座間宮新聞講座
先月8月23日に新潟市で行われた「新聞読み方講座」を新潟日報さんに取材して取り上げていただきました。新聞教育(NIE=newspaper in education)の特集の一貫とのこと。私の新聞の読み方がお役に立てば幸いです。私は専門で新聞を読み解く仕事についていたことがあります。少し紹介します。
新聞読み方講座は、新聞の読み方をお伝えするものです。私の新聞の読み方は、かつて外務省の下請けの情報会社で毎朝新聞のクリッピングをして「報道ぶり」を外務省に納入する資料を作っていたときのノウハウが元になっています。

何をしていたのかと申しますと、毎朝4時から、新聞6氏(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経」の総合面、政治面、国際面、経済面、社会面から重要な記事を分類して、A4の上にクリッピングして、PDF化して納入するというもの。納入する時間が朝8時ですから、4時間で6紙の重要記事に全て目を通し、切り抜いて、分類作業するというハードな仕事でした。

最初は練習でやってみたところ、昼過ぎになっても終わらなかったため、そこから分類作業の効率化に努めたところ、8時までにできるようになりました。切り抜き、分類、貼り付け、PDF化という作業をどのように効率化するかを徹底研究しました。

その中の「分類」は「頭の中の仕事」です。すばやく記事に目を通してその記事がどの様な記事なのかを把握しなければなりません。その上で重要なのは、「タイトル」を読み解くことです。ほとんどの人はそこまで意識して読んではいないでしょうが、タイトルには様々な情報が詰まっています。1つの記事に1秒かければ、100記事で100秒。1つの記事に10秒かければ100記事で10倍の1000秒かかります。タイトルを見て1秒〜2秒くらいでどんな記事かを把握する能力が大幅に向上しました。

その分、短縮できた時間は、じっくり読んだり考えたりする時間に使えばよいのです。

また、一定時間内に多くの記事のタイトルを読み解き、判断し分類することで、記憶能力が向上し、様々な記事が頭の中でリンクしていくことが起きました。これはどういう効果をもたらすのか。

まず、一定時間内に多くの記事に触れることが可能になります。例えば、15分で、3記事読むのか、10ページの記事タイトルすべてに目を通し、考えるチカラをつけるのか。私の読み方は後者の読み方です。

新聞を読む人の多くは関心のある記事の内容を読もうとしますが、これをやっていると、どれだけ時間があっても、多くの記事を読み込むことは不可能です。まずは、広く浅く、今世界でどのようなことが起きているのかを把握することに特化した読み方をしなければ、広い視野は育ちません。

次の効果は、関心の広がりです。広く浅く、タイトルを読み解く力によって視野を広げれば、当然ですが、関心は広がります。タイトルを分析するだけで、あれも読みたい、これも読みたい、という具合に知的好奇心が高まります。

狭く深くではここには到達できません。新聞はそもそも広く浅く知識を得られるということに特化したメディアでもあります。その利点を最大限に活かす読み方なのではないかと思います。

政治と経済がどのようにリンクしていくのかについても関心が広がりますし、ある地域で起きている出来事が別の場所にどのように影響するのかについても関心を持てるようになります。1つの記事を深く理解するという読み方ではなく、たくさんの記事をリンクして理解し、全体像を把握しようという読み方となります。

また、記事では「テレビ欄」の読み解き方に注目していただきました。テレビ欄は、私は放送作家をしていたこともあって、職業的に馴染みが深いページです。テレビがどれほど世相を反映しているのかはわかりませんが、特に朝の情報番組、昼のワイドショーと夜の報道についてテレビ欄で何が書かれているのかは重要な情報です。営業関係の人も含めて、ここを読み解いておけばコミュニケーションのときに大変役立ちます。つまり、テレビを見ている人の頭の中にどんな情報が入っていくのかを読み解くことができます。

時代はWEB全盛期です。情報はスマホでと考える人もいるでしょう。ツイッターやフェイスブックで流れてくる情報にをチェックする人もいます。それも重要です。ただし、そういう時代だからこそ、広く浅く新聞を読み解く技術を持っていれば、狭い世界だけを見ている人とは判断材料が変わってきます。就職活動や情報活動をする上で、抜きん出るためには、広く浅く全体像を読み解くスキルは重要で、重宝されることでしょう。

講座の最後に「新潟日報」の重要さについても触れさせていただきました。新潟県は、日本海を介して、中国、北朝鮮、韓国、ロシアとつながっています。北方領土でのロシアとの経済協力が昨年大きく取り上げられましたが、その玄関口の1つが新潟港です。そういえば、新潟県では日本海航路のフェリー?の問題が大きく扱われましたね。これも時代の流れの1つを示しています。そういう地政学的な視点でも新潟日報は重要です。また地方面が6ページもあります。佐渡も1ページあります。新潟は広いですから。私は選挙についての分析もしますから、こういった地方面の充実が重要です。起業されている方も同じことを感じているのではないかと思います。以前、岡山県倉敷市で、あるベンチャー企業の方と新聞読み方講座を開きましたが、彼は中国地方の営業などに地方紙の情報を生かしていく重要性を感じていただきました。

ここではノウハウのすべてを書くことはできませんが、お商売だけではなく、教育の視点でNIEの新聞を授業に役立てようという試みは大変重要です。ただし、「新聞を読めば役立つ」的な安易な発想では、新聞を最大限に活かすことは難しいでしょう。どの様な読み方ならば新聞を活かすことができるのかという視点をいつも持っておきたいと思っています。
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