中国・事故

2013年04月22日

 『環球時報』が掲載していた社説「中国是“救灾共同体”乃不幸中之幸」が久々に何とも言えなかったので、これについて少し。


1 記事の紹介

 最初にいつものとおり、記事を翻訳したものを簡単に紹介させていただきます。

 四川省雅安市蘆山県のマグニチュード7の大地震は、再び中国の南西地区を揺らし、多くの死傷者を出した。中国の被災者救済のスピードは全世界で「素早い」との評価を得ているが、このことは、私たちの悲しみを減らすことはできない。

 中国文明は常に大自然と闘ってきており、中国は災害も多く、古代から国家に「救災共同体」の意味を与えている。救済の成否が政府に対する評価に影響し、国家の安定に影響することすらある。

 中国の「公民社会」の発展に伴い、民間組織も一定の効果を発揮するようになった。多くの専門家や指導者は、中国は「被災者の救済型」社会から「防災型」社会に転換を急ぐべきだと強調しており、特に大きな災害が発生した後で、こうした声は増える。

 今回の地震は、5年前の経験を生かし、救助活動が速いだけでなく、筋道立っており、指導者・救援者も経験豊かで、中国全社会の人々の心は一致しており、皆被災者救済で団結している。

 中国の救済能力は大幅に良くなっており、救済に対する動員能力などはアメリカや日本などの先進国より、既に先を歩いている。しかし中国の救済設備や専門性の点では、まだ差があり、防災面でも明らかに弱く、批判の声も聞かれる。

 中国では毎回地震のたびに民家が崩壊するが、これは先進国よりずっと深刻だ。救済は中央政府が様々な資源を集中すれば良いが、防災は政府だけではだめで、経済の(発展)過程や社会の学習程度が影響を与える。

 各種インフラの防災能力の強化は、国家、企業、個人が大規模な投資を行い始めて可能となるもので、「大掃除」のように一回でどうこうできるものではなく、中国の経済発展に伴い、一歩一歩成し遂げていくものだ。

 災害の死傷者を減らすためには、防災教育や訓練が必要で、人々の参加意識を高めて初めて可能となるもので、経済があまり発達していない社会では決して簡単なことではない。

 地震などの災害が社会の関心の中心となり、人々の感情を集める。災害が発生した時、人命救助が第一だ。これは既に中国社会の共通認識となり、結果より有効的に災害救助を行える。同様に被災者救済の速度も増し、中国は「救災共同体」となることに成功し、国家の自信が増す。

 より多くの人を救い出し、大衆はそれを賞賛し、それが世論の中に伝わっていく。人の強さは人道主義の輝きと災害に対する抗争だ。感動させるいろいろなことがあり、それが我々を励まし、中国人・国家は前に進む。

 中国人は災害を痛恨するが、災害の前で勇敢な智者とならなければならない。こうして初めて、民族は前に進め、我々の家庭、すべての人は安全と平和を獲得できる。


2 個人的感想

 日本でも東日本大震災の後で「絆」という言葉が言われましたが、中国でも同じように大地震という災害に直面して「団結」を強めようという話です。

 正直「絆」と言いながら、被災地のがれき受け入れを拒否する方がいたり(震災がれき受け入れ反対と新興宗教)、放射能に対する差別など(放射能拒否事件3題)個人的にはこの「絆」という言葉にかなりの違和感を覚えたのが正直なところです。

 同じように、中国でも散々普段から強調している「団結」(中国と団結)をここぞとばかりに強調し、地震という災害を国家統治に利用しているわけで、これもかなりの違和感を覚えております。

 当然、被災地を救援するためには他の土地の手助けが必要なことも事実であり、皆が一丸となって助けようという気持ち自体を否定するつもりはありません。しかし、それを国家(社会)が強要するのは如何なものかと考えているというだけの話です。

 ただ、その一方で、あまりに利己的なのもどうかと考えます。先のがれき受け入れ拒否に典型的に現れている様に、人は皆自分の身が第一であり、それ自体を否定するつもりはありません。しかし、あまりにも感情的になり、自分のことだけを考え、受け入れについて何が何でも全てを反対とする姿勢にも私は賛成しかねます。

 話が大分逸れてしまいましたが、確かにこうした団結を強化するためには、外国の援助などは邪魔でしかないわけです。そして、援助を断って非難を受けない様にするためには、救援活動は順調に行われているということになる必要があります。

 結果、ニュースを見ていても、物資が届いていない被災地など、とても順調に行っているとは思えないわけですが(中国の救済活動を評価する声というのも寡聞にして聞いたことがありません)、口が裂けてもそうは言えないということになります。

 そして、本来は政府も大きな責任を負っているはずの防災(耐震基準)などは、政府だけでなく個人も含めた社会全体の責任として、責任転嫁を図っております。

 中国の建築物が官僚の汚職が行われた結果、建築に必要な資材が使われず、強度が足りない等いろいろ問題があるのは周知のことですが(開通前に橋が崩れて良かった?(中国紙の言い分))、そうした批判をかわすための主張かと考えます。

 以前、公害問題(PM2.5などの大気汚染)について、皆の責任とすることで、政府の責任を免れようとしているという問題を指摘したことがありますが(中国のスモッグと中国政府の責任回避)、まさに同じロジックとなっております。



凜amuro001 at 22:18│コメント(3)トラックバック(0)

2012年04月15日

 国が違うと変なところで、文化の違いというものを発見することがあります。それがシャレにならないことがあるものだと思った記事をたまたま目にしたので、これについて少し。


1 記事の概要

 中国新聞網が配信していた記事(中国留学生涉强奸女房主 父母欲贿赂受害人遭起诉)で、21歳になる中国人留学生がアメリカで逮捕されたことに関するものです。最初に記事の概要を紹介させたいただきます。

 3月29日夜8時、アメリカ・アイオワ州で21歳の中国人留学生が部屋を借りるという名目で女性の家主を訪問した。寝室を案内している時に、この留学生は「ナイフを持っているので、言うことを聞け」といって強姦した。

 更には、女性の裸の写真を撮影し、もし警察に訴えたらこの写真をネット上に公開すると脅した。しかし、この女性は警察に通報し、1日も経たずに犯人は逮捕され、部屋からはナイフやこの女性の下着などが発見された。

 この留学生は第1級強姦罪などで起訴されており、最高刑は終身刑の可能性もある。移民局も関心を払っているそうで、中国に強制送還され、刑期を全うする可能性もある。

 中国人留学生の父(57歳)と母(49歳)は事件が発生した後、今月初めにアイオワ州を訪問した。そして、人を介し被害者の女性を探してくれるよう依頼し、もし被害者が供述を変更してくれたら、報酬を支払うとした。

 このことが被害者の耳に入り、警察に通報され、加害者の父母も逮捕されることとなった。アメリカでは、証人や陪審員に賄賂を払うことは罪になる。

2 個人的感想
 

 金持ちのバカ息子と、親バカといってところでしょうが、この親の行動は何となくわかる様な気がします。実際、日本でも被害者との間に和解が成立していれば、刑事罰は軽くなりますが、これは中国でも同じです。

 そのため、もしかするとこの両親は息子かわいさのあまり、少しでも刑を軽くしてあげようとして、こうした行動をとっただけかと思います。親はいつになってもどこの国でも大変です。

 ただ、実際中国の場合、結構司法制度がいい加減なので、日本のような「和解」というよりは権力者を使った半強制的なものや、裁判官を巻き込んだりといろいろあるようですが・・・

 それ以外に、この記事をみて思ったのが、昔は中国人留学生と言うと苦学生や一部の秀才が必死になってアメリカで頑張ってるという感じでしたが、この留学生の手口があまりにも幼稚で、経済発展に伴い金持ちが増えると、こういうバカも増えるのかということです。

 自分で苦労した稼いだ金ではないので、金の有り難みがわからず、そのため留学して勉強できることがどれだけ幸運か理解できない者が増えつつあるということでしょう。

 ただ、これは別に中国に限った話でなく、自国の大学入試に失敗したから、箔をつけるためだけに子弟を海外に留学させたり、数年アメリカにいてもロクに英語も話せず留学しても何を学んできたのはわからないという者はどこの国にもいる話なので、私はこの事案だけをして中国人を批判するつもりはありません。



凜amuro001 at 21:13│コメント(0)トラックバック(0)

2011年11月20日

 昨日の記事で最後にしようと思っていたのですが、ネタ探しをしていても、どうも甘粛省慶陽市の事故の関係のニュースが目についてしまって、どうしようもありません。そのため、本当にしつこくて申し訳ありませんが、今日も続報です。

 なお、死亡者の数ですが、当初20名でしたが、現在では21名になってしまいました。本来であれば標題も変更すべきでしょうが、番号をふっている関係で、そのままとさせていただきます。


1 スクールバスの運行停止

 事故の影響を受けて、違法なスクールバスの運行が停止されていまいました。その結果どうなったかというと、学校から遠いところに住んでいる子供は親が送るか、自分で通学するしかありません。ただ、中国の農村部では働き場所がないため、親が出稼ぎに行っていることが結構あります。

 そうなると親が学校に送って行くという選択肢はなく、子供たちだけで歩いて通学することになります。しかし、問題はやはり広い中国なので、通学距離も日本とは桁違いで、かなり長い距離を歩かざるを得ません。

 そうした事例を紹介した写真が『CRI online』に掲載されていました。この写真は小学校6年生の姉が幼稚園の弟をつれて通学しているもので、運良く知り合いの車に乗せてもらうこともたまにあるそうですが、普段は2人で10㎞の道を2時間かけて通学しているそうです。

通学

  

             (写真は上記HPより)

 だったら遠くの者だけでもスクールバスで運べばと思いそうですが、おそらくあれだけの大人数を運んでいたから経営が成り立っていた面があり、少人数ではバス会社が車を出してくれないのではないかと推察しています。


2 賠償金

 今回の事故で死亡した児童に対する賠償金は1人当たり、43.6万元(日本円にしておよそ530万円)だそうです(『人民網』「甘肃幼儿园校车事故赔偿:遇难者43.6万元/人」)。そして、早くも既に賠償金の支払い手続は始まっているそうです。

 おそらくこれは今年7月に発生した高速鉄道事故の反省を踏まえたもので、さっさと金を渡して遺族をだまらせてしまえという感じがありありです。

 実際この記事では、今回の事故に対し事後処理は積極的に行われており、遺族に対し、県、郷鎮、村、組の幹部が4者一体となって、1つ1つの家にあたっており、入念に遺族を落ち着かせる作業をしており、現在遺族の情緒は安定しているとあります。

 これが何を意味するかは、言わずとも明らかです。7月の事故では遺族等が抗議運動を行い、下手をすれば反政府運動に拡大する事態にもなりかねませんでした。そのため、今回は徹底的に遺族を囲い込み下手な行動をとらせないようにしてるのでしょう。


3 スクールバスの購入

 そして、政府が何かやっているという行動を見せなくてはならないということになったのでしょう。昨日紹介したように公用車を買う金でスクールバスを買うようにした云々に似たような記事が散見されます。

 そのうちの1つに、浙江省徳清県で2000万元(約2億4千円)の金で79台のスクールバスを購入し、23の学校の6000名もの生徒の送迎をしているという記事がありました(『中国広播網』「德清校车模式受推崇 县长:有能力为孩子撑好保护伞」)。如何にも先見の明があった、ちゃんと政府もやっていると言いたいのでしょう。

 しかし、最初に見たように中国政府の無策のために、多くの子供達が通学に苦労させられており、そしてこれまでもぎゅうぎゅう詰めの所に押し込められるなど、苦労してきたわけで、こうした記事を見るにつけ、やりきれなさが募ります。



凜amuro001 at 11:05│コメント(7)トラックバック(0)

2011年11月19日

 しつこくて申し訳ありませんが、今日も昨日に続きこの話題です。ただ、あまり今日は文字で何か書くつもりはあまりなく、基本的にこんな感じで無理矢理詰め込まれているという写真の紹介です。

1 広西チワン族自治区の事例

バス01


 この写真は広西チワン族自治区の柳江県の様子で、8人乗りの車に28名の児童が乗っている様子だそうです。この写真を含め3枚は『CRI Online』に掲載されていたもの。


バス02

 

 その生徒達が送迎車から降りてくる様子。
 生で見るとものすごくびっくりするのがこの情景で、今での印象に残っており、何人乗っているのだと本当に感心したものです。


バス03


 

 車は改造済みで、こんな感じに長椅子が置かれており、ここのぎゅうぎゅう詰めに押し込まれるわけですが、完全に子供しか乗れない仕様になっています。


2 江西省南昌市の事例

 実は江西省では15日に宜春市で18名の児童が乗ったスクールバスが側溝に落ちるという事故が発生しており(幸い全員無事だったそうです)、先の甘粛省慶陽市の事故と相まって、スクールバスに対する検査を厳しくしたところに14名乗りのところに24名が乗っていたという事案が報道されておりました(『大江網』)。


バス04

           (写真は『大江網』より)

 学校側は、生徒達は皆座る椅子があるのだから大丈夫だと頑張ったようですが、後日しかるべき処置がとられることになるそうです。


3 甘粛省慶陽市の事例

 そしてあれだけの事故を起こした甘粛省慶陽市は2012年の公用車を買う予算を全てスクールバスの購入に充てることを決定したそうです(『中国新聞網』)。

 中国の官僚天国の状態は既に周知のことと思いますが、そのため国民からの反発も強いのが実情で、おそらく人気取りの意味も含めてこれだけ早い決定になったと思いますが、今さらの感は否めません。



凜amuro001 at 08:38│コメント(2)トラックバック(0)

2011年11月18日

 今日のエントリーは、ある意味昨日書いた「9人乗り送迎車に64人乗って事故で20人死亡」の続きのような記事になります。

 昨日も書きましたように、この事件が与えた衝撃は大きく、事故の起こった当日に、正寧県の副県長2人と、県の教育局長、県交通隊隊長の4名が、職務停止の措置をうけ、取り調べてを受けています。そして、それだけでなく昨日はいろいろな方がいろいろな意見を述べていたというものです。


1 全国人民代表大会代表の提唱

 『中国新聞網』の「全国人大代表:校车在行驶过程中应享有一定特权」(全国人民代表大会代表:スクールバスは運行中特権を有すべき)によると全国人民代表大会代表にして、華中師範大学の周洪宇教授は「全国のスクールバスの安全工程」なるものを策定し、いろいろなことをやらなければならないと述べたそうです。

 中国で生活するとわかりますが、彼らは本当に子供を大事にします。「小皇帝」などという甘やかされた子供がどうのこうのと言う話を聞きますが、それだけ子供が大事にされていることのあらわれです。

 日本では公共の場で、子連れが小さくなっていなければならないようなところがありますが、中国では全く逆と言ってもよく、子連れに対しては皆がおおらかです。その子供があれだけ亡くなったのですから、いろいろなところがいろいろなことを言っても何の不思議もありません(逆に何か言わないといられないのでしょう)。

 因みに彼が提唱した考えは、国家なり地方政府なりがスクールバスに補助を行うというものです。今回の事故もバスの数が少ないが故に子供を詰め込まざるを得ないという状況があったので、バスを運営するところに補助金を出したり、税金面での優遇措置を与えるというものです。

 また、各地の公安や教育部門と提携し、バスの維持補修に補助をしたり、監督を行う。更にはスクールバスが停車し生徒の乗り降りをしている時は、他の車は距離を置かなければならないとか、消防車などと同じくスクールバスとすぐわかるようにし、優先通行権を与えるなどしてはどうかとまで主張しております。


2 スクールバスの実態とその他の提唱

 実際、こうしたスクールバスに無理矢理子供を詰め込むという現象は田舎では当たり前に見られるところがあるようで、この記事にもそうした写真が掲載されておりました。


スクールバス

      

       (写真は上記HPより)
 

 これは雲南省で撮影されたものだそうですが、ある意味この写真が紹介したいがためだけに今日の記事を書いたようなところがあります。この写真を見ると子供の上に子供を無理矢理乗せている様子が大変よくわかります。

 『中国新聞網』の記事では、人民代表大会代表以外にもいろいろな方の意見を載せておりました。例えば、国際学校のスクールバスは黄色で、スクールバスとはっきりわかり、家が道の反対側にあれば車をUターンさせて、子供に道を渡らせないようにして、きちんと親元まで届けるということを紹介している人もいました。

 北京師範大学教育学部の袁桂林教授はスクールバスの安全管理は、公安が担うのか、教育部門が担うのか、はっきりした規定がなく、責任の所在が曖昧になってることや、義務教育法には「学校の安全」は謳っているものの、そこにスクールバスの規定がないこと等を指摘しておりました。

 こうしたことを見ても如何に今回の事件の与えた影響大きいかがわかります。そして皆がいろいろなことを言うわけですが、そうは言っても、多くの方がこの問題に言及すればするほど、問題解決にはかなりの金と労力がかかり、一朝一夕にはいかないことを物語っているようで、何とも言えなくなってしまいます。



凜amuro001 at 21:12│コメント(0)トラックバック(0)