2015年04月22日

壊れてしまうところと、壊してしまうところ。

カカトの内側、すべり革と云われる部分は、
紳士靴ではよくよく壊してしまう部分であります。
「壊してしまう」、壊れたのではなく壊してしまっているのです。

普通に履かれていれば、そんなには壊れないのですが。
BEFORE
0308-26
0308-23
普通に履く、というのは紐靴であれば、履く際にカカトを
靴のすべり革にしっかりと深くあて、甲の部分で
紐をしっかりと結んでやりますと、踵と甲の部分のしっかりした骨で
足と靴が固定されますので、歩行の際に足が前に滑ったり
ということは物理的にはなくなります。

ですので、靴紐を結びっぱなしで脱ぎ履きされている…という方は…。
紐を結んだ状態で履けるということは、履いた状態では
履き口のトップラインはパカパカで緩い状態ですので
足が滑りまくっているはずです。
また、そのような方に限って、履く際には指を引っかけ、
伸ばして履こうとするものです。
0308-24
そうしますと、こうなります。
トップラインが必要以上に伸ばされますので、革が裂けていってしまいます。
自ら日々、靴を破壊しているということです。

足が靴の中で滑りますと、靴の内側を踵や指部分などの
出っ張っている部分で裏革を擦りますので、どんどん摩耗して
直に破れてしまいます。
(小指外側部分などは、ちゃんと履かれていても摩耗します、
 歩行の際に体重が掛かると、屈曲部は横に潰れて(足が)広がりますので
 靴に圧力が掛かりそのように痛みます)

すべり革部分は、表面が擦れているぐらいまでならまだ補修する事により
回復できますが、今回の事例のように、中に入っている月型芯まで
破壊してしまいますと、靴の履き心地、フィット感を
大幅に減衰してしまいます。
0308-22
ただ仕事柄によっては、悠長に座って靴べらでのんびり履いたりする事が
できないこともあります。

そういう方の場合は、履き口の浅いロファーですとか、サイドゴアや
スリッポンなどの比較的履き易い靴も選択肢としては良いのかもしれません。
AFTER
0308-180308-120308-11
履き口部分に縫い目が見えないと思いますが、ちゃんと縫っております。
このように壊してしまう方の場合は、元のような縫い目がでている
方法で治してしまうより、縫い目を隠している仕様の方が良いのでは
ないかと思います。

トップラインの縫い目を擦って切ってしまい、裏革部分がめくれてきてしまい、
状態を悪化させてしまう方が多いようですので、縫い目を隠した
縫製方法で修繕を行っております。

次は、「壊れてしまう」靴になります。

BEFORE
6667
51
アイレットが2つの外羽です。
このようなデザインは、羽部分とつま先部分の2パーツに
なりますので、デザインもシンプルでつま先もシュッとして
目の錯覚で長く見えます。

ですがその分、靴には負担が掛かるデザインでもあります。
どこに負担が掛かるかと云いますと、一枚目の画像、羽の付根の
縫い目部分が裂けているのが確認できるかと思います。

この部分は、閂止め(かんぬきどめ・かんどめ)と云われますが、
かなり負荷が掛かる部分であります。

ですので、この部分だけ手縫いで太い糸で縫い留めたりもします。
今回のような閂止めの位置が高い(履き口に近い)ところに
ありますと、足を入れる際に足が通し難く(入口が狭いということです)
余計にぐっとこの部分に負荷が掛かります。

イコール壊れ易いのですが、ですのでナイロンを挟んだりと
芯材に工夫をして壊れ難くしても良さそうな感じでありますが…。

表革も薄く(1.0mm)、裏革はかなり薄い0.5mmぐらいでしょうか、
でしたのでこれでは壊れてしまいます。
5049
で、ソールもこれです。
これも壊れてしまう仕様です。
革底が減り易いので、その対応としてウレタンソールをレザーソールに
わざわざ嵌め込んでいるソールになるのですが…。

それならばラバーソール、ダイナイトソールにしてしまえばよいのではと、
毎回思うのですが、わざわざ手間ひま掛けて
壊れ易いソールを作るんですよね…。

恐らく、これは消費者もいけないのだと思うのですが、
どこか、「革底が高級なのでは信仰」というのがあるのではないかと思います。
なので、メーカーも全部ラバーにせずに、一部に(踏まず)レザーを
チラ見せさせて、レザーも使ってますようちは、
みたいな感じになっているのだろうと。

AFTER
71
72

画像のように、レザーソールをウレタンソール分凹ませて
組み合わせるのではなく、修理でハーフソールを取付けるように
レザーソールの上に(ラバーソールを)取付ければ、
あんな風に折れることはないのですが。
*オールソールを行っております。

ちなみに、オリジナルはウレタンソールにも底縫いが掛かっておりますが、
ウレタン素材に底縫いを掛けないほうが良いと思います。
劣化した場合には、真っ先に底縫いに耐え切れず
その部分で砕けてしまいますので。
70
それに、凹まして嵌め込む位置も設定が悪い靴が多いような。
嵌め込む境目を、屈曲部分に近すぎる位置で組んでいるものですから
キットカットを折るように、その谷部分で屈曲により折れてしまいます。
もう少し、踏まず寄りにすればいいのにと思います。

でもそうしない理由も分かるのですが。
踏まず寄りにしてしまうと、ちらっと見せるレザーの面積が
減ってしまうので、有り難みが減るからだろうと推測する訳です。

今回のオールソール仕様ですと、レザーソールに底縫いを掛けたから
ハーフソールを取付けておりますので、カカトのゴム同様に
ハーフソールのみ摩耗しましたら、取り外して交換できますので
今後はオールソールの必要はなくなります。
6568
閂止め部分の補修は、内側から周辺に革を宛てがい補強を行います。
(補強部分は、革の段差がないので薄く見えますが、段差になる周囲の部分は
 薄く手漉きして段差がでないように加工してあります)

そして、表側は裂けている部分をまたぐように縫製を
行うしか方法がありませんので、縫い目がある程度目立ってしまいます。
(裏側補強の革も一緒に縫いが掛かります)

閂止めは、立ったまま突っ掛けるようにして履かれたりしますと、
通常の設定の靴でも、同様にぐっと負荷が掛かりますので
壊れ易くなりがちですので、框などに腰を降ろして
ゆっくりと履かれてみてください。

もう一例、壊れる事例をご紹介しようと思いましたが、
長文になってしまいましたので、また機会がありましたら
ご紹介させて頂きます、長文失礼致しました。



ampersandand at 00:00│ 靴修理