鞄と小物修理

2018年11月10日

エルベ・シャプリエもやっぱり角は擦れるのです。悲しき角擦れ補修篇

Herve Chapelier repair

当店のロンシャン角擦れ補修記事をお読みになられて
そんな修理ができるのか、ということで
ご近所(静岡)の修理店で修理を出されたら…
とてもとても仕上りが残念なことに…

「ただただ修理に出した事を後悔している…」と、お客様。

そちらでやり直してもらえないかとのこと。
とりあえず画像を送って頂いたのですが…

革の形は指でちぎったの?というぐらいにラインはガタガタ…
もちろん縫い目もレロレロ… 
糸も細いし色もちょっと違うし… 
革も全然合っていないし…

残念…というか巧い下手ではなく、いい加減過ぎるという感じ。
逆にこの腕で仕事をしていて怖くないのだろうかと…。
ぜったいクレームになるだろうにと。

どれだけ酷いか気になるかと思いますが、酷すぎるので
載せない事にしました。
というのは、その画像をみて当店が補修を行なったと
勘違いされるのが怖いからでもあります。

文章を読まずに画像だけさささーと、流す方もいるでしょうし、
画像検索でそれだけ見られて判断されても怖いので。

どんな感じだったかというと、小学生ががんばって修理した感じ、
といえばいいのでしょうか、こういうと小学生ハラスメント
なってしまうかもしれませんが。
小学生の器用なお子さんだったらもっと上手かもしれませんが。

まずは修理されたお店のパーツを取り除いてみますと…
四隅の角にあてられたパーツのサイズがそれぞれ違うー!
これって巧い下手という以前の問題ですよね…
大きさぐらいは小学生でも揃えられますからね。
そう、いい加減すぎるんです。

なので、通常ロンシャン(左端パーツ)で使用している角パーツでは、
前の縫い目がパーツからはみでてしまい間に合わないので
ひと回り、ふた回りとサイズを大きくしてみて
覆い隠せるサイズを検討、結果、ふた回り大きな右端のサイズになりました。
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前の修理店ではこの縫い合わさり目も一箇所も本体と合っておらず、
四隅であっちゃこっちゃいろんな向きで取り付けられていました…こわっ。
この補修は、本体の縫い合わさり目に補修パーツの縫い合わさり目を
合わせるのがポイントでしょうが〜。

お客さんに
「これ向きがあっちゃこっちゃしてませんか?」
といわれたらどう答えるのでしょうか…。

実際に前回の修理店で、ご依頼主さんが修繕された鞄を受け取った際に
仕上りがあまりに酷いので、もっとどうにかなりませんかと怒ったら、

「これ以上は無理です。」

と、いわれたとの事…(費用は前払い…)。
いやいや、無理じゃないでしょうがー(心の声)、…ご帰宅。

しかしあまりにも酷い仕上りですので、これ以上何かされても…
という不安もお客様にはあったかもしれませんね。

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革の色も通常ロンシャンで使用しているものではないのですが、
ちょうど持ち手の色と合う、いい感じの革がご用意できました。

わたしもすべての修理ができるわけではありませんし
仕上りに自信がもてないものもあります。

仕上りに自信がもてない修理に関しては、
(見栄えだけでなく、その後の強度が心配な事も含めて)
お客さんに、「これ、あっちゃこっちゃしてませんか?」
と、怒られたくはないので、
そのような可能性がある修理品の場合は、受付の際に
「当店ではできません」とか、
「ここがこのようになってしまいますが、宜しいですか?」と
デメリットや構造上の問題をご案内し、ご理解の上で受付しています。

こういう仕事をしていると、できればなるべく断りたくはないのですが、
お客様にご迷惑を掛けてしまうので、
ときには「断る勇気」も必要だと思う、今日この頃…。

ロンシャンHPリンク

ampersandand at 17:51|Permalink

母親のセリーヌはどれもカサカサ案件。

若い頃に母親が使っていた鞄を見つけて、
娘さんが使われるパターンはよくあるようで、
しばしば修理に持ち込まれます。

20年、30年くらい経過しているのでしょうか、革は乾燥していて
パサパサですし、当時痛んでそのまま使わなくなっていた
という場合も多いのだと思います。
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ですので往々にしてメンテナンスしなければ
使えない状態だったりしますが、
それでも母から娘へと引き継がれて使われ続けるというのは
皮革製品の魅力の一つかもしれません。

確か以前ブログで書いたかと思いますが、祖父の鞄を
お孫さん(20代くらいの方)が使いたいということで持ち手の製作と、
補色と保湿メンテナンスを行なったブリーフケースの事例もあったかと思います。
そうなると半世紀以上に渡り使われ続けるという感じでしょうか。

今回は同じタイミングで二件ご依頼頂きましたが
どちらも娘さんが引き継ぎました、かさかさセリーヌ案件。

まずはこちらのショルダー鞄。
ストラップベルトの付根が裂けているので補修希望という事でご来店。
しかし状態を見てみますと、やはりストラップ全体が乾燥し
ささくれたり、ひび割れたりしてきていますので
使い続けるにはストラップの製作が宜しいのではということに。
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ストラップの厚みが薄いなぁという印象。
今の時代ですと、この厚みの設定のストラップというのは
あまり見かけません。

製作にあたっては孫の代まで大丈夫な?ようにしっかりとした
厚みの革を使用し補強も行い製作致します。
今回使用する革は、栃木レザー社のバケッタ製法の革が色味も近く、
本体で使用されている革と同じように、エイジングされていく
タンニン鞣しの革ですので歳月の経過とともにより馴染んでいくと思います。

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続きましてはこちらの革紐の巾着鞄。
(中にショルダーストラップが隠れています)
本体のモノグラムの柄と、使われている革が同じですので
先程の鞄と同年代のシリーズの鞄でしょうか。

こちらも本体の革が乾燥してきているので保湿が必要ですが
やはり開け閉め時に引っ張る革紐のダメージが大きいです。
所々でひび割れてきてしまっています。
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80cmの革紐を二本製作します。
まずは紐の太さの設定と革選び。
今回も先程のストラップで使用した栃木レザー社のバケッタ製法の革を
使用しようと思いましたが、革紐状に二つ折りすると色が逃げて
ちょっと色味が薄いかなという印象に。
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ですのでもう少し色が濃い、同じ栃木レザー社のプルアップレザーを
使用することにしました。
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革紐を製作する場合、完成の幅より太い状態で縫製しています。
17ミシンで縫製していますが、抑えの部分が車輪といって
5.0mm幅の車輪(丸いパーツ部分)で抑えて縫製していきますので、
完成の幅では抑えが革に載らないので縫製する事ができないからです。

ですので幅広にしておいて縫製してから余り(チリ)部分を
断つという行程になります。
メーカーなどでは上下送りミシン等を使い、細い革紐でもそのまま
縫製できるように、平抑えに段差がついているものを製作物に合わせて
専用抑えを用意しています。

修理の場合は、その都度ご依頼がある製作物に合わせて
それらの多数の専用の抑えを用意しておく事はできないので、
専用パーツが無くても製作できるように工夫しています。
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当店にも上下送りミシンはあるのですが、私自身が車輪の抑えに慣れすぎていて
この平たい抑えが使いづらく出番があまりありません。
(上下送りミシンは10年くらい後になって導入したので)

車輪抑えは面で抑えないので安定はしないのですが、
その代わりに小回りが利くので、靴のアッパーなどで急なカーブが
ある箇所だったり、きわきわを縫製したり、ダブルステッチだったりなど
0.5mm,1.0mm単位で縫製するような場合は車輪抑えが使い易いです。

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上下送りミシンも使い易くなるように、抑え部分を削ったりして
カスタムしてみてはいるのですが、抑えと針の位置関係が見えづらく
手が遠のいています。
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ちなみに当店の上下送りミシンは、YAKUMO社製を使用していますが、
すでにこのメーカーは無くなってしまったようです(JUKI社に吸収?)。

このミシンは製造から50年以上経過しているようですが
中古で購入しているので、私で何代目なのかなと。
50年経過していても代々メンテナンスされていたようで
とても綺麗な状態です。

ちなみに私が所有しているミシンで一番古いミシンは
SINGER社の八方ミシンになりますが、HPのアイコンで登場しているあれです。
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100年ぐらい前に英国か米国辺りで製造され、色々な職人さんに
使われ続けて今は私の手元におります。
使えなくもないのですが、すぐに調子が悪くなるので
自宅押し入れにひっそりと隠居して頂いております。

当店で現役で活躍している八方ミシンは、国産のSEIKO社のものが
(国産の八方ミシンはSINGER社の八方ミシンを手本に国産されたようです)
受付の後ろに鎮座していますがこちらの数十年ものになり。
ときどき「オブジェですか?」と間違えられますが、現役です。
確かこちらは何年か前に製造終了になったかと思います。

靴を製作する道具もそうですが、昨今どんどん製造終了している次第です…。
靴の道具は製造終了というよりは、作れる職人さんが
ぞくぞくと高齢の為に引退してしまっている、というほうが
正しいかもしれません。

ミシン話に話が逸れてしまいました、すみません。
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革の余り部分を裁断後、カット面は角が立っていますので
縁を磨いて断面の繊維を絞めて仕上げています。
革の太さが適正になったので、革紐のアジャスターパーツも効くようになり
入り口部分をくしゅっと絞る事ができるようになりました。

革製品全般にいえる事ですが、一旦表面にひび割れが生じてしまいますと
その状態で保湿しても、元の状態まで復活させる事は難しいので
日頃からの保湿メンテナンスが重要となりますので、
痛んでからではなく、日々のお手入れを心掛けて頂ければと思います。

といっても、ミンクオイルは使わない方が宜しいかと思います。
レザーローションなどの保湿製品をご使用ください。
以下の製品が使い易いかと思います。


[コロンブス] columbus ブリオクリーム BRILLO (ムショク)



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2018年10月30日

ショルダーバックをリュックにカスタマイズ篇

ときどきトートバックやショルダーバックをリュックでも
使えるようにカスタマイズできないかとお問い合わせ頂きますが
仕様や費用面などで折り合いがつかず、なかなかご成約には
至らない事が多いのですが、
今回は紆余曲折ありましたが、なんとかご希望の感じに仕上げる事が
できましたのでご紹介させて頂きます。

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A4サイズぐらいでマチが5.0cm程度の薄い紙袋のようなショルダー鞄。
(実際に素材は紙を加工したものらしいのですが)
上部についているストラップを外してリュック仕様にできないかと
ご依頼頂きました。

いわゆるリュックサックのようなスポンジ入りの
ストラップがご希望とのこと。
参考になる商品の画像を添付して頂き、実際に今使われている
リュックのストラップの長さを計測して頂きました(郵送依頼)。

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リュックのストラップの取付けに都合のいいように
背面上部にはナイロンベルトが縫い付けられております。
すでに取り付けられているショルダーストラップを取り外し
その部分にリュックのストラップを取り付けます。

肩当部分には太いベルを使用する予定でしたが
カーキ色はあまり需要がないようで太いサイズの展開がなく
丁度在庫でストックしていた倉敷帆布を使用して製作する事にしました。
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鞄自体はボリュームのあるものではないので、ストラップはあまりごつく
ならないように、5.0mmのスポンジを帆布で包む事にしました。
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鞄に縫い付けられる部分にはナイロンを挟んで補強しておきます。
帆布は折り込んで尚かつ両面重なるので強度は充分かと思いますが
念の為の補強です。

リュックの修繕で多い事象はこの上部の付根部分になりますので。
生地が避けてきたり、縫製が解れてきたりと。
このあたりは修理業務で得た知見を製作に活かしています。
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今回の製作で一番心配だったのが、スポンジ入りの肩当パーツに
ナイロンベルトパーツを合わせてクロスに縫製する部分でした。

8号帆布生地2枚/スポンジ5.0mm/ナイロンベルト3重
これだけ重なっている部分で、尚かつ間にスポンジが入っていますので
縫製の際にはスポンジが沈んでいきますので、
糸調子が狂っちゃうよなーと心配でした。
リュック003

本番を縫製する際には同じ条件の重なりパーツを用意して
試しに縫製し問題が無い事を確認してから縫製致しました。

新規での製作ですとこんな感じで、形状の試作サンプルはもちろん
糸調子や縫製可能位置かどうかなど、部分的に試作確認する必要が
ありますので手間もかかりそれなりに費用がかかります。

いちいちの試作は手間ですが、綺麗に仕上るかどうかは
このような見えない手間が重要となります。
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リュック01リュック02リュック00

ご郵送後
「気に入って家の中で背負っていたら、息子にいつまで背負ってるのと
 笑われてしまいました 」

とのこと。
通常は息子がランドセルを背負って…という感じですが
喜んで頂けたようでよかったです。

リュックにする場合は、製作の可否や費用などは本体の形状が
大いに関係してきますので、どれでもできるという訳ではありません。

今回も下側の本体取り付けベルト部分については
マチが狭くミシンが届かない為、ビスにて固定しています。
最終的な可否は現物判断になると思います。

ここ数年、冬場以外はリュック生活を送っています。
両手があくのでいいのです。
使っているのは15年くらい前に購入した吉田鞄ですが
やはり私の職業柄、知人にそれ作ったの?といわれる事があります。

知人に気まずい思いをさせない為にも、
リュックを作ろうかな…と思う今日この頃…。

ampersandand at 19:13|Permalink

2018年10月05日

ロンシャン修理専門店ではないのだけれど… 角擦れ篇

ロンシャンのル・プリアージュは、現在恐らく5種類ありまして

・ナイロン素材の ル・プリアージュ ナイロン
・ストラップが付いたナイロン素材の ル・プリアージュ ネオ
・レザー素材の ル・プリアージュキュイール
・ナイロン素材でロゴの刺繍が入った ル・プリアージュ クラブ
・シーズンコレクションの ル・プリアージュ コレクション

これ以外にもそれぞれのシリーズでカスタマイズできるので…

お問い合わせの際は、「ロンシャンの角が擦れて…」と
どれもロンシャンという括りでまとめられてしまうのですが、
ル・プリアージュナイロンシリーズ以外は、
角の補強に使用する革の色が本体で使用されている革に
似た革のご用意できるかどうか分かりませんので
郵送でのご依頼の場合は必ずお問い合わせ願います。
ロンシャン180903

今の時点で、レザーシリーズのル・プリアージュキュイール以外は
すべて取り扱いをしていると思います。
キュイールは本体がレザーなので補強することもないので
当分こないと思いますが。

それではここ最近のプリアージュコレクションのご紹介。
最新?のル・プリアージュクラブシリーズ。
革の断面、コバの色が刺繍の色に染められているのが特徴です。
ロンシャン180917
すでに完成している鞄の角部分に革を縫い付けるのは、
モーターのミシンでダダダダッとはいきませんので、
場所が場所だけに一目一目、車輪を手回しで回しながら
針を落として縫製しています。
使用する糸もオリジナルと太さを合わせ、
色もそれぞれ取り寄せて使用しています。

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ロンシャンクラブ01
ロンシャンクラブ00
ロンシャンクラブ02
コバの色はレモンイエローなので、四隅の角補強の革もレモンに染めます。
使用した革は「芯通し」といって革の内部までネイビーに染まっている
革を用いたので断面もネイビー。

ネイビーの下地に直接レモンイエローを塗布しても
色が透けてしまい沈んだ黄色になってしまうので、
始めにホワイトで染めてからレモンイエローを塗布します。

レモンイエローと云っても同じ色はないので、イエローとキャメルなどを
混色して色を合わせています。
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郵送でのご依頼でしたので到着するまでどんな色なのか
分かりませんでしたが、近い雰囲気の革がご用意できました。
色物というのは、画面上で確認しても実物と異なる場合がほとんどなので
現物確認するまで取り扱ったことがないカラーについては
同じ雰囲気の革がご用意できるかご案内できません。

続いて猫、シーズンコレクションでしょうか。
写真を撮っていると、なんだか帽子をかぶったやんちゃな雄猫に
見えてきました。
こちらのお客様は前回ナイロンシリーズのレッドを同じく
角補強されて今回は猫も。

すでにプリアージュを使われている方は、すぐに角が擦れる事を
経験済みなので、新しく購入した段階で新旧合わせて
革補強をご依頼頂く事が多いです。
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ロンシャン180921ロンシャン180922ロンシャン180920

続いて定番のル・プリアージュナイロンシリーズ。
革がブラウンでコバはブラックに統一されています。
オーダーでカスタムされています、ナイロンのコンビカラーにイニシャル刺繍。
取り扱いが多いので、わたしもだんだんロンシャン通になってきました。
AFTER
ロンシャン180923ロンシャン180924ロンシャン180925
ナイロンコンビ・イニシャル刺繍無しタイプ。
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こちらはナイロンコンビにエッフェル塔の刺繍モデル。
ロンシャン180911ロンシャン180910ロンシャン180912
そしてこちらが定番のベーシックなモデルとなります。
ロンシャン180909ロンシャン180908ロンシャン180905ロンシャン180906ロンシャン180907

補修費用などについてはHPをご覧下さい。
ロンシャンHPリンク


ampersandand at 14:04|Permalink

2018年07月04日

続 • TUMI 祭り 黒い悪魔とリュック篇

残念ながら赤い悪魔のベルギーに負けてしまったサムライブルー…。
録画したのでまだ観てはいないのですが、ロスタイムでって…くぅ〜。
ブラジルとベスト8とで戦って西野監督が再び勝ってしまうという
マイアミの奇跡は、奇跡ではなかった的なストーリーを考えていたのですが。

ではここからは、黒い悪魔と私との絶対に負けられない戦い篇となります。
TUMIをお使いの方なら誰しも一度は戦った事がある黒い悪魔…。
それはじわじわと攻撃を仕掛けてくる、そう、あれです…。

それは合皮、劣化した合皮が粉となって
ロスタイムに次から次へと波状攻撃を仕掛けてくるのでした…。

「あれなんか汚れているよ背中…」

なんて同僚に指摘されたりするのでしょうか、
はたまた帰宅後にジャケットを脱いでみると、
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「なんじゃこりゃ」と、

松田優作バリの「なんじゃこりゃ」を吐いたりしたのでしょうか。

今回のご依頼品はTUMIのリュック。
何処を治すかというと、ストラップの裏地部分。
ストラップの裏地部分にわざわざそこだけ合皮が使われているんです。
「なんじゃこりゃ」ですよね、わざわざ身体と直接触れる部分で
湿気を帯びやすいところに合皮を用いるのなんて。
でもTUMIにしたらこれはいつもの仕様なんです。
ビジネス鞄のモデルでも、付属のストラップの肩当ては何故か裏面が合皮。
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肩当てならその部分だけ合皮を剥がして革に交換してしまえば
容易く交換できるのですが、リュックのストラップとなると…
ストラップの下側はメッシュのナイロン生地なので
そのまま上側もメッシュにしとけばいいじゃんかと。

そこを謎のこだわりで合皮を使いたがるTUMI。
そのこだわりを変えないが為に、修理と称してしばしば当店を
ご利用頂けているという利益相反な文章になってしまうのですが…。
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表面はいつものように革を使っています。
しかもわざわざ斜めに切り返しをいれている。

さぁどうしたものか…。
普通に考えたらストラップを外して新しいものに差し替えるという方法と
合皮部分の面に革で覆ってしまうと云う感じでしょうか。

ちなみに合皮部分だけを外して交換というには、
このストラップはわざわざ、革と革とナイロンメッシュと合皮の
四パーツを斜めに切り返しで縫い合わせてあるので、これを一度分解して
再度、縫製し直すというのは現実的ではありません。

そしてそれを行うには、ストラップを本体から分離しなければ
ならないのですが、本体の部分にファスナーやら蓋のパーツやら
側面パーツ、胴パーツなどと一緒くたに縫い合わせられているので
この部分を分解するのもちょっと現実的ではないかなと。
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「現実的ではない」というのはできないという事ではなく、
やってやれない事はないが、分解、組み立て費用のほうが
掛かってしまったり、また素材的に再縫製すると解れやすい
同じ位置で縫製できない可能性があるなど、
補修部位以外のことで費用や問題がでてしまうという状態になります。

お客さまとどうしましょうかね〜なんてお話ししておりましたら
お客さまが、カバーみたいなものをつけられないかと。
始めは、合皮部分にくるっと革のカバーで巻いて、ホックボタンで
固定という感じから、それでは靴下のように革のカバーをストラップに
通す感じでということで話が盛り上がり、その方向で進める事に。

しかし盛り上がったはいいが、実際に不定形のストラップに
ぴったりと靴下を履かせられるのだろうか…
と、お客様が帰られてから、やや心配になる店主なのでした…。
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そういう時は、頭で考えていても私の右脳では処理能力の限界があるので
アナログに手を動かしてみるのが結局は手っ取り早いですね。
ストラップの型採りを行って裁断型をつくり、
試作用に革でまずはあたりをつけようかと。
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水色のリザード型押しの革なので、使い道がないので試作用になっています。
縫い割り縫製したら、くるっと脱いだ靴下を戻すように裏表反転。
断面が電話のマークみたいです。
それでは恐る恐る通してみます…
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どんぴしゃなんですねぇ。by じゅんいちダビッドソン。

三回くらい試作しないと合わないだろうなと思っていましたが
わたしもそれなりに腕が上がっているようです。

長さも筒径もジャストなんですねぇ。
筒の太さが変化して尚かつうねうねしているので、ちょっとこの方法は
無理かも(お客様には駄目な場合もあるということで)と思っていたのですが、
やってみると、

どんぴしゃなんですねぇ。

では本番なんですねぇ。
試作より本番の革の方が0.6ミリ厚いので、黒革を同じ厚みに
漉き機で漉いていきます。

0.6mmでも直径にすると、左右で合計1.2mmになるので
直径×3.14だと、4.0m弱円周が増える事になってしまうので
ぶかぶかになってしまいます。
実際は内寸になるので問題ないかもしれませんが、
作り直しは嫌なので、試作と同じ設定で。
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この抑えの金具と下で回っているドラムの刃の隙間を通ると
その隙間の分だけ革が薄く漉かれていきます。
あまりこのぐらいの大きな革をこの漉き機では漉かないのです。
通常は、革と革が合わさる10mm幅だったりとか端の部分を漉くのが
メインな機械ですねぇ。
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試作と同様に革の靴下を履かせていきます。
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根本まで通したらあとは縫製して固定になります。
固定は付根部分で通常とおり横にたたたと縫い目をいれて
しまおうと思ったのですが、リュックのストラップの付根部分は
一番負荷が掛かりやすい部分となります。

荷物の重量もありますが、荷物を取り出そうと片側で背負ったり、
背負う際にもう片側をぐっとひっぱられたりなど。

ですのでリュックの付根部分でストラップが裂けてきて
修理ということもしばしばあります。
(修理は構造的に難しい場合もあるのですが)
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ですので、その付近に新たに縫い目を入れてしまうのがちょっと怖い。
縫うと云っても、針で穴をあけて貫通させている訳なので
見方を変えれば切り取り線みたいなものです。

なのでしばしば鞄のストラップの根革や、持ち手の付根部分の
縫い目で負荷に耐えられずに革が裂けてしまうということを
実際に経験されていらっしゃる方もおいでかと思います。

ですので、あとあとの包まれたストラップのメンテナンスが
必要になった場合のことや、それらの縫い目の負荷も考慮し、
根本とエンド部分にはステッチをワンポイントで入れる事で
固定する方法に致しました。
結局、この革の靴下が下がってこなければいいだけなので。

こういった靴下を履かせるようなお初の補修事例は、
これまでデータがないので、何が良いのかが
その他の経験値から判断して決めていくしかありません。

ですので、通常とおりに付根に横一列縫製してしまっても
問題ないのかもしれませんが、ここは後々問題が起こったとしても
挽回ができる仕様で補修しておく事がベターなんですねぇ。

AFTER
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背負って持ち上がると、後付け感がでないように
付根が本体に入り込んで見えるようになります。
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薄々お気づきかもしれませんが、途中から語尾が
じゅんいちダビットソン風になっていたんですねぇ。
ワールドカップウィークなのに、あまりTVで見かけない
じゅんいちダビットソン。

本田選手も代表引退ということなので、ダビットソンはこの先
大丈夫なんでしょうかねぇ…と思う今日この頃。
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