2016年07月06日

 たまたま目にした中国政法大学の杨帆教授が書かれた「欧洲或全方位回归“小国寡民”」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。


1 記事の紹介

 内容を翻訳したものを簡単に紹介させてもらうと以下のとおりです。

 ヨーロッパの統合は5つ矛盾を抱えている。

 1つめは、ローマ帝国崩壊後の文化の統一がないこと。中国は二千年前に既に言語の統一を果たしているが、ヨーロッパは未だになされていない。

 確かに、ヨーロッパ内部で、民主的で自由な人権が発展しているが、範囲は狭い。

 2つ目は、制度に理想主義の色彩が濃いことだ。ユーロの発行権はあるが、各国の財政政策と矛盾している。

 3つ目は、貧しい国と豊かな国の利益対立を調節する力がないこと。中国は中央政府の強大な力で東西の格差問題を解決する。

 4つ目は、エリートと民衆の対立。政治家のヨーロッパ連邦(主権を統一)という夢は、既に民衆に否定されている。

 5つ目は、人権と資本の問題。「自由貿易」には労働力を含んでいなかった。投資が自由なら給料の低い国に投資が増え、移住を制限する方に働くからだ。

 その理念に基づき、関税・投資を自由にし、通貨まで統合したが、「人的自由」の段階で問題が起きた。本来の労働力の自由移動は給料を抑えることになるが、高い給料を享受する「労働貴族」特権を独占した。

 更に、アルバイトに従事する移民の問題もある。彼らが家を構えて定住し、子供を産み育むが、この出生率が自国民より多く、更に移民が福祉を享受するとそれに対する反発も強まる。

 結論として、ヨーロッパは恐らく※「小国寡民」(小さくて人口の少ない国)に向かう。しかし、これはEUの停滞を意味するだけで、ヨーロッパ国家の集団が落ちぶれるのを意味しているわけではない。


2 中央集権

 論理してはなかなか面白いものがあります。

 ただ、にじみ出てくるのが中国は中央集権で中央の意向できちんとした方向を定めることができるのに対して、EUはそうした統一意見すら決めることができないという発想です。

 まさに「開発独裁」の良い面だけを強調したものいいです。確かに中央集権は意思決定は早いし、政策が決まった後もどんどん推し進めていくことができます。

 ただ、結果その政策が間違っていても誰も批判できませんし、無理矢理土地を収用される農民など、不利益を被る人が多いという問題があります。


3 「夢」

 確かにヨーロッパの統一というのは「夢」というか、理想主義的な強かったことは否定しません。

 ただ、第二次世界大戦という悲劇を受けて、「国」を超えた枠組みで統一を図っていこうという試みは評価すべきで、それをただ「夢」の一言で片づけることは賛成しかねます。

 私が思うにEUの問題は、東欧の加入を進めたことによるEU内の貧富の差の拡大で、人は豊かな方に流れるという当たり前のことが起こったに過ぎないと考えます。

 結果移民問題などが起きたわけですが、シリアの問題で更にそれが強調されてしまったというところでしょうか。


4 最後に

 中国の論説のうまいところは、斯様に他国の問題に搦めて自国の優位性を強調してくるところにあるような気がします。

 そしてそれを如何にさりげなくおこなえるか、如何に学術的な感じにまとめあげて説得力をもたせるかが腕の見せ所の様なきがしなくもありません。

※ 「小国寡民」は老子が理想した国家。足るを知り、他国を羨ましがらずあるのが良いという感じの意味ですが、ここでは移民排斥の話もあるので、単純に国(人口)が小さくなるという意味で使用していると思います。



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凜amuro001 at 22:31│コメント(4)トラックバック(0)各国 | フランス

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この記事へのコメント

1. Posted by chongov   2016年07月07日 11:51
まーた環球時報の自画自賛なホルホル記事ですか。気持ち悪いですね。確かに西ヨーロッパ諸国の経済成長率は中国より低いですが、一人あたり年収3万ドル以上の国は一人あたり年収8千ドル未満の国と発展段階が違いますから、成長率が低くなっても当然だろう?しかも社会福祉といえば、ヨーロッパは中国より遥か優れるです。まあ、でも不法移民の問題も生まれた。

英仏独は小国だと思わない。彼らはEUから離脱しても重要な国と見られるです。一方、中国は確かに大国ですが、社会格差問題や民族問題も大きな不安定要素になった。

もし福建は独立国になったら、福建は石油・ガスなどエネルギー資源が少ないから、エネルギー安全保障の危機を直面しなければいけない。だからアメリカや日本の圧力に屈じる、台湾と一緒に親米親日国家になる可能性が高いです。
2. Posted by とほ   2016年07月07日 21:59
こんばんは。
結構な数の移民を出している中国が、それを脇に置いてヨーロッパ内の移民問題を語ると、なんとも言えない印象です。
ところで、東京の運河で見つかった遺体の身元が、失踪していた中国人研修生だったと判明しました。どんな苦労があったのか、気の毒な話です。昨年の中国人研修生の失踪者は6000人弱。研修生制度はもう止めて、単純労働の移民を受け入れたほうがマシだと思うんですが、話題になりませんね。
3. Posted by    2016年07月07日 22:46
>chongov 様

 正直私は今回の記事はそれなりに評価しております。

 もちろんプロパガンダという意味でですが。

 さすが専門家の書いただけのことはあると思っており、こうした点では日本の言論は分散しているだけに、この記事の論旨から言うと「不利」となるのかもしれません。
4. Posted by    2016年07月07日 22:48
>とほ 様

 私も被害にあわれた方には心底同情しております。

 異国で被害にあうこと程怖いことはないと思っております。

 研修生制度は中国の人件費が上がってきたことなどを考えると、正直私もどうかと思っております。

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