2012年01月09日

 成人の日にあわせて新聞各社がそれにちなんだ社説を公表しておりましたが、いろいろ思うところがあったのでこれについて少し。

 ちなみに参照したのは以下の三紙です。『読売新聞』「成人の日 苦難の時こそ好機と考えよう」『朝日新聞』「成人の日に-尾崎豊を知っているか」『毎日新聞』「成人の日 おおいに発言しよう」となっております。


1 『読売新聞』の社説

 最初にざっと各社説を紹介すると『読売新聞』は就職についてがメインとなっております。非正規雇用の増加などに言及したのち、「学生ならば、しっかりと将来を見据えて勉学に励み、社会人ならば、よりやりがいと責任のある仕事を志向しないと、自分を生かせる職場は得られない状況だ」と続きます。

 その上で、震災の中「救援に駆けつけた自衛官、消防隊員や医療関係者、交通網の復旧にあたる作業員や駅員、物資を運ぶ運転手、必需品を絶やさずに売り続ける店員」などの姿を見て、多くの新成人が「社会や人から感謝される仕事をしたい」と考えるようになっていることを紹介しております。

 そして「企業の規模や知名度ではなく、「社会や人から感謝される」ことを基準にすれば、素晴らしい職業に出会う機会は必ずある。多少の回り道をしても、多くの経験を積み、可能性に挑戦するべきだ」とまとめています。


2 『朝日新聞』の社説

 『朝日新聞』は尾崎豊を持ち出し、かつては「彼の反骨精神」「大人や社会への反発、不信、抵抗」から、「『ここではない、どこか』を探し、ぶつかり、傷つく」「その心象が、若者の共感を呼んだ」ことを前提に始まります。

 ところが、最近の若者はこれに対し、「批判的な意見が増えている」ことを元に、古市憲寿氏の意見を紹介します。つまり、「将来の希望が見えないなか、未来を探すより、親しい仲間と『いま、ここ』の身近な幸せをかみしめる。そんな価値観」をもった怒らない若者というわけです。

 その上で、「世界の政治は若者が動かし始めたと説き、若者よ当事者意識を持て」と最後にまとめております。


3 『毎日新聞』の社説

 『毎日新聞』は若年層の就職難など現在の若者をとりまく困難に触れた後、「そんな中で、昨年は若者たちの動きが目立った。圧政を倒して「アラブの春」を呼んだのも、ニューヨークのウォール街など各地で格差への異議申し立てをしたのも、若い人たちが中心だった」としております。

 そして、「エネルギー政策、税と社会保障の一体改革、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題など、難問」が沢山あるので、「若者たちに大いに発言してほしい」と続きます。その上で「今日」に基づいた「明日」(理想)を説き、「地に足の着いた議論で、民主主義に参加しよう」と結んでいます。


4 もっと頑張れ若者?

 『読売新聞』は多少毛色が違いますが、基本的に『朝日新聞』と『毎日新聞』は同じようなことを書いているのかと思います。一言で言ってしまえば、「もっと頑張れ若者」といったところでしょうか。

 今の若者を擁護するつもりは毛頭ありませんが、これだけ就活などで頑張っているのに後何をどうしろと言うのかという声が聞こえてきそうです。それによくわからないのは『朝日新聞』ではもっと「怒れ」と言い、『毎日新聞』ではウォール街等での異議申し立てを推奨しているようにも見えなくはありません。

 最後は「当事者意識」や「民主主義」にまとめていますが、「怒り」と「当事者主義」、「異議申し立て」と「民主主義」の間には、かなりの隔たりがあります。単なる個人の「怒り」なのか、それともある程度の人々に共通された「怒り」なのかそれを検討することも必要ですし、その集まった人たちが、社会においてどの程度の割合か、どういう人々かということも考えなくてはなりません。

 「異議申し立て」がそのまま「民主主義」になるのなら、それは革命ですし、中東におけるアラブの春を経験したエジプトなどがどうなってしまっているか、それらを推奨した若者たちが今どういう思いでいるか、そうしたことに触れないまま、こうした議論をするのはあまりに無責任かと思います。


5 就職の現実

 若者なのだから失敗しても良いじゃないか、いろいろ挑戦してみろとでも言いたいのかもしれませんが、卒業時の就職に失敗すれば、その後正規雇用につけるかどうかわからない現在では、そんなことができるはずがありません。

 そういう意味で就職問題にしぼった『読売新聞』は無難と言えば無難ですが、『読売新聞』という一流企業に勤めている人に、「企業の規模や知名度ではなく」と言われてもな、というのが読者(若者)の偽らざる気持ちではないでしょうか。

 むろん私自身も「社会や人から感謝される」就職というのを否定するつもりはありませんが、金儲けけを目指す以上、他人から感謝されるのは当たり前で(金を払うだけの価値があると思うからこそ、顧客が金を支払ってくれる)、こうしたことをわざわざ言うこと自体が何となく欺瞞くさく感じてしまいました。



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凜amuro001 at 18:22│コメント(2)トラックバック(0)労働問題 │

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この記事へのコメント

1. Posted by 高田 亨   2012年01月13日 18:41
若い頃は気づかなかったのですが、今見ると新聞の社説の主張はむちゃくちゃなものが多いですね。荒唐無稽です。
世の中の専門家が進み、ベテラン記者さんでさえ事態を正しく把握することが難しい今、仕方無いことなのかもしれませんが、自分が真実を知る領域で社説がとんでもなく的外れ、事実誤認をしているのに気づくたびに落胆させられます。

今回の成人式の社説も、現実離れした自分勝手なことや矛盾したを書いているな、と思う次第です。
2. Posted by    2012年01月13日 21:27
>高田 亨 様

 以前は新聞の社説そのものに権威があり、ありがたがって読んでいたこともあるので、まさに隔世の感があります。

 そういう意味で、大衆がいろいろな情報を知ることができることは、確かに「権威」にとっては脅威かもしれません。

 本当20年分位の「成人の日」関係の社説を並べて比較していろいろ比較、検討してみたいものです。

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