2007年11月21日

(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです

624 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 04:57:30.92 ID:ReyR7Y750

あれから幾らの年月が経ったろう。
私の手元には、駅で買った暇つぶしの小説と、長く使っている栞がある。

氷の冷たさに感じる電車の窓に頬をつけると、外はもうとっぷりと暮れているのがよくわかる。
家に帰れば、妻の作った夕食が用意されており、娘はもう寝ていることだろう。

そう。私は幸せなのだ。
・・・だが、この栞を、栞にされたスズランの花を見るたび、私は心がチクリと痛むような気持ちになる。

―――――

(´・ω・`)「うん、やっぱり『伊豆の踊子』は名作だよね。川端康成はノーベル賞をもらうだけある」
彼の名はショボン。名の通りのたれた眉が特徴的な文学青年である。
もう0時を回った彼の部屋で、壊れかけのラジオが流れている。

ラジオからたまたま流れてきたクラシックを聞きながら、彼は本を閉じた。


625 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 04:58:41.46 ID:ReyR7Y750

('A`)「おはようショボン。相変わらず朝は早いな」

(´・ω・`)「やあドクオ。朝早いって、僕が早いんじゃ無くて、君が遅いんだよ」

始業予鈴と同時に堂々とドアを開けて入ってきたドクオに、視線を上げて答える。
ドクオはそれもそうだな、と適当に応じると、早々に机に突っ伏した。

(´・ω・`)「・・・もう寝るのかい?」
隣の席のドクオを伺いながら聞いてみる。

('A`)「んあ? 違う違う、この体勢がラクなだけだ。まぁ気にせんでくれや」
そう言うと、ドクオは首をクルリと反対側に回し、一日が始まったばかりの教室で最も疲れたオーラを放ち始めた。


626 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 04:59:53.87 ID:ReyR7Y750

そして放課後


('A`)「嗚呼、今日もお勤めが終わったぜ」
(´・ω・`)「お勤めって君、今日昼と休み時間以外はずっと伏してたじゃないか・・・」

('A`)「それが俺の勤めなんだよ」
(´・ω・`)「しかも休み時間も携帯ゲームしてたようだし・・・」

('A`)「いいだろ、暇つぶしだよ、ひつまぶし。   ・・・・あれ?」
(´・ω・`)「ひつまぶしは食べ物ね」

('A`)「おうおう、そうだった。 んじゃま、俺は帰るとしますわ」
(´・ω・`)「ああ、またね」

ひらひらと手を振ってドクオが教室を出て行った。
黄金色の斜陽が指し照らす教室は、一日の授業が終わった開放感と、これから部活が始まる生徒たちの緊張感のようなものがない交ぜになって、何ともいえない学校独特の雰囲気を作り出している。

(´・ω・`)「さてと」
ショボンはカバンに物を詰めると、席から立った。
彼は授業が終わるといつも図書室に通っていた。単に本好きであるし、それが高じて就いた図書委員でもあるからだ。




628 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:01:49.33 ID:ReyR7Y750

図書室の扉を引くと、またも金色の斜陽が眩しかった。ショボンも垂れた眉を思わず寄せて目を細めてしまう。
目を細めたショボンがカウンターの方に目をやると、今日も変わらず彼女がいた。

从'ー'从「あら〜、ショボン君。こんにちわー」
ニコニコしながらひょいっと手を上げて挨拶してきた彼女の名は渡辺。この図書室の司書さんである。

(´・ω・`)「今日も借りに来ました」

从'ー'从「ふふ〜、毎日毎日ご苦労様だね! 感心感心」
最近ゲームばっかりやる子が増えてるからね〜、と渡辺は少しばかり残念そうにしている。

(´・ω・`)「本を読むのは楽しいですから。自分の中の知識と、それに伴う力、みたいなものがつくように感じますんで」

从'ー'从「なんか難しいこと考えてるんだねぇ、ショボン君は」
『伊豆の踊子』の返却手続きを手元で行いながら、渡辺はショボンに微笑みかけている。


629 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:05:19.65 ID:ReyR7Y750

从'ー'从「え〜と、ショボン君のカードは・・・  あ、あっt   ぁ痛っ!」

デスク脇に置かれた生徒カードからショボンのカードを探していた渡辺は、とっさに人差し指を引っ込める。


从'ー'从「あいたぁ〜・・・切っちゃったよ、指」
てへへ、と指を押さえながら笑っている渡辺だが、取り落としたカードに付いた紅い血が痛々しい。

(´・ω・`)「・・・はい、どうぞ」
从'ー'从「へあっ?」

落ちたカードを拾ってデスクの上に戻し、ショボンは無表情のままカバンから取り出したバンドエイドを手渡す。
指を咥えて血が垂れないようにしていた渡辺は、突然差し出されたそれにポカンとする。

(´・ω・`)「どうかしたんですか?」

从'ー'从「あ、あり・・がとう?」

(´・ω・`)「なんで疑問系なんですか・・・。 廊下に出て右側に水道がありますから、そこで傷口を洗ってから貼ったほうがいいですよ」


631 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:06:38.76 ID:ReyR7Y750

从'ー'从「うん、わかった。ありがとう!」
ショボンからバンドエイドを受け取った彼女は、ぱあっと笑って廊下に駆けていった。

(´・ω・`)「ふう」
うっかり者だなぁ。渡辺さんは。とでも言いたげな表情で、ショボンは今夜読む本を探しに、本棚へと向かった。


(´・ω・`)「コレ借ります」
二十分後、本を手にショボンがカウンターに戻ってきた。

从'ー'从「あぁ、ショボン君、さっきはありがt
(´・ω・`)「いえ、気にしなくて大丈夫なんで。貸し出しお願いします」

ショボンは図書室の扉に視線を向けたまま言う。

从'ー'从「・・・」
いつものにこにこ顔が、お礼を遮られたことでいささか曇ってしまう。
無機質に手続きをすまし、ショボンに本を差し出す。その手には、先ほどのバンドエイドが巻かれていた。

(´・ω・`)「どうも」
本をパシッと受け取ると、ショボンはカバンに本を詰め、さっさと図書室から去っていってしまった。

632 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:08:16.05 ID:ReyR7Y750

月日は流れ、三月。別れが増え、新たな出会いに不安を募らせ始める年度末。

この二人も、別れのときを迎えていた。
一人の心の内は物寂しく、もう一人の心の内は・・・さらに、彼女の何倍も、何十倍も、寂しかった。


从'ー'从「さよならだね〜。この学校とも」

離任式が終わった直後。ある生徒は休み中に登校させられたからかそそくさと帰り、またある生徒は恩師との別れを惜しみ、花束を渡し、しきりに「ありがとうございました」を繰り返している。

彼は、式が終わった後に、いつもはしない行動に出た。

彼はあまり物事に興味を持たないタイプだった。そんな彼が人との別れをわざわざ惜しみに来るなど、彼自身も驚いていたほどだ。

体育館の外郭、数段しかない石段に渡辺は腰掛け、傍らにショボンが立っていた。

从'ー'从「君だけだよ、私に挨拶に来てくれたの。他の子達はあんまり図書室なんて来ないから仕方ないかな〜」
渡辺はたははっ、と笑いながら足をぷらぷらさせている。

633 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:09:36.83 ID:ReyR7Y750

(´・ω・`)「・・・」
傍らにいるショボンは、ひたすら黙っていた。話したくとも口が動いてくれない。何を言えばいいのかわからない。
「今までありがとうございました」とでも言えばいいのだろうが、それは嫌だった。彼女との関わりに区切りが付き、終わってしまうようで嫌だった。

時々渡辺が、私がこの学校に来たときはね、とか、次に赴任するところはこういうところなんだよ、とかぽつりぽつりと口に出すだけで、ほとんど会話は交わさなかった。


从'ー'从「さて、と」
黙りこくったまま時間が過ぎ、空がうっすらと夕焼け色になり始めた頃に渡辺は立ち上がった。

从'ー'从「私、もう行くね」
ばいばい、と渡辺は背を向けて手を振っている。

(´・ω・`)「あ、あの」

从'ー'从「ん?」
微笑んだまま、渡辺は足を止める。

634 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:10:59.01 ID:ReyR7Y750

从'ー'从「私、もう行くね」
ばいばい、と渡辺は背を向けて手を振っている。

(´・ω・`)「あ、あの」

从'ー'从「ん?」
微笑んだまま、渡辺は足を止める。

(´・ω・`)「ぼk・・・俺、あの、うまく言えないですけど」

(´・ω・`)「これからも、本を読みます」

必死に考えた末の言葉がコレか。ショボンは自分に呆れていた。

しかし、渡辺は
从'ー'从「うん!」
と強く頷いてくれた。

从'ー'从「あ、そうだ」

ぴこん、と頭に電球が浮かんだような動作をして、ごそごそと渡辺はポケットを探った。

635 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:12:31.90 ID:ReyR7Y750

从'ー'从「あった。はいこれ」
そういって渡辺が差し出したのは、茶色い台紙にスズランが押してある栞だった。

从'ー'从「これからも本を読むって言うんなら、ぜひ使っちゃって? あげるから」


(´・ω・`)「あ・・・。 あ、ありがとうございます」
ショボンが栞を受け取ると、渡辺は「今度こそ、じゃあね」といい、校舎に入っていった。

(´・ω・`)「・・・」



ショボンは栞に視線を落とし、心の中でだけ、泣いた。



636 名前:(´・ω・`)ショボンはあの日を後悔しているようです[] 投稿日:2007/11/21(水) 05:14:19.93 ID:ReyR7Y750

―――――


「次は〜○○〜○○〜、お降りのかたは忘れ物の無いようご注意願います〜」

私はハッとして車内掲示板を見る。どうやら降りる駅にもうすぐ着くようだ。
この栞を見ると、どうも昔のことを思い出してしまうようだ。

本に栞を挟み、カバンの中にしまう。

電車から降りると、思わずコートの前を押さえてしまう寒さだった。
学生や会社員がぽつりぽつりといる駅のホーム、彼は昔のことを思い出したことに、まだあの人の笑顔をはっきりと覚えていることに、ほっとした。

「まさか、あの時恥ずかしくてそっけなかった、なんて言えるはずないよなぁ」

ぽそっ、と彼は小さな後悔を口に出し、振り返って駅の階段に向かって歩き始めた。

〜完〜


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