中国外交

2015年10月01日

 今回も少し遅くなってしまった感がなきにしもあらずですが、習近平中国国家主席の訪米の話題についてです。


1 歓迎?

 今回の訪米については、ローマ法王の訪米と重なってしまい、アメリカ人の関心はそちらの方に向いていたようですが、間違っても中国ではそんなことは報道されません。

 『新華網』に掲載されていた「习近平出席联合国系列峰会:主席“时代强音”彰显大国责任与担当」によると大変歓迎を受けていた様です。

 国連の一般演説でも、国連副事務総長の発言を引用する形で、「習近平主席の私個人の印象としては、とても落ち着いていて、人との付き合いが良く、演説はとても堅固・的確で、国際社会で最も好まれる指導者の風格を備えていた。今回の国連総会の講演は短かったものの、国連首脳の中で最も歓迎を受けた発言だった」としています。


2 実際?

 これに対して真向から反対を唱えたのが、『苹果(りんご)日報』です(习联大演讲场面冷清 官媒吹嘘:全场热烈掌声)。

 中国の報道では、国連での演説の際に「会場が何度で何度も熱烈な拍手」、「数十の国家元首が並んで握手」などの美辞麗句が並んでいるが、実際は空席が目立ち、中央電視台は全会場の様子を報道できなかったとしています。

 具体的には、1500人収容可能な場所で、少なくとも2/3は空席で、実際拍手が起こったのは、最貧国のために20億ドルの資金提供を宣言したときなど3回だけだったとしています。


3 成果

 実際、今回の訪米は正直なとこと、殆ど実りがなかったわけですが、中国の報道では当然のごとく「大成功」とされております。

 中国の記事などと見ると、オバマ大統領との会談や、IT産業界とのトップ会談など本当に盛り沢山で、多くの公務をこなしつつ、成果もすばらしかったとしています。

 これは、世界が中国を注目している結果だという話にしたいようですが、実際はそこまで中国に関心がないのが実情でしょう。

 当然、影響力の大きさは認めているわけですが、半分位は、中国が何かしでかして負の面の影響を及ぼされたら大変という意味も含めての関心かと思います。


4 影響力

 実際問題として、オバマ大統領との長時間の会談や、IT産業のトップとの会談などは、それだけの影響力がなければできない話で、既に日本の影響力を追い越しているのは間違いないかと思います。

 ただ、これは何も日本だけに限った話ではなく、欧州のトップにしても、ある程度行動の予測できるため、それほど注目しなくても良いという側面もあるのではないかと考えます。

 ちなみに最初に引用した国連副事務総長とは中国出身の呉紅波氏で、当然中国よりの発言を行うわけですが、副事務総長であることは間違いなく、これもある種の影響力と言えるかと思います。


5 最後に

 実際、ネットで探すと、習近平国家主席とオバマ大統領、ローマ法王の国連演説での対比の写真などもあり、なかなか興味深い対比となっております(联大演讲人好多?习近平奥巴马教皇对比图)。

 私はこうしたことは、正直あまり格好良くないと思うのですが、これも1つのメンツであることは間違いなく、メンツを重んじ過ぎるとこうなってしまうということかとも思います。



凜amuro001 at 23:50│コメント(7)トラックバック(0)

2015年09月11日

 『環球網』に「朴槿惠的支持率为何飚升」という記事が掲載されており、いろいろ興味深かったので、これについて少し。


1 記事の紹介

 一言でいってしまえば、韓国の朴大統領が訪中した時期に支持率が上昇した理由を中国側から見た記事です。

 朴大統領がアメリカや日本の圧力を跳ね除け訪中した結果、午前中に習近平国家主席との会談し昼食を共にし、午後は李克強首相との会談という特別待遇を受けることができたとしています。

 また天安門の上では、ロシアのプーチン大統領に次いで習近平の傍にいるなど、朴大統領は一貫して習主席の傍にいたとしています。

 こうした中国側の韓国を重視した態度に、韓国メディアも満足し、中韓関係は歴史上最も良好な時代を迎えたそうです。

 他にも、韓国は史上最大の経済代表団を派遣し、2.8億ドルの対中輸出案件をまとめたと、経済面の効果も強調しています。

 他に興味深いのは、今回の訪中に関し、日本側の風刺的な記事を批判し、歴史認識問題を持ち出していますが、アメリカについては、アメリカが理解したことを強調していることです。

 最後に今回の訪中の意義について、韓国の自主外交が成熟したこと、中韓関係が更に高度な段階に達したこと、東北アジアの国際秩序が冷戦のロジックを脱し、新たな段階に入ったことを意味するとしています。


2 中韓蜜月

 今回の朴大統領の訪中は、中国側の特別待遇を見てもわかるとおり、数少ない国家元首の確保という意味合いがとても強かったと考えます。

 韓国にしても、訪中直前の北朝鮮との緊張が高まっていたとき、結果として中国側の援助で事態の収拾ができたという面があり、大きな「借り」がありました(朴大統領が軍事パレードを参観した理由)。

 結果、お互いの利害が一致したわけで、ここのところ失点続きだった朴大領にしても、久々の明るいニュースで、国内の支持率も回復し、一安心といったところでしょうか。


3 毒饅頭

 ただ、結果として、韓国が中国側にかなりスタンスを移したのは間違いありません。これまで安全保障面ではアメリカに依存していたのが、中国もそれにも関与してくるでしょう。

 貿易は言わずもがなで、今回も多額の経済交渉が活発に行われたようですが、中国依存を強めることは如何なものかと考えています。

 中国はこれまで強大化した経済力にモノを言わせ、味方を増やしてきたわけですが(ヨーロッパの債務危機と中国2)、どうもそれもそろそろ限界に達してきたようです。

 正直中国の場合、拝金主義的傾向が強く、金を稼げばそれでよい的な発想があり、アフリカあたりでもかなり好き勝手に行動しているようです(中国人を大量に送りこんで鉄道を建設する中国はアフリカの「真の友人」か?)。

 韓国もそれで良いのかという話になるわけで、このまま毒を食らわば皿までとなるのか、かなり興味深いところではあります。


4 最後に

 やはり中国人は何だかんだいってアメリカを良い意味で、日本を悪い意味で意識しているのがわかって興味深いというのもあります。

 日本はあくまでやられるべき敵役でありつづけなければならないわけですが、アメリカは良い意味で克服すべき相手といったところでしょうか。

 つまり、アメリカはライバルと認めている面もあるわけで、結果「理解」も求めるわけですが、日本は情けない批判をこそこそと行っている位の感覚なのでしょうか。



凜amuro001 at 00:48│コメント(10)トラックバック(0)

2014年11月12日

  前回の「日中合意文書は互いに敗北?」の続きです。


1 不幸自慢

 前回書かせてもらったのは、どちらも自分が譲ったと思っているという視点で、心理学的にも人は他人にしてやったことは忘れないが、してもらったことはすぐに忘れる傾向がありそのままかと思っております。

 他人の良いところと悪いところを10ケずつ書けと言われた時に、悪いところはいくらでも書けるのに、良いところはなかなか書けないのと似ている部分もあります。

 何かあって誰かが「不幸」だと言い始めた時に、別の人が、そんなことはない「自分の方が不幸だ」と言い始め、最後には不幸自慢になってしまうのと同じ側面もあるのではないでしょうか。


2 大本営発表

 前回のエントリーの出発点は、中国メディアは基本的に日本が歴史を直視することを認めた、尖閣諸島という領土問題が存在することを認めた、結果大勝利という立場だったわけですが、それに対して国民はどうも違う認識らしいということです。

 中国の「マスコミ」は、良くこうした大本営発表を行っているわけで、結構それを真に受けている人もいます。

 ただ、今回は騙されなかったというよりも、日本に対する悪印象(日本にしてやられた、日本を信用できない)という思いが、中国政府の発表より勝ったという話で、自分たちがたきつけた効果が思ったより効いてしまったという話で、興味深く思っています。


3 「会談」「会見」

 あと、小細工レベルでしかないわけですが、以前書いた様に(APECで日中首脳「会談」は開催されるのか)、今回の日中首脳会談が正式の「会談」か「会見」にしか過ぎなかったのかという話があります。


 『毎日新聞』の「首脳会談:日中のみ国旗なし 習主席と握手の写真」という記事が一目瞭然で大変興味深かったのですが、「韓国やベトナムなど6カ国の首脳と習主席が握手する写真6枚」の中で、「安倍首相の時だけ背景に国旗がないことが一目で分かるように」なっております。

 『毎日新聞』は「通常の首脳会談とは異なる意味合いを読み取らせようとしている」としています。

 実際、オバマ大統領との米中首脳会談では、「会唔」を使っているのに対して、日中首脳会談に対して中国外務省は「会見」という表現を使っており、一段下という取り扱いをしております。

 他にも、習近平国家主席が硬い表情や無言だったことなどを注目する記事もありましたが、ま、内心いろいろ思うところがあり、国内向けのポーズなどもあったという話かと思います。


4 韓国

 日中首脳会談が行われても、それだけで急激に関係改善が進むことはなく、正直あまり意味がないのではないかと思っておりました。

 ところが今回の日中関係改善に伴って付録の様についてきたのが、韓国との関係改善です。APEC首脳会議の夕食会で、席が隣同士となった安倍首相と朴大統領が、話し合いを行い、外務省局長級協議の継続で一致しました。

 これまでの韓国の頑なな態度とは異なり、日中の関係改善が進んだことにより、一国取り残されることになった韓国が焦って関係改善を打ち出したという面は強いかと思います。

 米中首脳会談でも、今後のアジアの主導権争いなどを巡って話し合い(駆け引き)がなされているかと思いますが、これについても両者がどのようなコメントを発表するかなど、大変興味がつきません。


5 最後に

 そういう意味で当初あまり期待していなかったAPECの首脳会談ですが、結構大きな意味を持っており、かなり楽しい駆け引きが行われており、小馬鹿にしていたのをも少し反省しているところです。



凜amuro001 at 22:41│コメント(16)トラックバック(0)

2014年11月11日

 日中両政府の合意文書が発表され、APECでは、3年ぶりとなる日中首脳「会談」が行われました。この合意文書ですが、いろいろと玉虫色のところがあり、この解釈を巡って日中双方でいろいろな見解があるようです。


1 合意文書

 合意文書をまとめると以下の4つになります。

(1)双方は、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていく。
(2)双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神で、両国関係の政治的困難を克服する。
(3)双方は、尖閣諸島など東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
(4)双方は、様々なチャンネルを活用し、対話を再開し、政治的相互信頼関係の構築に努める。

 ある種(1)、(2)、(4)は総論的なもので、あまり意味のあるものとは思えません。ただ、中国のメディアなどを見ると日本に「歴史を直視」させることに成功したと、成果を強調するものもあるので、何とも言えませんが。

 問題は(3)とここに触れられていない靖国参拝をどうとらえるかという問題かと考えます。


2 玉虫色

 (3)だけまとめないで、そのままの形で提示させてもらったのですが、確かに日本側はこれまで前提条件なしの対話と求めてきたにもかかわらず、こうした表現になったというのは、それだけ譲歩したといっても良いかと思います。

 典型的などうとでも解釈できる文章で、「異なる見解を有している」対象は東シナ海における天然ガスの開発問題や領空問題など(自分たちで設定した防空識別圏で、苦悩する中国)、様々な緊張状態のことと日本側は解釈するかと思います。

 これに対し、「異なる見解を有している」ということは中国側にしてみれば、日本に領土問題を認めさせたというところでしょう。

 実際、そういう解釈にたって、門田隆将氏は「尖閣の“致命的譲歩”と日中首脳会談」で、「『領有権を中国が主張していること』を日本側が認めたこと」だとし、「中国の“力の戦略”に、ついに日本は屈した」とまでしております。


3 中国の敗北?

 それに対しては興味深かったのは、『Record China』が掲載していた「日中関係改善の合意、明らかに中国の敗北だ!中国人の怒りの声―中国」です。

 これは表題をみてもらえば一目瞭然ですが、靖国参拝について言及されていないことや、尖閣諸島は国有化されたことに対し、中国が何もしえないことに対する失望感(「中国はなにを得たのか?日中友好だ!」)がネット上で見受けられるという記事です。

 つまり今回の合意文書について、中国側が敗者(妥協しすぎ)と考える中国の方も結構いるという話です。

4 靖国参拝

 おそらく今回の文書で争点の1つであったのが、靖国参拝で、中国側としては何としても参拝しないという文言を入れたかったでしょうが、日本側が譲らなかったというところでしょう。

 ただ、これを一概に勝利と見るのはかなり難しい面があり、習近平国家主席にしてみれば日本側を信頼してあえて盛り込まなかったという言い訳も可能です。

 もし会談後に安倍首相が靖国神社を参拝すれば、習主席のメンツがつぶれることは間違いなく、更なる関係悪化を招きかねません。そうなると、今回無理をして首脳会談をした意味もなくなってしまうわけで、名を捨てて実を取る戦略ということも言えるかもしれません。

 ただ、場合によっては、安倍首相は、帰国直後に靖国神社を訪問して、「中国何するものぞ」的姿勢を示して、右寄りの方を喜ばせるという戦略も使えなくはないので、何とも言えません。


5 最後に

 結局成果を強調したい人にしてみれば、今回の「会談」は大成功で、関係改善の一歩となりうるものという見方をするでしょうが、そうでない人にしてみれば、「1回会ったから何」というところでしょう。

 外交はある種騙し合いの意味合いが強いので、互いに自国民には格好の良いところを見せようとするわけで、今回はその典型と言えるかと思います。

 ただ、互いの国民にしてみれば、自分たちが妥協したという意識が強く、もっと政府に強く出てくれという意識を強く持つというのはよくある話で、隣の芝生は青いのと、自分だけがという意識は皆が良く持つということではないでしょうか。



凜amuro001 at 06:10│コメント(44)トラックバック(0)

2014年09月23日

 『環球網』が掲載していた「港媒:习近平访印 中印全方位合作前景可期」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。


1 記事の紹介

 表題にあるように、これは香港の『中評社』が掲載していた記事を転載したものです。先に内容を一言で言ってしまうと典型的なヨイショ記事です。

 当然、それだけだったら、取り上げる気もなかったのですが、こうした記事でも彼らが何を考えているかわかるというものとなっています。結構長い記事なので、私が興味を引かれたところを適当に訳す形で紹介させていただきます。


 9月17日から19日まで、中国国家主席習近平がインドを初めて訪問しているが、中印関係の新局面を開くもので、世界の注目を集めている。

 中国の目覚ましい発展に伴い、インドは中国と協力することによって、政治的経済的に大きな利益をもたらす。

 そのため、モディは訪日した際に、表面上は日本に対して、大変親しみのある態度を示したが、実質的な協力関係にはいたっておらず、インドは日中のバランスでは、中国により重きを置いている。

 アジア地区、国際社会で、より実力、影響力のある中国こそがインドの求めるパートナーであり、これこそが国際社会の現実で、インドの発展に必要なものだ。

 この後は、習近平が大変実りある発言をしたという部分が続きますが、はっきりいって決まり文句の域をでるものではなく、全くおもしろくありません。

 領土問題は「敏感」な問題としつつも、モディは「チベットは中国の領土の一部分であり、インドはチベットがインドでいかなる反中の政治活動を行うことも認めない。」と述べたとしております。

 最後は本当にすばらしく、習近平は「中国とインドが同じことを話せば世界は傾聴する」、モディは両国の関係を「体は2つだが、心は1つ」と述べたと伝えています。


2 ゼロサムゲーム

 典型的な中国の発想ですが、インドは日本と仲良くすると中国と敵対すると思っているようです。よく中国が日本を批判するときに使う冷戦時代の発想そのままですが、とても受け入れる気にはなりません。

 米ソの冷戦時代はまさに陣取りゲームで、資本主義圏に入るか、共産圏に入るかという色分けを行ったわけですが、今の世の中、それほど単純ではありません。

 どう考えても両天秤にかけて、双方から利益を得るという方策が最も効率が良いのは、東南アジアが日本と中国を天秤にかけて、双方からできるだけ多くのものを得ようとしているのが典型です(どちらと敵対しても国が成り立たないという切実な事情もあります)。

 インドにしても全く同じで、中国は隣国である以上、これと敵対するのは得策でなく、仲良くしておいた方が良いのは間違いありません。

 しかし、隣国の常で関係はあまり良くないわけで、中国に対する牽制として、日本、アメリカという選択肢が出てくるわけですが、当然の話かと思います。


3 友好

 それに国家元首が来訪した際に、それなりに礼を尽くすのは当然で、誰も関係を悪化させるために訪問するわけではないので、こうした友好が強調されるわけですが、こうした中国の報道を見ていると少しやりすぎかと思います。

 他にも習近平国家主席の夫人がインド国民を虜にしているなどの報道もあり、いろいろ思うところがありました。

 ただ、これは日本のマスコミも良く行うもので、難しい政治の話題ばかりでは、読者に読んでもらえないために、こうした記事を配信することがありますが、私的には女性の役割を軽視しているようで、あまり好きにはなれません。

 それに、中国とインドの共同といった場合、どうもアジアの2大大国が互いに手を取り合って、何かを決めれば、他国はそれに従わざるを得ない的なニュアンスも見え隠れし、こうしたパワーポリティクス丸出しの態度も如何にも中国ですが、全く好感が持てません。


4 最後に

 典型的なヨイショ記事であるが故に、如何にも中国的な発想がそこかしこに現れており、これぞ中国と思う記事でした。

 ただ、普段からこうした記事しか見ていないと、どうしてもこういう発想に影響を受ける人も出てくるという話で、それはそれで、国民にとっても、まわりの国々にとっても不幸だとも考えます。



凜amuro001 at 07:35│コメント(9)トラックバック(0)