2010年11月

2010年11月30日

情報公開と年金国庫負担見直し議論

米国の機密公電がウィキリークスに公開され、波紋を呼んでいます。内容は詳述しませんが、米国人らしい一言の多さと、皮肉たっぷりのブラックジョークが含まれています。流出元はイラク駐留米軍の情報分析官、陸軍上等兵と推測されており、国防総省の情報共有化により、専用ネット網にこの程度の身分でアクセスし、情報を搾取できたことが話題となっています。
クリントン米国務長官は「断固とした措置」を訴えます。前原外相も「言語道断」としますが、尖閣衝突映像を公開した海保職員を逮捕すらしない、日本政府と米政府の対応は雲泥の差です。海保職員は先にCNNの東京支社に映像データを送った、とされます。日本メディアに信用が低かったとしても、米メディアは国益で情報操作する、政府外郭団体です。CNNは廃棄としますが、米政府に送付されて外交に利用される可能性もあったのであり、仮に正義感としても甘い判断といわざるを得ません。情報公開のあり方について、媒体と手法、信憑性などに慎重な行動が求められます。

昨年分の政治資金収支報告書が公開されました。今年から税理士を入れて会計検査を行い、小額領収書の保存、管理が求められますが、対応はまちまちで統一感は出ないようです。というのも、一般の企業の会計や個人で申告する納税などの処理と比べ、使途が判明し難く精査が甘くなる傾向が見られます。領収書がない、支出が適切でない、という点は自明となりますが、問題は領収書があっても使途に関して疑義がないか?これは税理士では難しい判断であり、政治経験や地元との関係を考察する必要があり、問題点の抽出までにはもう一段の調査も必要になりそうです。
小沢氏の政治資金終始報告書を問題と伝えるメディアもありますが、小沢氏は1円単位で支出を明確にしており、その分抽出し易い面があります。ただ法的な問題はなく、以前も述べましたが、小沢氏は政治資金規正法をよく読んで、違法性のない範囲で動いているのみです。小沢氏の収支報告書より、領収書がない、支出が不明瞭な政治家の方が杜撰で悪質、というのは云うまでもありません。

基礎年金の国庫負担を50%から36.5%に引き下げる提案を、財務省が厚労省に提案したようです。財源手当ては自民時代からの宿題ですが、誰も手をつけない現状で、ついに破裂した問題です。これは菅政権が増税路線にあることで、国民の危機感を煽って増税議論に結びつける。財務省としては既存予算以外の、今後増える歳出は増税で賄うということを、鮮明に訴えた形です。
特別会計にも切り込みは弱く、政務三役からは事業仕分けに従わない、と公言されます。公務員人件費削減も切り込まず、年金負担のみ切り込む。これで国民は同意してはいけません。一方で法人税減税は政府税調で率先して議論され、相殺で検討されていた優遇税制撤廃は議論が低調です。法人税減税は国際競争力の強化や、成長に必要とされますが、法人税減税は経済成長を約束せず、ただの財源不足を引き起こす可能性が高い。結果的に、企業献金を禁止する形でない今の政治資金に、法人税減税が有効とする、政財界が一体となって自分たちに都合よく動いているのみです。

財政健全化に経済成長を織り込む。アイルランドも財政支援を受けるために、財政健全計画に入れている内容ですが、経済成長は結果であり、それを織り込んで試算されたものは全て甘いのです。法人税は減税するが、年金負担は減らして増税して、日本の形は一体どこへ向かうかも分かりません。組織はあれど、従業員は全員国外から連れてきた出稼ぎ外国人、という形にする気でないのなら、この議論に正当性を与えるような同意をしてはいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:39|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | メディア

2010年11月29日

米韓軍事演習と米軍の本気度

米韓軍事演習に際し、北朝鮮はこれまで目立った反応を示していません。中国の動きが象徴的ですが、6者主席代表会合を提案、12月という慌てた日程は北朝鮮が暴走しないよう先の予定を確約させたい。また米韓軍事演習で、東アジアのイニシアティブを米側に握らせたまま、事態の推移を見守るわけにはいかない、という点にあります。先の潜水艦撃沈事件で北朝鮮を擁護し、動かなかった結果がこれなので、ここで中国が手を拱いてはいられないということです。
同時に、北朝鮮に向けても庇い切れない旨を伝え、それを受けて北朝鮮では中国礼賛の動きを見せる。中国に見放されたら北朝鮮も終わるので、意に反した動きはし難い面もありますが、まだ演習と称して全く関係ない地域で、ミサイルの試射などは起こり得る可能性は捨て切れません。

今回の件、米国は戦争已む無しで動いているように見えますが、実際はそれほど米軍に戦争突入の決意はないと見ています。今年、米財政赤字は1兆6千億$弱、公的債務残高の積み上がりも深刻です。このままの経済情勢では、2020年までにGDP100%も確実に達すると見られ、尚且つ朝鮮半島有事で一時的に債務を膨らますことは、米国債に不安を与えることになりかねません。
更に、米金融機関の負債残高が一時17兆$を超え、リーマンショック後に15兆$弱まで減っていますが、それでも高水準です。負債には様々な要因があり、決してマイナス評価ばかりではありませんが、米国債投資は進み難い水準にあることは間違いありません。米国は富裕層からの投資資金、外国勢の外貨準備や国際決済金として、一時的にドルに積み上げられる資金で、米国債は成立していますが、ここ最近の米国債の動きは、単に国債バブルの巻き戻しや楽観論だけではなく、毎月750億$の買越し以上に売り圧力が強まるという状況です。ここで米国債乱発、仮にデフォルトに陥れば今度はFRBに危機が飛び火する。その時はドル基軸通貨体制は終焉します。

深刻なのは戦費以外に、ウィキリークスに流れた情報でも、南北統一後の中国への見返り、北朝鮮の復興資金、など予算は幾らあっても足りない。好調な韓国経済とは云え、経済規模が大きくない韓国でも、大量の失業率上昇は容認できない経済不安を与えます。米韓にそれでも断行する、そんな勇気はもてないでしょう。李明博大統領の「代価を払わせる」談話も、逆に北朝鮮崩壊の代償を負うようでは、南北統一に浮かれる前に、韓国が再びIMF支援を受けることになりそうです。
中国も、今は東北地方にいる朝鮮族を頼って、北朝鮮から難民が流入することは極力避けたい。一昨年辺りから国境の警備も警戒していますが、それでも脱北者を抑え込めず、それが国内の不安定要因になりかねない。一部で安い労働力になり得ても、就職難に陥る各国が、今度は失業率上昇に悩み始めます。中国も崩壊は望んでおらず、その点では米中の思惑も一致していると見ます。

米国は経済成長して財政再建。2020年の債務残高も政府推計では80%を見込みます。軍産複合体に兵器売買の恩恵がある、とはいえテロや散発的な戦闘では、それほど砲弾をどんどん消費できる環境にもない。何より民間被害が、今回は韓国の反発を招き易いため、地上戦の兵力大量投入では更に深刻な軍費負担が米国に覆い被さるだけです。米国はイラク、アフガンから手を引き、北朝鮮に集中できるならまだしも、財政的に本格的な戦闘は難しい。この中で、どれだけの軍事オプションを考えているか?今の厳重な監視体制が、逆に米軍が本格的な戦闘を望んでいない、その一つの示唆とも捉えており、撃てば撃ち返すという相互確証破壊のような均衡を、今の米軍は望んでいるのではないか、私はそう捉えていますね。

analyst_zaiya777 at 23:36|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アジア | アメリカ

2010年11月28日

雑感、選挙に弱い菅政権

沖縄県知事選、現職の仲井真氏が再選しました。県内移設反対ではなく、県内に移設先はない、とする主客転倒の形で基地問題を封印、沖縄振興特別措置法など、期限切れの経済振興策を政府へのパイプ役を自任した面など、選挙巧者ぶりが窺える内容です。伊波氏は政権与党との繋がりをアピールできず、現実路線との乖離を埋め、経済振興策をどう進めるか?地方行政における地続きの他県がない、離島対策としての振興策をどう得るか?という点にやや難があったようです。

菅首相が、支持率1%でも辞職せず発言をしています。現実的にはその前に、与党内から内閣不信任に同調する流れとなり、総辞職か解散が迫られます。菅氏が政権にしがみつけば解散、その時は民主が分裂して選挙突入です。いずれにしろ、一桁の支持率で政権を維持できることはほぼなく、本人の決意と世の中の流れは無関係です。ただ今後、民主党政権の次を予想する必要はあります。参院選、補選、地方首長選でも敗北続きの菅政権は、党内から選挙に弱い政権として見限られる可能性が高く、来年の統一地方選までもつか、その辺りの動きに掛かってきます。
公明に秋波を送っても、この弱体政権には乗ってこない。更に菅氏は公明にとって天敵ですから、あえて協力する必要は公明の側にありません。となれば、統一地方選まで菅政権だと、壊滅的打撃を受ける恐れがあります。そうなれば、幹事長の首を切っても党内は済まないでしょう。

前原氏は難局を捌くには力不足。外交や国交相時代の迷走ぶりに不安も高まる。これは国民的に、というより党内においての不安です。当面のネジレを乗り切るのに、前原氏では自民との大連立か、みんなの党ぐらいしか組める相手がいない。しかも菅政権が脱小沢で失敗しており、かつ仙谷氏の処遇も問題になります。後見人の立場を自任する仙谷氏を閑職というのも難しいでしょう。
岡田幹事長も、官僚をうまく使いこなせないことは外相時代に証明され、幹事長で選挙に弱いとなると、かなり深刻です。仙谷氏は親中であることや、日韓首脳会議において、自身が進めた文化財返還の謝辞を受けたい、とする自己顕示欲はやや国民が鼻白む部分です。国会混乱の責任もあり、他党とのパイプも細いので、この人物がなれば国会は更に混乱が必定、党内が難しいでしょう。

海江田氏や樽床氏では売名行為との境が難しいでしょうし、原口氏が出ると政局になりそうですが、重たい面もあります。脱小沢派との距離感次第で、政権運営は困難を極めるでしょう。菅政権は、外的にも公明の甘い態度が延命に手を貸しますが、内的にも意外と次が読みにくい、という点は同様であり、いつまでも消極的支持で政権延命に手を貸されそうです。ただ、今の朝鮮半島有事における対応に、及第点を与えられるはずもなく、その点で厳しい政権運営が続くでしょう。
ただ問責カードを簡単に切り、通常国会までダラダラと審議拒否を続ければ、野党側が苦しいことは明白です。個人的には、出すべきでない形式的な問責のせいで、野党側の手足が縛られたと感じます。菅政権を倒すのが国民の声か、野党か、与党内の動きか?という以上に、外部の混乱が国難として菅政権にプラス寄与するか、マイナスに働くかで、この政権の終わりの形も変わります。その意味では、最後まで自発的な流れで自分の運命さえ決定できない、消極的な形での運営にしかならない、ということでもあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:51|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2010年11月27日

北朝鮮砲撃とゲーム理論

明日から4日間、黄海において米韓軍事演習が行われます。米空母ジョージ・ワシントンが参加、巡洋艦、駆逐艦合わせて6隻、韓国からも6隻程度が参加し、ステルス機も配して北方限界線(NLL)の南、180kmの位置で行われます。中国は自国の排他的経済水域を含む地域での演習に反対、自制を求めている中で、初めて米韓が強行的に実施する点など、様々な影響が考えられます。
北朝鮮が暴発し、全面戦争に陥る懸念は今のところ高くありませんが、北朝鮮から韓国領土、領海に向けての発砲は想定され、米軍がオプションとしてどういう対応をするのか?それによっては、戦線が拡大する可能性があります。今回、民間人への被害に対し、北朝鮮から遺憾の意と同時に人間の盾への非難が、声明として出ました。自分は悪くなく、軍事施設に隣接して一般市民を住まわせた韓国が悪い、という言い分ですが、これは北朝鮮側にも当て嵌まります。仮に戦線が開くと、北朝鮮はあえて一般市民を軍事施設付近に縛りつけ、被害を拡大させる可能性があります。

被害者の映像を繰り返し流す。それが捏造だろうと、これは国際社会や韓国国民に向けたアピールであり、米国を無慈悲な同族殺し、として糾弾し続ける。そのことで韓国国内に動揺を誘い、国際世論を味方につけて、中露を介入し易くさせる。仮に北朝鮮が第2次朝鮮戦争を仕掛けた場合、逆に云えばこれしか勝利する術はない。ベトナムやイラクで陥ったように、近代兵器の戦闘は人間の感情論、それを持たない側への同情を引き出すことで利を得る。これはゲーム理論で云えば、支配戦略を不利な側が握る、という傾向ともよく合致します。つまり圧倒的優位な側が常に勝つのではなく、不利な側が支配戦略を握り、物事の決定権、ゲームの解をもつということです。
ゲーム理論で面白い理屈は、力や圧倒的優位な側にある方が、常に高い利得を得るわけではない、と証明ができることです。北朝鮮が撃てても、米韓は撃てない。それは北朝鮮と米韓との間の支配戦略を、北朝鮮が握っていることによります。支配戦略を瀬戸際外交とすると、なぜ効果的な策を米韓が打てないのか?が見えてきます。つまり北朝鮮は利得が高くるよう、常に行動することができ、逆に米韓は相手の支配戦略に則って、自分たちは損をする取引にも応じざるを得なくなるのです。

ゲーム理論で最も有名な話は、囚人のジレンマです。これを単純化すると「相手が協力したとき、自分は協力しない。相手が協力しないとき、自分も協力しない。2人が協力しないと、2人が協力するより悪い」という理屈ですが、それでも2人の間に協力関係は成立しない、支配戦略は「協力しない」になるという矛盾をさします。これは計算上導け、この矛盾を解決するために契約、協定、罰則などの誓約を課すことでこの矛盾を解決する試みが社会的にはされています。しかし北朝鮮のように、次々にこの誓約が破られる国の場合、囚人のジレンマが機能して膠着するしかなく、弱者の側に有利な形で物事がすすむ、という今の形になってしまうことが示せるのです。
なので、中露が6カ国協議の枠内で解決することを望みますが、ここが機能するためには契約を破った場合の罰則を誰が課すか、が重要です。即ち中国が、北朝鮮が核開発や砲撃を行った場合、貿易停止を含む罰則をかけることを確約させ、それに基づいて6カ国協議なり、話し合いを進める必要があるということになります。2国間協議や、対立軸が2つしかない場合、近代の理論で容易に解決が難しい、ということが推測できる問題です。少なくとも国際社会の利害、得失を論じる立場にある人は、こうしたものを学んでおく必要はあるのかもしれませんね。

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2010年11月26日

司法に関する二つのこと

補正予算が参院で否決され、衆院優先の原則で成立しました。また仙谷官房長官、馬淵国交相の問責決議案も提出されています。ただ問責が随分と軽い感じが否めず、政権の打撃となるとも思えない中、ためにした提出であり、あまり評価はできません。問責は確実に首がとれるとき、満を持して行うべきであり、明らかに盛り上げ不足と北朝鮮砲撃で影を薄くした形です。今後、ほぼ参院の委員会は止まるため、審議は進まずほとんどが廃案か継続審議になります。開店休業状態なら、来月まで会期はあっても早々に国会を閉じた方がムダ削減になる、そんな事態です。

昨日行われた仙台地裁の裁判員裁判、犯行当時18歳代の少年に死刑判決が出ました。広島高裁の光氏事件の差し戻し控訴審でも、少年であることは死刑回避の決定的事情ではない、とした2例目であり、法曹界の『少年』に対する見方と、一般からの見方の乖離が鮮明になった形です。
更生の可能性という話もありますが、少年でなくても反省し、更生できる可能性は残されており、少年だけが特段更生し易いわけではありません。人との出会いが更生のキッカケになるとすれば、後は本人次第、運に左右されることであり、更に人格が捻じ曲がって重大犯罪に至る、というケースと相反です。可能性は、突き詰めれば不確実性であり、少年だからと擁護する姿勢が、どの程度個別の事情を織り込めるのか?という面が今回問われたことになります。

また民主党の小沢元代表に対する政治資金規正法違反事件で、東京第5検察審査会が出した起訴議決に際し、停止を求めた特別抗告で、最高裁は「刑事訴訟の手続きで判断されるべき」として訴えを棄却しました。これは大審院判例がその通りで、例えば事情は若干異なりますが、検察が起訴する際にその起訴を不服として、一々行政訴訟を起こされては日本が裁判だらけになります。逆に云えば、裁判を受ける権利は保証されていても、青天井で認められるわけではない、と最高裁が暗に言っていることになります。これは時間稼ぎでしょうが、そのお陰で大審院判例が得られた、という面は功罪でしょう。
ただ実際の事件に対し、秘書の側の公判前整理手続きは進んでおり、1億円の水谷建設からの献金という面を入れるか、でもめています。本事件は政治資金規正法違反であり、献金の事実は全く関係ありません。仮にそれがあれば別の事件になりますので、むしろ入れてはいけないものです。それでも、検察は面子と正当性を訴えるため、あえて立証事項に入れようとしている。裁判所としても、検察に配慮したくとも首を傾げる内容なので、手を焼いているようです。

この立証事項が外れると、小沢氏が起訴されても事件が単純化され、収支報告書の記載の仕方のみ、事件性が問われます。また小沢氏の支部に旧新生党時代の政治資金、3億7千万円が献金された、という事実が報じられています。ただ何度も云いますが、これは政治資金規正法がザルであり、それを巧みに小沢氏が利用しているだけ。悪質性も何もありません。ザル法である政治資金規正法を改正し、抜け穴を塞がない限り、これを悪質だなどという論調はとれません。立法府にいる者が、ザル法を放置して他者を非難しないよう、自らを律する法律を作れるかが、人を非難する場合には必要になってきます。先の事件とあわせ、法律をよく勉強しておかないと、小沢氏にいつまで経ってもメディアも、政治家も出し抜かれることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:44|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 政治

2010年11月25日

菅政権による北朝鮮砲撃の初動について

北朝鮮砲撃に際し、官邸の対応の不備が指摘されています。内閣危機管理監に情報が入ったのは、砲撃開始から40分以上たった15時20分、危機管理監は16時半に、菅首相は16時40分に官邸入り。この空白の70分が問題視されています。ただこの場合、危機管理として重要なのは対策室の立上げと責任者の優先順位です。危機管理監が間に合わない際、誰が官邸で対策室を取りまとめるか?誰が駆けつけるか、その優先順位を決めていなかったことが、70分の空白を生みます。
菅氏は公邸にいて、繋がっているから良いとしますが、対策室機能はそうした意味ではありません。情報の入力と出力、それを司る統括者の立場に誰もいない。対策室は交通整理の役割であり、携帯電話、メールで情報を受けたとしても、整理できていない情報を各人が受け取ることになります。それが混乱を生み、余計な伝達や懸念により、閣僚から不必要な指令が出る可能性も高くなる。つまり誰が情報を精査し、危機管理の情報の入出力を担うかが出来ていないため、次の危機に際しても対応が後手に回る懸念を生じさせます。総じて菅政権の初動対応は赤点です。

官僚がいる、という話もありますが、事は国防であり、それこそ文民統制が機能していないことになります。情報が勝手に握り潰されていたら?その可能性は、混乱する現場で司令塔がいても起きますが、司令塔がいなければやりたい放題に出来てしまう。70分の意味はそこにあります。
日米韓の連絡体制の不備も、40分の遅れに見られます。当事国であっても現場から情報が得られず混乱しますが、仮に北朝鮮が暴発した場合、日中韓など、周辺国にほぼ同時に攻撃をしかけるでしょう。現状その確率が高くなくても、せめて20分以内に一報は必要です。中距離ミサイルなら着弾している頃ですが、タイミング次第で迎撃できるにはせめて30分を切っておく必要があります。

安全保障会議ではなく、関係閣僚会議であったことも、やや対応に欠けた面があります。当日の状況は一島に砲撃があっただけですが、戦線が拡大するかどうかは、その時点で判明していない。夜半にまぎれてソウルへ攻撃、という事態も想定できました。それ以上に戦線が拡大しない、と判断したのなら、その判断材料を出元を特定する必要はありませんが、開示すべきでしょう。
菅政権は保守色を打ち出し、危機管理にも万全と訴えたいようですが、この対応では落第です。危機管理監を増員するか、首相補佐官などを代理として必ず1人は官邸に駆けつけられる体制作り、まずはそこから始めるべきでしょう。しかも情報を時系列で整理し、関係各所に必要な情報を流す、そうした訓練が必要です。首相や官房長官はその情報で指示が出せるのですから、それが危機管理の第一歩であり、今回は落第したという意味で、今後の改善が必要となります。

中国は自制を、黄海での米空母を使った訓練も刺激しないよう、発言しています。これを受け、例えば中国が先制攻撃を受けた際、自制するのか?南シナ海で軍事力を行使する中国海軍は、周辺諸国を刺激しているのではないか?そうした指摘で中国を追い込み、安保理の制裁決議に中国が反対しないようもちこむ戦略もありますが、果たして菅政権が米韓と連携して、そうした方向性を示せるかも今回の対応の、菅政権の通信簿として評価されることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アジア

2010年11月24日

北朝鮮砲撃における経済的影響

昨日の北朝鮮砲撃で、国会は無風状態に陥りました。外患が大き過ぎて、瑣末的な問題で国会混乱を招くと、野党にも不利との思惑が広がります。自民はこの件で予算委で集中審議を訴えますが、他国間の事例であり、日本政府に入る情報程度で全てを議論するのは難しい。情報の共有化なら何も国会でなくても十分です。審議の意味を履き違えないなら、国会は閉じた方が良いぐらい。それが天佑となり、菅政権は何とか臨時国会を乗り切れそうな雰囲気が出てきました。

経済的な側面で捉えてみます。戦線が拡大した場合、日本経済は一時的に特需の可能性があります。物資以外に、国際的に競合することが増えた日韓の製品、韓国で兵役が増えれば生産力が落ちますから、日本の輸出には好影響です。本格的な戦闘に陥ると、散発的には日本の被害も想定されるので、株価的に当面は買い難い面もありますが、日本の景気そのものは回復基調を辿る可能性が出てきます。北朝鮮が第三国を攻撃する可能性は現時点でほぼなく、日本はいいとこ取りの公算が高まります。ただこの場合、世界経済がリスクマネーをとれなくなると、株価のみならず消費減退を招く可能性もあるので、この点との綱引きでみる必要はあります。
為替が円高になりましたが、円を売って株高を演出してきた層が円買いを余儀なくされた点と、最大はアイルランド(Eire)問題の不透明感です。EU、ECB、IMFの支援が決まっても、Eireの来年度予算が決まっても、総選挙で与党が負けた場合は約束が履行されず、支援が滞る恐れがある。そうなれば、Eireに投資する投資家に損害が及ぶ。これが負の連鎖を想起させ、英独などEire国債の保有比率が高い金融機関株が売られ、ユーロ下落の流れが起きました。

世界経済の流れは、朝鮮半島有事のリスクを完全に織り込めていない、それが今日の流れです。リスクマネーの巻き戻しなら債先買が起きますが、それも起きませんでした。世界的な株安は、高値にあった株価の良い調整程度の下落幅で済んでいます。戦闘拡大はない、早期に終息する、という見立てが支配する。逆にこれは超楽観相場であり、下落準備局面だと知らせてくれます。
世界は米QE2以来金余りであり、リスクを正しく判断できない。Eire問題も解決可能と見ていますが、投資家保護の国際的な流れと、ギリシャ支援による厳しい財政健全化による国民生活への打撃、経済規模の縮小を見て、Eire国民がそれを望まない場合は国際的な思惑を無視し、Eireは破綻の道を択ぶでしょう。これは投資家がリスクを負わない、リスク管理の崩壊を意味しています。

リスクが現実化したとき、リスクを織り込めていない市場は意外と脆く下落します。米QE2による資金流入も、4月を跨ぐ頃までに更なる追加がなければ、シュリンクの恐れを感じるでしょう。民間人を巻き込む戦闘行為ですら、戦争発展という事態を意識しない。政治の慌てぶりと、金融市場の楽観と、どちらが正しいかは今後判明します。企業ですらリスクに怯えるか、問題ないとして生産計画を維持するか、判断は別れますが、グリーンスパン前FRB議長が地政学リスク、という言葉を使い始めたときは、すでにバブルの入り口にあった点はよくよく意識しておくべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:32|PermalinkComments(7)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アジア

2010年11月23日

北朝鮮による延坪島への砲撃

北朝鮮が陸上から韓国の延坪島に砲撃をかけました。米韓軍事演習に対し、報復としての動きであり、民間人を巻き込んで休戦協定まで破る暴挙です。一般的に報じられていることの他に、今回は東アジアにおける領土を巡る動きも北朝鮮の思惑に含まれます。北方限界線(NLL)は国連主導で引かれた海の境界ですが、北朝鮮は認めておらず、ここに領土、領海問題があります。北方領土、竹島、日本の領土に対して実効支配を強める国。尖閣諸島に頻繁に船を出す中国。北朝鮮もこのタイミングで韓国との領土、領海紛争を内外に知らしめることはある意味、国策に叶う動きともなります。

軍部の暴走ともされますが、それにしては早い声明が北朝鮮から出ています。暴走部分は民間人への攻撃、と見ることも可能ですが、相対的にこの動きは上層部の了解済みと見る方が良いのでしょう。金正恩氏の指示で米韓に痛烈な打撃を与えた、軍部の統制にはカリスマ的な実績が必要であり、先の潜水艦撃沈では正恩氏の実績にはならないため、ここで動いてきたと見るべきです。
ロシアが非難の動きを見せたことで、当面は中国の対応に注目が集まります。各国が先の領土、領海問題に波及すると、ロシアや韓国も都合が悪い。当然、中国は最大に影響を受けます。東アジアできちんと領土、領海問題を解決する流れが国際的に強まると、困るのは中露韓です。歴史的に見て、捏造や歪曲が明らかになるため、実効支配を強めてその内国際合意を得る、という戦略が崩れるためです。逆に日本がこの流れに乗り、日本の領土確定に動ける戦略もあります。中国も大事にしたくない側面はありますが、それを決するのは米国の動きにかかります。

米国はアフガンが決着するまで動き難いですが、オバマ政権の弱腰に非難が集まる恐れがあり、強く出ざるを得ない情勢です。核開発問題を巡り、米中でも6カ国協議の枠組みを確認して終わり、という思惑を打ち砕かれました。民間人に被害が及んでおり、テロ支援国以上の対応が必要。議会にある中国への強硬路線を受け、北朝鮮に物資を提供している中国への報復措置、まで議論される可能性があります。即ち国連安保理における北朝鮮の非難決議、制裁措置発動に同意せよ、と迫る狙いです。ロシアを取り込めば中国一国が浮き上がり、合意も得易くなります。
韓国も今後は支援が難しい。太陽政策以後の融和路線派も、この動きで勢いが弱まります。民間人への被害により、韓国世論も変わるでしょう。また北朝鮮に支援する中国との関係見直しも、米国の流れ次第では出てきます。ビジネスライクに捉えても、感情論を覆すことはできません。

日本は政府見解を発表し、北朝鮮を非難、韓国を支持、米韓との緊密連携を打ち出しました。今の今、ということではありませんが、ロシアの動きを睨んで領土、領海を確定する動きを国際社会に訴えることが出来ます。ただこれにはリスクもあり、実効支配と歴史的経緯と、どちらが国際裁判で重視されるかは読めません。そしてもう一つの不安が今は菅政権ということであり、世論の支持がないと領土確定は難しいということです。北朝鮮が今後も強硬路線をとるか?その見極めも必要ですが、情報収集に努めても最終判断であまり良い結果を導けない菅政権、この難局を逆に吉とできる戦略をとれるかは、今のところやや懐疑的に見ておくべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:21|PermalinkComments(10)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アジア

2010年11月22日

柳田法相の辞任

柳田法相が辞任し、仙谷官房長官が兼務という形です。事実上の更迭、ただ21日に続投宣言を行う辺りから、菅首相による『更迭』シナリオが動き出したともされます。輿石銘柄で罷免できない上、辞職となれば指導力不足が問われる。菅氏が自分の意志で更迭したとの演出が、一連の顛末だという憶測も流れます。ただどちらにしろ、野党と骨を折って調整する人間がいない菅政権では、野党が思惑外の行動をとるとそこで立ち行かなくなり、地団駄を踏みます。

同時に尖閣衝突の44分映像を参院に提出し、法相辞任と合わせて公明は補正予算成立に同意する意向です。自民は仙谷氏の首をとれば、一気に世論が味方に付くとして攻勢をかけますが、これが今の野党の弱さ。共産も補正予算を質にとるのに同意せず、みんなの党は仙谷氏、馬淵国交相の問責を参院に補正予算前の提出を目論見ますが、逆に突出のしすぎの面があります。最大野党の自民が野党内の意志を統一し切れないため、責めに迫力が欠けてしまいます。
一部の世論調査で、政党支持率で自民が民主と逆転。しかし自民が第1党になっても、連立も難しいことがこの動きで分かります。民主との比較で見て、自民が魅力的に映っても自民と袂を別った政治家が、今の野党に多い中で野党内の連立が難しい。昔と比べ、仇敵に頭を垂れても連立を組む、というほどの調整能力がある政治家もいない。統一地方選まで動き難い、という与野党の思惑がある中、柳田法相の首切りで当面、菅政権は4月までの小康が得られそうな動きです。

噂されてきた菅氏の乾坤一擲の策、電撃訪朝もウラン濃縮装置2千基の報道で難しくなりました。仮に拉致問題解決に端緒をつけても、この時北朝鮮に見返りで支援などを出せば、国際的な信用を失います。新たな枠組み、対北朝鮮政策が決まるまで動けない。拉致担当相が浮いた形となった今回の法相辞任劇、外交上の政権浮揚策まで、封印されたことになったのでしょう。
政局面では、今後も公明の取込みに与野党が躍起になると想定されます。小沢氏の証人喚問カードを封印しても、補正予算成立に傾いたのは、小沢氏を巡る政界再編まで睨むと見られます。仙谷氏を追い込み、菅政権崩壊は統一地方選の勝利を目指す公明にとっても不利と見られ、それが過ぎると連立政権に合流する可能性すら、想定しておく必要がある。公明の支持母体、創価学会がゴタゴタする中、政界の立ち位置を保つ戦略を強かに練っている面が否めません。しかしこの公明の動き、どっちつかずでフラフラしていると、日本人は意外と優柔不断さを嫌悪する面があります。この態度が通用するのはもって半年であり、その頃には決断も出るのでしょう。

ただ仮に総選挙があっても、3年後まで参院第1党が民主であることに、何の変わりもありません。自民が衆院選で勝ってもネジレ、この構図が崩れず、今の自民のように委員会開催の連絡すら着信拒否する野党戦術を各党が行うと、日本の国会は何も決められない停滞が続くだけになります。民主の自爆に近い形で自民も支持を伸ばしますが、結果的にどの党も消極的支持に留まるようなこの国の政治は、どこか歪だといわざるをえないのでしょうね。

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2010年11月21日

雑感。菅政権と虫の世界

柳田法相が21日、続投の意向を示しました。しかし週明け、衆院で不信任案が、参院で問責決議案が提出され、参院では可決の見通しです。輿石銘柄とされ、菅首相には辞任を迫る力がないともされますが、続ければ続けるほど矢面に立たされ、支持率低下に力を貸す、という立場になります。いずれ見切りも必要ですが、その決断を誰が下すのかは要注目です。
ただ国会議員やメディアが「国会軽視」と批判しても、漠然としており、問責を出される理由が伝わり難いでしょう。国会は議論の場、その議論を否定する態度をとったとしても、これまでも国会を愚弄する答弁は何度もありました。個人的には、国会を軽視する官僚と同じ目線に立ったこと、が問題と考えます。官僚答弁は国会を乗り切る秘策ですが、重要事項を明かさず、当たり障りのない内容に終始する。それを明言したことで、この人物は信用を失ったのです。

今日は少し気を抜いて、菅政権の閣僚を昆虫に例えてみます。奇しくも菅首相と仙谷官房長官は、二人ともカマキリです。ただ菅氏は頭部が食べられても、必死で交尾だけは成立させようとするオスカマキリ。司令塔を失っても、子孫を残すことだけが目的で動いているようです。一方で仙谷氏は誰彼構わず斧を振り上げる、蟷螂の斧という意味でのカマキリとなります。
カマキリは腹を摘まれていても、目の前に虫を差し出すと食いつきます。消費税増税やTPPという目の前のニンジンに食いつくも、腹を掴まれていて身動きできない。また生殖器官などからも、バッタよりゴキブリと近縁ともされ、全力疾走はかなり早い。カマキリは共食いもしますが、民主党の他の議員を道連れに自ら封印した解散をすれば、その時は共倒れになるかもしれません。

前原外相はセミ。鳴いて居場所を知らせますが、それを騒音と感じる人もいます。しかも鳴くのはパートナーがいないからです。政権の中で一人、いつまでも鳴き続けています。セミは幼虫から成虫へ、華麗に脱皮した後の人生は短い。鳴くことで人に見つかり易くなり、成虫でいられる賞味期限が短くなると、念願の首相への道が閉ざされることになるのでしょう。
柳田法相はコオロギです。意外にキレイな声で鳴きますが、黒っぽい外観はあまり好感されません。しかも秋の夜長に、物悲しさを感じさせる泣き声は、それが聞こえると一年の終盤を感じる。一時代の終わりを告げるように…。それが菅政権の終わりを感じさせるかは、むしろ今後の態度次第であり、新たな年を迎えられるかも菅政権の態度にかかってきます。

日本ではフユシャクが飛び始めると、ほとんどの虫が死ぬか、冬眠する時期に入ります。フユシャクは幼虫が尺取虫として知られ、蛹となって夏眠をし、冬に成虫となる虫です。摂氏零度以上でも成虫が生きていける特殊な虫であり、オスしか蛾として飛ばない。幼虫時代は曲がっていて、成虫になっても特殊な生活をします。曲がっていて特殊、これが誰を暗示するかは示しませんが、今のこの虫に冬を乗り切る知恵があるとは見えません。このまま政権が突き進むと、冬眠もできずに命運が尽きることになりかねないのでしょうね。

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2010年11月20日

経済の話。1万円を回復した日経平均

日経平均が1万円を回復してきました。欧州系証券が、来年3月末まで日経平均11000円よそうを立て、それに基づき債先売/株先買を仕掛ける。株式先物が上がるので、機関投資家から反対売買として株先売/現物買となる、という循環で一気高です。米QE2を受けた金余り、新興国の金融引き締めで逃避的な資金の流入、という風評も流れますが、その割りに売買は盛り上がりません。実態なき株高、それが現在の1万円を回復した日本の株式市場の、真の姿です。

米国では11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数が+22.5、予想を大きく上回りましたが、15日発表された11月NY連銀製造業業況指数は-11.14であり、地域差があるにしろ、これは極めて異常な経済指標のバラつきです。これはフィリー指数が発表された日が、米政府にとって大事な日、つまりGM再上場の日を祝う必要があり、経済指標を弄ってきた可能性が指摘できます。
GMの公募価格が33$、初値35$であり、米政府が再上場を成功させたと喧伝するには、この辺りの価格を維持する必要があります。逆に云えば、33$を下回ると政府の責任論に波及し、NY市場もムードが悪くなる。必死でそれを食い止める、買い手もそうした意志の下でGMの株価を保っている気配があります。しかし公募価格を高く設定し、発行株式も1億株も増やした。上昇余地も少なく、カナダ政府が持分を放出したように、GM株は再び米国の厄介者となる可能性が高いものです。

欧米、新興国の株式市場は高値圏、調整が必要な局面の中で日本株だけが操縦し易かった、それが1万円奪還の真相でしょう。この動きを受け、早くも年末12千円や年度末でその水準などの予想も出ますが、信憑性がありません。業績が良くても、欧州財政不安や新興国バブル、超過剰流動性に対して、人類は適切な答えを出し続ける必要があります。その不安がある限り、投機的マネーが株価を上下動させるだけで、思惑が一旦は高値をとらせる可能性があっても、急落準備相場にしかならないのでしょう。
今の欧州系の動き、そう長くは続きません。商品投資は比較的、息の長い投資基準をもちますが、1万円より上値を追う力は弱く、19日は債先が買われて伸び悩むなど、この水準から債券利回りが上がると、本格的なインフレ懸念、利回り上昇による景気下押し効果が意識されます。

債券バブルが崩壊するとき、その初期には必ず株式が上昇します。それは資金の流れがそう動くからですが、今回がそれに当たるのか?更に先があるのか?で、今後の読み方は変わります。私は更に先があると読みますが、それは本格的なインフレ懸念が台頭したときであり、日本の債券市場の下値も限られてくる、という点でこれは一時的な動きにしかならないのでしょう。
目先は10500円を目処に、早ければ来週には終息します。しなければ逆に、急落準備相場として意識されなければならないのでしょう。200日移動平均、1万円乗せ、というイベントに体力を使い過ぎた投機マネー。実需買いが進めば良いですが、それほど日本の景気指標は良くありません。やや円安となり、下期に期待が膨らむかもしれませんが、消費減速傾向も見え隠れしており、政府支援による過剰消費に一巡感が出ると、企業も苦しくなると同時に、株価も伸び悩むことになるのでしょうね。

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2010年11月19日

雑感、介護保険の制度改革について

厚労省の社会保障審議会が、2012年度の介護保険制度改革の原案を示しました。年収が320万円以上ある人の利用者負担を1割から2割、全国平均4160円の保険料を5200円程度に上昇させる見込みで、特養老人ホームの入居者からも、一定の収入がある人は5千円を徴収することを求めます。
増えた負担は自然増やサービス拡充、介護職員の処遇改善に使われます。ただ介護計画作成に費用負担を求める案など、総じて使い難さが増す点が、今回の原案には含まれます。保険料も4800円に抑える意向ですが、使いやすい制度設計にして、それに見合う利用負担を求め、払いが難しい人に緩和措置を求めるなら良いですが、それ以外の方策をとると制度の膿をためるだけです。

全体の介護保険の総費用は8兆円弱、10年前から2倍近くに膨らみ、12年度は8兆円を超える見込みです。負担は国と地方が半分、40歳以上の保険料が半分です。国は調整金を含めても全体の25%しか支出せず、そこが制度全体の設計を行い、増える費用負担を調整していることになります。国の財政負担が大変、と云っても利用者含めて国民負担の方が高い、というのが現実です。
国の制度なので、相互扶助が原則なのですが、介護は必ずしも受けるかどうか分からない、という側面があります。90歳まで元気で、そのまま亡くなる人はほとんど必要としない。つまり年金とも違う制度です。必ず受けとれる確証がないと高額負担は重く、一方で利用者負担を増やせば使いにくい制度となる。これはそうした狭間の中にある制度、ということになります。

そのため、増える負担に備える財源として消費税増税が必ず浮上します。しかしいつ介護を受けるか分からない、そのための保険としても月5000円は上限に近い。制度的には疲労寸前と言えるものです。菅首相は介護分野などへの就労により、雇用環境を改善するとしますが、今の社保審が雇用を増やすほど、制度整備に積極的とは思えません。むしろ増える負担をどうやりくりするか、で汲々としており、消費税議論が封印されると打つ手なし、が現状です。
子ども手当てに所得制限をかける、手当てでも課税対象にする、など歳出と歳入に関して、最近政府内からの発言も増えますが、基本線が抑えきれないので、菅政権では議論がぶれることになります。子ども手当てが少子化対策なら、日本国籍をもつ子どもに限定すべきです。子どもを社会で育てる、という理念なら所得制限を課すべきではありませんし、課税対象も問題があります。この辺りの方針でぶれているため、制度全体がおかしな議論で時間をとられます。
菅政権で、2012年の議論ができるか?という問題はありますが、介護全体の制度を議論しなければ、いずれ抜本対策も打てずに年金と同じように、負担者が減ることになります。雇用対策ならば税金投入を拡充してでも、注力すべきですが、それが政権の方針ともなっていません。今のように短命政権が続くようであれば、結果的に制度全体の見直しにも具体案がつくり難い。政治の停滞は、直接の制度設計にも影響することとなり、日本に悪影響であることは間違いないのでしょうね。

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2010年11月18日

菅政権の舌禍

菅政権が舌禍に見舞われていますが、この程度は組閣段階から分かっていました。おや?と思うような陣容で、専門性もない、逆に当該省庁とは反対の態度をとってきた人物までいる。政治主導でこの閣僚配置は有り得ない、そう感じる部分があったからです。いわゆる仙谷メモで自分と意見が合う、醜聞がなさそう、自分たちに忠実で穏健派の議員年数が長い人で、かつ官僚とは対立しない人物。これが菅政権で任命された閣僚の選考基準だったのです。

まずは柳田法相、法務官僚から分からなければこの2つだけ云えばいい、と言われたことをそっくり就任祝いの席で話しました。閣僚就任で浮かれ、つい口が滑ったのでしょう。歴代法相も当然云われていますが、言葉にすれば自身の態度、心情の中に国会軽視がある、と認めることになります。これは官僚が国会軽視することを、閣僚も同じレベルで語った、という意味で深刻です。
防衛省が自衛隊主催、もしくは関連行事に参加する人間に、政治的行為をしていると誤解される行為、誤解を招く恐れがあれば参加見送り、との通達を出しました。これが自衛官なら政治介入は許されず、当然なのですが、最大の懸念は防衛省が民間人の思想・信条を事前調査する行為です。自衛隊を軍と認めれば、政治との切り離しのための集会禁止や、軍事機密の漏洩を防止するために第三者への調査も、ある程度是認される部分があります。一方で自衛隊をあくまで軍として認めず、1佐、2佐などの階級用語を使っており、民間交流も広報活動として認めてきた経緯があります。

そんな中、仙谷官房長官が自衛隊を「暴力装置」と呼び、「法律上の用語」として適さないので撤回、謝罪すると述べています。法律上?としたのは自衛隊を違憲、合憲とした際の法廷闘争か?単に小難しい言葉で煙に巻こうとしたのか?かつての左派政党による批判の言葉であったことは間違いありませんが、いずれにしろ現在の統括者が使うべき言葉でもありません。これは文民統制という以上に、統制力を現政権が示せない可能性を示してしまいました。
かつて、仙谷氏は次期首相候補にも挙げられましたが、今は世論が許しません。スーツの裏地が赤かったのは笑い話にもなりませんが、媚中外交と左派丸出しの今回の答弁、さらに任命権者は菅首相ですが、閣僚選考には仙谷氏の意向が反映されたことが明白です。また尖閣映像の問題も、流出させた海保職員の逮捕を強硬に主張、一方で検察はソッポを向いて逮捕もしません。

政権が逮捕を強要するのは、基本的な政治不介入の原則に反し、仙谷氏が前のめりになればなるほど、逮捕し難くなるという矛盾を抱えます。その程度の情勢判断ができない、これが官房長官として致命的との指摘が可能です。菅‐仙谷ラインを合わせて監獄ライン、ここが自縄自縛となれば、元々実力者がいない菅政権は身動きがとれなくなるでしょう。発足2ヶ月で支持率低下、下落幅も大きく最速に近いものもありますが、仙谷官房長官の首を切る決断をする以外、菅氏が首相を続けられる道はなくなってきているのでしょうね。

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2010年11月17日

欧州債券市場に不安が再び

英王室でウィリアム王子と民間人ケイト・ミドルトンさんの結婚が伝わります。大学の授業料引き上げ、公務員削減、大幅な緊縮財政策を打ち出し、経済が荒れる英国ですが、7-9月期GDPは前期比0.8%増。低いながら経済成長は達成している形です。一方で4年間で830億£の歳出削減を謳うのは、好景気時に膨らんだ歳出が財政面で重い負担となっているためです。

英国の隣、アイルランド(Eire)はもっと深刻です。ユーロ圏財務省会合でEU、ECB、IMFによる金融支援枠の使用の是非、の検討に入りました。Eireは不動産価格の上昇、甘い融資などで銀行が不良債権を抱え、その救済のため財政赤字がGDP比で32%に膨らみます。Eire政府は半年程度の財政上の余裕はあるとしますが、金融救済に切り替えるのか、政府自体を救うのか、など金額やオプションを含めてEU、国際機関が対外的に不安を払拭する動きを見せます。これはPIIGSの他の諸国、財政不安がポルトガル(葡国)に波及し始めたことを意味しています。
葡国の財政赤字は然程大きくありません。来年度予算でGDP比4.6%に抑える、としていますが、葡国にとって深刻なのは民間債務。逆試算効果や安易に借り入れた債務の返済のために税収が伸びず、財政を健全化する必要に迫られます。ギリシャは09年財政赤字を13.6%から15%強へと見直し、この三国の債券利回りは上昇、借り入れコストの増大により深刻さが増します。この三国に共通して云えること、それは国内で債券が捌けず、外国からの投資により債券市場を動き、国内で価格調整能力をもたないことです。ここが日本との差、債券市場の動揺に繋がります。

米国でもQE2を受け、10年債が3%に近づいてきました。これは6千億$が中短期債中心であり、FRBが出口戦略を重視したため、長期債に売り圧力が強まっていることが上げられます。インフレ圧力、債券バブルの巻戻し、30年債が不調だったように、米国の長めの資金は敬遠される。これは不動産ローンなどに影響し、横ばい傾向の住宅価格に再び下落圧力がかかるかもしれません。
米国ではGMが再上場の話も浮上します。発効株式は5億弱、40億$の優先株とあわせて230億$程度を調達する見込みです。しかし一言断じれば買わない方が良い証券です。各国の景気刺激と新興国需要で盛り返しましたが、業態に変化なく、多額の年金支給に目処も立たない。世界経済が調整局面入りすると、再び上場廃止の恐れすらある。財政赤字を削減したい米政府と、上場企業としてのステイタスを取り戻したいGM、しかし先行き楽観は許されない内容なのです。

日本の債券市場も連れ安、利回りが上昇傾向です。これは債先売/株先買の流れと同時に、債券市場に新たなインフレという圧力が加わっていることを意味します。日米が陥った追加の量的緩和を、債券市場がインフレという形で織り込む。むしろ当然の動きであり、日米とも金利を更に低下させることを中央銀行が意図しても、政策効果は得られないことが鮮明になった形です。
米国も国内だけで債券市場を調整できない国。米政府は10年後に財政赤字がGDP比100%と試算しますが、IMFは5年後、民間試算では3年後とも言われており、そうなれば米国のギリシャ化が進みます。債券の流れが世界経済の意志とするなら、欧州発の不安は世界共通の内容であり、後の大変動の予兆ともとれます。ここ数日の欧州系の動きには注意しておいた方が良いのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2010年11月16日

雑感。菅政権とはやぶさ

小惑星探査機はやぶさが持ち帰ったカプセル、中にイトカワ由来の微粒子が発見、と伝わります。アポロ計画で持ち帰った月の石、地球と全く組成が同じだったことからジャイアント・インパクト、即ち地球から月が分裂した説が現在まで優勢です。イトカワの微粒子は、こうした内容さえ覆す可能性があります。1500個の微粒子、これは夢の膨らむ小さな粒です。
女子バレーが32年ぶりに銅メダル、など嬉しい記事もスポーツ界では幾つかありますが、政治の世界はそれと逆の記事ばかりです。事業仕分け第三弾、仕分け結果を反映していない112の事業を対象とし、4日間行われます。しかし今回は政務三役から批判の声が沸き上がります。これまでは予算にしろ、仕組みにしろ自民党時代、と割り切っていましたが、来年度予算は政務三役が携わって作った。いわば自分が否定されたような形になり、反発を強めています。

こうした抵抗勢力の動きが強まると、民主党の賞味期限が短くなり、民主党そのものが仕分けされます。法的拘束力がないことを盾に、国民の注目度が高い事業仕分けすら否定する。菅政権ではあまり語られない、負の部分の一側面をこれは表します。民主党が衆院選で掲げたマニフェスト、この中身の多くはかつてメディアが騒ぎ、政権批判として展開したものが多い。八ツ場ダムも、無駄な道路建設も、天下りも全てそうであり、票に繋がる政策として掲げられたのです。
一面では大衆迎合型ですが、国民感応度の高さが民主党のウリだったのです。しかし菅政権は世論の風を読もうとしない。自分が…ばかりで国民に説明もしない。APECを初めとする外交も、自分たちが考える成功と、国民が意識する成果は全く違う。そこに乖離があり、支持率低下を招く原因ですが、まさにそれを強い政権の態度とずっと誤解し続けたまま半年が過ぎています。

八ツ場ダムに象徴的ですが、工業用水利用の効果も低く、また地割れ、地滑りなどが懸念される当地にダムを作ることは最早ムダです。しかし地元民の反発を盾に、メディアはこぞって政権批判の材料とする。その度に態度を曖昧にしていては、重要事項決定に何の判断材料もないことになります。これは試算、分析が甘く正当性を訴えきれない、官僚的態度が影響しています。
公務員人件費削減も、議員歳費削減も先送り。天下りに至っては現役出向を可能とするなど、改革も交代どころか改悪です。これも官僚の声を聞き、国民の声を聞かない菅政権の弱点です。枝野幹事長代理が「政権与党は大変、政治主導は難しい」発言をしていますが、それは官僚の意見、説明を聞くからそうなるのであり、上意下達の命令系統と、時に応じてチェックする機能さえ持てば、然程難しいことではありません。むしろそういう手腕がないと自ら認めたことになります。

菅政権が失敗すると、小沢待望論が民主党内に湧いてきます。小沢氏への期待とは、端的に云えば世論感応度の高い点であり、彼がマニフェストに盛り込んだ内容は、当時の票取りに有効だったことです。菅政権が官僚主導型に軸足を置いたのはほぼ間違いありません。それもまた世論とは乖離した動きです。民主党国会議員400人強、既存の仕組みを覆して新しい制度を築く、という政権交代当時に描いた国民の夢を壊し続けると、やがて月の石と同じように無価値とされることになるのでしょうね。

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2010年11月15日

7−9月期GDPについて

内閣府が発表した2010年7-9月期GDP、実質で前期比0.9%増、年率換算3.9%増となりました。この内個人消費が1.1%増と、前期の0.1%増から大幅な伸びとなり、この中でもエコカーやエコポイントで耐久財が11.1%と高い伸びを示しました。ただ輸出は前期の5.6%増から2.4%増へと鈍化し、中国の景気引き締めによるアジア向けと、円高の影響を受けているようです。ただ輸入も4.0%増から2.7%増と、国内の景気動向は全般に低調気味。GDPデフレーターも前年同期比2.0%低下するなど、デフレ傾向にも歯止めがかかっていません。予想より良い数字でしたが、中身はかなり深刻です。
景気対策効果が剥落し、タバコなどの駆け込み需要も先食いした。欧米でも半導体関連に在庫の積み上がり、調整を示唆する内容が見えており、新興国での引き締め効果もそろそろ出てきます。経済的に見ると、ここから来年に一旦ヤマ場を迎えそうな気配であり、7-9月期が良いと10-12月期には高いハードルとなる。日本の景気対策効果が同時に切れることからも、ここからの景気予測はより慎重に見ていく必要があります。日本はこれから冬、天気予報からも西高東低になりますが、西の中国と東の米国、この景気面の西高東低の変化にも気を配る必要があります。

東の米国では、QE2に対してエコノミストらが批判を展開。これが追加の追加、QE3の予想を打ち消し、ドルがやや値を戻す展開です。米国経済はまだら模様、個人消費は堅調ですが、これは年末商戦に向けて在庫を積み増した小売が、早めの値下げに踏み切った結果も含まれます。つまり本来はもっと景気回復する、と見ていた企業判断が誤りであり、今後はこの低成長下における在庫と小売と値下げは、トータルとしてデフレに陥るかどうか、という点に関心が向かいます。FRBはデフレ包囲網を布き、QE2を打ち出しましたが、本当に効果が低いと検証された際には打つ手をなくします。
西の中国は一面、好調で7-9月期GDPも日本を抜き、2四半期連続で日中逆転です。ただ上海のマンションで火災、など豊かになった住民が安全、安心を訴える傾向が増えてきます。環境対策も高コスト、このインフレ傾向と賃金上昇カーブが合致せず、中国国内の格差の影響が、今後どの程度になるかが問題であり、それが弾ければバブルが終焉する懸念を生じてきます。

日本のGDPでも迂回的に、米QE2、中国不動産バブルの影響が及んでおり、住宅投資は1.3%増です。しかし低金利で日本の需要が増えているわけではなく、J-REITや直接投資を狙う外国勢が買っている印象であり、逆に見れば不動産バブルの波及です。この流れが終息すると、危険な逆資産効果により日本の経済が今の段階から、更にシュリンクする傾向が続くのでしょう。
日本市場は債先売/株先買で株式は堅調、債券は利回り上昇、為替は米国の都合でやや円安といった感じです。9813円をつけた11月SQも、欧米のヘッジファンドが年末に向けた45日ルールで、売っていた向きを買い直したことと、SQに絡み1万のオプションを狙ったことで急騰を演じました。米国のQE2が流れ込む、という予想は誤りであり、むしろ日本市場は短期の投機的な流れで右往左往する展開が、より強く反映されるのでしょう。何より政治の基盤安定がなく、景気対策や財政健全化に道筋も見えない。どちらに向かうか、ハッキリしない国はいずれ大きな流れに巻き込まれます。補正予算の衆院成立がずれ込みますが、欧州型財政再建か、米国型景気対策か、10-12月期のGDPが出てくる頃には、来年度予算に向けてその態度を示す必要が出てくるのでしょうね。

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2010年11月14日

APEC閉幕、菅政権の外交

アジア太平洋経済協力会議(APEC)が閉幕しました。ホスト国の首相が望んだ相手との会談が出来ない、という屈辱は免れましたが、議論は停滞気味です。まず22分間の急遽行われた日中首脳会談。日本は会談としていますが、中国国内では会話と報道されるものもあります。一方で、中国側からは外相会談も開くよう提案があり、35分間の外相会談も開催されています。
事務方の調整がない、こうした緊急会談の場合は議論ではなく、他愛もない会話にしかなりません。今回、盛んに「日本の立場を伝えた」と喧伝されますが、所謂云いっ放しで終わった、ということになります。しかも双方が問題ないレベルの公式発表に留まる、という合意つきです。

日露会談も行われましたが、事務方の調整も進まず、折合いがつかない内に会談が行われた気配です。余計な北方領土の問題は多くを語らず、外交関係を前進させる。これでは従来の棚上げ、実効支配されたまま時間経過だけを許す、最悪の展開となります。来年の菅首相の訪ロを打診されたようですが、これもロシア側で会談を行い、強硬路線の空気に直にふれさせ、今の弱腰な菅政権に相応の妥協をさせよう、というロシア側の狙いです。北方領土問題は双方の国内情勢で難しいですが、ロシアが狙う経済協力を推し進める算段がすでにあるのでしょう。今回、ロシア側は経済団体を連れて来ておらず、改めてロシア側で行いたい、ということです。
一連の動きを通じ、菅政権は日米同盟強化に舵を切ったと云われます。中露との領土問題を受け、頼るべきは日米同盟とも。ただこの見方は少し異なるのでしょう。中国の強硬路線に困り果て、何としても対中貿易赤字を解消したいオバマ政権が、親中路線を脱し、日本に目を向け始めた。なので日本の出る幕を得ましたが、つまるところこれは『合従連衡』の策を、日米が選択したことになります。これが日米同盟強化の意味であり、外圧がそうさせたに過ぎません。

しかも思いやり予算増額提案も否定し、一面菅政権にすり寄るのも、ここで菅政権が潰れると再び日本の舵取りを誰がするのか?その度に戦略を変えねばならない。米国にとっても、菅政権が配慮する限りは政権延命に手を貸す、という米側の魂胆が透けて見えるのです。
残念ながら、今回のAPECで日本が得られたことは何もありません。悪化した中露との関係改善、とも言われますが、問題の先送りと領土問題を放っておいても手を結ぼうという、政治的決着にはそれ以上の何の成果も見出せない。菅政権はAPEC成功を願いましたが、成功を導くには妥協を繰り返すしかなかった、それが鮮明になった形なのでしょう。
週明け、衆院で通過予定の補正予算を含め、菅政権は外交成果もない今回のAPECで、更に野党からの追求の手に晒されます。同じ中国の言葉で『辺幅を修飾す』というものがあります。ヘリを飾り立てる、虚飾という意味ですが、中露との会談で一先ず領土問題を主張した、というばかりでは、菅政権が窮地に陥ることは自明であり、乾坤一擲の何らかの手を打たない限り、支持率は更に落ちるのでしょう。電撃訪朝なども語られますが、小泉氏の二番煎じではより大きな成果を必要とします。今回のAPECで益々追い詰められることになった、菅政権への打撃は深刻なのでしょうね。

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2010年11月13日

アイルランド問題について

G20が閉幕し、経常収支の問題については2011の上半期までに、IMFと財務相会合において具体策をまとめる、と決まりました。声明には盛り込まれませんでしたが、オバマ大統領は中国の人民元について、「貿易相手国にとっていらだたしい」と述べるなど、強い調子で迫っています。

ドイツのメルケル首相が公然と米QE2を批判。ドイツは先にアイルランド問題で、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)による関し、無条件の救済に難色を示し、ヘアカットの可能性を示して物議を醸しました。つまり民間投資家にも損失が及ぶ可能性があり、これが債券相場において、アイルランドを初めとするPIIGSへの国債売り、債券利回りの上昇を生む原因となっています。
アイルランド財務相はEFSFによる支援を否定しますが、積極的に財政赤字を削減する案が出ない、という点で不安を助長しています。これは、アイルランドの国民が諸外国の投資資金が大量に流入したことで、経済が破綻したとの認識があり、債務再編をしても出直したい、との意識が根強いためです。増税、歳出減による国民負担を強いられるぐらいなら…このため政権与党も、野党も財政赤字削減案を国民に提示できない、政治が世論を意識し、機能不全を起こしているのです。一方でメルケル首相も、安易にドイツ国民の税金を債務再編に使われてはたまらない、世論を意識し、国際的には問題があると分かっていながら、アイルランドへの無条件救済には後ろ向きになります。これが世界のもう一つの保護主義に当たります。

ドイツはユーロ安誘導をしたくて、わざと欧州不安を煽るとの陰口も叩かれますが、ドイツも政情は決して安定しておらず、欧州の安定どころではありません。ギリシャ支援でも渋ったように、PIIGSの2カ国目の破綻となるかどうか、その程度でさえ統一した意思を持てない、それが通貨圏としてのEUです。今回は5カ国の声明で、民間投資家に損失は及ばない、との声明を出して安定化に努めますが、欧州不安は新たな保護主義政策により、問題がさらに深刻化しそうな気配です。
一つ問題が解決しても、すぐに次の問題が浮上する。どの段階で止まるか、先行きは不透明です。ギリシャの昨年の財政赤字も13.6%から15.5%へと拡大、1100億ユーロの支援を拡大するか、更なる緊縮財政で乗り切るしかありません。再びギリシャでデモが頻発するか、この国民負担との舵取りに失敗すれば、ギリシャは政争の中で混乱を招くことになるのでしょう。

アイルランドの財政赤字も、精査が必要ではないのか?結果的に、こうした不安が続く限り、欧州に安定はありません。日本はユーロ安、円高と好ましくない反応に襲われますが、むしろG20でも存在感を示せず、政治が弱体化しても経済が期待される国として、今後も世界の波に襲われそうです。欧州安定化に日本の資金援助が期待されない点は良いのですが、欧州の流れに巻き込まれることが確実なだけに、世界の流れには警戒しておいた方がよいのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:51|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2010年11月12日

尖閣衝突映像の流出に関する影響の考察

尖閣衝突映像の流出事件で、仮に海保職員が無罪になった場合のシミュレーションをしておきます。菅政権の怠慢、無能ぶりは糾弾すべきですが、それと今回の件は切り離し、純粋に事件として捉えます。ほとんどの論調が、これを混同しており正当な議論が進まないと感じます。

1.省庁内の情報共有化の禁止…。議員・公務員は公職に分類されます。第5管区は直接職務上、知りえた範囲でない。共有ファイルに入っていた。だから機密性はないとする論調が通ると、全ての共有フォルダに入った、関係部署でないデータを公務員は独自の判断で開示できることになります。情報共有化を禁止して情報を部署内で抱え込むしか、情報漏洩を防ぐ術はありません。
海保は情報共有で、相手の手口を考察するせっかく良い手法がありますが、それも禁止です。同一の省庁内でも情報が共有されず、複数の部課に跨る業務の停滞を招く。覗き見を防ぐためアクセスも厳正化され、煩わしさが増す。本来、公職にある者が職務上知り得る全ての情報が、一般人への公知と区別されます。海保内、議員、それらに映像が見られたから機密性がない、という議論は、即ち情報共有化を否定するのと同じ、ということをまず認識しておく必要があります。

2.諸外国からの情報封鎖…。毎日新聞のイラストで、中露が日本にソッポを向き「YouTubeに流されるから」と、交渉を拒否するものがあります。この最大の弊害は米軍が重要情報を渡さないこと。未だに監視の一部を米軍に委ねる日本にとって、これは致命的です。これはインテリジェンスの崩壊ですから、外交情報は素通りされ、10年取り戻せぬ情報停滞が起きるでしょう。
3.事件の全体像が謎のまま残る…。9月後半から10月辺りにUSBで映像を持ち出した、とされます。ということは1ヶ月手元にあった形です。この海保職員が、本当にただの正義感か?というのは誰も分かりません。USBは捨てたとされますが、仮に1ヶ月の間かその後、第三者に渡されたとしたら?その全てが闇に葬られます。不確定な情報で、多くの人が正義を唱えますが、捜査を封殺して事なきを得れば、事実の解明という重要なことを怠る危険を孕むことになります。

4.内部情報漏えいの頻出…。1項に絡みますが、省庁によるリークが常態化され、政敵や都合の悪い人物を排除する行政の動きが活発化します。官僚の最大の抵抗は情報リーク、メディアはスクープ記事を欲する、両者の利害は一致し、知る権利が政治の停滞を招く可能性が指摘されます。これは菅政権が交代した後も、政界再編後も弊害として残る、日本の膿となるでしょう。悪い政権を妥当するため軍部を利用し、軍政を布かれるように、菅政権を倒すためにメディアを最大限に活用すると、その後の修正に時間がかかり、その間に日本は大きなものを失うでしょう。
最後に、裁判に公平、公正はありません。情状酌量に基準はなく、裁判官の主観に左右されるものだからです。一方で警察・検察の捜査は公平、公正でなければなりません。この犯人は国士だから、政治家だから、そんな判断を交えることは本質を外します。捜査は必ず行われ、全ての事実を白日の下に晒す必要があるのです。その後、裁判で無罪になるか、情状酌量されて執行猶予がつくか、実刑かが決まります。現在の捜査すら否定し、現状判明している情報だけで無罪として論陣を張ることが、どれほど国益を損なうかは上記に示した通りです。たかだか千件程度の支持表明を、国民の総意の如くに誇大報道するメディアに惑わされず、国民の『知る権利』はこの事件の全体像も含まれる、ということを忘れてはいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:16|PermalinkComments(5)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 社会

2010年11月11日

米中首脳会談の同床異夢

今週から来週にかけ、外交に重要なものが続きます。アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議が閉幕しました。ドーハ・ラウンドの妥結は1年先送り。2013年末まで保護主義的措置はとらない。域内の国際物流を10%改善、APEC域内の不均衡をなくす経済成長戦略、などが共同声明で採択されています。G20でも経常収支の不均衡が議論されますが、各国の間には経済規模の不均衡が存在しており、この不均衡が全ての元凶として議論され、解決できないその根幹に漂っています。

米中首脳会談も、人民元相場で議論が白熱したようですが、2年前に打ち出した中国の景気対策が2年で約6千億$、今回米国が打ち出した追加の量的緩和(QE2)が8ヶ月で6千億$、これが厳然たる差です。しかも米国はQE1で1兆7500億$を拠出しており、合わせて2兆$以上の資金を、市場向けにばら撒いた形。経済規模の差、とはこうした景気対策に使える余裕、としても如実に現れてしまいます。
中国が発表した景気指標で、10月消費者物価が前年同月比4.4%、3%を目標とする中国からすれば高すぎる水準です。10月の新規融資が6千億元近く、マネーサプライが20%弱、と高い伸びを示し続け、2年間の景気対策が出尽くした現在も、成長を支えます。ただ副作用の物価高、消費のみならず卸売物価も高騰が続き、それが賃金上昇に追いつかない、という状況も窺えてきます。

米国はQE2に対する世界の声を受け、強いドルに言及します。一方で人民元相場に口を出す。為替に悪影響を与える動きとして、急激な変動を挙げる人も多いですが、それを起こす要因は唯一つ、現状が通貨安であることです。円は対ドルで90円だと割安、80円では標準、そうなると90円から80円までの動きは軽くなります。人民元が今日で6.6173元、6月から約3%の上昇でも安すぎる。急激に動き易い相場であるにも関わらず、相場操縦で支えているのが実態となります。
米国は中国を悪役とし、世界を巻き込もうとしていますが、QE2で流れは変わった。米中が世界経済の悪、と見なされ始めています。両者とも、自国経済が弱くなることを世界経済にとって損失、として強気を維持しますが、実は両者の存在が世界の不安定化に繋がる、との指摘が広がると、経済力を外交力に変える両者の政策が根本から揺らぐことにもなるのでしょう。

G20も開幕しましたが、そこで日本に重要なのが金融規制の2分類化です。国際的に重要な金融機関と、そうでない金融機関に別け、強化の度合いを変えようというもの。前者は自己資本積増しなど、バーゼル3に基づく規制強化を、後者はそれより緩くなる形となります。フィナンシャルタイムズ誌が、先に邦銀は後者に分類されるとた記事を流しましたが、仮にそうであれば邦銀は国際的に重要でないとの烙印が、記事が誤りであれば、自己資本積増しなど負担が求められます。
邦銀が規制を免れそうな原因は、国際的な金融商品はあまり保有していないこと。邦銀は対外資産を投資信託、として個人保有としており、自己勘定で保有することは多くありません。そのことで、国際的に重要でない金融機関、と見なされていることになり、これは一種の侮辱に当たります。中国に抜かれそう、とはいえ経済大国・日本の金融機関が、国際的に重要でないとのレッテルが貼られてしまうのですから。これは安全志向の邦銀、という好意的な見方もありますが、少なくとも格付け以上に邦銀の価値の低下が与える影響は、大きくなるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:24|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 海外

2010年11月10日

衝突映像の流出に関する集中審議

尖閣衝突映像に関し、神戸海保職員が名乗り出ました。事前に読売テレビの取材に応じた様子で、国民の見る権利や単独犯を明かし、名乗り出ない理由を職場や色々な人に迷惑をかける、と述べたようです。この件で、メディアが一斉に無罪論調を展開したのは、次のスクープ情報は是非ウチに!といった思惑が働いた結果です。そのため無罪論調の有識者が有り難がられ、需要と供給を満たしてメディアに大量露出、結局スクープは読売テレビがとった形となります。
間違ってはいけないのが、政府が非公開と決めたものを一公務員が流出させれば、それは国家公務員法に問えることです。一般人への公知、この要件を満たせば流出も可能としますが、国会議員に一部の情報を与えたのみ。これで適用外とするのはムリがあります。名誉毀損の問題も指摘されますが、これはそれ以上の問題、国益に関するものであり、その判断は政府に委任されたものです。菅内閣の判断がどれほど誤っていようと、それを覆して公務員が動くことは許されない。また司法判断も、この前例を導けば行政の統制力は死ぬので、それを裁判所が選択するとも思えません。悪い言い方をすれば、国家的にこの事例は無罪判定は不可能とも呼べるのです。

この判断は仙谷官房長官がもっていた厳秘資料でも、一般公開へのデメリットとして語られます。この厳秘資料、盗撮騒ぎもありましたが、厳秘を委員会室に持ち込んだ時点で見られても文句は言えません。情報の扱いに関して甘い菅政権で、同じ問題を繰り返す。自ら望んで情報公開したか、盗み見を覚悟で資料を持ち出したか、いずれも同じ延長上で語り得るものです。
しかも仙谷氏は鈴木海保長官の責任論に言及、一方で馬淵国交省は執行職とは違う、として責任論に触れませんでした。しかし海保支持の声は多く、菅政権への批判が強い国民の声が、甘い処分で済ませれば更に高まります。逆に執行職だけの責任に押し付ければ、政治主導を逸脱しているとの批判も招きます。また公判確実の小沢氏に関しては国会の証人喚問を本人の判断、とする菅政権が、司法判断も下らぬ内に処分できるか?という別の問題も取り沙汰されるでしょう。更にこの事件に関しても、検察の調書が信頼できるのか?仮に政権にとって都合の悪い証言は、切って捨てられるのではないか?という懸念に対しても、菅政権は答えていかなければなりません。

また菅政権の迷走ぶりに、補正予算に公明、みんなの党が相次いで反対を表明。衆院採決を来週15日に迎えますが、参院審議では重しとなりそうです。今日、急遽セットされた集中審議も当日にテレビ中継が決まるなど、異例づくめの国会運営が続きます。それらも全て政権運営がまずい結果であり、情報の扱い方を含め、菅政権を多くの人が見放しつつある状況に繋がります。
APECも始まりますが、首脳会談の日程も今のところ、確定した状況は伝わりません。逆に当初の予定通り進むのかどうか?中露に対して、どう決着できるのか?これで諸外国からも見放されれば、菅政権はレイムダック化が進むことになります。何のために万全を期そうとして、何を菅政権が失ったのか?衝突映像流出に関する厳秘資料の前に、まず分析することがあっただろう?ということを把握できねば、手順前後で菅政権が誤り続ける、その致命的欠陥を今後も続けることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:38|PermalinkComments(8)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 社会

2010年11月09日

経済の話。景気ウォッチャー調査

NY商取で金の1トロイオンスが初の1400$のせ、となりました。米追加緩和(QE2)によるドル安、インフレを映した動きであり、2千$オーバーを指摘するレポートなど、金価格に関してはまだまだ予断を許しません。一方、米証券市場は追加1千億$を折込み、アイルランド財政不安を映して小幅反落、日経平均もそれに連れ安し、重さを指摘される9800円水準を手前に足踏みです。

日本の景況感を示す10月の景気ウォッチャー調査が発表され、前月より1ポイント低下の40.2となりました。円高、エコカー補助金終了、たばこ増税など企業動向と消費が落ち込む要因が重なり、10月はかなり悪いと見込まれましたが、低下幅は限定的で済みました。背景には米ダウがQE2期待でじり高基調、世界経済は安定していたことで国内のマインド低下を防いだのでしょう。
その世界経済では、アイルランドが欧州金融安定ファシリティー(EFSF)から融資を受けるか、に焦点が当たります。今年の財政赤字が32%を超え、金利が急上昇、8%を窺う勢いです。融資を受ければ、投資家も債務再編や支払繰延べなど、応分の負担を招く可能性が10月末にEU首脳から発表され、それが売りを加速させた面もあります。無条件救済を拒むのは経済が堅調なドイツ。EU加盟国の野放図な財政により、救済資金ばかりをドイツがとられては堪らない、というわけです。

一方でQE2に関し、中国・ブラジルが懸念を表明していますが、中国との融和に舵を切ったフランス、ユーロ圏全体からも批判の声が上がり、QE2を巡っては先進国対新興国から、米国対世界の構図になってきました。ドル大量供給によるドル安志向に世界から批判も集まり、追加の追加は封じられた形です。また米モノライン大手アムバックが経営破綻しました。懸念されていたことですが、破綻しないことはない、という不安感が投資を引き上げさせる遠因となります。
日本市場では、日経平均の年度末予想を11000円とする予想が欧州系から出され、先物買いが進みました。一方で債券売り、長期金利がじりじりと1%接近です。為替はヘッジファンドの円買/ドル売に対し、個人の円売/ドル買が対抗する形で均衡。世界からミセス・ワタナベと呼ばれる個人の円売りで80円台を保つ形ですが、ここが崩れれば更なる円高に進む可能性が懸念されます。

景気は気です。株価が年最高値を次々と更新する世界から見て出遅れ、と訴えても水準感にそれほど割安感はありません。一方で為替は円高が叫ばれるため、個人の水準感も割高と見て売り向かう。しかし株と同様、割高感はそれほどないので、個人の水準感が変わると売られる可能性が高い。為替介入への期待も、今の世界の流れと菅政権下では、年末に向けて1回できるかどうかでしょう。
景気ウォッチャー調査が示すように、国民の気は下がっています。更に強い指導力のない菅政権が、TPPの問題でも消費税議論と同じ轍を踏む、実効性の乏しい内閣であると見切れば、国民の閉塞感は更に強まるでしょう。景気の気を上げるためにも、政治にも強い指導力や実行力が必要ですが、当面は菅政権が続く、という意識の高まりにより、国民の消費意欲まで停滞しないようにしなければ、本格的な景気低迷に陥る可能性がある、そんな数字を景気ウォッチャー調査は示すのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:28|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2010年11月08日

尖閣衝突映像の扱いについて

尖閣衝突映像に関し、補正予算を審議する国会の衆院予算委でも取り上げられています。刑事告発すべきでない、や捜査するな、といった論調もあるようですが、大きな間違いであり、それでは愛国無罪を叫びながら無法を繰り返すどこかの国と同じです。自分が正しいと思うこと、それをすれば罪に問われない、とする思想は無政府主義の助長であり、法治国家の否定に繋がります。
例えばこれが義憤にかられた海保職員や、検察官でなく、何らかの混乱を意図して流された場合、事態解明に足踏みすれば更なる事件の誘発を招きます。海保は国家公務員法の守秘義務違反と、不正アクセス防止法違反で告発しましたが、遅きに失しています。また検察は自身のサーバからのデータ漏洩はない、と発表していますが、この段階では信憑性の低い内容に留まります。

守秘義務違反に問える内容は、実はこれまで何度もありました。年金記録の漏洩、小沢氏の事件でも事務所にあったパソコンの内部データなど、検察が公表していないにも関わらず、その内容が報じられたのは当然、検察官が守秘義務違反を犯した以外に考えられません。それが義憤だろうと、興味本位だろうと違反は違反。厳正に取り締まらねば、不正を容認することになります。
この事件、まだ裏があると見ています。仮に内部流出である場合、やはり全データでない点が不審です。編集後、を認識していた可能性が高く、次の手を打てば当然マークがきつくなる。一度で出さねば不利だと認識しているでしょう。つまりsengoku38にとって、二度目に踏み切れば捜査段階に入っていることから、サイバー警察のチェックを含めてリスキーなのです。

仙谷官房長官が、機密保全に関する法整備を示唆しました。珍しく正しいですが、自民党政権時代もこの手の議論はあり、法制化はされなかった。それも公務員の抵抗が強かったからです。しかし国家が秘密保持に責任を持たない方が、国の態度として歪であり、国防や国益に関することが、一公務員の判断で情報公開されることが、如何に不利益を招くかは当然、考慮すべきことです。
ただ、この件では那覇地検の判断で船長を釈放したのであれば、情報公開も那覇地検の判断に委ねるべきです。そうした内閣の態度の曖昧さ、閣僚の意志の不統一といった点が混乱を招いたのであり、情報管理で謝罪した菅氏には、人の管理の不備も重なってきます。釈放の判断は地検、情報管理は内閣の専任事項、といった不整合ぶりは情報と人の扱いを誤った完全な失敗と指摘できるものです。

今回、国民が溜飲を下げたのは当然として、義士であればむしろ堂々と実名公表をして、情報公開すべきでした。ネットがメディアを凌駕した、との賛美も、ネットからメディアが騒ぎ出したことで、情報が拡散した面も否めません。ただ初動に既存メディアが活用されない点は、これまでのメディアの態度、姿勢、諸々の条件として適任ではないと意識されたことによるのでしょう。既存メディアの有料化も進みますが、益々不要論が強まることになりかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 社会 | 政治

2010年11月07日

APEC財務相会合について

アジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合が、共同声明と京都成長レポートを採択し、閉幕しました。G20合意を踏まえて経常収支の不均衡是正、通貨安競争の回避、それに一部の地域で資本流入の変動や資産価格の上昇リスクが高まっている、ことを盛り込みました。
資本流入に対し、ブラジルではすでに課税強化で対抗。ただ溢れるマネーは新興国への流入が止まりません。昨年の11月には、財政収支の健全化を求めていた世界が、大量の資金供給で景気対策を打つ。その構図で経常収支の不均衡や、通貨安競争、資本流入を防げるはずもありません。問題は政策による誘導の術を、各国が失い続けていくことであり、これは政治情勢も似た構図です。

各社の世論調査で菅政権の支持率は30%強、危険水域に入ってきました。菅-仙谷ラインは円満外交を国是とし、APECの成功を至上命題に掲げました。しかし財務相会合の声明を見ても分かるように、世界は危機意識は共有できても、対応は疎かになりがちです。その結果、景気低迷が長引き、各国は未曾有の政権与党の支持率低下という異常事態を招いています。
英国では5月の総選挙で労働党が破れ、保守党と自由民主党の連立が誕生。ドイツではメルケル政権も支持率低下。フランスのサルコジ大統領も支持が低下、国内ではデモが頻発、人権のフランスがチベット暴動後に悪化した中国との関係改善に舵を切るなど、迷走状態です。つい先日、米国のオバマ政権も中間選挙で歴史的大敗に沈みました。先進国は政権が体を為していない状態です。

一方で中国は胡錦濤氏の欧州歴訪で関係強化に努める。ブラジルでも与党・労働者党のルセフ氏が初の女性大統領に就任など、新興国は与党系が強く、対外的発言権も強化されている。これも経済が堅調なためです。つまり世界の二極化は、確実に先進国が沈み、新興国の勢いを示していることになります。マネーの流れもそれを映し、経済が弱い国から強い国へ流れているのです。
政権が支持を高めたいなら、経済を強くすること。それは諸外国と手を結ぶこと以外に、権益を巡っては鋭く対立する場面も必要です。逆に、今の世界はそれをしない。なぜなら市場に大量にばら撒かれた資金で、経済の発言権が強くなり、益々政治が停滞する。これが先進国が今後、陥るであろう真の意味でのJapanificationです。政経が歪な形で運営され、歯止めが利かなくなる。短期的に景気浮揚を目指し、資金供給で事なきを得ようとする事態が、追加緩和競争が今後の世界経済の焦点として浮上する懸念が、先のFOMC後の世界経済に懸念として残っています。

APECに居並ぶ各国の首脳。国民から支持もされず、ここに来てテロが再び頻発してきました。企業がコストダウンを進めるなら、安全や安心は蔑ろにされがち。むしろこれからはテロの脅威が世界各国に波及することでしょう。1つの懸念は、中国で投資目的に拡大するゴーストタウン、風の強い日に、ここに放火されるテロです。人ではなく財産を目的としたテロ。住民がいないため監視の目も緩く、警察や軍もそこまで面倒見切れない。ある日突然、中国の住宅価格が暴落する可能性まで含め、財産テロが起きると世界は更に深刻な事態を迎えます。世界界は不安を抱えると脆いことが確実です。この辺りを含め、各国首脳は話し合いを進めねばいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:43|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2010年11月06日

政府税調で2つの控除見直し議論

昨日の尖閣衝突映像、穿った見方として中国流出を提示しましたが、情報管理が徹底されていれば、流出元の特定が容易で冒険はしづらいと考えていました。しかし石垣海保の管理は甘く、誰でも映像にアクセスできたこと。検察提出資料として、同映像が石垣海保で編集されていた事実など、次々と明らかになっています。当初、映像公開に向けた準備を進め、その後取り止めたために映像の扱いが宙に浮いてしまったことなど、指揮命令系統も含めた問題に発展しています。
気になった停船、身柄拘束時の映像がないのは、衝突のみの裁判用資料として編集されたと見れば、違和感はありません。これが愉快犯か、義士かは別にして、菅政権の脆弱ぶりがまた一つ、露呈した形になります。先の公安情報漏洩でも、政権の責任追求をしないメディアと野党には違和感もありますが、今回はそうもいきません。菅政権は責任論を棚上げにする、処分者を出さねばそうしたイメージがつきます。何よりこの問題は、菅政権下で全て起こったことなのですから。

政府税調が検討している配偶者控除の適用を、課税所得1千万円までに限定する案があります。それにより100万世帯が課税対象になり、1千億円以上の税収が見込め、それを来年度実施予定の、3歳未満の子ども手当ての上乗せ、7千円に当てる方針です。また給与所得控除にも年収制限をかける案があり、財務省では年収で1千万円超となる200万世帯が対象とされる案を検討しており、連合からは年収で2千万円、20万世帯が提案されており、金額や仕組みには不透明感もありますが、この2つの税控除を見直すことで、税調では税収増を見込むことに変わりはないようです。
この議論をすると必ず、とり易い高額所得者からとる、高額所得者に課税すると個人消費に影響する、という意見が出ます。しかし米国と同じ議論は無意味であり、日本はデフレでマイナス金利、現金保有が有利です。つまり高額所得者は現金として持ち続ける傾向があり、一部を消費に回しても、総額として消費が増えない傾向に変わりありません。今回は所得の再配分ですので、もらえば使わざるを得ない子育て層に配分を変えることが、消費傾向に影響することはほぼないと云えます。

すぐにとり易い高額所得者から、という意見も、低所得者から毟り取ればそれはそれで疑問視されるでしょう。ただ問題は、事業仕分けの効果が然程上がっておらず、国のムダ遣いにそれほど歯止めがかかっていないこと。つまり国が乾いた雑巾を絞るほどの苦労もせず、安易に課税に走る傾向を、国民がどう感じるか?です。それにより、この問題への国民の反応も変わります。
国が正しい行いをし、正しく税金を使ってくれれば、国民に不満も高まらない。高福祉、高負担なのか、低福祉、低負担なのか、という議論がこの国では圧倒的に足りていない。国が行う範囲と、税負担という問題が、必ずしもリンクせずにある特定の問題だけを取り上げ、議論される傾向が強いということです。これは消費税議論も、法人税議論も同じです。リーマン前の水準まで経常利益を戻した企業も多い、なのに法人税は減税が検討される。個人でも企業でも、税負担とそれに見合う国から得られる効果があれば、それで十分なのです。政府税調の議論も、政府が脆弱なら国民理解も進み難くなり、増税は難しくなります。様々な要素の中で、増税、減税の実行力が菅政権で低下していることは、ほぼ間違いないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:41|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2010年11月05日

尖閣衝突映像がネットに流出

尖閣衝突映像がネットに流出しました。最初の衝突は、中国船から見て左に行き過ぎる「よなくに」に、わざと取舵を切って当てたもの。これは船尾の機関部か、スクリューを狙ったものでしょう。次の「みずき」にも併走しつつ取舵を切り、急激に当てたことが明白です。衝突時、同じ方向に舵を切ると力を直接受け、転覆の可能性があるので、衝突方向に舵を切る必要があります。それを見て、海上保安庁の船もぶつかる方向に舵を切った、との論調をとる人もいますが、それは大きな間違いです。舳先の向け方を見ても、先に舵を切ったのは明らかに中国漁船の側です。

流出元は、検察のサーバデータからという見方が大勢ですが、1つ穿った見方を示しておきます。国連、G20と続く中国首相とのすれ違い、会談のセットに衝突映像を見せるよう要求され、日本政府が中国に映像を渡す。アカウントのsengoku38、その38が中国の蔑称ともされますが、太子党などの胡錦濤氏の訪日、会談という対日融和路線を阻止したい勢力がその映像を手に入れ、流した可能性は少なからずあります。本当に情報公開を意図するなら、停船、拘束まで流すはずです。
中国の穏当な対応もこうした見方を裏付けます。映像はすでに日中双方が持っている場合、流出可能性は双方にあります。ただ政府はその事実を絶対明かせない。カードとして胡氏の会談中止も含め、中国は自分に利があるよう動ける。それが安易に情報を渡したツケともなってきます。これは証拠もなく、あくまで1つの見方だけですが、政府の情報管理体制、その責任の所在が相当に重く圧し掛かるでしょう。中国に出し抜かれた形になりますからね。

これが国内から流出した場合、流出元の閣僚の首は確実に飛びます。どういう形であれ、政権はレイムダック化。先の公安情報流出とともに、情報統制が利かない政府は諸外国から侮られ、情報共有化が難しくなります。これは米軍に頼る監視体制など、様々な面で影響してきます。
これは調査や捜査で判明した関係者を処分して済む問題ではなく、公務員の反逆に見えます。もしそうならリーダーシップの欠如であり、政権交代か、官房長官の首ぐらいは飛ぶ事態です。野党がうまくやれば解散まで持ち込めますが、今の野党は力不足なので、良いとこ仙谷氏と閣僚1、もしくは閣僚1程度の罷免で終わりそうです。関係者が判明しなくても、誰かが責任をとる必要が出てくる問題。さらに映像の全面公開の議論が噴出します。もはや歯止めが利きません。

国会に6分の衝突映像が提出された、その当てつけに見える『衝突のみ』公開の、今回の流出。意図は読みきれませんが、菅政権に打撃を与えたことは間違いありません。APECを重視するあまり、そこを直撃する形で海外、国内で揺さぶりがかかる。危機は好機という言葉もありますが、好機を危機に変えてしまった、それらも全て政権の危機管理能力という面にかかります。
そしてここに、公務員の不作為か、明白な拒絶の意図が含まれる場合、仙谷氏が打ち出した官僚との融和姿勢の失敗、という側面が見えてきます。菅政権が負ったダメージは、政権が背後で動いてきたものを含め、相当に大きくなることだけは、間違いないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 社会

2010年11月04日

米追加緩和政策について

米FOMCが開催されました。来年6月末までの国債買取、追加緩和の規模が6千億$、住宅ローン担保証券(MBS)償還分と合わせると9千億$、毎月1千億$が国債購入に振り向けられます。市場予想+1千億$が微妙なバランスの結果ですが、米国の需要不足を埋めるためには、3兆〜5兆$が必要とされます。6千億$では足りないので更なる追加もあり得る、という予想も出ていますが、時間軸効果を取り入れただけに、6月末までの更なる追加緩和は打ち出し難いという見方が大勢です。

米国で懸念されるのは日本化(Japanification)です。財政出動も量的緩和も効かず、長期のデフレに陥り景気が低迷する。企業は国内市場を重視せず、生産の海外移転を進めて国内が空洞化する。米国は財政赤字と貿易赤字を抱え、日本化が起きると経済の致命傷を被りかねない。日本の量的緩和は7%程度であり、米国も今回の第2弾は7%程度でもあるので、日本の失敗に学んだ部分もあるのでしょう。ただ先の中間選挙とも絡み、ある問題を抱えています。
一昨日もふれたように、米国の期待収益率が下がり、米国内での運用はQE2を受けて事実上困難になります。住宅市場は現在、政府支援を受けた住宅金融公社(2F)が担いますが、共和党は民営に戻すよう提案しています。小さな政府路線で、2Fに対する財政負担が重いためです。米金融機関がMBSの販売で、詐欺的行為を行った件で提訴を受けるなど、既存の住宅ローンは益々審査が厳しくなる。すでに住宅価格低下で、差し押さえや資産効果が得られない。マイナス金利に陥り、借り易くても貸し難い状況で不動産市場は当面、米経済の重石になると予想されます。

第1弾と合わせ、量的緩和規模は2兆4千億$規模。ドルのダブつきは深刻です。一方で少し異なる動きもあります。NY債券市場で30年物が売られ、利回りは4%台に乗せています。リフレ政策で金利下ぶれが予測されますが、すでに見越して買いもちしていた層が売りに回る。それだけ、ダブついた資金の運用先に困っており、FOMCなどの大きな流れでイベントドリブン、というのは株式に限らず、債券市場においても走っており、金融相場は後に深刻な後遺症をもたらしそうです。
特に、米国は世界経済の混乱期に急速なドルへの巻き戻しが起こるため、ダブつくドルによって悪性インフレを誘発しかねない。短期的には好感できる材料でも、一つ失敗すると効果は倍加され、米国に深刻な経済不安を起こします。債券バブルの一層の深刻化が、中央銀行の買取で更に進むなら、その破裂のタイミングを読み難くさせることも、不安材料の一つかもしれません。

日本の株式市場も一旦は好感できますが、長続きはしません。円-ユーロが一日で3円の円安に振れましたが、介入はしない。急速な変動でも円安なら動かない、との態度が鮮明になれば益々為替介入を難しくします。日銀が前倒しされた金融政策決定会合で動く、との見立てもありましたが、東京の債券市場は利回り低下と安定した動きを示したため、特段の動きはとれないでしょう。
ECB、英国も政策金利を据置きました。今後、追加緩和競争の引き金をひくかは、今後の市場の動き次第となります。日本はこの機会に、保有する米国債を一部手放してユーロ建てに移すなど、多角化を進めても良いのかもしれません。何より、ドル安志向が続く限り、外貨準備の円建てが目減りすることは確実です。9千億$の米国債購入は日本の外貨準備の半分近くです。中央銀行が抱えるには、あまりに重い数字であり、日本も戦略的に世界の位置づけの中で、米国債保有を考えるべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(10)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2010年11月03日

雑感。裁判員裁判における死刑求刑

米中間選挙が行われました。現在は上院で共和46、民主51、下院で共和239、民主183の民主大敗ですが、辛うじて上院の多数派は民主党が押さえた形です。州知事選も共和15、民主6で、上院、下院、州知事選挙を合わせ、改選議席は大きく民主党が落とす歴史的大敗となりました。

オバマ大統領が陥ったジレンマは雇用と言われますが、失敗の原因は雇用創出策がグリーン・ニューディール、つまり環境と公共工事だったことです。環境対策に出遅れる米国にとって、喫緊の課題だった環境で雇用を創出できる、との見込みを打ち出しましたが、すでに諸外国では進んだ技術であり、米国でわざわざ新たな工場を立ち上げる必要はない。かつての米国なら、環境対策に関する製品、工場設備などを国内産に限定するなど、保護政策をとって普及させることが行われました。つまり今回はパッケージとして米国強化策でないため、雇用に波及しないことがあります。
共和党は小さな政府志向であり、財政支出の削減を訴えますが、すでに成立した国民保険など、雇用も限られる中でセーフティネットを切れば、そこに批判も集まります。共和党が壊した経済だけに、補修工事に同様の手法を用いれば、傷口を更に広げる可能性もあり、減税や市場緩和策がこの時点で利くかは微妙でしょう。雇用を生み出す手法に目新しいものがない。金融で拡大した経済が、バーゼル3などで規制強化方向にあるのですから、当面の手詰まり感、景気浮揚策はどの政党が政権をとっても同じ、ということでもあるのでしょうね。

話は変わりますが、裁判員裁判で初の死刑求刑が出た裁判で、判決は無期懲役が出ました。その中で裁判員の方が「公正な判断ができた」と述べていましたが、裁判において「公正」はあり得ません。残念ながら公平は存在せず、あるのは過去の判例に照らした量刑の軽重であり、後は主観が支配します。だから市民感覚とのズレがないか、それを確認する裁判員裁判制度がスタートしたのです。
公正が存在すれば、全て数値化して判決を下せば良くなります。事件の被害、被告の態度、そうしたものを公正に点数化する。それで量刑が決められます。しかし被告が反省しているか、精神障害があったか、それらも全て主観により判断されるのであり、点数化は不可能です。精神科医でも、検察側の証人と弁護側の証人で必ず意見が異なるように、同じ対象でも人の判断は異なる。それらは主観により支配されます。よって裁判における自らの判断は正しい、と述べることはそもそも本質を外しています。正しさは、人により異なるのですから。

今後も裁判員裁判で死刑求刑の出る事件があります。裁判員に択ばれる方は、自分の信念と主観を信じて判断を下せば良いのです。それが死刑に足ると信じられるのなら、そう判断する。おかしな感情を交え、一般論などに囚われることは、元々の裁判員裁判を導入した意義が薄れます。裁判員裁判で量刑が重くなった、と弁護士などは述べますが、逆に見れば軽犯罪は重く、重犯罪は軽くなる傾向は初めからわかっていたことです。死刑判決を下すには、それだけハードルも高いのが現状なのですから。ただこの事件が先鞭を切れなかったことで、今後も益々判断を下し難くなったことは事実でしょう。一抹の不安が裁判員の心に過ぎらせ、死刑とまでは云えない、そんな弁護士の公判戦術が増えるだろうと予見させる、そんな裁判だったのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:31|PermalinkComments(7)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2010年11月02日

米国の中間選挙、FOMCと日本

昨日のロシア大統領の北方領土訪問に際し、日米同盟の揺らぎが原因と指摘する人もいます。日米機軸論者に多いのですが、仮にそうである場合、米国の国益面からの考察が必要です。冷戦時代ならともかく、今はそれ以上に経済や資源調達、国内情勢が外交に影響する時代です。
日米同盟とそれ以外の要因とを天秤にかけた考察は、残念ながら拝見できません。米国は、日本への配慮を滲ますことで日本国民と、共和党系の親日派にアピールし始めた。国内で批判の多いオバマ政権が、対中国で失敗し、外交上の成果を得たいとやや日本に目が向き始めた。これを利用する手はありますが、それらは全て米国益に叶うかどうかで判断されることを、忘れてはいけません。

米国は中間選挙、連邦準備制度理事会(FOMC)と重要日程が今週続きます。FOMCを前に簡単に今回の効果を説明します。手元資金Mに対し、期待収益率rとすると、M(1+r)という式が成立します。簡単な式ですが、複利計算にも利用できる、経済の基礎の基礎の公式です。単純に言えば、一定期間後に金利が乗ってその分手元資金が増える、その割合がrで表されていることになります。
FOMCで予測される5千億$の追加緩和(QE2)で、政策金利を0.75%引き下げる効果を見込む、つまりマイナス金利です。するとrがマイナスですから、将来の資金は現在より低くなる。つまり逆ザヤ、手元資金のまま置いておいた方がいいとなり、今の日本がこの状況です。rにはインフレ率なども加味されるので、米国では若干プラスを保ちますが、日本はデフレでマイナス金利、お金は市場に回りません。この状況はインセンティブ契約が成り立たない、金利が低くて企業は借り易く、金融は貸し難いのです。

しかし米国ではこれを好感します。企業は市場からの資金調達が原則であり、貸付は重要視されない。市場がマネー漬けにされれば調達が容易、というわけです。一部はGMの上場で1兆円以上が吸い上げられる。40兆円規模も、市場期待から見ればやや物足りない、それがQE2の意味です。
上記で示したように、日本企業は貸付がメインで市場調達は進みません。政治家でも金利を低く、企業に借り易くと述べますが、貸し難い状況に金利水準がある。これが本質です。よって低金利も効果は限定的。デフレのため貯蓄率も高い、お金が回らないことになります。米国と日本は金融、経済情勢が全く異なる中、同じ政策をとっても全く違う結果を生むことが自明となります。

米中間選挙は民主の敗北、後は程度問題です。しかし市場に友好的な共和党の力が強まれば、経済は当面堅調との見方が大勢を占めます。ただばら撒かれた資金は、危機が起きると有事のドルの動きと相まって、ドル急騰、高インフレという状況を招きかねない。また中間選挙の結果で、オバマ政権がレイムダック化すると、バブルと言われる債券相場の流れを変え、ドル売りを引き起こしかねない。その微妙なバランスの上に米国が立たされるかどうか、それがここ数日で決まります。
日本が米依存でこのままいけるか?外交に戦略性もなく、米に阿諛追従していればそれで済むのか?それらもここで明らかになります。日銀はFOMC後に会合を開く、という異例の日程前倒しで今週臨みます。経済面でも阿諛追従し、追加緩和の規模を競っても意味はありません。日本が独自で生き残る道、いずれ必ず目指さなければいけない点であり、今のところ政府や日銀に、その志は見出せないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2010年11月01日

菅政権の手法では足元をみられる

ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を訪問です。日米関係の溝を指摘する人もいますが、恐らく関係ないでしょう。最大はAPECの成功を金科玉条に掲げる菅政権下で、中国式の対日工作がよく利く。そのことをロシアが理解し始めたのです。政経が歪な日本に対し、日露共同でJOGMECが発見した東シベリア油ガス田で日量1500バレル以上の採掘が可能、こうした提案で産業界に配慮し、強い態度を日本政府がとれない。それを理解した上での行動です。本来、露駐日大使の国外退去など、やるべき戦略はありますし、事前予告もされていたので対応は考えておくべきでした。それもAPECまでできない。菅政権の弱腰外交を諸外国から突かれ、一方で諸外国国内の不安定な政権基盤の強化に利用される。日本が国益を失う形が鮮明となっています。

補正予算が提出の見込みで、国会が新たなステージに入ります。政治とカネで審議入り拒否、これは野党にとってマイナスです。永田町の論理で、効果は限られても景気対策も含む補正予算審議を進めないなど、国民不在が鮮明だからです。当時の麻生政権により小沢事件は仕組まれた、とする発言もチラホラ目立ちますが、証人喚問が仮に実現しても、実は困った問題が起こります。
仮に小沢氏が「それは検察の捜査情報だから検事総長に訊いて」と述べれば、これは政治と検察へ、「それはメディアの報道だから社主に訊いて」と述べれば、これは検察とメディアの問題に拡張されます。つまり小沢氏は全面否定なので、追求材料もなく検察発表や報道ベースで問い詰めると、公平性という観点から見れば、次に当時の検事総長や社主が証人喚問となります。これは菅政権や野党も望ましくない。小沢氏は国会の決議に従う、としているので菅氏が決断すれば証人喚問は可能です。それでも、反小沢でタッグを組んだ側にとってはブーメランが一番怖いのです。

10月だけで法案成立が1本、会期末駆け込み成立は多いものの、このペースでは延長確実。関連法案も含め、成立するには1ヶ月では不足です。だから足元を見られる。もっと手を組めると見た野党も、仙谷氏の暴走に腰も引け気味。むしろ短命政権と見て、対決姿勢を鮮明にします。
企業献金再開も、公務員給与改定も、公約実現には程遠い。その上、説明不足と来ているので、政権に対する懐疑的な見方も増えています。各社世論調査では支持40%弱、不支持50%弱、といったところ。この政権、党内基盤も脆弱であるため世論支持が30%を切ると、反小沢でスクラムを組んだメディアからも批判記事が増え、政権運営は立ち往生することでしょう。

これだけAPEC前に悪材料が並び、ニコニコと笑って諸外国の首脳と握手をすれば、それこそ無頓着と非難される。つまりAPEC成功を期するあまり、事前に失敗が約束された、それが菅政権の手法として今回明らかになった外交運営ということです。TPP発言が第二の消費税とされる説明不足、今の政治とカネの問題より、もっと政治家に求められることです。一方は法廷の場で明らかにされますが、もう一方は記者クラブ中心のメディアからは攻撃も少ない。日本の隠された問題とは、政治とメディアが結託している部分も多く、政治と検察、検察とメディア、メディアと政治、この三竦みが利を同じくする構図にも如実に現れている、ということになるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:22|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般