2016年12月10日

来年の政局について

産経系のメディアで『蓮舫代表、醜悪ブーメラン直撃 首相相手に罵詈雑言の党首討論デビュー』とする記事がありました。蓮舫氏の発言を「口汚い批判」とし「息をするように嘘をつく」などと言い放った、として二重国籍問題とからめ、ブーメランだとします。しかし先に「息をするように嘘を吐く」として野党当時、民主党政権を批判したのは他ならぬ安倍氏でした。当時のブログでの指摘ですから、産経のアーカイブにも残っているでしょう。どうして産経系のメディアは総じてアーカイブを調べないのか? 調べていてもこんな記事を書くのかは分かりませんが、当時の安倍氏の批判は口汚くなくて、蓮舫氏の指摘が口汚い、というのなら、少なくとも対比表を併記して当時の安倍氏の記事と、今回の党首討論との指摘との差をきちんと示すべきなのでしょう。
しかも、ネットでは二重国籍問題で『お前がいうな』の意味の『おまいう』が溢れた、などとも書いていますが、産経の大好きな保守系の集まるサイトの話なのか? 寡聞にしてその言葉が流行語大賞を狙えるほどに、ネット上に『溢れた』という話は聞きません。産経系の書くブーメランは、いつも的外れの方向に飛んでいくか、墜落するほど質の悪い武器であることは、今回でもはっきりします。党首討論が決して褒められたものでなかったことは論を待ちませんが、蓮舫氏が零点なら、安倍氏は落第です。蓮舫氏は自己主張ばかりで論点を絞って質問をしたわけではなく、安倍氏は逃げ回るばかりでしたから。あの党首討論は、目立ちたい蓮舫氏と、会期中に1回ぐらいやっておかないと…、という与野党の事情が合致して開かれたものの、双方の党首の能力不足だけが際立つものでした。

安倍氏が年末、真珠湾で慰霊する話が、いつの間にか「アリゾナ記念館で」という付帯条件つきの『初』になりました。戦後まもなく、吉田首相が現職の総理大臣として真珠湾を訪問しており、読売などは『米大統領とともに真珠湾を訪れるのは初』と、何だか『初』をつけて記念にでもしたいのか、『初』をつけないといけないかのような記事が目立ちます。ただ『安倍氏が真珠湾で慰霊』と書くだけでは済まない事情が、メディアにもあるのでしょう。
問題は、それを安倍氏が『成果』とし、年明け解散に踏み切るのでは? と観測される点にあります。安倍氏にとって、海外の情勢変化は厄介です。伊国の国民投票では改憲が否定されましたが、日本ではあまり大きく報じられていません。それは改憲をめざす安倍政権にとって、改憲が否定される、というのはネガティブ材料になるためです。また来年は欧州の選挙イヤー、EUがガタガタになれば解散などしている場合でなくなる。選挙制度改革の進捗とともに、解散するなら年初しかタイミングがありません。

来年の政局は、この年初の解散で決まる、といっても過言ではないのでしょう。そこで与党が現有議席程度にとどまれば、恐らく来年の年末辺りは、国会は改憲にむけて突っ走っていることでしょう。恐らく自民は公約にも目立たないところに一行だけ『改憲をめざす』と書いておいて、勝利すれば国民から支持された、と主張するでしょう。今国会の年金法案、カジノ法案、TPP関連法案などをみても、数の横暴という力を使いだしており、もうその安易さに染まりだしたら、面倒な与野党調整などするのがバカバカしくなります。自公に維新を含めた3党で、3分の2をとれば改憲にまっしぐらです。
それに対抗するのは民進党が筆頭ですが、支持率は低迷です。反自民票が乗るとはいえ、このままでは心許ない。蓮舫氏は党首討論を見る限り、準備してもらった質疑と、対応力はありそうですが、一を聞いて十を返せるほどの能力は無い。それに、あくまで優等生を自任したいのか、罵詈雑言どころか酷く大人しい言葉に終始した。もっと激しく攻めていいところでも、イメージを大切にした、と言えます。しかしこのままでは米大統領選の二の舞です。それはトランプ氏 VS ヒラリー氏の構図を、安倍氏 VS 蓮舫氏で踏襲しているようなもの。自画自賛と野党批判をくり返す安倍氏に、政治家としてキレイごとで対抗していては世論がつかめない、ということでもあります。

民進党が勝利せずとも、与党+維新で3分の2をとらせないためには、政治的に『いい子ちゃん』であってはダメなのでしょう。悪童と呼ばれようと、常に一面を飾るぐらいの発信力が必要です。そしてその発言が、大衆の心に響かないといけません。是々非々、などというのも政治的に『いい子ちゃん』で、対案をだす、というのもその類です。蓮舫氏が悪役(ヒール)になりきって、それこそ野党時代に安倍氏がついていたような罵詈雑言を与党に浴びせ、その立場を奪い返すことができるか、そこに来年はかかってくる、と言えるのでしょうね。

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2016年12月09日

株高で安倍氏はうきうき?

韓国では朴クネ大統領への弾劾が、賛成多数で可決されました。国会前のデモに、与党も観念したらしく、大差の賛成票が投じられています。こうなると憲法裁判所も『不当』判断はしにくく、もし不当→国政復帰、などとなれば韓国は大混乱。韓国経済は資金流出により破綻するかもしれません。そうならないためには朴氏、または裁判所の判断が重要となりますが、まだまだ予断を許さないところなのでしょう。

日経平均株価が好調で、一時19000円にタッチしてきました。ただ今日はいつも不思議な傾け方をする欧州系が買いを飛ばした結果で、若干イレギュラーな印象です。しかし今日は米金利の上昇をみていた可能性があり、為替は夕方からキャッチアップし、対ドルで115円をつけてきています。日本国債も長期金利が一時0.06%をつけるなど、債先売り/株先買いの動きだとすると、今日の上昇には説明がつくのでしょう。ではナゼそんな動きが出たのか、というと予想以上に株が上がってしまったためかもしれません。債先/株先の取引はリスクヘッジのためのものですが、株が上がり過ぎると損が高まる。米国では年初来高値をさらに更新、TOPIXも年初来高値をとるなど、想定以上に日米の株が上がったことで株先売の損失を整理する必要があった。それがイレギュラーな動きの本質なのでしょう。
しかし米国債の動きには注意が必要です。中国がさらに外貨準備を減らしている可能性がある。中国からは来年は不動産投資が減少、など規制と抑制発言が相次ぎ、相当に不動産バブルへの警戒がみられます。なぜか中国では、不動産バブル抑制と同時に製造業関連の指標によいものが目立つようになりますが、統計データの不正で逮捕者をだしたように、情報の信憑性は皆無です。不動産投資が弱含むと、もしかしたら資金繰りが悪化する企業が増えると予想され、そのために外貨準備を取り崩し、手元資金を篤くしているのかもしれません。すると米国債売りは、まだまだ止まらない可能性もあります。

しかし一昨日は米金利の低下を好感し、米株が大幅高をしたように、金利上昇と株高とが同時におこる米国は今、かなり無理をしている状況です。欧州でも昨日はECB総会が開かれ、800億€の債券買い入れプログラムを来年4月から600億€に減額し、年末まで延長します。これも債券売りを誘発した側面はありますが、債券では稼げなくなった、が一般的な見方です。なので債券から株へ、という資金循環を起こしていますが、決して今の株高を正当化するだけの経済環境が訪れるわけではない。今はむしろ、株価が上がるから来年は好調、という歪んだ見方をする人が出てくるぐらい、世界はおかしな状況になってしまっているのです。
そんな中、安倍氏はエコノミスト懇親会に出席し、ご満悦で「申酉騒ぐ、の年になった」「うきうきするような株価予想を」と述べました。今の株価が好調で、機嫌がいいのかもしれませんが、日本経済がよくなったから株高になったわけではありません。例えば、今年の外国人投資家は7兆円売り、トランプ相場が始まってから3兆円以上買ったから、まだ4兆円の余裕がある、と述べる人もいます。しかし1年間で考えるべきではなく、安倍ノミクスが始まってから外国人投資家は8兆円近くを買った。その分を今年1年かけて売ってきたのであり、差し引きすれば外国人投資家は4兆円買い、とも言えるのです。米経済がトランプ相場でよくなったからといって、日本経済がよくなるかどうか分からないのに、これ以上の傾きをかけてくるか? というとその確証はありません。

申酉騒ぐ、のですから来年も大変な1年になる、というのが当面の話なのでしょう。「うきうき」どころか「浮き沈み」の激しい年になりそうです。市場が忘れているのは、トランプ氏は米国ファースト、米国の利益を最大化する、と言っているのですから、それは日欧などの先進国ばかりでなく、新興国でさえも苦しくなることが予想されるのです。なのに、今の市場は世界全体が一斉に好調となる、かのような動きです。
そしてそれが起きるにしては、市場に流入してくる資金が日欧ともに減少する緩やかなテーパリングに向かっており、金利も上昇し、その中で景気をみていかなければいけないのですから、必然的に厳しめにならざるを得ません。来年の予想は近々出したいと思いますが、来年は政治も、経済も騒がしい1年になることでしょう。今、何の備えもせず、株高になってウキウキしているような指導者では、来年は浮き足立つ場面が目立ってくるのでしょう。安倍ノミクスの失敗を覆い隠してくれたトランプノミクス、としか考えていないのなら、憂き目をみることになりかねないのでしょうね。


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2016年12月08日

GDP統計の推計見直し

7-9月期GDP改定値が公表され、実質で前期比0.3%増(速報値2.2%増)と、大幅な下方改定となりました。名目で前期比0.1%増(速報値0.2%増)ですが、今回は基準の見直しにより、名目で2015年のGDP確報値が532.2兆円と、31.2兆円も嵩増しされていることが話題です。まずこの推計の見直しについて、簡単にふれます。

国民経済計算(SNA)は国際基準であり、2008年に国連で採用された基準が最新となっていて、今回はそれに適応する目的です。概念としてこの国際基準の最新版を2008SNAと呼び、日本で適用されるものはJSNAと呼んでいます。2008SNAは研究・開発の計上から、非合法的な活動までを包括して国の経済として採用することを求めていますが、日本のJSNAでは非合法的な経済活動、例えば覚せい剤の取り締まりや、違法賭博などの収益は採用されません。余談ですが、カジノ法案が通れば、将来的にはカジノもJSNAには採用されるでしょうし、マネーロンダリングでカジノを通過すると、非合法的な活動でさえ日本では経済活動としてGDPに組み込まれるかもしれません。そのとき、安倍政権のめざすGDP600兆円に達するのではないか? と皮肉を籠めて言われています。
SNAでは産業連関表、国際収支表、資金循環表等が含まれますが、その中で産連は2008SNAに対応していない基準年でもある平成23年表を用いているため、個別に対応します。ちなみに平成31年に公表される平成27年表で、正式に2008SNAに対応します。国収はIMFの基準に準拠していますが、IMFの基準が2008SNAに基づいており、問題ありません。資循は今年の3月に2008SNAに対応済みです。つまり産連のみ未だ対応がついておらず、総務省や経産省など、統計をとる省庁が独自に調整していることになります。

それを踏まえて今回の改定値をみると、一次速報から比べて設備投資は大幅な悪化。逆に消費支出は改善、と二極化されています。日銀はこれまで、需要サイドの統計のウェートが大きいと下方乖離している、と主張して一次速報のブレを指摘し、独自の推計をだしていますが、日銀の独自推計に今回は近い形になった。ただし、これは日銀の主張が必ずしも正しいとは限りません。今回の統計でもはっきりしたのは、供給サイドのデータを重視すると、途中で廃棄、消費されなかったものも計上され、一見すると消費したかに見えてしまう。つまり供給のデータが重視sれる二次速報、また確報値で上ぶれし易い。一方で設備投資のように、計画段階で盛りこんでも需要サイドが先送り、計画の見直しなどをしてしまうと、供給サイドのデータが乗ると、実行されていない分がマイナスとなってくる。これで景気がよく、設備投資も計画通りいっていれば、需要と供給が合致するのですが、より設備投資は景気を反映しやすくなった、ということが言えるのでしょう。
つまり、消費支出はつくった分だけ計上されるようになり、実際に消費せずとも経済活動として認められるようになった。在庫のままだと在庫投資に計上されますが、廃棄された分も経済活動として計上できるようになった。一方で、設備投資には研究・開発も加わったことで、企業の景況感をより反映することになった。どの企業でも、景気が悪くても設備の更新は必要だったので、その分は安定的に推移していましたが、研究・開発は景気を色濃く移すのです。しかも一次速報と、二次速報の差をみると、企業が計画から実行段階にどう動いたか、より映しだすようになったといえるのでしょう。

しかも産連は統計を独自に調整する中で、この二次速報の急落を生んだことは、よほど企業の景況感は悪い、ということが言えるのでしょう。トランプ相場が勃発、11月の街角景気も改善しているように、10-12月期はまた違った結果になるのかもしれませんが、7-9月期にその兆候は無い、ということにもなるのでしょう。結果として、今回の推計の見直しにおいて、安倍政権が画策したようなGDPの金額ベースの上乗せを、安倍ノミクスの実績としてアピールする、との目的には合致しなかったのでしょう。むしろより景況感を反映しやすくなったことで、安倍ノミクスの成否が常に映しだされることにもなったのでしょうね。

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2016年12月07日

党首討論と、孫氏の米投資

ソフトバンク(SB)の孫社長が米国でIT企業へ500億$の投資を行う、としてトランプ次期米大統領と会談しています。これはサウジの政府系ファンド(PIF)との間で結ばれた700億$規模のファンドをベースにしたものですが、5年間でSBが250億$、PIFが450億$ずつを出し合います。孫氏は「規制緩和もされるだろうし…」と、投資の意義を強調しますが、そもそも700億$規模のファンド、しかもIT分野で、と言っているのですから、経済規模や技術の進捗度合いからみても、その3分の2近くを米国に投資することは、別に不自然でも何でもありません。「雇用が…」と説明したのは、トランプ氏の主張に沿うためであって、別に雇用をつくる投資ではなく、これはIT企業家に投資をし、そのリターンで収益を得るという通常の財テク、運用でしかないはずです。
それを市場が好感したのは、今の市場環境によるのでしょう。孫氏はSBに溜まった有利子負債について、未だに有効な解決策を示しておらず、英ARMの買収の成否も不透明な中、金が金を生むビジネスに注力する方向性を鮮明にしています。このトランプ氏との会談は、SBが買収した米通信大手スプリントが、TモバイルUSを統合しようとして規制当局から寡占化を理由に拒否されたことを、トランプ氏に根回しするために行われた、とみられます。そもそもそのスプリントは従業員の削減をすすめており、雇用の回復という方向性とは真逆の方針でした。それを投資で雇用回復、などというのは、言葉は悪いですがちゃんちゃらおかしい、というレベルでしかないのです。

日本では党首討論が行われました。カジノ法案について問われた安倍首相は、議員立法から説明するなど、明らかに時間を空費させる戦術をとり、時折野次に注文をつけるなど、質問に答える気はほとんどなかったような討論です。その中で、一つ分かったのは安倍氏が語る有効求人倍率の改善、という説明についてです。
人口減少によって雇用が回復するなら、それは消費も減少していくわけだからそうはならないはず。これが安倍氏の、有効求人倍率の改善を、安倍政権の成果とする論拠になっているようです。しかし普通に間違いです。人口減少社会でも消費が減っていないのは、人口のボリュームゾーンが上方にシフトしているからです。簡単にいえば高齢化、15歳から65歳までの生産年齢人口が減少し、65歳以上の高齢者が増えていますが、65歳以上の高齢者も消費者としてカウントできる、だから今はそれほど生産を落とさず済んでいるのです。

しかしその巨大なボリュームゾーンとなった高齢者も、いつかは消費者としてのパイも縮小する。そのとき生産も落とさざるを得ず、有効求人倍率が悪化する。しかしその頃には新たに生産年齢人口に加わる年齢層も減っている、という悪循環になってしまうのです。つまり日本は縮小、停滞に向かって着実に向かっている。にもかかわらず、安倍氏は何も手を打たないのですから、話になりません。亡国の政権、と指摘する所以はここにもあります。日本が悪い方向にむかっているのに気をよくしているなんて、頭が悪いか、そうやって日本の力を殺ぐことを目的としているか、どちらかでしかないのでしょう。
孫氏のように雇用回復、といいながら、裏では自分の企業の従業員を解雇し続けるようなやり方は『狡知に長けた』という言い方もできるのでしょう。安倍氏のように、本当は問題があるのに、それを都合よくしか解釈できないような人間は、日本を『荒地にさせる』とも言えます。安倍氏はトランプ氏にあった海外の要人、として誇らしげにしていましたが、孫氏がそれに続いた。しかもいきなり「マサ!」とまで呼ばれるほど、歓待されています。寡聞にして「シンゾウ!」と呼びかけられた、とは聞きませんが、この孫氏の成功をみて、他人のことを羨ましがる安倍氏が、さらに米雇用の回復、という手土産をもっていくのかもしれません。日本では「規制緩和が…」と語らない孫氏、あらゆる意味で孫氏と安倍氏、その言葉をつき合わせると能力の差、を感じてしまうのかもしれませんね。

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2016年12月06日

毎月勤労統計と人口動態

来年の1月27日に、トランプ米次期大統領と安倍氏が訪米し、会談する方向で調整していることが判明しました。なるほど「日本もカジノを解禁しましたよ」と手土産にするため、今国会で焦って成立させようとしているのでしょう。大統領就任から一週間、またしても一番乗りを狙っているようですが、最近では『トラの威を借るキツネ』ならぬ『トランプの威を借る安倍』という箴言の方がしっくりくるようです。
安倍氏のハワイ訪問は、5月のオバマ大統領の広島訪問の際、オバマ氏側から提案され、それをペルーの立ち話で安倍氏の側から了承を伝えた、などと喧伝されています。しかしそれだと、立ち話が5分で終わった説明がつきません。通訳を介すと挨拶だけで5分ぐらいは経ってしまう。安倍氏が了承を伝えた際、オバマ氏が「OK。後は事務方で」などと言って立ち去ってしまったなら、それも何かおかしな関係でしょう。そもそも5月の提案を、11月まで回答を渋っていた、などというのも失礼な話です。オバマ氏から提案された、決まったのはペルーで、と辻褄を合わせようとして、余計にボロが出ている印象です。

10月の毎月勤労統計が発表され、現金給与総額は0.1%増の266,802円でした。所定内が0.3%増となったものの、所定外は1.4%減となり、足をひっぱった形です。しかし気になるのは所定内、所定外ともに労働時間が減ったこと。所定内は季節要因もありますが、所定外1.8%減と大きく減っており、仕事がない状態であることがうかがえます。また一般労働者が2.2%増、パートタイム労働者が1.6%増と、一見すると雇用が伸びているようにみえますが、入職率は0.11%減、離職率は0.08%減、つまり仕事に就く人は少なくなっているけれど、辞める人がいないから伸びた、ということになります。
企業は人材を抱えこむため、高齢退職者の再雇用に積極的ですが、労働時間が減っているように、人材に余剰感もある。世界経済の回復が遅れ、国内消費も低迷する中で、いよいよ来年辺りから労働階層の減少と同時に、雇用環境も悪化する、最悪の状態に陥るのかもしれません。しかも給与総額が伸びた、とはいえ物価も上がっているため、生活は苦しくなっている。ここに来て雇用環境まで悪化すれば、日本では景気低迷が深刻化する恐れも拭えなくなりそうです。

今日は7月の人口動態統計が発表されましたが、昨年は毎月28000人ぐらいが自然減となっており、今年に入ってから平均すると29000人減と、人口減少が著しくなってきている。国からすれば、高齢者が亡くなってくれれば年金の給付が減らせる、となるのでしょうが、人口減は消費減も伴います。結果、国の経済は萎んでしまうことにもなるのです。
来年は厳しい予想しかうかがえませんが、株式市場ではそんなことには目もくれず、トランプ相場の流れに乗るだけです。しかしレーガン大統領就任と比肩する意見も散見されますが、4月までつづいたレーガノミクス相場も、後は失速する一方でした。今回はあまりに早くキャッチアップしたため、すでに息切れも見えてきた。トランプ氏による中国への高圧的な態度も、世界経済を不安定にさせています。米国不動産を支えている中国人投資家が、相場の転換で一斉に手をひく可能性もあるためです。世界が今、トランプ氏に熱い視線を送り、その勢威に乗ろうと躍起ですが、『トランプを野に放つ』状態になれば、逆に悪材料にすらなりかねない。安倍氏は一生懸命、米国に媚を売るのも日本経済ががたがたになりそうなことを、意識したものかもしれません。しかし米国経済とて不安定になったら、日本叩きが本格化することも想定されるのです。『トランプの尾を踏む』、そんな状態になることも、来年は覚悟しないといけないのかもしれませんね。

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2016年12月05日

安倍首相によるハワイ訪問

長野県のある一地域で、大麻を栽培、大量逮捕につながった、という事件があります。一部のTVで逮捕の場面が映しだされるなど、麻取とメディアが組んで、成果として大々的に報じようとしたことが指摘されます。しかしそのリークされたメディアがNHK、日テレ、フジと、なぜか親安倍派のTV局ばかりだったことは、何やら示唆的とも言えるのでしょう。

安倍氏が夕刻記者会見を開き、12月26、27日にハワイを訪問し、オバマ米大統領とともに真珠湾で戦争犠牲者を慰霊する、と発表されました。ペルーのAPECでオバマ氏と立ち話した際、安倍氏の方から提案した、というのはタメにする論です。恐らくこれは5月のオバマ氏の広島訪問の際には合意していたもので、政治的なバーター取引との印象を薄めるために、あえてペルーで提案、に拘っているものとみられます。
しかし違和感があるのは、安倍氏が「4年間の総括」と述べている点です。それは安倍氏とオバマ氏との関係は4年ですが、真珠湾の戦争犠牲者の慰霊は毎年行われているものです。つまり戦没者の慰霊を二人の関係性でまとめ、利用するなど、言語道断だからです。しかも「同盟の強化の意義を発信」など、戦没者を本気で慰霊する気があるのか? 同盟の強化とは、互いが戦争をしないという取り決めでもありますが、それは第三国にとってまったく見方が異なる。同盟が強化されたら日米が共同して攻めてくる、という話に過ぎません。だから米国に媚び諂い、安寧を得た方がよいですよ、などと世界に発信するなら、相変わらずもの笑いの種でしかないのでしょう。なぜ同盟を強化しなければ、米大統領が広島、日本の首相が真珠湾を訪問しなかった、できなかったか。それは単に、両国が率直に戦争責任、戦争犯罪をみとめてこなかった、という軟弱な態度に終始していたから、というだけの話です。未だに戦争責任、戦争犯罪をみとめていない国もありますが、もうとっくにみとめてきた国もある。同盟の強化は、単なる口実に過ぎません。

しかも本当に「同盟の強化」が為されたのか? 安倍氏は安保法制によって…と言いたいのでしょうが、単に日本で法案が通った、というだけで執行はされていない。先月から南スーダンに派遣された部隊で、初めて任務が付与されただけです。正直、その具体的な事例は皆無、また双方の国の政治の中枢にも、その認識が一切無いでしょう。
「同盟の強化」された関係なら、日本が執拗に求めたAPECでの首脳会談が、立ち話で終わるはずもない。トランプ氏の自宅訪問に対する意趣返しだとしても、強化された同盟関係の首脳が会いたい、と言って袖にするはずがない。オバマ氏が退陣直前だとしても、話し合うことは山ほどあるはずです。つまり話し合うこともないほどの関係、それが「同盟の強化」された日米の偽らざる姿、ということなのです。

なるほど、安倍氏が解散に前向きだったのも、山口会談、真珠湾訪問と、Wの外交成果を訴えられる、との計算があったのでしょう。しかし前者はすでに頓挫、「信頼関係の下に着実に一歩一歩」と、1回では解決できないとの見通しを示した。しかしこれまでプーチン氏との信頼関係を築いてきた、と思っていたら、露国から梯子を外された。信頼などという言葉は単なる安倍氏の勘違い、思いこみだった、ということが判明しています。
後者は胡散臭い政治バーターの結果、謝罪外交にならないよう、互いに『初』との称号を得られるよう、配慮された相互訪問という形であって、決して成果とよべる内容でもありません。コメントを残すか、残さないかもありますが、恐らくオバマ氏に倣ってコメントは残すでしょう。そのとき米国で、どんな評価が下されるか? 謝罪が足りない、などと批判されれば「同盟の強化」どころではなくなるでしょう。記者会見のタイミング、夕刻の民放で生中継されるギリギリ、NHKの7時のニュースで質疑応答が、と親安倍派のメディアに配慮した形になった。そこに漂う腐臭もまた、4年間の総括というなら、日本で流れることになる礼賛記事と、海外で流れる批判的記事との差、についての「透明性の強化」が必要となってくるのかもしれませんね。

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2016年12月04日

安倍ノミクスと税収

日露外相会談、会談前に通例となっている握手を、ラブロフ露外相はあえてしませんでした。露国ではウリュカエフ前経済発展相が外資をよびこんで経済を活性化させる筆頭、一方でラブロフ外相は高圧的な態度で、甘い顔をしないというプーチン政権では役割分担がありました。ウリュカエフ氏が逮捕、拘束された今、ラブロフ氏がどう変わるかとみていましたが、従来通りの路線だった、つまり強硬派がかなり力をもっている状態ともいえます。そんな折、北方領土交渉どころか平和条約の締結などを提案しても、良い答えが返ってくるはずもありません。米国で親露派のトランプ政権が誕生することも追い風、OPECが減産合意で、原油価格がふたたび上昇していることも追い風です。まさに露国には妥協する理由がない、という状況にもなっていることを示すのでしょう。
著名投資家ソロス氏は「露国への投資を増やした」と述べていますが、日本からの支援と原油高の追い風、さらに米露が協力して小国を叩き、そこから金を毟り取ろうとするなら、その対象には日本も入ってくるでしょう。鈴木宗男氏などは、トランプ政権の誕生は日露交渉に追い風、などと述べますが、トランプ氏が日本の味方をする、などという想定自体が甘い。米国ファースト、露国ファースト、そうしたものは自国の利しか考えられない、ということでもあるのです。かつてソロス氏は中国へも投資していましたが、今は退いている、ともされる。ソロス氏のように合理的な行動を心がける人と、政治家のように自分の主張のためなら、多少の非合理な理屈も採ってしまう人との差、こんなところにも表れるのかもしれません。

安倍政権が赤字国債を増発、とする記事があります。なぜかメディアはさらっと触れたぐらいでスルーしますが、これは安倍ノミクスの重大な転機です。安倍政権ではほぼ成長していないので、これまでの税収増はほぼ円安効果、海外で活動する企業が円安分の利益を上乗せしたことで達成されました。しかし円高になった途端、その効果が切れる。円高になったら「企業は耐性がある」と発言する市場関係者も多かったですが、その耐性とは結局、円安になったら税として納める分が多くなっただけ、円高なら税として納めずに済む、という類の話だったことが、これではっきりしてきました。
これでは企業が賃上げなどできるはずもない。いくら税引き後の利益とはいえ、円安で税負担が増えるのなら、企業は貯めておこうというインセンティブを働かせ易くもなるのです。安倍政権は4年連続の賃上げ要請などしており、経団連ならぬ佞団連会長も同意していますが、安倍政権ではもう一つ、同一労働・同一賃金もめざしており、尚更賃上げをできる状況でもありません。大企業は賃上げせずとも新卒の採用希望が集まってくるのであり、賃上げする必要がない。中小零細企業は賃上げしたくてもできない。それが現在の日本の労働環境です。そして賃上げがすすまないから、所得税収入も伸びない。円安による法人税頼みの限界、がここに来て一気に噴出したのです。

では今の円安は追い風か? というとそんなこともないでしょう。米国の自動車業界は販売奨励金で高水準の販売数を維持していますが、こうしたものは消費の先食いです。しかも利益率も下がり、販売も頭打ちになってきた。しかも移民の排斥により、今後も右肩下がりになることが予想され、自動車業界が円安効果を享受できない可能性が高い。またTV販売でも、今の4Kテレビは将来の4K・8Kの本放送になったとき、チューナーを別途買わないといけない、などの制約もあり、中々販売が伸びない。最近ではVRが注目され、俄かにゲーム業界も盛り上がりますが、ポケモンGOのように初動はよいでしょうが、VR酔いの問題は解決されず、社会問題化すれば一気にマイナスイメージがついてしまう。
今の最大の問題は、実は様々なものが過渡的状態にあり、一つとして今買ってよい、と言えるものがない点にあります。車とて、トヨタがガソリンエンジンの開発を止める、と述べるように、言わば将来的にはEVが主流となることが確実で、それを待ちたい気持ちも働きます。今後数年、様々なものが移行期に入り、買い控えがおこり易い環境にある、とも言えるのです。税収減、今ではタックスヘイブンの問題なども取り沙汰されますが、日本ではその摘発に後ろ向きです。それは日本の政治家が闇の社会ともつながっていて、そうした連中が利用している割合が高いから、とも囁かれます。しかし税収減という問題に直面し、日本でも抜け穴を塞ぐ必要もでてくることでしょう。安倍氏はこれまで鼻高々に「安倍ノミクスで税収が増えた」と述べてきました。しかし今やその言葉も嘘になってしまった。「安倍ノミクスで佞衆が増えた」という実績だけが残るのかもしれませんね。

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2016年12月03日

雑感。トランプ大統領と予言集

11月米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者が17.8万人増とほぼ予想通りとなりましたが、9、10月が2000人下方修正され、時間当たり賃金も0.1%減と、若干弱い印象です。ただ暦法の問題だったりもするので、12月の利上げには影響ない、との見方が専らです。そもそも米国は完全雇用の状態ですから、低金利をつづける道理はありません。これまでは市場との対話に失敗してきたから、むしろ市場が対話を曲解していたから、利上げができなかっただけ。しかし12月は、市場にもFRBにお情けがあって利上げできる、というに過ぎません。かつてのFRBは鶴の一声、で市場を操作しましたが、今は鳩の囁き、ぐらいでしかなくなっており、市場からはナメられ、市場に操作される存在になってしまっています。
それを促したのが、市場に大量に投下されたマネーです。いつの時代もマネーを大量にもった側が強い。例えば、米国債の金利が上昇、価格が下落していくとFRBは大量に抱える米国債の価値の目減りにより、資本が毀損していきます。それを起こさないためには、再びFRBが国債買いを再開し、買い増すか、市場に買ってもらうよう促すしかありません。すでに資本が毀損していれば、もうFRBの力は落ちているため、買い支える余力もなくなる。今はまだトランプ相場で金利急騰、といっても大したレベルにはありませんが、これがもう一段、金利が上に遷移するなら、そのときFRBと市場の力関係は簡単に逆転してしまうことにもなりかねません。

そんな米国では、トランプ氏による閣僚人事の噂が流れています。しかしその色は金融機関の出身者、元軍人、そして極右思想主義者、の3色でしか彩られておらず、これに基づく国づくりとは、決して労働者階層にとって優しくないことが想像されます。しかも、空調大手キヤリアのメキシコへの工場移転計画を見直させた、とも本人が語る。これでは株主にも優しくない。アメリカファーストのはずが、今のところ労働者にも、株主にとっても都合が悪い…との意識が米国でも俄かに広がっています。
しかしそんな米国で、一つの噂として流れるのが、米国では社会保障番号に代わる、新たな住民統制としてICチップを埋めこみ、それに基づいて就職できたり、給料をうけとったり、パスポートも管理される、というのです。つまり不法労働もICチップがない人物は働けないので、排除できる。また国外に脱出することさえ、ICチップで管理される。それこそICチップを埋め込んだ人だけ投票できる。そうやって選別される、それがアメリカファースト実現のための手段になる、ともされています。

移動どころか、買い物をするだけで居場所が分かるわけで、犯罪者も逃げられない。ICチップにハードに個人番号を書き込まれたら、改竄もできない。イイコトづくめのようですが、強烈な管理社会の出来上がりです。アメリカファースト、その言葉の裏には、米国が一番先にそうした管理社会に移行するぞ、という意志の表れなのかもしれません。
トランプ氏のもう一つの得意とするフレーズ「Make America Great Again」ですが、どうもこの言葉は馴染めません。最初はレーガン大統領が用いたものですが、当時からAmericaとGreatが同じ名詞として並んでいる印象があり、Great Americaでは? と思えるためです。文法的に間違いはないのですが、その違和感について、少々暴論をぶってみたいと思います。

日本ではほとんど忘れられた存在ですが、ノストラダムスの予言集10番72『1999年7の月、空から恐怖の大王が来る アンゴルモアの大王を甦らせ、マルスの前後に支配させるために』があります。そのAmerica Greatを『恐怖の大王』と読み替えると、トランプ大統領の誕生はまさに合致する。アンゴルモアの大王、というのは仏国王フランソワ1世との見方が多いですが、このフランソワ1世はアメリカ大陸を発見したアメリゴ・ベスプッチを派遣した人物です。つまりこの詩篇は、恐怖の大王、トランプ政権の誕生と、来年に選挙を迎える仏国に、フランソワ1世のような極端な王を誕生させることの暗示かもしれません。
マルスの前後、が読み解けませんが、軍神でもあるマルスなら戦争の暗示でしょうし、火星移住計画のことを指すなら、人類が何か大きな決断をする一つかもしれません。1999年と、時期がずれているように感じますが、トランプ氏が1990年代の後半から、再び現してきたことと合致するなら、もしかしたらこれは米仏による、新たな世界秩序について示しているのかもしれません。あくまで暴論の類ですが、ふとみると10番72というこの詩篇の番号、入れ替えると2017年となります。トランプ大統領が誕生する2017年、奇妙な符合が気になるところでもあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:47|PermalinkComments(8)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 一般

2016年12月02日

カジノ法案が委員会を通過

カジノ法案が内閣委員会で、賛成多数で可決されました。自民関係者からはカジノを推進する維新に配慮した、などとも語られますが、そんなことで僅か審議時間6時間で通したりはしないでしょう。別に、維新に媚を売らなくても、維新から諂ってくる状況にあるからです。これは本当に安倍-トランプ会談で「日本でもカジノを解禁するんだよね?」などと囁かれたのかもしれません。トランプ氏の金ぴか私邸はカジノを想起させますから、安倍氏がぽそっと洩らした言葉で、取り返しのつかないことになった。なので今国会中にこれを通し、トランプ氏との次回会談で、カジノ利権を貢物としたいのかもしれません。
山本地方創生担当相が「東京一極集中を緩和する意味でもいい」と述べますが、現時点で囁かれる候補地は東京、横浜、大阪など、大都市圏ばかりです。そもそも日本にカジノをやりたいから来る、という観光客がどれほどいるか? 恐らくほとんどいないでしょう。それこそ世界各国にカジノが乱立する中で、よほど特色をださない限り、日本でやる必要がないのです。そうなると観光客の少ない地方都市につくっても意味が無い。観光客が集まる場所で、ついでの夜のお楽しみであるなら、それこそ観光客の集まる大都市圏しか作れない。むしろこれは大都市圏に、さらに資源を集中させる仕組みです。

しかもここに来て、カジノが成長戦略だ、という論調がまかり通っています。これまで無かった市場が立ち上がるのですから、プラスだという浅はかな議論ですが、赤字を垂れ流して破綻すれば、その処理に莫大な資金も必要となる。つまり成長戦略というのは、成功して初めて言えるわけですが、世界中で過当競争に陥っている分野に参入して、成功するという確証もなくつっこむのは、無謀戦略にしかなりません。
しかも政治的な動きとして、議員立法ですから内閣が答弁に立つ必要がないので、内閣にダメージを与えることなく通せる。しかも自民、維新の焦りに公明がついて来れず、党議拘束を外しました。公明にも自民が焦る理由が伝えられていないのでしょう。しかしこれは禍根を残したと言えます。改憲にも温度差がある公明、改憲に前向きな自民、維新が組むことが面白かろうはずがありません。自公協力の力関係が変わりつつあり、安保法制ではほぼ丸のみ、しかもカジノ法案でコケにされるなど、公明が立場を失いつつある。自民を勝たせ過ぎている責任の一端を公明も負っているわけですが、そのことで発言権を失っていく。皮肉と言えますが、『公』の字はハム、まさに皮肉な立場に自らを追い込んでいるともいえそうです。

よく「対案を出せ」と言う人がいますが、正直その言葉に正当性は感じません。例えば今回のカジノ法案、カジノに反対なら対案もありません。成長戦略としての対案だとすれば話は大きくなりますが、恐らくそんな議論は成り立たない。そもそもカジノが成長戦略というなら、まずどれぐらいの事業規模で、その波及効果、副作用等を法案を提出した側がきちんと示すことが必要です。しかし今回、それはない。そこが叩き台となって、本当にこうした効果があるか、副作用にどれぐらい予算がかかるか、という議論になって対案などなくても話し合いはできるのです。むしろそれすら議論させず、通してしまった今回、仮に失敗しても誰も責任をとらなくて済む、という極めて不誠実な形にしかなっていないとも言えるのです。
しかも官僚は、この法案でカジノがどこの省庁に属すのか? 総務省なのか、経産省なのか、で手薬煉ひいています。またカジノ依存症の患者が増えることが想定され、厚労省も予算獲得になる。新しい事業の立ち上げに伴い、それが失敗したときのツケは、ただ事業が一つ消える、というだけでは済まなくもなるのです。官僚にとっては新たな利権、そして法案を提出した議員に、カジノ関連企業からの献金を問い質したところ、返答しなかったように、そこには巨大な利権も渦巻く。それをたった6時間の審議で決めてしまう、というところに与党の驕り、金満体質をよくよく示すとも言えるのでしょう。維新の『維』は糸偏にふるとりですが、左辺は『墜』の意味であり、それで『つなぐ』の意味になるといいます。維新、まさにトランプ氏のカジノ利権という時流にのったつもりでしょうが、それが釈迦の垂らすクモの糸にみえたなら、利権に群がる連中を振り落とそうとすると、自らも墜ちていくだけなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:36|PermalinkComments(17)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2016年12月01日

OPECが減産合意

OPECが減産に合意し、市場は円安株高にふれています。サウジが日量約49万バレル、イラクが21万バレル、クェートが13万バレルを削減し、イランは経済制裁前の400万バレルを主張したものの、380万バレルで合意し、実質的には増産です。ナイジェリアやリビアは削減対象から除外、インドネシアは合意を拒否しました。合計すると日量3268万バレルから117万バレルの削減、となります。
露国が段階的に30万バレル削減する方針を示し、OPECも非加盟国との会談を今月中に行って、世界全体で削減する方針です。しかし10月の生産量からの調整としても、OPECの会議を控えて生産を増やしていた国などもあり、供給過剰の状態が解消される見こみはありません。さらに監視員を置いて、減産の状況を監視するといいますが、すべての油田に人を配置できるわけではないでしょうから、国家ぐるみで生産量を捏造されれば、供給量は減らないどころか、増えるかもしれない。合意に加わらなかったインドネシア、非加盟国会合に加わるかどうかも分からない米国、そしてOPEC非加盟の中南米の動向、等々不透明なことが多いにも関わらず、原油相場だけは急騰しました。

産油国の問題は、史上空前の生産能力を維持しながら、『つくらない』ということが果たして達成できるのか、です。国家ぐるみで生産を調整している中東などはまだしも、米国のように小さな企業体が、独自に生産するような国は、生産調整が利きにくい。価格が上昇すればすぐに生産しようとするでしょう。産油国が価格上昇を企図しても、これはイタチゴッコにしかなりません。今回の価格上昇も、長続きはしないでしょう。
しかし減産合意で、リスクオフとして円安になってしまうことが問題です。様々な試算もでていますが、110円を越える円安は行き過ぎ、という見方が大半なのに、115円を試しに行ってしまう。米系大手や欧州系大手が円売り、株買いを仕掛けていることが、楽観に傾くとそちらにバイアスをかけてポジションを増やす、ということにつながっていますが、原油高は日本のコストプッシュインフレにしかつながらず、景気を悪化させかねないにも関わらず、その材料は無視です。ただただ円売り、株買い。しかも米系大手は日銀のETF買いに合わせるようTOPIX先物に高いポジションを組んでおり、今後の動向が警戒されます。

中東では「屠殺人が多いと肉が腐る」という諺もあります。作り過ぎてしまう、というほどの意味ですが、まさに今の産油国、石油開発企業の多さは、その作り過ぎを生んでしまう状況です。みなが作り過ぎない、という合意を得たわけでもない今回、全員が痛みを被るのではなく、一部が痛みを被り、一部がそれを高笑いしながら眺める、という構図が生まれたとき、それがOPECの影響力の低下と、調整能力の減退を招くことになりそうです。
そしてこの減産合意は、さらに日露による北方領土交渉を遠のかせた、とも言えるのでしょう。露国は余裕をえて、日本の経済協力の価値が低下する。どうしても欲しいお金ではなくなってくる、ということです。しかも円安になれば、相手を満足させる額を準備するにも、日本の負担が大きくなります。例えば円で1兆円、という合意をしても、円の価値が下がればそれが露国からみて8000億円、7000億円に見えてしまう。円安のときの海外投資は、よほど気をつけなければいけませんが、まさに12月は悪材料が重なってきた、といえるのでしょう。

屠殺人が多いと肉が腐る…それは、売りものの肉について語ったことですが、実は屠殺人が腐って、その業界から去ってくれるまで供給過剰がつづく、という意味にもうけとれます。みんながきちんと約束して、仲良しこよしで解決できる、とした今回の合意。多すぎる屠殺人が満足するぐらい価格が上がらなかったとき、果たしてどうなるのか? 屠殺人同士の競争、それこそ殺し合いのような熾烈なものに突っこんで行くのかもしれませn。一先ずの楽観が演出されましたが、今後の動向次第では、世界は殺伐とした状況に陥る展開も予想されるところなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(12)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 中東