2015年08月16日

TUMI 修理専門店ではないのだけれど… リペアトラウマ篇

TUMIの修理も定期的にやって参ります。
なんとかの法則ではないのですが、一件ご依頼がありますと
立て続けに2件3件と、TUMI祭りが定期的にございます。

持ち手の革巻交換とショルダーベルトの肩当て部分の合皮交換。
肩当て裏面はなぜか合皮なんですよね…。

本体は防弾チョッキに使用されているというバリスティックナイロン、
持ち手部分は手馴染みの良いレザー、そして肩当て裏地はなぜか合皮…
なぜなんだTUMI… なぜなんだぁーー。
BEFORE
こちらは二つ折りのシンプルな革巻タイプ。
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こちらはレザー部分が変質してしまっております。
硬化してしまい剥がれている部分もあります。

剥がれてきてしまったので、瞬間接着剤で固めている部分も…。
たびたびお伝えしておりますが、瞬間接着剤でのDIYリペアされる場合は
その後のリペアは出来ない可能性(または費用が増加)することを
念頭にしていただいて行ってみてください。
(後に修理に出されるのであれば、やらない方が賢明です)

市販の瞬間接着剤は、接着ではなく物質を硬化させて固定していますので
その部分は柔軟性を失ってしまい、その後に割れてくる可能性があります。
今回も若干、ナイロン部分まで侵されておりましたが、ぎりぎり大丈夫でした。
下段の持ち手は経年により擦切れてしまっている症状です。
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持ち手周辺部分を革で覆う仕様のモデル。
こちらの仕様のほうが手間が掛かりますので費用は掛かります。
(どちらかを選択できるという訳ではなく、元の仕様で交換となります)
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肩当ての表部分、こちらは革になっております。
で、裏面が謎の合皮仕様。
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グレーの生地に見えますが、この表面にはもともと黒い合皮の皮膜が
覆っていたのですが、劣化して粉状になりYシャツやスーツにこびり付くという
厄介な現象を起こします。
ですので、恐らくご自身で全て擦りとり、しばらく使用されて
いたではないかと思われます。
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それぞれ分解していきます。
分解する時に使用するのがこの道具、名前お分かりでしょう?
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裁縫道具のひとつですが、糸を切ってゆく道具になります。
小学生の家庭科の授業にて、エプロン作りの際に
間違って縫ったところを先生に解いてもらったときが
わたしの「リッパー」との出会いでした…。

という回想は置いておきまして、作業を進めてゆきます。
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革のパーツを裁断してゆきます。
このパーツも毎回型紙を製作して裁断してゆきます。
同じ仕様であれば同じだろうと思っておりましたら、それぞれ使用により
微妙に寸法が変わってきておりますので、毎回微調整をしつつ型紙作りからに。
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今回の仕様は端の部分が折込仕様でしたので端を漉きます。
ちなみに周囲が5.0mmずつ大きくなっております。

色が薄くなっている部分が漉いた部分となります。
上段の画像/銀色の線が仕上りラインになります。
ですので幅を10mmで漉いて5.0mm折り返しますと
仕上りの大きさになります。

10mmの漉き部分は、端に向かって斜めに薄く漉かれておりますので、
5.0mm折り返す事で、もともとの革の厚みになるという事です。
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挟み込んでいる白い帯は、伸び留テープになります。
今回は無くても良いのですが、ラインを綺麗に出す為と、
補強も兼ねてサンドしています。
靴の履き口部分にも使用されております。
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二つ折りの持ち手部分も内側に折り込んでいきます。
当店で使用する革は、オリジナルより少し厚めを使用しておりますので、
折り込む部分も同じ厚みで畳んでしまうと、持ち手革部分が分厚く
なってしまういます。

ですので、手に触れる部分の革は元の厚みにし、
折り畳まれる内側部分は薄くなる様に幅を調整して革を漉いておきます。
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これらの部分漉きの作業は手間ですので、
その都度巻き込まれる距離を確認して、革を下ごしらえしなければ
なりませんので、修理店によっては薄い革をそのまま巻いてしまう
場合がありますし、既製品でもやはりそのように行っている製品が
しばしばあります。
(TUMIもそうですが、TUMIはそこそこの厚みの革を折り込んでおります)

ただ、このような作業をやるかやらないかで結果的には
耐久性の違いになってゆきます。
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持ち手の場合は、新たに縫ってゆきますのでピッチが狂わない様に
ひと針ひと針縫ってゆきます。
二つ折り部分は、厚いナイロンが二枚と革が四枚が重なっており、
厚みが10.0mm前後ありますので、八方ミシンの送りがほとんど効きません。
ですので、手の感覚でピッチが均等になるよう押す感じで縫い進めます。
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肩当ての縫製は、表面の革部分に元の縫い目がありますので
その縫い目をひと穴づつひろって縫い進めます。
ですので、メーカーで縫った縫い目がよれていれば、それに添って
縫いますのでよれてしまいます…。
よれない様に修正してしまいますと、もとの縫い穴が
別に残ってしまいますので。
after
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続いてこちらのTUMI。
こちらは先ほどと同様の二つ折りのタイプ。
まずはバラします。
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他店にてすでに一度修理されているということでしたが、ムムム…。
革が薄っぺらいですね… 0.5mmぐらいでしょうか。
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0.5mm…この厚みの革で持ち手の革を巻き直すというのは…。
ちなみに当店ですと約1.5mm、TUMIのオリジナルだと1.0から1.2mmぐらい。
0.5mmであればそのまま漉き加工せずに巻いてしまっても
段差などに影響ありませんし、持ち手の厚みも抑えられるので
ミシン掛けも楽なのですが…。

婦人靴のピンヒールなどに巻いてある革が0.5から0.8mmぐらい。
ですので、ヒール巻き用の革を使って巻いたのでしょうか…。

お察しの通り、それではすぐに擦切れてしまいます。
物理的にも単純に耐久性で1.5と0.5mmでは3倍違ってきますから。
このあたりは仕上り時点で見栄えが同じでも
使っていくうちに分かる部分ですので、補修費用だけでは
判断が難しいかと思います。

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前回の修理で、縫い目もヨタヨタになっており、
仕上りに不満があるとのことでした。

ヨタヨタのせいなのか、バラしてみますと縫い目がぐちゃぐちゃになっており、
所々の革が裂け始め分裂し始めております。
これをそのまま巻き直しても、表面がボコボコしてしまい
綺麗に仕上らないような… どうしたものか。
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今回の補修で、二つ折りの持ち手から、折らずにフラットな仕様に
変更できないかということでしたので、凸凹/裂けの補強も兼ねて
ナイロンの補強テープでぐるぐるとテーピングしてしまいます。
これで、表面の凸凹は落ち着きますし、補強にもなりますのでよろしいかと。
after
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フラットにして両面から革を巻きますとゴツくなりますと
お伝えしましたが、ゴツい分には尚結構ということでした。
結果、予想より頑丈な仕上りになったと喜んで頂けました。

ちなみに今回のご依頼は、他店でのぺらぺらヨタヨタの修理で、
リペアトラウマになってしまったようで、
修理にだすかどうか、ご来店の際もまだ悩まれていらっしゃるようでした。
またこの店でも同じようになったら…と。

わたしの場合は、その状態よりうまく出来ないと判断した場合は
正直に「できません」または、こうこうこうなりますとお伝え致します。
後で、がっかりされるのも嫌ですし、怒られるのも嫌ですし。

ですので、リペアのリペアの場合は、
いつもよりプレッシャーはかかりますが、結果
治して良かったですと云われますと、
こちらも治して良かったですと。

電気製品のように、壊れた部分と同じパーツを
取り替える訳でなないですし、また、
同様の完成例があることも少ないので、依頼するにも
何を判断材料とするかは難しいと思います。

ですので、なるべくそのような不安が
少しでも軽減出来るような記事が書ければと思う
猛暑な今日この頃…。

こちらの記事もご参考までに。
TUMI修理専門店ではないのだけれど…。 まとめ篇
TUMIの残念なところ 「合皮、ダメ。ゼッタイ。」
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ampersandand at 18:54│ TUMI