2011年08月

2011年08月31日

経済の話。欧米の動き

第177通常国会が閉会しました。通った法案は予算関連の他、再生エネ法ぐらいしかない、という為体であり、70日延長され220日もあったにも関わらず、菅氏が一人で迷走し続けた国会でした。菅政権は間違いなく歴史に名を残します。それは、大規模な震災が起きるたびに、阪神淡路大震災のときの村山政権は…、東日本大震災のときの菅政権は…、と比較対象にされるからです。菅氏は歴史に敏感ですが、歴史の評価が比較で決まるのなら、間違いなく悪い手本とされるのでしょう。

バーナンキ議長講演後、QE3期待の高まりが米市場を牽引しています。FOMC議事録でも、緩和的意見が議論されており、9月への期待を高めています。しかし疑問は、QE2終了後の7月もマネーサプライは堅調、というより急激に伸びており、FRBが資金供給を強めている点です。現在は公定歩合より、政策金利を上下動させ、国債を調節することにより金融政策はすすめられます。しかしこのマネーサプライの伸びは、こうした調整ではなく、直接供給で賄われていると考えられます。
米国では消費に対して、2つの異なる指標が出ました。29日は7月消費支出が前月比0.8%増と高い伸びを示し、30日は8月消費者信頼感指数が44.5と、大きく落ち込みました。米国ではドル安によるインフレと、それを補う意味で低価格商品への嗜好の高まり、といった側面があります。賃金も低下傾向にあり、株価下落に伴う逆資産効果という面も含め、米国の消費、購買意欲は今後も低下が続くことは確実です。このとき、マネーサプライを拡大し、更なるドル安に導けば米消費は深刻な打撃を被ることになり、米企業はますます人員削減などのコスト削減を迫られることになるでしょう。

欧州でも新たな動きです。ギリシャのEFGユーロ銀とアルファ銀が合併し、カタール投資庁が17%出資で合意という記事です。しかしこれは極めて不可思議な動きです。ギリシャ支援第2弾は銀行にも適用される、とされますし、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は、ギリシャ支援国の担保に、銀行株を割り当てるとされています。つまり両者の動きは同じことを示しており、ギリシャに対する増資に担保が必要なほど、資金が集まっていないということです。ギリシャの担保問題は、フィンランドがギリシャと合意し、加速しましたが、ギリシャが切り売りされる状態になっています。
ECBがイタリア国債を大量買い、という話もあるように、欧州債務問題はさらに悪化の一途と云えるでしょう。株式市場は月末を控え、『売らない強気』相場で上昇していますが、こうした値幅を出して収益を確保する状態は、生き残る金融機関と淘汰される金融機関を選別するようなものです。体力勝負に陥った結果、後に大きな問題が再び出てくることになるのかもしれません。

財務省発表の8月為替介入額が4兆5129億円、と発表されました。為替相場は76円台後半での値固めとなり、効果がないのは明白です。さらに米国のマネーサプライの伸びを見る限り、益々円高に進みやすい要因が増えている、とさえ言える状況です。日本の経済政策のうち、為替介入が円高対策だと考えているメディア、経済の専門家がいる限り、この問題は常に失敗をくり返すことになりますが、少なくとも世界景気が不安定であることは、上記でも鮮明であり、欧米経済に頼らないなら外需はある程度目をつぶっても、国内に目配せした方がよいのですが、野田新政権にあまり期待できたいという点では、株式市場の伸び代も限られてしまう、ということになるのでしょうね。

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2011年08月30日

野田氏による党役員人事について

野田氏が第95代内閣総理大臣に選出されました。党役員人事に着手し、幹事長に輿石参院議員会長、政調会長に前原前外相、国対に平野元官房長官、幹事長代理に樽床氏が決まりました。この布陣を見て、小沢氏への配慮と述べる人もいますが、野球で云えばカットボールのようなものです。
輿石氏は小沢氏との関係も良好ですが、参議会長としての立場を重くみています。なぜ幹事長に衆院議員が就くことが多いかと云えば、取りまとめる議員の数と、党の資金配分が圧倒的に衆院で多いためでもあります。この布陣が意味するところは、参院対策によりカネを使う。衆院は政策調査会長ではなく、野党との政党間調整会長としての働きを前原氏に期待している、と見ることが可能です。国対に平野氏、幹事長代理に樽床氏、と小粒の陣容としたのも、野党対策は野田氏も出て面倒をみるので、平野氏は鳩山グループへの配慮と6月の菅首相引きずり下ろしの曖昧決着の論功行賞、票の取りまとめに尽力した樽床氏を入れておけば、こちらも論功行賞として異論ないとの思惑です。

これをみると、バランス型を目指していることがわかりますが、輿石氏は山梨教祖との関係が疑問視されており、一方で前原氏も政治とカネを抱えている。国会の場で直接、これらの問題を追求されない、というメリット以上に野党が素直に協議に応じてくれるか? それはやや微妙と云わざるを得ないのでしょう。党の顔、という立場が輿石氏であれば、解散は遠のいたと見るのが妥当ですが、そうなるとさらに野党は追い込みをかけ易くなりますし、またそうした戦略をとるでしょう。
そんな野田氏に、悪い言葉で最後っ屁をかけるように、菅氏が余計なことをしました。福島県知事に向けて「長期間にかけて居住困難」と「県内に汚染物質の中間貯蔵施設を」です。前者は当初から懸念されていたことを、やっと認めた形です。後者はより深刻で、各地にたまる汚染焼却灰の処理を、福島県を突破口にして地元に押しつけよう、という魂胆が透けて見えるものです。しかしこれは、福島のみならず原発を抱える地方自治体は、必ず放射性物質を抱えることになるのですから、原発敷地内を想定し、そう国が指導していけば良い話であり、またそうすべき事柄です。

しかも土壌汚染地図をみると、2200地点調査したうち34地点でチェルノブイリで移住基準とされた数値を越えるなど、極めて懸念される状態で、これも国のこれまでの発表を覆すものです。こうした負の遺産を、政権の再末期にポロポロと出す菅政権の後始末を、野田政権はしなければなりません。
さらに朝鮮学校の無償化を押し進めようとするなど、菅氏は最後の最後まで最悪の宰相と云えます。最悪の後は、支持率が高く始まる…という意味では置土産になるのでしょうが、菅政権ではほとんど政策が国会を通っていませんが、逆に1年間停滞していたことを、今から進めなければならない。野田氏は復興にも、3次補正を口にはしますが、具体策をまだ示していないので、上記の原発問題の長期化に対しても何らかの答えを出さなければいけない。極めて重い宿題と云えるのでしょう。

夏休みの宿題を例にとると、今回の任期は1年しかないので、期限を見据えて計画的に進めるのか? 前倒しで進めるのか? ギリギリまで溜めておくのか? それで大きく変わります。党役員人事はバランス型をめざした結果、やや比重が傾いているようにも見え、党内融和は保守系の足元の方をぐらつかせるのかもしれません。閣僚人事も含め、夏季集中講座の結果が出るのは秋でもあり、臨時国会という試験にまず合格できるよう、人事には極めて慎重にならざるを得ないのでしょうね。

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2011年08月29日

民主党代表は野田氏

民主党代表選、1回目の投票で海江田氏143票、野田氏102票、前原氏74票、鹿野氏52票、馬淵氏24票となり、決選投票の結果、野田氏215票、海江田氏177票の結果、野田氏が民主党代表に推されました。明日、首班指名が行われる見通しです。海江田氏の敗因は、小沢氏の支持をとりつけたのですから、その後は浮動票のとりこみに、融和的な方向を打ち出すことが必要でしたが、あくまで小沢派の主張に近い形での発言を繰り返したため、警戒感が強まったこと。元々、個人的な魅力が少ない上、引きはがしに強引な手を使ったことで、2、3、4位連合を構築されてしまった点が挙げられます。

ドジョウの話をしていましたが、当初野田氏を推した仙谷氏は「柳腰」と使ったので、まさに『柳の下にドジョウ』です。反小沢で菅政権は一時期、支持を得ましたが、同じ手でいってもうまくいかない。怨念の政治からの脱却を訴えましたが、泥仕合を演じた結果、今回は深い怨念を生む戦いになってしまったのでしょう。まず難しいのが幹事長人事、とされますが、私はその問題より前原氏の処遇がもっとも難しいとみています。前原氏をどこで起用しても『誠司とカネ』で追求されます。これまで小沢氏に向けた「説明責任」を果たした、と思われておらず、これが政局混迷を生みます。
一方で、海江田氏の処遇も難しい。経産相は手腕が足りないため復権できず、小鳩連合の基底票でとどまった人望のなさから、幹事長ポストも与えられない。そもそも、三党合意の見直しを示唆したため、閣僚では委員会で集中砲火を浴び、党内においても浮くだけです。ドジョウがドロの中にいて、水面にはぷかぷかと海草が漂い…では笑い話にもなりません。では枝野氏を要職に起用して人気とりに利用すると、原発事故の情報隠しを、この政権では検証できなくなります。

しかもこれで菅氏、野田氏と財務閣僚経験者が二代続けて首相に就く。為替介入の効果や、1千億ドル基金の検証もこれで封印されました。いみじくも西岡参院議長が述べたように、菅政権に関わった閣僚が今回、代表になれば過去は抹殺される。それは、閣議で全員が了承した内容で政策を進めているのであり、菅氏の思いつきも、最終的には閣僚も合意しているのです。つまり情報隠し、脱原発依存、きちんと効果が検証されず、闇雲に追従する形ですすめられてしまう恐れがあるのです。
しかも消費税増税が財政再建に寄与する、という誤った情報を垂れ流す。今は、国民の平均所得が下がっており、これが小泉政権からずっと続くデフレスパイラルであり、ここで増税を課せば国民負担が重くのしかかり、消費が減退することは間違いありません。消費が減退して減収、増税効果は相殺されます。順序を間違えれば日本は深刻な不況により、税収減が更なる財政悪化を招くことになります。必要なことは歳出改革であり、それが財務省主導の事業仕分けでも分かるように、成長戦略を考慮せず判断されてしまった。本当に必要な歳出改革は、財務省主導ではムリと露呈しています。

野田氏は人事の軛、財務省の軛から逃れるには、野党にすがるしかない。しかし野党も民主党を追い込んで解散、が主流となりつつあり、大連立はもう不可能です。民主党政権の間に、都合悪い政策をおし進めてしまおう、という点で合意し易くなる一方、重要案件はアピールの場とばかり、自分たちの政策をゴリ押ししてくるでしょう。自縄自縛に陥った結果、泥縄になるのが見えています。
旧約聖書では『アダマ(泥)から人が創られる』と描かれます。中国の『風俗通義』の神話では、女禍が黄土から人を創ります。女禍が丁寧につくった人は高貴に、面倒くさくなって縄に泥をつけ、振り回したその飛沫からできた人は劣っていた、という格差を示す人の創成神話となっています。今回の民主党代表選、縄に泥をつけて振り回した、そんな結果としか思えません。3日という短期決戦もそうですが、投票呼び掛けのため、発言したことに今度は縛られ、反発を受けやすくもなるのでしょう。ドジョウの別名にオドリコがありますが、踊らされる党首では、泥を塗ったり、泥を吐かせたりも増えてしまいます。泥臭いより、泥沼に陥らないよう足元固めから始めないと、かなり困難になることは早くも指摘できてしまう点で、前途多難と云えるのでしょうね。

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2011年08月28日

円高対策について

民主党代表選で、前原氏が二番手を確保できない公算が高くなりました。反菅の急先鋒、仙谷氏が背後にいる前原氏には乗れない。現政権の引継ぎ、に最も前向きな姿勢を示しましたが、外国人献金問題が尾をひいており、大きな爆弾を抱えての出馬は政治とカネ、を追求する側にとって有利です。
菅グループが野田氏にのる、ということで二番手は野田氏か? とも噂されますが、気になるのが円高対策として発表された、1千億ドルの基金です。この基金を使って海外投資を促し、円高対策になると述べますが、買収資金などよほど大型案件でなければ、数十億ドル程度ですし、毎月の貿易黒字がそれを上回るとは、とても思えません。これは財務相が政府短期証券を使い、調達したお金で融資として運用できる、という財務省の新たな財布になっただけで、円高対策に効果はありません。

今日はいくつかの番組に5人が出演していました。野田氏は財務省主導の立場を薄める目的か、行財政改革に関して、唯一言及していました。ただ上記の基金のように、財務省の権益拡大に手を貸す姿勢は、やはりあまり良い目で見られないのでしょう。当初、実績をベースに円高対策を強調する戦略だったことも、野田氏の政策を懐疑的にみる原因となります。為替介入も持続性はなく、野田氏のうった円高対策と呼べるものは、いずれも失敗と断定できるため、それを功績と称した時点で政策通ではない、というレッテルに結びつき、結果的に野田氏の評価を下げるのです。
円高は、正負両面があります。しかし最近、そのメリットがないのは新興国の人件費高騰、輸送費高騰の他に、円決済の取引割合が上昇しているためです。もし円高で苦しむ企業を救う目的なら、むしろそうした円建取引ができない、海外企業との取引で、そうした優位な立場にない、中小企業対策を打った方がよほど効果が上がります。そうした企業は、体力が弱くて買収や海外設備投資などできないのであり、1千億ドルの基金は大企業優位な姿勢ともいえてしまうのでしょう。

海江田氏が代表選でトップを走るのは、巨大な数を得たのですから当然ですが、票読みとして鹿野氏が二番手になると、海江田氏が苦しいという話がありました。反小沢がすべて鹿野氏に乗るから、というのがその理由ですが、今日の番組でもっとも酷かったのは日テレのバンキシャです。候補への質問で「当然…」や「やっぱり…」などとつけ、小沢派への擦り寄り、マニフェスト政治が否定的に見えるような演出がされていました。極論すれば、民主主義の社会では多数の力が強いのはむしろ当然なのですから、逆にそれを否定してしまうと、民主主義を否定することになります。
個人的には、海江田氏は小沢氏ではないので、小沢支配が強まるとも、小沢氏の政策が通るとも考えていません。小沢氏の復権は、小沢氏が権力の座につかない限りないのであり、今回必要以上に小沢氏のことを意識するのは、それだけメディアの恐怖感を晒しているだけにも見えます。

逆に、小沢氏を否定することで自縄自縛に陥っている。それは、多数派を握る小沢氏を無視すれば党内運営がゴタゴタするのは当然ですし、そうした方向をとったことが菅政権の失敗とも云えます。少数が多数を制すには、正当な理由が必要です。それを『政治とカネ』に掲げてきましたが、実は前原氏も菅氏も『政治とカネ』の問題を抱えていた。その時点でその理由はもう通用しません。
小沢氏が真に復権するとすれば、それは選挙後となります。それまで、小沢氏の意向もある程度汲んで政権運営をしなければならない。これは民主党の業です。それを否定すれば、政権交代すら否定しかねず、結果的に政権運営に行き詰まるのでしょう。誰が勝っても、あまり良い方向に日本が転がってくれるとは思えませんが、少なくとも小沢史観から脱しないと、政策論争が霞むことになり、メディアもそうした政治の衰退に力を貸している、と見られることになるのでしょうね。

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2011年08月27日

FRB議長講演と、民主党代表選共同記者会見

明日には日本の首相が決まる、大事なときですが、先に昨晩のバーナンキFRB議長の講演を取り上げます。1人の発言に世界がこれだけ注目する、その結果として見方は2つに割れました。注目されたQE3、量的緩和は示唆されず、9月FOMCを1日延長し、具体策を協議するというに留まります。
注目したのは2点、「金融、財政政策が長期的な経済の動きに大きな影響を与えない…しかし現況は例外の可能性」と、「成長率、雇用水準が…回復すると合理的に予想する…ただこれは、必要な措置を米国が講じれば」です。これはどちらも、何らかの対策を打たねばリセッションが深刻になる、と述べており、FOMCを1日延ばしてでも、タカ派を説得して対策を打つ。そうした決意表明に聞こえ、昨晩の米株市場は具体的ではないにも関わらず、大幅に上昇して引けています。

しかしこれは新たな時間軸対応であり、期待を先延ばしにすることで、効果を持続させる策にしか思えません。昨晩発表された米4-6月期GDPで、GDPデフレーターが2.5%に上昇し、金融政策が打てる環境にはありません。長期間にわたる低金利の継続は、日本と同じで低成長を喚起し、期待収益率を押し下げます。事実、インフレより雇用をターゲットにすることを議長は求めていますが、金融政策で恩恵を受けるはずの金融機関は、収益が低下して人員カットに躍起です。
これ以上、FRBが踏み込んで何か対策を打とうとすれば、負の効果を高めてしまう。それがインフレなのか、期待収益率の低下により企業活動が減退するのか、いずれにしろQE2の検証も経ず、新たな対策を打つことはできません。バンカメが資金繰りを悪化させている…そんな話が株価を急落させ、著名投資家が50億ドルのワラント付き融資を行うとの発表で、一先ず落ち着きをみせる。欧州でも債務問題で金融機関に不安が生じている、こんな状態ではまず金融監督庁の役割が重要であり、正しい情報を開示し、不安心理を払拭する必要があるのであり、これは規制強化とさえ云えます。

そこで、民主代表選の共同記者会見で、前原氏が「経済成長を全面的にやり、果実を復興に充てる」と述べました。新自由主義の主張に近いですが、何年も同じ文言が繰り返され、失敗してきたのが経済成長による財政再建、です。逆にそれだけ困難であり、そんな曖昧なものに頼って、復興という直前の資金繰りを語るなど、あまりに軽率です。FRB議長の言葉を借りれば「必要な措置を日本が講じれば」経済成長は可能でしょうが、その必要な措置の具体策がわかりませんし、必要な措置を打つための財源は、ではどこから持ってくるのか? ということさえ判然としません。
2000年代前半からの成長は、日本による量的緩和で刺激された金融が欧米経済を押し上げ、それを牽引役に新興国が発展しました。しかし世界が同時に量的緩和、金融を緩めたことで、今や悪弊でしかなくなり、新たな経済ドライバーとしての策を、世界が必要としている段階です。規制緩和とて、緩み過ぎた結果もたらしたサブプライムローン問題など、緩和と監視は本来両面で難しい問題を抱えている中で、経済成長の具体策もない中でそれを取り上げると、失敗の影響はより甚大になります。

野田氏の「成長の一番の懸念は円高」という発言も、的を射ていません。この国が成長するための最大の懸念は、国民の富が増えていくという期待が、まったくもてていないことです。つまり今は、個人所得の減少が顕著であり、それをさらに社会保障と税の一躰改革でも、重税感が殊更国民の気持ちを重くしています。そこにきて、また増税や復興債などマインドを低下させるので、この国はいつまで経っても成長できません。なぜこの共同記者会見で、公務員制度改革にふれ、公約でもあった公務員人件費2割減を訴えなかったのか? 特に前原氏など、みんなの党に連立を打診と伝えられ、てっきりそれを述べるかと思いきや、期待はずれです。国ができることをまずやらないから、この国は成長できないのです。各々の候補からもやる気を感じない点が、最大不幸社会と云えるのでしょうね。

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2011年08月26日

菅首相の退陣。各候補の経済政策は…?

米4-6月期GDP改定値が年率換算で1.0%増(速報では1.3%増)となりました。増であっても、潜在成長は下回るので、減速を示した形です。民主党代表選でも、外交方針が問われるはずですが、世界経済の減速を織り込むなら、今は親和的でない方が都合よい、という言い方もできてしまいそうです。
自民重鎮が、民主代表選で数合わせに奔走するのを「かつての自民みたい」としましたが、大きく異なるのは実弾がない点です。民主はグループの結束がゆるいので、票の取りまとめができません。自民なら派閥同士で金銭の取引があり、票をとりまとめられましたが、その点で民主は最後まで流動的です。そんな中、菅首相が正式に退陣を表明、本格的に代表選が始まりました。

前原氏、野田氏、馬淵氏、海江田氏、鹿野氏の五名となりそうですが、大きな動きは小沢、鳩山グループが海江田氏に乗ったこと。これで150程度が基底につくので、強い味方になりそうです。推薦人がそのまま、候補者にのると1回では決まらず、決選投票になりますので票読みは非常に困難です。
旧民社、旧社会、樽床グループなどの動向が関わりますが、羽田グループは早くも自主投票とするなど、当日まで予断を許さないといった点が、民主党では非常に難しい。例えば樽床氏はベテランから世代交代、を訴えるので前三者にのりそうですが、一方で前々回の代表選では小沢グループから支援を受けており、その恩義もあります。しかも現在の主流派の失敗は、他のグループとて不満があるところですから、反菅も合わせていくと、海江田氏に流れそうです。逆に、決選投票になれば反小沢の流れで統一されることから、そうなると票も割る。ただ、一回生も前回の失敗があるので、ここで菅政権の継承を唱える政権だと…という不安もあって、本当に最後まで分からないのでしょう。

一つ、消費税の視点をいれると、野田氏、前原氏が当初よりやや後退したものの、前向きである点は変わりません。しかも財政再建や社会保障の財源、と考えられることから、経済対策よりも財政規律派とみられます。一方で馬淵氏、鹿野氏は復興債に言及しており、財政規律より景気重視派。しかも馬淵氏は日銀への期待も示すなど、最近の新自由主義に近い傾向もありますが、財金分離を軽視すると、今後債券への影響も必至となります。鹿野氏の経済運営はまったく不透明。
海江田氏の経済政策は、さらにナゾです。経済評論家、経産相という経歴をみても意外ですが、時と情勢に応じて態度を変転しており、骨になるところがありません。これは経済分野で誰かに師事したり、基盤となる経済理論がない、ということを意味しており、どういう形で消費税と財政、金融を考えるのか、態度を示していないことも影響します。結果的に、海江田氏は首相になってみないと分からない、ということに陥りそうであり、極めて不透明と言わざるを得ないのでしょう。

米国は景気減速が、中国もインフレでバブル崩壊まで進む公算が、極めて高いのでしょう。このとき、与党の代表が明確に財政、金融を語れないのが、この国が陥っている事情です。米、中への親密度という形が裏で描かれることもありますが、実は今問われるのは日本としての態度、海外に依存せずに日本が単独でどう生き残る道を模索できるか? なのです。
個人的に代表選を読むと、前原氏は今回あまり乗り気ではないと見ています。追い込まれ出馬なのと同時に、今度の代表はかなり窮屈な政権運営となり、その後の衆院選では政界再編に近づくことも想定されます。その時、ここで自分を安売りして×をつけるより、政界再編後の主導圏を握りたい。今回の出馬も、前原氏を推す時間のない、敵の多い人の意向も含んでおり、自身は負けても二番手で存在感を示せれば良い、と考えているのではないか? 本気で政権をとりにいくなら、小沢氏ともっと真剣に、膝をつめているでしょう。結局、そこに乗れないのは、前原氏の本気度の問題もあるはずです。そう考えると、第三極が前原氏にのってくるか、それは流動的であり、小鳩がのって基底票を獲得した海江田氏が、一歩リードとみて間違いないのでしょうね。

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2011年08月25日

菅政権の肯定? 否定?

菅政権の冊子が話題です。極めて多くの成果をあげた、という自己礼賛ですが、短命政権に終わる原因を述べていますが、簡単に論破できます。1.衆参ねじれ = 過去に何度もある。2.民主党内の結束の乱れ = 自身の指導力不足 3.内閣支持率の低さ = それは結果であり原因ではない、となります。逆に、この程度の情勢分析だから短命政権に終わる、と云うことも可能です。
しかも前政権の責任に帰すのは、最終的にバラマキ4Kと指摘された政策を見直すなど、マニフェストが足かせと云いたいのかもしれませんが、自身もそのマニフェストで選挙を戦い、当選したことを忘れたかのようです。本来、マニフェストは政権公約ですから、それを見直すなら新たなマニフェストを作り、それで国民に信を問う選挙を行うのがスジです。逆に云えば、菅政権の後で大きく政策を見直すのなら、早い段階で選挙をしろという声が、国民の間から高まるかもしれません。

しかも、最近伝わる官邸の飲み会、国会開会中にも関わらずスポーツ観戦、と緩み切った政権の姿が伝えられます。まだ震災から半年も経っておらず、被災者の不安は去っていないにも関わらず、こうした他人の心の痛みが分からないこと、これが菅政権の最悪な部分です。しかもこの予算、恐らく内閣官房機密費を使い切る、という歴代政権も行なってたことを、飲食に浪費しているのでは? との観測もあります。党の金庫に入れたり、餅代として懐に入れたり、そんな政治家もあったでしょうが、これほど大っぴらに使いきりの実体が分かる政権も、初めてと云えるでしょう。
しかも昨日発表された円高対策基金、1千億$もかける割に効果は限定的。この政権で打たれた円高対策は、いずれも効果なしです。外交で大々的に表明した太陽光発電を各戸に、というものも欧州、特に独国では先行しており、何も目新しくありません。再生エネ法案も、推進役には成り得ないのであり、自画自賛するほど菅政権の間に、何かめぼしい施策があったとは、とても思えません。

前原氏がテレビに生出演していました。心を打たないのは、彼が問われるのは実行力であり、云ったことをどう行動に結びつけるか? そこに不安があるので、打ち出すことに期限を切るか、具体的な試論を語る以外、その不安に応える術はありません。例えば八ツ場ダムを、国交相を続けていたら中止できた、と述べていますが、行政は単年度の決算であり、1年でできなければ次の年も予算がつき、それだけムダが増えます。丁寧な説明も必要ですが、中止に向けた計画をつくり、地元に合意を得ることさえできれば、1年で中止までのアウトラインは引けたはずなのです。
前原、小沢会談の前に、仙谷氏が小沢氏と会いました。仙谷氏にとっては反小沢の急先鋒だった自分が折れれば、挙党一致を求めたのは自分たちで、小沢氏の側が党分裂を模索している、そんなイメージ作りの思惑もあったのでしょう。ただ、党内にそういった思惑は広がらず、また前原氏を思って頭を下げた、とも思われず、仙谷氏の求心力低下を如実に示した形となりました。

小沢氏が菅政権の後継か、党の理念堅持か、という選択条件を示したのも、菅政権の失敗を続けるのかどうか、と説いたものです。日程がたて込み、詳細な政策論争がムリなら、少なくともこの点をはっきりすべきでしょう。菅政権を肯定するのか、否定するのか。菅政権は自分たちを自画自賛しますが、それを肯定することで自縄自縛に陥るような候補者なら、たとえそれが数合せに菅グループの票を狙うとしても、その時点で代表選に出る資格がない、とさえ云えるのかもしれませんね。

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2011年08月24日

経済の話。社会貢献度指数の試論

島田紳助氏の引退、大きなニュースとして扱われていますが、おや? と思うのは先の海老蔵事件との兼ね合いです。暴力団とは異なりますが、被害者として扱われましたが、裏組織と関係するとも云われ、徹底追求もなく復帰への道筋が示されました。梨園の常識と、芸能事務所のコンプライアンスは異なりますし、同列に扱うべきではないかもしれませんが、芸能の人脈には、表には出せないものがかなり多く含まれていますから、各人が戦々恐々なのかもしれませんね。

米国でダウが300$以上上昇したにも関わらず、東京市場は100円近い下げとなりました。これをナゾという人もいますが、独景況指数や、米新築着工件数など、欧米の指標は総じて悪化を示しており、米景気は瀬戸際です。しかも、QE3が打たれても米景気を底上げしない、という観測が多く、しかも世界景気にとってはマイナスが大きい。つまり、これまで米景気さえ健全なら、世界経済の下支え役になる、として無茶な施策を通してきた米国ですが、それが通用しなくなったことを意味します。
さらに、米国で期待値が増せば増すほど、その思惑と違ったときの急落も怖い。これが連動性を失った原因です。しかし、これは日本にとって良いことです。米国の景気後退は、かなりの高確率で起きます。それは各国で景況感、つまりマインドが極端に悪化していることから、今後よりマクロ指標に期待できる点はなく、さらにミクロの悪化も示唆されています。ここで米国との連動性を外しておけば、ある程度の海外の下落を緩和できる余地を残すことになります。

日本では、日系の先物買いが大量に入っており、相場の下支え役になっています。日本国債の格下げは、むしろ見通しが『安定的』となり、それが好感された形です。しかし政治情勢を格下げ理由とされた点で、今回の民主代表選は海外からも、日本の評価の一里塚、とされていることが伺えます。
せっかく欧米との連動性を離れたのですから、日本独自の評価基準を打ち出すべきなのでしょう。個人的な試論ですが、企業や団体に対して、社会貢献度指数を導入すべきと考えます。自己資本に対して直接雇用の比率はどうか? 役員、管理職を除く従業員に対する、売上高に対する賃金の比率はどうか? ボランティアへの取組みや、寄付への取組みは? などを指数化し、それを企業、団体などに適用する。恐らく、これは業種、業態ごとに比率は変わってきますし、恐らく効率化という観点からは反対の評価となるはずです。しかし、低成長型の経済では、業績やPBRなどにこだわっていると、下落への歯止めがかけられない、という事態に陥りかねません。

この社会貢献度指数は、企業のもつ社会的責任です。この指数が高い企業ほど、就職したいというインセンティブが働き、優秀な人材を集めやすくなる。これは将来投資の意味であり、また信頼という価値観の評価です。信用から信頼へ、企業がそういう声に応えることこそ、低成長型における新たな企業価値として、評価していくことも必要なのかもしれません。
市場ではETNが上場されます。これはETFより自由度が高く、指数に何でも連動させることが可能である一方、発行体の破綻リスクを負う金融商品です。このタイミングで、金融商品を拡充することにあまり賛成はしませんが、社会貢献度指数をETNで取引すれば、ある程度企業の新たな価値として評価できるかもしれません。指数の計算は色々とありますが、日本初の新たな価値、格付けなどに頼らない評価基準を打ち出すことで、相場下落に対応するシステム作りも必要なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2011年08月23日

前原前外相が出馬表明

前原前外相が民主党代表選に出馬を表明しました。厳しいのは会合に35名しか集まらなかったこと。野田財務相、馬淵前国交相などと支持基盤が重なり、信義の面からもすでに支持を約束した議員は、そちらを裏切れません。決選投票になれば結集するとしても、今回の出馬で大きな禍根を残すことから、前原氏は挙党一致を訴えますが、実は前原政権が誕生すれば、初めからぐらぐらになります。
しかも、国民支持が高いといっても、野党支持者も参加しており『前原与し易し』との算段も、恐らく働いているでしょう。在日韓国人からの献金は、知らないとイイワケができない状態であり、野党系市民団体から告発されます。またその前、脱税の疑いで逮捕された容疑者との不適切な関係、も取り沙汰されたように、前原氏は身体検査に耐えられない候補、との噂が専らです。

議員生命をかける、というのも強ち誇大広告ではなく、これらが一つでもクラッシュすれば政権どころか、自身の政治生命が絶たれます。自分ではムリ、と気づいているのに、周りの声に推されて出ざるを得なくなった、これが追い込まれ出馬の真相でしょう。野田氏、馬淵氏では勝てそうにない、一度主流派の座を明け渡せば、もう復権は難しいだろう。急に挙党一致を訴える、その慌てぶりは強気の態度に限界が見えた証拠であり、衰退の兆しを必死で振り払う行為となって現れます。
自民は、前原氏なら願ったり叶ったりです。つまり前原氏をスキャンダルで追い落とせば、必然的に総選挙に雪崩れこみます。民主は直前に代表選を行い、総選挙を戦う形になる。これは自民にとって有利に働きます。前原氏の政策、それに醜聞も含めて、野党はてぐすねひいていることでしょう。

ここまで理解した上で、前原氏が勝てる公算は菅グループの取り込みです。菅氏の献金問題も、すでに司法の捜査は進んでおり、官邸のGOサインが出れば、立件可能な段階と見ています。反菅勢力が権力を握ると、菅氏に強制捜査が入り、グループは解体の危機に陥ります。今度の代表選は、小沢派、反小沢派という以上に、反菅、反仙谷が混じり合い、勢力図は混沌としているのです。前原氏は前原、菅グループで二番手を確保、決戦投票で野田グループ、馬淵氏についた議員を取り込んで、やっと勝てるか、というところなのでしょう。逆に、小沢グループが一人にのれば、一度の投票で決まってしまう可能性があり、そうなれば今度の覚悟はすべて水泡に帰してしまいます。
自民の調査能力には疑問符が残りますが、本気になれば、前原氏の醜聞を見つけるのはそう遠くない時期に訪れます。早ければ年度内に解散、という戦略が描けることから、大連立など応じる必要もなくなります。部分連立にとどめ、あくまで責任の共有という形にはしないはずです。

前原氏のような脇の甘い政治家は、自民なら首相候補にもなりません。しかし民主党内では保守の象徴、のように祭り上げられた結果、殉死となることが必定です。政策や思想ではなく、象徴で人を選ぶと必ず失敗する。それは数年に及ぶ首相の交代劇で、嫌というほど国民は見せつけられました。その愚をまた今回も犯すのか? 前原氏は、そんな象徴ともなりつつあるのでしょう。
殉死が、自らの脇の甘さから出るのなら頓死です。今、世界経済は『信用クランチ』に怯えています。高い格付けを与えられても、破綻懸念を生じれば売り叩かれます。この格付けを『世論調査の支持』、破綻懸念を『醜聞』、と置き換えれば政治情勢も同じです。首相が信用クランチを起こせば、法案は目詰まりしますし、支持率下落がメディアの首相叩きとなり、さらに支持が落ちる負の連鎖に陥ることでしょう。少なくとも、首相になる前からリスクの高い人を選抜する時点で、すでにどこか誤った価値観から発生している、そう考えても良いことになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:23|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年08月22日

雑感。バイデン米副大統領の訪中

リビア情勢が緊迫しています。首都制圧目前とされますが、いつの戦争も終わりの描き方、はもっとも難しいものです。カダフィ大佐を生け捕るのか? 暗殺するのか? 残党の扱いは? すでに反体制派の勝利は揺るぎないのでしょうが、国外亡命を許せば、反体制派が政権運営に失敗すると、再びカダフィ派が力を増すことにもなり、政情不安のタネを残すことになります。ここからの数週間から数ヶ月、これが山場であり、リビアの今後にも影響することになるのでしょう。

バイデン副大統領が訪中を終え、日本にも来ました。中国では次期最高指導者の習近平氏がホストを務めるなど、副大統領クラスとしては異例の厚遇といえます。一方で、気になったのがバスケ親善試合の乱闘騒ぎです。これは親善試合ですし、本来は招いた側が礼を尽くして迎えるものです。特に、米国は大学生ですが、中国は人民解放軍のチーム、スポーツで熱くなったというのとは、少し事情も異なるのでしょう。政治で歓待し、別の箇所で本音、そんな外交施策が透けてみえます。
中国にとって、最大の懸念は米国債の動向です。ただし、格下げ後は米景気減速を織り込む債券買いで、むしろ価格は高騰していますが、これも一時のバブル症状であり、長期的な安定は見えません。副大統領の訪中を前に、人民元相場の動きが大きくなり、人民元高に誘導してきました。これは訪中に向けた演出、という見方もありますが、インフレ抑制といった側面が大きかったと見ています。もうすぐ中国は貿易赤字国、との試算もありますが、輸出より輸入により目配せし、国内景気の動向を見ておく必要を感じ始めた。人民元高になると、確かに輸出には厳しい状況ですが、むしろ輸出するような企業は外国資本、国内産業育成といった面でマイナスは少ない。米国の景気減速で、輸出には厳しい情勢なので、ここ直近の軸足をインフレによりターゲットを置いた、ということです。

しかも気になるのは北朝鮮です。韓国に対し、金剛山開発の韓国資産の売却を、北朝鮮は通達しました。当然、韓国現代は投資がムダになったばかりか、安価な労働力で生産する術を失い、事業の見直しを迫られます。中国も北朝鮮開発に利権をもちますが、仮に北朝鮮に圧力をかけた場合、そうしたものがムダになる可能性すら滲みます。北朝鮮が中国を裏切らない、という慢心は控えるべきであり、北朝鮮の崩壊リミットに応じて、支援や投資の利害を考える必要を生じています。
バイデン氏にとっては最大の国債保有国から歓待され、面目躍如ですが、米国では景気低迷が長引けば必ず地方が破綻します。恐らく、今回は条件面など詰めてはいないでしょうが、中国もターゲットは示したいはずです。それは年内とされる答礼訪米の席で、より具体的に米国債の持分について、議論されるのでしょう。中国はやるときはやる、その決意がバスケの乱闘騒ぎと見ています。

もしこの乱闘騒ぎが、ただの熱くなっただけの暴走でも、中国にとっては由々しき事態です。それは軍が統率きかない、歓迎ムードをぶち壊す、といった方向であって統率不足を意味します。最近、デモが頻発する中国ですが、イライラ感が募る国内。これが中国共産党の一党支配に対する反抗、にまで結びつくのは、バブル崩壊などの経済失政が重なるときとなりますが、いつそうなってもおかしくない。だからこそ人民元相場を加速させ始めた、という象徴的な動きでもあったのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:24|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アジア | アメリカ

2011年08月21日

菅内閣と鳩山内閣と小泉内閣と森内閣

退陣表明している菅政権の総括をしてみたいと思います。菅内閣は驚くほど森内閣に似ています。小渕氏の急逝で急遽、ベテランの森氏が党首に就任、小渕内閣を引き継ぐ形で発足しました。その後、内閣改造を行ない、支持率回復を狙いましたが失敗。内閣不信任は否決したものの、その約2ヶ月後には退陣に追い込まれています。1年と少しの任期、低支持率、政権の帰趨はかなり似ています。

ここで誕生した小泉政権は、ここ20年では最も成功した政権となりました。その理由は、自民党内にあった危機感です。森内閣でボロボロになった自民は、結党以来の危機として変人・小泉氏を選択しました。小泉人気は高く、危機感もあって閣僚も官僚も、小泉氏に反抗的な態度は示さず、またメディアも小泉氏の提灯持ちに徹した結果、支持は高いまま推移しています。
次に、政権交代後誕生した鳩山政権は、高い党の支持率で油断した閣僚、官僚が、むしろ鳩山首相を追い落とそうと画策し、普天間では米国に県外移設はムリ、と云うよう依頼したことは、米公文書からも明らかとなっています。つまり閣僚、官僚の協力、という点で小泉政権と、鳩山政権は大きな開きがありましたが、その原因は支持率という尺度から導かれた意識の差、とも云えます。

では、菅政権はどうだったか? 首相をコロコロ変えるな、という論調がまかり通ったため、かなり高い支持率をしばらく維持し続けました。さらに反小沢政権、として陣容を固めたため、当初から閣僚も協力的で、順調な滑り出しだったと云えるでしょう。しかし消費税議論、平成の開国、脱原発依存に至るまで、菅首相が何か目標を立ち上げるたび、閣僚の心は遠ざかっていった。方針は官僚の意に添うものが多かったにも関わらず、そうなった原因は国民の不支持にあります。
ここで奇妙なことは、内閣支持率は高いのに、政策、政府方針の支持は低かった点です。はっきりしているのは、菅氏が打ち出すものが国民の声を代弁したものではなかった、ということです。消費税は財務省の、平成の開国は米国の、それぞれ意中の策でした。支持率が低迷し、福島原発で事故が起こって、初めて国民の声に耳を傾けた。しかし、それではあまりに遅すぎました。しかも、それまでとってきた態度、方針に整合させるため、結果的に言行不一致になってしまった。菅氏が初めから大衆迎合主義を貫き、小泉政権と同じ歩みをとっていたら、長期政権も可能だったでしょう。

しかし振り返っても、菅政権は内政、外交にまったく成果がない。これ、といったことは一つも成し遂げられていないのが実状です。むしろ鳩山政権は、政権交代の勢いにのり、高校授業料無償化や子ども手当、高速道路の実験的無料化まで、成果は残したと云えます。逆にいえば、菅政権は小泉政権という最も成果をあげた政権を手本にして、最悪と酷評される鳩山政権さえ超えられなかった、ということになります。さらに、鳩山政権の成果をすべて白紙に返すのですから、先祖返りまで達成したという点で、菅政権は一体何をしたのか? よくわからなくなってきます。
統括すれば、菅政権の1年は裏自民として民主党の政権交代を否定する、それだけの期間だったのでしょう。しかし、ここで次の政権に不安を残すのは、民主党の支持が曲がりなりにも10%以上あり、恐らく民主党議員にも危機意識が足りない。森政権後の小泉政権、のような形には成り得ない点です。共同通信の世論調査で、前原氏がトップにいますが、前原氏は大衆迎合型になりやすいですが、小泉氏のような強い方針はなく、また仙谷氏が背後にいる限り、媚中外交など国民の不人気な態度をとらざるを得ない、という点があります。菅政権は終わっても、次の政権まで迷惑をかけるという点では、森政権以下、という言い方さえできてしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:30|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年08月20日

民主党代表選と自民と米国と

自民・石破政調会長が、民主代表選における小沢詣で、を批判しています。メディアも俄に小沢氏の存在感が高まった、という報道の仕方が目立ちますが、元々党内最大のグループなのですから、これは今に始まったことではありません。しかも問題の本質は、小沢詣でをすることではなく、人数集めばかりで政策議論が進まないこと、です。特に中堅クラスで出馬を模索する人間が、イノベーション的政策を打ち上げ、支持を拡大するという策をとらないため、小手先の議論に終始します。
これではただの顔見世、売名行為といった謗りを受けても致し方ないのでしょう。つまり、こういうことがやりたいから、首相になりたいではなく、現実路線の微修正だけなら古株で十分。何も世代交代してまですることではありません。新しいことを始めるからこそ、世代交代が意義をもちますが、そういう貪欲さもなく、清新さだけの見栄えなら、手腕という点で禍根を残すことでしょう。

しかも民主党代表選に、自民・谷垣氏が口を出したので、状況はやや複雑です。大連立を打ち出した野田氏に「頑張ってもらわないと…」と述べ、野党としての対決姿勢を放棄したかのような発言をしました。しかも自民・石原幹事長が「谷垣総理なら歓迎」と述べるなど、状況をさらに複雑化させています。町村氏が採決に欠席して反対の意を示し、伊吹氏も異を唱えるなど、野党としての結束力を問われかねず、党首としての谷垣氏の力量にも疑問符が灯されています。
谷垣氏は1999年、財務相当時に日銀に圧力をかけたことが、後に公表された議事録で明らかとなっています。昨日、史上最多金を更新したドル/円ですが、一部で官邸の動きが鈍いとの指摘もあります。確かに、昨日は目立った材料もなく、それでも上抜いてきたのはキャリートレードが週末で、財務省の監視の目を盗んで試しにきただけなので、あえて見送るというのも一つの手です。ただこの一件をみても、野田氏で大丈夫か? という懸念を与えたことは確かでしょう。あくまで憶測ですが、仮に米国がこのタイミングで、為替に急変動を起こせば野田財務相が追い込まれるのが必至。逆にみれば、これは米国が野田氏を試しにきた、という見方すら可能なタイミングでした。

裏を返せば、米国は日本に財政再建ではなく、景気対策を打って世界景気の下支え役を期待しており、野田氏は不都合と考えているのかもしれません。しかし米国とて、景気対策にめぼしい政策を出さない各候補者に、歯がゆい想いを抱いている、というところなのでしょう。9月に首相が訪米する話を残しているのも、新首相に期待するところが大、それは日本の大盤振る舞いかもしれません。
この点で、自民も谷垣総裁では不都合、と映るのかもしれません。中央銀行に金融緩和を迫ったのも当時の円高対策ですし、ドル安容認のオバマ政権にとって、日本の打つ対策によって更に米景気を沈ませてもらっては困るのです。財務族が並んでもらっては困る、それは大連立でも同様で、野田氏と谷垣氏の組み合わせは、現在の米国にとっては非常に問題も多い、ということです。

最近、少し注目している読売新聞ですが、米国の先鞭と思われたこの新聞が、これと逆の論調をとっている点がやや気がかりです。円高阻止、大連立、野田財務相を一押し、当然経団連の意向も受けているでしょうが、旗幟を鮮明にする中で米国におもねっている部分は原発推進、ぐらいです。正力名誉オーナーが亡くなり、何らかの変化が生じたのか? 実質的には渡辺氏が社主で、その意向が反映されてはいますが、逆に最近の旗幟鮮明が、軛を外れた社主による独善という形で成し遂げられているのなら、記事の方向性が常に疑問視される、ということになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:36|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アメリカ

2011年08月19日

経済の話。米国の景気減速懸念

米HPによるパソコン、タブレット事業のスピンオフ。安売り競争にまきこまれ、パソコン分野でHPは安売りメーカーとして意識されます。どうせなら円高なので、日本企業が買収に乗り出しても良さそうですが、ブランドイメージで得になるか? それはやや不透明です。遮二無二、世界一をとりにいっても世界経済の鈍化は、多くの企業が打撃を受けるほど、苛烈になると思われます。

世界同時株安ですが、気になるのは、独仏首脳会談でも取り上げられた域内金融取引における課税です。世界は財政再建と景気刺激と、二兎を追うため、増税措置をとるしか財源が捻出できません。中間層の低所得化、日本でも起きた現象が欧米でも起き始めており、とれるところは富裕層と、企業であり、特に金融機関は経営陣に高額報酬を払うなど、目立って攻撃しやすい面があります。
しかしバンカメが3500人の人員削減、他の金融機関でもトレーディング部門の解雇を進めています。この二面性が生じる原因は、経営陣が高い報酬を得るために、企業としての成長より人員カットという短期利益に注力し始めた。つまりそれだけ収益性が低下したことを意味しています。実はこの傾向が米国が陥ったジレンマ、最悪は米景気を底まで引きずり込む元凶とさえ云えます。

雇用の低下、労働条件の悪化、これによりマインドが低下し、一方で企業は高収益により経営陣に高い報酬が支払われる。ここに楔を打たない限り、米国の景気回復はありません。それがティーパーティーにより阻害され、米景気対策は打てない、という見方が専らです。しかも昨日発表された7月消費者物価は前月比0.5%増と、高いインフレを示し、これでQE3期待は8月中は消滅です。
流動性が不足している状態の景気後退ではなく、資金の流れがどこかで目詰まりしていることにより、必要なところに資金が流れない。これが現在の状況です。欧州の金融機関が資金調達に懸念を示されるのも、欧州ストレステストが失敗し、破綻懸念を生じることから起きている。破綻懸念があるので、銀行間取引は高騰し、互いに疑心暗鬼を生む原因となっているのです。

日本でも3次補正の話がありますが、財源議論からつまずきそうです。国債市場が混乱する中、復興債が出せるのか? 増税して景気は大丈夫なのか? 実は政治家、官僚とも答えはもっていません。やってみないと分からない、そんな状態が3次補正の財源論にはあります。菅政権の間、復興議論が遅れたことは殊の外大きく、年度の後半に向かうに従って、さらに財源論が紛糾しそうです。
円はヘッジのため、持分を増やす傾向が顕著であり、ここに介入などを加えると、世界市場を混乱させる恐れがあります。スイスフランが好例ですが、スイス中銀などが対策を打ち出し、為替がぐらぐらし始めると、リスク資産の圧縮が起きる。市場を人為的に操作しようとする試みは、良かれと思ってやっても、負の影響を起こしかねない。悪いことを云えば、日本の為替介入が世界同時株安の引き金になっても、何ら不思議ではない状況に今、陥っていると云えるのでしょう。

日本の株式に、当面上昇の余地はありません。レンジ相場になった後、抜ける確率は下の方が大きいと云えます。今は水準感が通用しない時代ですが、少なくとも日米欧の政策担当者が、未だに正しい答えを導き出せていないので、景気悪化はかなり高い確率で起きてしまいます。
ミルは経済成長を求めない世界、つまり停止状態を提唱しました。これは経済社会の発展と、自然保護という観点から描かれた、幸福に対する方法論ですが、雇用のための労働という仕組みが、今や限界に来ているとも云えるのでしょう。経済成長が低迷しても、安定して雇用を生み出すという、全体の考え方を示さなければ、世界はとんでもないところまで落ち込んでしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:46|PermalinkComments(6)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2011年08月18日

民主党代表選に新たな動き

民主党代表選が百家争鳴に陥っています。海江田経産相が出馬の意向ですが、閣僚経験という試金石で失敗し、本人の意志とは別に国民の評価は低い。特に閣僚を辞任する、しないの決断力のなさは、首相の資質を大いに疑わせます。また仙谷氏が親小沢、反小沢からの脱却を訴え始めました。背景には、神輿で担ごうとした野田財務相の支持が芳しくなく、前原氏が出ざるを得ず、票割れからくる少数派転落、これまで主導権を握ってきた反小沢派が凋落の危機にある、ことがあります。
これは仙谷氏が追い込まれている、ことも意味します。いつの間にか反小沢ではなく、反仙谷が出来つつある。それは中国に阿り、官僚を使ってやりたい放題、強引な答弁は野党にも敵が多くいます。野田氏にしろ前原氏にしろ、仙谷氏がバックにいる限りその強い政治力に屈し、院政を布かれてしまう、という懸念を生じます。逆に両名が多数をとるには、仙谷氏を切って挙党一致を訴えるしかありませんが、そうなると政治家として非常に薄っぺらくなり、期待値が集まりにくくなる、というジレンマがあります。保守で国民の支持が高い、とは云ってもそれを隠れ蓑に、バックに左巻きバリバリで学生運動上がりの実力者が政権を牛耳る、こんな構図では期待も集まりにくいのです。

しかも、こんな状態で後10日程度で代表を決めよう、という党執行部の姿勢も問題です。復興についての提言や、経済政策について何も語られていません。しかも自分たちが野党と合意した内容を、後の政権にも引き継がせようとする。党間合意とはいえ、党内調整を経ていない合意なので、それが党内、党間で新たな火種となることが、子ども手当ビラでもはっきりしています。
例えば米国では、来年の大統領選にむけてオバマ氏が雇用創出にむけた、経済対策を出します。毎週何らかの対策を出す、とも述べているので、国を上げて景気浮揚に懸命です。一方で独仏首脳会談では欧州経済圏の統合にむけ、法人税率の一元化などが盛り込まれました。世界は二番底懸念にむけ、政策総動員態勢に入っているのに、日本の代表選では景気に関しては議論すらされないのです。

各国の経済指標で分かってきたことは、消費意欲の鈍化による外需の低迷。日本でも7月貿易統計で、輸出は前年同月比3.3%減、サプライチェーンの寸断が元に戻りつつある中、輸出には期待できない面が鮮明です。このとき、国内で何も対策を打たなければ、日本は景気低迷が鮮明になります。日本では景気が政権選択に大きく関与したことはありませんが、実はそうした姿勢が、失われた20年と云われる長期低迷をつくってきた原因、と言えるのかもしれません。
代表選で百家争鳴する候補者が、道に通じた有識者として争って鳴くのではなく、鶏鳴狗盗の輩であってはどうにもなりません。少なくとも、今日の市場で話題になった政府・日銀との緊急協議で、「円高に投機的要素」などと述べる財務官がいる時点で、日本の経済担当者に正しい判断ができる者はいない、と断じられます。ヘッジで積み上げるポジションと、投機で売り叩くポジションとはまったく異なるのであり、それを理解できない人間がこうした発言をします。

失敗し続ける為替介入を正当化しようと躍起ですが、こうした動きを政治が止められない、そんな閣僚では力不足ですし、そんな人物が首相になったら良い未来が描ける、と考えられるならそれは幸せな人なのでしょう。試金石に失敗した候補者ばかりが、石に齧り付いても首相になりたい、という強欲で立つようにしか見えません。殷鑑遠からず、少なくとも閣僚すらまともに成し遂げられない人間にこの難局を裁く能力はない、ということだけは確かなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:39|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

原発をめぐる報道、読売と東京

北海道、泊原発3号機の再稼働に関し、高橋道知事が容認姿勢を示し、これで福島原発事故以来、初の営業運転となりました。この動きに関し、読売新聞は枝野官房長官の調整力を讃美し、東京新聞は高橋道知事が旧通産省出身の父をもち、また後援会にも電力会社役員などから、献金があることを指摘。デキレースだったことを報じています。いずれが正しいかは一目瞭然で、東京新聞の方が精緻で、内容からみても正しいと云えるでしょう。では、なぜ読売はこんなベタな記事を載せたかと云えば、私は野田後の政局を見据えているのではないか? そうみています。

読売は社主が大連立を唱え、ほぼ社是となっているほど、記事にも大連立を賛美する姿勢が目立ち、菅政権後は野田政権の誕生を望んでいます。消費税増税も唱えることから、野田氏はうってつけの候補ですが、消費税増税を通せば、まず野田政権は短命に終わるでしょう。そこで総選挙を行い、自民が勝てば御の字ですが、民主が勝ったときに保険をかけたい。野田氏の後は前原氏、枝野氏辺りと踏んで、実績として披見できるような記事の書き方にしたのでしょう。
最近では、東京新聞の記事が秀逸です。例えば、4月13日に経産省、文科省が原発立地地域への交付金について改訂し、新増設による交付金増額や、稼働率、発電量に応じた交付金額に変更しています。後者は、原発再稼働に暗雲が漂うことで、地元に危機意識を醸成するため行われたものであるのは、ほぼ間違いありません。これが大きな問題なのは、軽微な事故が起きても、地元に止めるという判断は下しかねず、安全軽視で再稼働が容認されてしまうこと。また廃炉になった際、地元に汚染された施設があるにも関わらず、もう交付金は下りない事態になる、ということです。しかも、この改訂は記者発表もされず、こっそりと行われていた。経産相、文科相が省益、官僚の意のままにこんな通達を出していたことは、能力不足を問われる内容であり、如何ともし難い面があります。

さらにこの交付金は、原発稼働に関係なく税として、電気料金に上乗せされています。しかも特別会計なのでチェックも利かず、出し渋れば渋るほど、繰越金として積み増すことも可能。そして経産省に従順な自治体に大盤振る舞いできる、という曰くつきのカネです。最悪のタイミングで、最悪のことを通した経産省の官僚は、早期退職勧奨で退職金割増し、というオマケまでついています。
しかも福島の子供たちの被曝調査を実施し、問題ないと述べるだけで個別に詳細な回答は避けていた件で、45%に内部被爆が確認されました。しかも調査は3月24〜30日、公表が遅れたことと同時に、空気や食べ物から定期的に、放射性物質を摂取してしまう環境にあるので、実は3ヶ月毎の追跡調査が必要であるにも関わらず、ここまで公表が遅れたのですから、これは由々しき問題です。

こうした原発、事故対応の情報公開や、調査の姿勢には何ら評価できる点がなく、官房長官が泊原発再稼働に動いたからといって、それは実績ですらありません。むしろ、背後に交付金の動きがある以上、地元の判断がそう傾くよう仕向けられていた、ということが大きいと云えます。
子供の被曝にしても、基準以下だから大丈夫、と述べるばかりですが、いくらチェルノブイリと比較しても、ロシア人と日本人の放射線における影響が、同じであるとは少なくとも学術的に立証されたものはないはずです。これはDNAの傷つき易さ、に依存するのですから、日本人には日本人の定量的な観測、実証に基づいて安全基準が決められねばならず、それは現在端緒についたばかり、なのです。原発推進メディアが、やたらと再稼働を讃美する姿勢をとりますが、少なくとも原子力ムラの一端をになっている、フィルターがかかっている、という目で見ておかないとリスクも高い、ということを今回の動き、メディアの態度が如実に示していることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 00:51|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 原子力 | 社会

2011年08月16日

経済の話。日本、欧州のGDP

Googleによるモトローラ買収、多くが特許の囲い込みのためとしますが、その通りなのでしょう。個人的には、Android電子辞書の登場に期待したいところです。Wi-Fiを搭載し、調べものはこれ一台で、といった使い方ができれば便利ですし、実は機能的にも親和性の高い分野といえます。Androidはエコシステム(生態系)と呼ばれるオープン性を有していますが、Android側を寄生させる、という考え方ができれば、生態系の中で生き残るような、そういう形が生み出せるのですけれどね。

昨日、内閣府が発表した4-6月期国内総生産(GDP)の速報値が、実質で前期比0.3%減、年率換算で1.3%減となりました。名目で前期比1.4%減、年率換算で5.7%減なので、デフレ圧力が強いことが示されましたが、予想より悪くはなかった数字です。節電家電の売上が好調で、個人消費の落ち込みがひどくなかった反面、非耐久財消費は2.4%減など、より選択的消費がすすんだ、との見方もできます。
企業が在庫を積み増さなかったことなど、好材料が重なった結果、とも云えますが、気になるのは前年同期から2.2%減となったGDPデフレーターです。モノ不足が指摘され、水が店頭から消えるなどしてもデフレ傾向は解消されない。これは深刻です。日本は企業が強いので、放っておいてもサプライチェーンの回復は早いですが、消費の悪化を食い止める術はないのが現状です。

しかも今回の震災は、大きく土地が動いた結果、いつ住宅復興需要が起きるか分からない。高台への住宅建設や、汚染区域の住宅の扱いなど、未だに政治が決めきれない結果、個人も動けないのが実状です。来年にかけては順調に回復、そんな政府のシナリオを覆す数字が欧州から出てきました。
4-6月期ユーロ圏域内総生産(GDP)が、0.2%増となりました。-3月期の高成長の反動、ともされますが、信用不安の拡大だけでなく、世界経済の減速懸念、歳出減圧力などもあって域内が軒並み低成長にとどまったことは、債務不安に怯えるだけにかなり悪い材料です。そんな中、ユーロ共通債の発行に向けて、独仏の声明が今晩、発表される見込みですが、この試みはうまくいかないでしょう。

例えば、企業の一事業が赤字でも、他が黒字でカバーすれば格付けは維持されます。これは財務が一体である、という前提があるためです。しかし欧州は財務が別、破綻懸念に陥ったギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどは別枠としても、ベルギー、イタリア、スペインなどの第二弾をどうするか? もし仮に共通債の枠組みに入れると、初めからこの共通債はBランクしか得られない、ということになりかねず、独仏にとっては資金調達が高コストになり、メリットがありません。
一方でECBの信用力で低利で借りられるなら、財務に甘さを残す、これまでの体質を継続させます。いずれにしろ、共通債の枠組みに入ることが信用力につながれば、国家間に悶着を起こすことになり、それもあまり宜しくないので、誰にとってもメリットがないことになりかねません。共通債を採用できる基準をクリアさせる、ユーロ導入と同じハードルを課しても、機能しなかったのはこれまでと同様ですし、喫緊の課題には答えを出せないことになるのでしょう。

米国の4-6月期GDPも年率で1.3%増、潜在成長率からみると非常に悪い数字でした。世界には同時不況の足音が聞こえ始めており、しかも政策対応が限られる、というイヤなタイミングです。金融を緩和したため企業はキャッシュリッチ、Googleも現金で125億$を捻出できるなど、極めて異例な状態が続いています。これ以上の緩和や、債券の新形態による発行などが議論の俎上にのぼっている時点で、手詰まり感が強いとさえ云えるのでしょう。世界では、いつ何が起きても不思議ではない。経済の分野では、すでにハルマゲドンがいつ起きてもおかしくない、という状況なのでしょうね。

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2011年08月14日

民主党代表選、各候補について考える

民主党代表選に出馬を表明した野田財務相が、大連立に関し「責任を持ち合う形」を提唱しました。ただ国民にとっては、責任の帰趨はすべて与党にある、とみられます。当然、多数党がより主導権をもつ立場ですし、そうでなければなりません。代表になる前は、自分がやれば上手くいく、という慢心が支配していますし、そうでなければ手を挙げられないでしょうが、こういう慢心が一度の失敗で焦燥を貯めると、結果としてすべてが上手くいかない、負の連鎖に陥るのみとなります。

野田氏以外の候補を見てみます。樽床氏、馬淵氏、小沢鋭氏は五十歩百歩、中堅クラスですが政治姿勢も方針も見えず、安心感、安定感がありません。こういう中堅は、ベテランに後見になってもらわないと弱い。これは小沢元代表に限らず、輿石氏、鳩山氏、菅氏など、人と金を集められる人間がバックにいないと党内基盤が弱く、また国政をどう導くか不明、といった懸念が強まります。
鹿野農水相は、農水族という実績とともに、小沢氏にも近いとされます。ただ選挙基盤が弱く、ここが小沢氏に嫌われる点でしょう。首相になるような人物は、選挙に負けてはいけない、という小沢氏の方針に合うか? また放射能汚染問題では、農水省を積極的に動かして何かを為した、という点は皆無であり、場当たり的対応にとどまっています。また、農業者戸別所得補償制度が、岡田幹事長による三党合意で検討が盛り込まれており、これは菅政権後も政策をしばる枷です。これを農水族としての鹿野氏がどう受け止めるか、それによっては与野党間の新たな火種となります。

前原前外相は、野田氏とのダブル出馬は得策でないため、出馬の可能性はないでしょう。それぞれのグループがもつ議員数、支持層の重なりからみて、票が割れば共倒れです。国民の支持が高いと言っても、国交相、外相と立て続けに政治家としての弱さ、脆さを露呈し、ここは仙谷氏というバックがいるものの、それが赤さや強権主義であるため、保守層に支持が高いといっても、このバックにしてどこまでその態度が貫けるか? 極めて不安も残すところなのでしょう。
海江田経産相は、もう首相の目はありません。泣いたことそのものより、経産省を統率できなかったという実績が残り、将来に禍根を残しました。選挙区でライバルだった与謝野氏は、菅政権後は野田氏で財務省主導、という組閣でなければ民主党から見放されるだけです。しかしもう選挙には立てないので、選挙基盤は強まりましたが、政治家の立場は弱まった、それが菅政権と海江田氏、という関係の中で鮮明になったことなのでしょう。鳩山前首相のように、政治の機微が読めない楽天家以外で海江田氏を推そう、と考えるような人間はいないので、票も集まりません。

代表選は本命不在、というより対抗すらいない、大穴ばかりです。仏国の宰相だったド・ゴールは、大臣にはからず直接国民に政策を訴えたので「大臣は毎日何してる? 将軍の靴をみがいている」という言葉が生まれました。菅政権の下、大臣は菅首相のちゃぶ台返しと手柄の横取りに怯えましたが、それが終わった途端、誰がどうなっても明るい未来が描けない、では笑い話にもなりません。
仏国の諺に「岩の下にうなぎがいる」というものがあります。日本では「柳の下にどじょう」というと良い意味ですが、これは得体のしれない危険、という意味で、うなぎとは元々ヘビだったのです。そして仏人はあまり、うなぎに良いイメージがなかったらしく、「うなぎの皮をしっぽから向く」は事を逆にする意味ですし、「うなぎを膝で折る」は不可能なことをする、という意味です。日本の首相が『事を逆にし』たり、『不可能をする』と思われたり、『得体のしれない危険』と思われるのなら、それはやはり力量不足と云えるのでしょう。うなぎの卵が発見され、養殖の道が開けたという話もありますが、日本の政治家がうなぎのように官僚から飼い慣らされ、生存競争にさらされないよう培養され、そんな人物たちがリーダーになるというなら、それもまた問題が多いのでしょうね。

明日は一日、お休みしたいと思います。

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2011年08月13日

経済の話。世界が陥っている罠

欧米の株価が急反発しています。空売り規制が効果をあげた形ですが、売りができない市場は、中長期的にみると買いも細ります。これはヘッジが利かないためで、賞味期限の短い対策です。短期では売りが減るため、相場が上昇しやすくなりますが、もって数週間というところです。
7月米小売売上高が、前月比0.5%増となり、米景気減速懸念も若干緩和されました。ただし、米国にある事情はそう簡単ではありません。3月米小売売上高も前月比0.5%増だったことを重ねると、景気不安に陥れば、インフレ期待が増大し、購買意欲が増すという形になります。趣味関連は1.5%減、生活必需品ではない支出を抑え、一方で燃料費高騰もあってガソリンスタンドは1.6%増。そうなると、この上昇は一時的であり、年後半の小売はかなり苦しい展開が予想されます。何より、米国でも高い失業率から賃金デフレが始まっており、個人消費はドル安による輸入物価の上昇が加わると、さらに難しくなる。流動性の罠に陥った結果、金融機関が人員削減を余儀なくされている現状で、雇用や失業率に期待できないことは明白です。さらに歳出削減がどの程度、米景気を下押しするかでしょう。

イタリアで、緊縮財政策が打ち出されました。内閣が議会に提出し、今後議会で議論されます。歳出削減と増税で2012年は200億、2013年は255億ユーロを調達し、財政均衡を目指します。所得税を9万ユーロ超で5%、15万ユーロ超で10%と税率を課し、また祝祭日を日曜日として平日を増やし、労働することによって税収を増やす、という策まで盛り込まれている、かなり大胆な策です。
しかし予定通り、税収増と歳出減が達成できるか不明です。まず所得税が増えれば、高額所得者はイタリアから逃げ出します。特に、欧州は国をまたいで生活することに抵抗はありません。特に、公務員給与の伸びは、第一次緊縮財政策で凍結されており、給与全体が底上げされる気配はないのです。さらに、平日の増加により生産性をあげる策は、むしろ余暇も国民全体の経済としては大事なのであり、レジャー産業、観光業に痛手となります。しかも世界で消費鈍化傾向が強まると、モノが売れない時代に突入し、生産を増やしても輸出が増えないことになりかねません。

ただ、本来こういった策を米国は望まれていたのであり、イタリアも格下げされない、市場から信任を受けるよう、対策を講じてきたと云えるのでしょう。しかもこれは市場対策に似て、一時的には好感されても、将来的にみると経済規模を縮小させる形になります。そして経済規模が大きかった頃に増やした債務の返済に、汲々とすることになりかねない。これは債務の罠と呼べるものです。
経済が低迷している国が、それを活性化させるため流動性を供給しても、経済が好調な国に流れるだけで、あまり効果がない。これが金融政策上、世界が陥ってしまった流動性の罠です。一方で債務を返済するため、緊縮財政と増税を行えば、経済規模さえ同じなら計算上、返済が可能となります。しかし経済規模が収縮することにより、歳入全体が減少し、債務返済どころか借り換えさえ難しくなり、破綻懸念に陥る。これが債務の罠です。どちらも片側からしか物事を見ておらず、短期の対策に固執した結果…という言い方もできますし、地雷ではなく落ちるべくして嵌った罠です。

世界がここから脱出する必要があります。特に日本も同じ愚に陥る懸念は、見かけの財政再建策に増税をもちだすことでも、明らかなのでしょう。必要なことは、政策経費、コストを縮減することにより得られた資金を経済の拡大に回し、そこで上がった歳入により借金返済する、というトータルバランスを考えた、財政、経済、金融の見方なのでしょう。日本もリーダーを選ぶ際、こうした考察を加えておかないと、罠にはまりこむだけとなるのでしょうね。

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2011年08月12日

菅氏〜野田氏? 財務相の系譜

菅首相が民主党議員との会食の席で、退陣後のことを語りました。この見切りの良さ、こだわりなさがブレの原因でしたが、本人に自覚はないようです。小泉型を目指した菅氏は、見た目にこだわる政治といえますが、その結果、更迭とされた経産省幹部が早期退職勧奨、として高い退職金が得られるなど、まったく結果が伴いません。つまり見栄え型政治は、官僚にとってもっとも都合よく、法案の中身や人事を操縦できるのです。国交省OBが天下り、渡りを主導していた現役官僚を告発していますが、こうしたものがあればまず内閣として強い態度を示さない限り、民主党の政治主導はやはり掛け声倒れ、ということに終わります。

そして、そんな懸念を有す候補として、野田財務相がいます。財政規律を重んじる増税派、として対立軸をかかげる、唯一の候補との見方もありますが、いわゆる財務省派です。そんな野田氏を支持せんと、内閣府が今日発表した経済財政の中長期試算で、2015年までに消費税を10%にしても、20年度で18兆円の財政赤字、としています。この試算には財務省も絡んでいますから、ここで発表することは野田氏にとって追い風であり、危機意識を増長するのに役立ちます。
財務省は削減できる予算はない、という態度です。民主党政権の目玉だった事業仕分けにしろ、財務省サイドの調整に頼ったため、それほど予算規模は大きくなく、また事業的には必要と思われる項目が並びました。結論として、財務省に頼った財政健全化は、歳入増しか描けないことになります。

野田氏は自公との良好な関係、を強調しますが、それは逆に見れば行財政改革を放棄したことに繋がります。民主がどれほど支持を落としても、自民の支持がそれほど上がらないのは、行財政改革について、やる気が見られないためです。これは増税に国民はNOでない、という世論調査とは明らかに矛盾しますが、増税の前にやるべきことをやらないと、やはり支持は得られないのでしょう。そして自民の近さとは、選挙対策としてはむしろマイナスで、与党はそれだけ失態の責を負うため、野党を利する形となるだけです。国会運営の失敗、という現執行部の無能と、協調でないと野党対策が不可能かどうか? という判断とはまったく別に考えるべきなのでしょう。
菅氏は脱原発依存として、原子力安全委員と保安院を環境省の下に原子力安全庁をおく形で、決着させました。ただこれも見栄え型政治であり、原子力関連予算も含めて、どう分配し、どう縮減させるかを議論しない限り、脱原発依存という名ばかりの形となります。これを好感し、菅氏を擁護する人がいますが、これなどまさに見栄えに騙された典型、という言い方もできるのでしょう。

日本は財務省型から移行することで、実は初めて財政健全化を成し遂げられるのです。それは大胆な予算の組換えを阻み、既得権益をのこしている最大の抵抗勢力として、機能しているからでもあります。やたらと元財務相が持て囃される現状は、むしろ行財政改革からもっとも遠い位置にある、とさえ云えるのでしょう。日本国債とて、復興債に言及したら格下げ、と宣言されています。
それがただのショック症状に留まるか? は今の欧米の混乱をみても、楽観にすぎるでしょう。今こそ世界一高い議員の歳費、公務員給与にメスを入れ、天下りや渡りをしっかり監視、禁止すべきなのです。見た目ばかりでなく、本質で議論しなければならないのは、ただ『若返り』を理由としたりすることでも同様なのでしょう。財政再建が、ただの歳入増路線に終わるだけなら、この国は経済的にみて、かなり深刻な事態になることだけは間違いないことなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年08月11日

雑感。民主党代表選は月内?

中国で初めての空母として注目を集めるワリヤーグ改、技術を寄せ集め、まずは試験運転の前の試運転、という形で港を出ました。これで日本への脅威は、核攻撃と同時に海戦も含まれた形です。そんな中、気になるのは香港取引所のウェブサイトにハッキングがあり、一部取引が停止した、という記事です。これまで中国発、不正アクセスという形が一般的でしたが、これは一連のハッキングへの報復する国家組織、空母就航へ抗議する個人、と二通りの原因が考えられます。いずれにしろ、ネットでハッカーが攻防を繰り広げる、という形のネット戦争が本格化するのかもしれません。

特例公債法が衆院を通過、退陣条件である再生エネ法は、民自公の3党合意が先送りされ、日程が微妙ですが、これに絡んで民主党代表選の動きが俄に活発化しています。まだ候補者を云々する段階ではありませんが、28日に代表選、通常国会中に首班指名というきつい日程は、再生エネ法の行方などで崩れそうです。問題は、そんな窮屈な日程で大事な首相を決めて良いのか? ということです。
党員・サポーター票を求めない方針ですが、拙速な決め方をすると、それだけ支持基盤の弱い党首になります。少なくとも3、4回の公開討論、それを各議員が逡巡する期間がないと、恐らく政策で選択する形ではなく、イメージ先行になります。特に、今回の代表選は小沢派、仙谷派の対立構図が生まれているので、どちらの取り込みに成功するか、だけに焦点が当たりそうな雲行きだけに、尚更選択肢として政策が一番にこない、という恐れが強いのでしょう。

今回、狩り場は菅グループです。仙谷氏と袂を分かつ形となり、かつ嫌小沢を標榜したことで、グループはほぼ壊滅的です。菅氏についても今後良いことはなく、グループは瓦解するでしょう。その場合、各員が機をみて動く形になるので、取り込むならココとなります。
民主党は『菅』という代表を生み出したことを、反省すべきです。誰もが悪い意味で『異例』と述べるほど、その手法、首相としての振る舞いは常軌を逸していました。ここでジョン・ミルの『自由論』から抜粋すると、「誤りを犯すことに警戒したり、自分が確かだと思うことが誤りの一例かもしれない、という想定を受け入れる人はごく少数」という意見があります。つまり先の失敗を反省しない限り、次の代表選でも誤ることとなり、それは失敗から学ぶことが必要なのです。

樽床氏と争った際は『経験、安定感』が、小沢氏と争った際は『クリーンさ』を評価し、菅氏が選択されました。しかし実態はそのいずれもが最悪、という評価となって今回辞職します。つまりイメージは先行していたものの、実体が伴っていない。人を見ていない、ということです。
もう一度ミルに戻ると「多数の専制」という考え方があります。これは大多数を得た意見、主張が少数者の自由を抑圧する、というもので、これに対して「自分の望む行為が他人に危害を加えない範囲において、自由に振る舞えるべき」という『危害の原理』を提唱しました。難しいことを省けば、自分が首相として人気が出たいからといって他人を攻撃したり、震災復興が遅れているにも関わらず、それを無視して脱原発依存に注力してみたり、という他人の痛みを伴うようなことはするな、ということです。多数を得た人間が、専制的にふるまった行為は、まさにこれに反しているのです。

最後に、ミルの言葉でもっとも代表的なものは「満足したブタより不満足な人間である方がよく、満足した愚か者より不満足なソクラテスの方がよい」です。首相という満足した状態におかれ、自分の意志が通らないことに、不満を託った。それがどういう状態かは、上記の言葉によく現れているのでしょう。そして、頂点を窮めた人間が凋落すれば、目も当てられないことになるのかもしれません。菅氏は引き際をキレイに、力を保持したと考えているのかもしれませんが、今後は不満足な…の状態になることは、ほぼ間違いないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:45|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年08月10日

経済の話。米FOMC声明

菅首相が特例公債法と、再生エネ法の成立で退陣の意向を、自身の口で述べました。今日の朝刊各紙が一斉に報じたように、兆候は見え隠れしていました。恐らく、ここで居座っても党執行部は、発言との整合性を問われ、そろって辞職しますから、もうもたないとの判断もあったのでしょう。
英国の暴動、北朝鮮の砲撃、など海外からきな臭いニュースが伝わります。8月は欧米が夏休みシーズンで、政治も市場もお休みムードと言われます。しかし8月に戦争や暴落の引き金がひかれる、ともされ、実は波乱の月ということは、あまり知られていない事実です。これは当然、空白時だからこそそれを逆手にとる、といった形が置きやすいことと同義でもあります。

米FOMCが開催され、NY市場は乱高下し、終値でダウは400$以上戻した形で引けました。ただ、これは非常に悪い形です。まずFOMCの声明文で2013年半ばまで超低金利を続ける、時間軸効果を導入しました。これは長めの金利を下げることを目的とし、短期で借り換える社債市場より、住宅ローンなど長期で借りる一般、個人に対して、より緩和的だということができます。
しかしこの発表をうけ、長期債が2%付近から、2.2%まで暴騰しました。つまり戻しは債先売/株先買を起こしたことになり、これは政策効果とは逆です。つまり国債バブルの持分を、一時的に吐き出した形が昨晩の米市場です。しかも景気見通しは引き下げましたが、ここまでFRBは見通しを誤り続けてきた。これが良い方に外れればよいですが、悪い方に外れるとそれより悪化する、ということになります。しかも投票権のある3人の理事が、反対を投じた。これはQE3への見通しを暗くしました。

米国では、8/26日にバーナンキFRB議長が講演するので、そこで緩和策が打ち出されるとの期待が未だにありますが、声明文を読む限りは調整がとれていない。恐らく、WTI原油価格の下落により、消費者物価が下がり始める11月頃が、仮に緩和策を打ち出すとしても最速なのでしょう。つまり昨晩のFOMCは、FRBの苦しい立場を鮮明にしただけで、バーナンキ氏がかつて批判した、日本のバブル崩壊後の対応に手を染ざるを得なくなった、という点だけが浮き上がった形です。
しかも日本の為替介入は警戒しても、長期的にみてドル/円は売り、つまり円高を志向できます。日本にとって負の効果しかありません。日本が同様の対応をとった際、世界は曲りなりにもそれほど景気が悪くなく、寛大に受け止められましたが、今回世界全体が余裕ない中で打たれた対策だけに、実は負の効果を織り込むのは、これからという点も不安を残したのでしょう。

日本の市場で、底打ちとの話もありますが、気になるのはまだセリングクライマックスが起きないことです。恐らく、底値はもう一段下にある、と見ておいた方が良いですし、これは日銀によるETF買いと悲観派との綱引き、といった側面が強いのでしょう。日系証券は裁定買いも多いことから、先物では買いが多いですが、このタマが出尽くしたとき、改めてセリングクライマックスが来ます。
世界同時株安に歯止めという言葉も聞かれますが、今晩の米市場は寄り付き、かなり悪い水準で始まっています。今回の暴落局面、世界同時不況を織り込みにいっている動きだけに、そこに手当できなければすべて効果は限られます。日本では監視の目がゆるい日銀、年金の下支えも期待できますが、それを好感できる内は良いですが、結果的に大幅な損失をだせば、両者とも批判の矢面に立たされるでしょう。そうなると、市場は一段の悪化を見込む形になります。今は安易に底値、と見極めない方が良いことだけは、確かなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:32|PermalinkComments(7)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2011年08月09日

菅氏の決断? ポスト菅に野田財務相が名乗りか?

世界同時株安が続きます。ただ「米国債の格下げ」が直接の下落の原因ではありません。その証拠に米国債は買われ、利回りは低下しています。しかし見方を変えると、米国債のCDSがじわり上昇しており、影響は出ていると云えます。買い方の巻き返しや、今晩のFOMC期待で安値からは切返しましたが、米追加緩和は打ち出しにくい場面です。QE2発表時はデフレ目前、流動性供給に正当性をもてましたが、今はおよそ2%。インフレを無視すれば金融政策を打てますが、そうはいかないでしょう。
中国が発表した7月CPI(消費者物価指数)が前年比6.5%上昇、世界の多くの地域がインフレです。流動性供給策を打つのに、条件は整っておらず、現状は金融緩和を長期的に見積もる、時間軸という形の緩和策しか打てないのでしょう。QE3は必要となれば…といった提言が予想されますが、それで市場が納得するか? ECBが断続的に債券買い、といった話も聞かれますが、今後中央銀行のバランスシート、という問題に注目が集まると、かなり厳しくなってしまうのでしょう。

日本ではポスト菅に絡み、野田財務相が今日にも出馬表明という話が流れ、市場の変調に見送られました。為替介入の実績を元に、政権公約を週刊誌にて表明、今日までの流れは既定路線だったのでしょう。逆にみれば、自身の出馬表明のために先週、あまり意味のない為替介入を実施した、ということにもなります。今日になって76円台に突入した為替、一段と円高がすすめば財務相を辞任し、出馬の準備などを始めれば無責任との指摘も出てしまう、そんな水準となっています。
仙谷派の狙いは、陸山会事件の秘書に対する判決が出ると、小沢派が勢いを増す。その前に野田氏でまとまるよう、官僚にも手を回して為替介入した、との見方ができます。しかし同時株安により読みから外れ、また週刊誌は発売日を待ってはくれないので、いずれにしろ態度を鮮明にする時期が限られてきます。仮にこの時期、財務相が離れられるか? 実は仙谷派が戦々恐々なのでしょう。

さらに、ここに来て菅氏は米国にケンカを売り始めました。長崎の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で、核兵器廃絶にまで踏み込んだ発言をしています。これは初めて見せた菅氏の心変わりです。支持率が10%台半ばまで低落したこの時期、外交で失点すればもう政権はもちません。恐らく、この挨拶をうけて外務省、防衛省には米国から真意を訊ねる連絡が入り、対応に追われていることでしょう。
いくら外交オンチで、無能だとしてもこれは致命的になると、気づくはずです。つまり菅氏は脱核技術に道筋をつけ、それを功績として辞任を覚悟し始めた、その一連の流れがもんじゅ廃炉、など一見無茶で、調整不足のことを次々と発表する理由です。月内退陣を覚悟しない限り、こうした無謀なことができるはずもなく、特例公債法など外堀が埋められ、ギブアップを感じ始めたのでしょう。さらに時をおけば、仙谷派と同じ懸念、つまり小沢派の勢いをもろに自身も被ることになる。脱小沢という旗を掲げたため、小沢氏を恐れるあまり早期退陣を覚悟した、とも云えます。

しかし、辞める人間が禍根を残す、こうした発言をすること自体、避難されることです。また外交もメチャクチャになる、こんなことをすれば後世の評価も悪化するでしょう。つまり菅氏は、最後の最後まで政治オンチのまま、総理の座を下りることになるのです。辞め時を誤ったこともそうですが、結果的に脱原発依存でも、支持率が低下したことが意気地をなくした原因かもしれません。
ポスト菅ですが、経済閣僚は当面、職を離れるわけにはいかなくなりました。今起きていることは、世界同時株安に名を借りた世界同時不況、つまり恐慌の懸念です。このとき政局にかまけて自分の仕事を疎かにすると、結果的に支持は集まらなくなります。野田氏も海江田氏も、この時点でアウトなのでしょう。混沌とするポスト菅レース、本命不在の状態となれば、ますます日本が混沌とするのでしょうね。

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2011年08月08日

G7声明と菅氏による国連出席?

米国債格下げの余波が、各国で広がっています。ただ今回のS&Pの動きは、やや不可解です。まず計算上、財政状況見通しの予測で2兆$の計算違いがあり、米財務省がS&Pを批判しています。一方でS&Pは政治リスクを盾に、格付け引下げは妥当、という茶番劇が繰り広げられました。
これは米政府と、格付け機関が格下げを実施する上で仕組んだ芝居、といった印象をうけます。つまりこの格下げは、誤った計算に基づくもので、妥当性が低いということを政府は喧伝できる。格付け機関は、当面の格下げ宣言を履行できるので、体面を保てる。そもそも、米国債格下げ、という重大な問題で計算違いを犯すことは、到底考えられないのです。恐らく格下げは一社だけに留まり、当面の安泰を得る形でしょうが、いずれ問題はほかの市場へと飛び火する形になるのでしょう。

ただ、この格下げには二つの見方ができます。リスクOff状態なので、国債売りを吸収できる買いがあるため、これを好機ととらえる向き。つまり米国のネジレ国会で議員各員に反省を促し、果断な決断ができるよう促す、という楽観派と、もう一つは米経済はリセッションに陥り、財政赤字はさらに膨らむことで破綻懸念を語る、悲観派です。景気の見方として、当面はソフトパッチ派が多いとみますが、長期の視点で悲観派が増えてくると、ダウは10000$割れを試してくるでしょう。
G7財務相・中央銀行総裁による電話会談が行われ、声明も出されましたが、改めて問題解決能力のなさ、を露呈した形です。今や口先介入でどうにかなる水準ではなく、協調が好感されることもありません。つまり市場は既に、対策の催促相場になっているため、何もでなければ失望を誘うだけです。それでも市場は、動揺が一巡し、追加の悪材料がなければ下げ止まるでしょう。これはPBRではなく、織り込み済みの材料であり、今日の下げはイベントに乗っただけという側面もあるからです。

むしろ懸念は、国際舞台で誰も解決策を持ち得ていない、そのことを市場が失望することです。各国の事情が大きく異なり、また新興国の発言権も増したことで、何も決められない会議が増えました。そんな中、菅氏は国連の首脳級会合への出席に、意欲を示しています。これは原子力の安全に関する会議に出席するためですが、恐らく菅氏が今の態度でいると、この会議に出席できる可能性はゼロに違いありません。それは、原発推進派の米国を怒らせるからで、菅氏を見限ってメディア、司法を使っての菅降ろし工作を仕掛けてくるから、ということになります。唯一の被爆国である日本が、核廃絶を訴えることは、米国も容認してきましたが、脱原発依存は到底受け入れられません。
さらに、原発導入の旗を下ろしていない国が多く、逆にそうした国は経済的に余裕があるため、発言力を増しています。そういう力に頼りたい欧米にとって、菅氏の存在は頗る邪魔です。G7が結束している以上、意見の違う存在は容認し難く、こうした面でも外交で菅氏が成果をあげることはない、といえます。脱原発依存は、国内の事情と国際情勢はまったく異なるのであり、方向性すら打ち出せないことになりかねないのでしょう。

日経は9000円どころが、PBR1倍割れで、下支えになるとの見方が大勢ですが、不確実性が高くなった今、テクニカルや水準感はあまりアテになりません。何より、ECBがイタリア、スペインの国債買取を表明しましたが、それでも利回りが上昇し続ければ、さらにリスクOffを強めるだけとなります。今はどの市場も波及的影響を受けるのですから、少なくとも長めの資金を置かない、というぐらいしか自己防衛は働かない、ということになってしまっているのでしょうね。

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2011年08月07日

菅首相による原爆死没者慰霊式でのあいさつ

米格付け機関S&Pが米国債をAAAから、一段階AA+に引き下げました。見通しはネガティブを維持、週明けの市場では若干の変動が起きる可能性もあります。ただ、これは予想された範囲のことで、もしこれで急変動を引き起こせば、市場は予見性がないと見られます。問題はこれが、他の格付け機関へと波及し、予見性の働かない突発的な見通しの引き下げ、格下げなどが起きる場合です。その段階で急落が起きることを予見し、どう行動するかを決めておく必要があるのでしょう。

広島の原爆死没者慰霊式、平和記念式で、菅首相があいさつしました。原爆による被害と、原発事故による被害と、放射能による影響は同じですが、まったく性質を異にします。同列に扱うことは奇異ですし、逆にここで取り上げれば政治利用との批判が起こることは。予期できたはずです。しかし市民運動家なら、あらゆる場面を自身の主張の場、と考えるものであり、目立った者勝ちと考えても吝かではありません。ただ、脱原発依存に違和感を生じるのは、以下のことによります。
福島第1原発事故の原因究明が、五ヶ月近く経った今も公表されていません。つまりこの段階で、事故が起きたら重大だから、原発依存から脱却するなら、原発はすべて止めねばなりません。事故の検証がすすみ、その原因に基づいて止めるなら、原因をとり除けば動かせます。菅氏の立ち位置は依然よく分かりません。また原発の輸出は止めないと述べているので、要因分析も終わらない内に、それを製品として出荷するのは、製造者責任として通用するはずもありません。なぜ原発依存を脱却し、どうして輸出は進めるのか? 菅氏の態度や発言からはハッキリしないのです。

福島県南相馬市で、警戒区域を除いた大規模な区間を除染、という話があります。しかし除染は線量を下げることは出来ても、完全に放射性物質を除去できません。これは目に詰まった物質が完全には除去できないことと同時に、周辺を放射化してしまうためです。一方で、そのことによりかなり多くの放射性廃棄物を生みます。つまり今度はその処理に、どこか別の場所の線量を高くします。水で洗い流そうとすれば、その流れていった先が、土で埋めても流れ出す恐れや、地下に染み込んでそれが問題となる懸念は、ずっと残り続けると言えるでしょう。
日本は、脱原発依存だろうと、すでにある施設を稼働しない場合だろうと、原子力の技術者は未来永劫、必要なのです。それは使用済み核燃料の長期保存、核廃棄物の監視、そして汚染地域の除染なども含め、人類の歴史が続く間はつきあい続けることになります。また新エネルギーにしても、再生エネ法案では、その任に足りません。つまり菅氏は、そういう道をまったく示さずに脱原発依存を唱え続けるのは、無責任だといわざるを得ないのです。自身の態度、発言の整合性のなさとともに、この人物が辞任を表明したからではなく、この人物で多岐にわたるこうした問題を処理できるのか? という本質的な部分で、不信感が高いというのが支持が集まらない理由です。

菅氏が生き残りをかけた脱原発依存ですが、原発に依存しようとしまいと、原子力とは付き合い続けなければいけない。その時、日本政府は何も生み出さない、ただのゴミを多大な費用をかけて処分、監視を続けていかなければいけない。その負の部分を、未だはっきり述べることさえしていません。原発が続くなら、その莫大な費用を肩代わりさせるのも良かった。その時は、原発は低コストという論自体が破綻することでしょう。しかしこれからは政府が、国民がその税金を投じて原子力を監視していかなければいけない。それに触れず、ただ脱原発を訴えるだけでは、やはりただの無責任というしかないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:42|PermalinkComments(5)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 原子力

2011年08月06日

人権擁護法なるものについて

質問を受けたので、人権擁護法案なるものを考えてみます。事は、江田法相が人権救済機関なるものを年末までに設置する、と発言したことで再度話が盛り上がっています。しかし元は人権擁護委員法を廃し、人権擁護法を通そうという民主、自民などにいる所謂『人権派』と呼ばれる人間たちが、画策しているものです。しかし問題も多く、法案そのものは欠陥と指摘できます。

まず『人権等』とはかなり広く、法案の中にセクハラやパワハラまで含みます。つまり外傷のない、心的要因に関する権利関係全般、と考えると適当でしょう。簡単に云えば、自尊心を傷つける行為ということです。しかもそこに、それを為す要因、即ち人種から性的傾向まで、多数派ではなく負い目を感じやすい項目を抱えていると、この法案に引っかかってきます。
法案では、人権擁護委員を立ち上げ、調査、事情聴取、資料の押収まで可能とします。それに基づいて、調停委員や仲裁委員を立ち上げて調整が可能ですし、司法へも通達できます。つまり独自に処分することもできる、ということです。法的には、処分内容は記載されていませんが、公開や司法への法的処置も含めて、司法権をもつ警察、裁判所とは別の組織が立ち上がる、と思えば良いです。

問題は山積みです。人権という曖昧なものを基準とするため、何がどこまで処分対象か、まったくわかりません。しかも非公開が原則であり、自らが認めない限り資料も公表されません。これは警察や裁判所の申請でも、資料の提出を拒否できます。一方で、人権委員会は関係機関から資料を請求できる権限を有し、しかも裁判所の認可もなく勝手に調査が可能です。申請主義なので、人権侵害があったと申し出があった場合、人権委員が動き出すことになりますが、抑止が効きにくい組織ということになります。さらに、人権委員長の選任は『人格が高潔、人権に関する高い見識、法律または学識経験者』という位置づけで、国会同意人事です。逆に云えば、法曹関係者しかいません。
日本の法曹会に、奇怪な人権擁護派がいることは、周知の事実です。そんな人間が選任されたら、歯止めの利かない組織になる。これが世にいう、新たな秘密警察組織の誕生という形で結実する恐れ、となります。人権を守る、を口実にして調査、処罰できる組織、しかもすべて非公開にでき、かつ監視する機関が存在しない。細かく云うまでもなく、欠陥法案といえます。

さらに法案の中では報道機関も規制対象ですが、なぜか江田氏が出した通達では、報道機関は自主的努力に委ねる、とします。つまりこれは、法案成立までメディアに騒いで欲しくない、という配慮とみられ、それだけ問題が多いと法務省は認めている証拠なのでしょう。この法案を与野党とも、推進する形をとるのは、人権擁護派を納得させ、さらに支持を得たいとの思惑なのでしょう。
人権擁護派は、シンポジウムなどを開き、定期的に自分たちの意見を正論として、国民に浸透しようと図っています。悪い観測をすれば、ある特定のコミュニティから情報を得て、自分たちが差別されたと訴えて相手を疲弊させ、都合よい条件を通す目的で、これを活用される恐れすらあります。そうなれば、まさに秘密警察といった類のことになるのでしょう。事情聴取に何度も呼び出されれば、これまでの警察、検察と同様に精神的に追い詰められますし、そうした行為が続くと社会的な信用を失ってしまう恐れもある。そうなれば、妥協やその他の条件を引き出しやすい。

江田氏は死刑にも否定的な見解を示したように、人権擁護派です。問題は、死刑制度に反対だからといって、制度としてあるものを否定するような人間が、法相にあるということです。法治国家ですから、法を第一に考える姿勢が大事なのであり、特に閣僚となれば個人的な都合を優先するようでは、相応しくないとさえ云えます。菅氏のおトモダチとはいえ、こういう発言を咎められず、また人権擁護法の地ならし宣言を止められないなど、この政権はもうやりたい放題になってきましたね。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(2)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 司法

2011年08月05日

経済の話。世界同時株安

昨晩から世界同時株安が起きました。今晩発表の7月米雇用統計は11万7千人増、失業率9.1%と改善傾向を示し、昨日500$以上も下げたため、その下げすぎ感と合わせて今晩の米市場は下支えが効きそうです。ただ原因を考えると、それとはやや異なる印象もうかがえます。
キッカケはECBというのが専らです。休止していた流動性供給策を6ヶ月実施する、と発表したもののアイルランド、ポルトガルの国債は買うが、イタリア、スペインの国債を買う予定はない。これが市場に失望を生みました。欧州債務問題は、すでにイタリア、スペインというEUの中では経済規模の大きい国に波及しており、それを食い止める術がない、と市場からみられたためです。

また昨日実施された、為替介入が原因との見方も一部であります。一部では、円でリスクヘッジをかけていたため、その巻き戻しを迫られ、リスク資産を売らざるを得なくなった。これは9月ヘッジファンドの解約売りが、45日ルールで8月半ばにくることもあり、売りを大きくしたというのです。
為替介入は4.5兆円規模ではないか? との指摘もありますが、海外市場でもしつこく行い、意思は示したと自負していたでしょう。ただ、今日になって78円半ば、財務省が想定したより効果が出ていません。逆に、それほど円買い需要は強いのであり、4.5兆円もあれば景気対策等、色々と打てたはずです。うがった見方をすれば、財務省が外為特会の剰余金を吐き出せ、と迫る政治に対して、云うことを聞いてくれる野田財務相の間に使い切ってしまえ、と打った策のように見えます。そもそも、実質実行為替レートでは円安水準と指摘されており、日本の病巣はデフレ、しかも長期に亘る賃金デフレの状態であり、それを解消しないことには、介入しても無意味と云えます。

日本市場の話題は、TOPIXが一時800pt割れし、PBRで1倍(約810pt)を割れてきたことです。PBRで1倍割れは割安、という言い方もされますが、私はそう考えていません。これはあくまで目安であり、実際の資産があっても、非成長企業に買い手はいないからです。しかも米国で逆資産効果が働けば、最大の消費市場が悪化するので、ここに目処がつかないと買いは続かないでしょう。逆に敵対的買収などで市場の混乱や、企業体力が疲弊する方向にいきかねないという水準です。
では、打てる景気対策はないのか? あります。それは菅政権が早期に退陣し、強い政権が誕生することです。イタリアはベルルスコーニ政権がレームダック化し、財政再建が遅れるとの警戒が、市場で警戒されています。これを反面教師とすれば、強い政権が行財政改革を断行し、日本が『日本化』からいち早く脱却する、という姿勢を示すことが最大の景気対策となります。

しかし自民は「4Kがムダ」とするばかりで、自身が行なってきた行政は正しいという姿勢を崩さず、これでは意味がありません。戦後の行政の歴史、すべてをひっくり返すほどの行財政改革は、むしろそういう前提のない方が良い。しかもひ弱な政治家では、行政の抵抗に耐え切れないでしょう。菅首相が辞めれば協力する、と野党は約束しているのですから、菅政権の次は政治の力が発揮しやすく、官僚の抵抗に対することができることになります。
個人的には、小沢政権を年限を切って誕生させることが、官僚に対して最大の睨みになると見ています。ただ、本来行政の仕組みを知り、行財政改革にもっとも力を発揮するはずの自公が、ほとんどこの動きでは使い物にならない、という点は残念です。自分たちが政権政党に戻った際、やり易いよう民主党政権時代の政策は、すべて否定するという態度に、行財政改革にむけた気概は見られません。震災復興を利権と考え、そこに人を送り込もうとする動きがあるなど、野党として非常に懸念される動きです。ただ、みんなの党などが乗ってくると、面白い形にはなるでしょう。強い政権による『日本化』からの脱却、これが景気対策になることを求めていかなければいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:28|PermalinkComments(12)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2011年08月04日

為替介入と日銀追加緩和と経産省人事と

日立、三菱重工が事業統合、という話があります。ただ難しいのは、日本では統合という形での成功事例が少ないことです。吸収、合併ならともかく、日本ではとかくプライド、企業風土、文化が影響し、シナジー効果が生まれにくいのです。特に子会社を含め、事業の整理と統合後の形が、単にスリム化ということなら、日本にとって決して良いことばかりとは云えないのでしょう。

財務省、日銀が為替介入しました。断続的に、かなり大規模とみられ、2兆円近いかもしれません。ただこのタイミングは不可解です。今年は夏場、節電もあって休みを長くとる企業も多い。特にお盆前ですから、ここでやる必要はなかったはずです。野田財務相が介入の動機を「一方的な動き」と述べており、これまでの「急激な動き」に対する防衛措置を、一段格上げした形です。
つまりこの動機だと、介入はいつでも可能となり、それを喧伝する意図があったかと見られます。ただし、来週のFOMCでQE3などが出てくると、すぐにこの水準を突破する円高となります。しかも単独介入にしかならず、市場から足元を見られそうです。一方で日銀が金融政策決定会合の日程をかえ、40兆円の国債購入枠に10兆円プラスすることを発表しました。資産買入れ部分はCP1千億、社債9千億、FTF5千億円をプラスします。この追加枠は、流動性供給より明確に相場の下支えを目指したものであり、米景気鈍化を受けた市場対策、という見方が妥当なようです。

しかし例えばETF購入は、TOPIXが1%下がると連動ETFを買うといったものであり、言わば相場を押し上げることには寄与しません。為替介入も日銀の追加緩和策も、根本に何も手を当てず、目先の動きだけを制する行動に過ぎない。うがった見方をすれば、今回の動きは野田財務相がNext菅で優位に立つため、9月政局を意識しての実績づくり、ということさえ云えます。財務省にとって、今や増税、財政再建への期待は野田首相誕生にかかっており、このタイミングしかなかったのでしょう。
経産省にも動きがありました。首相主導で経産省人事に手をつっこまれることを恐れ、経産相主導での人事です。更迭としますが、これは先に官邸から震災対応を優先して人事を見送るよう、口頭で申し入れられ、硬直化していた部分を、省庁単位で人事のタイムスケジュールに合わせる動きと合致します。つまり更迭などではなく、経産省がやりたい人事を、独自に行なったのみです。もし更迭、人心刷新というなら、すぐ次の官僚人事を発表すべきでしたが、海江田経産相はそれを云えなかった。経産省としては、海江田首相はないとみて、この閣僚の下でやりたいことをやっただけです。

両者は、ともに官僚の都合で起きたとさえ云えるのでしょう。しかし円高は米景気鈍化や米QE3があると、最高値など簡単に突破します。間違えてはいけないのは、流動性を供給し続けた結果、国が介入する規模より、市場で運用できる資金の方が圧倒的に多いのです。つまり自ら効果を低くするよう動いておいて、未だにその手法に頼るのは、むしろ打つ手なしの無策というに過ぎません。
FRBですら『異例の』対策と述べるほど、各国の中央銀行は極めて危険な手法をとっています。ただこれが『異常な』対策になると厳しくなりますが、逆に政治が決断できれば、打つ手はあります。子ども手当が廃止になりましたが、国民に対する直接給付という仕組み自体、良いやり方です。現在の流動性供給は中央銀行・金融機関の間の国債の出し入れであり、金融機関に供給された資金が、貸出に回って初めて国の経済には効いてきます。しかし今は金融機関が貸出をしないため、資金が回らずデフレに陥ります。ならば直接給付で、紙幣を増刷した分を直接国民にむけて流す。こうすれば円の価値は下がりますし、インフレ傾向を示すでしょう。やり過ぎは円暴落の懸念を誘発するので、規模は難しいですが、やる気になればここまでは出来ます。問題は、政治にその決断ができない点なのです。結果的に、見かけの短期的な対応でお茶を濁す、今回も極めて日本的といえる対応なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年08月03日

民主の迷走と菅氏のルート

東証は大幅下落です。米マクロ指標の悪化、しかも消費支出が低下したのみならず、実質賃金が下落し、物価高により選択的支出が今後、困難になるとの見方が広がりました。政府と議会は歳出削減にむけて合意したため、財政出動は今後難しい。金融政策に期待がかかるものの、物価高を招いては意味がない。明らかに手詰まり感が漂ってきます。元々、米市場は年末の回復を見込んできたため、期待値の剥落といった側面が大きく、それに日本も巻き込まれています。
やや長期的な影響も考慮する必要があり、米格下げ懸念と合わせ、日米ともテクニカル面からみても、トレンドは下向きと考えておいた方が良いのでしょう。常々懸念してきた、一度しゃがむことを嫌って小手先で対策を打って来たために生じる、抜本対策の欠如。日本の失われた20年に匹敵する経済失政が、世界全体で起こりつつある、ということが云えるのでしょう。

世界では、決断のできないリーダーが問題を先送りする『日本化』が叫ばれますが、そんな日本の政治は一歩先をいき、何もしないリーダーが云いたいことだけ云って居座る、という状態です。1年も経って実績がないのは元より、政治の混乱を生む原因となっている点で、より厄介と云えます。自身のグループの会合で、特例公債法が成立せず、退陣すれば後任が苦労する旨の発言をしていますが、特例公債法で混乱するようなら、米債務上限問題と同じように与野党に責任があります。逆に、岡田幹事長が逆ギレし、政党交付金を止めると発言していますが、子ども手当で与野党合意をめざす中、不用意な発言です。何より、民主党の方が交付金の額は多いという事情もあります。
そんな子ども手当に関し、与野党でもめています。与野党に云えるのは、子育て支援や、少子化対策はどうするのか? という対案もなく所得制限や児童手当に戻すことを議論している点です。自公政権時代の児童手当では、出生率は改善されませんでした。子ども手当はまだ2年と少しの施行なので、制度がどのように機能しているか判断できない。そんな中、児童手当に戻すのなら、逆に自公は少子化対策に関して、何か提案を示す必要があります。日本の少子高齢化に歯止めはかかっておらず、今回の震災で子供に癌の発症が増えると予想され、それは益々日本を困窮させます。

与野党とも、これを政局と考えており、一方で岡田幹事長はこれを自らの実績として、菅氏に花道を準備するつもりでしょう。ただし、以前なら法案成立と首相辞任は、重さの上でも取引できましたが、菅首相に関しては別です。すでに辞任を示唆しているため、これは取引にならない。しかも、自らは次々にルートを作り、勝手に課題を増やしてはあれをやる、これをやると言い出す始末。花道はすでになく、辞任まで続く道の上で、のらりくらりと歩いているだけです。
Android搭載端末では、所有者に使いやすいよう改造することをroot化、と言います。菅氏は自らに都合よくなるよう、root化を行いますが、メンテナンスをしないため、ウィルスだらけの端末=政権に成り下がっています。その端末の中で、他のアプリが仕事しようとしても、阻害されて何もできなくなる。委員会の席で泣き出したり、軽い躁状態になって入院してしまったりします。

そんな中、小沢氏が8月末までに不信任提出に動く、と伝えられます。まだ口先だけの動きでしょうが、泰山鳴動ネズミ一匹だった前回、それを鑑みれば今回提出するなら、絶対可決まで行く必要があります。しかも民主造反で、政局は混乱するでしょう。中世フランスの宰相リシュリュの言葉として「君主は忘恩の上に権力をうち立てる」とするものがあります。菅氏は恩人が訪ねてきても会わず、一緒に政権交代を成し遂げた仲間を売り、閣僚でさえ裏切る。菅氏が打ち立てるのは、彼以外の人間をAndroid(人造人間)として扱う、血も涙もない政治、ということになってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(4)TrackBack(2)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年08月02日

原子力損害賠償支援機構法案について

原子力損害賠償支援機構法案が、明日可決される見込みです。問題の多い法案として、改めて指摘しておきたいと思います。まず、総則としてこの法案は、ただ損害賠償に資するものだけではなく『電力の安定供給と、原子炉の運転等』について、資金が拠出できるとしています。つまり拡大解釈すれば、電力会社はこの支援機構から『電力の安定供給』に資する、と判断された場合、支援を引き出せることになります。さらに云えば、電力会社の運営そのものが『安定供給』のための活動だとすれば、会社の運転資金でさえ捻出が可能という形になっています。
しかも、原子炉及び核燃料の再処理施設を抱える事業者は、負担金があっても許されるなら株式、社債、等の引き受けを支援機構に求められるので、逆に格付けがどれだけ下がろうと、安定して資金調達が可能となります。しかも、この支援機構は資金の調達に関して青天井です。無利子国債により、資金を確保できるのと同時に、機構債の発行も認められており、資金は無限に捻出できるとさえ云えます。しかもそこに、政府保証がつくのですから、まさに電力会社にとって体のいい財布ができたという言い方をしても良いぐらい、これは電力会社と政府がつくったずぶずぶの組織です。

よくステークホルダー(株や債券の保有者)を守る法、という言い方もされますが、少なくとも株保有者には厳しい内容です。つまり株を引き受けてくれる組織があるため、新株発行が容易であり、希薄化が有り得ます。一方で、機構債は優先が与えられるため、悪いことを考えるなら大株主は電力株を売却し、機構債に替えることで収益と保証が確保されることになるのでしょう。
さらに悪いことを考えると、支援機構が解散するときは債務を返済した後、負担金の拠出額を最高限度に、電力会社に資産を分配することになっています。要するに、電力会社は支援機構に引き受けてもらった株を、解散時に無条件で取り返すことが可能ということです。当然、全額というわけにはいかないでしょうが、少なくとも通常の社債や、新株予約権よりはよほど良い条件で、支援機構を資金の出し手として利用できるのであり、電力会社にとってメリットも大きいのです。

負担金があり、電力会社には厳しい内容にみえて、批判の声が上がらないのはこうした仕組みがあるためです。これは主務大臣、財務大臣等の認可が必要な部分もありますが、今の閣僚と官僚の関係を見る限り、閣僚に細かな統制ができるはずもありません。例えば、機構に問題が生じた場合、主務大臣に直接この支援機構を調査する権限はありません。『機構に…報告させ』るか、『職員に…検査させる』ことしか出来ないのです。つまり閣僚、主務大臣なのに、法律上自ら立ち入って調査、検証することは認められていない。これは霞が関文学の、常套手段といえます。
菅首相がいくら脱原発依存を唱えようと、この法案の中にある『原子炉の運転』に、支援機構が資金拠出することを、どう整合をもって説明するのか? 例えば原発を国有化する、という話もありますが、仮にそうなれば時の政権が反原発を掲げれば、原子力発電を運転しない、ということが起こりえます。それで今回のように、電力不足になったときの保証は誰もとれません。しかも、国有化に切り替えても、一部ではこの支援機構の恩恵を受けられる事業者がいる一方、負担金を逃れる事業者がいることは、原発国有化と支援機構法案の整合性を問われることになるのでしょう。

総じて、この法案は政府と電力会社と、天下り組織の維持にむけたムラ社会のための法律ということが云えるのでしょう。こんなものを、与野党合意の下で成立させるので、与野党とも支持が下がる原因となります。少なくとも、法律の詳細を読めば国民利益に資するものではない、ということが分かるはずです。明日、この法案が通れば日本の電力会社は世界一まもられた、準国営企業として存続する一方、株や社債に対する魅力が著しく低い、そんな状態になってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2011年08月01日

米債務上限問題が与野党で合意

米債務上限問題は、ぎりぎりで与野党が合意しました。ただ米国では議員が党に縛られないので、合意=成立ではないため、まだ議決できるかは不明です。詳細は発表されず、数値的には差異もありますが、裁量的的支出を今後10年間で9170億ドルの財政赤字削減、さらに超党派の委員会で最低1.5兆ドルの削減をめざす。債務上限は2段階で2.1兆ドルの引き上げ、という形での合意です。
個人的には、最悪だと考えます。まず、米民主党案は2.7兆ドルの赤字削減と、同額の債務上限引き上げがセットでした。一方で米共和党案は約1兆ドルの赤字削減と、同額の債務上限引き上げ。この額の差は、大統領選に債務上限問題がリセットされるかどうか、という安心を買う意味がありましたが、逆にこの妥協は、つまり来年の大統領選まで2兆ドル程度の財政赤字が膨らむ、ということを両党とも意識した動きであり、世界の債券トレーダーがその現実を知った形になります。

しかも、民主党の2兆7千ドルの歳出削減は、富裕層への増税とセットです。つまり、歳出減と同時に歳入増が一体となって、財政再建です。2.5兆ドルは中途半端、財政再建に大きな材料とはならないでしょう。さらに、超党派の委員会で政権を揺さぶれる、野党側にとっても有利な材料を手にしたことになり、これは長期にわたって政治リスクを経済がうける形になります。
個人的には、米地方政府が財政破綻するという懸念を喧伝し、合意をめざす政治駆け引きがあるか、どうかを考えていました。しかしそれが、格付け機関に及んでいた可能性を今、想定しています。米国は健全な市場、公正な市場を国内外に広く明らかにしています。これは資本主義として、米国が世界に誇るものだからです。ただし、これには裏もあり、政治が絡んだと思われる市場誘導は、実に懸念される国が米国です。対面を保つため、今回の債務上限問題でも米格付け機関S&Pに「歳出削減規模は4兆ドル以上でないと格下げ」と言わせたのも、米民主党が考える2.7兆ドルの歳出削減と、増税による歳入増で帳消し、というシナリオに基づいていたと推測しています。

つまり、今回の妥協案はそのシナリオを根底から崩し、世界に格下げ懸念だけを残しました。これで米格付け機関が格付け見通しを維持すれば、格付け機関としての正当性を疑われますし、それこそ政府関与を感じさせるでしょう。逆に、米政府の関与がないなら、まず見通しをネガティブに変更、3ヶ月から半年の間に格下げ、という形をとらなければならないことになります。残念ながら、米債券が格下げされれば、地方債やMMFが動揺するので、一部で云われているような「問題ない」という発言は当てはまらないのでしょう。格下げ懸念は、実際の格下げになるまでの債券売りと、それによる金融資産の減少という形で、いずれ顕在化することにもなると考えます。
日本の市場は、欧州のイベントドリブンが働いて上昇。ただし、この妥協案は上記のように、決して安心は与えてくれませんでした。むしろ問題が先送り、長期化されることになっただけで、より下押し圧力を強めた、とさえ云えます。しかも、元々デフォルトを市場は織り込んでいないため、この合意で上昇したのは、ただの気分的な問題に過ぎないことは明らかです。もし、きちんとした形で議論が尽くされるなら、週半ばから後半にかけての合意、という形が想定されました。今回、歩み寄りから合意までが異例に早く、しかもそれは米民主党が折れた形になった。これは、今後の政権運営や党内の取りまとめにも、難渋するかもしれません。オバマ政権の調整能力不足だけが目立った今回、米国への信用を落とすことになると、より問題は深刻になっていくのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:23|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ