2013年01月18日

 鳩山元首相が訪中した際に尖閣諸島について「係争地である」との認識を中国側に伝えました。

 これを受け、小野寺防衛相がテレビ番組で「中国側は『実は日本の元首相はこう思っている』と世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう。言ってはいけないが、『国賊』ということが一瞬頭のなかによぎった」と述べ、激しく批判したそうです(『読売新聞』「『国賊』という言葉が一瞬…鳩山発言に防衛相」)。

 これに関連していろいろ思うところがあったので、今日はこれについて少し。


1 「国賊」とは

 『大辞林』によると「国賊」とは「国家に害を与える人。」とされております。『はてなキーワード』では「自国に害を与える人。(類)非国民。売国奴。」となっております。外国人が日本を批判しても「国賊」とは言わないので、そういう意味では「自国」としている『はてなキーワード』の方が正確な気がします。

 それに「(類)」に有るように「国賊」というと戦時中に「非国民」「売国奴」という呼称が良く使われましたが、その当時は、国の統一的意思に反対する者という様な意味合いで使われることが多かったと考えます。


2 「害」とは

 辞書にあった「害を与える」についてですが、多分これもいろいろな意味があります。法律的・道徳的にどうかという話もあり、道徳的には問題だが、法律で罰するほどではないと言うことも良くあります。そういう意味で、国外で恥をさらす自国人に対し、道徳的意味合いでこういう言葉を使う人もいます。

 株式会社の役員は株主に対し、きちんと会社を経営していく義務があり、経営に失敗した場合は民事責任を負わされることがあります。国の場合は政治家か公務員というところなのでしょうが、政治家は選挙(落選)という形の制裁がありますが、公務員にはそういうことはなく、いろいろ議論があるところです。


3 「言論の自由」について

 そうしたことを踏まえての鳩山元首相の訪中ですが、本人はどうも既に自分は国会議員も辞めた「一個人」にしか過ぎず、自分の「良心」に従って行動・発言しているだけなので、何も問題がないと思っているようです。

 日本では憲法で「言論の自由」が保障されており、公共の福祉を害しない限り、何を発言しようが自由です。実際、日本国内には様々な意見があり、中国よりの発言をする方がいるのも周知の事実です。

4 要人との会見について

 ところが問題は彼が元首相であるところです。今回問題となった「尖閣諸島は係争地」という発言も実際、賈慶林全国政治協商会議主席や楊潔篪外相、唐家璇元外相らと会見し、その中での発言と言われております。

 こうした中国政府の高官に普通の「一個人」が会見できるはずもなく、それだけの影響力があると中国が認めているから可能だった会見ですし、元首相という肩書きは、何だかんだ言って一生ついてまわる重みのあるものと私も考えます。


5 立場の違い

 そういう意味で、一般人が中国擁護の発言をするのと、元首相がするのでは重みが違い、それを考えて鳩山氏は行動していたかどうかという話かと思います。

 卑近な話ですが、私のような一個人が何か「不適切な発言」をしてもせいぜい「炎上」が関の山です。しかし、多くの人の目につくマスコミが「不適切な発言」を行えば、それにより被害を被る人も出てくるなど影響力は全く異なります。

 斯様に立場が違えば同じことをしても全く結果が異なるわけで、鳩山元首相はこうしたことを考えて行動したのかという話です。

 既に職を辞した人間にいろいろ制約を課すのは酷な話という議論もありますが、政治的行動でなければ基本的に何をしても自由と思っています。政治的な行動という点では、これまでの元首相もそれだけの影響力を有していることを自覚して行動していたと思います。


6 最後に

 正直、民主党政権が誕生した時は、これまでのしがらみをいろいろ変えてくれると期待したわけですが、何か変えたのは最後の最後まで変なところだけだったという話で(中国紙が行っていた民主党の敗因分析)、こういう事も含めて、広い意味では今回の訪中は「害」だったのではないかと思っております。

 斯様に鳩山氏本人にはいろいろ考えてもらいたいところですが(他にも南京虐殺記念館で犠牲者の数を聞くのはあまりにも中国のことを知らなすぎると思った次第です「名古屋市長の南京事件否定発言(彼が本当に言いたかったことは何か)」)、ただ、個人的には「言論の自由」などがあるので、「国賊」として批判するようなことはあまりしたくありません。



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凜amuro001 at 19:11│コメント(16)トラックバック(0)日本政治 │

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この記事へのコメント

1. Posted by 迷路人さんのところより来ました   2013年01月18日 22:08
 あの人物の非常識は今更驚くことでもありませんが、南京虐殺の記念館で犠牲者数の質問をしたのには呆れ果てました。賛否両論ある記念館ですが、少なくともわざわざ訪問しようと言う人間が下調べもせず行くのは不適切です。館長も予想外の発言にさぞかし唖然とした事でしょう。

 結局鳩山氏の行動原理は自分がいい子になることで、他人に対する影響を一切考えない軽薄な人物としか言えません。関西弁で言うところの「ええかっこしい」です。ただ一つの救いは、首相在任中に中国訪問をしなかった事です。日本の首相の行動として世界に報道されたら情けなくなります。
2. Posted by 赤城三十郎   2013年01月19日 01:15
「政治家は歴史法廷の被告人」とは、中曽根康弘元総理の言葉だったと思います。

「国賊」「売国奴」「非国民」等の戦前に用いられた言葉はあまり使いたくはありませんが、結果責任を厳しく問われるのは、政治家の宿命であり、その明確な敗北者の鳩山由紀夫には、使用されて当然の言葉だと思います。

日本のケネディ家とも形容される、名家に生まれたのに、
「国益」や「外交」の基本さえ学ばなかった「愚者」には、1ヶ月に1500万円程度を拠出する
「児童福祉財団」なんかを運営して、日本国民に償って欲しいですね。鳩山由紀夫の取り柄は財力のみですから(笑)
3. Posted by 近衛太郎   2013年01月19日 05:57
国賊だと思います。
領土は、歴史の中で尊い犠牲の中で守られていったもの。彼の行動は、その領土をおびやかすものです。
 将来、そのために失われる命もあるかも知れない。
 これを国賊と言わずして、なんというのでしょう。
4. Posted by そうかせんべい   2013年01月19日 06:16
国賊、非国民、売国奴などと言うのも疲れてしまうほどです。
彼に見識や胆力を求めるだけ時間の弥陀でしょう。
このような資質の人間がよくぞ国会議員を、首相になれたものだと本当に、本当に呆れています。
この前、政界から引退すると聞いて真っ先に、うん、これで良いのだと思っていたのですが。
鳩山家の家系は本来高名な政治家一族だったのですが、彼の人間性は非常識な感覚のセレブな家庭に育った単にお金持ちのバカボンだったのでしょうね。
いい加減に政治家ごっこはやめて欲しいと祈るばかりです。
5. Posted by 馬鹿   2013年01月19日 11:28
鳩山由紀夫の得意セリフが「そういうつもりで言ったんじゃない」
国賊というより単なる馬鹿だろう。

彼個人の問題より、ああいう人物が首相になってしまうマスコミの世論操作を含めた日本の社会システムの問題の方がよっぽど深刻だよ。

何度も簡単にマスコミに騙されてそれを自覚もしていない日本人も相当馬鹿なんだけどね。
6. Posted by 小倉摯門   2013年01月19日 14:38
4 最近は起承転結の道筋を丁寧に踏む論が少なくなっている。その結果、直接的な症状もなく広範囲の状況分析もなく智慧を絞り出す作業もなく、いきなり結論や最終評価に飛び付くケースが多い中で、凛さんのこのご主張は素晴らしい!と思いました。

とは云え、国家最高権力者の座にあって【何か変えたのは最後の最後まで変なところだけだった】のですから、
【広い意味では今回の訪中は「害」だったのではないかと思っております】という評価には、隔靴掻痒というか生温い!!と強く感じますが(笑)。
草々
7. Posted by chongov   2013年01月21日 01:34
自分は「小野寺防衛相の批判、心は狭すぎろ」を思うです。鳩山元総理はもう民間人です。あいつの発言は日本を代表できない。

もしも江沢民氏はハノイに訪問する、「中越戦争の為に、心まで謝罪します」や「南シナ海諸島はベトナムの領土かもしれない」を言えば、憤青たちは「この売国奴め!」を非難する(直ぐに削除されるけど)けど、自分は「それは言論自由だ」しか思えない。
8. Posted by 太郎   2013年01月21日 12:17
3 国賊ではないでしょうか。
国賊云々と言論の自由は別です。
守秘義務のある国家機密をばらしたとはではなく、今回の発言によって鳩山元首相が罪に問われることはありません。言論の自由は守られています。
しかし中国は、元首相ともあろう者でさえこういう見解にあると、今後鳩山氏の発言を利用していくことでしょう。
元首相という立場を考えず、自由に国益に反する発言をするのは国賊だと思います。
9. Posted by    2013年01月22日 21:43
>迷路人さんのところより来ました 様

 確かに彼の政治家の資質としては、如何かと思うところがかなりあります。

 南京事件についても、中国側がどの様な主張をしており、日本に対しどの様に使って来ているかくらいは踏まえてから訪問してもらえればと思います。

 確かに、在任中に中国訪問しかなったことが救いと言えば救いかもしれません。
10. Posted by    2013年01月22日 21:47
>赤城三十郎 様

 確かに、今になって、彼の取り柄は何かと言うことを考え始めたのではないでしょうか。

 彼を見ていた本当思うのは、何だかかんだ言って、将来の保証がなく、一般の人は政治家に挑戦したくてもできないわけですが、彼の様な金持ちは道楽半分で政治家になれてしまうということです。

 結局最後は有閑階級しか政治家になれない社会になりつつあるのかという話で、これはこれで嫌な社会かと思っております。
11. Posted by    2013年01月22日 21:50
>近衛太郎  様

 確かに彼のやっていることは、如何かものかと思うのはそのとおりで、「国賊」と考える方がおられても何の不思議もありません。

 そういう意味で私も彼を弁護する気は毛頭ないのが実際のところです。
12. Posted by    2013年01月22日 21:54
>そうかせんべい 様

 どうも彼を見ていると何かやりたいことがあって政治家になったというより、金持ちの道楽の1つとして政治家を目指したという気がしてなりません。

 社会的名誉を獲得するための1つの手段として政治家になったと言っても過言ではないと考えており、日本国民としていろいろ思うところはあります。
13. Posted by    2013年01月22日 21:59
>馬鹿 様

 ま、マスコミの情報操作に騙されやすいというところは私も含め、かなりの方がそういう傾向があるかと思います。

 本当自分で情報を集めるのはいろいろ手間がかかり、大変なのですが、騙されないためには必要なことで、いろいろ難しいところです。
14. Posted by    2013年01月22日 22:06
>小倉摯門  様

 多分、大学院時代の経験がかなり影響を及ぼしていると思います。

 論文などを書いているとどうしても他人から揚げ足をとられないようにするためにはどうするかということばかり考えるようになるので、こういう書き方になるのではないでしょうか。

 ある意味、より断定的に書くことができないのは、単に私が臆病なだけかもしれません。
 
15. Posted by    2013年01月22日 22:09
>chongov  様

 小野寺大臣の発言は、確かにいろいろ思うところがあり、大臣自身も言った後で、少し言い過ぎたと思ったのが正直なところかと思います。

 ブログなどの場合、書きすぎたと思っても公表するまでは訂正が可能です(公表してもからも一般人であれば訂正などは良くあることです)。

 しかし、政治家の場合、テレビで放映されてしまってはそういう訳にもいかず、その点は多少同情すべき点はあるかと思っております。
16. Posted by    2013年01月22日 22:12
>太郎 様

 確かに日本の場合、言論の自由があり、鳩山元首相が、原則何を言っても罰せられることはなく、彼を非難しても罰せられることはありません。

 しかし、何を言っても良いかというとそんなことはないわけで、「公共の福祉」を害しない限りという制限が課せられており、そういうことを踏まえて少し考えてみたものとなっております。

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