バケッタ製法

2018年10月01日

修理製作のお店…というけれど。 注文靴篇

当店の屋号は、「靴と鞄の修理製作のお店 アンパサンド」
になりますが「修理」業務が忙しく、いっこうに
「製作」が行えていない現状であります。

また合間をみて製作してはいても、日々の業務でそのまま月日が
流れてしまい撮影した画像が行方不明で記事を書けず
そのままお蔵入り…ということも。

開業当初の目論みでは、修理依頼はそんなにこないだろうし、
ほそぼそと日用品などを製作して食い繋いでいこうかな
なんていう計画でしたが、
有り難いことに近隣や全国、はたまたときどき海外からも
郵送にてご依頼頂いている次第であります、感謝、感謝。

で、そんなこんなで製作も一応しているよアピールを兼ね、
忘れないうちに、最近の仕上った品を記事にしておこうと。
最近のといっても随分前にご依頼頂いた品になる訳ですが。

まずはデザイン。
デザインと云っても今回は店頭にあるサンプルをベースに
パターンオーダーにて製作となりました。
使用する革や飾り穴や鳩目の有無やソールなどなど
細々と選択して頂くという感じです。

サイズサンプルを幾つか履いて頂きサイズを確認。
店内でちょろちょろ歩いても感じは分からないので
そのままご近所を歩かれて確認して頂いてもらいます。
パターンオーダーでも、履き口が当たる場合など大掛かりな
修正でなければ足に合わせて調整可能です。
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靴型にデザイン線を描きまして型紙を製作します。
靴型は三次曲面なので、これをパーツごとに平面に置き換える作業は
面白くもあり難しくもありという感じです。

立体を平面に起こし直したら、仮アッパーを製作し
つり込んでバランスを確認します。
羽の長さやキャップの大きさなどをミリ単位で調整を行います。
今回は二回ほど仮アッパーを製作して本番となります。

なかなか決まらない時は、型紙を直して仮アッパーというのを
何度も繰り返したりします。
で、だんだん目が慣れてしまいどれがいいのか分からなくなるので
一晩置いて翌日の朝に見てみると、初回に作った型紙が
よかったりなんていうこともしばしば。
こねくりまわすより、直感が大事という感じでしょうか。
ただ、他の人から見ればどれも同じ、と見えるかもしれませんが…。
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表革、裏革を裁断しまして組み立ててゆきます。
例えば今回の定番の外羽のデザインでも、裏革のパターンていうのは
生産国やパタンナーによってそのライン取りは結構違っています。

修理品の靴の内側を観察してよく勉強させて頂いています。
スペインのコストパフォーマンスのいい靴などは
とても効率的なパターン採りをしていたりします。

効率的な、というのは美しさというよりは革一枚からどう無駄なく
たくさんパーツを採れるか、縫製作業で手間の掛かる行程を減らせるかなどを
考えられているかという感じです。

私の場合は量産する訳でも、一刻を争うこともないので、
状態の良い部分の革を使い、基本に忠実にそしてちょっとずつ
創意工夫を重ねていくという感じです。
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アッパーを組み立てる前に、中底の準備もしておきます。
中底は既製品ですと、圧縮したパルプ(紙を圧縮成形したもの)が
多く用いられていますが、当店ではじっくりと時間をかけて作られた
5.0mほどあるタンニン鞣しのショルダー部分の革を用います。
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平らな中底を水に浸けて柔らかくし靴型に固定します。
癖付けにタイヤチューブを用いて靴型にぐるぐる巻きです。
タンニン鞣しの革はその可塑性により、形を記憶しながら乾燥していきます。

「可塑性」とは
固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質。
国語辞典より


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平らだった中底がこんな感じで靴底の形状を覚えます。
そして履き込んでいくと、徐々に自分の足型を覚えていくという訳です。
よくコップ一杯の汗が一日で靴の中に蒸発すると聞きますが、
革はその吸排性によりこの湿気を吸い込み、夜脱いでいる時に
今度は排出していくという訳です。

わたしのイメージでは、吸い込んだ湿気が革を柔らかくし
日中の歩行の際の荷重がゴムチューブ代わりに中底を癖付けし
夜の間に中底が、自身の足型を記憶していくという感じなのかなと思っています。
それは本体の革も同じことなのですが。

ちなみに「革底から湿気が抜ける説」という都市伝説については
以前も書きましたが、東京都の皮革機関のレポートにも、
靴内部の湿気の60%は靴の履き口から蒸発、残り40%は
靴内部に残っているとあります。
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内部に残った40%は、革中底や革のライニング(裏革)に
一時的に吸収され、脱いでいる夜のうちに排出されるという
イメージでしょうか。

ですので蒸れる蒸れないに重要なのは、
革底かどうかではなく中底が革であるか、そしてライニングが
革であるか(顔料べったり仕上げではない革)かどうかが重要
ではないかと思います。

靴は何足かローテーションした方がいいというのは、
靴内部に溜め込んだ湿気を排出しきる前に、また履いてしまうと
室内干しの生乾きタオルを、毎日繰り返し使い込むようなもの
という感じですので。

アッパーが完成しましたら続いて靴型につり込みという行程に
なる訳ですが、作業風景の写真を撮り忘れたか、
または行方不明で見つからないので、途中の行程は
割愛しましてここで完成となります。

今回使用した革は、イタリアの伝統的な製造方法のバケッタ製法で
作られたショルダー部分の革になります。
いい具合にナチュラルシボがでていて、履き込む前からすでに
数年履き込んだ風格が醸し出されています。

同様の製法で作られた栃木レザー社のダークブラウンの革と
かなり悩まれておりましたが、こちらの赤味を帯びたブラウンが
手持ちの靴の顔ぶれと被らないというこでお決めなられました。
ソールはリッジウェイソール(ブラウン)仕様となります。

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オーダー品の記事を書いておきながらあれですが、
新規の靴の注文製作は現在は受付を行っておりません。
靴の注文製作自体なかなか修理業務と平行して1人で行うのは
難しいのではないかとここ数年感じております。

ですので、違う形態でどうにかできないかと
日々モヤモヤしている今日この頃…。
鞄も作りたいし、小物も作りたいし、できれば椅子も作りたい…。
今年もそんなモヤモヤさまぁ〜ずな夏でございました。

ampersandand at 18:00|Permalink