安倍
2015年08月10日
ディズニーのツイートがいろいろ問題になっているようなので、これについて少し。
1 事案の紹介
『スポニチアネックス』の「ディズニー“不適切ツイート”謝罪 長崎原爆の日に『おめでとう』」によると、「ウォルト・ディズニー・ジャパンは9日、公式ツイッターが『長崎原爆の日』の同日に『なんでもない日おめでとう。』と投稿し、物議を醸した問題について謝罪した」そうです。
このツイートは8月9日に「『なんでもない日おめでとう。』と日本語でつぶやかれた」もので、「『ふしぎの国のアリス』のアリスがケーキを手に『A VERY MERRY UNBIRTHDAY TO YO!』と書かれたイラストが付いてい」ました。
「『誕生日以外の残り364日』を祝うもの」でしたが、「この日が長崎原爆の日だったことから『きょうじゃない』『日本の公式がするツイートじゃない』などとインターネット上には批判の声が殺到」し、炎上する騒動となりました。
結果、「9日午後3時には当該ツイートを削除。午後7時すぎに謝罪文を掲載」するに至ったという次第です。
2 「悪意」
まともに考えると、「誕生日以外の残り364日」なので、いつでも良かったわけですが、たまたま8月9日にあたってしまったというところでしょう。
このツイートをした人に悪意があったとはとても思えず、深い考えもなしに行ったツイートが「なんでもない日」という言葉のために、悪意のある言葉ととられてしまったというパターンかと思います。
正直このニュースを初めて見た時、8月9日はまずいだろうと思ったのですが、この記事を見てすぐに思いだした事件があります。
3 記念日
2011年9月18日に中国で大人気の蒼井そら氏が、中国版ツイッター・微博で「Vサイン」を示す写真を掲載しつつ、「超開心(超楽しい)」とつぶやいて、フォロワーの批判を浴びて謝罪したことがあります。
9月18日は、中国にとって日本がらみでは忘れることのできない日の1つで、満州事変勃発(柳条湖事件の日)となっています。
よりによって、この日に勝利のVサインと「楽しい」とあわさった結果、多大な非難がよせられたという話です。
同様に今年(2015年)の7月7日、在中日本大使館が、中国版ツイッター・微博で七夕を祝うメッセージを書き込んだところ、炎上騒ぎが起こっています(参考「尖閣問題について中国人が考えた対処法)。
札幌のビール祭りの宣伝を兼ねて、七夕を祝うメッセージと「1年のうちで最もビールがおいしい季節がやってきました!」と書き込んだところ、7月7日は「七七事変(盧溝橋事件)」だろうという批判が起こったというものです。
4 感情
蒼井そら氏の事件には何をそこまで神経質になることがあるのかと思ったものですが、日本大使館の書き込みには、少し注意が足らなかったのではないかというのが正直な感想です。
たぶんこれは、いじめ問題などにも共通するのでしょうが、傷つけられる立場に立たないと本当のところで物事は見えてこないということなのでしょう。
日本人にとって原爆投下が特別な感情を持ってとらえられる日の様に、中国人にとっては満州事件関連の日というのは無視できる日ではありません。
蒼井そら氏という一個人の発言であればと思うのですが、こうした敏感な日について不用意な書き込みをする大使館職員には少し脇があますぎるのではないかと思わざるを得ません。
5 最後に
物事は自分がやられてみて初めて理解できることが多々あり、今回の事件も原爆投下という日に「無神経」と言われても仕方のないツイッターをして批判を受けたわけですが、多分日本人だからこう思うという話でしょう。
正直アメリカ人にどれだけこうした感情が理解できるかという面もありますが、これは日本人が7月7日に中国となると「七夕」しか思いつかないのと、同じなのかもしれません。
念のため補足しておきますが、蒼井そら氏も在中大使館のツイートも中国語で中国向けに書かれていたからだというのが最大の原因です。
今回の騒動も日本語でなく、英語でアメリカ国内でつぶやいたのならおそらく誰も問題にしなかったでしょう。斯様に誰に向けているかという問題があり、特定の人に向けているなら、それなりの注意を払うべきだというのが今回、私の得た教訓です。
2015年02月15日
いつもお世話になっている 『BLOGOS』で木曽崇氏が書かれていた「日本の都会の街並みは、それはそれで美しい」がいろいろ興味深かったので、これについて少し。
1 記事の紹介
これはもともとMay_Roma氏がDMMニュースに書かれていた「日本のヒドすぎる『景観』の根底にあるもの」に対する批判的な記事です。
May_Roma氏は、そもそも「ネトウヨ諸氏と安倍政権」が提唱しているとされる「美しい国」日本を否定し、「少なくとも景観に関しては、我が母国を「美しい」と褒める外国人はそれほど多くはないのは事実」としています。
そのうえで、日本を「美しいとは言えない混沌と混乱」と形容されています。
それに対して、木曽氏は、「街並みを構成するそれぞれの要素の下には、必ずそこで生活する個々の人間の営みがある」として、「景観の中に本当に見るべきものを見ていないだけ」と批判されております。
2 景観
私の意見はどちらかと言うと、木曽氏に近く、中国大陸(今回の場合は香港の方が適当かもしれませんが)で生活したことのあるものとしては、やはり都市は活気があってこそという気がします。
多分これは、個人の趣味の問題とか、海外と一言で言ってもどこで生活されたかによって大きく意見が異なるところなのではないでしょうか。
May_Roma氏が生活されているイギリスやフランスなどでは、「景観」という言葉が重んじられ皆が同じ色彩の家を建てるなどいろいろな制約があります。
ただ、私の意見としては、それを一方的に「良い」ものと簡単にみなすのはどうかと思っており、そこから一方的に他の価値観を断罪するようにダメ出しするのはあまり好きにはなれないという話です。
3 価値観
確かに人にはいろいろな価値観があるので、欧州の様にきちんと統一された色彩に基づく街並みが良いという人もおられるでしょう。
ただ、そう思っていない人もいるという話です。実際、私は都市は、こうした何でもありの方が活気があり、常に変化し続けるべきだと思っています。
それと、「外人」の意見を出して日本の景観を批判しているMay_Roma氏のやり方があまりに時代遅れで、好きにはなれないという面もあります。
つまり、ここでいう「外人」とは欧州の景観になれたいわゆる金髪蒼顔の白人のことを指しており、アジアの人などは想定してないのは明らかです。
なぜなら、アジアには日本以上にごみごみとした地域はたくさんあり、こうした地域から来た人にしてみれば、十分きれいだと考える余地は多いにあるからです。
4 最後に
それとおそらく、May_Roma氏は安倍首相に対する批判(あてこすり)をしたくて、「美しい国」をからかったのでしょうが、だったらこうした形ではなく、首相の主張している内面なども含めて批判すべきであって、こうした形での批判はどうかと考えます。
また、批判をしたいのであれば、「外人」の意見などに頼らず自分の意見ですべきで、こうした虎の威を借る狐的な発想はあまり私は好きにはなれないという話でもあります。
2014年06月08日
ここのところG7がらみのエントリーばかりですが、今日もG7に関するエントリーです。
1 記事の紹介
『日刊ゲンダイ』が掲載していた「立ち話5分だけ…G7でも『日米首脳会談』拒否されていた」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。
サミットで「安倍首相は『オバマ大統領とも話をした』と、記者会見でもっともらしい説明をしていたが、本当は首脳会談を申し込んだが、「ノー」と冷たく断られていた」という記事です。
「サミットが始まるまでの時間を利用して、なんとか『日米首脳会談』を実現させようとシャカリキになっていた。しかし、オバマ大統領は最後まで「ノー」。5分足らずの“立ち話”をしてもらうのが精いっぱいだったらしい」そうです。
そして外務省出身の天木直人氏の「同盟国が首脳会談を申し入れているのに断るのは、よほどのことです。・・・もともとオバマ大統領は安倍首相を軽視していましたが、今年4月、国賓として来日した時に安倍さんと会い、改めて<この男はダメだ>と結論を出したのでしょう。安倍首相に見切りをつけたのだと思う。安倍さんが総理でいる限り、もう二度と首脳会談は行われない可能性が高い。これは日本にとって深刻な問題ですよ」という発言を紹介しております。
そのうえで、メディアはこのことを報道せず、「『東アジア情勢の議論は私がリードした』という安倍首相の自慢話をそのまま流している」と批判しています。
「サミット報道も、安倍外交によって〈中国包囲網〉が成功したかのように伝えていますが、〈中国包囲網〉など完成していませんよ。首脳宣言には〈中国〉という国名さえ出てこない。先進国は中国と対立するつもりはない。むしろ、中国問題に執着する安倍首相に困惑しているのが実態です」という「外交関係者」の発言も紹介されています。
2 中国に対する批判
私は今回のG7での首脳宣言は間違いなく中国に大きな影響を与えたと思っております。だからこそ前回書いたように中国メディアなどは火消しに必死になっているわけです(G7首脳宣言が中国に与えた影響と強がり)。
そしてそこでは、小笠原誠治氏のブログを変な形で引用してまで反論していたわけで、突っ込みどころが満載でした。そういう意味で彼らに運がなったと思っているのが、もしこの記事の存在で、これがもう少し早く出ていれば、喜んで転載されたのではないかと考えます。
3 安倍首相嫌い
オバマ大統領が安倍首相をどのように考えているのかについては、私もいろいろ思うところはあり、確かに理想主義者であるオバマ大統領はあまり安倍首相が好きではないのかもしれません(オバマ大統領の理想とサウジアラビアと靖国参拝)。
しかし、だからといってそれが悪いことだとは限らず、確かにアメリカとの同盟関係は大事ですが、あまり振り回されるのもどうかと思っておりますし、1年ほどの短命に終わって政権などからみればはるかにマシかと思っております。
それともう一つ思ったのが、『日刊ゲンダイ』の安倍首相批判となると出てくるのが天木直人氏で(アメリカの報告書を使って安倍首相を攻撃する嫌米派)、今回も天木氏は、かなり言いたい放題ですが、「見切りをつけた」とまで言うのはどうかと考えます。
個人的には嫌いでも、自己の利益のために嫌いな人とでも手を組むのが政治家で、今ここでオバマ大統領は安倍首相に見切りをつけたとすれば、後は誰と手を組むつもりなのか聞いてみたいところです。
私はこれまでも何度か天木氏の言説についてはいろいろ思うところがありましたが(天安門事件前の自動車事故で中国崩壊?日米安保崩壊?)、今回の発言についても、かなりどうかと思っております。
4 最後に
ただ、今回のG7が日本に有利に働いたとしてもそれは、あくまで先進諸国内の話です。以前の様に、先進国が世界をリードしていた時代ならともかく、今は新興国の力なしには世界が円滑に動かない時代となっている以上、必要以上に浮かれるのはどうかと思っています。
そういう意味でこういう意見の存在も有りかと思いますが、どうしても安倍首相憎しが先に立っているような気がして、少しどうかと思うところがあったが故の今日のエントリーでした。
2014年04月27日
前回はオバマ大統領の訪日について書かせていただきましたが(オバマ大統領の訪日は「成功」だったのか)、私の書き方が悪かったせいか、日本にとって「成功」だったのかという意味にとられた方が結構おられたようでした。
前回私が想定していたのは、オバマ大統領にとって「成功」だったかという視点だったわけですが、中国紙『環球時報』では「美媒批奥巴马访日“失败”送“大礼”却空手离去」という記事で、よりはっきりした形でそれを提示していたので、これについて少し。
1 記事の紹介
最初に記事を翻訳したものを簡単に紹介させていただきます。
アメリカのオバマ大統領は25日午前にTPPが合意に達しなかった「日米共同声明」を携えて、日本への公式訪問の日程を終えた。これは大統領が特別機に乗る直前の慌ただしい中発表されたもので、今回の訪日の最大の目標とされていたが、苦い結果となったようだ。
安倍首相は、尖閣諸島の問題を初めて首脳声明の中に書き込むことができて「画期的な意義のある声明だ」と歓呼したが、アメリカのメディアは「オバマ外交の日本での挫折」に焦点を当てており、尖閣諸島で日本に「桃を投げた」のに、日本から「李はかえって来なかった」としている。
オバマ大統領は24日安倍首相に対し、率直に「もしTPP交渉で成果がなければ、ワシントンは今回を訪日を失敗とみなす」と述べた。
韓国の『ソウル経済』は25日に、オバマの訪日はアメリカにとって、実際の利益はなかった。「豪華な夕食と、あらん限りの力を尽くした厚遇もオバマの今回の訪問の苦渋を覆い隠すことはできない」としている。
アメリカメディアに至っては、今回の訪日は、大統領はアメリカ人民を代表して「ここの寿司は美味しい」ということを伝える以外に何の意味があったのかとまで風刺している。
2 尖閣諸島
『人民日報』系列の『環球時報』がこうした記事を掲載する目的は明らかで、尖閣諸島に対する意趣返しでしょう。
中国の「神聖なる領土」である尖閣諸島に対して安保の適用を明言するなど中国にしてみれば言語道断で(アメリカが尖閣問題で日本支持を表明したことに対する中国の反応)、今回のオバマ訪問は全く意味がないものにしたいという意図がありありです。
こうした時に当該国の新聞報道を持ってくるというのは中国のいつもの常套手段で、中国がそういっているのではなく、当該国の人(マスコミ)ですらこう言っているのだという形での批判をよく行います(中国のノーベル平和賞評価)。
私的には、これは国内に健全な反対勢力が存在しているということを意味し、良いことだと思うのですが、どうも中国では国内がまとまっていないという悪い意味で使用することが多いようです。
3 オバマ大統領
私は今回の訪問が全く無価値だっとは思っておりませんので(オバマ大統領の来日の意義)、中国の様にここまで批判するつもりはありません。
ただ、オバマ大統領の理想主義的傾向にはいろいろ思うところがあり、政治家としての能力には正直いろいろ疑問符が付くのではないかと考えています(オバマ大統領の理想とサウジアラビアと靖国参拝)。
日本で尖閣諸島についてリップサービスを行ったのに、あまりこれといった成果を得られたわけでありませんでした。韓国でも同じように慰安婦問題でリップサービスを行ったわけで、それで何か得るものがあるのか疑問です。
私的には日米関係をより難しくし、日韓関係で韓国がより日本に強い要求をだすことを後押しするようになっただけではないかと考えております。
4 最後に
やはり政治家たるもの発言は大事で、実際オバマ大統領は演説のうまさで大統領に上り詰めたようなところがあるわけですが、政策面で思うような効果を上げることができていないという感が否めません。
結果、今回日本と韓国でそれぞれリップサービスを行ったものの、それで何がどうなるというわけではなく、問題だけが大きくなったような気がしないでもなく、そういう意味で考えると今回の訪問の成果はいろいろ疑問符が付くことは確かかと思っております。
2013年09月17日
『新華経済』が「中国専門家が安倍首相の対中政策を分析、「近い将来、関係改善の動きをする」―中国メディア」という記事を配信しており、いろいろ思うところがあったので、これについて少し。
1 記事の紹介
『中国網』に掲載された中国社会科学院日本研究所の何暁松氏の意見を紹介したものです。これによると、以下のとおりとの分析だそうです。
安倍政権は中国との関係が悪いままでは日本経済にとってマイナスであることを意識している。釣魚島(日本語名称:尖閣諸島)問題を棚上げし、時間が過ぎれば、両国は新たな友好関係を築くことができるとの認識だ。
安倍晋三首相は小泉純一郎首相よりも保守的だが、現実主義者である。8月15日に靖国神社を参拝しなくとも中国が厳しい態度をとったため、もし参拝すればさらに強烈な反発を買うことを知っている。
先のG20サミットで安倍首相は中国の習近平主席と立ち話をし、「歴史に対して謙虚に向き合い、中国との関係改善に努力していきたい」と語った。近い将来、日本は関係改善のための措置をとるだろう。
2 尖閣諸島
『中国網』に掲載された記事なので、当然中国の主張にそったものしか掲載されないわけですが、現実問題として、安倍政権が、尖閣諸島問題で「問題を棚上げ」するという殆どあり得ないことを書いています。
日本の公式見解は、「領土問題は存在しない」というものなので、「棚上げ」するべき問題など最初から存在するはずもないという立場です。それをそこまで譲歩するからには、それ相当の理由が必要となります。
この記事では、日本は中国との「関係悪化が日本経済にとってマイナス」だからとしております。確かに、関係が悪化した状態が日本経済にとってプラスということはあり得ませんが、これは中国も同じ話です(「日本企業が中国から撤退するはずがない」と思いたい中国)。
3 安倍外交
確かに安倍首相は保守的と言われていますが、「現実主義者」かどうかは不明です。元記事では、靖国神社に参拝しないことを以て、「現実主義者」と判断しているようです。
中国の記事を見て、しばしば思うのがあまりに「靖国神社参拝」を重要視するあまり、それだけが基準となっているのではないかとしか思えないことが良くあります。
その1つの例として、東京オリンピック開催が決定したとき、中国は真っ先に靖国参拝とオリンピック開催を結びつけて論じてきていることなどが挙げられます(東京オリンピック開催を利用しようとする中国)。
また、中国に言わせれば、靖国神社に参拝したかどうかが「右」かどうかを判断する基準となりうるようで、本来であれば、その人の宗教観なり、中国観なりを検証してみなければ、何もわからないはずですが、どうも参拝したという一点だけで、中国に言わせれば十分なようです。
4 最後に
中国の場合、韓国などと異なり世論をあまり気にしなくも良いということを以前書きましたが(自分で盛り上げた「反日」に縛られる韓国外交)、そうは言っても全く気にしなく良いというわけではありません。
ネットなどでは結構政府に批判的な書き込み(直接的ではありませんが)が見られたり、デモも発生しており、政府としても全く気にしなくて良いとはなかなか言えません。
結果、関係改善をするにも日本側が折れたという形をとることが必要となるわけですが、安倍首相が「歴史に対して謙虚に向き合」うなどと発言したというのは私は初耳でした(念のため補足しておきますが、当然嫌味で書いております)。