5月13日、私は長崎県長崎市の同人誌即売会「気分は上々」に一般参加させていただいた。
この「気分は上々」は、長崎市を地盤に10年以上も継続開催し続けている老舗の即売会。
今回が49回目、次回が節目となる50回記念とのこと。

以前から名前は知っていたが、これまでは都合が付かず来訪は叶わなかった。
今回は日程にうまく都合を付ける事ができたので、私の野望【全都道府県即売会制覇】の一環としての目的もあり、急遽参加を決めた。

会場の長崎市民会館は、路面電車の停留所が目の前でアクセス便利。
駐車場が無いのが車組には気になるだろうが、会場周辺はコインパーキング等もそこそこあるので、さほど困らないだろう。
立地的には、決して悪くない。

「気分は上々」のサークル数は、上下動が少し大きめで、小さい時は30、大きい時は100に近づくレベル。平均は50前後だろうか。
今回は58サークル・75sp。平均より「やや多め」のレベルと見ている。

ジャンル傾向は、イナズマイレブンが10以上と突出していたが、他に取り立てて参加サークルの多いジャンルは無かった。
敢えて申せば、タイバニ・うたプリ・ポケモン・銀魂・バサラ・無双・テイルズ・ボカロ・東方…これらのジャンルが3〜5サークル程度でほぼ均等に並んでいるといったところか。

即売会の配置は、ジャンル毎・場合によってはカップリング毎に分けるのが主流だが、「気分は上々」は少し違う。
「気分は上々」の特徴は、ジャンル考慮せずのバラバラ配置である事。
バラバラ配置は、一部の地方オールジャンル即売会にて、稀に見かける。
100sp未満で全sp巡回出来る程度の規模のイベントが、特定ジャンルのみ訪問するのではなく他のジャンルも含め回って欲しい、との願いを込めて実施している。
このやり方は、隣接サークルが異なるジャンルだと仲良くなりづらい、という欠点がある。個人的には、余り好きじゃあない方法だw
ただ、こういう考え方も一つのやり方だとは思うので、小規模な即売会ならば、選択肢の一つとして検討しても良いのでは、という気もする。

「気分は上々」での配置の面白い所は、バラバラ配置としつつも、同ジャンルの2サークルを1単位として、その単位ごとに配置している所。例えば、

【うたプリ→うたプリ→イナイレ→イナイレ】で並んでたり

【ボカロ→東方→東方→ボカロ→ボカロ→テイルズ→ボカロ】と並んでたり。

バラバラ配置はバラバラ配置でも、片方の隣だけは同ジャンルのサークルとなるよう工夫し、バラバラ配置の欠点を補っている。

全スペ楽に巡回できる規模だし、参加者からとりわけ苦情も聞かれない。
思い切った方法だとは思うが、一つのやり方かな、とは思う。
寧ろ、複数ジャンル掛け持ちの「よろず」ジャンルのサークルさんだと、下手にジャンル分けされるよりも、頒布物を売りやすいかもしれないし。


開場は11時だが、意外に初動は少なめ。
開場直後のサークルの欠席率は、20%ぐらいで高め。コスプレイヤーも全然いない。
正直大丈夫か?とも思ったが、レイヤーもサークルも一般も、開場後に姿を見せる方が多い。
どうやら初動が弱く、尻上がりに来場者が増えるという展開のようだ。

12時手前になると、だいぶ人出が増してきた。欠席のサークルさんも減っており、単なる遅刻参加だったと分かりひと安心。
サークルさんの中には、一般が集まりダマができているサークルさんもいるほど。
13時近くに来場した友人曰わく、コスプレイヤーでごった返してたとの事なので、やはり「尻上がり」に参加者が増えるという事か。
なんだ普通の盛況即売会ぢゃねえか。初動に惑わされたわw

但し、この日は長崎市内の中学校の多くで運動会が開催されたとの話。中学生の参加が見込めない日なので、普段だったらこれに中学生の参加も上乗せされ、更なる盛況を見せたであろう。


この「気分は上々」の特徴は、スタッフに高校生スタッフやコスプレスタッフを積極的に登用している所。
今回初スタッフの方もそこそこいらっしゃるようだ。
どうやら、学生がスタッフ参加するに敷居が低い雰囲気がありそうだ。

高校生にスタッフが務まるのかと不安な向きもいらっしゃるかもしれないが、経験のある方とペアで業務を行っており、経験者がフォローしてくれるからそんな問題は無いだろう。
経験者に助けられ指導を受けつつ、若手スタッフの成長を促せる仕組みにもなっているだろう。

ペアを組めるという事は、それだけスタッフが豊富な事でもある。スタッフは20人以と結構多い。
高校生が気軽にスタッフとして参加できる敷居の低さゆえ、スタッフが多く集まるのだろう。
そして、集った若い人達の感性やパワーを、この「気分は上々」は上手く取り入れている。

例えば、「上々カード」という企画が、参加者間の交流を促す目的で、新たに導入された。
「告白カード」の要領で、サークルさんなりコスプレイヤーさんなりに、メッセージカードを渡すだけの簡素な企画。
ただ、文字にする事で、お気に入りのサークルさんやコスプレイヤーさんに、感想を伝えられる。
交流のきっかけになるだろうから、面白い企画だとは思うが…これ30代40代の主催には決して思い付かない発想だぞ?
どう考えても、こういう告白カードっぽい企画は、10代(ないし20代前半までだろう)の女の子の発想だ。
主催氏は、10年以上に及ぶ主催経験をお持ちの、超ベテランだ。この発想を思い付く年代でも無い。
若い世代が企画を発案し、主催がそれをバックアップ/フォローしている構図と考えるのが自然だろう。

こうして見ると、この「気分は上々」というイベントは、高校生ら若い世代を大事にし、彼女らの若い感性や力を、上手に活かしている。
そういう構図が浮かび上がる。

開場までの待機中、スタッフミーティングやってるのが目の前で聞こえたが、主催氏は、決して細かいことをガミガミ言わない。
「スタッフも楽しみましょう」「但し参加者には笑顔で!」と最低限の心得を説いただけだった。
この言葉の遣り取りからも、下手に規律等で雁字搦めにせず、スタッフにのびのびと仕事をさせている様子が窺えた。
そういうのびのびと仕事をさせる方針が、若い世代のスタッフ参加への敷居を下げる。
結果、若い世代がスタッフとして活躍し、彼女ら若い感性がイベント運営の力となる。
若い世代の人材活用という点で、このイベントは非常に優れており、他イベントのお手本ともなるだろう。

地方即売会は学生など若い人々が主力参加層だから、若者の力を運営に活かすことは、若者目線の運営にも繋がる。
そして、要所要所を締め若手をフォローするのは、主催氏らベテランの経験。
若手とベテラン、双方の長所が生かされた運営になっていると感じた。

そういう若手とベテランとのハーモニーが生んだ企画は、他にも様々存在する。
「30秒CM」は、サークルの宣伝紹介を、30秒の制限時間の中で行うというもの。サークルさんの自己アピールに繋がる企画だ。
マイクは利用するが、ステージを利用するほどでもないので、サークル頒布への悪影響は無いだろう。
他、「アナログTwitter」などの落書き系企画や、萌えジャンルの人気投票企画があったり。
セルフサービス制のドリンクサービスがあったり、駄菓子を用意してつまみ放題なんて趣向もあった。

パンフレットを拝見すると、「オタク的観光MAP」と称した読み物が面白い。
長崎を舞台にした作品紹介と、どこが舞台になったかの解説が盛り込まれている。
「闇の末裔」の舞台が長崎だったとは、私も初めて知ったw

パンフレット内・コスプレ諸注意のコーナーも面白い。
単なるマナーの啓蒙に留まらず、コスプレイヤー向けに有用なアドバイスも盛り込まれている。
例えば、「ツーショットは目線を交差させると絵になる」「とか衣装が黒いと動きが分かりづらいから注意」とか。
コスプレイヤーの目線に立ったアドバイスを掲載する辺りが独特であり、運営がコスプレイヤーの目線に立っている事も示している。

そして私が最も感銘を受けたのは、コスプレ諸注意欄の、このセリフだ。

>「同人誌即売会」は「コスプレイベント」ではなく「コスプレが許可されているイベント」なんです。
(中略)
>双方とも目的を持って参加しているから互いに尊重しあおう

サークル、コスプレイヤー双方を思いやったコメントに、大いに同感した。
…あ、パンフレットの注意書き関係は、重要な注意点を散りばめつつも、適度に遊び心があって、自分好みだったりしますw

ここまで述べてみて、このイベントは【コスプレ・サークル双方を尊重したイベント】という顔が見えてきた。
コスプレに対しては、先述の親切なアドバイスに加え、即売会終了の15時以降に即売会会場を丸々コスプレ会場として運用。さらには、コスプレ用の小物貸出、別途専用撮影ルームを用意…コスプレイヤーに対しての親切な取り組みが多々ある。
一方、サークルに対しての取り組みは、先述の30秒CM・上々カードなどの企画もあるし、加えてパンフレット内に「頒布上のワンポイントアドバイス集」を掲載している。コスプレイヤーへの相互尊重を求める呼びかけも、サークルの為になっているだろう。

唯一気になった事としては、サークル入場がやや遅め(10:30)なことだろうか。
開場時間が11:00だから、サークルの準備時間が30分しかなく、サークル的には慌ただしい。

設営は9:00頃からやっているので、一時間半かけてのじっくりとした設営。
スタッフの要員が不足している訳でもないのだから、もう少しスピードアップして、設営時間を短縮する余地もありそうだ。
仮に何らかの事情で10:30まで準備に充てないと辛いという事なら、11:30開場にして、サークルの準備時間にも余裕を持たせてはどうだろうか。
今回を見る限り、参加者の動員は尻上がりだし、サークルも遅刻が多い事から、11:30開場に遅めた方が、参加者の実情に沿うかもしれない。
この当たりは、今後の検討材料としても良いだろう。


総じて見て、この「気分は上々」は、高校生ら若手の感性や力を活用し、運営に活かしている同人誌即売会と言えよう。
また、サークルの立場、コスプレイヤーの立場、双方を尊重し配慮する事により、楽しい場をつくり上げようとしている即売会、とも位置付けられよう。
この二点が、この即売会の極めて優れた点であり、他の即売会の運営にも参考になりそうな特長と言えようか。
長崎まで足を運んだ甲斐を感じた、良即売会であった。