2016年07月25日

Crockettt & Jones  Connaughtのオールソール 理想と現実篇

クロケットジョーンズのコノートのオールソールとなります。
彼氏さんの靴を彼女さんがお持ちになられたのですが、
仕様について色々と電話にて彼氏さんに確認をとって頂きました。

旦那さんのを奥さんがと云う場合ももちろんですが、
紳士靴ですと色々と仕様があります。

リフトはダヴリフトかvibramリフトか、チャネルかヒドゥンチャネルか、
半カラスか、ビンテージスチールか…などなど
女性にとっては費用が抑えられて耐久性が高い仕様が、となりますが
紳士の場合ですとそういう訳にも…と。

ですので、相手方に確認をとっていただいてからご持参して
頂けるとよろしいかと思います。
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ソールが摩耗しきって穴が開き始めておりますが、
注目すべくはコバ部分のソールとウェルトの隙間です。
底縫いの糸が完全に切れるとこうなります、パカッと。

常々このブログにてハーフソールのメリットをお伝えしておりますが、
革底のまま履き込んでいきますとこのような状態に
最終的にはなります。

今回は、ちょうど穴が開き始めたタイミングでぱかっとですので
今回は理想的ですが、これがあまり靴底が減っていない状態で
底縫いの糸が擦切れてぱかっと開いてしまうと…

この状態になると接着で固定してもすぐに開いてしまいます。
ですので当店ではオールソールになってしまいます。
(つま先部分であればビス固定で可能な場合もあります)

例えばまだパカッと開いていない状態で、ハーフソールをと
ご依頼される時がときどきありますが、
底縫いの糸が切れている状態ですので、ハーフソールを取付けても
その後、ぱかっと開いてしまう可能性がありますので、
その点をご了承して頂ければハーフソールも可能です。
(開いてしまった場合は再接着不可)

通常は中央部分が摩耗し易いのですが、歩き方によっては
周囲の底縫い部分がいち早く摩耗してしまう方もいらっしゃいます。
ですので、靴底を見て頂いてそんな具合であれば新品時に
ハーフソール/ビンテージスチールがお勧めであります。
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底を剥がした状態です。
何をしているのか云いますと、同じ縫い穴に縫い直す為に
だし縫いの糸をすべて取り除いた結果、
つま先部分の漉い縫いが切れていましたので
部分縫製する為に漉い針で穴を確認している所です。

漉い縫いが切れていたのは出し縫いの位置が悪かったからとなります。
靴学校時代のウェルテッド製法の授業では、
出し縫いで漉い縫いの糸を切らないように注意することと…
と指導があったことを記憶しておりますが…

市販の靴でこのようなパターンが、
だいたい2割ぐらいの靴で生じていたりします。
経験的には、高級紳士靴での頻度が高いような…。

検品するにも、靴の内部の事なので確認のしようがないですし。
ときどきランダムに抽出して靴底を剥がすなどを行えば
発見出来るかもしれませんが…そこまではやらないでしょう。

なので、靴底の設計の段階で寸法に余裕を保たせることと、
出し縫いの職人さんに、ちゃんと指示をしておくことだと思います。

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ピンク線が漉い縫い
黄色点線が出し縫い

上段画像の設定が理想で、下段画像が現実、今回の状態です。
黄色点線がピンク線に掛かってしまっているのが分かるかと思います。
出し縫いは革底を取付けてから最後に縫製するのですが
この時に、内側を縫い過ぎると漉い縫いの糸を貫通してしまいます。

*コノートが全部このようになっている訳ではなく、
 この靴の出し縫いを行った職人さんの、その時の手加減でなっています。

この状態で履いていても通常は大丈夫なのですが、
(稀に糸切れし、ウェルトが外れてしまっている靴もあったり致します)
しかしオールソールの際には、出し縫いの糸を引き抜く作業時に
貫通してしまっている漉い縫いの糸が切れてしまいがちです。

このようになっているかどうかを購入する際に見極めるのは
無理なのですが、例えばウェルテッド製法なのに
極端にコバ(黄色矢印部分)の張り出しが少ない場合などは
起っている確率が高いような感じがします。
(張り出しが少なくても、そうならないように設計されている場合もあります)
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コバの張り出し幅が少ないと、外にはみ出さないように
必然的に内側に出し縫いを掛けるようになりますので、そうしますと
漉い縫いに掛かってしまうようになります。

高級紳士靴で起っている確率が高いかも…というのは
コバ部分の幅を抑えめがちになってきていたり、
手製の場合には、ぎりぎりまで攻込んで仕上げている場合などが
要因だと思います。

ウェルテッド製法でコバを攻め過ぎるという事に
矛盾も感じたりもします。
ウェルテッド製法はそもそもソール交換を前提にした設計なのですが
繰り返し縫い加工する部分の縫いシロ(ウェルト)を、
始めに自ら削って無くしてしまうというのはどうなんでしょうか…。

今回の靴は問題ありませんでしたが、コバの縫いしろが
交換前の段階で殆どないような状態の靴は、
修理不可(またはウェルト交換)になったり、
つま先部分であれば、出し縫いを一部掛けずに
ビンテージスチールを取付ける際のビスで、本底に固定したりする
方法になる場合があります。

無理に縫うと、縫い目が「落ちる」、コバから針が外れて(逃げて)しまい
コバが凸凹になってしまいますので。

ですのでそのようなシビアな設定になっているような靴は
オールソールが必要にならないように、
始めにハーフソール/ビンテージスチール併用仕様の
処置をしておくのも一計だと思います。

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糸に絡ませている黒い糸は、つま先部分は糸のピッチが
細かくなるので、糸を強く引き締めるとその加減で縫い目を引き裂いて
しまう場合もあり、また履いて行く段階でも縫い目に食込みすぎないように
する為の役目を担っています。
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漉くい縫いの補修が済みましたらコルクを充填。
ちなみに、底がぱかっと開いてしまったら再接着不可という理由ですが
ご覧のように殆どがコルクで占められております。

コルクには本底が剥がれないように留めておく硬度はありませんので
その周囲に見えるウェルト部分幅の約1.0cm弱の帯状の革部分と
革底を接着する訳ですから、固定出来る訳がありません。
しかも、空いた隙間からちょこちょこ塗布する程度ですし。
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革底を貼付けてウェルトをガイドに削りだします。
つま先は、サービス仕様の強化ラバー埋め込み仕様ですので
出し縫いを掛ける前に一段落としておきます。

こうした状態で底縫いを行えば、かかとのリフト交換同様に
ラバーが摩耗した段階で、底縫いの糸を切らずに部分交換が可能となります。
リフトは耐久性を考慮し、ラバーリフトの選択となっております。
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*追記*
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このように靴の踵を踏んづけてしまいますと、
店主主観となりますが、靴の戦闘力が40%ほど落ちてしまいます。
靴は踵で履くものというぐらいですので。
短靴には靴べらを使ってみてください。

結び目をみると、恐らく靴ひもを結びっぱなしで
脱ぎ履きされている結果だと思われますが、
それですと、どんなにしっかり作られている靴でも…。

毎年のことながら、夏場のわたしの戦闘力も
52%ほどに低下している次第であります。

ampersandand at 21:00│ オールソール