2010年10月

2010年10月30日

COP10は名古屋議定書を採択

日中首脳が再び懇談です。仏紙の報道が会談拒否の遠因、などともされますが、牛語句が危惧する第一は、日米安保5条の適用でしょう。第三国のお墨付きが与えられ、武力行使で強制的に収容すれば、国際紛争に発展する。国際法廷に持ち込んでも、中国には勝てる見込みがない。そのため米国に圧力をかけ、前原外相を中傷し始めた。国内情勢における反日デモへの焦り、それが昨今の中国の強硬姿勢です。ここで日本が冷静に対処すれば、逆に中国から融和を引き出しやすい。ただ菅‐仙谷ラインは、あまり好ましい判断をしそうになく、この点が問題になりそうです。

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が閉幕し、名古屋議定書が採択されました。同時に生物系保全目標(愛知ターゲット)も盛り込み、先進国と途上国の利害が対立する、こうした国際会議をまとめるのに、京都議定書に続く日本の優秀さを示すことができました。
議定書発効前の利益配分を認めない、学術研究の場合は簡素化、という先進国の主張を認め、一方で先住民が元々もっていた知見にも利益配分を認めています。この議定書で最大に影響を受ける米国は、途上国と協定を組んで早くから微生物、生物を集めており、製薬、兵器などの活用が進めば、それだけ途上国への富の移転が進みます。また薬価に反映されれば、特殊な薬は高価となるなど、我々の生活にもこの議定書は密接に関わってきます。まだ詳細は今後、各国間でも詰められるとしているので、現実的な効果は計り難いですが、これは大きな一歩ともなります。

特に愛知ターゲットに含まれる、2020年までに保護区指定を陸13→17%へ、海1.2→10へと拡大。農業や水産業を持続的に管理、これが日本には大きく利きます。日本の海洋には、34千種の、世界有数の生物が存在します。陸の保護区は多いですが、海の保護区は少なく、海洋開発に一定の歯止めがかかる。これは正負両面ありますが、有効に活用すれば、国益を拡大することが可能です。
最大は農業、水産業の持続的管理で、これはTPP参加などが取り沙汰される昨今、日本の農業を守り、里山を初めとする生態系維持。乱獲を抑え、育てる形での持続的な漁業の推進、などに役立ちます。また日本の多様な生態系は、北から南から、あらゆる環境が整っており、微生物などが医薬関連に利用されれば、それも大きな利益をもたらすでしょう。日本は自国内の資源の活用、という点でやや遅れをとっていますが、この愛知ターゲットは一つの転機になるかもしれません。

ただ絶滅危惧種の保護、がマグロに当てはめられれば食卓に影響します。当然、負の影響も考慮しなければなりません。各国間の調整代を残すので、日本が途上国の顔をして、生態系保護のための資金を要求する立場に立てないこともあります。ただ深海まで含め、日本がもつ資源としての生物の価値が、この名古屋議定書、愛知ターゲットで担保されることにもなります。確定できる材料は多くありませんが、日本が国際条約をまとめる能力を示せたことだけでも、COP10で採択が得られたことには、大きな意義があったのでしょうね。

明日は1日、お休みしたいと思います。

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2010年10月29日

事業仕分け第3弾 3日目について

東南アジア諸国連合(ASEAN)会議において、日中で首脳会談を開く予定でしたが、中国により突然、キャンセルされました。理由の1つに、別の国と一緒になって尖閣諸島を再び大きくした、とあるのでハワイで開催された日米外相会談で、日米安保5条の適用を再確認したことも、影響するのでしょう。第3国からのお墨付き、これは中国にとって南沙諸島でも体験していない、外交上の困難を意味します。反日デモが起きる中、愛想笑いを浮かべて両国が手を組めば、途端に反日が反共産党に変わる。どういう形であれ、当面日中が手を結ぶことは有り得ない、という前提に立って戦略を練らない限り、日本外交は振り回されるだけに終わるのでしょう。

事業仕分け第3弾、3日目で交付税及び譲与税配付金特会の、33.6兆円借金が出てきました。歳入が減る中、歳出規模を維持する目的で借金が増えた、との理由を述べ、これを総務省は地方の借金とします。しかし、もしそうであるなら地方行政機関は、1つ1つが独立採算制であり、どの地方自治体にどの程度の借金があるか?それを総務省は明らかにしなければなりません。また国、地方を合わせた負債総額の中に、この借金が組み込まれているか?更に返済計画を示す必要があります。
特会は省庁の財布、と呼ばれてきた通り、特会の中の借金は本来特会で処理しなければなりません。総務省が地方の負債、と切って捨てるのであれば、地方自治体の監視業務を怠った、総務省の責任も内包されることになります。負債には必ず返済計画が必要です。特に、特会が省庁の財布であれば、尚更この返済計画の立案を求める、そこまでいかねば仕分けも意味がありません。

明日まで開催の事業仕分けですが、ここまでで残念なのは、予算の圧縮、半減、等の判定は出ますが、特会は歳入の確保された予算が多く、圧縮、削減で浮いた予算をどう扱うか?まで踏み込んだ議論がされないことです。個別にそう判定されても、今の特会の仕組みでは内部留保になるか、迂回して同じ予算に用いられる。見た目の削減効果は、ほとんど出ないと言えるでしょう。
今日の仕分けでも森林保険特会の廃止が決まりました。特会にはこうした保険も多いですが、これはかつて保険業が未成熟で、国が補償をかけて行われていた事業が多く、営業ベースで民間で行えるなら民間で、そうでないなら国も行うべきでないもの。逆に云えば、現代社会で国が行うべきでないものが多いものです。車の自賠責も同様、保険のない車が事故を起こした場合に有効ですが、加入の義務付けが民間の保険と異なるだけで、仕組みは民間と何ら変わりありません。

エネ特会など、原子力事業を地方へ押し付けるため、ムダに豪勢な仕様の設備を半ばプレゼントのように、地方に作り続けた経緯もあります。今なら地層処分に手を挙げた自治体に、最終処分地にならずとも補助金を交付、とするものに現れます。そこまで予算をかけねば事業として成立しないのなら、最早それはムダと判定されることになります。予算を湯水のようにかければ事業推進が可能、という時代は終わったのです。全ては事業ベースで成立するかどうか?それが出来ないなら、その事業は国が損失覚悟で補填せざるを得ず、国民の税金は垂れ流される。必要、不要の論を待つのなら、最低でも今の省庁担当者による説明は、その責を果たしていないのでしょうね。

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2010年10月28日

TPPと事業仕分けにおける試算

インドネシアで地震とそれによる津波、しかもジャワ島のムラビ山が噴火、大きな被害をもたらしています。地球ダイナミズムの中で、大きな地殻変動の活発期にあります。日本も同じ火山国、東南海地震が心配される中、連動した火山活動など注視しなければいけないのでしょうね。

TPP参加を巡り、経産省が参加しなければ10.5兆円の損、農水省が参加すれば11.6兆円の損、とするなど対立が先鋭化しています。経産省は日本の貿易が減少して鎖国に向かうシナリオを、農水省は政府支援がなく農業被害を、前提にした試算を行うために金額ばかりが膨らみます。これが日本の病巣であり、省益優先で本来は前提条件を正しくし、機械的に抽出された数値を織り込まねばいけない試算の価値を歪め、予算を垂れ流してきた構図として現れるものです。
事業仕分けでも、社会資本整備事業特会が一般会計化、という判定も出ましたが、要らぬ空港や道路、港を整備し続け、借金漬けになってきたのもこの甘い試算。年金特会でも、将来予測が甘いため職員の福利厚生費まで、年金積立てから転用できるようにしたのも同じです。行政の歪みにお墨付きを与える試算結果、これが妥当性を得られないとなれば、試算した人間に罰則を与えるべきです。萎縮する、とも言われますが、責任のない行動が全ての問題を生む根本です。

経済指標などは全ての基礎、基準として、次の政策や方針に多大な影響を与えます。ただ市場も用いるため、透明性や客観的な説明を求められてきました。行政が出す試算も同様、国の政策や方針に活用されますが、客観的に正当性を評価する機関がありません。このため省益を盛り込み、甘い前提、計算条件で都合よく数字が丸められてきた歴史があります。
公益法人存続に関し、一般に意見を公募したら存続が多い、と述べるのも統計上の誤りです。公募に投書するのは利権者のみ。逆に云えば一般という表現が誤りです。某所では、公募するので投書しろ、という組織内通達が出るところもあります。全ては存続の前提が誤りであり、省庁、独法、公法まで含めて全てが前提条件を違え、国費の無駄遣いに手を貸していることになります。もしこれを認めていては、いつまでも国の無駄遣いが止むことはありません。

ジョブカードの廃止に批判の声が上がりますが、これが機能して就労に活用できた、という声はほとんど聞かれません。利用者が少ない、という以上に制度自体に魅力がなければ、普及も進まない。それが社会の仕組みであり、無理やり増やすか、規模を拡大してそれなりの効果を生むにしろ、かける予算と見合う効果を、しっかりと試算した上で行わなければなりません。
ゾンビのように生き返る。亀井亜紀子参院議員が、職業情報総合データベースが4月に廃止判定され、未だに国の事業として継続されていることに投げ掛けた言葉です。ゾンビは脳が腐り、本能のみで動く屍です。省益という本能にすがり、試算という生きる人間が行動するための指針さえ捻じ曲げる。事業仕分けだけでなく、国が見直すべき点は、こうした行動全般なのかもしれませんね。

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2010年10月27日

経済の話。米追加緩和に関して

事業仕分け第3弾がスタートしました。熱気がない、慣れ?とも云われますが、これは政権の態度にも関わります。鳩山政権は曲りなりにも官僚との対決をかかげ、官僚利権の掘り出しに努めました。一方で菅政権は官僚とは融和、浮いた予算があれば分捕りたい、という各省の思惑でしかありません。事業仕分けを国民のため、という政権の後押しがないため、参加者の熱も冷めます。
菅政権がどこへ向かい、何を目的とするか?少し前、内閣府所管の公益法人が一つ、破産手続きを開始しましたが、第2弾までの仕分けでもっと多くの公益法人が、廃止されていなければなりません。予算の付け替えや、ただの予算分捕りに終わるなら、官の利権構造にメスを入れられない、ということになりかねない。こうした大改革は、政権の後押しがなければ力を得ないことが確実です。第3弾が低調な理由、菅政権の態度全般に掛かっている、ということになるのでしょう。

明日は日銀の金融政策決定会合が開催されます。8月末から立て続けに緩和策を打ち出し、今回は状況を確認する意味で、何も決定されないと見られます。一方で11月2、3日に米国で開かれるFOMCでは、2兆$〜5千億$規模の金融緩和、米国債買取などが提案されると云います。これは世界経済全般、ひいては円高傾向の日本の為替市場にも跨る問題であり、重要な内容を含みます。
G20でドイツ財務相が「大量の追加緩和もドル安政策」と述べたように、規模の大小によっては更にドル安です。ただ市場は相当程度織り込んでおり、米物価連動債が初のマイナスとなるなど、追加緩和でインフレという期待を集めます。5千億$が一つの分岐点になると見ますが、継続した追加緩和期待を集めるか、など様々な要因が絡んできますし、低すぎればG20のドイツ主張に屈した、との印象を与えます。どちらに転んでも、妥当な線を見つけるのは難航しそうな気配です。

しかし資源、食料価格が夏場以降、米追加緩和期待が膨らむと同時にジリ高を辿るなど、金余りの負の側面は確実に世界に現れています。逆に見れば、金余り相場の最終局面に近づきつつある、と云えます。世界の金融業の7-9月期決算は概ね堅調、これもどの市場も一様に堅調、世界では年初来高値を更新した国が続出し、それだけ資産を増やしたことが窺える内容です。
しかしドル高局面がやや一服し始め、欧米市場にも天井感が漂うように米FOMCを経ると一旦金余り相場は終息、という見方で売り始めた業者が出ています。米国が市場期待に沿うだけの追加緩和を行えば、バブルは継続されます。逆に、そうでなければ金融バブルは終焉し、資産価格の減少が次の危機を生むことを、市場関係者は織り込み始めた、ということになるのでしょう。

米は過剰消費でリーマンまでの世界経済を支え、今度は過剰ドル供給策で、世界を支えようとしています。ただそれは再びのバブルに繋がる。1週間後には結果が判明しますが、英国では「サイコロの一番うまい投げ方は、それを投げ捨てること」というものがあります。英国人はギャンブル好き、但しギャンブルもいつかは止めなければ…と思っていることを現します。米国が追加緩和という、世界をギャンブルのような状態に陥れ、いつ止める決断をするのか?様々な意味で、米FOMCの結果が世界に大きな影響を与える、そんな状況になってきたことだけは間違いないのでしょうね。

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2010年10月26日

法人税減税と農業とFTA、EPA

民主党が企業・団体献金の受け入れ再開を決めました。再開対象は公共工事の受注が1億円未満の企業・団体とのことで、癒着や馴れ合いなどには一定の配慮を示します。ただ再開理由が国費依存、即ち政党助成金頼みの現状から脱却するとのこと。元々、政党助成金を支給する理念は企業・団体献金に過度に依存し、癒着を生み易い構図を改めることであり、再開する理由は逆行というより、単に理念通り進めてきたが活動資金不足で、より多く集めたいと聞こえてしまいます。
所信表明演説で菅首相が意欲を示した後、マニフェストでも掲げた旗を下ろせば、更に支持が減ります。幾ら野党が政治資金規正法改正に及び腰とはいえ、正論なら堂々と主張すれば良く、迎合がもっとも性質の悪い対応です。政治に金がかかる体質を改めること、それこそ最優先として政治家が喫緊に取り組まねばいけないことは、与野党問わず、なのですけれどね。

法人税減税の議論が活発です。法人税を5%下げることで、2兆円程度税収減となることからペイアズユーゴー原則、即ち不足分の税収を確保する議論が持ち上がります。租税特別措置法を廃止し、企業優遇としてとられた減税措置をやめ、税収減に対応する方針を示します。その中で研究開発促進減税と、輸入ナフサ免税は企業側が残して欲しい、と要望する項目となっています。
ナフサは原油を蒸留して作られ、石油化学品の原料となったり、燃料として利用されます。裾野が広く、減税措置が切れると広い範囲で売価に転嫁されるでしょう。法人税減税との代替措置であっても、企業は製品価格を重視しており、デフレ環境下であってもこの点は変わりません。それに法人税収は06年の15兆円から直近では6兆円に落ち込んでおり、企業の多くが法人税を支払っている状況ではない。税収減の恩恵を受け、減税分を吸収できる余裕のある企業は少ないのです。

FTA、EPA議論の中で、前原外相が農業生産はGDPの1.5%程度、残り98.5%が損をして良いのか?と疑問を呈していますが、とんでもない誤りです。日本のGDPは消費低迷と言われながらも、半分以上が個人消費です。生鮮食品は物価指標からも、除かれた形で判断されることが多いですが、恒常的に消費されるのは生鮮食品であり、また加工食品にまで拡大すれば、大きなウェートを占めます。逆に、日本の1次産業の比率がこの程度で良いのか?という議論にはなっても、98.5%全てが産業活動によるもの、という見方をこの数字に適用するのは、数字の誤用とも呼べるものなのです。
経済産業省はFTA、EPA促進、法人税減税、その果実は経済成長で税収増に寄与する、と述べます。しかし経済成長の具体像が単に企業が活発に投資する、というのでは過剰投資を生み、後に停滞するだけ。各国の購入支援策が打ち止めになり、しばらく低消費であることが鮮明な中、成長はしないと見た方が良い。見かけ上、諸外国と同じ比率まで法人税を下げておく、という議論なら経済産業省内でやはり減税分の穴埋めを処理することが求められます。

この問題、逆に考えれば農業に補助金が必要か?という見方もできます。現在、種苗は輸入に頼る作物もあり、また肥料なども購入する。そこに補助金を出し、減税措置を与えれば国際競争力がつき、経済発展に寄与するではないか?という言い方もできます。経産省と農水省は反目し合いますが、全ては国の形をどう描くか?ということで見れば、産業界に与えてきた厚遇と、農業に与えてきた厚遇、という二面性の衝突ということになります。そのバランスを間違えれば、国が長期の低迷に陥ると言う意味で、目先だけではなく長期戦略に則った農・産のバランスという視点で議論しない限り、全ては空疎な議論に終わりかねないことになるのでしょうね。

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2010年10月25日

雑感。北海道5区補選とインドEPA

裁判員裁判で、初の死刑求刑が出ました。まだ判決は出ていませんが、弁護側がなりふり構わず情状酌量を得る戦略をとったため、恋愛感情もない相手を心神耗弱のまま殺し、反省しているという奇怪な説明に終始。全く妥当性を欠く説明で、心証はかなり悪いと予想されます。刑事事件では、裁判員は経験がたいため、判決に大きな差異を出さないよう、機械的に判断しなければいけないこともあります。情状面に偏り過ぎると、逆に民意を無視する形になるのでしょうね。

北海道5区補選の結果は、自民党・町村氏の大勝でした。ただ政治とカネが勝因、としますが、自民党も参院、衆院補選と政治とカネの責任追求を軸に戦い、そろそろ結果を出さねば有権者から飽きられます。つまりいつまでも争点化し、結果を残せない立場は野党にも厳しい目が向き始める。政治とカネは、すでに結果よりも政局の匙加減の扱いであり、賞味期限は年度内でしょう。選任弁護士も決まり、裁判の進行が決まれば、政治不介入の原則で国会は手出しできなくなります。
菅政権は早々に敗北を見越し、菅首相の投入を見送るなど、選挙戦をほぼ放棄していた感もあります。小沢氏の問題を民主党選対も敗北の主因と語りますが、政権の目玉閣僚は蓮舫氏、前原氏ぐらいで、後は役不足の感も否めない。これは実務型と人気型のバランスがとれていない、という背景もあります。3万票差は使い古しの政治とカネだけではない、との見立てが正しいのでしょう。

日本とインドがEPAを結ぶことで正式合意。発効後10年で関税を貿易額の94%撤廃、という内容です。新興国の中では経済規模が大きく、中国からシフトし易い面と、農産物に関する合意が得られ易い、といった面が早期のEPA締結に繋がります。ただインド投資や工場移転が難しいのは、カースト制度など国独自の問題に起因するところが大きく、パキスタン経由のテロなど、潜在要因としての不透明感も強いため、中身としての経済協力が重要なのでしょう。
民主党は外交成果を謳いますが、インドやチリは元々EPAを結ぶ下地として、障害が少ない国と認識されていました。仙谷官房長官の対中国に対する遜り、を相殺するほどの材料ではなく、政権浮揚効果は低いでしょう。インドは財閥系も強いので、政権がどこかに食い込むか、パートナーシップを上手く結べなければ、受注競争も上手く機能しません。外交全般の戦略性が見えない菅政権、EPAを結ぶことではなく、結んでからの方が重要だと認識すべきです。

明日、閣議決定される予定の補正予算。項目は並びますが、目立つ施策はなく、経済対策というより予算執行の前倒しや、拡充がメインです。しかし欧州で緊縮財政の議論が進む中、経済対策が打てる国として円は高騰。対ドルで80円半ばをつけました。野田財務相はG20で、過度な変動に対する介入に関して、日本の立場が理解されたと胸を張りますが、為替介入はないとの見立てで市場はドル売りを仕掛け易い地合です。先に一度だけ、為替介入したことで自縄自縛となり、二度目が打てない菅政権。外交も、経済も、妥当性を欠く説明ばかりでは行き詰ることが確実です。
政権の目標が曖昧模糊としたまま、ふわふわと政権運営を続けるだけでは、情状面さえ訴えられず、世論から乖離していくことになります。菅政権の政治とカネは、小沢氏の問題のみならず、経済対策や円高でも示せる、ということを忘れてはいけないのでしょうね。

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2010年10月24日

事業仕分け第三弾の、その前に

民主・小林議員の辞職に伴う北海道5区補欠選挙、自民・町村氏が当選確実です。昨今の選挙は、メディアの事前調査の結果通りに勝敗が決することが多い。これは事前調査の精度向上の他に、有権者が勝者に乗ろうとする意識、また政党が選挙戦終盤に風を起こし切れない、という選対の問題もあります。期日前投票も低調、前提に争点の薄い選挙戦でもあったのでしょう。
また民主党は無党派層の支持で政権交代を実現しましたが、世論離れが加速。一方、自公の選挙協力が機能すると地方では勝てる見込みが高い。今回、特に民主党議員の醜聞が発端ですので、地盤のある町村氏は強い。ただ得票率次第で、町村派は解体です。先の参院会長選で見せた、若手進歩派と守旧派の分裂懸念を加速するだけ。野党陥落で人事権をもたない派閥は機能不全であり、選挙基盤の弱い長ではまとめ切れません。町村氏はもう閣僚クラスの登用はない。自民が出直すには刷新人事、若返りが必要ですが、そうした動きにならなかった点は自民にとっても痛し痒しでしょう。

民主党政権で支持の高い、事業仕分け第三弾が今週27日より開催されます。勘定も含め18特会、84項目、48事業が対象です。埋蔵金発掘が期待されますが、特会の赤字3.8兆円も議論の対象であり、財政面に寄与するかは、議論次第というところ。ただ特別会計への切り込み、母屋でお粥、離れですき焼きの根本的な解決に、財源議論を持ち出すのは誤りとも云えます。
よく受益者負担、という言い方で擁護する人がいます。車に乗る人がガソリン税を支払い、道路整備に充てる。しかしこの理屈、税をとる側が理解を得易い手法として、日本の税制を歪めてきた歴史があります。税金の使い道が適正かどうか、それを国民は厳しく見ます。またこれは社会資本整備事業特会に顕著ですが、常に成長を続ける拡大型社会を前提とするため、現状の低成長社会では過剰投資、過剰設備を生み易い点が問題です。この仕組みを見直して使途を柔軟化すること、税財源を一体管理し、使途を国民監視の目に晒すことが、特会改革の本質でもあるのです。

赤字の特別会計を一般会計に回せば、借金返済に予算が使われる、と言いますがこれも仕組みの問題。単純に数年間、特別会計の収入を全て借金返済に回し、額を減らした上で組み入れれば良い。俄かに鉄道建設・運輸施設整備支援機構の1.5兆円の取り扱いが問題になっていますが、国鉄清算で結果的に国が借金返済を行った分、それを取り戻すなら長期債務の早期償還に回すべきです。
国民は誰しも納税者であり、国内で経済活動をする際、納税の義務は等しく負います。それがタバコや車、活動に伴い税負担の軽重が変わる。その使途を限定し、著しく歳出に歪みを生じるより、国の発展という大方針を目指すべきなのです。特別会計の事業仕分けを、財源問題にすり替えてはいけません。全ては持続可能、日本の再設計という視点で、制度改革を含むものでなければ、結局悪い制度を小手先で手直しし、その上書きをするだけです。埋蔵金が捻出されても、それを取り合うだけに終わるなら、この国は滅びに向かうでしょう。埋蔵金を蓄えた間、国が増やした借金を減らす、これがバランス的には正しい使途です。国債整理基金も事業仕分けに含まれますが、スポットライトの当て方を間違えれば、政権支持率は益々厳しいことになるのでしょうね。

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2010年10月23日

G20における経常収支の不均衡問題

G20財務相・中央銀行総裁会議が共同宣言を採択し、閉幕しました。先進国と新興国、意見のギャップが大きく、合意は出来ないと見られていましたが、各国は基礎的条件を反映した市場の為替レートへ移行、という先進国側に有利な文言を入れることに成功しています。これも直前になり、米国から提案された「2015年までに、経常収支の4%以内に赤字、黒字の幅を抑える」という内容に、新興各国が揺さぶられた結果、という見方が可能となります。
経常収支の不均衡は、米国の構造的な赤字体質が問題です。リーマンショック以降、落ち込んだ個人消費が、米国の貿易赤字を縮小させた。即ち過剰消費に陥れば米国は赤字を膨らませ、経済が停滞すると貿易面での不均衡は少なくなる。米国の経済成長が個人消費で大半を占める以上、米国は経済が活性化させれば不均衡を拡大する、という構図が読み取れます。

経常収支の不均衡問題を解決するには、為替の市場開放が短期的には近道です。ただ現在、実需と投機が半々程度に流れ込む為替市場で、市場開放が解決策になり得ない。市場レートに任せれば経常黒字国の通貨が高くなる、というのは幻想であり、ドルキャリー取引が起きてドル安、という今の流れは、投機筋が政策金利の差をとる取引を行っていることがその証左です。
そして政策金利の問題は更に厄介です。中国が政策金利を上げても、投資加熱を抑えられず、加速させるという見方があります。これは金利差拡大を狙って、投機資金が流入するため。中国株の動向がそれを映しており、金利上昇で株価上昇、という流れを生みます。米国は超低金利を余儀なくされ、米国から資金が持ち出される方向。これが逆転し、仮に米国が金利を上昇させると、投資資金が戻りドル高が加速する流れとなるでしょう。今のドル安が投機的と見られるのは、少し個人消費が戻ったことによる実需のドル売り、金利差による投機のドル売り、という二重の力が影響しているため、各国が為替操作でドル買い支えをしなければならないことになります。

経常収支の不均衡問題、最終的に米国は、経常黒字国による為替操作を認めない方向のみならず、制裁関税の発動も視野に入れています。ただ背景に、ギリシャやアイルランドなど、破綻が懸念される国の放漫経営、経常収支の虚偽報告があり、米国の提案に一定の筋が通っていることがあります。つまり米国の提案を、国際会議の場で何らかの形を示す必要が出てきます。
日本は貿易黒字国、米国の提案で制裁関税や強引な輸入拡大を求められ、窮することが予想されます。日本に出来ることは経済統計、指標の正確性を図るよう、各国に提案すること。及び債券市場も市場レートで決まるべきと訴える。これは中国への圧力です。そうすることで中国が保有する米国債を揺さぶり、米国で大量にばら撒かれるドルと、米国債に一定の歯止めをかけさせる。それが本質的な経済面における、国力の不均衡を解決させます。通貨を膨らませるだけで国が成長できるはずもなく、それは世界の二巨頭、米中双方に当てはまる問題となっています。通貨安戦争とは、単なる通貨のみならず、国債などの金融資産、全般に跨る問題です。経常収支の不均衡を人為的に解決しようとすれば更なる不均衡の問題を生み、後に修正を難しくします。米中両国がそれに気付けなければ、世界は危機に直面することになるのでしょうね。

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2010年10月22日

日本のTPP参加の可否

奄美大島で豪雨被害が出ています。地球規模で北緯30度辺りに流れる風、これがヒマラヤに衝突して南に進路を変え、南シナ海や東シナ海の温かい水蒸気を含んだ空気を日本に運ぶため、日本は世界的に見て雨が多いそうです。今年は海水温が高く、この風が秋雨前線を発達させる。今年の異常気象の残滓ですが、継続して降り続く豪雨、この災害に対する備えは各自治体でも出来ていないはずです。災害復旧に力を入れるしか、現状手がないのでしょうね。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加に、菅首相が参加の意思を示し、国内に波紋が広がっています。TPPは域内の関税を99%撤廃、現在9カ国が協議への参加を表明しており、APECまでに日本が参加の意思を表明するか?そこに焦点が当たります。しかし国内では産業界と農業団体が激しく対立、永田町でも菅氏の側と小沢派との対立、という面を浮き彫りにしています。
農水省が4兆円の農業生産減少を、経産省が輸出額が8兆円増を訴え、これを受けて内閣府がGDPを2.5〜3.4兆円押し上げる、と試算しました。逆に参加しない場合、10年後に生産が21兆円弱下がり、GDPを1.53%押し下げる、とも。米国、豪州が交渉に名を連ねますので、TPPの経済規模も大きくなりますが、逆に米国の意図を読み解くと、参加の可否について判断が可能となります。

最初に、TPPに中国は参加し難い。レアアースなど、国家統制で動く中国は経済を武器に外交も展開する、これが国策です。関税障壁撤廃、自由貿易は馴染み難い。それは産業界の統制の箍が外れることを意味し、国家の弱体化を引き起こします。また米国は1次産業の輸出で稼げる。工業品はグローバル展開する企業が、統一的に価格設定することが多く、関税障壁が低い方がいい。また中国製品が多い現状からの脱却、も可能です。豪州の資源を安く獲得できる、という点もメリット。国内産業が斜陽な中でも、TPP参加には比較的合意を得易い環境が整っています。
翻って日本はこれと逆。1次産業の衰退を招き、工業品は汎用品の輸出が多く、国家戦略として市場シェアを抑える努力がないため、安値競争に巻き込まれるのみ。だから競争力確保としてのTPPに期待が高まりますが、凹む市場への配慮が足りないと、国内産業に打撃となります。

日本が作るものは、諸外国でも作れる。付加価値を載せようと、必要性は顧客が洗濯するものであり、3Dテレビでも目覚しい成果が得られないように、日本のマーケティング力は最近パッとしません。関税撤廃がなければ苦しいですが、あっても苦しいのが日本の産業界の構造的な問題です。ここにメスを入れず、TPPに参加すれば1次産業への打撃が、国力低下という深刻な問題を招きます。食料自給率も、最近では決して日本は低くないとの算出もありますが、従事者の高齢化など深刻な問題を抱え、収益をもたらす仕組み作りが欠けた中、輸出を招き入れれば壊滅的打撃を受けることでしょう。
菅氏は産業界への目配せを滲ませますが、産業界のビジネスモデルが現状の、どの国でも作れる汎用品に付加価値を載せる、という形であり続ける限り、TPPの参加にはハードルも高くなります。研究開発費が冒険をしない、小手先に留まる以上、この国は徹底的なコストダウンを図る以外、生き残れない。最も変えるべきは、企業経営者のマインド、安定・安全志向をとるのがベスト、という思想です。米国のように世界標準をとる、ぐらいの先進性を見せない限り、これがただの政局になり、国策でどう将来像を描くか?は一向に議論されないまま動いていくことになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:28|PermalinkComments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 海外

2010年10月21日

雑感、中国の尖閣棚上げの打診

中国で7-9月期GDPが実質で9.6%増、9月消費者物価指数が前年同月比3.6%の上昇、となりました。高成長は維持、一方で物価上昇は容認できないレベルに近づきます。粗鋼生産など、やや生産面で弱い数字が出たものの、概ね予想通りの内容で市場の動きも限られました。

そんな中国から、事務レベルでの協議で尖閣諸島領有権の棚上げ、が打診されたと伝わります。ここで日本政府が認めれば尖閣諸島に領有権問題が存在する、と公式に認めることになり、一方で日中首脳会談開催に向けた条件となりつつあります。ただ1つ云えることは、現時点で中国側と会談し、得られるものは日本側に何もない、ということです。
世界は確実に対中国戦術を変えつつあります。中国はレアアース輸出制限を欧米にも拡大、これは備蓄の少ない欧米に打撃です。人民元上昇も欧米は一致しており、日中が親密さを増せば、逆風を日本も受けねばならなくなる。日本が対中外交交渉で難しい問題を、欧米とコンセンサスをとり対応できる状況が、現在創出されます。特に5中総会が終わり、習近平氏の就任に向けて、対外的に成功を打ち出したい中国。日本は単独で動かず、欧米と歩調を合わせて外交を展開した方が有利であり、逆に日中首脳会談の開催に向けて、日本が高いハードルを設定できる状況です。

しかし永田町の論戦は低調。唯一目立つのは仙谷官房長官の失言、妄言の類であり、熟議の国会と呼ぶには程遠い、政局の柱が見当たらない状況です。小沢氏への証人喚問も、野党は盛り上がりますが、今更の感じもあり世論の期待感はない。ワイドショー的には見世物でも、何より国民と密接な部分ではない面が影響します。またみんなの党が埋没懸念を恐れ、仙谷氏の問責決議を提案しますが、今はまだその段になく、他の野党もスタンドプレイに冷めた目を向けます。
これは野党の戦術も多様化、野党連合としての政策協議もなく、国会論戦の焦点を絞れないことも原因です。このまま行くと、鳩山政権よりもすんなり臨時国会を消化できそうであり、事業仕分け第3弾の行方が、年末までの話題を提供することになります。尖閣問題など、臨時国会開会前に盛り上がった話題で責め切れない、野党の力不足の面が大きいですし、この問題では仙谷氏の『はぐらかし』が、上手く機能している形となっています。

菅政権は野党の力不足、という幸運で今国会は乗り切れそうです。ただ選択的夫婦別姓制度に前向きな仙谷氏が、マニフェストに掲げてきた、とウソの答弁を繰り返していると、逆風が仙谷氏一人に向かい、その内庇い切れなくもなります。尖閣棚上げの問題も、仙谷官房長官の裁定に掛かりそうであり、菅氏が日中会談を望むと、仙谷氏がセットするために条件を呑む、そんな可能性も出てきます。尖閣問題が仙谷問題になると、菅政権の屋台骨も揺らぐ、ということになりかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:38|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年10月20日

広島地検の取調べメモ廃棄の問題

広島地検で保護責任者遺棄致死罪に問われた被告への取調べメモが、廃棄されていた問題が出ています。少年院暴行事件で、特別公務員暴行陵虐罪に問われた被告への取調べメモも廃棄されており、広島地検で直近2例目になります。08年の最高検通知では、メモを公判担当に引継ぎ、保管を命じており、これに違反した場合は証拠隠滅罪にあたる可能性を指摘しています。それでも止まらない、メモ廃棄に、昨今の検察にまたがる問題が内包しています。

10年以上前、私の勤め先が事件に巻き込まれ、周囲の人間が取調べを受けたことがあります。私は直接関係なかったのですが、受けた人間に確認したところ、7時間以上も事情聴取を受け、その後で供述調書にサインするときは疲れ切ってよく確認しなかった、という人間が多い。一方、きちんと確認した人間は、供述調書には話していないことばかり書かれ、手直しに時間が掛かったと教えてくれました。聞いたのは全員、参考人程度の扱いですが、素直にサインした人間の供述調書が公判で採用され、手直しした人間の供述調書は不採用、それが検察・警察の手法です。
これは仕組みの問題です。参考人の勾留を認めない現行制度で、1日で供述調書を仕上げ、サインさせることは事実上不可能です。一般企業でも、会議における議事録でさえ、その日に書いて提出するのは難しい。特に供述調書は要点整理ではなく、文章ですから尚更です。2日間やれば良い、後日サインさせれば良い、といってもそれは手間でやりたくない。1日で供述調書にサイン、まで至るには事前に用意していた文章にサインさせるしかなく、これが取調べメモを廃棄する原因です。つまり、取調べメモと供述調書は、幸運な巡り合わせがない限り、整合するはずがない資料なのです。

これは取調べを録音しておくか、速記録を残すしか、不整合を排除する手はありません。基本は制度疲労ですが、それを法曹界は後生大事に擁護してきた、ここに最大の問題があります。先の事例で、素直にサインした人間は検察・警察がウソを書くはずない、と暗黙の信頼でサインしたと言います。裁判所も同じ、検察・警察のとった供述調書を、事件について整合性があれば信憑性を認めてきた。それが今、全てひっくり返されたのが、FD改竄事件ということになります。
検察・警察が行ってきた取調べは、10年来変わっていないでしょう。これは認められた手法であり、変える要素はこれまでなかったですから。つまり検察・警察が事前に策定したシナリオを繁栄しただけ、の供述調書に強引にサインさせるやり方、これが一般人に伝わっていないことは致し方なくとも、知りうる立場にあった裁判所、メディアが黙認してきた態度が、ここまで問題を大きくする原因でもあります。今後10年は、検察・警察の供述調書を元にした判決がひっくり返される。それを暗に認める態度が取調べメモの廃棄、という地検の具体的行動に現れています。

FD改竄事件でも、取調べメモを廃棄しています。これを前田元検事の指示、として最高検が捜査しているようですが、とんでもありません。もし取調官が、取調べメモと供述調書との齟齬を明らかにする資料を自ら手にしていれば、自己保身のためにも廃棄するでしょう。捏造と隠滅では捏造の方が性質が悪い、ないものでは罰せられないのが原則なのであり、「誤って」廃棄したとする方が情状面も、公判でも有利に働くのです。問題の根を深くする取調べメモ廃棄、自己保身を認めている限り、検察・警察が出直す日は更に先に延びることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:17|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2010年10月19日

米国のドル安政策の齟齬

ガイトナー米財務長官が「強いドル」を表明、此許のドル安局面で、久しぶりの長官発言です。最近、米国内でも出始めたドル安による弊害、また迫る米中間選挙における優劣、などが発言の背景と見られます。また週末のG20財務相・中央銀行総裁会議において、為替が議論の対象になることから、事前に米国の態度を表明することで、批判を牽制する部分もあるのでしょう。

オバマ政権は中流階層を支持母体とするため、輸出倍増計画を打ち出し、輸出競争力をつけるためドル安政策が必須です。しかし消費が回復し始めると、ドル安により輸入物価が上がり、貿易赤字の拡大が判明。財政面のみならず、米国製造業が空洞化した構造的問題により、行き過ぎたドル安は米国にとって悪材料、との認識が芽生え始めています。米国製造業が、米国内消費や輸出により、経済に寄与するには4、5年はかかる。その間の財政赤字はマイナスに作用します。
昨晩発表されたアップルの9月末決算、前年同期比で売上高が67%増。しかしこれもドル安が乗っており、仮に対円でも約10%のドル安が売上高に寄与しています。直近のドル安、ユーロ高を含めてもドル換算された米企業の決算は、押し上げ効果が見込めるのです。しかし更なるドル安に進めば来期以降も収益が拡大しますが、この増収効果に持続性がないのは明らかです。マクロの不調とミクロの好調、これを助長するドル安が米経済に必ずしもプラスでないのです。

また米国はここ十数年、金融で経済成長してきました。ドル安は海外資産の増大を生みますが、新たな収益を得るため、海外投資を進めようとする際は逆効果。金融が拡大する効果は見込み難い点もあります。今こうした声も小さいのは、金融規制があって、先行き不透明な中で金融機関も積極投資を手控えているためです。しかし米中間選挙で、共和党が勝利すると規制に歯止めもかかり、ドル安で製造業に恩恵、という流れは一旦変わる可能性が出てきます。
また海外展開する米軍経費、という面も深刻です。これも共和党が力をつければ、軍産複合体の圧力も出てくるでしょう。本来、ドル安で兵器輸出も恩恵と考えがちですが、欧州は緊縮財政で軍事費も抑制傾向、今のドル安にあまり旨みはありません。米国にとって、ドル安は国力低下、という深刻な面を顕在化させ、行き過ぎないことが今後、求められることでしょう。

G20ではアジアの通貨政策が議論対象、と欧米は主張しますが、逆に欧米が槍玉に挙げられかねないのが現状です。FOMCで大量資金供給になれば、当然それはドル安政策であり、容認できないとの声も上がります。個人的には3千億$程度、と見ていますが、仮に見掛けの規模を拡大しても、5年などの時間軸を取り入れて効果を薄めてくるでしょう。FRB理事の講演内容を見ても、新たな金融緩和は要不要の是非が分かれており、必ずしも一枚岩になっていないことが窺えます。
新たに出てきた住宅差し押さえに関する、金融機関の書類不備の問題。米住宅市場の不況が長期化する懸念が出ています。住宅差し押さえが拡大した際、金融機関はリストラの真っ最中、人材確保もままならず、闇雲に書類を通した可能性は、完全には否定し切れません。ドル安で住宅投資も呼び込みたい、そんな思惑もありますが、ドル安の矛盾や欠陥に耐え切れなくなったとき、米国は見直しを迫られることになり、それは一時的には次のFOMC、その前後で始まるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:22|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 経済

2010年10月18日

雑感。日本政治に足りないもの

参院決算委で、自民党・丸山議員が尖閣で衝突した船長の釈放に関し、仙谷官房長官との電話で「APECが吹き飛ぶ」、「日本の属国化は今に始まったものではない」と理由を語った、と暴露しました。電話したことは仙谷氏も認めており、内容は健忘としましたが、事実なのでしょう。
福田元首相を公邸に招いてAPECの相談、衝突ビデオ公開も議員のみで国民公開なし、との話もあり、菅政権は日本が議長国になる今回のAPECに、殊の外気を使っていることが窺えます。意見を求められた福田氏は「外務省の準備が重要」と述べています。多国間会議の場合、外務省などの根回しが重要なことは言うまでもありませんが、1ヶ月前のこのタイミングで助言を求めても、大方針の変更はできず、今更の感は否めません。実はこうした動きが、日本政治全般に跨る問題、と捉えることが可能です。

民主党が衆院選の政権公約で掲げた最低賃金千円、実はこの政策、2000年代前半なら効果のあった政策です。円安で企業は自動的に輸出競争力が高まっている状況で、賃金デフレを収束させ、内需拡大が望める。日銀は量的緩和で資金を大量に市場放出、その資金を国内の労働者に回るよう、政策的に支援すべきでした。しかし当時は竹中路線、企業や富裕層に富の再配分をするよう企図し、個人の預貯金を放出させるよう政策誘導していた時期。利益再分配の思想はありませんでした。
しかし今は円高、ここで最低賃金を上げれば個人への配分比率が上がり、企業が持ちません。民主党の政策は、円安で企業が内部留保を溜める政策の下、立てられたものが多い、という点で見直しが必要です。次に円高でも大企業に内部留保が多い、という前提の政策提言が必要です。

これらは政府に大方針がない、という欠陥政策が大きく影響しています。現状を加味すると『米国に追いつけ、追い越せ』または『中国を抜き返せ』という大方針を立て、全ての政策をそれに集中させる。円高是正も、その結果として何を目指すかが見えない。法人税減税も、それで企業が日本脱出しない、とは限らない。これらは個別政策で可否を問うものではなく、大方針に沿い、どういう形の国を目指すか?という点が欠けているため、良い政策か悪い政策か、その判断がつき難いために起こります。菅政権のビジョンが見えないのもそのためです。
雇用確保も、低賃金労働者を増やせば国の形としては弱体化します。特に予算案に顕著ですが、省庁は政府が何となく予算をつけてくれる名目で、概算要求を出します。ですが、それが大方針と外れるかは個別に中身を見る必要があります。そこで大方針が明確であれば、切るという判断を出し易くなる。しかし今は大方針がないため、予算も外交も、善悪の判断を個別に下さざるを得ません。

尖閣問題にしろ、菅政権が振り回されているのは、個別案件で右往左往されているからです。最低賃金の問題も、経済全体の環境変化に応じて動く。そうした方向性がない。これは個別に批判するメディアの問題もありますが、各政党が寄合い所帯となり、大方針を打ち出すと反発を受ける、という問題も含みます。また官僚にとって、政治の都合で面倒な調整がない、という点で優位な面をもちます。日本に不足しているリーダーシップとは、実は大方針すら打ち出せない、トップの事情が大きく影響しています。そのため直前で慌て、個別に口車を合わせようとするので、後でしっぺ返しを喰らう。日本に真に足りないもの、それは理念糾合で大方針を掲げられる体制作りであり、国会が衆愚状態に陥る議員数の多さ、という面の改善にかかるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:35|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2010年10月17日

雑感、仙谷官房長官の恫喝

中国四川省綿陽で起きた反日デモ、今回は様々な意味で、これまでの暴動とは趣を異にします。5中総会という中国共産党の人事、今後の経済方針などを決める会議の開会中に起きた。これを共産党内の人事面での対立、と解釈する向きもありますが、それでは現執行部の統制能力不足、引継ぎが上手くいっていない、と内外に喧伝する形になり、党として容認できない事態です。
むしろ強硬な抑え込みが難しい、暴徒化を止められないほど、国民の不満が高まっている、との見方が正しいのでしょう。しかも日の出の勢いがあった頃の、前回の反日デモの時と異なり、人民元安の問題やバブル崩壊、先の尖閣問題に対する中国の反応が警戒される現在の世界から見て、無差別的な暴徒化は弥が上にも目につきます。先進国のデモとは明らかに違う、制御不能のデモ。それは中国から、諸外国の資金引き上げにさえ結びつきかねない流れです。その前に、中国は抑圧に動くはずですが、5中総会で打ち出される経済方針など、それによってはこの流れ、かなり危険なものとなるのでしょう。

日本では来週、民主党・小林議員の公選法違反を受けた北海道5区の補選があります。朝日が報じた情勢調査では、自民・町村氏ややリードが伝わります。ただ元々の地盤であり、公明の裏支援もとりつければ、民主党議員の不祥事で起きた補選であり、もっとリードを広げても良い。ただ町村氏は今後、町村派の弱体化など、政界内でそれほど権力を振るえない、という点も反応が今ひとつな部分でしょう。菅政権の支持率も高いですが、この点にやや問題が生じています。
先週の予算委で、答弁に呼ばれた経産省官房付として、国家公務員制度改革推進本部事務局の審議会だった古賀氏に対し、「上司として…」と但し書きをつけ「彼の将来が心配…」と仙谷官房長官が答弁しました。仙谷氏は後の記者会見で「恫喝の意図はない」と述べますが、彼は法律家なのであえて言いますが、相手に恐怖心を抱かせるのに、恫喝する側の意図は何の関係もありません。恐喝も同様、相手がそれに畏怖することが、犯罪などでも要件となります。

現在の民主党政権の現役出向に対し、批判的に述べた現役官僚。仙谷氏は元上司、現在は追い出した側として、面目が潰れた形なのでしょうが、この感情的反応は極めて問題を大きくします。今回、異例の2週間出張や、未だに宙ぶらりんの官房付き、ということが明らかとなり、仙谷官房長官に逆らったら官僚でさえその地位が危ない、という暗黙のメッセージにもなりました。
逆に、それだけの権力をもつ仙谷氏に対し、世論の目も厳しくなるでしょう。公務員人件費に対し、人事院勧告以上の削減を、菅政権は断念しました。官僚には甘い姿勢を見せ、手駒となる官僚を引き上げる。このままでは、本当に公務員制度改革は骨抜き、という事態に陥るでしょう。仙谷氏にまつわる菅政権の行方、色々な面で政権を揺さぶるものとなるでしょう。小沢氏への問題のみではなく、仙谷氏に対する態度にも、菅首相は悩まされることになっていくのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:51|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2010年10月16日

自動車業界の動向と米追加緩和

米財務省が為替報告書の公表を先送りしました。直前まで公表予定と伝わっていたので、政府から何かアクションがあったと見られます。これはカードなので切れば終わり、G20やAPECまで切り札を隠す戦略です。一方でFRBは物価水準を、金利調整に反映させる方向性を示唆、来月のFOMCでは1兆$、2兆$規模の追加緩和を期待する向きもあります。ただそれをすればドル離れが加速します。
ドルペッグ制をとってきた小国は輸入物価が高騰します。また資金流入を抑制する目的で、ブラジルを初めタイでも外国人投資家に対する課税強化が実施予定です。世界にそれほど大規模の余剰資金の受け皿はありません。個人的には1〜2千億$、サプライズを狙えば3千億$規模と予想しており、それは市場期待には程遠い内容、と見ています。米国とてG20、APECを控え、大規模な緩和策は打ち出し難い。小出しにリスク資産の購入を行い、更なる追加緩和を示唆する形で収める、と見ています。

トヨタがカローラの輸出生産分を、海外移転する方針を発表しました。三菱自も小型車の海外生産を決定。マツダ株をフォードが売却、等の日本離れが、自動車業界で活発化しています。以前から、人件費抑制は企業年金を収益から負担する構造になる、と指摘しています。更に為替の読みも、将来的に円高になるかは保証されず、現在の水準で将来見通しを立てるのは危険です。特に新興国経済は、米追加緩和で大きな変動に巻き込まれる、そんな観測もできます。
仮に1兆$が放出された場合、軽く小国を凌駕する規模、レバレッジをかければタイやバングラディッシュなど、簡単に消し飛ぶほどです。ドル安を嫌って為替介入を続ける国は、買いたくもないドル資産を買い、ドル安で損を出す。国家財政を超える規模の資金流入を防ぐ術も、仮に防げた後も問題を大きくするでしょう。即ち米追加緩和は、小国破綻に結びつく可能性を内包します。

今後、順調に世界経済が発展しない。低成長下でバブルを引き起こし、混乱に陥るという前提に立てば、脆弱な経済基盤の国は通貨変動、という荒波に晒されます。国は長期投資の資金のみ流入して欲しい、と願ってもそれは叶いません。むしろマネーの流れは、確実に短期投資へと傾いており、新興国は資金流入と逃避により、安定的発展はできないと予想されます。
それらは全て、先進国が供給する過剰流動性がもたらす、負の側面です。どうしても経済成長したい、という我欲が発端となり、大混乱を引き起こすのです。それを防ぐ術は、先進国も新興国も、持続可能性社会を構築する方策をいち早く見つけ出すことしかありません。
ただ企業ですら短期利益を求めて現在、成長著しい国への投資を加速させます。将来成長が止まれば、一気に投資資金を引き上げ、工場を閉鎖させることなどお構いなしで。これは日本に限ったことではありませんが、企業動向と国家の経済政策は、思惑こそ違えどほぼ同じ結果を生む、ということです。日本企業が成功するか、失敗するかはまだ判断できませんが、少なくとも工場が立ち上がる段階で、華々しいスタートを切れるかどうか?その点は予断を許さないのでしょう。何より、巨額の追加緩和があれば、それを引き上げる段階で、経済にはマイナス面を大きくします。短期利益に目が眩んだ為政者と、経営者により、世界は再び大混乱に陥れられるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:34|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 企業

2010年10月15日

雑感、小沢氏の行政訴訟と裏下り

谷亮子民主党参院議員が柔道引退を発表しました。北京五輪でも、国内大会で敗北して、選考委員でもギリギリ国際経験が豊か、という点で代表に選ばれました。力には確実に衰えが見え、引退が先か、政界進出が先か、その中で日程的に後者が先になったという印象ですね。

小沢氏が東京第5検察審査会の起訴議決に際し、告発事実を超える事案を議決に含めたのは無効、として国を相手どり行政訴訟を起こしました。最初の検審に含まれず、二度目の検審で議決したことは、2度の議決を決めた検察審査会法違反としています。同一事実なら追加・変更できる、という刑事訴訟法もありますが、土地の購入原資の問題は、仮に原資が不正に受領した何らかの資金、とすると政治資金規正法に掛からない可能性もあります。これが以前報じられた裏献金なら、起訴と同一事実に含まれますが、それはハッキリしていない。事実が曖昧模糊としているだけに、逆に起訴議決に含めてはいけなかった事例、ということも云えるものです。
ただこの訴訟でも、起訴議決における公判が遅滞することは、恐らくありません。検審が強制権を得てから初の事例であり、告発以上に踏み込むことには、一定の歯止めをかけねばなりませんが、公判前整理で恐らくこの事実は含まれない、と見るからです。公判を維持するためには、選任弁護士が物証を集める必要がありますが、その時間と余裕はないでしょう。何より銀行取引や事務所、個人宅に弁護士が踏み込む、それは様々な点で受け入れ難いものがあります。
それでも訴訟を起こすのは、証人喚問等の動きに圧力をかけるため、です。つまり起訴されない可能性を見せ、牽制する。今回の件は、そのためだけに弁護団に2つも3つも裁判をさせる、小沢氏の剛腕ぶりを確認した、という程度のこと。裁判の帰趨には何も影響しないでしょう。

国会予算委では論戦が行われました。裏下り、即ち片山総務相が「阿吽の呼吸」とするOB同士の引き、があるかどうかも議論の対象です。民主党政権発足から1年、早期退職勧奨を受けたのが1590人、これが裏ルートであれば問題です。憶測ですが、確実に裏ルートは存在します。なぜなら発注形態にまで踏み込んだ改革は未だなく、09年度の決算チェックもされていないため、です。
分かり易く云えば、表向き省庁の斡旋があろうとなかろうと、元役人の肩書きが通用する以上、資金の流れをチェックしない限り、引きは存在するということです。前原外相が国交相時代の、出向に際して天下り、渡りなどで退職金を2重、3重に受けとる仕組みが問題、としていますが、これは誤りです。トータルでもらうか、分割するかの違いであり、出向先で役員待遇を受け、給料が上がれば一度で払う退職金が増えることになる。人件費削減にも寄与せず、独法でも財団法人でも、受け入れ側にメリットを残せば、それは資金の流れとして不正も起きることになります。
問題は行政コストの削減をどういった道筋で達成するか、です。そしてそれは、1つ1つの制度や、仕組みではなく、予算面で鮮明にする必要があります。民主党政権になってから出された初の概算要求、そこに反映の箇所は少ないと映る。年金機構の入札漏洩事件のように、業務の発注状況まで含めて監視するのでなければ、今の行政機構に政治は太刀打ちできません。盗人にも三分の理、官僚の言い訳をその程度に聞き流せなければ、政治主導は掛け声倒れに終わるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 司法

2010年10月14日

米中の通貨戦争

円が対ドルで80円台をつけました。要因は円高ではなくドル安、このため為替介入は不可能な状況です。きっかけはFOMC議事録で、追加緩和期待が高まったこと。及び15日には為替報告を米財務省が出すようですので、人民元高によるドル安を想起させ易い状況でもあります。
しかし問題は、米国でこれだけ高まる追加緩和期待に応えるだけの規模、内容がFOMCで打ち出せるか?です。国債買取はMBS売却で得た資金で進められており、一部では30兆円規模、とされる追加緩和はETFや株に及ぶ、とも観測されています。しかし米国のドル安政策の弊害が、国内外から聞こえ始め、1年近くかけて米国に対する風当たりが増すでしょう。米国が諸外国から為替操作国認定される日、いつかそんなことが現実に起こり得るのかもしれません。

中国では9月貿易統計を発表し、輸出1450億$(前年同月比25.1%増)、輸入1281億$(前年同月比24.1%増)となりました。中国は7-9月期で外貨準備を1940億$膨らませており、欧州系への投資を進めた結果、ユーロ高ドル安によりドル換算で800億$押し上げている、とします。しかし中国は上半期、経常収支が1265億$、資本・金融収支が900億$の黒字となっており、国債準備資産は1780億$増。上記を総計すると、今年に入ってから相当の資金が中国国内には流入しており、外貨準備を蓄えるだけの材料はあります。更にその分が人民元で国内に還元され、外資買収に流れる、という構図です。
こうした中国の堅調さが、逆に米国からは歯痒く映り、米上院でも対中制裁法案が提出される動きも出ています。明晩、米財務省の為替操作認定が出れば、米政府が対中強硬路線に転じた、との印象を与えます。報告次第で、更に為替を動かす材料となるかもしれません。

米国ではIMFによる監視強化の要請など、着々と人民元相場に手を打っている。一方で中国は通貨バスケット制移行後、外貨準備の多角化を進め、ドルの外貨準備は増やしていない。いつでも売れる、というサインを送ります。通貨戦争は米国が発端、経済にマイナス、あらゆる発言を通じて人民元相場への圧力を回避しようと中国も動きますが、世界全体が過小評価とする人民元は、もはや上げざるを得ない通貨となりつつあります。ただ、最後の足掻きとして中国がドル基軸通貨政策を批判し、国際準備通貨創設に向け、ロシアと強調して動く可能性は十分あります。
日本は中韓の為替政策に苦言を呈すなど、米国寄りの姿勢を示します。8月、中国は約1年買い進めてきた、日本国債2兆円以上を、1ヶ月で売り抜くなど異常な行動をとりました。貿易面以外で、中国に対する足枷は減じており、主張を通し易いことはあります。ただそれが、日本の為替介入への批判の矛先を他に逸らす、と受け止められればアジアで信用を失います。

米中の通貨戦争はまだ端緒です。米国の8月対中貿易赤字は280億$、463億$という貿易赤字の半分以上を占めます。米国は、自国の利のためには他国を切り捨てる国です。特に世論向けにも中国叩きは必須となっており、米国は基軸通貨体制を維持する限り、他国が米ドルを支える構図が続く、と強気の態度をとります。ただそれを崩す中国の提案が出たとき、通貨が大きく変動することは、世界経済の脅威となるでしょう。通貨戦争は火薬を使わない多国間戦争ですが、むしろいつの間にか世界を崩壊させかねない、という意味では深刻に捉えておくべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | アジア

2010年10月13日

雑感。年金の海外株運用

チリのサンホセ鉱山で、生き埋めになった鉱山労働者が救出されています。それはそれで喜ばしいのですが、ただ映画化や書籍化の話など色々出ています。恐らく今後、損害賠償などのきな臭い動きが出ると、急速に報道の熱は冷め、英雄から金の亡者扱いが強まります。短期勝負の一攫千金、チップを賭ける側も、ディーラー側もそれを見越して動いている部分は、まるでカネ余りに浮かれてリスク投資に走る、今の世情を映しているように見えてなりません。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、運用の9%を占める外国株投資で、新興国運用を開始します。先進国が軒並み低金利政策に陥り、上昇余地も限られる中、収益機会を広げる目的ですが、いずれ外国債も同様に新興国運用に拡げるはずです。現在の低金利では、目標とした運用には達せず、年金積立金を取り崩す他に、拡大する給付に回らないためでもあります。リスクをとる、とも云われますが、運用とは元々リスク性の高い行動であり、単純に今まで世界が高成長を維持してきたため、リスクが低かっただけの話。今後はどの運用もリスクが高い、ということが言えるのです。
これは民間でも進みます。日本生命保険が水準見直しで、10%程度減額する見込みと伝わります。財務健全性を示すソルベンシーマージン比率が厳格化されること、など保険業界には特殊事情もありますが、積立不足が深刻化しており、各企業も早期に手を打たねばなりません。特に、運用が本業の保険業界で、運用が利回りに達しないことは、多くの企業への波及を想起させます。
昨日、日本年金機構が紙台帳とコンピュータ上の記録との突合を開始しました。4年間で3千億円の経費をかけ、全件チェックをかけるとしますが、それでも不整合や見落としが生じます。経費に見合う効果は見出し難く、運用の失敗が嵩めば、回復される年金以上に、給付に影響する恐れもあります。税方式に変える年金改革と運用と、その兼ね合いの先にこの全件チェックがあるわけではない、という面を考えると、とにかく「やった」というだけになりそうです。

最後に、小沢氏の起訴議決をした、第5検察審査会の委員の平均年齢が、2度にわたって訂正されました。30.9歳から33.91歳、そして34.55歳です。これだけ注目の高い検審で、平均年齢に計算不足がある、という杜撰さに呆れるばかりですが、年齢批判を受けた後であり、世論に迎合する形で引き上げる、という流れも不可解です。こうした組織は透明性が第一であり、最早こうした訂正は組織への懐疑的な見方を更に拡げる、ということに繋がるのでしょう。
国会では証人喚問で綱引きが続きます。政治とカネの解明に後ろ向き、与党のそうした態度を国民に訴えるためですが、以前も述べたように、これは損害賠償に発展するような、検察に頼る批判、追及は控えておいた方が良いものです。仮にこれで潔白が証明されると、損害賠償という新たな「政治とカネ」のステージに移行することが考えられ、小沢氏がカネの亡者なら、間違いなくそれをするでしょう。特に政治家を引退していれば、益々そうした動きとなります。これが最高裁までもつれ…などと考えていると、短期勝負に至った場合、損を被る可能性が高くなります。この件で、誰がディーラーで、誰がチップを上乗せしているのか?その読み方を誤ると、いずれ大きな変動に巻き込まれかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2010年10月12日

FD改竄事件の起訴

今日の日経平均は200円強下げました。G7後に為替介入、そうした思惑が朝方から徐々に剥落、ユーロ高の一転で利食い売りが膨らんだのが原因です。為替連動性の高い相場は、為替睨みの展開が続きます。では為替介入のタイミングは?といえば、現在想定できる直近としては、米国の為替操作リポートを出した後、FOMCまで、ということで20日前後ではないかと見ています。
為替介入がG7で困難になりましたが、リポート発表前後では米国にケンカを売っているようなもの。FOMCの直近だと、その後の大きな変動で介入効果が薄れる可能性が強まります。ただ米国では15日予定のリポート提出の延期、も囁かれています。11月半ばになるとAPEC、G20も絡んできます。そう見ると、余程激しい上下動がない限り、11月後半から12月まで先延ばしが、最も可能性のあるタイミングとなるのでしょうね。

昨日、大阪地検特捜部の前田容疑者が起訴されました。ただ違和感のある部分もあります。逮捕当初、時限爆弾を仕掛けた、過失だった、等の報道が為されました。これは検察のダメージコントロールが働いた故です。当初は『前田』という異常な検事が働いた、特殊な事例だとの印象づけを画策。後に事件性の程度を薄め、上層部への波及を小さくしようとした。この事件は地検と、高検と、最高検とが綱引きをする構図であり、情報操作の仕方は時に応じて変わります。今は『素直に反省』を強調しますが、これも印象操作であり、ダメージコントロールの一環です。
問題は起訴事由で、FD改竄を「公判の紛糾を避けたい」と、あたかもスジの立つ論で乗り切ろうとする姿勢です。無罪推定が可能な資料を改竄しておいて、無実とは認識しない、と供述しています。ただ紛糾するとは、即ち無罪可能性があって公判が荒れることです。つまりこの供述も、検察が考えたシナリオに沿って、検察に打撃が少なくなるよう脚色された公算が高いのです。

事件発覚当初、メディアでは頻繁に「堕ちた正義」など、正義の文言が用いられました。巨悪を眠らせない、検察は善と信じていた。これはメディアの言い訳です。盲目的信頼がなければ、正義などは用いられず、これは自ら権力への監視機能が劣化している、と示すだけです。どんな大本営発表だろうと、それを鵜呑みにして情報を横流しすれば、メディアは機能不全。今回、全く同じ構図で検察の情報が垂れ流され、それに手を貸せば反省は何もないことになります。
前田容疑者は起訴されたので、情報操作は今後難しくなりましたが、特捜部長や副部長は残っています。今回、実はファイル作成日付のみでなく、ファイルの順番も変えていた、等の次長検事のコメントもあります。時限爆弾や過失、といった情報がどうして流れたか?その検証も必要なのです。検察だけが瑕を負ったかのような報道が盛んですが、メディアも同様に、この事件では反省しなければなりません。元々、捜査と起訴が一庁で行えてしまう、という監視機能の欠如も指摘されます。メディアすら監視機能を失い、裁判所で無罪判決が出るまで、情報封鎖された件も含めて反省の態度がなければ、検察が新たに出直すことは有り得ません。情報の取り扱いに対し、真摯な態度で取り組むことが、検察を初めメディアにも求められるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:16|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2010年10月11日

雑感、米国のティーパーティー

今日は三連休の最終日、少し思索的な内容にしてみます。米国では来月に中間選挙が行われます。オバマ大統領の支持率が50%を割り込み、米民主党は厳しい状況ですが、加えて保守派の市民活動であるティーパーティーの動向が注目されています。共和党の予備選で、ティーパーティーに支持を受けた候補が、劣勢を跳ね返して当選。その力を見せ付けました。

ティーパーティーは1773年、米独立戦争に繋がった「ボストン茶会事件」に因み、オバマ政権の進める改革に反対する運動です。ボストン茶会事件は、植民地だった米国が英国からの高関税に反対し、東インド会社の輸入品であるお茶を略奪し、捨てたことを指します。米国で、紅茶よりコーヒーが好まれるようになった、その契機でもあることから、ティーパーティーは権力に対する反対、潮流を生み出すという意味で、この名称を採用している、とされます。
しかしあくまでアングラの話ですが、ボストン茶会事件にはフリーメイソンリーが関わった、とされています。米国の独立宣言や歴代大統領にも、メイソンが関わっているとされますが、日本では怪しい結社と見られていても、米国では立派に市民権を得た公的な結社の位置づけです。むしろ当時、電話も郵便も発達していない中、全国規模でネットワークを有した、結社という存在は政治利用され易く、情報伝達に多大な功績を残した、と考えるべきでしょう。

米国でフリーメイソンリーが多いのは、この結社が政治・宗教の話は禁止、という原則があるため、プロテスタントもユダヤも、安心して参加できる組織だからです。それでも独立戦争に関われたのは、隣の部屋や家に移って議論されたから、という裏技を駆使したためです。つまり建国の歴史に、フリーメイソンリーが関わってきたという歴史的事実は、こうした社会に根ざしたネットワークと、中流・高級階層に構成員をもつ、高い教養に支えられたものであり、本来政治とは無縁であるはずの結社が政治性を帯びた結果、と捉えることが可能です。
現在のティーパーティー。政治性を帯びた草の根運動が、フリーメイソンリーに限らず、何らかのネットワークに支えられている、と見るのが妥当です。ブッシュ親子が高級家庭の子息が参加できる、スカル&ボーンズに入っていた話は有名ですが、米国では日本人が思う以上に、こうした結社が存在し、活動しているのです。米国の市民運動やデモも同様ですが、何らかの思惑が背後にある、と疑われる原因はこんなところにもあるのかもしれませんね。

実は日本にも、東京タワーの下にフリーメイソンリーの大ロッジがあります。開国以来、日本に訪れる欧米人が持ち込み、戦後に憲法でも結社の自由が認められ、本格的に活動を開始しました。鳩山一郎氏が入社したことで有名ですが、それらも海外にネットワークを得るため、とする見方が正しいのでしょう。公式にどれだけの構成員がいるかは分かりませんが、高中流家庭に狙いを絞ってメンバーを募っている、とすればそのネットワークは強固なのでしょう。
米国の中間選挙で、仮に共和党が上下両院で過半数を占めれば、オバマ政権はレイムダック化し、妥協と協調を余儀なくされます。減税と規制緩和と、財政再建をどう両立させるのか?日本よりも難関が待つのでしょう。保守、とされるティーパーティーは独自候補をもたず、ペイリン氏を象徴のように担ぎますが、この動きが米国にどう影響するかは、日本にも波及する問題であり、しっかり見ていかなければいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:22|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2010年10月10日

G7は各国の思惑を確認する場

G7が閉幕しました。ただ通貨戦争、ともされる現在に具体的提案はなく、立場の違いが露呈するだけの国際会議の場となりました。米中とも、高い個人消費を背景にした強気の姿勢を崩しませんが、それが長期の景気低迷に伴う失業率、賃金低下による消費低迷なのか?バブル崩壊に伴う消費減速なのか?どういう道筋に至っても、両国の態度が軟化するのは、経済が別の形で混乱するときであり、穏やかに解決するのは難しいことを、今回も露呈しそうです。

通貨戦争の引き金は米国が引いた。なのに、他国の通貨安を抑え込むのは本来、ムリな要求です。米国はその経済規模に応じた金融緩和をするため、ドルを大量放出する。その結果、通貨安を導き、市場にも大量に資金が流れ込み、経済は一見すると堅調。ただし先進国では在庫調整が終わり、製造業が鈍化の兆しを見せるように、景気対策による増産体制が打ち止めとなり、実体経済の悪化が起こり始めている。というのが、現在の世界経済の見方です。
そこで自国通貨安を招き、他国の需要を喰いたい。輸出を伸ばしたい、それが米国の思惑です。今回日本の介入を黙認したのも、日本が早期に消費拡大する傾向はなく、輸出先としての魅力が少ないためです。一方、中国は今後も高い消費の伸びが期待できる。何としても改革を促し、人民元高により輸入を増やすよう誘導する。そんな思惑が見え隠れする内容でした。

日本の為替介入は黙認ですが、「過度で急激な変動」を明言したため、この水準でしばらく留まり続ける以上、再びの介入を難しくします。つまりなだらかで、フラットな動きをする以上、為替介入に是を与える根拠は世界に薄く、介入がある度に日本は諸外国に説明行脚せねばなりません。これはいずれかの段階で限界となり、その後の売り崩しを意識すれば、限界値を早めに示すことは、結果的に円急騰という事態を引き起こすものであり、リスクが高いと云えるでしょう。
世界はカネ余りの金融相場。アジア通貨危機の拡大版、先進国でさえ売り崩される懸念があるほど、今の世界の市場にはカネが唸っています。一例ですが、日本の株式市場では某証券会社が、銀行株の見通しを引き下げたところ、当日に銀行株は急騰。日中に新たな金融規制の話が出て、一旦弱含みます。ただ金融庁は規制を否定し、出所不明の情報戦だったため、銀行株はその後値を戻すなど、急激な変動が起きました。これは某証券系の売り崩しに対し、反対売買で利を得る動きが出たと見られ、金融機関が互いに鬩ぎ合えるほど、資金投下が可能なことを意味します。これがヘッジファンド同士なら良いですが、国を潰すほどの動きになることも有りえるのです。

中国の諺で、現在の中国の思惑を語ると「1人が樹を植え、万人が木陰で涼む」でしょう。自分たちが世界経済を引っ張り、世界はその下で休んでいるが良い。中華の思想は、概して針小棒大のところがあります。問題は、みんながその樹の実を食べたい、そう考えていることにあります。高い成長という果実、木陰で休んでいる暇などない先進国の首脳は、自身の選挙や保身のためにも、中国という樹を伐り倒してでも生き延びたい、そう考えていることでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2010年10月09日

政局としての小沢氏起訴の問題

中国で拘束されていた、残るフジタ社員が解放されました。解放は既定路線ですが、タイミングはやや意外。船長逮捕への対抗措置が、中国の予想以上に世界で反発を受け、かつ中国の人権運動家へのノーベル平和賞受賞などを後押しした。いつまでも法治主義のない国の無謀な報復措置、との捉え方をされたくない、という面が後押ししたため、外交カードとしてはあまり意味のない今日、となったのでしょう。ただASEMにおける首相対話で、環境技術への協力程度の約束はあったかもしれません。

国会は代表質問でしたが、野党の質問も同じことの繰り返し、答弁も冗長であり、中身の薄いものです。蓮舫行刷相の国会内撮影問題も、自民党・片山氏へのブーメランで終結するなど、攻め手の失態も目立ちます。尖閣、小沢氏起訴、仙谷氏の居眠り、野党に材料も多いようですが、独自に新たな内容を付加できない、野党の調査能力不足が論戦の低調さに繋がるのでしょう。
そんな中、小沢氏に対する強制起訴は、国会に関係なく進みます。来年1月、2月頃に起訴され、公判前整理手続きが済めば裁判が開始ですが、これが7、8月頃と見られ、そのタイミングは通常国会を終える頃となります。臨時国会中に進展があるとは思えませんが、国会では証人喚問などの綱引きがあり、与野党ともにこの扱いを巡り、様々な攻防が繰り広げられています。

現状、4億円の入手先に関して疑問を呈した第5検審の議決に対し、小沢氏側が反論するなど、補充捜査に協力しない可能性があります。起訴はすでに決定しており、選任弁護士が仮に4億円の入手先にまで踏み込んでも、被告側に協力を求められない。そうなれば、まずこの点は公判に掛からないでしょう。また検察の供述調書のとり方、すでに公判に足るとは思えず、証拠採用されなければ公判の維持が難しい。来年の夏ごろ、公判前整理手続きが終わる頃には、裁判の帰趨が決定している可能性すらあるものです。
以前からの指摘ですが、この件で小沢氏を責めてもリスクを抱えるだけです。仮に無罪となれば、国に対して損害賠償請求の額は5億程度、週刊誌や新聞などに対する名誉毀損でも、数億程度は荒稼ぎできる公算です。特に9月21日以降、検察の供述に頼った追及は更に困難。信用に足る、とする論調は公判で通用せず、名誉毀損なら高確率で賠償金を課されます。重要なことは、新聞などメディアが同時に検察の不審を煽る記事を掲げていることであり、小沢氏の件で信用性を訴えても齟齬を生じます。

小沢氏を権力の座から遠ざけたい勢力がおり、未だに追求はありますが、それが来年小沢氏を利することになると、現在の菅政権の運営方法から、自民党時代のように夏頃までには死に体に陥る公算が高まります。その時、力を溜めた勢力として、小沢氏の側が浮上することにもなります。小沢氏が第一線に立たずとも、その時困ったことになるのは、逆に小沢氏を追い落とそうとした側です。賠償など、様々な要因を考えても、責めて利する場合に一気呵成が求められますが、今はただ継続性のみで追求しているのみに見えます。来年の夏、政局を迎えると事態は大逆転する、その時は新たな政局として政界再編なども見える、そんな事態も想定できますね。

analyst_zaiya777 at 23:43|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 司法

2010年10月08日

雑感。欧米の移民と雇用

円が81円台にタッチしてきました。米9月雇用統計が9万5千人減、政府部門の臨時雇用剥落と、地方自治体の財政不足による人員削減、が民間部門を上回る削減となり、1万人減と見ていた市場予想を上回る減少です。このため、米追加緩和期待に拍車がかかり、ユーロも連れ安です。海外市場の流れは、今後予断を許さない展開が続く、ということになるかもしれませんね。

ハンガリーでアルミニウム精錬工場からアルミナが流出し、ドナウ川まで到達したようです。ドンはケルト語起源で「川、流れ」を意味し、広域にケルトの影響が認められるのがドナウ川を初めとする、当地の状況です。代表的な河川が汚染され、国を跨いで被害を広げる。風評被害も含め、相当の賠償がハンガリーにかかるでしょう。S&Pのハンガリー国債格付けはBBB-、決して債務状況の良い国ではなく、国内の被害回復も含め、ハンガリーには大変な状況が襲いそうです。
中国の人権活動家・劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞しました。人民元問題、日本の尖閣問題に対する中国の対応、世界が中国の動向を注視し、警戒していることを示します。事前に中国共産党政権から圧力があったようですが、ここで尖閣問題の二の舞となれば、国際社会から更なる厳しい目が向けられます。それを見越した受賞決定だけに、中国も対応に苦慮することでしょう。

ただ一方で、6月に英政府がEU域外からの就労ビザに上限を設け、国内の雇用を守る姿勢を打ち出します。英総選挙で、労働党のブラウン前首相が移民政策で同党支持者に毒づき、窮地に陥ったように英国では移民政策が一つの争点です。しかしスポーツ、科学の分野でEU域外からの渡航を制限すれば、英国の凋落に繋がるとして反発も多く、英政府は移民政策に頭を痛めています。
またフランスでもイスラム教の女性が被るブルカ、ニブカなどを禁止し、事実上移民を締め出す方向で動いています。また少数民族であるロマ人の送還など、雇用が減少し余剰人員となりつつある移民、流民を排除し、国内経済を保護する姿勢は欧州でも鮮明です。かつては人権の欧州、といわれたほど寛容で、逆に不寛容である国を非難していた欧州が、今や自国経済を守るために形振り構わぬ姿勢をとる。中国の一党支配を非難する風潮も、こうした国内情勢との兼ね合いで見ると、欧州側にも瑕をもつものであり、行動を伴わぬ主張は色褪せて見えてしまいます。

ドイツも統一20周年を迎えましたが、依然として東西格差は残る。経済危機を迎え、ユーロ安で貿易立国のドイツはかなり潤っていますが、EU全体の経済復調にドイツが与える影響は小さい、との分析もあり、一国勝ちの状況は極めてドイツに不利な展開をもたらしそうです。
問題は通貨に留まらず、世界のあらゆる国が移民など、労働人口に対して厳しい目を向け始めており、自国の雇用を保護するためとはいえ、納税人口の減少は結果的に緊縮財政に向かい易くさせる。国全体が縮小均衡を目指す形を、鮮明にします。英国でも再び不動産価格が下落、過剰流動性が効き難くなってきました。これも労働人口減となり、縮小する市場であれば当然なのです。
米国でも、移民と思われる人物に警察が声をかけられるようにする、その法案が州で取り沙汰されました。移民を排除する動きが、米国でも鮮明になれば、より世界は不要な労働人口を切り捨てる、縮小均衡型に移行するでしょう。新興国も出稼ぎができず、かなり不安定になることも予想されます。通貨戦争だけでない、もう一つの戦争、それは人を動かす移民政策にあるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:32|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 欧州 | アメリカ

2010年10月07日

為替介入は無意味だった?

円がついに対ドルで82円台前半です。昨晩、米民間調査会社によるADP雇用統計が2万人増の予想から、約4万人減となったことで、FRBによる金融緩和期待が膨らみ、ドルを押し下げたことが原因です。ガイトナー米財務長官が、為替操作に言及。諸外国に圧力をかけたことも影響し、ドルを売り易くなったことも一因。世界的に見て、相対的なドル安が急速に進む展開となっています。
日本では覆面介入も囁かれますが、介入額は毎月発表され、規模も筒抜けで覆面の意味はありません。また財務省発表の9月外貨準備状況によると、外国証券残高が379億$の増、2兆1千億円の介入は即刻、米国債購入に踏み切ったと見られます。これでは米金利を下げ、円高です。つまり米政府への配慮があったとすれば為替介入自体、国内向けのポーズであり、日本政府は本気で円安誘導する気はない、となります。通貨戦争で日本は負け、の構図がこんなところにも露呈します。

ASEMで、欧州と中国の間で人民元相場に対し、熾烈な綱引きがあったことを窺わせます。中国は中国経済が弱まることは、世界経済の損として強気ですが、IMFの高官からも人民元相場に注文がつくように、いつ為替操作国として、課税強化されてもおかしくない状況です。通貨安で保護貿易、世界の流れがそうである以上、人民元だけ特別視はいつまでも続きません。
週末にはG7ですが、ここで中国に対する圧力的な議決が出ると、人民元相場の水準を変えざるを得なくなる。形骸化しつつあるG7ですが、為替への言及は何らか出るでしょう。その時、日本の為替介入に不満が出るかもしれず、非常に難しい立場におかれることになります。

日本の政界は小沢氏への証人喚問が取り沙汰されます。しかし法廷の場にステージが移ったため、例え参考人招致でも「公判に影響する」が頻発する。それで野党は「不誠実」と責めたい。こうした、ためにする要求が頻発されます。しかし今、日本は上記のような為替の動きに即応し、効果ある対策を打たねば、通貨戦争に負けて未曾有の危機に陥る可能性すらあります。
小沢氏の問題は公判で明らかになるので、国会でやる必要はありません。野党共闘が唯一可能な問題とはいえ、それにかまけて空転をしていては、政治が益々空洞化します。連立与党の補正予算規模は5兆5百億円、自公の要求を呑む形にしたので、臨時国会は問題なく通過するでしょう。

会計検査院が外交官のワインやら、活用されていない土地やら、ムダを抽出しています。特別会計の事業仕分けも、対象が11兆円規模となりそうです。しかしこの程度では、国のムダ削減への寄与は低いと云わざるを得ません。国会が行うべきは、予算の透明化と執行過程のムダ削減であり、これは党派を超えて当面行うべき施策です。政局で野党共闘するより、ムダ抽出で野党が実績を示す。そういう形になって、初めてこの経済危機に突入するか否か、という難しい時期の国の舵取りを担える政党、とのアピールも可能なのでしょう。手柄合戦が、司法判断に国会が首を突っ込むことで済ます気なら、この国の政治は早晩、国民に見限られることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2010年10月06日

経済の話。日銀の金融政策と通貨戦争

ノーベル化学賞に北大の鈴木章氏と、米バデュー大の根岸英一氏が選ばれました。とても嬉しいニュースです。一方で菅政権は運が良いのか、この記事で代表質問の扱いがとても小さくなりました。自民党は運が悪い形ですが、歯切れの悪い応答が、テレビメディアでほぼ流れなかった点は、菅政権にツキがあるということなのでしょう。

昨日の日銀の金融決定会合の内容、世界には悪い捉えられ方をしたようです。金融緩和競争、ひいては通貨戦争を想起させ、市場は大量の資金流入に浮かれて株は大幅高。短期では、日本は週末SQを控えて売買が膨らみ、ETFやJ-REITへの資金流入を囃して買い基調。国債を買い増すため長期金利は低下、日銀の対策が嵌ったような印象も受けます。一方で、通貨戦争では米国の対策の方が規模も大きく、効果も高いためにドル安を想起させ、来年度の緊縮財政とECBの出遅れからユーロ高、という局面が生じています。しかし長期の視点で見ると、これはマイナス効果の大きいものです。
日銀の買いを見越した上昇で、買取により高値掴みの可能性があります。また日銀券ルールを外してバランスシートを拡大することで、日銀への信任が低下し、異例の包括緩和が円の健全性を阻害する可能性が高くなります。それは円安ではなく、円暴落という形で現れるかもしれません。

最悪は通貨戦争です。各国が国の規模、余裕に応じて放出される資金は過大となり、カネ余りを深刻にします。新興国はバブルを警戒して投資規制、課税強化で対応するでしょう。使い道を失った資金は、本来潰すべき企業、事業を存続させ、後に破綻して大きな損を抱えさせます。すると、各国の中央銀行は資金吸収が出来なくなり、バランスシートを痛めたまま、更なる追加緩和に向かいます。競争が激化すれば、近い将来どこかの通貨が暴落する恐れも出てきます。
日銀の時間軸効果は、永めの資金を市場に置きますが、景気回復に必要な市場に回らない。先進国の病巣は、資金不足ではないのに政策効果が限られ、資金供給に頼るその姿勢です。それで成長すればバブル、という認識の薄い政治家により、通貨の番人である中央銀行が各国で独立性を失う。まさに世界大恐慌の時に打つような対策を、各国が仕掛けているのが、今と云えるのです。

日銀は『異例』を強調し過ぎて、追加5兆円に更なる規模拡、上乗せを難しくしています。今後、通貨戦争が拡大すれば必ず負け、です。しかも異例な包括緩和なので、暫く効果を見定めるため、様子見を余儀なくされます。その間、米で大規模緩和が打たれれば、益々ドル安が加速します。重要なことは、世界の経済規模で1位、2位を誇る米中が通貨安競争を仕掛けていることであり、それに対抗する策を打つなら、市場が驚く規模を、意外なタイミングで打つ必要があるということです。
日銀が原理、原則に拘らなくなった。その点は好感もできます。ただETFやJ-REIT買取も、リスク資産購入に踏み切ったことは評価できても、たかだか5千億円ですので、市場規模から見れば効果は限定的。長続きはしません。社債やCP買取も、日銀が健全性の低い資産を買うわけにはいかないので、大企業であれば日銀が買い支える必要もありません。日銀は様々な対応をとった、と一旦は胸を張りますが、今必要な対策とは云えないものがほとんどです。日銀は伝統的な対策、過去に経験した対策を総動員して非伝統的、という形に至りましたが、世界の非伝統的手法の前にどれだけの防壁効果があるか?やや懐疑的に見ておいた方が、間違いは少ないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:35|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2010年10月05日

小沢氏の強制起訴と政局

日銀が金融政策決定会合を開き、0〜0.1%と実質ゼロ金利に、新型オペ30兆円に追加して3.5兆円の国債買取、CPや社債を1兆円、株式先物のETF、J-REITなどを0.5兆円の、計5兆円の追加買取を決定しました。このゼロ金利を「物価安定が実現するまで」とする時間軸効果を導入、形振り構わぬ「異例」の対応を白川総裁が自ら宣言し、景気対策に舵を切りました。いずれ問題点に触れますが、為替は一旦円安にふれたもののすぐ巻き戻り、株式も高値引けに近い形ですが、イベント型の先物買いもあるため、明日以降の動向には注意も必要です。いずれにしろ異例との表現が適切なのでしょう。

ASEMで日中両首脳が通路で25分会見しています。相変わらず偶然を装う、必然を否定する態度が目立ちます。会えたこと、が重要な菅首相にとっては満足でしょうが、メディアではほとんど伝えられない仙谷官房長官の媚中ぶりを見るにつけ、菅政権に中国外交を担えるか?不安にさせられます。また、小沢氏の強制起訴に対する動きも、菅政権に打撃となりそうな気配です。
野党は証人喚問を要求しますが、これは真実を明らかにするものではなく、政局のためにするものです。起訴が確定したため、小沢氏本人が語れる内容は少ない。証人喚問自体、真実を明らかにするものでもありません。ただこのカードは、事あるごとに利いてくるジャブです。

離党勧告や議員辞職勧告に、小沢氏が応じることはまずありません。またこれは党分裂よりも深刻な、党内に残った小沢シンパによる倒閣運動を誘発しかねません。党分裂で線引きされるより、例えば国民の人気の高い原口氏を担いで倒閣運動を起こし、内閣提出の法案を否決する。一昔前の自民党のようであり、小泉郵政解散を想起させます。しかし菅政権には骨がない。脱小沢が軸で親中派から嫌中派が乗り、政策もバラバラ。郵政解散の二番煎じを演じるなら、小沢派に公認を出さないのも手ですが、基盤の弱い民主党が脱小沢だけで浮動票を集めるのは難しいでしょう。
何より時間経過とともに、供述調書の信憑性に焦点があたり、国民に懐疑的な見方が増えます。特に07年分の大久保秘書の件は先行して裁判が行われ、その帰趨も利いてきます。菅政権が内弁慶で、強権的に党内を解体するような手法をとれるのは、年度内が期限となるのでしょう。

また今回9月14日に議決、10月4日に発表の妥当性に説明責任が生じているため、ここも争点です。また菅氏の留守中に重要決定、という疑惑も生じますが、国会開会を狙ったこのタイミングも偶偶、などの説明で逃げれば益々政権に不信感が高まります。政治とカネは司法マターとなり、国会が事実解明の場でなくなったものの、尖閣問題や検察、検察審査会などは国会マターの説明責任が求められます。透明性を失い、説明から逃げ続ければ弱腰批判も出るでしょう。
小沢氏への処分は諸刃の剣、処分しても茨の道、党内動向にビクビクする。しなくても政権運営という迷路に嵌ります。小沢氏が表立って役職につくことはこれでなくなりましたが、実は最も本人が望む院政にまた一歩近づいた。という意味にも受けとれます。無罪判決が出たとき、その効果が最大に出てくるのでしょう。これで小沢氏の影響力が低下する、などの甘い読みは一先ずメディアのよくとる論調ですが、そうした見方をしていると、足元を掬われることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:38|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2010年10月04日

小沢氏に対する強制起訴の議決

検察第五審査会が、小沢氏を強制起訴を決定しました。ただ9月14日に議決し、公表が10月4日に至ったことで、今度は事件そのものより行政、司法を含めて説明責任が生じる形になります。そして、この検察審査会が不可思議な前提を抱いていることも、問題を大きくします。
検審が「国民は裁判所により無罪、有罪を判断してもらう権利」と述べます。しかしこれは検察が捜査した人間にのみ課される、という偏った権利です。逆に、有罪可能性を指摘されながら検察が手をつけない人物は権利なし、となります。検審の本来の意義は、検察が権力と結びつき、不起訴などを判断しないよう監視する機能です。ただ今回は検察が権力の追い落としを図り、失敗した構図であり、それを検審がお墨付きを出す。所謂、検察の失敗を検審が救う判断を下した形です。

しかしこれも9月21日以前の話。この日付を起点に、全ては逆回転を始めています。議決要旨を見ると、相変わらず供述調書の推認が強く、再捜査で供述が変わったことも信用できない、とします。しかし最初の供述調書が検察の誘導、強圧等によりスジ読み通りにとられた、というのが定説です。供述調書は今後の公判では、参考資料になっても証拠採用は難しい。それが現在です。
再捜査で供述を翻した理由を不合理、としていますが、恐らく再捜査を担当した検察官から合理的な説明を求められ、已む無くしたものとの推定が可能です。初めの供述調書が正しい、問題ない、という想定の上で為された推定は、全て崩れるのです。また供述調書を変えなかった石川被告は、供述の変遷に合理的な説明を求められ、公判で明らかにする判断したことが推定されます。これを信用性がある供述としますが、これも最初の供述調書が正しい、という推論の上でしか成立しません。

この事件は、裁判所選任の弁護士により強制起訴されますが、これが弁護士への利益供与として、イタズラに長期化させてはいけません。捜査権を有する、としても弁護士には限界があります。裁判が長期化すれば、弁護士にその分裁判費用が入るとすると控訴、上告と勝てる見込みがないまま、泥沼の裁判が展開されます。それは裁判費用の面でも、国の無駄な出費をただ増やすだけです。
議決要旨でも4億円の出資元を問題視し、銀行融資を受けた件を虚偽記載の同意を窺わせる、とします。ただ状況証拠の推論として、公判を維持できるほどのものではありません。恐らくこの事件は、政治資金収支報告書に3ヶ月ずれた日付の記載をしたことを刑事罰とするか否か、が最大の争点です。小沢氏の関与は、関係者の供述に頼るしかなく、そこが崩れた。最早立証が不可能なのです。

今回、前回に比べて補助弁護士の口添え、と見られる点が減ったことは幸いです。しかし9月14日に議決、としたことで検審は新たな火種を抱えました。仮に小沢氏が内閣総理大臣に就任していれば、検審の結果で政局を起こすことになります。それも歪んだ国民の権利によって。
これは刑事事件であり、最後にシロなら誰かが責任をとらねばなりません。それは検審でも、選任弁護士でも、ましてや検察でもないでしょう。無責任な疑わしい、を積み上げた結果、裁判に至っても誰も責任をとる者がいない、という異常な裁判に今後至ります。個人的には、99%の確率で小沢氏は無罪と想定します。残り1%は、法曹界に多い異常な判断を下す裁判官に当たった場合です。小沢氏が悪党だろうと、清廉潔白な士であろうと、そうしたものに関係なく、この事件の証拠では公判を維持できないのは明白です。それが国民の権利、判断として公判に至るのなら、国のムダ遣い削減などを国民が訴える声も、虚しく聞こえることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:17|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 司法

2010年10月03日

経済の話。アイルランド危機と為替

為替市場は83円台前半、介入以前の82円台を窺う気配です。2兆1千億円の効果が2週間しかもたず、政府は次の一手を探りますが、米FRBが追加緩和を口にするたび、円高に進むという現状では、介入という対症療法では効果が低いことが明確です。明日から始まる日銀の政策決定会合では、金融緩和期待も膨らみますが、それでも円高になるのは規模と対策効果が、日本では低いと見られるためです。もし仮に日銀が出遅れると、更なる円高が襲い、一時的な為替介入はあるかもしれません。

一方でユーロは対ドル、対円でも堅調です。が、欧州にはアイルランドが国有化したアングロ・アイリッシュ銀行の再建に343億ユーロ、これまで投下された分に加えて113億ユーロが必要との計算です。これにより、アイルランドの財政赤字がGDP比で32%に膨らむ恐れがあり、アイルランド国債が売られ、リーマンショック後の利回りが最高水準に達するほど。即ち再び欧州危機が取り沙汰される現状で、ユーロが堅調という不思議な事態が起きていることになります。
背景には、中国がギリシャ国債の引き受けに対し、前向きな姿勢を示すように、金融危機でも深刻な切捨ては起こらない、との楽観があります。リーマンショックの教訓は、米国が安易に巨大銀行を切り捨てたこと。そのことで信用不安が膨らみました。ただアイルランドの銀行では、劣後債の扱いに焦点があたるなど、予断を許さないのが現状です。

劣後債は返済義務の低い債権です。その代わり利回りが高く、リスク志向の高い資金が向かう金融商品となっています。この劣後債もカバーされる、金融不安は起きないという見立てでユーロ高が演出されていますが、アングロ・アイリッシュ銀行ではグッドバンク、バッドバンクへの分割が検討されており、その場合に劣後債は切り捨てられる可能性も出てきます。
先に金融不安を迎えたドバイが、新たに起債を発表しています。リーマンショックで得た教訓は、逆に云えば金融機関、投資主導の国の態度、方針さえ見直すタイミングを失わせており、将来により深刻な問題を残します。バーゼル?の試行期間が長くなったように、今は規制をかけずに乗り切る態度が明白であり、アイルランドの問題もそうした方向性が見え隠れしています。

日本の証券市場は、9月末までに為替介入があると見込んだイベントドリブン型の欧州先物業者が、買い溜めていた先物を9/30に放出、大きな下げに繋がりました。為替介入睨みで、今後も推移することになり、今週末のSQも為替介入次第、という動きが想定されてきます。
世界経済は、危機である市場に資金が流れ込む限り、堅調に推移します。米国、中国は政治、経済、制度、いずれも全く異なりますが、経済成長しなければ国民が納得しない、という国情は非常に似通っています。米国は背後に日本という金庫を抱えていた、中国は人民元を刷りまくっている。両国とも、自国経済を堅調にするために、他国の不安すら排除しようとします。ですが、危機が顕在化すると最大に困る両国、ということも云えます。世界経済の下支え要因としては、甚だ不安な両国に頼らざるを得ない、そのことだけでも今の世界経済は脆弱ということが云えるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:18|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2010年10月02日

FD改竄事件に関する動き

郵便不正事件を巡るFD改竄事件で、大阪地検の前特捜部長と副部長が逮捕され、各地の地検にも最高検から強制捜査が入っています。ただメディアの報道では、FD改竄を故意か、過失かを巡って、逮捕された前特捜部長と副部長が「過失」として上層部に報告、これが犯人隠避だとされます。ですが、これはとんでもない大間違いで、上層部の過失を隠す行為に他なりません。
刑事訴訟規則の第98条を引用すれば「押収物については、喪失又は破損を防ぐため、相当の処置をしなければならない」とされます。故意であろうと、過失であろうと、押収された証拠品に手が加わったら、その時点で事件です。つまり証拠品の書き換えがあった、ということを報告された者が全員、犯人隠避の罪が生じています。つまり故意か、過失かは関与の度合いの軽重を示すのみです。単なる過失だから問題がない、というわけではないのです。

故意であれば、組織ぐるみの犯罪です。過失と認識していたのなら、検察官としてあるまじき、法の遵守に違反した罪です。刑事訴訟規則の第93条を引用すれば「押収及び捜索については、秘密を保ち、且つ処分を受ける者の名誉を害しない」ことを謳います。FD改竄は、被告の無罪を立証する最大の物証、それを害された段階で故意か、過失かは全く関係ないのです。
更に、仮に過失であったとすれば、FDの磁気データ、作成日付を変更できるソフトがあるのですから、元に戻せば良かっただけの話です。手が加えられた形跡は消せませんが、疑われることもなかった。データを元に戻さず、被告の側に返却した時点でそれは過失であり、書換えを正当化する要件はありません。つまり前田容疑者の行為は全て通して過失であり、この点に一片の疑いもない。それを過失と判断すること自体に、すでに誤りが含まれていることになるのです。

刑事訴訟規則は、刑事訴訟法の下位にあたります。ただ刑事訴訟法に、押収品の取り扱いに関する規定が少なく、あえて刑事訴訟規則に頼っています。ただ検察が証拠を改竄すれば、公判など維持できなくなることは必定です。逮捕された副部長が、供述に頼って逮捕するなら、郵便不正事件と同じだと訴えているようです。その通り、この事件の構図が厄介なのは、検察が正しいと信じてやってきた事件の捜査手法を、検察自ら全否定することなのです。
状況証拠と供述と、少ない物証で立証してきた公判を維持してきた検察が、捜査手法を否定すれば、特捜の存続意義を失います。前特捜部長と前副部長を、上層部の面子のために尻尾きりするなら、彼らの供述が益々特捜を否定することになるでしょう。何のために、一般人が現行犯を逮捕できるのか?それは事件が発覚した際、すぐに犯人を逮捕し、事件を解決する必要があるからです。故意であろうと、過失であろうと、証拠を改竄すればその時点で事件、それを知りうる立場にあった者は、全員が事件を見逃した犯人です。今回の事件、二人の逮捕で幕引きになる、そう考えている幹部がいるのなら、検察庁全体に最大の懲罰が加わる、そんな可能性を追求することになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2010年10月01日

菅首相の所信表明演説

第176回通常国会が召集され、12月3日までの予定です。菅首相の所信表明演説が行われました。有言実行内閣を全面に、野党に協力を要請しつつ、内容の羅列に終わるという実務型。むしろ詳細を語ると、与野党で協力する際に枷となる場合があり、やりたい項目を語ったということです。
ただ重点項目を挙げ、達成への道のりを掲げたため、逆にそれが出来ないと野党の攻撃材料となります。補正予算協議もこれから、他の法案にしても、2ヶ月の会期で詰められるのか?もしそれを、野党の非協力な姿勢に求めたとしても、国会運営の責任は与党に降りかかります。道筋が立たない中で安易に口走ってしまう、菅政権は極めて『ラッ菅(楽観)政権』だということが、この手法でも目立ちます。

デフレ対策や為替介入など、アピールしていますが、再び為替介入前の83円台前半に突入。財務省発表の介入総額は2兆1千億円強。約2週間しか効果なし、では実績とは呼べません。また8月の消費者物価は生鮮食品を除いた前年同月比で-1.0%。こちらは政権獲得後、3ヶ月では責任に帰すのも酷ですが、デフレ傾向に歯止めがかからないことで、様々な問題に影響が出ています。
消費税増税、法人税減税には前向きでも、公務員制度改革は後ろ向き。年内に検討します、方針を示します、では一体いつを最終目的として施行をを目指すのか、も皆目分かりません。霞ヶ関用語でいうと、これはやるかもしれないし、やらないかもしれない、という内容です。天下り根絶、ムダ削減、民主党で政権交代時に掲げた文言は著しく位置づけが低くされました。

外交分野では主体的な外交を掲げ、また「国民全体で考える主体的で能動的外交」と、代議員制で最も国民関与が難しい外交分野で国民議論?という不可思議さもあります。つまり機動的、かつ戦略的に長期の視点で利益の最大化を図る分野であり、時の気分や勢いに任せて良いのか?政治の役割とは?という視点で見ても異常ですが、選挙時に外交を主要な争点にしない、日本式選挙戦で国民の考えが反映される、というのも些かの違和感を禁じえません。
菅政権はこの4ヶ月近く、常に楽観で失敗してきました。消費税議論、尖閣問題、こうなるだろうという甘い見通しを立て、2重3重に防壁を張らず、その結果第1弾の作戦が失敗すると慌てふためく。これが菅‐仙谷ラインの顕著な特徴であり、今回の臨時国会も乗り切れる、という見通しで突き進んでいます。しかし鳩山政権では、委員会開催を通知するのに野党議員が音信不通になるなど、国対が上手くいかない例が顕著です。そんな国会を上手く乗り切れる、という見通しで「先送りしない」、「政策、熟議の国会」と位置づけても、終盤に法案成立が進まずに慌て、イラ菅と呼ばれる状態になることは必定です。

補正予算が最優先なら集中審議も頻発でしょう。ただ、年末までは外交日程も多く、首相は国会対応ばかりにかまけていられません。仙谷官房長官の手腕にしても、ガス田海域にいる中国の海洋調査船を「いらっしゃる」などと発言されれば、自民党保守派も政策協議に二の足を踏むでしょう。背後に居る小沢派の抑止、そのために大同団結しても、政策協調は難しい話です。ラッ菅政権のラッの部分が『楽』なのか『落』なのか、臨時国会中にその部分の文字が浮き上がってくるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:40|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般