香港

2014年12月24日

 『環球時報』が掲載していた「王德华:重启《南京条约》?香港学生须“恶补”国民教育课」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。


1 記事の紹介

 それなりに長い記事ですが、言わんとしていることは極めて明らかなので、思いっきりまとめた形で紹介させていただきます。

 香港の反政府デモが事実上鎮圧されてしまったことをうけて、どうやら香港大学の学生が南京条約の再締結といったことを提唱したようです。

 これに対して、南京条約はアヘン戦争の結果無理矢理締結させられ、香港をイギリスに割譲し、中国が半植民地となった国の恥となる条約なのに、なんということを言うのかと反発している記事です。

 中国人ともあろうものが、それ以降の中国の苦労を何と思っているのかとかなり激しく批判しております。こうなってしまったのは、香港が中国史が必修ではなく、西側の影響を強く受けている結果だとしています。

 香港の繁栄は植民地の結果なされたものではなく、香港の特殊地理関係と中央政府の支持、香港の同胞の勤勉な勤労がなしえたものだともしています。

 結論として、香港の教育がおかしいから、こうした馬鹿なことを主張する学生が出てくるのであり、きちんとした歴史教育、愛国教育を行うべきだというのがこの記事の主張の様です。


2 絶望

 確かにあれだけ頑張った学生にしてみれば、今回の香港の反政府デモが結局何も得るものがなかったという話で、いろいろ自暴自棄に近い感情を抱いている人がいるのは想像に難くありません。

 結果、自由を制限されるのだったら中国よりイギリスの植民地のままでいた方が良かったという発想で、こうした発言をする人がいたとしても、これも不思議ではありません。

 ただ、民主主義(自由)は自分たちで獲得すべきもので、それを他人(今回はイギリス)に頼って獲得しようというのは少しどうかとも思っております。

 そうは言っても、中国の言論弾圧の暴力は何度か目にしており、それに反抗することがどれだけ怖いかも良くわかっておりますし、日本という自由が保障されたところから何を言っても他人事でしかないというのも百も承知で書いております。


3 歴史

 この記事で他に興味を引いたのが「歴史」で、やはり中国という感じです。確かに南京条約による香港割譲などは褒められたものではないかもしれませんが、全てが全て悪だっかというとこれも疑問です。

 記事では、香港の繁栄は如何にも大陸(中国政府)のおかげとしておりますが、中国返還以前あれだけの繁栄を誇っていたのは明らかに中国に属さなかったからであり、その時中国大陸はどういう状況だったのかという話です。

 そういう意味で、植民地の功罪を検討するのなら、わかるのですが、一方的に負の面だけを強調する(1つの価値観しか認めない)のは如何にも今の中国で、これもいろいろ引っかかりました。


4 最後に

 最近の対日関係などの論調を見ていると『環球時報』も少しづつ変わってきたかと思っていたところですが、こうした記事を見るとやはり、中国は中国という感じで、すこしげんなりしてしまいます。

 もう少し寛容になることができないものか、他人の話に耳を傾ける余裕を持つことができないものかと、今さらながら思ってしまうというのが本当のところです。



凜amuro001 at 23:22│コメント(6)トラックバック(0)

2014年10月04日

 中国ネタをメインをしているブログで、今回の香港デモについて全く触れないのはやはり、どうかと思うので、これについて少し。


1 記事の紹介

 ブログを書くためだけに愛読している環球網ですが、この問題でも期待を裏切らず、予想通りの記事を掲載してくれております。

 というわけで、今日紹介させてもらうのは「外国学者揭“占中”实为美策划 波音等美企或得益」という記事です。これは香港紙『文汇报』が報道した内容を紹介しているものですが、それによると香港デモはアメリカの影響によって行われているそうです。

 記事の内容を簡単に紹介させていただくと、以下のとおりです。

 バンコクでの地政学者トニー(Tony Cartalucci)によると、今回のデモは実際はアメリカの支持化で画策された。彼は西側は、香港特区と中国内陸の離間策、香港をして、中国の安定を破壊する駒にしようとしていると批判している。

 トニーは、香港デモは表面上は「総選挙」を求める民主的な行動だが、実際は陰でアメリカ国務院、アメリカ民主基金会(NED)、全国民主研究所(NDI)などの西方国家機構の援助を受けていると指摘している。

 トニーによると、政府の特区長官の候補者に対する審査を妨害するため、アメリカ国務院の支持を受け、候補者の名簿に押し込んだり、アメリカ民主研究所は、「香港の選挙制度の発展と中国の治世下の民主的な将来性を考慮する」として、全力で香港に政治的干渉を行っている。

 トニーの調査では、NDIホームページでは、香港大学が共に創立したセンター(CCPL)があり、その目的は政治過程における公民の意見の拡大で、今回のデモの発起戴耀廷も2006年~2007年にCCPLに参加していた。

 トニーは他にも、公民党の主席が何度もNDI協賛のイベントに出席していることや、民主党創党主席がNEDと密接にしていることなどを指摘している。

 他に商業的な目的として、香港デモの本当の目的は民主獲得ではなく、“民主”の名を濫用して、中国中央政府の香港特区に対する管理権を弱めて、外国大企業がその間に覇権を強化し利益を得ることであるとしている。

2 外国の干渉

 天安門事件が典型ですが、中国には、天安門事件後に大々的に提唱された「和平演変」(経済的支援、文化・思想「侵略」などの平和的方法により社会主義体制を転覆させようとする方法、)(『環球網』の翻訳記事から見える中国の文化管理強化の意図参照)という伝統的な発想があります。

 こうした思想が出てくる原因としては、中国共産党は人民の代表であり、人民(資本家も既に認めているので実質的には国民と一緒)の支持を受けていないはずがない、人民が共産党にNoというはずがないという発想があります。

 つまり、あくまで一部の外国勢力の影響を受けたものが騒いでいるだけで、それが大げさに喧伝されているだけにすぎず、多くの大多数の人民は共産党を支持しているという発想です。

 今回の事案でも香港の経済に対する悪影響を心配して、こうしたデモに反対している香港の人たちも多いというのが中国政府の見解です。


3 外国人の意見

 今回、もう1つ如何にも中国だと思ったのが、外国人の意見を持ってきて自分たちの意見を代弁させるという手法をとっていることです。

 こうした敏感な問題の時は特にそうですが、外国の記事の紹介という形で事実だけを淡々と紹介することが良くあります。

 今回はたまたま、中国政府の発想に極めて近い学者(本当に学者か不明ですし、中国の場合、翻訳記事でも平気で改訳して掲載するので、トニー氏が本当にこうした意見を発表したかも疑問です)を見つけたので、それを持ってきたということでしょう。

 自分たちの特定の思想を、世界的にも支持を受けているという形にするために、こうした海外の意見をもってくるのは中国では良く見られる手法で(靖国参拝で中国が韓国と日本を批判、でも他の国は)、そういう意味でも興味深いものでした。


4 コメント

 この記事には、コメントが書き込まれるようになっているのですが、結構本気で、記事に同調した意見を書き込んでいる方が多いのが何とも言えませんでした。

 おそらくかなり「敏感」な問題なので、政府の検閲が厳しく、政府に反対(デモに同調)する意見は削除されてしまっているという可能性は否定できませんが、結構本気で、こうした政府の主張を信じている人も多いのかもしれません。

 どうしても、中国の場合、かつて自国が半植民地になったトラウマがあり(その典型の1つが、イギリスの植民地だった香港)、外国が干渉して「中国の神聖なる領土」を奪うという発想に短絡的に行く方がいることは事実です。


5 最後に

 ちなみに今回のデモについて、中国では、「占中」、意味は「中環(セントラル、香港の金融や政府機関が集まっている文字通り中心)を占領」と表記されております。

 確かに香港全部が1つの発想で行動するというのは難しく、反中国の方もいれば、親中国的態度で利益を得ようと考えている方もいるはずで、「香港がどうこう」と一概に述べるのは難しいのが現状かと思います(それは以前の台湾も同じ「台湾国会占拠と善悪」)

 そういう意味であまり今回のデモの行方を楽観はしておりませんが、心情的にはかなり応援したいと思っているのは確かです。



凜amuro001 at 22:23│コメント(111)

2014年07月02日

 香港がイギリスから中国に返還されてから17年目となる7月1日に、香港で大規模なデモが起こりました。結果座り込みを行っていた学生が拘束されるなどいろいろな問題が起こっております。


1 記事の紹介

 これについてブログを書くためだけに愛読している『環球時報』が興味深い社説「社评:香港现七一游行,国家不可能让步」を掲載していたので、これについて少し。それなりに長い記事なので、興味深かったところを中心に簡単に紹介させていただきます。

 昨日香港で起こったデモの参加者はこれまでより多く、反対派は喜んでいるが、各種統計によると参加者にはかなりの差があるし、彼らの計画は香港の法律に対する挑戦だ。

 反対派は、参加者数を気にしているが、彼らが公表する数字は、警察発表の実際の数字より多い。参加者の数字は、ある程度香港の社会状況を反映しているが、等しくはなく、香港の民意は複雑だ。

 一定期間、香港の反対派はこうした反対運動を強めていくだろう。香港の特殊な心理状態も影響を与えている。というのは、香港の生活水準は大陸より高かった。ところがこうした優越感が攻撃を受けており、西欧式「民主」が香港人の大陸とは違うという認識になっている。

 大陸とは異なる政治制度も摩擦を生んでいる。デモの分析をするにあたって、極端な反対派が要求するもの、普通の市民が考えていること、をきちんと区別しなくてはならない。


2 香港人

 これまでも何度か取り上げたことがありますが、香港人は明らかに大陸人と自分たちは異なるという意識を持っており(「香港人」意識を強める香港と、それを認めたくない中国)、大陸ではこれを苦々しく思っている人もおります(香港人は犬で鞭でしつけることが必要?)。

 そして、中国政府は当然こうしたことを良しと思っておらず、本来であれば、一国二制度などという面倒くさいものはさっさと取っ払ってしまいたいというのが本音でしょうが、そうもいかないのでどうしようかというところでしょう。

 かといって、デモをこのまま認めなくもないので、これまでよく使用してきたように、あくまで反対運動を行っているのは一部の過激な人たちであり、大勢の普通の香港市民はそんな過激なことを考えていないという形で押し切ろうということなのかもしれません。

 ただ、香港人の気持ちとしてはそれでおさまりがつくはずもなく、今後もこうしたことが繰り返されるのは間違いないかと考えます。


3 コンプレックス

 中国の高度経済成長に伴い、香港の優越性がなくなりつつあるので、その裏返しとして「民主」をよけいに旗印にするというのはなかなか興味深い発想です。

 日本で反中運動がさかんなのは、日本がGDPで中国に抜かれ、後塵を拝しているというコンプレックスという説明は散々聞かされましたが(不景気に苦しみ政治に失望している日本はファシズムが台頭している?、多分その延長線上に考えられたものかと思います。

 何かこのままいくと、世界各国で反中運動が起こってもすべて、うまくいっている中国に対するやっかみということで中国国内向けの説明がされてしまいそうな感じです。

 問題が起こった場合、(比率の問題はありますが)両者に問題があることがほとんどなわけですが、どうあっても中国は自国の非を認めるつもりはないようです。


4 最後に

 そういう意味で、ある種いつもの中国の主張でありながら、香港という同じ「中国」国内のことであるが故にいろいろ対応に苦悩しているような感じが垣間見られ、興味深ったが故の今日のエントリーでした。



凜amuro001 at 23:55│コメント(9)トラックバック(0)