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今年映画館で見た83本目の映画
鑑賞日 7月23日
ユナイテッドシネマ新潟
評価 ★★★☆

 ドイツ・イスラエル合作、ドロン・パズ&ヨアヴ・パズ監督作品、110分、原題(英題)は"PLAN A"(計画A)。

 実際に立てられた計画をもとにした映画だそうである。監督二人はイスラエル人の兄弟。

 第二次世界大戦直後のドイツ。ユダヤ人マックスは何とか生き延びたものの、妻子は行方不明、自宅は自分たちを親衛隊に密告した男とその家族に奪われてしまっていた。連合軍に占領されたドイツで、英国軍のユダヤ人部隊がナチ親衛隊員を密かに殺していること、しかしそのユダヤ人部隊も警戒している別の過激なユダヤ人グループがあることをマックスは知る。ほどなく、自分の妻子がすでに殺されている事実を突き止めたマックスは、その過激なグループに加入してドイツ人全体に復讐しようと・・・

 ナチのユダヤ人虐殺は映画でもよく取り上げられるが、これは逆に、復讐のために戦争直後のドイツで一般住民を無差別に殺戮しようと計画するユダヤ人たちの物語である。この計画そのものは実際に存在したが、登場人物はフィクションだそうである。

 単なる復讐物語ではなく、復讐そのものの正当性も問われている作品である。また、上述のようにそれとは別に英国軍ユダヤ人部隊によるナチ親衛隊員処刑(これまた実際にあったこと)も描かれていて、興味深い。ナチを扱った映画は多いが、そこに新しい側面を描いた作品が加わったと言えるだろう。

 戦時中の爆撃で破壊された町の様子が生々しい(ドイツではなくウクライナで撮影したそうである)。ただ、ドイツが舞台なのに、監督がイスラエル人であるせいか、使用言語は英語。そこがちょっと物足りない。

 なおパンフ(720円)に掲載された監督インタビューと夏目深雪(批評家・編集者)の記事が、関連文献や関連映画に触れていて参考になる。学習院女子大教授・武井彩佳(ホロコーストを専門とする)の書いた文章は、やや期待外れだった。映画パンフに載った学者の文章にはあんまり満足感を覚えたことがない。学者よ、奮起を!(はっきり言うなら、もっと勉強しなさい!)

 新潟市では東京と同じく7月23日の封切で、ユナイテッドにて単独公開中、8月5日(木)限り。県内でも上映はここだけ。