前回記事では、「浦賀船渠ノ航跡」中止について、中止の経緯や、中止説明会の様子を追っていった。
主催側の説明では、「浦賀船渠株式会社」のロゴの無断使用が発覚。それを浦賀船渠の権利者が咎めたことから、イベント中止を決めた事が報告された。
「航跡」主催氏が、パクリ常習
という事もあり、この話自体は説得力を持って受け入れられたと思う。

ただ、クレームを出した権利者が誰か?という部分は最後まで伏せられ、そこに引っかかるものはあったが…

ところが、その翌日、これまでの認識を根本から覆す報告が上がった。
【関与していない「権利者」】

説明会翌日の11月10日、とある有志の方からこんなレポートが上がった。

中村屋華左衛門(@服喪)‏@mountain_white 10:39 - 2014年11月10日
>説明会において権利元から差止められたとの説明があったようですが、住友重機蠅JMU蠅北笋す腓錣擦燭箸海蹇屬修里茲Δ併実はない」というコメントを頂きました。
>また浦賀船渠の諸権利については住友重機が引継会社であるとも伝えられました。 #浦賀船渠ノ航跡


>住友重機械工業衢佑らは「イベントの事前把握はしていないが、現在の状況については承知している。関知していない以上は当社としてコメントすることはない。このやりとりは出来れば公開しないで欲しい」とのことでしたが、この先問合せが行われないように、公開の判断をしました。#浦賀船渠ノ航跡

住友重機からの「できれば公開するな」との要請を振り切っての行為には、一連の件に対する情報の提供という事で公益性はある一方、信義に反するのも事実である。
賛否両論あると思うが、ここでは棚上げする。

ポイントは、「浦賀船渠」の権利者である住友重機(住友重機械工業)からは、特にクレームを出したり差し止めたりだの、そういう事実は存在しない、という事。
つまり、これまでの運営側の説明とは、全く異なる情報提示である。

これはどういうことか。
先ず私は、この情報提供者の「デマ」を疑った。
ただ、氏のツイートを漁ってみると、前日(11月9日)時点において「権利者」や「権利」の存在に疑問を呈するツイートを、幾つかリツイートしている。
他の方のツイートを見て気になって、自分で調べてみた、という構図で、自然な流れである。
また、このツイートに疑問を呈した方への質問にも、堂々と答えており、正直、不審な点も見当たらない。

ちなみに、「JMU蝓廚禄四Ы典ヽ9業と、造船業大手・IHIグループの合弁会社だ。
前日氏がリツイートした呟きの中に、「住友重機から造船部門がIHIとのに譲渡され、浦賀船渠の権利もIHI側に移ったのではないか?」という意の指摘があった。
JMUに問い合わせたのは、このリツイートを念頭に置いての事であろう。

また、前日に別の方も、浦賀船渠権利者・住友重機に問い合わせを行っていた。

太陽神見習いてつこ@tetukoz 2014-11-09 19:38:41
>浦賀オンリーについて聞いてきた事8(ラスト)
>ついでに失礼を承知の上で三笠公園での産業イベントに参加していた住友重工さんに話しを伺ったところ「そのイベントの事自体知らないし我々がこちらでイベントを行っていようがいまいが少なくともそのイベントとは一切関係ない」と言われました。
>
>少し語弊が起こっているかもしれないので補足します、最後の「そのイベントとは一切関係ない」は産業イベントに参加しているスタッフの方々の事です、要するに「我々(産業イベント参加者)とは関係ない」ということで捉えてもらえると幸いです。

このツイートも、住友重機の立場を示している。「関知しない」という方向性においては、先の情報提供と一致している。
これらの点を鑑みるに、この方の「住友重機は関与していない」というレポートに、不審な点は無く、真実としての蓋然性が高いものと考えられる。


【存在しない「権利」】

そもそも、「浦賀船渠」に関して、催事の中止を求められるほどの「権利」とはいったい何なのか?
それについても、主催ならびに元スタッフ達から語られる事は無かった。
社章・ロゴが問題という事らしいが、それに付随する権利は、いったい何なのだろうか?

先ず、最初に考えられるのは「著作権」である。
社章・ロゴにも、当然ながら著作権は発生する。
著作権は、一般には製作者がその作品を製作した時に発生する。製作者の死後50年までが、著作権の有効期間である。

但し、著作権には「職務著作」という概念がある。
著作権法15条に規定されているが、職務上で作成した著作の著作権は、余程の別段の取り決めが無い限りは、会社に帰属する。
そして、職務著作における著作権の有効期間は、公表から50年と定められている。
もちろん、問題とされているロゴ…浦賀船渠株式会社の社章は、会社の職務の中で作成されたものであるから、当然「職務著作」となる。

そして、浦賀船渠株式会社という名の会社が存在していた期間は、1962年までである。
(1962年に他社と合併し、浦賀重工業に社名変更。その後住友機械工業と合併し、現在の住友重機に至る)
仮にこのロゴが公表され用いられたのが1962年としても(実際にはもっと前から用いられているが)、著作権の有効期間は、そこから50年後の2012年までだ。
2014年の現時点においては、著作権は【消滅】しているのである。


デザイン等を保護する権利「意匠権」も、設定登録日から20年が期限。これに頼るとしても、20年はとうの昔に過ぎている。
意匠権も、既に消滅している。


もう一つ、「商標権」の可能性も考えられるだろう。
社章・ロゴを商標で登録する事で、その権利は保護される。
商標権は有効期間10年。但し、権利の更新が可能な為、再更新の手続さえ怠らなければ、半永久的に効力は持続する

商標に関しては、出願されたものは全て「特許電子図書館」(IPDL)にて検索可能である。
商標を出願するに際し、既に先んじて登録されていないかを確認する為に、用いられている。
(3年前、「男の娘☆」が商標登録され騒動になった時も、このIPDLで検索された内容のURLが、ネット上に上がっている)

…ところが、である。
これ、幾ら検索しても、浦賀船渠に関する商標登録は、全然見つからないのだ。
「浦賀船渠」で検索しても、「浦賀」で検索してもダメ。権利者を「住友重機械工業」で検索しても、浦賀船渠にまつわる商標は上がって来なかった。
私も検索したし、他の方何人かも検索し挑んだものの、一切上がってこなかった。

検索しても上がってこない、という事は、【商標登録されていない】と考えるのが妥当であろう。
つまり、浦賀船渠のロゴ・社章に、商標権は存在しない、と考えられる。
(もし、このロゴに商標権が設定されていると主張されるのならば、登録番号をご提示いただきたいものである。)


百歩譲って商標が登録されていたとしても、商標権の侵害は、「同一ないし類似の役務」の時に発生する。
「浦賀船渠株式会社」の役務は、造船業。一方、「浦賀船渠ノ航跡」の役務は、イベント主催。
業種が異なり、業務内容も異なる。役務の内容が違っている可能性が高い。


役務が異なっても、権利の侵害と見做され保護されるケースもあるが、これは「不正競争防止法」に基づく。
(「東方Project」が他社に商標登録された際は、役務が異なり商標法で対応する事が難しかったようで、不正競争防止法に基づき異議申し立てを行っていた事もある。)
「周知表示混同惹起行為(第1号)」「著名表示冒用行為(第2号)」がそれに当たるが、皆に周知されている事ないし著名である事が条件だ。会社が消滅してから50年以上経過しているこの会社のロゴに、適用される筈が無い。


…つまり、浦賀船渠の【社章・ロゴ】に関する「権利」は確認できないのである。
存在を認められない、と言っても良いだろうか。

「浦賀船渠ノ航跡」に来たとされる「権利」は、既に消滅している権利なのである。
偽の権利を元に、「浦賀船渠ノ航跡」に中止を迫った。そういう構図である。

住友重機械工業側は関与していない、そのように回答したと聞く。
そりゃ、権利を持っていないのだから、関与しないってのも当然だろう。


もう一つ、写真に関してもNGと咎められたようだが、住友重機械工業側には、写真に関する権利は存在しない。
確かに浦賀船渠の写真使用はNGだが、これはあくまでマナーとして写真撮影はご遠慮いただきたい、という「お願い」的なものである。
写真に著作権は発生するが、これは【撮影者】に帰属する権利であって、被写体=浦賀船渠=住友重機械工業に帰属するものではない。住友重機械工業がこれに権利を主張し、これを理由にイベント中止を求める、と言うのはあり得ないのである。

ロゴの無断使用にせよ、写真の無断使用にせよ、道義的には問題があるだろう。
住友重機械工業からすれば、眉をひそめたくもなるだろう。
しかし、だからと言って、それを根拠に住友重機械工業側が、中止を求めるまでに怒り狂う事もあり得ない。著作権や商標権等、異議申し立てを行うに相当する「権利」を有していないのだから。



【権利者を騙る偽物が、偽の権利をもって中止を迫る】

権利者・住友重機械工業は、「浦賀船渠ノ航跡」に申立を行っていない。
そして、社章・ロゴ等には、特段の権利は存在しない。

今回の「浦賀船渠ノ航跡」中止の理由は、社章・ロゴの無断使用が咎められての中止と説明された。
これは一体どういうことなのか?余りにも矛盾が酷過ぎる。

ただ、「航跡」側への「申立」が元々無かったのか?と言うと、それも無理がある。
航跡主催は、慌ててロゴや社章・写真をサイトから外した形跡がある。
スタッフN氏らがイベントを離脱した原因は、この「申立」への対応についての意見の相違からだ。
離脱したスタッフも、「自分もサークルでありスタッフだったが、問題の大きさから家族や仲間を守りたく思い撤退した」と中止説明会にて語っている。

つまり、幹部スタッフ・スミス氏達や航跡主催との間で、その「申立」が共有されていたという事。彼らの間で「申立」は存在した。だが、真の「浦賀船梁」権利者からの「申立」は無かった。
となると、これは権利者を騙った者からの申立でしか有り得ない。

偽の権利者が、有りもしない権利を振りかざし、中止を迫った。
そして、主催やスタッフ達は、中止を決断した。
余りにも馬鹿馬鹿しい話なのだが、これは私が行きついた結論である。

こんな下らない騙りに皆だまされ、中止を決め、そして大勢の参加者に迷惑を掛けている。
だまされる主催やスタッフも大概だが、騙った人間の罪も重い。最早、人騒がせで済むレベルでは無い。司直の手に委ねられ何らかの裁きを受けたとしても、何ら不思議はないだろう。

偽の権利を名乗った者が誰かについては、おおよそ推測は出来る。
決定的な根拠が示せないので、今回は言及を断念する。
先にも申し上げたように、ここまで来ると、司直に委ねる事にもなりかねない案件だ。普段よりも慎重に行きたい。
そういう訳で、今回は誰が騙ったかまでは言及を控えるが、今後の動き次第で明らかになる時も来るのではないだろうかとも思う。司直の手が入れば、間違いなく解明されるだろう。


【偽権利者とは、誰が交渉したのか?】

「偽の権利者」の正体は置いておくとして、「偽の権利者」との窓口役となったのは誰だろうか。離脱したスタッフ達か。それとも主催本人か、そのどちらかだが…

実は、主催本人という線は、余り考えられない。
普通に考えれば、主催本人が権利者と交渉するのが通例だが、この主催が「パクリ常習者」という事を忘れてはならない。
「ななつぼし」をパクったサイト等、過去の作品もパクリっぽいのが多く、権利意識が非常に甘い主催だ。
こんな権利意識の甘い主催が、仮に権利者から咎められても、聞かなかった事にしてスルーするだろう。スタッフ達にも隠して、無理やり開催しようとしたのではないだろうか?

また、これはスタッフないし運営陣に非常に近いっぽい方(中止説明会の実況もされていた方)のツイートなのだが…こんな一節もある。

みさきまぐろ(キハダ)
‏@misakimaguro @(余り意味ないですがリプライ相手伏せます) また、って言葉が出ちゃう人なんですね。なんとかしたいと動いたコアスタッフ(サークル参加者一般参加予定者だった人)へ仕事投げた上に、版権トラブルまで解決してもらおう。ってのに対してそこまでの面倒見切れないってスタッフに投げられた。って内容だったのかなと。

これを見ると、スタッフが権利者と交渉したかのようにも見えるが、果たして。

どなたが、偽権利者との交渉に臨んだのだろうか。
主催自身は返金手続等「戦後処理」に専念すべきだし、余り話も上手くなさそうな方。寧ろ離脱したスタッフの皆さんんにお伺いしたいものである。
特にスタッフのまとめ役であり、当日説明会でも言葉に詰まる主催氏をフォローされたスミス氏にお伺いしたい所だが…最近Twitterでもお見かけしないのが気になる所。説明会前には、あれだけ雄弁にTwitterで語っていたお方なのに…
他の元スタッフさんでも構わないので、そのあたりお教えいただける親切な方がいらっしゃれば幸いである。



という訳で、最後結構蛇足が入ってしまったが、ここまでの論評の中で、おおよその構図は見えてきた。

「浦賀船渠ノ航跡」は、ロゴや社章・写真の無断使用を咎められての中止とされてきたが、これは事実と異なる説明である。
実際のところ、「浦賀船渠」に関する真の権利者である「住友重機械工業」は、事前に「航跡」の事を把握しておらず、関与もしていない。つまり、クレーム等の申し立てを行っていない。
また、クレームの根拠となるであろう、商標権・著作権等も既に消滅している。

つまり、「浦賀船渠ノ航跡」中止は、偽の権利者が、偽の権利を振りかざし、それを盾に中止を迫り、最終的に屈した。そういうおかしな構図なのである。


次回は、この件についての総括。
今回の中止は誰が責任を持つべきか。今後どうあるべきか。
(普通、全責任は主催が負うべきだが、わざわざこう書いているという事は…以下略)
そして、我々はこの件をいかに反面教師とし、今後に生かすべきなのか。
そのあたりを論じ、少しでも前向きに糧となるような方向性で論じて参りたい。