2018年07月04日

続 • TUMI 祭り 黒い悪魔とリュック篇

残念ながら赤い悪魔のベルギーに負けてしまったサムライブルー…。
録画したのでまだ観てはいないのですが、ロスタイムでって…くぅ〜。
ブラジルとベスト8とで戦って西野監督が再び勝ってしまうという
マイアミの奇跡は、奇跡ではなかった的なストーリーを考えていたのですが。

ではここからは、黒い悪魔と私との絶対に負けられない戦い篇となります。
TUMIをお使いの方なら誰しも一度は戦った事がある黒い悪魔…。
それはじわじわと攻撃を仕掛けてくる、そう、あれです…。

それは合皮、劣化した合皮が粉となって
ロスタイムに次から次へと波状攻撃を仕掛けてくるのでした…。

「あれなんか汚れているよ背中…」

なんて同僚に指摘されたりするのでしょうか、
はたまた帰宅後にジャケットを脱いでみると、
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「なんじゃこりゃ」と、

松田優作バリの「なんじゃこりゃ」を吐いたりしたのでしょうか。

今回のご依頼品はTUMIのリュック。
何処を治すかというと、ストラップの裏地部分。
ストラップの裏地部分にわざわざそこだけ合皮が使われているんです。
「なんじゃこりゃ」ですよね、わざわざ身体と直接触れる部分で
湿気を帯びやすいところに合皮を用いるのなんて。
でもTUMIにしたらこれはいつもの仕様なんです。
ビジネス鞄のモデルでも、付属のストラップの肩当ては何故か裏面が合皮。
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肩当てならその部分だけ合皮を剥がして革に交換してしまえば
容易く交換できるのですが、リュックのストラップとなると…
ストラップの下側はメッシュのナイロン生地なので
そのまま上側もメッシュにしとけばいいじゃんかと。

そこを謎のこだわりで合皮を使いたがるTUMI。
そのこだわりを変えないが為に、修理と称してしばしば当店を
ご利用頂けているという利益相反な文章になってしまうのですが…。
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表面はいつものように革を使っています。
しかもわざわざ斜めに切り返しをいれている。

さぁどうしたものか…。
普通に考えたらストラップを外して新しいものに差し替えるという方法と
合皮部分の面に革で覆ってしまうと云う感じでしょうか。

ちなみに合皮部分だけを外して交換というには、
このストラップはわざわざ、革と革とナイロンメッシュと合皮の
四パーツを斜めに切り返しで縫い合わせてあるので、これを一度分解して
再度、縫製し直すというのは現実的ではありません。

そしてそれを行うには、ストラップを本体から分離しなければ
ならないのですが、本体の部分にファスナーやら蓋のパーツやら
側面パーツ、胴パーツなどと一緒くたに縫い合わせられているので
この部分を分解するのもちょっと現実的ではないかなと。
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「現実的ではない」というのはできないという事ではなく、
やってやれない事はないが、分解、組み立て費用のほうが
掛かってしまったり、また素材的に再縫製すると解れやすい
同じ位置で縫製できない可能性があるなど、
補修部位以外のことで費用や問題がでてしまうという状態になります。

お客さまとどうしましょうかね〜なんてお話ししておりましたら
お客さまが、カバーみたいなものをつけられないかと。
始めは、合皮部分にくるっと革のカバーで巻いて、ホックボタンで
固定という感じから、それでは靴下のように革のカバーをストラップに
通す感じでということで話が盛り上がり、その方向で進める事に。

しかし盛り上がったはいいが、実際に不定形のストラップに
ぴったりと靴下を履かせられるのだろうか…
と、お客様が帰られてから、やや心配になる店主なのでした…。
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そういう時は、頭で考えていても私の右脳では処理能力の限界があるので
アナログに手を動かしてみるのが結局は手っ取り早いですね。
ストラップの型採りを行って裁断型をつくり、
試作用に革でまずはあたりをつけようかと。
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水色のリザード型押しの革なので、使い道がないので試作用になっています。
縫い割り縫製したら、くるっと脱いだ靴下を戻すように裏表反転。
断面が電話のマークみたいです。
それでは恐る恐る通してみます…
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どんぴしゃなんですねぇ。by じゅんいちダビッドソン。

三回くらい試作しないと合わないだろうなと思っていましたが
わたしもそれなりに腕が上がっているようです。

長さも筒径もジャストなんですねぇ。
筒の太さが変化して尚かつうねうねしているので、ちょっとこの方法は
無理かも(お客様には駄目な場合もあるということで)と思っていたのですが、
やってみると、

どんぴしゃなんですねぇ。

では本番なんですねぇ。
試作より本番の革の方が0.6ミリ厚いので、黒革を同じ厚みに
漉き機で漉いていきます。

0.6mmでも直径にすると、左右で合計1.2mmになるので
直径×3.14だと、4.0m弱円周が増える事になってしまうので
ぶかぶかになってしまいます。
実際は内寸になるので問題ないかもしれませんが、
作り直しは嫌なので、試作と同じ設定で。
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この抑えの金具と下で回っているドラムの刃の隙間を通ると
その隙間の分だけ革が薄く漉かれていきます。
あまりこのぐらいの大きな革をこの漉き機では漉かないのです。
通常は、革と革が合わさる10mm幅だったりとか端の部分を漉くのが
メインな機械ですねぇ。
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試作と同様に革の靴下を履かせていきます。
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根本まで通したらあとは縫製して固定になります。
固定は付根部分で通常とおり横にたたたと縫い目をいれて
しまおうと思ったのですが、リュックのストラップの付根部分は
一番負荷が掛かりやすい部分となります。

荷物の重量もありますが、荷物を取り出そうと片側で背負ったり、
背負う際にもう片側をぐっとひっぱられたりなど。

ですのでリュックの付根部分でストラップが裂けてきて
修理ということもしばしばあります。
(修理は構造的に難しい場合もあるのですが)
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ですので、その付近に新たに縫い目を入れてしまうのがちょっと怖い。
縫うと云っても、針で穴をあけて貫通させている訳なので
見方を変えれば切り取り線みたいなものです。

なのでしばしば鞄のストラップの根革や、持ち手の付根部分の
縫い目で負荷に耐えられずに革が裂けてしまうということを
実際に経験されていらっしゃる方もおいでかと思います。

ですので、あとあとの包まれたストラップのメンテナンスが
必要になった場合のことや、それらの縫い目の負荷も考慮し、
根本とエンド部分にはステッチをワンポイントで入れる事で
固定する方法に致しました。
結局、この革の靴下が下がってこなければいいだけなので。

こういった靴下を履かせるようなお初の補修事例は、
これまでデータがないので、何が良いのかが
その他の経験値から判断して決めていくしかありません。

ですので、通常とおりに付根に横一列縫製してしまっても
問題ないのかもしれませんが、ここは後々問題が起こったとしても
挽回ができる仕様で補修しておく事がベターなんですねぇ。

AFTER
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背負って持ち上がると、後付け感がでないように
付根が本体に入り込んで見えるようになります。
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薄々お気づきかもしれませんが、途中から語尾が
じゅんいちダビットソン風になっていたんですねぇ。
ワールドカップウィークなのに、あまりTVで見かけない
じゅんいちダビットソン。

本田選手も代表引退ということなので、ダビットソンはこの先
大丈夫なんでしょうかねぇ…と思う今日この頃。
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関連記事
TUIMI 祭り(トゥミフェス) 2018 梅雨明篇はこちら。

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ampersandand at 21:23|Permalink TUMI 

2018年07月03日

ロンシャン ル プリアージュの角擦れ補強。 ご依頼が多いので抜き型つくっちゃいました篇

LONGCHAMP LE PLIAG

角、すぐ擦れちゃいますよね…。
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最近は新品の段階で革にて角補強をする方も増えてきました。
軽くて使いやすいので何度もリピート購入される方が多いようで
その為、すぐに角が擦れるのも周知の事実。
であれば、始めに補強してしまおうという事のようです。

新品の段階でも、すでに穴が開いてしまった場合でも
費用は変わりませんし、見栄えも変わりませんので
お好きなタイミングでご依頼頂ければと思います。

ちなみに角の補強ではなく、内側から少しつまんで縫製する事で
穴が開いた部分は塞がりますが、結局はまたすぐに穴が開いてしまうので
繰り返しているとどんどん鞄が小さくなってしまいます…。
のでロンシャンの場合はおすすめしておりません。
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ご依頼が多くなると一つのプリアージュにつき、四箇所補強パーツが
必要になるので裁断も大変です。
しかも正円にカットするのって案外難しいので。
40個くらいカットすると気に入らないのが3個くらいでます。
私の腕のせいなのですが…。
カットしましたら断面にオリジナル同様にブラックで塗装を行います。
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次に三角に縫製してとんがりコーン状態にします。
これをプリアージュに縫い付けていきます。
もともとの縫い割りの位置に合わせてセットし縫製していきますので
後付け感は全く感じられない仕上りになります。
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そうしまして完成となります。
革の色はブラックとブラウンのご用意があります。
それ以外でも対応できますのでご相談下さい。
プリアージュ 角擦れ補強
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ナイロン生地ですと擦れればそのままいずれ穴が開いてしまいますが、
革の場合はメンテナンスを日頃から行うことで現状維持が可能です。

メンテナンスというと「ちょっと面倒くさいな」思われそうですが、
皮革用の保湿クリームをささっと塗布するだけですので簡単です。
お勧めのクリームは、コロンブス社のブリオクリームです。

保湿成分には化粧品にも添加されている、ホホバオイルが配合され、
ビーズワックスとヒマワリワックス天然成分も配合されています。
有機溶剤は使われていませんので安心してお使い頂けると思います。

無色なので爪の間に入って汚れる心配もありません。
というか、手につくと手もすべすべになっています。
もちろん今回の角補強にも仕上りの際に保湿で使用してあります。
*店頭でも僅かではありますが販売しております。

[コロンブス] columbus ブリオクリーム BRILLO (ムショク)



付属のコットンを使用するより、Tシャツの端切れなどの生地を
使用した方が塗布し易くクリームも無駄にならないかと思います。

今回は間に合いませんでしたが、抜き型、届きました。
これで無駄なく裁断することができる今日この頃…。
それにしても硬い鋼を図面と寸分の狂いもなく成形する技術は凄いなぁ
と思う今日この頃…。
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ampersandand at 20:19|Permalink 鞄と小物修理 

7月の営業日のお知らせ。

6月は店頭営業することが出来ずご迷惑をおかけ致しました。

7月の営業日は、

28日 土曜日 
29日 日曜日 となります。

*お休みではなく営業日ですのでお間違いなく。

なお業務状況によっては追加営業日がある場合があります。
その際は店頭、ブログなどでご案内させて頂きます。

別途、ご返却日をすでにお伝えしております場合は、
その日程でお渡しが可能ですのでご来店ください。

お受け取りのご都合が合わない場合は、
HPのお問合せからご連絡頂けましたら
お渡し日の調整をさせて頂きます。

*営業日以外の電話応対は、申し訳ございませんが
 作業の都合上行っておりません。
 HPよりメール(またはFAX)にてお問い合わせ願います。

スタッフが店主の私のみですので、お手数をお掛け致しますが
何卒、ご理解を頂けますと有り難いです。

営業日が限られておりまして、ご迷惑をお掛けしておりますが
どうぞ宜しくお願い致します。

店主


ampersandand at 20:00|Permalink お知らせ 

2018年07月01日

TUIMI 祭り(トゥミフェス) 2018 梅雨明篇

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TUMIの持ち手革交換は何かの法則なのか、急にまとめて
どさっとご依頼が集中することがしばしばございます。
わたしはそれを「トゥミフェス」としてひとり盛り上がっている
次第であります。

TUMIのナイロンは防弾チョッキの素材だけあってか
通常であれば持ち手がこんな状態になっていれば底の角は
おのずと擦り切れているのが通常ですが、いまのところ毛羽立っている
鞄はよくありますが、擦り切れて解れている状態のTUMIは
まだお目にかかっておりません。

BEFORE
ナイロンのベースに革を巻いているタイプ。
ベースのナイロン部分は、時代によって織り目が異なっているみたいです。
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BEFORE
革に革巻きタイプ
手に触れる部分がカリカリに変質ってしまうのは分かるのですが
付根部分までどうしてカリカリになってしまうのでしょうか…。
汗がじわじわ浸透してしまっているのでしょうか。
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革に革を巻いているので剥がしても革がでてきます。
革に革巻きタイプは、ナイロンベースに比べて革に革を巻いているので
その分、手に持つ部分の厚みはかなりしっかりとしています。
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分解して新たな革を縫い付けていきます。
鞄が重いのでTUMIの革巻き交換は指先がつりそうです。
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* * * * * * * * * * * * * * * * * * 

AFTER

TUMIの持ち手交換で使用している革は、タンニン鞣しの革を用いております。
ですので、使い込む程にしっとりと手に馴染み艶が増していきます。
厚みはオリジナルより若干厚めの革を用い、適度にオイルを含んでおりますので
通常より乾燥し難くなっています。

ナイロンに革巻き
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革に革巻き
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革に革巻き
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冒頭でナイロン生地のTUMIは持ち手がボロボロでも底の角は
まだ問題がない事が多いとお伝え致しましたが、
それではオールレザーのTUMIではどうかといいますと…
BEFORE
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そこはTUMIでも革は革ですので、他の革製品同様に擦り切れております。
そして本体も擦れが目立つ鞄が多いです。
持ち手交換の際には、角や全体の色褪せなどを確認されてみてください。

全周パイピングを交換するという方法もありますが
痛んでいるのは底の角部分だけですので、部分的に交換致します。
TUMI以外でもそうですが、このようなブリーフタイプのパイピングは
革が何重にも重なっている部分があったりしてフチの厚みが
変化しているのでちょっと厄介です。
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上から二重に被せてしまう方法もありますが、今回は痛んでいる部分を
切除して巻き直します。
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巻き直すと擦れて色褪せている周囲と新しく巻き直した黒革で
色の差が出てしまうので、境目や周辺は補色をして色も馴染ませておきます。
全体的な補色については別途補色費用が掛かります。
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AFTER
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底の角を痛めない為には、なるべくざらざらした路上には
置かないぐらいの対処法しかありません。

それとなにより日頃からのメンテナンスがとても重要になります。
持ち手部分はどうしても、手汗や手垢で革自体が変質しやすいので
仕方がありませんが、底の角部分や全体の乾燥は日頃の保湿ケアで
かなり寿命が違ってきますのでぜひ行ってみてください。

と、毎回力説しておりますが恐らくほとんどの方は
やらないんでしょうね…。
それでも一応メンテナンス商品をご紹介しておきます。
お勧めのクリームは、コロンブス社のブリオクリームです。

保湿成分には化粧品にも添加されている、ホホバオイルが配合され、
ビーズワックスとヒマワリワックス天然成分も配合され表面の
保護も行えます。
有機溶剤は使われていませんので安心してお使い頂けると思います。
使い方はいたって簡単、薄く塗布してから軽く
乾拭きするとほどよく艶がでます。

完全に白くしらっちゃけてるような擦れは別途補色が必要ですが、
軽く擦れた程度であれば、このクリームで保湿することでしっとりと
目立たなくなります。

*店頭でも僅かではありますが販売しております。

[コロンブス] columbus ブリオクリーム BRILLO (ムショク)



付属のコットンを使用するより、Tシャツの端切れなどの生地を
使用した方が、塗布し易くクリームも無駄にならないかと思います。
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ampersandand at 22:58|Permalink 鞄と小物修理 

2018年06月30日

しびれる手縫い。

ときどき業者の方から外注を受ける事があるのですが、
こちらは家具や文化財などを修理されている方からのご依頼品。
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100年とか200年とか前の?古い木製のトランクに付いていた
持ち手の製作になります。
両サイドの窪んだところに金具や革ベルトでトランクに固定される
仕様となっています。

歪んだ形状からもとの寸法を推測し製作していきます。
厚みが8.0mm程度あるので、このような持ち手は裏表に銀付き革を用い
間には床革などが用いられております。
現在販売されているトランクや厚手の持ち手のものは、
芯材には圧縮した紙を用いられていることが多いいようです。

今回は私が持ち手を製作し、取付ける際には本体の経年変化に合わせて
ご依頼の職人さんがエイジングを行うという段取りになっていますので
紙の芯材を用いてしまうと、エイジング処理の際に始末が悪くなりそうなので
すべて革を用いて製作する事にしました。

まずは失敗…。
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何年か前に他の業者さんからこのタイプも持ち手の製作を30本ほど
ご依頼頂いた事があったので
、製作に当たって問題点は
特になかったのですが…製作してみるとなんだか柔らかい…。
こんな硬さだったかしら?と。

その時の持ち手30本
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使えなくもないのですが、トランクの大きさが浴槽ぐらいあるので
ちょっと頼りない感じも致します。
で、作り直しです。

作り直しでの仕様は、裏表の革は変えずに
栃木レザーさんのタンニン鞣しのオイルレザーを用い
芯材には靴底に使うベンズを採用する事にしました。

ベンズは牛のお尻部分の革で一番繊維が詰まっている部分になり
靴底用ですのでプレスを掛けて硬く仕上っています。

この組み合わせが採算を考えなければ、最硬なんじゃないかと思われます。
オイルレザー裏表/3.2mm
芯材ベンズ/5.2mm
合計8.4mm

しかし最硬なだけに縫うのが大変なことに。
以前30本製作した際は、厚みは10mmでしたが八方ミシンでぎりぎり縫えたので
今回もミシンでさくさくと…。
しかし縫ってみると縫えない…、縫えないというか針は貫通するのですが
繊維がつまり過ぎていて、針が革に挟まったまま抜けないという状態に。

そんな時はこのミシン。
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あまり出番のないこのドイツのミシンで縫ってみると、表面のオイルレザーに
ミシンの抑えの跡がくっきりと残ってしまうので見栄えが悪く断念…。

このミシンは、サドルレザーとかベンズなどの表面が硬い革や
抑え跡が目立たない革を縫製するのに適しているのかもしれません。
表面にオイルレザーを貼り合わせている今回の革の縫製には
不向きなようです。
しかし靴底を縫うミシンではこの不定形は綺麗に縫えないので
残すは手縫いということに。
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まずは穴開け。
菱目打ちでは8.0mm以上ある厚みは当然貫通できないので
一目一目菱切りで貫通してゆきます。

不定形なので穴あけの際は、左手で持ち手を抑えながら
裏面に垂直に針がでるようにちらちら裏面を確認しながら
右手で菱切りをくりくりと貫通していきます。
二本目を穴開けし終える頃にはおのずと手や腕がじんじん…。
逆に硬過ぎて取付けが心配になります。

これは以前製作した別の持ち手の試作品の画像になりますが
こんな感じで少し中央をたわませて取付けます。
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穴開けし終えたところをひと穴ずつ麻糸で縫っていきます。
縫いの行程は同じテンポと力加減で、
ひたすらシュルシュルとシュルシュルと…。
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縫い終わる頃には程よいだるさがありますが、
手縫いには達成感があるので嫌いではないのです。
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手縫いだと糸を引く強さで縫い目の締り具合がかわり、
それによって縫い目のぽこぽこ感が違って見えます。
強く引けば縫い目がよりぽこぽこしていきます。

今回は適度な力加減で縫った感じですが、
最後に糸目を叩くかどうかしばし悩みます。

糸目がふっくらとしている感じもレトロな感じでいいかなとも思うのですが、
ちょっと主張し過ぎかなとも。
100年経過した持ち手なら、糸目も落ち着いて見えてきているはずでは、
ということで糸目を軽く木づちで叩いてふっくら感を
落ち着かせて完成となります。
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今回はトランクの内装交換もご依頼頂いたのですが、
その過程はご依頼主さんのご希望により、今回は公開NGとなっております。
外注でご依頼頂く案件は面白いものが多いのですが、
しばしば大人の事情で公開NGがつきものです。

こちらは先程の30本の持ち手をご依頼頂いた際に、
実際に使用されているところの画像提供して頂いたものとなります。
(もちろん許可は頂いております)
UNITED ARROWS 京都店にて。
鞄の持ち手ではなく店舗の什器の引き出し?の引手として使用されております。
6年前なのでそれから改装されていなければまだあると思いますが…。
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「外注 その後…」 UNITED ARROWS 京都店にて。

ちなみに外注だとこんなものも以前製作していました。
ナイフケースの製作依頼です。
一般のお客さんからは流石にご依頼はない事例です。
ご家庭でこんなナイフは使わないですからね。
これは確か工場でタイヤだったか、なにかゴムをカットするナイフと
伺った記憶があります。
sheath knife case
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作れそうなものは承っておりますので
ご依頼お待ちしております。
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ampersandand at 11:46|Permalink 鞄と小物修理 

2018年06月26日

このタイプのTUMIも持ち手交換できます。

毎月毎月カンペールのオールソール同様に、コンスタントに
持ち手の革交換を行っているTUMIですが、このようなモデルのTUMIの
持ち手も作成可能です。
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TUMIのHPを見てみますと現行品のブリーフタイプの鞄は
すべてこの持ち手仕様でした…厄介ですね。
TUMI
TUMI HPより
これまでの定番のこのモデルは、ナイロンベルトや革ベルトに
被さっている革の部分のみを交換すれば良かったのですが
現行品のタイプですと付根から新たにすべて製作する必要があります。
•今までのモデルはこちらタイプ
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シンプルな形状であれば別段、交換費用は変わりはしなかったのですが
この特殊な形状ですとおのずと費用は高騰してしまいます、約1.5倍程度…。
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持つ部分にはスポンジが封入されていて膨らみ、付根部分は平になっています。
芯に入っているスポンジがすこし片側に寄ってしまっていています。
そして本体との連結パーツとの隙間はきちきちです。
果たしてミシンで縫えるのでしょうか…。
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手に触れていた部分の革はカリカリな無惨な状態で
中のスポンジも潰れて変形しています。

膨らんでいるところと、平らなところ、スポンジが途中まで入っているなど
どこまでオリジナル通りに再現できるかというところが面白くもあり、
難しいところになります。

へたっているスポンジを入れ替えるので、弾力や膨らみ具合や素材の厚みや
革と合わさった時の合計の厚みなど検証する点がいくつかあります。
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オリジナルの持ち手幅と同じに設定したいのですが、その場合に
スポンジをくるんだ際に必要な革の距離と、オリジナルの幅とのバランスで
スポンジの幅を14mmにするか、13mmだと膨らみが物足りないし
15mmだとぱつぱつで縫えないか…など1.0mm単位で組み合わせを試して
一番再現性が高い組み合わせはどれか試作し検証していきます。
180608001
それと持ち手が本体の連結パーツと組合わさっている部分が
きつきつでそもそも縫製できるのかも懸念点でしたのでそれも
試作品を通してみて、縫製位置を確認していきます。

「そもそも製品が縫われているのだから縫えるでしょうに」と
思われると思いますが、まず縫製するミシンというのはいろんな種類があり、
またその抑え部分のアタッチメントというのも無数にあります。
ご家庭のミシンでもボタンホールを縫う際に交換する部分のあれです。

ですので、メーカーなどはその製品に合わせてアタッチメントを
オーダーして製作していたりするので、同じ縫製手順や縫い位置をとると
縫えない場合があります。

また製造工程では、持ち手は本体と組み上がっている状態で
縫製している訳でなく、持ち手単体または持ち手と連結パーツとの
組み合わせのみで縫製しています。

修理の場合は、重い鞄本体がぶら下がった状態で
持ち手を組んでいかなくてはなりませんので、いくつかの物理的な制約も、
試作の段階で手順や仕様を調整、確認していきます。
で、できたのがこの型紙。
しかしこの後にまた修正が必要になるのですが…。
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早速裁断していきます。
革はタンニン鞣しのオイルレザーを用います。
オリジナルより耐久性は高いのではないでしょうか。
タンニン鞣しですので使い込む程に艶が増してしっとりとしていきます。
適度なオイルレザーですので乾燥も通常よりはし難いかと思います。
*でも定期的なメンテナンスは行ってください、寿命が伸びますので。

パズルのようにスポンジ、芯材、ナイロンなどを配置していきます。
負荷が掛かるループ部分には伸び止めのナイロンと裏革を宛てがい
補強を行っています。
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で、一旦この状態まで仕上げます。
部分的にコバの部分はこの段階で仕上げておきます。
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付根部分は本体の連結パーツと組み合わせてから縫製を行います。
ですので持ち手部分を縫製する時も、何処まで縫製し、
この部分の縫い目の三つ分を後で縫い重ねて付根の縫い目と繋げていくなど、
縫い目の数も試作の段階で決めておきます。

そうしてようやく完成となります。
AFTER
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オリジナルの付根の平らな部分にはナイロン柄の型押しがしてありました。
折り返した裏面にはなかったので、わざわざあの状態にしてから
表面に型押しを行っているようです。
このような金型を用いての部分的な型押しまでは残念ながら再現はできません。

この型押しはデザイン的の役割だけではなく、膨らんだスポンジと
付根の平らな部分との境目を、くっきりと際立たせる為の表現になっていて、
また封入されたスポンジが型押し加工により、それ以上に下がってこないように
する為の役割があったようです。
しかし実際はずれて下がって(片寄って)きておりましたが…。

持ち手に封入されたものが片側によってしまうと、
その部分は空洞になってしまい強度が弱くなるので仕様の
改善が必要かと思います。
180609008180609009
ですので今回の製作においては、スポンジとの境目部分には
ステッチを追加することで、平らな部分との境目をくっきりとさせ
尚かつスポンジが下がってこないような縫製を行いました。
追加の縫製もオリジナルの縫製ラインから自然に繋げて縫製しているので
そう云われてもどこのことなのか分からない知れません。
180609010180609011
付根の型押しの柄部分以外はほぼ再現できているのではないでしょうか。
TUMIのこの持ち手の仕様が、これからの定番になってしまうと
ちょっと大変だな〜と思う今日この頃。

旧モデルの持ち手の仕様の方が(ナイロンや革ベルトに革を巻いている仕様)
重いTUMIの鞄には、耐久性の観点から適しているかもしれません。
•今までのモデルの補修事例
180603000
こんなことを書くと、今回の現行モデルに旧モデルの持ち手の仕様で
製作できませんか?と問い合わせがきそうですが、それもできなくはないです。

靴をオールソールする際に、レザーソールからラバーソールにしたりと
自分仕様にカスタムするように、鞄も自分の使い勝手に合わせて
カスタムというのもあると思います!
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ampersandand at 17:52|Permalink TUMI 

2018年06月05日

6月の店頭営業日は現在調整中となっております。

営業日が限られておりましてご迷惑をお掛けしております。

6月の店頭営業日は現在調整中となっております。
ご案内までしばしお待ち願います。
営業を行える場合は、恐らく月末の日曜日を予定しております。

別途、ご返却日をすでにお伝えしております場合は、
その日程でお渡しが可能ですのでご来店ください。

お受け取りのご都合が合わない場合は、
HPのお問合せからご連絡頂けましたら
お渡し日の調整をさせて頂きます。

*営業日以外の電話応対は、申し訳ございませんが
 作業の都合上行っておりません。
 HPよりメール(またはFAX)にてお問い合わせ願います。

スタッフが店主の私のみですので、お手数をお掛け致しますが
何卒、ご理解を頂けますと有り難いです。

営業日が限られておりまして、ご迷惑をお掛けしておりますが
どうぞ宜しくお願い致します。

店主
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ampersandand at 18:00|Permalink お知らせ 

2018年05月31日

できればヒールは外さないでおく。

ハイヒールってどうやって固定されているかご存知でしょうか。
知っていれば走らないとは思いますが…。

アジア圏生産の靴なんかは、ホチキスみたいなのでぽちっと
留めてあるだけのものなんかもあります、恐ろしい…。
階段降りている最中にハイヒールがはずれてしまった時には…
ダッシュしている時にぽきっと…

足首をやられる程度で済めばいいのですが…。
2018042802520180428024
ハイヒールは基本的には釘が5本と真ん中に太めのネジで固定されています。
上画像のようなピンヒール系で付根も小さめのヒールの場合は
打ち込むスペースが無いので、釘2本とネジ1本だったりもします。
今回のヒールが外れてしまった靴は、ネジが3本で固定されていました。
固定方法としてはしっかりとしていますが…
2018042802720180428028
それでも3本中2本のネジが折れてしまっています。
前側が2本が折れているということは、極端に後ろに体重が
掛かったのかと思います。

この場合は新たにネジで固定するのですが、
ネジの位置というのはほぼずらせません。
ずらして打ちたいのですが、ずらすとヒールを貫通して外観に
でてしまう可能性が高いです。

ヒール付根部分が小さいので、その中で収まるように
ネジを打ち込むとなるとネジの角度や深さは限られています。

ちなみに中央部分に打てそうですが、この部分にはヒール内部に
鉄パイプが貫通されていますのでネジが当たって入りませんし、
中底面にはシャンクという鉄のプレートも施行されていますので
太さのあるネジを貫通させることが難しい状態となっています。

木材でもそうですが、一度開けられた穴に再度ネジを固定すると
当初よりは若干締まりが劣ります。

今回は元の太さより気持ち径が太めのネジを使用し
ネジの食い付きを良くした状態で固定することにしました。

ただヒール固定をご依頼頂く際にはお伝えしておりますが
一度外れてしまったヒールの場合は、以上の理由で
元の強度で固定できない場合が多いいので、
走ったりと階段を駆け下りたりなどの極端な負荷が掛かるような
使用はお控えくださいと。
(万が一外れてしまって、怪我をしてしまっても一切保証はできませんので)

なお、ヒール交換、オールソールなどでヒール自体をを新しく交換して
取付ける場合は問題ありません。

以上の理由でできればヒールは外したくないのでありますが
ヒールに巻かれている革を巻き替える際は、外さなければなりません。

スムース革の場合は、本体の下に巻き込まれていますし、
スタック革巻きの場合は、表面を削って整えるのでヒールを
本体から外さなければなりません。
20180428038
ただ画像のようなスタック巻きという革の場合は
下側であればヒールを外さずに部分的に巻き直して補修することが可能です。

だいたいヒールが傷つく場合は下側が多いかと思います。
路上の側溝や階段などの何気ない溝や段差にヒールが挟まったり…

まずは傷ついてる範囲でスタック革のスジに添ってカットします。
20180428039
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このスタックと云う革は、板状の革を縦に重ねて
それを薄くスライスして作っているのだと思います。
箱根寄木細工は横方向にスライスしていますが、
これは縦方向にスライスしている感じです。

わざわざなんでこんな素材があるのか、ですが、
もともと紳士靴でみられるような積上げを表現する為なのだと思います。
20180319242018031923
婦人靴でも大昔はこのように革を一段ずつ重ねて作っていた
時代もあるようですが、製作は大変ですしヒールが細いと
革を積んだ構造では耐えられないので形状に限界もあります。
その名残が現在のプラスチックヒールに巻き付けるこの仕様なのだと思います。
では巻き付けます。
20180428041
製品もプラスチックのヒールにスタック革を巻き付け
表面を綺麗に削って整えているので、革の厚み合わず段差ができます。
段差を合わせつつ削り、革の表面を整えていきます。
革の表面は削ったままだと毛羽立っていますので、
コテなどを使って絞めてゆきます。
2018042805220180428051
あとは茶色に染めてリフトを付けたら完成となります。
すでに染まっている部分も軽く染めて小傷を目立たなくさせ、
合わさり目の色が合うように色を重ねる回数を調整します。
2018042805620180428053
巻き直しても、初日に階段ぶつけてしまったら…悲しいですね。
ですので部分補修、巻き替えの場合はかなり痛んでからの
ご決断でも宜しいかと思います。

ぶつけて表面がめくれてしまったような状態の場合は、
めくれた革がきれいに残っていれば、その部分を接着して
少し目立たなくもできます。

ちなにみ少し前にテレビで紹介されていた
不死身のパンプスといわれる、FAMZONの付け替え出来るパンプス。
これだとヒールが傷ついたらヒールごと交換できるのでいいかもしれません。
ヒールの固定はワンタッチでカチッとできるようなので簡単みたいです。


01
FAMZON HPより
固定強度は問題ないということですが、例えなリフトが擦り減って
土台部分まで斜めに減ってしまった状態で、歩かれるご婦人方は
多数いらっしゃいますが、そのような本来の角度とは違う接地角度で
歩行してしまっている場合でも強度保証の想定内なのかとちょっと心配です。
ワンタッチ構造って、本来と異なる角度で負荷が掛かると
割合簡単に外れてしまったり、割れたりするものですから。

また詳細は分かりませんが、HPを見る限り8.0cmヒールと6.0cmヒール
どちらの高さでも本体に共用で取付けられる?ようですが
2.0cm高さが違うのに大丈夫なのだろうか…

2.0cm違うと踏みつける位置が前後するので、本体がどちらの設定で
設計されているかによりますが、どちらかの高さのヒールでは
歩行の際に履き口が広がって足が抜けやすくなってしまわないのだろうか…
などなど気になる部分がありますが、ヒールと本体で色や素材の組み合わせが
できるので面白そうです。

ただヒールは付け替えて不死身かもしれませんが、
肝心の減りやすいつま先が不死身ではないので、
当店にて不死身のハーフソール仕様にして頂ければと思います。
なお、このFAMZONの靴のリフト交換は出来ないかもしれません。
内部の構造が通常とは異なりますし、ピンの太さも特殊な感じがしますので。
または交換できても、他店にてリフト交換した場合は
ヒール固定強度の保証外なんてこともあるかもしれませんので。
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ampersandand at 13:05|Permalink 靴修理 

2018年05月06日

ブラックペアン 佐伯式モカシン置換術 オールソール篇

ブラックペアン……、期待していたのですが私のイメージとは
少し違っていて、第一回と第二回をもってリタイアしてしまいました。

「片っ端から救ってやるよ。」云ってみたいものです。
0505
from TBS

今回の患者さんは、7年前の(開業時)私だと助けられない症状になりますが
(実際にこれまでにもお断りしたこともありますし)
わたしも少しは経験を積んできていますので、
モカシン置換術によってなんとか助けられるかと思います。
(といってもこの状態はかなり深刻ですので今回は例外的な感じですが)

しかも今回は世界的にも例が無い、2足同時置換術。
20180428088
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20180428071
親指側の縫い合わさり部分が、縫い穴から裂けてしまっています。
縫い穴が裂けていなければ穴を拾って縫い直すだけなので簡単なのですが、
その縫い穴が裂けてしまうと、まずは縫い穴を再建する必要があります。

通常は革と革が重なってその部分を縫い合わせていますが
今回のようなモカシンの場合は、革と革の断面をそれぞれ
45度くらいにカットしてその断面同士を合わせ、その革の厚みの間に
針を通しその穴を掬い縫いして縫っている状態となります。

<断面略図>
水色/上面革パーツ
黄色/側面革パーツ
赤色/掬い縫い糸
モカシン
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見栄えを気にしないで治してもいいのならばなんでも可能ですが
見栄えを変えないで治そうとなると…。
スナイプまたは佐伯式モカシン置換術しかありませんね…。
2018042806620180428067
2足とも親指の当たる箇所が裂けてしまっています。
略図でも分かるように、革の間を通して縫製していますので
通常の重ね合って縫製している状態に比べれば強度的には
弱い仕様かと思います。

壊れていない小指側はこんな感じ
20180428064

特に屈曲部分ですと直角に縫い合わせて硬くなっている部分を
歩く度に折曲げ、尚かつ関節が当たって押し出す圧も掛かり負担増です。

2足ですので計四箇所を再建しなければなりません。
箇所によって裂け具合はまちまちですのでそれに応じた処置を
行っていきます。

この処置で問題になるのが、補修した箇所が他の部分に比べ革が重なり
硬くなるので履いた時に痛くならないか…。
これは結局治して履いて頂かないとどうなるか分からないところです。

しかも今回は「親指の関節が当たって裂けている」という
構造的な原因というよりも、その使用環境によってという原因が
はっきりしていますので、それに耐えられるように治さなければなりません。

治し方の程度としては、見栄え重視から強度重視まで方法が幾つかあります。
見栄え重視といってもだからといってすぐ壊れては意味が無いので
もちろん実用強度は担保しています。
落としどころはそれぞれで状態が違うので
作業を行いつつ塩梅を見定めていく感じとなります。

まずは縫い穴を再建し掬い縫いのピッチを写していきます。
穴の数を間違えてしまうと糸がでるところが無くなってしまいますので。
20180428075
20180428077
もちろん縫合している時は、渡海先生並みの早さで縫っている
イメージな訳ですが…。
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20180428073
やらないですけど、今回は上面のパーツの縫い穴だけが裂けているので
上面のパーツ自体をそっくり交換してしまっても修理は可能なのだと思います。
それには費用と時間が無制限に掛かってしまいますが…。

それでは完成となります、まずはソール交換から。
AFTER
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つま先はサービス仕様の強化ラバー埋め込み式となります。
底縫いの段階でラバー厚分を凹ませてから底縫いを行うことで
つま先が摩耗した際にはラバー部分のみを交換できます。
0505-1

この仕様ですと履き始めの著しいつま先の摩耗に有効的です。
つま先の底縫いの糸が強化ラバーの下に隠れていますので
つま先の糸切れが起こらない仕様になっています。
*レザーソールの場合はご希望でサービス仕様となります。

スコッチグレインの靴もつま先ラバーで同様の仕様になっているのですが、
埋め込まれたラバーを革底共々、底縫いで縫製してしまっているので
摩耗しても部分交換が出来ない仕様になっています、残念…。

モカシン部分
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モカシン部分はとりあえず見栄え重視で仕上げました。
より強度的にアップさせるにはモカシンの縫い目の隣に
ミシンで細かくステッチを入れた方が強度がでます。

お渡しの際に仕上りを確認して頂き、その旨お伝えしましたところ、
より強度がでる方が良いとのことで、ステッチの見栄えも気にならない
ということになりましたので、この後、追加でステッチを入れてあります。

心配だったモカシン再建部分の革の硬さですが、後日伺ったところ
履き心地には問題が無いということで、予後の経過も
ひと安心といったところです。

ちなみにですが、今回はドラマ「ブラックペアン」を
もじった記事になりますので、もちろんお分かりだとは思いますが、
佐伯式モカシン置換術やスナイプなどという呼び名の
修理方法は修理業界にはありません。
ですので、ミスターミニットなどで

「裂けてしまったので、佐伯式モカシン置換術でお願いします!」

と云っても「えっ?」となってしまいますのでご注意願います。
もしかしたら関西のお店だったら

「スナイプ式じゃあかんの?」

と、のってきてくれるかもしれませんが。
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ampersandand at 23:39|Permalink 靴修理 

2018年05月05日

効果の無いサイズ調整。

靴のサイズが緩いということで、ほかのお店でサイズ調整された
靴の再サイズ調整を行うことがときどきあります。

今回の靴も他のお店ですでにサイズ調整が行われています。
サイズが大きく足が前に滑ってしまうということでの
調整ということでしたが、何故か、かかと部分にスポンジが
挿入されています…。

黄色の部分に挿入されています。
18042810520180428031

サイズが緩い場合というのは状態として
縦方向のサイズは合っているが、指周りが緩い。
縦方向も緩く踵に隙間が出来ているし、指周りも緩い。
だいたい合ってはいるが、甲の部分が緩い(羽が閉じきってしまう)

などがあるかと思います。
一つの原因なのか、または複合的な原因なのかで
ぞれぞれで対処の仕方が異なります。

ただ、店頭で履いて頂くとそもそもサイズうんぬんというより
靴の履き方が間違っている方が多々いらっしゃいます。
そして履き方が間違っていれば、靴を購入する時点で購入したサイズが
間違っていると云うことになります。

履き方が間違っていると、いくら調整しても合いませんし
実際ちゃんと履けば調整が必要ない場合もありますので
まずは履き方からご案内となります。
分かり難くなりますので基本の紐靴という前提で。

よく紐を結びっぱなしで脱ぎ履きされている方がいらっしゃいますが
これは論外となりますのであしからず。

ちなみに結びっぱなしで脱ぎ履きされていますと履き口周辺が
裂けてきますし、かかと内側も擦れ易くなってしまいます。
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履く時は立ったままではなく、框などに腰掛け、紐を解いた状態で
靴べらを使って足を入れます。
そして足を靴のかかと部分に(水色点線部分)ぴったりと密着させます。
つま先を上げて地面に踵をこんこんすればいいでしょう。

そして密着させましたら紐を下の穴から順々に絞めていきます。
そうすることで、甲部/履き口/踵の三点で足と靴を固定することができます。
この状態ができれば多少指周りに余裕があっても
足が前後に泳いでしまうことが予防できます。

指周りが緩いということで足が前滑りしてしまう方の場合、
甲とかかとでしっかりと靴と足を固定すれば、指周りに多少の余裕があっても
インソールを入れずに改善できる場合があります。

またかえって、指周りに余裕があるので足がむくんできた場合などにも
対応できるかもしれません。
私の考えとしては100%合っている靴というよりは、
80%ぐらい合っている靴の方が(靴紐やベルト等で調整できる靴種の場合)
一日を通して、また年間を通して使い勝手がいいのではないかと思います。

一日のうちでもむくんだりして足のサイズは変わりますし、
夏と冬でも足のサイズは異なります。
またもちろん靴下の厚みも変わるでしょうし。

20180428032-7
かかと部分にはカウンター(月型)といわれる芯材が入っています。
つま先に入っている先芯は、つま先の形状を維持する為の芯材ですが
(安全靴などではスチールが入っていてつま先を保護する役目がありますが)
かかと部分の芯材は、先程の足と靴をホールドする時に
しっかりと包み込むように踵を支える役割を担っています。

ですので、「かかとを踏みつけてしまっては靴の戦闘力が50%に」と
ときどきお伝えしているのはこの為です。
この部分がへにゃへにゃだったり変形してしまっては
ホールド感が失われてしまうからですので、
急いで履く時も決して踏まないでください。

まだ書きたいことはありますが、ここのままいくと今回は「履き方」で
終わってしまいそうなのでそろそろサイズ調整に入りたいと思います。

今回のご依頼主さんは、指周りが緩い、
足が前に動いてしまうという状態でした。
まず状態を確認する為に靴を履いて頂くと羽が完全に
閉じてしまっている状態です。
閉じきっても履き口ラインがパカパカで指が入るぐらい
隙間が出来ています。

履き口のトップライン
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羽が閉じきった状態
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羽が開いている状態
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これもサイズが緩い方に良くあるのですが、靴を購入される時点で
今回の内羽の靴だったり、外羽の靴だったりは羽が閉じきった状態の
サイズ感で購入してしまいますと、のちのち必ず緩くなってしまいます。


それはアッパーの革が足に馴染んで伸びてゆきますし
ウェルテッド製法の靴であれば、中もののコルクが荷重により沈んでいきます。
ですので、靴内部の容積としては徐々に増加していく訳です。

この時に羽の開きがある程度あれば、紐を絞めれば容積は減らせますが
(きつく出来ますが)すでに羽が完全に閉じきった状態であれば
なんら調整することが出来ない状態ということです。

ですので、欲しいサイズが売り切れているからといって
ワンサイズ上ならばなんとか…というのは後々のリスクが高くなります。
ワンサイズと思いきや、後々ツーサイズアップなんてことに…
では羽が閉じきっているこの状態だと救済処置はないのか…

その場合は「タンパッド」という方法があります。
ベロ裏部分にスポンジを施行する方法です。
これによって甲の部分が窮屈になりますので、
その分閉じていた羽が広がるという訳です。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
0429-1
スポンジを宛てがいライニングと同じ色の革で覆うことで
脱いでもサイズ調整していることは分からない仕上りになります。
スポンジの厚みは実際にスポンジを宛てがって履いて頂き
厚みや硬さを調整することが出来ます。

ただこの方法ですと見栄えも変わらず綺麗に仕上るのですが、
費用がそれなりに掛かってしまいます。

しかし探してみると便利な商品があるもので、
既製品で「タンパッド」という商品が展開されています。
そちらでしたら両面テープで座布団状のパッドをベロ裏に
取付けるだけですのでお手軽にDIY調整が可能です。

貼るだけですので途中で剥離したりなどの面倒はあるかもしれませんが
1.000円程度でフィット感が向上するならば試してみる価値は
あるかもしれません。
[クラブヴィンテージ・シープレザー] 痛み軽減・サイズ調整用パッド レザータンパッド 6424 BR ブラウン 男女兼用フリーサイズ


今回のご依頼主さんの状態としては履いて頂くと
指周りが緩い/甲の部分が緩い(羽が閉じきっている)/履き口も緩い
という、そもそも購入してはいけないサイズ感となります。

この場合の処置としては、まずは前側にコルク4.0mmを入れてみて(黄色部分)
どんな感じか確認してみます。
これで指周りのサイズ感としては1.5から2.0サイズダウンという感じです。
20180428032-9

ときどきサイズ調整のお問い合わせで、「2サイズダウンにしてください」
というサイズ指定がありますが、あくまでも感覚的な数値ですので
ダウン率を指定しては行えません、実際に履いて頂いて具合を見る調整です。
これはサイズを広げるストレッチ調整でも同様です。

コルクの他にサイズ調整に使用する素材は低反発スポンジ、
軟質スポンジ、レザーを状態に合わせて複数枚、
または組み合わせて使用致します。
端の部分は薄く漉いて底面に段差がでないようになっています。
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状態を確認してみますと、指周りはややタイトな感じ。
コルクは徐々に荷重で足のかたちに凹んでいきますので
始めはややタイトな感じくらいがいいのです…。
甲の部分はまだ羽が閉じきっていて履き口にも隙間が見られました。
180428106
ですのでタンパッドと合わせ技もありですが、とりあえず指周りがフィットし、
前滑りも収まりましたので甲の部分は今回はそのままで
ということになりました。
*タンパッドは2018.05.05日現在、店頭にて販売はしておりません。

後日、一日履いているとタイト過ぎて厳しい…
コルクが沈むかも知れないけど無理です〜、ということでコルクではなく
スポンジに素材変更を行い再調整となりました。

難しいですねフィッティングは…
足は一日のうちでサイズが変化していきますのでなかなか…。

サイズは感覚的な部分なので、私が触診してちょうどいい具合と思っていても、
それがお客様的にきつい、ゆるいと感じられればそういうことになります。

そして「ややタイト」というのが私が思っているややタイト感と
お客様が感じているややタイト感は、必ずしも一致はしていません。
ですので、サイズ調整の時は「お客様の感覚頼み」ですので
こちらのアドバイスは上の空でもいいので、
足先の感覚に神経を研ぎ澄ませて頂ければと思います。

また具合を確認する為に、インソールを仮入れした状態で
実際に路上にでて商店街の道を歩いて頂いて確認も出来ます。
店内でちょこちょこ足踏みしただけでは分かりませんし。

201804280372018042803420180428036
紳士靴の場合は、だいたいが踵の半敷きですのでインソールを挿入する場合は
オリジナルの半敷きはそのままで、前側に中敷を追加し連結して製作もできます。
0429-100
今回はすでにロゴも擦り消え、革も痛んでおりましたし、
前のお店で取付けたスポンジがぼこぼこ残っていたので、ご相談に結果、
あたらに全敷きにて施行致しました。

ちなみにタイトルの「効果の無いサイズ調整」ですが、
前の修理店にて、前滑りを抑える為にかかとスポンジを入れた訳ですが、
これでは逆効果な感じかと思います。
180428107
踵にスポンジを入れたことで足が上に上昇すると、
靴に覆われている部分は少なくなります、
履き口が浅くなっているのと同じ状態です。

ですので、履き口が緩い上に浅くなってしまうと余計に踵が
脱げ易い状態になってしまいます。
また踵から踏まずに掛けての傾斜もスポンジ厚分きつくなるので
余計足が前に滑ってしまうという訳です。

踵にスポンジを入れる場合としては、例えば踝が履き口に当たって痛い
という場合には、スポンジを入れて足が上昇すれば必然的に
踝が当たらなくなります。
履き口が浅くなりますが、踝の当り以外にサイズ感に問題が無ければ
靴ひもを絞めれば甲で抑えが利くのでそれによって脱げ易くなる確率は
低いかと思います。

だいぶ長文になってきましたので簡単に触れますが、
婦人靴で行っている方が多いのですが、ハイヒールで足が前に滑るということで
つま先にティッシュを詰め込んで、指がそれ以上前に行かないように
されている方がいらっしゃいます。
リフト交換の際にはそれがぽろっと落ちてくる訳ですが。

靴には通常、指先が靴に当たらないように「捨て寸」という
何も入らないスペースを設けています。
このスペースを詰め物で埋めてしまうと、指先が突き当たり
靴の中で常に関節が押し曲げられている状態になってしまいます。

これによって「ハンマートゥ」(画像検索してみてください)などの
指先の変形症状を生じてしまう場合がありますのでお気をつけ下さい。
(ハンマートゥになってしまう原因はそれだけではありませんが)

<状態別サイズ調整方法まとめ>

指周りが緩い、革がダブつく場合 → 前側にインソール
指周りが緩い、羽が閉じる場合 → 前側にインソール+タンパッド
指周りは◎、羽が閉じきってしまう、履き口が緩い場合 → タンパッド
甲の部分がなんか痛い場合 → タンパッド

ちなみに短靴の場合は、全敷きのインソールですと
指周りと甲の部分も窮屈にできるのですが、同時にかかと部分も
浅くなってしまうのでお勧め致しませんが、
ロングブーツやくるぶし丈のブーツですと全敷きも有効かと思います。

以上になります。
市販のアイテムも最近は色々と展開されていますので、
その状態に合わせて適したアイテムを用いることで
ある程度のDIY調整は可能かと思います。

ただ、
私は片側に傾く癖があるからこちら側に傾斜のインンソールを入れて…
ハンマートゥ気味だからこのアタッチメントを指にはめて…
などなど、使い方によっては逆効果になってしまったり、
すでに疾患レベルに達している状態の場合もありますので
安易にパッケージの説明を鵜呑みにせずに、医師に相談された方が
宜しい場合もありますのでお気をつけください。

風邪気味だからとりあえず風邪薬を服用するのと違い、
足の場合はその結果、徐々に変形、歪みとなって現れてしまいますので。

HPアイコンロゴアウトライン

ampersandand at 13:57|Permalink 靴修理