2016年09月27日
押し入れから時代は巡る 鞄修理篇
流行というのは数十年単位で繰り返されているようですが
母親が昔使っていた鞄を、娘さんが押し入れから掘り出してきて
使われるパターンというのは時々ございます。
ひと回り、ふた回りしてちょうど今どきな感じ、ということでしょうか。
しかもそれが壊れていても、治してでも使いたいと。
今回の修理品のようなオーセンティックなデザインというのは
流行に左右されずにいつの時代も使えるものだったりも致します。
BEFORE
フェラガモのネイビーカラーのショルダーバック。
小振りでカチッとしたシンプルな鞄です。
マチ部分の底辺の革が縫製部分で裂けてしまっています。
経年しておりますので革が乾燥しているということと
若干薄めの革が使用されていて裂けてしまったようです。
婦人鞄ですとよくあるのですが、特にこのようなカチッとした
デザインの鞄は、薄めの革が使用されており
芯材の入れ方などで鞄の表情を形成していたりします。
補修の仕方としては二つあります。
マチ部分の革を全取っ替え、または部分補修。
全取っ替えはこの鞄の形状ですと再縫製が難しく、
また経年している場合、劣化により縫製の際に縫い穴が裂ける(芯材が割れる)
分解の際に、パーツを剥がす時に千切れるなどなど不確定要素が多すぎますし、
使われている革は、シボが浅く型押しがされており、
その表面もグレージングされており艶有りですので
同様の革を用意することは難しいです。
また、マチ部分には折り畳まれる際の皺クセが強くついており、
これも癖なのか、芯材を仕込みこのように収まるように
仕上げてあるようにも見受けられます。
ですとこの再現は厳しい感じです。
そしてなにより可能だとしても、費用がかなりお高くなってしまいますので
今回は部分補修がお勧めかと思います。
AFTER
裂け部分をまたぐように革で縁取りを行い、縫製は元の位置より
深めの所で縫い留めます。
反対側はまだ無事ではありますが、いずれ同じようになる可能性がありますので
両側ともに補修致します。
端部分は段差がでないように薄く手漉きし、
繋がりの境目が目立たぬように加工しております。
続いてこちら。
フェラガモのコニャック色のショルダーバック。
恐らく先ほどのネイビー鞄と同じ革の色違いかと思います。
使われている連結金具や底鋲が同じデザインですので
同じシリーズでしょうか。
BEFORE
根革の裂けになります。
鞄修理のベスト3に入る修理案件です。
この部分の裂けは僅かの手間で耐久性は高くなるのですが
なかなかどうして…、既製品は同じ仕様を繰り返してしまうのでしょうか。
持ち手や根革などなど裂ける場合はかなりの確率で
紙の芯材が使われております。
ご依頼品のような20年前?ぐらいですと現在のような様々の
用途の芯材がなかったかと思うので仕方が無いとも思うのですが。
であれば、紙の芯材ではなく革を二重に使うなどで
対処も出来るかと思いますが。
側面を見ると厚く見えるのですが、革の厚みは0.8mくらいで
その両面の間に紙芯材を挟み込んでいる状態です。
使い始めは耐久性はあるかと思いますが、経年や湿気により
ふやけたり割れたりしてきますと…千切れてしまいます。
また縫製のピッチもエレガントなデザインの鞄などでは
細かく縫製してありますが、結果的に縫い目が切り取り線のような
役割になってしまい、今回のように縫製部分で千切れてしまいます。
ですので、例えば同様の仕様でも、この部分の縫い目だけを
ピッチを広げて縫うなどでもコストを掛けずに耐久性をあげることも
出来たかとも思います。
補修の際には十分な厚みの革を両面重ね合わせ、その間には
伸び留めの芯材を挟み込んで縫製致します。
根革の縫製部分は内装側に金属パーツやポケットの
ファスナーなどの障害物がありましたので、針が真っすぐ
落ちずらくなっており、縫い目のピッチも狂うので難儀でございました。
(内装と外装を分解して縫製すれば外装のみに縫製するので
障害物の問題は無いのですが、分解作業が追加になりますので高くなります)
AFTER
一応、娘さんの押し入れからの発掘作業は一旦終了している
とのことでしたので、親子二代使い鞄案件はこちらの二件で終了となります。
引き取りにご来店されたお母様に伺いますと、
これらの補修費用は、すべて母親持ちだということでした。
フフフッと、苦笑いされている感じではありましたが、
どこかうれしそうな感じも。
母親が昔使っていた鞄を、娘さんが押し入れから掘り出してきて
使われるパターンというのは時々ございます。
ひと回り、ふた回りしてちょうど今どきな感じ、ということでしょうか。
しかもそれが壊れていても、治してでも使いたいと。
今回の修理品のようなオーセンティックなデザインというのは
流行に左右されずにいつの時代も使えるものだったりも致します。
BEFORE
フェラガモのネイビーカラーのショルダーバック。
小振りでカチッとしたシンプルな鞄です。
マチ部分の底辺の革が縫製部分で裂けてしまっています。
経年しておりますので革が乾燥しているということと
若干薄めの革が使用されていて裂けてしまったようです。
婦人鞄ですとよくあるのですが、特にこのようなカチッとした
デザインの鞄は、薄めの革が使用されており
芯材の入れ方などで鞄の表情を形成していたりします。
補修の仕方としては二つあります。
マチ部分の革を全取っ替え、または部分補修。
全取っ替えはこの鞄の形状ですと再縫製が難しく、
また経年している場合、劣化により縫製の際に縫い穴が裂ける(芯材が割れる)
分解の際に、パーツを剥がす時に千切れるなどなど不確定要素が多すぎますし、
使われている革は、シボが浅く型押しがされており、
その表面もグレージングされており艶有りですので
同様の革を用意することは難しいです。
また、マチ部分には折り畳まれる際の皺クセが強くついており、
これも癖なのか、芯材を仕込みこのように収まるように
仕上げてあるようにも見受けられます。
ですとこの再現は厳しい感じです。
そしてなにより可能だとしても、費用がかなりお高くなってしまいますので
今回は部分補修がお勧めかと思います。
AFTER
裂け部分をまたぐように革で縁取りを行い、縫製は元の位置より
深めの所で縫い留めます。
反対側はまだ無事ではありますが、いずれ同じようになる可能性がありますので
両側ともに補修致します。
端部分は段差がでないように薄く手漉きし、
繋がりの境目が目立たぬように加工しております。
続いてこちら。
フェラガモのコニャック色のショルダーバック。
恐らく先ほどのネイビー鞄と同じ革の色違いかと思います。
使われている連結金具や底鋲が同じデザインですので
同じシリーズでしょうか。
BEFORE
根革の裂けになります。
鞄修理のベスト3に入る修理案件です。
この部分の裂けは僅かの手間で耐久性は高くなるのですが
なかなかどうして…、既製品は同じ仕様を繰り返してしまうのでしょうか。
持ち手や根革などなど裂ける場合はかなりの確率で
紙の芯材が使われております。
ご依頼品のような20年前?ぐらいですと現在のような様々の
用途の芯材がなかったかと思うので仕方が無いとも思うのですが。
であれば、紙の芯材ではなく革を二重に使うなどで
対処も出来るかと思いますが。
側面を見ると厚く見えるのですが、革の厚みは0.8mくらいで
その両面の間に紙芯材を挟み込んでいる状態です。
使い始めは耐久性はあるかと思いますが、経年や湿気により
ふやけたり割れたりしてきますと…千切れてしまいます。
また縫製のピッチもエレガントなデザインの鞄などでは
細かく縫製してありますが、結果的に縫い目が切り取り線のような
役割になってしまい、今回のように縫製部分で千切れてしまいます。
ですので、例えば同様の仕様でも、この部分の縫い目だけを
ピッチを広げて縫うなどでもコストを掛けずに耐久性をあげることも
出来たかとも思います。
補修の際には十分な厚みの革を両面重ね合わせ、その間には
伸び留めの芯材を挟み込んで縫製致します。
根革の縫製部分は内装側に金属パーツやポケットの
ファスナーなどの障害物がありましたので、針が真っすぐ
落ちずらくなっており、縫い目のピッチも狂うので難儀でございました。
(内装と外装を分解して縫製すれば外装のみに縫製するので
障害物の問題は無いのですが、分解作業が追加になりますので高くなります)
AFTER
一応、娘さんの押し入れからの発掘作業は一旦終了している
とのことでしたので、親子二代使い鞄案件はこちらの二件で終了となります。
引き取りにご来店されたお母様に伺いますと、
これらの補修費用は、すべて母親持ちだということでした。
フフフッと、苦笑いされている感じではありましたが、
どこかうれしそうな感じも。
ampersandand at 12:50│
│鞄と小物修理