2013年12月24日
『産経新聞』が「東電 50歳超、福島転勤命ず 事故当時の役職者対象」という記事を配信していたので、これについて少し。
1 記事の紹介
「東京電力が、福島第1原発事故当時50歳以上だった役職社員を原則として全員、事故に伴う福島県内での復興業務に投入する方向で検討している」という記事です。
「転勤後は賠償、除染、廃炉などの作業を担当」させると共に、「福島勤務の社員の給与を上乗せするなど待遇改善策も導入し」ようと考えているそうです。
その人員として、東電は「10ある支店を全廃し、それに伴って出る千人程度の人員を福島の復興業務に充てる方針」で、「経験豊富なベテラン社員に現場をリードしてもらい、復興を加速するのが狙い」としています。
派遣にあたっては「役職を解いた上で、本人の同意を前提に福島に転勤してもらう」形で、来年4月から「定期異動時に転勤してもらう計画」で、「年間150人程度が対象になる見通し」です。
記事で最後に、「東電は若手や中堅社員を中心に依願退職者が相次いでいる。復興業務の強化には、意欲があるベテラン社員の協力が不可欠と判断した。」と結んでいます。
2 人選
ある意味昨日の続きのような記事です。なお、昨日のエントリー「かずみがうら市の部長5名が東北派遣を拒否して辞職」では、「普通であれば家庭の問題などもあるので、若手のフットワークの軽い者を選ぶところかと思いますが、この記事を読んでまずひっかったのはその点です」という点に批判が寄せられておりました。
ここは確かに舌足らずのところがあり、私が最初に思ってのは何故部長(管理職)なのかという点で、派遣先にがどのような人を欲しいと考えているかにも寄りますが、派遣先としては実働部隊が必要なのではないでしょうか。
かすみがうら市で、5人のチームを作って派遣するので、その管理職が1人必要というのならわかるのですが、管理職ばかり送られてもという話になるはずです。
そのため、やはり私は管理職1名と実働部隊4名位の派遣を考えていたと思いますが、最初の管理職の人選で躓いてしまい、五月雨式に5名に断られる結果になったのではないかと考えています。
この過程を強調したいがために、「若手」という言葉を使ったのですが、確かにそこだけを読むと「若手」にだけ負担を強いるようにとれなくもありません。
3 人選2
そういうことも踏まえつつ、今回の東電の措置を見ると、今回は「役職を解いた上で」となっているので、これはこれで別のことが考えられます。
例えば「若手や中堅社員を中心に依願退職者が相次いでいる」とあるように、若手がいなくなったしまった結果、役職を持つものだけがのこり、組織体制がいびつになっているのではないかという点です。
そのため、組織の「適正化」を図るために、役職を持っている者(管理職)を減らす必要があり、こうした措置を行っているのではないでしょうか。
他にはそれこそ昨日の辞職騒動ではありませんが、給料の高い年齢層を辞めさせたいという意向もあるような気がしてなりません。
いろいろ批判が寄せられてはいますが、東電としては、金はいくらあっても足りない程だというのは間違いなく、その資金を確保するという意味でも更なるリストラを行いところでしょうが、下手に行うと更に「若手や中堅社員」が辞めることにもなりかねません。
そのため、給料も高く、相対的に人数も多い、50歳以上という層に焦点をあててこうした措置を行うとしているのではないでしょうか。
4 最後に
ただ、確かに一方的にというのはさすがに無理があるので、「本人の同意を前提に」となるわけですが、こうした建前にどこまですがれるかは疑問です。
確かに私も東電の措置にはいろいろ疑問を持っており、これまでも何度か批判してきております(東電が分社化された場合の責任と補償、東京電力と労基法)。しかし、そこで働く一人一人にも生活があり、将来設計などを考えているのは間違いありません。
大きく「東電」という形でみると、東電は何をしているのだという面しか見えてきませんが、そこにいる職員を個々に考えると、いろいろ思ってしまう面は否定できず、そうしたことを考えながらの今日のエントリーでした。
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この記事へのコメント
ここに、実際の職場経験が少ないだろうと思われる凛さんの知識が惜しまれるところです。
この様な軽率な言い方は気になります。「実働部隊」の一言に何を想像出来ていますか。
この言葉一つにどの位かの社会経験を積んでいるのかが伺われます。40歳以降の民間会社員の生態、心理をどのくらいご存知か。
12/23の記事では
「被災した東北3県から職員の派遣要請を受けた市長は、(中略)部長5人に派遣に応じるよう求め」
今回の記事「かすみがうら市で、5人のチームを作って派遣するので」
東北3県に5人なので、チームで市町村または県を巡回するのか?それはどこで読めるのか?
本当は東北3県の(複数の市町村にそれぞれ1~2人で)合計5人ではないのか?
いつも楽しみに読んでいますが、今回は少し落ち着きましょう。
「実働部隊」とは別にふかい意味を込めて書いたわけではなく、管理職ではない実際に自分で事務処理(書類等の作成)を行う人という意味で書いたものに過ぎません。
「5人」と書いたのは単に私の推測にすぎません。
派遣といった場合、いろいろなパターンがありますが、複数の自治体に1名ずつ派遣するか、複数の方をチームにして派遣するかの2つのパターンが一般的です。
だた、今回は部長という管理職の方の派遣なので、おそらくチームで派遣する方式をとろうとしたのではないかと考えます。
そうなると、もしかすると3名かもしれませんし、4名かもしれませんが、最初に5名の方に断られたというのが頭にあったので、適当に5名と書いたにすぎません。
1人の実働部隊員が10人の部長を支えるような体制で、他社の若手一人のパフォーマンスにすら劣る状況でした。実働できない部長は唯一の若手の仕事を邪魔するしかやる事がないので。
東電も大変なのだろうなと思う次第です。思えば国鉄末期もこういうものだったのかもしれません。
凜さんほどでは無いにしても大学の教育を受けて特定の分野の専門、でパソコンも自由に使いこなして、現場作業も難なく熟せるnew typeの中高年が増えています。
今もパソコンが出来ない中高年も多々いますが、公務員とか東電の職場も知りませんけど。
何もできないで机に座って指示だけしてる年寄りの管理職、若い未熟な人とか、民間企業出身者のイメージではなくなってきています。
いつもコメント拝見してます。今回、絡んでいただきありがとうございます。
さて、
> パソコンも自由に使いこなして、現場作業も難なく熟せるnew typeの中高年が増えています。
とのことですが、これは事実だと思います。管理職といえども、Hands-on の仕事が徐々にできるようになってきていると感じます。
私が今回書いた職場は、部長職でもパソコンは使えました(というか、パソコンを使ううくらいは、わざわざ教育を受けて覚えるほどのものでもありませんし。パソコンの操作どころか、ワークステーションの管理くらいまでは自分で覚えれるものです。実際、部長職でもワークステーションの管理は自分でやっている人が多かったですし、土日に趣味でプログラム書く人もいました。)
私が言いたかったのはそういうリテラシーの問題ではなくて、仕事内容を変えることの難しさです。
一般社員と部長職ではランクが大きく違い、仕事内容も違います。部長職の人間は部下の management や社内外の政治をメインの仕事にして10年以上たっています。
いくら頭がいい人間でも、それを一朝一夕に10年以上前の現場仕事にコンバートすることは容易ではありません。
役職が変わらないままであればなおのことです。
人間にも組織にも惰性というものは強く働きます。
この状況を打開するには、ショック療法以外にはなかなかないわけで、その例が今回エントリ本文であった、役職を解いた上での異動なのだと理解しています。
確かに今の東電は組織構造という意味では若年層の退職者の増加などで、おかしくなっているのは間違いないかと思います。
一度役職につけてしまうと何か落ち度がないかぎり降格はできないわけで、部下のいない役職ばかりという構造になっている可能性は確かに否定できません。
そういう観点からもこうした措置は必要なのかもしれません。
確かにいまどき椅子に踏ん反りかえっているだけの管理職というのは少なくなっているのかもしれません。
しかし、私自身そうした方を何度か見たことがあり、「何さまだ」と思った経験もあったので、こうした書き方になっているという面があるのかもしれません。