2017年09月05日

瀕死のCrockett&Jonesをなんとかする。 オールソール篇

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オールソールでご依頼頂く靴は、それなりに履き込まれておりますので
痛みがある靴は多い訳ではありますが、ここまで瀕死な靴はなかなかです…。
まずはホールカットのCrockett&Jones。
BEFORE
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ご覧のようにかかとが…これでもかというぐらいに傾斜、傾斜しています。
15.0mmあるヒールが完全に摩耗しており、ハチマキまで摩耗しています。
よくどの程度まで減ったらリフトを交換したらいいのか尋ねられますが
だいたい6.0から10.0mm程度、付いているリフトの厚みにもよりますが
一段分減った際が交換目安かと思います。

というのは、構造的に一段分で交換できる仕様になっているということも
ありますし(なっていない靴もありますが)、減りすぎた状態で
履いていますと、靴がどんどん変形してしまいます。

そしてその状態で履いておりますと、身体にも知らず知らずに
影響が出てしまいます。
足首、膝、股関節、骨盤、背骨…それぞれの可動域でその傾きの帳尻を
合わせようとしますので、いずれ…。

摩耗している部分に革を積んで、かかとを正常な位置に置いてみます。
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正常な位置で、つま先側から見てみますと…
すると前側の外側は浮いた状態になります。
かかとが15.0mm以上外側へ傾斜していますので、必然的に歩行の際には
外側へ傾いて歩いていますので、靴がこのように変形しております。

客観的に画像で見てみますと、この状態で履き続けるというのは
身体にまずいという事がお分かり頂けると思います。
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ちなみに、通常のオールソール時期の靴(YANKO)と並べてみますと
履き口を見てみても変形具合が分かると思います。
足は外側に傾いているのに、履き口は内側にひしゃげています。
なかなか興味深い現象です。
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靴底は穴が空き、詰めているコルクが流出しております。
この状態も補修目安の時期を逃している状態です。
(もう一足のクロケットに比べれば、まだ良い方なのですが…)
コルクが流出した状態で、履いてしまいますと中底が割れてしまったり
陥没してしまいます。
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つま先部分も、どこまで摩耗したらまずいかもよく尋ねられます。
ウェルテッド製法の場合、水色の線のラインが
ウェルト部分(3.0から4.0mmぐらい)で、それ以下がソールの厚みとなります。

ですので、こちらのCrockett&Jonesは、つま先に限ってはぎりぎりとなります。
では、ウェルト(漉い縫い)まで完全に摩耗してしまうと
オールソールする場合には、ウェルト交換も合わせて必要になります。
ウェルト交換費用は、10.000から15.000円程度かと思います。
(プラス、オールソール費用と云う事になります)

ウェルトは、ソールを縫い付ける縫い代と云う役割ですので、
その部分を擦り減らしては、そもそもウェルテッド製法の靴の意味が…。
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靴ひもを結びっぱなしで脱ぎ履きされているようでしたので
腰革も必然的に痛んでしまいます。

続いて内羽のCrockett&Jones。
こちらで一番の問題なのは…これは履き方が悪いのではなく、
Crockett&Jones の検品レベルに問題があると思うのですが。
(この状態の靴は最近、多くなってきたような気がします)
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土踏まず部分のコバがギザギザしているのが確認できるかと思います。
これはどのような状態かといいますと、「削り過ぎ」です。
Crockett&Jonesでコバを削っている時に、削りすぎて底縫いの糸が
表出してしまっている状態となります(縫い穴の断面が見えている)。

販売している時点では、もう少しギザギザが目立ってはいなかったと思いますし
ウェルトとソールも隙間が開いていなかったと思います。
ですが、履いていくうちに加重により今の状態になったかと思われます。
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このモデルはヒドゥンチャネル仕様といいまして、
底縫いが見えないように仕上げております。
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画像のように革の端に革包丁を差し込み、革を10mm幅ほどめくります。
その状態でめくった底面に溝を堀り、底縫いを行い
再びめくった革を元に戻す方法となります。

ですので、ギザギザ部分は糸が縫われている位置、
端から5.0mmぐらい余計に削ってしまっている状態ということになります。

またCrockett&Jonesの場合、ウェルト面の出し縫いが、
ウェルト部分に切り込みを入れ、その溝に縫っています。
溝はウィールをあてて、糸が見えないように仕上げています。

ですので、底面とウェルト面、両面において出し縫いの
糸の位置(端からの距離)が確認できない状態ですので、
コバを削る職人さんが、気づいたら… 「やべ!削り過ぎたっ…」
というプロセスなのかも知れません
でも検品でギザギザは気づいているのでしょうから…
どうなんでしょうかね。

また、ウェルテッド製法なのにコバの張り出しを極力少なく仕上げる
という傾向も一部にありますので、それも影響しているのかもしれません。

靴雑誌などで、
「ウェルテッド製法なのに、このコバの張り出しの少なさ!凄い!」
「踏まず部分のえぐりの深さ!凄い!」
みたいな文章を読みますと、
「まぁ、ギザギザしてなきゃいいけど…」と思う、
立ち読みのわたしが…。

ちなみに、踏まず部分をそんなにえぐりたいなら、
ウェルテッド製法とマッケイ製法を併用すればいくらでも
踏まず部分を細くできるのですが…。
Enzo Bonafeの参考記事はこちら

John Lobbですとこんな感じの仕上げ。
矢印部分でウェルトが終わり、踏まず部分はマッケイ製法。
こちらは、踏まず部分を深くえぐりたいというよりは、
ウェルトの厚みを省き、踏まずを華奢に見せたいと云う感じでしょうか。
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ほか、踏まずを攻めるならば、ベベルドウェストという仕様もありますが
履いていくうちに下がって隙間が開いたり、オールソールの際に
ウェルトの質や加工が悪いと強度が心配だったりします。

ギザギザ部分は、ウェルト部分の縫い穴まで削ってしまい、
穴が側面に貫通している状態ですので、その部分は縫えません。
ですので、一般的な補修方法ですとウェルト交換が
必要にもなってしまいます。

なお、現在当店では業務の都合上ウェルト交換は行っておりません。
部分的な漉い縫いなどでの対応であれば可能ですが。
ちなみにウェルト交換はこんな感じです。

ですので、今回の状態ですとウェルト交換が必要ですが、
本体の革の痛み(硬化)具合や、靴の変形など全体的な状態を鑑みますと
ウェルト交換/オールソールの高額な費用を費やすには
ちょっと状態が悪過ぎるということもあり、
ウェルト交換からはお勧めできないかと。

また、お客様的にも「おまかせで」ということでしたので、
以下の補修方法にて対応させて頂きました。

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こちらは靴底が酷い事に…。
コルクが完全に損失しております。
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この位置からみてみますとよくわかると思いますが、コルクがないので
その部分が空間が開いています、その状態で中底を踏みつけて
歩いてしまいますと、コルクがない部分の中底が陥没ということに。
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Crockett&Jonesの中底は靴底の屈曲を良くする為に、中底裏面に切り込みが
入れてあります、牛肉に筋を入れて柔らかくするのと同じでしょうか。
ただし、この筋がかえって中底の割れに繋がる場合もありますので
善し悪しの分かれるところかと思います。
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ウェルト(黄色矢印)がほぼ擦り減ってしまっています。
ただし、ぎりぎり漉い縫いの糸(赤矢印)は効いていましたので、
ビンテージスチールも取り付けるので、つま先の固定にはなんとかなるかと。

それでは、ここまで痛んでいる靴をどこまで挽回できるのか…
果たして結果は。
AFTER
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かかとの傾斜は、靴のねじりを矯正しながら革を積み上げて修正。
つま先部分のウェルトの摩耗は、革でアタッチし元の厚みに戻し
底縫いを行い、ビンテージスチールにてビス固定。0827-1390827-134
土踏まずのウェルトが削り過ぎでギザギザの部分は、
縫える部分は底縫いを行い、念の為にビス固定併用。

ヒドゥンチャネル仕様(オプション)であればビス跡も
分からないように仕上げられます。
ウェルト部分の削りすぎていたギザギザは、そのまま一部残ります。
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ビスの跡は残りますが、これでウェルト交換費用〜15.000円節約できます。
続いてこちら。
0827-1450827-146 0827-1530827-1430827-152できるだけ丈夫にということで、おまかせしますと云う事でしたので、
レザーソール/ハーフソールビンテージスチール併用仕様
リフトも通常より厚いvibramラバーリフト仕様となります。

腰革を擦り切らしてしまう方の場合は、補修をしても再度、
縫製の糸を擦り切らして革がめくれてしまう場合がありますので、
縫い目を表に見えないように仕上げています。

ちなみにかかとを酷く減らしている場合、ちゃんとした位置に
補修し戻しますと、「なんだか、かかとが突き上げる感じがする」と、
おっしゃられる方が稀にいらっしゃいます。

傾いた状態に身体が慣れてしまっていると云う事だと思います。
そうなってしまうと、すでに身体の歪みがでている場合がありますので
お早めの補修をお勧めしております。

こちらの記事もご参考までに。
「Crockettt & Jones  Connaughtのオールソール 理想と現実篇」はこちら
「Crockett&Jonesのシャンクは折れ易いのか?」はこちら
「悲しくなるけど磨きます…*カラス仕様」
「オールソール作業工程詳細はこちら」
「そのほかオールソール修繕事例はHPはこちら」
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ampersandand at 23:39│ オールソール