2011年08月14日

 すこし前の記事になりますが、『環球網』に「日媒:中国网民对日本存在复杂观念」(日本マスコミ:中国のネットユーザーは日本に対し複雑な感情を有する)という記事があり、いろいろな意味で興味深かったものでこれについて少し。

 これはもともと『産経新聞』に掲載された『中国人一億人電脳調査 共産党より日本が好き?』に対する書評を「翻訳」したものです。しかし、何度か既にここで指摘した通り中国式の「翻訳」ですから、いろいろ中国にとって都合の悪いところは削除したものとなっております。


 例えば、中国におけるネットの状況について、前段で触れているところがあります。そこでは、中東政変に触発され、中国でもデモを起こそうとネット上で呼び掛けられた「茉莉花(ジャスミン)革命」について言及しているのですが、当然の如く削除されています。

 そして『産経新聞』らしく最後は「ネット民たちは、教科書や戦争ドラマなどを通じて共産党によって叩(たた)きこまれた「日本イメージ」を変えるのか。本書はその展望の一助となる。」と締めくくっているのですが、これも「本書はその展望の一助となる。」だけが訳されており、他の部分は削除となっています。

 それ以外の部分は概ね正確に訳されているので、『産経新聞』の元記事を見てもらえば良いのですが、それではあまりに不親切なので、概略だけ記載しておきます。

 元々この本は、時事通信の城山英巳記者が、中国で既にネットユーザーが5億人にも達してることに注目し、中国で流行っているマイクロブログ(微博)に書き込まれたものなどから、若者の日本に対するイメージを調べあげたものです。

 それを見ると日本のAVやアニメが好きな若者がいることがわかり、これを受け「微博調査の結果、中国の若者らはジャニーズのアイドルや日本のアニメ・漫画が大好きだが、その一方で南京事件を忘れず、尖閣問題でも断固譲らない。『これはこれ、あれはあれ』という頭脳構造を持つ彼ら彼女らの対日感情は果たして好転するかが、著者の問題意識だ。」とまとめています。

 実際、中国人のアニメ好きについては、百元籠羊氏が「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」で、いやと言う程言及しておりますし、蒼井そらが中国語でツイッターにつぶやいて話題になったこと等は、私も記事を提供させていただいているKINBRICKS NOWでも何度か言及されております。

 私がこの『環球網』の記事を紹介しようと思ったもう1つの理由が、この記事に書き込まれていたコメントの内容です。圧倒的多数が日本に対する悪口で占められており、日本は過去の歴史を反省しないだの、日本のAVは・・・といったかなり見るに堪えないものとなっております。

 あくまで愛国主義的色彩が強い『環球網』を見る方々なので、同じネットユーザーとは言っても、ネットで日本のアニメを喜んで見ている方々とは全く異なる人達です。もしかすると、それがネットユーザーと一括りにされたように感じ、かなりの反感を覚え、こうした行動に出たのかもしれません。

 本当にこれがネットの恐いところで、どうしてもネットでは自分の気に入ったところにしか訪問せず、自分の思考(好み)にあった傾向の記事しか読みません。そのためある意見が表明されていたとしても、その出典はどこかがわからないと、内容を大きく読み違えてしまったり、単なるデマにしか過ぎないものを信用してしまう恐れもあります。

 『環球網』は全くもっていつもどおりで、「翻訳」も都合の悪いところは相変わらず平気で削除するし、コメントを書き込む方もいつもと変わらない日本たたきの意見です。あくまでここに来るのはこうした方々だけなので、こうした意見を持つ中国人がいるのも紛れもない事実です。しかし、言うまでもないことですが、これが全てではありません。

 これは、日本でも中国や韓国に対し、様々な意見を持っている方がおり、いろいろな意見を表明しているのと同じです。中には素晴らしいと思える意見や共鳴できる意見もある一方、もう少し調べてから書き込んだらどうかとか、ここまでひねくれた発想をするかという意見があるのも全く一緒です。



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凜amuro001 at 20:01│コメント(4)トラックバック(0)日中関係 │

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この記事へのコメント

1. Posted by 高田 亨   2011年08月15日 07:26
なるほど、確かにネットは自分の好みのものしか読まない傾向が強いですから、偏った意見を醸造しやすいかもしれませんね。

「ネットが普及すれば情報が豊かになるので皆がバランスのとれた思考になる」というのは現実でないのが分かります。
現実には人間の処理能力をはるかに超えた情報がありますから人が見る世界は晴れ渡って全方向に遠くまでものではなく、逆に曇って身近なものしか見えなくなるわけです。

情報統制が他国よりは強い中国ではその傾向がさらに強いのかもしれませんね。
しかし毎度のこととはいえ、中国人の反日感情を目にするたびに本当に悲しくなりますね。

私ら戦後世代は中国の偉大な歴史と文化には敬意を抱いてきたし、(米国への反発の結果でもありますが)親しみすら感じてきたのにそれと逆の感情を相手が持っているというのは嘆かわしい限りです。
2. Posted by 通りすがり8   2011年08月15日 13:56
マイクロブログやこういった記事のコメントを見ると、すべての中国人に反日と哈日の感情が混在しているように見えるけれど、QQの日本系コミュの反応だとまた違うように思えます。
日本の事を褒めたら同じくらいかそれ以上貶さなければ、逆に自分が非難の対象になりかねないという中国独特のルールがあって、日本のアニメ、漫画大好き層は本音では政治的な意見が出ることを嫌っているのかなと…。実は混在してなくて分かれていて、それほど複雑でもないのかもと最近は思っています。
3. Posted by 凜   2011年08月15日 20:54
>高田 亨 様

>現実には人間の処理能力をはるかに超えた情報がありますから人が見る世界は晴れ渡って全方向に遠くまでものではなく、逆に曇って身近なものしか見えなくなるわけです。

 大変見事なたとえありがとうございました。

 またネットでは、同じような人が集まり、同じような書き込みを見ていると、より過激なものを求める集団心理もあるのかと思います。なかなか難しいものです。
4. Posted by 凜   2011年08月15日 20:59
>通りすがり8 様

 大変興味深いコメントありがとうございます。

 見ていて、個人個人ではつきあう分には友好的なのに、公の発言になると反日的にならざるをえない韓国の例を思いだました。

 中国の場合、国家の統制が変な風にきいており、「日中友好」のタテマエがあるので、状況は多少複雑かと思いますが、興味深い御意見感謝します。

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