2016年08月23日

雑感。日銀と株式市場

第2次補正予算で農業関連が6千億円弱、そのうち3.5千億円がTPP対策とします。しかし米国は共和党のトランプ候補が反対、民主党のヒラリー候補も採用に否定的。このままだとTPPは雲散霧消します。米紙でも「TPPが頓挫し、一番困るのは日本。TPP以外、安倍ノミクスでは成長戦略がないから」と日本をこき下ろします。しかもTPPが頓挫したケースで、この投資が有効に活用されるか? というと懐疑的です。輸出拠点の整備や農地の大区画化、としますが、TPPという黒船を利用して強引に押し進めよう、という国の魂胆が通用しなくなり、理念なき資金のバラマキに陥りかねないからです。
台風が関東を直撃し、東日本をなめるように北上。収穫期を迎えた農産物への被害が心配されます。いっぱい作って余剰分を売ればいい、単純に考えるとその通りですが、TPPのような関税障壁がなくなると、流通量が重要な価格決定理由になります。台風などの自然災害で流通量が変動することは、ある意味リスクを高める結果にもなり得るのです。何でもかんでも自由競争にもっていけば解決する、そんな安倍政権の単純な発想にこそ、『成長』戦略が必要なのかもしれません。

リオ五輪が終わって宴の後、をかもすメディアですが、株式市場にも宴の後、といった空気がただよいます。週末のイエレン米FRB議長のジャクソンホールでの講演で、利上げに関する言及があるか。それをみて今後の動きを決めよう、という投資家も多く、身動きがとれなくなった。また円高で株安に誘導したいけれど、日銀の買いがそれを食い止めるので売り方の仕掛けもできない。上にも下にも行けず、取引に面白みもない。今日も日銀がETF買いを入れる、とみて買った層が弾け間際に売った。最近では日銀による市場支配が問題視されますが、そんな状態を嫌気し、まさに閑古鳥が鳴く状態になっています。
今週は外国人投資家にとって、夏休みの最終盤ということもあるのでしょうが、日本市場が魅力を失っていることも一因です。それは海外メディアにまで「TPPしか成長戦略がない」などと酷評されては、株価も上に行きようがありません。しかも、日銀の態度について株式市場は緩和期待、債券市場は緩和見直し、と逆の思惑を膨らませており、日本は急変動を引き起こしやすい、脆弱な状況に陥っていることも投資を手控えさせます。日本の株式市場は、日銀と一蓮托生。その日銀がもう泥船なので、いつまで乗っていられるか? という問題が重要になってきた。いつ沈んでもおかしくない、そんな状態なのでしょう。

そんな泥船・日銀の次の一手を個人的に予想すると、ETF購入は6兆円を上限とするものの未達でも構わない。規模を維持しつつ、実際には介入回数を減らす。国債も80兆円の枠を維持するものの、金利動向によっては80兆円を上限とし、未達でも構わないとする、いわゆる規模を維持しつつ、実際には介入の額を減らすしか手がない、と考えています。今の状態を数年つづけるのは、ほぼ不可能です。規模を減らし、緩和の延命措置をはかるしかない。これは引き締めになりますが、激変緩和措置として処理していかないと、後にそれこそ突然死するぐらい、急激な引き締めに転じざるを得なくなるからです。
さらに問題が、今のまま緩和をつづけたとて、将来に強い経済成長を達成したり、インフレになることもない、ということです。つまり引き締めに転じるとき、本当は引き締められるほど経済が強くない可能性が高い。だからこそ尚更、徐々に緩和を見直していくしかありません。そもそも9月21日に追加緩和をするなら、あらゆる手段を模索する、という従来の主張を見直す必要もなかった。総括的検証、という言葉には正負両面ある。これも激変緩和措置にむけて、マイナス面を意識させよう、との苦心の言葉にしか思えないのです。

日銀がフィンテックを後押しするため、会合が開かれました。フィンテックの良い点は、資金の融通がつき易い、利便性が上がる、などがありますが、仮想通貨が増えると見かけの経済規模が増える、という面もあります。つまり日銀が発行する銀行券以上に、フィンテックなどの仮想通貨によって取引される財が増えると、そこで経済が回る。フィンテックをGDPに参入するのは難しいですが、波及効果は期待できます。見かけ上、流通する貨幣が増えればインフレにもなり易い。ただし、日銀がコントロールし切れないほどに仮想通貨が肥大化してしまうことはリスクであり、制度上の精査が欠かせない、とも言えます。
しかもIoTや、自動運転技術にもセキュリティーという話がでてきましたが、セキュリティーがあっても突破される恐れは常にある。フィンテックも同じ、仮想通貨は現実のマネーとは異なり、抜かれても気づきにくい面もあるのです。そんなものに頼り、経済を運営することは危険でしかないのでしょう。不足する部分を補う、という面では必要ですが、日本のように現金が当たり前のように通用し、未だに現金社会である国では、フィンテック自体が浸透し難い環境もあります。それに依存するしかない日銀、そんな日銀に頼るしか成長戦略もない安倍政権。今やこの国は『一蓮托生』ならぬ『日銀託生』、日銀に生死を託した状態になっている。日銀が失敗したとき、新たな危機に直面することにもなりかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:49|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2016年08月22日

リオ五輪の閉会式

リオオリンピックが閉会しました。しかし不思議なのは、どこのメディアでも、丸川五輪担当相でさえ宴の後、4年後の東京に向けて…と語る。これからパラリンピックがあるのですから、当然それに向けて盛り上げていかなければいけないのではないか? 障害者に優しくない、日本における根本的な問題を垣間見るようです。その閉会式で、東京五輪をアピールするため、安倍首相がマリオに変身し、地球の裏側であるリオに行く、という映像の後で、実際に自分が登場してみせる、という演出がありました。以前も指摘したように『リオゴリン』の中をとると『オゴリ』。目立ちたがりの安倍氏としては、晴れやかな演出のつもりだったのでしょう。丸川氏は「安倍マリオ晋三」と名乗れば、すぐに世界の皆様に分かってもらえる、と述べていますが、恐らく世界中から「誰?」というレベルの扱いにしかならないでしょう。
ちなみに、マリオという名前はイタリア系で、元はローマの軍神マルスに繋がり、マルスはギリシャ神話のアレスに繋がります。アレスは主神ゼウスと正妻ヘラとの間に生まれた子なのに、ゼウスから「あいつは戦闘のことしか頭にない、神々の中で一番気に食わない」とまで蔑まれました。アレスのマヌケな話を一つ、鍛冶神ヘパイストスの妻、アフロディーテと浮気していたアレスは、浮気がばれてヘパイストスの造ったクモの巣にアフロディーテもろとも捉えられ、神々の笑い者にされ、ほうほうの体で本拠地のトラキアに逃げ帰った、とされます。そんなアレスもマルスとなったローマでは崇拝され、ローマ建国の父であるロムルスの父とされたこととも相まって、人名としても盛んに用いられました。安倍マリオ晋三より、安倍アレス晋三、もしくはアレス晋三と名乗った方が的を射ている、と感じるのは私だけではないかもしれません。

映像をすべて見ていないのでよく分からない部分もありますが、リレーされた赤い球、何でリオに届けたのか? リオで渡されたバトンを東京へ、という流れとは逆。閉会式に届けたのですから、慰労を兼ねた何か? であるなら分かりますが、赤い球に何の意味があるのか、よく分かりません。むしろ演出としては逆、リオにいた安倍氏が姿を消すと、東京に現れて、その熱気を国内に行き渡らせて東京五輪を盛り上げます、という方が意味としては伝わります。安倍氏がリオに向かったことは先刻報じられていますし、サプライズでもない。これでは東京五輪の演出にも、期待がもてないことになりそうです。
しかもキャプテン翼、ドラえもん、マリオと登場させましたが、安倍政権になってから日本はクール・ジャパンの輸出には消極的でした。安倍氏とつながる利権は公共工事が主流で、アニメや漫画は利権構造すら異なる。そもそも国内では一部の有名なアニメを除いて、大半は早朝や深夜にしかアニメは放映されておらず、国内の扱いでさえ低い中、それを輸出して…というのも甚だ違和感があります。偶々、海外でヒットしたアニメやゲームのキャラを採用し、アピールに利用しているだけでは、政治としては他人の褌で相撲をとっていることにもなります。アニメ大国であることのアピールにはなったでしょうし、首相までコスプレするのか、という意味で注目は集めますが、ビジネス的にはこのアピールを如何に日本の戦略と融合させるか、そこまでもっていかない限り、逆に首相の軽薄さを印象づけるだけになってしまうでしょう。

今回、メダル41個と日本勢の活躍がめだちました。しかしロンドン五輪の当時、競技団体の役員がファーストクラスで、選手がビジネスクラスで移動している、ということも話題になったように、当時は選手の強化よりスポーツ利権に集り、食い物にする人間が多くいました。リオ五輪の結果をうけ、それこそ甘え、驕りがでて、ふたたび選手強化より団体の意志が優先されるようになれば、この41個というすばらしい結果そのものが、負の遺産にもなりかねなくなります。
イタリアの哲学者、ダンテが書いた『神曲』の中で、愛欲の罪ゆえに刑罰に服するリミニのフランチェスカの言葉「みじめな境遇にあって、幸せなときを思い起こすほど哀しいことはありません」となるのか。東京五輪にむけては、改めて気を引き締めなければならず、今回のリオ五輪を幸せなとき、としないよう『オゴリ』を捨てて謙虚に、着実に4年間を鍛錬に充てない限り、結果は逆ともなるでしょう。その先頭をいく首相が、意味不明な演出のためにリオに出向く、といった『オゴリ』体質であることが、一番の不安とも云えるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:34|PermalinkComments(20)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 社会

2016年08月21日

雑感。米大統領選でのトランプ氏の失速

米大統領選、トランプ氏への逆風が止まりません。これまでも暴言、失言はありましたが、ここに来て現実問題としてこんな人物を大統領にしていいのか? といった懐疑が生まれている。支持が白人中流層から富裕層に限られており、こうした層はそれなりに学歴も高い。盲目的に支持する、ということとも異なり、戦没者遺族への中傷がかなり心証を悪くしたことは確実です。しかもトランプ氏は17日に選対の体制を刷新し、20日にはこれまで参謀を務めてきたマナフォート氏を解任するなど、かなり右往左往している様子もうかがえる。マナフォート氏はウクライナでの疑惑が報じられるなどしましたが、元々かなり強硬的な主張を推していたともされ、事実上の方針転換による解任とみられます。

トランプ氏の間違いは、これまで米国 is No.1を標榜し、米国に流入してくる不法移民、またムスリムなどを攻撃してきました。これまではそれがウケ、彼こそ強い米国をとりもどしてくれる、との期待を集めてきました。しかし戦争遺族への攻撃は、米国そのものへの攻撃です。たとえそれが民主党攻撃の一環だったとしても米国民、とくに戦死者は米国のために戦った愛国者であり、その遺族を貶すことは米国 is No.1の態度とは大きく異なる。むしろその逆、自分 is No.1、そのために米国すら貶めている態度に見えます。
しかも、ここに来て黒人層へのすり寄りを始めましたが、逆に白人層にとってその態度は裏切りにみえる。未だに白人至上主義が根強く残り、KKKなどが存在する米国では、どうしても黒人を一段低くみる層がいます。米国 is No.1とは、白人が優越的地位を与えられていた時代、それと同一視する向きもいる。キング牧師の公民権運動の前、冷戦時代の米国がもっとも輝いていた、そう考えるからです。万人ウケする主張を始めれば、これまでの支持層を失う恐れもある。しかしトランプ氏が迷走しだしたのは、逆に大統領という地位が現実に見えてきて、守りに入ったことも影響するのでしょう。しかし守りに入った人物に、米国 is No.1の姿は重ねられない。トランプ氏も負の連鎖に陥っているのでしょう。キング牧師の言葉を借りれば「I have a dream」という演説、私には夢があるという言葉が、トランプ氏はその夢が現実になりそうになって、急に萎縮したのかもしれません。

そもそも米国は、第二次大戦中の議会教書で、ルーズベルト大統領が「4つの自由」を唱えました。言論・発想の自由、礼拝の自由、欠乏からの自由、恐怖からの自由。これが後に世界人権宣言へとつながりました。「人間は生まれながらにして自由であり、かつ宣言と権利とについて平等である」という文言につながった。つまり米国が自由と人権など、平等という概念の輸出を担ったのです。だからこそ米国は西側諸国の盟主となった。何も経済力ばかりでなく、そうした主義・主張において優れていたからこそ、世界の多くの国を従えることができたのです。
しかしトランプ氏のめざす米国像は、それとまったく逆。どちらかと言えば閉鎖主義、米一国主義とも呼べるもので、これではいくら自分がNo.1だと言い張っても、誰も認めてはくれないでしょう。しかし米国民がそこまで理解し、判断したかどうかとではなく、単にトランプ氏個人の能力不足、器量の不足で凋落してしまうことは、ある意味で米国が出直す機会を奪われた、ともみてとることができます。冷戦の終結が、ソ連の自滅という形で終わったことで、新たな秩序を構築するのに冷戦構造のまま、あらゆる制度が残ってしまった。今はその後始末に苦労しており、米国が徐々に世界でその地位を失っていくのも、新たな世界を率いて行くポリシーが感じられない点が、米国の迷走にもつながっているのです。

米国が陥っているのは「I have a dream」ならぬ、アメリカンドリームがすでに現実的でなくなっている社会において、新たな理念、人々を率いるだけの希望、それを見出せないことにあるのでしょう。新自由主義もその限界、失敗が意識され始めてきたことで、自由に因らず、新たな理念をトランプ氏に求めたのだとしたら、出てきたカードはジョーカーだった、ということなのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:54|PermalinkComments(7)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2016年08月20日

雑感。核をめぐる日本の態度と、五輪

今、3つの台風が発生していますが、1960年には5つの台風が同時に発生し、ローマ五輪の直前だったことから五輪台風と呼ばれたことがあります。逆からみると五輪の時期は台風シーズンであり、東京五輪も台風が直撃する可能性が高い、と言えます。屋外競技もそうですが、さらに問題は人の移動に支障がでる点です。コンパクト五輪どころか、今やエクスパンド五輪(膨張五輪)とさえ言われ、会場は千葉、神奈川にまでまたがる。さらに会場が分散される可能性もあり、そうなると移動だけで日程が滞ることも考えられます。東京五輪と台風、もしかしたら難敵なのかもしれません。

米WP紙が報じた、安倍首相がハリス米太平洋司令官に対して米国の核先制不使用についての懸念を伝えた、という内容を安倍氏は「全くなかった」と否定しました。しかし核軍縮に関する国連作業部会で、2017年から核兵器の法的禁止を交渉する、という報告書についての議決で、日本は棄権しました。言葉より態度がすべてを物語る。むしろ「全くない」と全否定した安倍氏は、ウソをついたことになるのかもしれません。逆に、どこかに線引きがあるのなら、そのことに言及することが必要かもしれない。日本は直接的な核保有国でないため、比較的自由にモノが言える立場です。
米国の核の傘の下にいるから、気を使って何も言わない、というのなら、唯一の被爆国というアピールも同時に止めるべきでしょう。ナゼなら、核使用をみとめ、被爆国として広島の惨状を訴えることは、世界中に核による恐怖政治を受け入れさせようとする試みにも見えるからです。核を保有する国には敵わない、服従するしかない。恐怖心を煽り、そういう機運を高めようとするために、被爆国として広島や長崎への訪問を各国に訴えかけているのではないか。事実、日本は被爆国としてその惨劇を知り、核アレルギーの強い国となっています。世界で核アレルギーが強まり、核への恐怖心が植えつけられれば、核をもつ国への依存、服従といった思惑も高まる。むしろ安倍氏はそんな世界にしたいのかもしれません。それこそ核を躊躇わず撃つ国、米国を崇める、といった方向性を安倍氏からは時折感じるからです。

しかも参院選を通過し、今月から安保法制が施行されることから、駆けつけ警護や宿営地の防衛に関しても可能となります。つまり自衛隊が、実際に海外で武器を行使することも可能となるのです。すでに内戦状態とされる南スーダンにおいて、最初に訓練を開始することが政府関係者からも明らかにされており、今後はこの動きがどんな波及効果を生むかは分かりません。日本も連合軍入りした、として益々テロリストから狙われるのか。安保法制についての評価が、これから様々にでてくることになるのでしょう。
そんな安倍氏が、リオ五輪の閉会式に向かいます。五輪は開会式、閉会式に各国の首脳が集まるケースもあり、そこで簡単な首脳会議をできる可能性もあります。しかし今のところ、そういう予定が聞こえてこないので、今から調整するのか? しかもこれから国連総会や、G20など国際会議がつづく。五輪閉会式にわざわざ出席する必要性は、あまり感じません。事前調整のつもりか? そうだとしても安倍氏自ら行って、成果があるとはとても思えません。ナゼなら、世界から全く評価されていない首相だからです。コンパクト、という単語には『密な』という意味の他に『協定』という意味をもちます。五輪を会合の場、協定をむすぶ場と考えているなら、実は安倍氏のその試み、悉く失敗してきています。ソチ五輪の開会式に出席した挙句、露国には媚を売りましたが、西側諸国から総スカンを食らった。そのダメージを回復させるために、多くの時間を費やし、未だ道半ばであるのが現状でしょう。リオ五輪、リオゴリン、端の文字をとると「オゴリ」。五輪をめぐり、様々な思惑をめぐらせているのでしょうが、その腹には支持率が高く、何をしても大丈夫だという発想があるのだとしたら、ただの観光旅行気分なのかもしれませんね。

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2016年08月19日

不動産市場の変調

4-6月期GDPでも高い伸びを示した住宅投資、ここに来てその変調が目立っています。7月の首都圏マンションの販売価格が2ヶ月連続で下落、発売戸数は前年同月比30.7%減、契約率は63.3%と、好不調の分かれ目である70%を下回っており、明らかに潮目の転換をうかがわせます。いくら低金利だからといって、高値掴みはしたくない。しかも今、売れるからとどんどんマンション建設を増やしてきたため、供給過剰の懸念もでてきた。今、不動産市場で囁かれるのは『低金利バブルの崩壊』です。
住宅を買うばかりでなく、建てる際も低金利で資金を調達できた。しかも米英を初め、中国の不動産バブルに代表されるような不動産投資家の世界的な暗躍とが重なり、日本にもそのお零れがあって億ションも売れてきました。しかし7月は英国も1%強の値崩れを起こしており、米国も伸びが鈍化、中国もふたたび引き締めに転じたらしく、販売価格が下落した都市の方が増えている。つまり今、世界的に不動産市場全体が大きな転換点を迎えつつある。それは不動産投資家にとって、すでに世界全体で個人が買えないほどの高値まで不動産市場が釣りあがっており、自分たちの循環取引でしか成り立たなくなり、下りるタイミングを間違えた投資家が損をする。つまり保有がリスクになりかねず、売りが売りを呼ぶ悪循環に入りつつあることを意味するのでしょう。キッカケはBrexitですが、この流れを食い止めないと、それこそ不動産市場は世界的にバブル崩壊により壊滅的な商状を呈すことになるのかもしれません。

そんな中、直近の日本では日銀、財務省、金融庁などが盛んに会合を行い、麻生財務相と黒田日銀総裁の会見後、麻生氏は「40年国債の増発」に言及するなど、事実上のヘリマネともとられる発言をしている。しかしこれらは為替睨みの発言であり、日本にはまだ追加緩和の手が残されている、という喧伝のため。円高を食い止める策を話し合っているためです。ただ7月のFOMC議事録がでて、9月の利上げ機運が後退。ふたたび円高圧力が強まっており、日本の小ネタのような対抗策など、大きな流れには全く対抗できていません。
さらに問題は、円高そのものは日本経済の重石になるものの、リスクは小さい。その一方で不動産市場の変調は、景気を間違いなく腰折れさせるだけの破壊力をもつ。どちらが問題か? 考えるまでもなく不動産市場の動向に、より目配せするべきでもあるのです。

しかし日銀は不動産市場をバブル化する策ばかり打ってきた。マイナス金利も量的緩和も、不動産市場をバブルに誘導してきた。しかしイールドカーブがフラット化したため、値上がりする不動産の魅力が低下、金利が低くても購入しない層が増えた、とされます。供給サイドはマイナス金利の前から建設に着手したため、ここに来てミスマッチが増えてしまった。つまり世界的な不動産市場の変調と同時に、日銀による政策のミス、という二つが重なる。バブル崩壊どころか、日本はダブル崩壊といった状態にあるのです。
しかも不動産投資の厄介な点は、一物件に対する投資額が大きいため、損失が破綻へと直結する可能性が高い。それが溜まると金融機関の経営すら圧迫する。担保には不動産が多いため、価格の上昇局面であれば融資を増やせる一方、下落局面では融資を躊躇する。それどころか一部でも回収しておかないと、リスクが高まる。金融機関の内部基準に照らせば、引く手も早くなるのであって、これまで安倍政権では倒産件数の減少を成果のように語ってきましたが、不動産市場の変調はそれすらウソにする可能性が高いのです。

日銀が9月の『総括的検証』で、仮に金融緩和の手段を改めるとなれば、ますます他の市場への動揺が広がるでしょう。18日の株式市場で、日銀のETF買いが入ると見越して前場買った層が、後場に失望売りを浴びせましたが、ここに来て日銀が打つ手を渋る、ということは総括で政策が見直されるのでは? との懸念も生じています。総括…かつて連合赤軍がこの呼び名で、リンチをくり返しました。日銀の総括、投資家にとってリンチのような大打撃を与える可能性もあります。bubbleと書くと『泡』の意味ですが、babbleと書くと『ムダ口』などの意味になります。日本のバブル崩壊、日銀、財務省、金融庁などが寄り集まって何を話し合っているかは分かりませんが、口先で何とかする前に、行動を示さないとこのバブル崩壊は、より深刻な事態を招きかねなくなるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:39|PermalinkComments(2)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2016年08月18日

安倍首相のキューバ訪問報道

福島原発の凍土壁、凍結開始から4ヶ月半経って99%が零度以下になった、としますが、下流側でくみ上げている地下水は以前からまったく変化がない、と言います。たかが1%のスキマで地下水がこれまでと同じ量流れこむ、というのは不自然であり、これは過冷却が影響しているのではないか、とみられます。水はゆっくり流れると零度以下でも凍らない。真冬の川や湖も、表面が凍りついていても底の辺りは凍らない。逆に、温度を計測するためにセンサーを埋設しているようなところは、水の流れが乱れているので凍りやすいだけで、実際には多くの箇所で過冷却のような現象が起きているのかもしれません。そもそも99%が凍結した、が成果ではなく、下流のくみ上げる水の量が減らなければ何も意味はないのです。凍土壁、これが壮大なムダ遣いだったとしたら、設置を主導した東電や政府の肝だけは、すこぶる冷やしたのかもしれません。
同じように、民主党政権のころから続く話として、リオ五輪のメダルラッシュも挙げられます。ロンドン五輪の大惨敗をうけて、スポーツ界にも危機感がありましたが、民主党政権で予算を大胆に組みなおした。実は、スポーツ振興財団やら、公益財団など、その役員には多く上流階級に属する人物が名を連ねます。こうした財団にお金を落とし、中間搾取した上で選手やスポーツ大会などに配る。これでは選手強化の予算が少なくなり、結果としてロンドン五輪の惨敗になった。民主党はこうした上流階級との付き合いは薄く、予算を組替えて、選手強化に回し易かったのです。さて東京五輪、このリオ五輪でメダルラッシュとなり、また甘えの体質がでるのと同時に、自民党政権下のスポーツ振興予算。果たして結果は…4年後が怖くもあるのでしょう。

安倍首相が国連総会に出席後、キューバ訪問を検討と報じられます。『日本の首相として初』という言葉が大好きな安倍氏だけに、相当にごり押ししたことも想像できます。国連総会出席後、米国と国交を回復したキューバに訪問したい、という首脳も多いでしょう。相当に支援を約束し、その枠を勝ちとったことが今回の発表です。また公明経由で創価学会の力を借りたのかもしれない。中国をはじめ、共産国に独自のコネクションをもつ創価学会は、キューバにも進出しています。ソビエト崩壊前後のロシアに、オウム真理教が進出していたように、政治の締め付けが強く、心の解放を求めるところには、言葉は悪いですが宗教はつけこむ傾向があります。そうしたコネを使った可能性もあります。
キューバは地下資源も豊富、とされます。石油もでますが、ブラジルからも買っていないように、パナマ運河経由の輸送を考えると、タンカーでは難しい部分もあります。一方でレアメタル、レアアースなどの鉱物は、輸入先の多様化という面でも関係強化をしておきたい。また中南米の珍しい物産なども取引できますし、意外と親日国ともされます。これまではキューバ革命以後の米国との緊張で、表立った関係は築けなかったこともあり、これからは期待できるところではあるのでしょう。

ただ、今の中南米の景気低迷は深刻です。原油高で潤っていたとき、放漫財政に陥ったツケで、リオ五輪を開催するブラジルなど、経済危機の一歩手前という段階でもあるのであって、キューバとて同様です。米国との関係改善をすすめたのも、景気の悪化を食い止めたい一心であり、日本マネーへの期待もある。逆に言えば、そういった外資からの資金流入がない限り、今後も経済に関しては不安定さが付き纏うのでしょう。
しかし日本も実は、中南米の心配をしているどころではない。一方は原油高に浮かれ、一方は金融緩和に浮かれ、と事情は異なるものの、どちらも五輪開催まで景気がもたなかった、もちそうにない、からです。五輪の前年辺りは、公共投資が増えて景気が好調、などと語られますが、ブラジルはそうならなかった。日本も今、公共投資が活発であるということは、それを4年もつづけてはいられない。どこかで腰折れ懸念もでてきてしまいます。原油バブルが弾けた中南米、金融緩和バブルがはじけるかもしれない日本。そこには五輪という共通点まであります。東京五輪でも、メダルの数はリオ五輪並み、施設の運用などソフト・ハードの整備面はロンドン五輪型、というのが理想かもしれませんが、安倍政権の政権運営では、まったく逆になる公算も高いのです。この不都合な真実は凍らせておきたいところでしょうが、99%は凍っても、1%の抜け穴から真実がもれだせば、安倍政権の心胆を寒からしめるところでしょうね。

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2016年08月17日

雑感。海外企業の対日投資と訪日外国人客

政府が海外企業による対日投資を促すため、規制や手続きを見直す方針を示し、有識者会合が立ち上がりました。また有識者会合を一つ増やす、と安倍政権では有識者会合が花盛りです。しかし規制や手続きが猥雑だろうと、儲かるところには企業は進出するものであり、今の日本では収益が見込めないから進出してこないのです。最近、Appleが日本の雇用に貢献した、などと盛んに喧伝するのも、日本社会における企業活動の難しさを示します。嫌われたら客が離れていく…特に今、Appleは魅力的な商品をうちだせなくなっており、情に訴える戦略をとり始めた、ということになるでしょう。
そんな中、7月の訪日外国人客が前年同月比19.7%と、大幅な伸びをみせます。大型クルーズ船の寄港などもありますが、一つには欧州で頻発するテロへの不安が、テロの不安のない国へと夏休みに旅行する理由となっている。ただし、日本でも自暴自棄になったテロが散見されるのであって、相模原の障害者施設の襲撃犯や、新幹線での焼身自殺などもありました。日本は安全、その前提は大きく崩れてきており、そのイメージが通用するのも残り僅か、かもしれません。しかも、今は爆買いといった形より、今後も円高が懸念される日本に今のうちに行っておこう、という記念旅行のような形なので、数が増えても寄与度は昨年にとどかないでしょう。中国、韓国の伸びが大きいですが、欧米に行くほどの余裕もなくなった、その結果としてなら、これも節約旅行の一つの形なのかもしれません。

円安と円高の関係について、一つ注目するのが前年同期比で、今年上半期の輸出額が8.7%減、輸入額は17.2%減、という数字です。しかも対ドルレートの平均が113円強といった形での結果ですから、余計に深刻といえます。さらに原油価格の低下が輸入額を大きく押し下げた、などと言っても昨年上半期はすでにWTIは50$台、実はこの輸入額の減少は、円高と内需の低迷のダブルパンチ、という点も大きい。政府は「海外経済の変調」「海外経済の不安」という文言を用いて、景気低迷を説明するケースもありますが、輸入額の減少の説明にはなっていません。すでに原油価格の動向は、寄与率への影響が大きく低下しており、前年同期比でみると為替は7〜8%の下落なので、輸出は大体それに沿った動きであり、逆に輸入の方はそれ以上に悪化している。そこには内需の問題が大きいのです。
かつては、水は低きに流れる、として経済におけるマネーの流れも説明されましたが、今では米国という高いところに集まっている。しかし米株市場など、すでにPERではかなり割高、将来の企業業績の伸びは相当に織りこんでしまっています。さらに米企業の自社株買いは年初から7月までで、前年同期比21%減となっている。株高により自社株買いをする必要性がない、という面と、将来にむけた成長が読めない。自社株買いとて投資ではありますから、高値掴みをするわけにはいかないのです。米株にも限界が意識されますが、かといって他に投資先もないから、米株は最高値を更新しつづける。連銀総裁の9月利上げ発言などもあり、ドル円も落ち着きましたが、米FRBの利上げは決して経済が好調だからではない、バブル潰しの色彩が強いことだけは、間違いないことなのでしょう。

17世紀のフランスで、ルイ14世の頃に活躍したコルベールは、財務総監として重商主義を掲げました。商業とは「貨幣戦争」であり、海外のものを買わず、逆に国内産のものを諸外国に多く売りつけ、外貨を稼ぐ。「金のなる木を育てよう」という言葉は有名で、産業を盛んにし、ルイ14世の時代の仏国は大きく繁栄しました。
翻って日本、日立のかつてのCM曲「この木何の木」では、「見たことのない木」は「見たことのない実をつける」と歌われていました。見たことのない日銀の緩和は、見たことのない結果を招く、ということの示唆なのかもしれません。「金のなる木」は全く育っておらず、むしろここ掘れワンワン、とばかりに埋蔵金探しに勤しむ。その結果、日本はどんどん富が枯渇し始めており、これまでは個人の貯蓄が潤沢だから、という安心感があったものの、今ではそれすら語られなくなってきました。「この木何の木」なぜかこの曲名が「この危難の期」に読めてしまう。こんな国では投資したいと思う企業も現れませんし、そのうち訪日客の足も遠のいてしまうことになりかねないのでしょうね。

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2016年08月16日

戦没者追悼式での安倍首相の式辞

今日は午後から一気に円高がすすみ、株も大幅安です。日銀砲は前場の終値をみて介入するので、午後から動きがでても何もできない。そんな運用側をあざ笑うかのような動きです。きっかけはポンドの急落ともされますが、実際にはよく分かりません。米FOMC議事録の公表前の仕掛けだったのか、いずれにしろミセス・ワタナベの防衛ラインをふたたび突破してみせたことで、今後の為替市場は流動的になるのかもしれません。
しかし昨日のGDP発表でも分かることは、為替と株式市場、日本経済全体の動きです。円安→海外展開する企業の業績上乗せ、輸入物価の上昇→株高、日本経済は低成長。円高→海外展開する企業の業績下ぶれ、輸入物価が低迷→株安、日本経済は高成長。つまり株式が実体経済を反映するものではなく、企業の収益動向と日本経済とのリンクが薄まった。しかし円高で高成長、といったところでたかだか1%と少し。潜在成長率の低さとともに、毎年くり返される補正予算による押し上げ、日銀のバズーカなどによって日本経済の実力そのものが見え難くなっている昨今、瑣末的な問題にとらえられていると大きな誤りにもなりそうです。ただ、安倍政権のめざす企業を潤せば、個人にも恩恵が行き渡る、といったトリクルダウン理論は根底から覆されており、この点に見直しが必要なことは間違いありません。

昨日行われた戦没者追悼式、安倍首相の式辞は、第2次安倍政権発足後に「誰のため、何のために開くのか」と疑問を呈し、反省や哀悼が消え、不戦の誓いもなくなった。不戦の誓いは復活したものの、「歴史と謙虚に向き合い…」という歴史観を述べるにとどめています。確かに戦没者の慰霊のための式典ではありますが、では戦争に関する認識を述べる場が他にあるか? というとない。戦後70年、などの節目では語る機会もありますが、毎年の終戦記念日のこの式典のみが、政府の認識を語る場になるので注目を集めます。
しかも、安倍氏がそうして式辞を変えたことで、天皇陛下によるお言葉に「深い反省」が加わった。そもそも安倍氏の式辞で述べた「歴史と謙虚に向き合い…」では、その結果何を感得したのか? ということが重要ですが、一切ふれていない。もしかしたら安倍政権では「戦争万歳!」と言い出すのかもしれない。天皇陛下がわざわざ「深い反省」を述べ、戦争の災禍をくり返さない、と付け足さなければいけないなど言語道断といえます。本来、そういう言葉は天皇陛下の語るべきものではなく、為政者が率先して語るべきものでしょう。こうした点にも安倍政権の唯我独尊、天皇家に対する本心がみてとれます。

稲田防衛相は観光気分でジブチに向かった、といったことが話題になっていますが、終戦記念日に靖国参拝は見送りました。しかし今年も高市総務相、丸川五輪担当相などの閣僚が参拝しています。かつては保守でもなく、また戦争に対して何の思い入れも語っていなかった人物が、批判を承知で参拝するのか? といえば、靖国の背後にいる支持層への訴えかけとともに、先の大戦を主導したエリート層、そうした家柄、血脈が未だに日本の政治・経済に隠然たる影響力をもつためであり、そことコネクションをもちたいがために、わざわざ出向くのです。参拝するから保守思想の持ち主か? というとそんなこともない。むしろあざとさ、計算高さしかない。そんな態度をする政治家を支持する人がいる、というのは正直、思考の停止、本質をみていない、ということにもなるのでしょう。
そんな中、米紙が「安倍氏が米の核先制不使用の方針に反対」と伝えました。米国はピンポイント爆撃等、核ミサイルで焦土化せずとも敵の核能力を減殺できる、と考えるからそうした方向性をもつのであって、別に抑止力が低下するわけでもありません。これは核抑止力の問題ではなく、核攻撃も辞さない『暴力的な米軍』との印象、そのものが抑止力と考える側が批判、否定するのであり、安倍氏もその例に洩れない、ということなのでしょう。そして安倍氏の意見は、軍事を肯定する側の人間ということも意味する。結果、それは戦争否定、戦前否定をしてしまうと、今の日本の中枢にいる数多くのエリート社会を敵に回す、ということになる。対外的には敵をつくり、内部をがっちり固めよう、そのための軍事力の肯定、政治権力の構築の仕方が、今の安倍政権では随所にみられます。

しかし経済面ではすでに敗戦、焦土化がすすみ始めており、戦時特例債を溜めこんだ日銀が青息吐息になるのも、時間の問題なのでしょう。緩和が円安を意味せず、バズーカは不発になりつつあります。軍事にしろ、経済でバズーカなりを使うにしろ、適宜適切に使用してこそ効果もありますが、それを使用する人間の質が低かった場合、むしろ逆効果になる。抑止力どころか、即死力は格段に高まってきたことを懸念すべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:38|PermalinkComments(10)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2016年08月15日

4−6月期GDP速報について

週明けの株式市場は閑散、売買代金も1.5兆円を越える程度で、目安とされる2兆円を大きく下回りました。下げ幅が限定的で、日銀砲が入らないとの思惑もあり、円高で上にも下にもいけない膠着感が強まります。また今朝方発表された4-6月期GDP速報値もそれに拍車をかけました。実質で前期比0.0%、年率換算で0.2%成長と低調であり、名目で前期比0.2%成長、年率換算で0.9%成長です。
実質ベースで民間最終消費支出が0.2%増、住宅投資が5.0%増、設備投資が0.4%減、公共投資は2.3%増、輸出は1.5%減、輸入は0.1%減。内需が0.3%増、外需が0.3%減。低成長ですが、閏年効果により1-3月期押し上げられた分より消費はさらに増えた。マイナス金利効果で住宅投資も好調、とします。安倍ノミクスで公共工事は目白押しでこちらも高い伸び、設備投資が低い点は気がかりだけど、まずまず好調。これが楽観論者言い分です。

しかし黒田バズーカで建設ラッシュとなった不動産市場、今がちょうど稼ぎ時、ピークでマイナス金利はほとんど関係ありません。ピークなので今年の秋を終える頃には一巡するでしょう。そして今回、大きな変動要因となっているのが、熊本地震をうけた推計方法の変更です。影響の大きそうなものを幾つか上げますが、鉄道輸送は本来、4月の結果を基にして5、6月分を推計します。データが間に合わないので仕方ないのですが、今回4月に熊本地震がおきたので、その分を補外推計しています。つまり実際の値とは大きく乖離している可能性があります。
次に民間最終消費支出は、4月15日以後、人口推計から熊本地震の死亡者、避難者を控除し、国勢調査の一世帯当たり人員で除した世帯数を乗じて推計しています。元は家計調査にただ世帯数を乗じて推計していますが、このやり方だと一人暮らしが多い大都会を含めた一世帯当たりの人員で、家族単位で暮らすことの多い熊本地震の被災者で減った分を、補っていることになる。確かに被災者といえど、消費がゼロではないでしょうが、この推計方法には首をかしげます。実際には消費種出はもっと少ない可能性が高いといえます。

民間住宅では、熊本県分の4月推計値に7/30を乗じて、それを4-6月期の全国分から控除します。確かに進捗ベースで推計されるものですので、4月分を約4分の1にする、というのは分かりますが、5、6月にも影響が出ているはずです。そもそも建築物着工統計の工事予定額に、構造物ごとの期間をわりだして進捗をだし、推計します。このやり方では、4月は一部が止まったけど、5、6月は予定通りすすんでいる、となる。これも見た目より実際は低かった可能性があります。特に自身は広域被害なので、尚更九州地域全体の見通しが、地震の前後でどう変化したのか、これではまったく織りこめていないのです。
政府最終消費支出にはH28年の第一次補正予算が組み込まれており、さらに公的固定資本形成では、熊本県における公共工事は停止している、として建設総合統計から、27年度の出来高ベースの熊本分をだし、4月分で熊本分に16/30を乗じて、指数を算出しています。つまり4月だけ約半分になった、としていますが、県庁の被災状況などをみる限り、熊本の公共工事はほぼ停止したとみなすべきでしょう。さらに、応急仮設住宅については計上されている。政府最終消費支出にくみこまれた一次補正予算と、公的固定資本形成にくみこまれた応急仮設住宅は、二重計上ではないか? との疑念もでてくるところです。

一次速報なので仕方ない面があるとしても、やたらと推計が多い。しかもそれがすべて実勢より多くなる方向で計算されている。見た目以上に、今回のGDP速報値はかなり上ブレするよう、予め調整されたもの、と思っておいた方がよいのでしょう。GDPは速報値の注目度が高いので、こうした調整をした、というのなら、本当はマイナスになってもおかしくなかったのかもしれません。元々、日本は3月にセールなどでGDPが上昇し、4-6月期は前期比でみるとマイナスに陥る傾向があるのですが、何とかしてそれを回避したかったのかもしれません。GDP、今やGovernmental Deffensive Positionを示すために、いくらでも統計を弄っていい、そんな形にしかなっておらず、株式市場どころか経済活動も閑散、それ以上に国民の心にも閑散の白けムードが漂ってきた、となるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:31|PermalinkComments(8)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2016年08月12日

雑感。稲田防衛相のジブチ訪問と、改憲

リオ五輪で日本のメダルラッシュがつづきます。そんな中、柔道選手の「銅でもうしわけない」という発言に、他競技に失礼との声があります。しかしどの競技であっても自分の実力に基づき、目標を決めます。メダルを狙うのか、入賞を狙うのか、それとも底まで届かないけれど、頑張るのか。偶々、柔道は金メダルを全員狙える実力があり、そこを目標にしているのです。スポーツの世界ですから、上位を狙える選手が上位をとれなかったことを悔やむ、となっても当然です。他の協議や、国全体のことを考えて、わざわざコメントする必要もない。もしそんなコメントばかりになったら、日本はつまらない国になるだけです。画一的なコメントで満足するなら、コメンテーターに任せておけばいい。その世界でトップを目指す人間は、その世界で自分の実力と結果について、コメントすればよいのでしょう。
五輪のメダル獲得数で、株式市場は上昇する、といったジンクスもあります。ただそれは関連銘柄を買う、といった連想買いで、終わったらすぐに戻る程度のこと。いわば材料株が増える、ということだけです。問題は、今日も日経平均の上昇に比べ、TOPIXの上昇が低い点。日銀トレードという、怪しげな言葉も飛び交い、さらに日銀が緩和縮小に転じる機会を遠ざけています。日銀…名前には『銀』がつきますが、『金』の力で市場を支配している。そうした態度は『どう』なの? との懸念が高まり易くもなっているのでしょう。

稲田防衛相が15日の靖国参拝を見送ります。ジブチ訪問と、もっともらしい理由をつけて回避したのは、諸外国から懸念を表明されたため、でもあるのでしょう。接続水域への中国漁船の侵入が圧力で、それに屈したとの印象は中国漁船の沈没を海保が救助したことで、大分和らいだ。まさに渡りに船、だったのかもしれません。しかし13日の渡航が今日発表されるなど、ドタバタ感もあります。さらにジブチで自衛隊が行っているのは海賊対処活動、国内の接続水域で中国漁船にやりたい放題やられ、一義的には海保の対応だとしても、日本政府の対応にはちぐはぐ感もあります。
稲田氏がジブチを訪問したとて、何が変わるわけでもありませんが、G20で日中首脳会談を画策する安倍政権にとっては、秋季例大祭まで我慢させるのに、自衛隊が活動するジブチ訪問が、『渋ちん』の稲田氏を説得する唯一の策だった、ということになるのでしょう。

日本国憲法の9条は、1946年当時の幣原首相側からの提案だった、とする新資料がでてきました。57年の憲法調査会において、会長の高柳氏がマッカーサー元帥に手紙を送った、その返信です。『戦争禁止の条項は幣原から』『世界に対して精神的な指導力を与えようと意図』ともあり、戦争放棄以外の戦力不保持、交戦権の否認についても、幣原氏からの提案と考えられる、とします。『精神的な指導力』というからには斬新な提案をした、ということでもあり、戦争放棄は諸外国にもみられることから、それ以外と考えるべきなのでしょう。
天皇陛下のお言葉をうけても、安倍政権はあくまで特例法で対処する方針をもっていたようですが、各社の世論調査では皇室典範の改正を求める意見が大多数。お言葉を真摯にうけとめた国民も多いようです。しかも上記のように、日本国憲法がGHQに押し付けられた、慌ててつくられた、という改憲論者の主張する意見とは、まったく違う姿がみえてきて、改憲の正当性すら揺らいでいる。それでも改憲を推していくのか? そのためにはお言葉すら蔑ろにしてよいのか? そうした問題も横たわるのでしょう。幣原氏がめざした『精神的な指導力』、国内の保守派はまったく指導されなかったようです。リオ五輪でもメダルラッシュの柔道、組み手をくまなかったり、投げ逃げをする選手には『指導』が与えられますが、正しい情報に基づくまともな議論から逃げているようでは、ますます改憲議論には『指導』が与えられることにもなるのでしょうね。

明日、明後日とお休みしたいと思います。



analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(32)このエントリーをはてなブックマークに追加