時新情報を発信、という大まかな流れになろうかと思うけれど、ニュースリリースを作って配信するまで、2時間なんてあっという間に過ぎちゃいます。ニュースリリースを作っておかないと、情報共有の一元化が計れないし、訂正事項・新情報などが錯綜してしまうので、これは必須です。記者もそういうものがないと困るし。

記者クラブに所属している場合、配信もまず「緊急配信します」予約をしてからでないと配れません(所属メディアに通達して、配信時に在籍している必要があるとか、色々記者クラブの都合があるので)。記者会見も同様。緊急記者会見の予約を入れて、だいたい2~3時間後に記者会見が出来る、かな。記者も集まれないし。

これが正しい姿かどうかはわかりません。が、私の経験上、これくらいの時間経過はしてしまうということです。

あとはネットで情報をアップしていくわけですが、記者クラブによっては、自分達への情報開示(リリース配信)より先にネットに情報が上がっているのを良しとしない困ったちゃんなクラブもあったり、全然お構いなしなクラブもあったりと、色々です。

いずれにせよ、15時間後の記者会見はまあ、事態の深刻度からいってありえないですけどね。

追加

もちろん、それまでの間に電話などの問い合わせがあれば、随時できるかぎりの対応をするのは当然なので、都度対応します(してました。多分今でもそれはかわっていないと思う)。 』

つまり、危機を把握するのには時間がかかるという内容だ。

これには納得できるところが結構ある。おそらく危機を把握することは時間がかかる。

それは想像すれば、当たり前の話だ。

だが、そういう話の奥にある話をしたいと思う。

原発事故以来、原発のトラブルが多く報じられた。

小さなトラブルはどのように報じられたのか。

そう。トラブルが解決した段階で報じられているのだ。

トラブルが解決した段階で「いついつトラブルが起きて」「いついつトラブルが解決した」という内容なわけだ。

つまり、

  • 「トラブル発生の事実」と「トラブル解決の事実」を同時に報道している

わけだ。

だけども、今回の福島第一原発の停電においては、さすがにそれができなかった、というわけだ。

では、「トラブル発生の事実」と「トラブル発生の事実」を「同時に」報道することには、どういう意味があるのか。

トラブル発生への批判をトラブル解決の事実で封じ込めるのだ。

これが、企業の危機管理の基本ベースにあると思っていいだろう。

「解決できたからいいじゃないか」

「被害が出ていないからいいじゃないか」

そういう、安全を確保したという事実で、批判を封じ込めるわけだ。

このときにも、「トラブル発生を遅く発表」し、「トラブル解決を迅速に発表」するということが行われているわけだ。

つまりはこうだ。

  • 「トラブル発生の事実」を批判される時間を出来るだけ短くしたい、できるならばゼロにしたい。
そういう願望が企業にあるわけだ。
  • トラブルを解決できない時間が長ければ長いほど、株価にも影響するだろう。
というリスクがあるわけで、それを回避しようとするわけだ。

だから、

  • トラブル発生の事実をできる限り遅らせ
  • トラブル解決の事実をできるかぎり早く発表する
というモチベーションが生まれるわけだ。
  • 情報を整理するのには時間がかかる

という事実を大義名分に使って、企業側はメディアコントロールを行うわけだ。

これは東京電力だけにあてはまることではない。電力事業者各社にいえることだし、さらに言うならば、上場企業ならばどの企業にも当てはまる、大企業の性質そのものだと言っていい。

投資家の利益を保護するためにそうなっている。

これが、企業にとっての危機管理対策なのだ。

だが、これが隠蔽の理由になり、生活者の安心を守れという要請を無視することになっていいはずがない。

自分たちだけが、正義を振りかざさなくても良い、という意識で、毎日、社長室でメディアコントロールが話し合われているわけだ。

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