2011年07月08日

 『環球網』に掲載された「美外交电文称冲绳人不认为中国是威胁 更讨厌美国人」(アメリカの外交電文によると沖縄人は中国を脅威と思っていないし、アメリカ人をより嫌っている)という記事が大変興味深かったのでこれについて少し。

 まず最初に記事の概略について紹介させていただきます。

 沖縄の人たちは東京やワシントンとは異なり、アメリカ軍の沖縄駐留に反対し続けるのは、騒音問題や一部の米国兵による振る舞いなどが大きな原因だ。

 ただ、「ウィキリークス」が公開した那覇の米国領事館の公電によると、沖縄の人々は、中国に軍事的脅威を感じておらず、その理由としては、沖縄と中国の歴史関係が大きな影響を与えており、沖縄も中国も日本からひどい目にあっており、互いに親近感を抱いている。

 電文は第二次世界大戦期に発生したことに言及しており、特に日米は沖縄を主戦場として戦ったため、双方の軍人及び民間人に大量の死者をだした。沖縄と中国の友好関係は日清戦争以前からあり、その時沖縄は独立国で琉球と名乗っていた。
   
 『環球網』が日本に関して報道するもののジャンルの1つに沖縄ものがあります(以前書いた沖縄独立論などが典型です「中国の琉球独立支持」参照)。そのため最初この標題を見て思ったのは、独立論の変形としての沖縄県民のアメリカ排斥の記事かということです。

 ただ1行目にThe Wall Street Journalとあったので、中国でよくある自国に都合の良いところだけを翻訳したいつものパターンの記事かとも思いました。そこでThe Wall Street Journalの記事を探して見たのですが、実は記事そのものが2パターン存在していました。

 標題はどちらも、”WikiLeaks: Okinawa’s Pro-China, Anti-U.S. Bent”なのですが、1つはJapna Realtime Reportに掲載されたもので、もう1つがChina Realtime Reportに掲載されていたものでした。基本的にこの2つの同じものですが、最後のところが異なります。

 まず、当時沖縄市長候補だった東門氏の、日米両政府はオオカミ少年のようで、中国が何か恐ろしいことがしてくる、してくるかと言うが、何も起こっておらず、沖縄に対してひどいことをして来たのは、日本とアメリカだという発言を紹介しています。

 私的に最も興味が引かれたのが、最後の段落のところで、沖縄が親中的なのは、歴史的要因だけでなく、中国を脅威とすると、沖縄からの米軍撤退が遠のくという意見が紹介されているところです。基本的にリアリストの私としては、この考え方が歴史的要因より納得しやすい面があります。

 これを見てもわかるとおり、『環球網』はChina Realtime Reportを元に翻訳をしたもので、流石は『環球網』という感じです。念のため他の中国語媒体で、どのようにこの記事が取り扱われているか見てみたのですが、『新華網』の「美媒:美外交官评估冲绳人“亲中反美”」(アメリカマスコミ:米外交官は沖縄人を”親中反米”と評価)にはきちんとJapna Realtime Reportに掲載されていたのと同じものが翻訳されておりました。

 実は、相手により記事を2パターン用意するというThe Wall Street Journalの方法はうまいものだなと考えていたのですが、中国政府も媒体によりどちらを翻訳するかを分けており、これもなかなかやるなと思いました。

 私は人は自分の知りたいことしか見ようとしないものだと思っています。つまり自分の嗜好にあう記事を求めるものであり、右とか左だけでなく、センセーショナルなものを好むかとか、理論に重点が置かれたものを好むかなど、人には嗜好があり、それに合致したものを普段から読む傾向がある(それしか読まない)と考えています。

 そのため、より多くの人に記事を読んでもらうためには、いくつかのバージョンを用意したThe Wall Street Journal、愛国主義的傾向が強い『環球網』と、基本的に公式見解を発表する場となっている『新華網』で明らかに翻訳記事を変えてきた中国。

 馬鹿の一つ覚えのように、ありもしない「客観報道」などを目指しているどこかの国の報道機関などより、よっぽどしたたかで手強い相手かと思います。



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凜amuro001 at 22:19│コメント(2)トラックバック(0)沖縄 │

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この記事へのコメント

1. Posted by 高田 亨   2011年07月11日 21:03
この記事にも深く考えさせられました。

一つのメディアが同じことに関して複数の記事を出し分けるのですね。
これは驚きました。
と、同時にそれにきづいてなかった自分が恥ずかしくなりました。

> ありもしない「客観報道」などを目指しているどこかの国の報道機関などより、よっぽどしたたかで手強い相手かと思います

私はジャーナリストではありませんが、どこか「客観報道」が存在すると信じていたので、耳が痛いです。

確かに米国や中国のジャーナリズムは日本より遥かに「大人」だと言う気がしますね。
2. Posted by    2011年07月11日 21:44
>高田 亨 様

 前に書いた様に私は相対主義者で、そもそも客観などというものが存在するとは考えていないので、単にそうした私の主張を書いたにすぎません。

 なかなか難しいのが客観がないのであれば、自分の主張を押しつけるプロパガンダ記事を書くことが良いのかという話にもなりかねないことです。

 ある特定の主張しかプロパガンダ記事を認めないのであれば、問題だと思っていますが、様々な主張に基づくいろいろなプロパガンダ記事が併存できるのであれば、それはそれで良いのではないかと考えています。

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