2012年01月08日

 昨日(1月7日)から、中国では大学院生の試験が行われており、いろいろなメディアがこれに関することを報道しており、なかなか面白かったのでこれについて少し。


1 受験者数の増加

 『京華時報』によると(考研人数连续3年增幅超过10万 部分成"酱油党")、全国で165.6万人もの方が修士の試験に参加したということです。何でも3年連続で10万人づつ増えており、8年連続で100万人を超えたということですから、この数を見るとさすが中国と思ってしまいます。

 この背景には大学の受け入れ体制の拡充があり、2007年には36.4万人の合格者数だったのが、2011年には49.5万人にまで増えていることが挙げられます。昨年の合格率は大体1/3でしたが、今年も同じ位ではないかと記事では予測しております。


2 醤油党

 ただ『京華時報』では、こうした数字を並べただけでは読者を捕まえることができないという判断がなされたのか、いろいろなことを紹介していました。初めて聞いた言葉ですが、「醤油党」というのがあるそうです。

 これだけの倍率となると全員が今年受かろうと思っているわけではなく、試験がどんなものが見るために参考程度に受けるもので、来年の合格を目指している方等を指すそうです。記事には説明が書かれていませんが、醤油をつくるには1年程度の発酵・熟成が必要なので、そこからつけられたものかと推察します。「打醤油」というネット用語(「自分とは関係ない」という意味)があり、そこからとったものと推察します(御指摘を受け訂正しました)。

 他にも全く勉強していない状態で試験に臨む「裸考」という言葉も紹介されていました。これについては以前紹介済みですので、そちらを参照して下さい(中国の「裸」現象)。


3 大学院進学が増えた原因

 ここまで中国の大学院生が増えた原因ですが、『中国教育網』によると、中国の社会が発展してくるにつれ、専門化が進展し、各部門が求める人材が高度化していること等を挙げております(2012年全国报考专业学位硕士研究生人数增四成)。

 ある意味、模範解答ですが、経済発展にかげりが見えつつある中国でも、好条件の就職は競争が激しくなっています。そのため、学生にしてもより高い学歴を求めるのは当然という流れがあります。


4 ハイテクを使ったカンニング

 さてそうなると何としても大学院試験に受かりたいという者が出てきます。とくれば、カンニングを考える者が出てくるのは世の常で、『現代快報』がこうした状況を報道しておりました(“史上最严硕士考”昨日开考 作弊工具五花八门)。

 消しゴムや腕時計を利用したカンニングという古典的な手法だけではなく、今や電気機器を用いたものもあり、コイン型の小型のレシーバーや、革製の財布が動いて答えを知らせるものなどいろいろあるそうです。


5 大学側の対策

 当然学校側もこれに対し手をこまねいているだけでなく、試験会場に入る前に金属探知機を通らなくてはならず、耳、脇の下、腕などは重点的に検査されるとしてします。記事ではハイテク機器は金属が使われているので、この検査で全て引っかかるとしていますが、本当でしょうか。

 KINBRICKS NOWさんが「日本のカンニング対策はぬるすぎるっ!電子戦さながらの中国試験最前線をご紹介」で中国のカンニング状況を紹介されておりましたがすごいの一言です。こうしたことに対応するため、試験中も公安当局と連携して電波監視を行ったりするそうです。

 『現代快報』が紹介していたカンニング対策で笑ってしまったのが、何種類もの問題を用意する方法です。といっても、試験問題が違っていたのでは公平な能力比較ができないので、試験の内容は同じで、出題の順番が変えてあるものを数種類準備したというわけです。

 ハイテク機器を使ったカンニングは誰かが試験問題を外部に送信し、外部の者がそれを解いて金を払った受験者に回答を送りかえすという方法が一般的です。しかし、問題の順番が受験者ごとに異なっているので、こうした方法は使えません。

 日本でも京大や早稲田の入試でヤフー知恵袋を使ったカンニングが昨年話題になりました。中国の大学側もいろいろ考えたものだと思う反面、こうしたことまでしないといけない現在の受験事情についていろいろ考えてしまいました。



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凜amuro001 at 18:34│コメント(8)トラックバック(0)教育 │

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この記事へのコメント

1. Posted by 通りすがり8   2012年01月08日 19:10
醤油党って打酱油から来てる言葉なのでは?
2. Posted by    2012年01月08日 20:07
>通りすがり8 様

 やってしまいました。ありがとうございます。おそらくおっしゃるとおりです。訂正しておきます。
3. Posted by que   2012年01月09日 13:44
大学院入試に、センター試験みたいな問題をだすからカンニングされるんですよね。
日本語学科卒で日本文学を研究したくても、政治とか英語の問題をとかないといけない・・・。

日本みたいに、面接と計画書だけだと、コネとか裏口入学とかそういう問題がでてきちゃうんでしょうね。
4. Posted by    2012年01月09日 19:01
>que 様

 おっしゃるとおり、中国の大学院の入試試験はこれで院の試験かと思える試験なのが最大の問題かと思っております。

 しかし、これだけの人数となると、論文提出となると読む方も大変でしょうし、御指摘の「コネ」が出てくるので、この形態しかないのではないかと私も考えます。

 今の形態ですらいろいろ、不正とされないコネを利用した不正入学があるのが現状ですから。本当はこっちの方がより大きな問題かもしれません。
5. Posted by que   2012年01月09日 21:56
>この形態しかないのではないかと私も考えます。

ほんと、悲惨な話しです。
中国は多様な人材をすいあげるシステムが、本当に整ってないですね・・・。
英語は全然だけどやたら日本語ができる学生というのは、大学院にいけないんですよね。
日本だと外国語2つ要求する大学院もあれば、研究計画書と面接だけでよかったりする大学院もあり、いろんな人材がいろんな研究をすることができますが・・。

必要な能力を試験するっていうのが本来の試験なはず、研究する能力をみる試験なら研究計画書をみずになにを試験するんでしょうか。
6. Posted by    2012年01月09日 23:23
>que 様

 あくまで私の知る限りの話なので、どこまで一般化できるかわかりませんが、修士だと一クラスが40名というレベルで、通常の授業は本科生と同じく教師の話を聞くパターンでした。

 ただ人数が少ないので、語学などはかなり本気でやらないときつかったのと、日本のゼミのように意見を述べあう場もありました。

 社会科学の場合、中国ではどうしてもある程度回答が決まっているので、多分これで問題なしなのだと思います。
7. Posted by que   2012年01月10日 19:27
中国国内の日本語日本文化のシンポジウムに出席したことがありますが、社会科学系の発表はやっぱり答えがある程度きまってるせいか、本当にくだらないものばかりでした。
毒餃子事件は、大げさに騒ぎ過ぎだとか。

日本語学関係はいいものもおおかっただけに、がっかりしました。

中国の日本語学科にかぎっていえば、
日本語+日本史2単位、文学史2単位、文学作品講読2単位、日本概況2単位、日本経済2単位ぐらいのものですから、はっきりいって専攻がないのと同じなんですよね。
8. Posted by    2012年01月10日 21:27
>que 様

 大学によっても違うのでしょうが、私の知り合い(専攻は忘れました)は修士課程在学中、毎日授業に出ておりました。正確な単位数は聞いたことがありませんが、1日最低2時限位は出ていたと記憶しております。

 当然授業は講義を聴くだけで、本当にそれで修士かと思ったことがあります。

 彼の場合はあまりに極端な例でしょうが、そのような状態なので、当然1年目は論文を書く時間などは無かった様で、結構面食らった記憶があります。

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