2011年10月

2011年10月31日

政府による為替介入

政府が円売りの為替介入を仕掛け、75円前半にあった円/ドルは79円台前半まですすみました。しかも79円20銭あたりに大量の指値を入れ、値動きを止めたことは、新手法として注目されます。この新手法から、年末にかけて輸出企業のドル決済を支援した、今回の月末介入の意味と捉える向きが多くいます。またG20前に行わないと、実質的には難しいとみられたこと、さらに安住財務相のヤルヤル詐欺と揶揄され始めたことも、介入を焦った部分ではあるのでしょう。実際、米国への配慮がなければこの時期に行うべきではありません。米FOMCを明日、明後日に控えているためです。
介入規模は、噂ですが5兆円程度とされます。安住氏は財務相就任後に、政府短期証券の枠を45兆円増やしているので、政府短期証券は増減もありますが、この規模で行うには後9回とカウントされます。3月の介入は震災後で、協調介入だったので効果は持続しましたが、今回は単独介入なので、8月と同様に持続性が懸念されるため、海外市場では78円台前半に沈んでいます。

安住氏は「欧州債務危機に乗じた投機筋の動き」という表現を使っていましたが、それはEUサミット後の動きで否定されました。介入のタイミングを失っていたところ、今日になって朝方のオセアニア市場で、75円前半をつけた。個人的にはこの動きがきな臭いのですが、口実作りに輸入の多くて影響の少ないオセアニア市場で円最高値をつけさせ、今回の介入に踏み切ったとみています。「経済の実体を反映していない」というのが今回の介入の理由ですが、実効為替レートとは乖離しておらず、口実作りが必要だったのでしょう。しかし「納得いくまで」介入すると述べたことから、ここですぐに円高に戻ってしまうと、納得したと見られてしまう負の面が強く出てきてしまうのでしょう。
株式は先物で急騰し、その後急落しましたが、これはGLOBEX先物で今晩の米市場の弱さをみた動きでした。米投資運用会社が破綻、と伝わったことで警戒感も広がりますが、FOMC前の米経済へのマイナス要因は、米緩和期待へと結びつき易い。日銀が追加緩和したこと、さらにギリシャ国債におけるCDSの売り手、とされる米銀への波及懸念など、米国では緩和に傾きやすい地合があります。

結局これだけの規模の介入を行い、輸出企業の支援をすることも、一種の補助金とみることが可能です。直接給付なのか、79円20銭にはりつけて、その間に為替予約をどんどん入れさせて収益を確保させるのも、国が関与して利潤を確保するという構図に変わりありません。その結果、米国債を蓄えてその価格下落分で国が損を被る。これはバラマキ政策に過ぎないとさえ云えます。
輸出企業を支援するな、という話ではなく、直接給付はダメでこうした支援策は良い、という考えは歪んでいる、とさえ云えます。一般会計からの支出はきつくても、政府短期証券という枠なら国会に提出しなくても増やせるし、じゃんじゃん使えて国の負債にもカウントされない。だからいいのだ、という理屈でいくと、国の隠れ借金が膨大に膨らむのを看過しているに過ぎないのです。

今回の介入も、大した効果は得にくいでしょう。それは財務省が描いている前提がおかしいからです。例えばクルーグマンの為替の考え方では、埋没費用と履歴効果により、為替レートの変動は貿易に影響しない、と結論づけます。詳述は避けますが、為替レートが影響するのは、履歴効果により企業の収支のみであり、長期の視野に立てば産業移転の動きもでますが、短期では企業の収益しか助けないのです。つまり長期の視点で円高を避ける、それは即ちデフレ構造の脱却、という話に尽きるとさえ云えます。為替介入が単なる短期的な動きに留まる以上、これは企業救済策というだけの評価にとどまる、悪い形の補助金事業ということが言えるのでしょうね。

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2011年10月30日

TPPによる制度統合でメディアは?

アマゾンによる電子書籍化が話題です。出版業界に対し、米国型ビジネスモデルにより権利を出版元が管理するよう迫り、それをアマゾンが55%もの暴利で電子書籍として販売するというもの。Kinddle Fireを安価で売っても元がとれる、これがアマゾン型の販売戦略ということ以上に、TPPの前哨戦になりかねない、日米における制度差をまったく無視した手法であり、これを取り入れると日本の出版業界はかなり壊滅的打撃を受けるというもの。さらに、日経新聞がそれに対して、煽りのような記事を書いたことで、米国依存の新聞社という形が露骨に明らかになった、というものです。

しかしTPPであまり語られないのが、関税撤廃という以上に、10年という期間をかけて制度を統合しようとする動きです。特に、日本のメディアがほとんど触れない日本のクロスオーナーシップ、これはテレビや新聞など、メディア間で経営媒体が同じだと相互チェックが利かない、という問題で、海外では禁止されている制度に何らかの変化が生じる可能性もある、ということです。
日本の場合、戦後初の民営放送を担った日本テレビが、読売傘下にあったことからその後も、半ば公的に認められてきましたが、海外では違法です。証券など、流動性のある海外と関連のある取引だけが、TPPにより制度移行が必要とはとても思えません。何より、米国では輸出倍増計画に基づき、このTPPが推進されていると明言する者もおり、それは米国の制度を輸出、海外に進出しやすくすることにより、米国の企業が進出しやすくする、といった側面も兼ね備えていると云えます。

円高なので、日本企業の買収はない、と考えるのは早計です。今の米企業は潤沢な内部留保の使い道に困っています。自社株買いは株価下落という憂き目に遭い、今は数も多くない。そして日本のクロスオーナーシップを禁止し、テレビ、新聞、ラジオなどに分割した後であれば、1社ごとの価値は当然薄まりますので、十分買収対象になる規模にまで下げられるので、買い場ともなります。
海外のメディアも今は再編が進みます。マードック氏率いるニューズ・コーポレーションによる買収は有名でしたが、盗聴事件で失脚し、今後この傘下にある企業の流動化も懸念されます。読売がTPP推進の旗振り役として、統一した制度をつくるのは中小企業対策にもなる、という奇妙な論調をとっていますが、日本の中小企業でも海外の特許をもち、販路を確保している企業は山ほどあります。むしろそうしたギャップを埋める努力を怠り、かつ指導をするべき経産省の問題を指摘すべき事柄であり、むしろ海外企業が参入することに対する負の面も指摘することが必要です。

TPPに関して、賛成派も反対派も偏った議論が多いのは、開示されている情報だけで判断しきれない、といった側面が強く現れます。だとすれば、これは冒険であり、やってみて失敗しました、では済まない問題なのです。米国が輸出倍増計画の下で、このTPP推進をしていることは米国内では最早必然であるなら、それを上回る策がないのに、推進すれば日本の競争力は確実に落ちます。
さらに、これは衰退する産業がある一方、強みのある商品の輸出が増えるため国の経済は発展する、というリカードの比較優位の理論を唱える人もいますが、これは多極化した世界では通用しないモデルです。もう少しすすむとヘクシャー=オリーン理論になりますが、どのモデルも多極化した世界では、検討する要因が多すぎて現実との乖離も大きい、と指摘することができます。単にこの問題を、そうした切り口で捉えるなら、失敗してみて初めて混乱するという冒険で国政を司る、という事態に陥りかねないということです。今の経済学が、ほとんどこの多極化に対応していない以上、学者の意見にしろそれが的を射ているかは、懐疑的にみておくぐらいでちょうどよいのでしょうね。

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2011年10月29日

自由報道協会 VS 読売新聞 について

自由報道協会が主催した、小沢民主党元代表との記者会見で、読売新聞の恒次記者と自由報道協会側とのバトルが話題です。内容を精査するまでもないのですが、読売が反論したので、少し考えてみます。司会者の制止を振り切って、質問を重ねたことをジャーナリストの責務、追求にならない、とします。これは読売が、犯罪者による弁明会見と捉えており、推定無罪の原則を忘れているために、こうした論になっています。仮に、記者クラブの開く首相会見で同じことをすればどうなるか? その記者は摘み出されますし、記者会見の体を為していないのでメディアにもペナルティが生じます。

実質犯、形式犯の認識の差、が追求のキッカケだったようですが、この問題からしても法律学者とて意見が割れることを、たかが記者会見ですり合わせようという方が間違いです。内容証明郵便でも出して質問することをオススメしますが、それがジャーナリストの務めなら、オリンパスの記者会見でも同じことをすればいい。記者会見にならなくなること請け合いです。
例えば陸山会事件の秘書3人の裁判で云うと、殺人を冒したはずだから、事件の際に駐車禁止をしたので目一杯の駐車禁止としての罰を与えます、という判決となっています。駐車禁止はすぐ動かせば、違反は免れる場合が多く、それは政治資金収支報告書の修正という形で、これまで各政治家が行なってきたことです。これが形式的な犯罪、というものと小沢氏は主張しますが、恒次氏は政治資金収支報告書の虚偽記入は、禁錮5年以下だから重大な犯罪だとします。ならば、政治資金収支報告書の修正を行なった議員を、すべて読売は同様に告発する必要がありますが、そうしてはいません。この虚偽記入に関して云えば、これまでは形式犯罪として修正で済ましてきた、その整合性を保つため、東京地裁は『とんでもない事件』を推認し、当てはめたように、読売もそうしなければ行動に一貫性を欠きます。

読売は「会見者を追求から守る」として、自由報道協会側の対応に不満を述べます。自由報道協会やニコ動など、ドル箱スターの小沢氏を無料で担ぎ出せるのですから、追求が甘くなるのも当然ではありますが、記者会見の場が疑惑追求の場になったことは、ほとんどありません。会見が紛糾!という形になることはあっても、会見者が謝罪を受け入れて話す以外、追求はできないに等しいのです。
もしジャーナリストの責務というなら、記者会見で虚勢を張るより、証拠を集めてそれを元に追求するのがスジです。認識論で争っても、しかも読売の態度に一貫性がない場合、これは単に一個人の見解が相手に受け入れられないことへの、イラダチをぶつけた、としか映りません。国民が疑問に思うことへの答えを見つけたいなら、足で稼ぐことから始めないとジャーナリストは失格でしょう。

一部で、小沢氏を擁護する人間は過激、という話もありますが、実は小沢氏を攻撃する人間の攻撃が過激だと、アンチテーゼとして行動は同レベルに進展します。これはテロなどの生存を懸けた反抗でも同様、追い詰めようとすればそれに負けないよう過激にならざるを得ないのです。逆に追い詰めようとする側が冷静な検証に終始するなら、その動きも自然と収まる程度のものです。ただ、今のメディアの狂乱ぶり、感情に任せた反証記事をみる限り、そうなるのはまだ先なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:45|PermalinkComments(4)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 メディア | 社会

2011年10月28日

欧州債務不安は解消されたのか?

野田首相が臨時国会で所信表明演説を行いました。希望の種という言葉を使いましたが、希望は各人が抱くものであり、種の中身が分からないまま将来に期待することはできません。政治にできることは、その希望の種でどういう花が咲くのか? 実をつけるのか? そうした成果にむけてみんなで努力する、という姿勢です。この所信表明に、花も実もイメージさせるものはありませんでしたね。

昨日の欧州包括策、今日になるとやや懐疑的な見方も広がっています。まずギリシャはデフォルトでない、という当局者の発言です。管理されていようと債務削減はデフォルトになりますが、この発言にはCDS市場を混乱させない、という目的が透けて見えます。また金融機関から、早くも数十億円の資金調達が必要、資産圧縮するから必要ない、との発言が相次ぎますが、スペインの銀行が差し押さえ物件を売却するのに、大幅なディスカウントを求められている、とされるように1年を切った資本調達、資産圧縮が、実際の評価を下回って売買しなければならない、という問題に発展する可能性を内包しており、現時点で不足とされる11兆円が妥当か? 甚だ疑問を生じさせています。
では、どういう形であれば終決できるのかを、簡単に示しておきます。まずEU大統領府をつくる。そこに各国の税収の半分を強制的に徴収し、それを配分する形とする。EU大統領府は独自にEU債を発行でき、またそれを各銀行が保有している国債と、市場価格により交換する形で配り、当座預金としての機能を与える。また各国は国債を発行できるものの、それは税収比で100%を超えない範囲とし、今それを越える分は新たに発行するEU債で償還していく。これは日米の方式を合わせた形ですが、現状の問題点は、各国の国債と通貨ユーロとの連動性が低く、これはEFSF債にしろ、新たに創設される特別目的機関にしろ、そこへ海外から資金拠出をすることが、外貨準備の多様化ではなく単なる支援、援助の位置付けにしかならないことで、資金集めに相当苦労することが見えるためです。

EU債の発行に、収益の裏付けがないまま行うのは危険です。それはCDSにしろ、保証をつけるにしろ、懸念が生じると大きなマイナスとなるためです。各国の税収の半分を強制徴収し、再配分するのは日本の地方交付金に似ますが、債務の考え方は米州政府と似ます。欧州各国は州の位置づけになる、この決断ができれば、実は色々なことを機能させる提案ができるのです。
日本も、中国も支援しようとすると、今はEFSFや特別目的組織という、外貨準備の多様化を進めるのとは、やや視点を変えなければいけません。両者は明らかにリスク投資する必要に迫られており、単なる投資としては高い利回りを約束されない限り、安易に資金を投入できません。つまりユーロの為替介入をしても、買える資産はないのです。唯一それが機能しているのが独国債なので、結局各国との利回り格差は広がる方向で向かいます。それが現在であり、仏国債の利回りも上昇傾向です。

昨日の市場をうけ、リスクOnという話もありますが、それはやや異なります。米国ではQE3期待が拡がった5日辺りから、米市場はすでにOn相場です。これは11月2日FOMCまで続きます。QE3が打ち出されなければ、円高は一旦小康、株も小甘くなると予想されます。打ち出されれば一段高も有り得ます。これは日本市場でも、米系の買いが10月相場を支え、日系が9月に大量買いした反動で上値を抑えてきた。それが昨日、そして今日と欧州系の買いが入った、という展開だったこともこれを裏付けます。
安住財務相はEUサミットをみた仕掛け、という理由づけをしたため、介入のタイミングを失いました。しかも2日にはその流れが、一旦巻き直る可能性があっても、来月しかける可能性がある。それはどこまで米に阿るか? で決まってきます。いずれにしろ、EUサミットでは先送りに過ぎないので、FOMCでこの流れが止まるか? 期待の先送りになるか? が決まってきます。ただFOMCがQE3に前のめりになるのは、住宅関連の弱さという以上に、別の要因が内包されているとみています。QE2では住宅関連への波及効果はまったくなかった。それなのに追加で手を打つのは、雇用統計なりに何らかの悪影響が出てくるのかもしれません。昨日のGDP発表と同時に実質可処分所得が1.6%下落、という話もありますし、米予算局によると約30年で富裕層は280%、低所得層は18%しか所得の伸びがない、とされてもいます。米国に広がる格差、これらもQE3が実施されると広がる恐れがあり、米国とて何が飛び出してくるのか分からない、ということになってしまっているのでしょうね。

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2011年10月27日

欧州、日銀の政策と米国7-9月期GDP

今日は経済で大きな動きがいくつもありました。まずEUサミットで包括案が示され、銀行は12年6月末までに中核的自己資本比率を9%に上昇、金融機関のギリシャ債務保有は50%削減、EFSFは保証をつける案と、特別目的機関(SPV)を並存させて約1兆ユーロに拡大、とするものです。既報の内容通りで、特にサプライズはありません。これによりギリシャ債務は2020年でGDP比150%から、120%に低下する見込みですが、これとて来年までは厳しいものの、再来年からギリシャ経済は回復する見通しを前提にしたものです。残念ながら、この提案では数ヶ月の楽観は得られないのでしょう。

日銀の金融政策決定会合にて資産買入れ基金を通じた買入れを、5兆円積み増して55兆円にする策を発表しました。為替も、株式も反応薄だったのは、この基金をいくら積み上げても国債の利回りを低下させる効果も、社債(CP)市場やETFを安定させる機能もないため、です。一方で、日銀が動いたということは、近くFOMCでQE3が実施されるのでは? と憶測を呼びましたので、逆に円高へ動いています。日銀がFRBを睨んで動いてきたことへの、負の効果が現れてしまった形です。
日銀の展望リポートでは11年度の実質成長率は0.3%、12年度は2.2%と、前回の0.4%、2.9%から下方修正していますが、海外要因をあくまで好調を維持と読んでいる分、信ぴょう性は低くなります。例えばタイの洪水によるサプライチェーンの寸断、アラブの春以降の国づくりにおける混乱、欧州債務問題における行方など、組み込むべき材料は数多くあります。特に欧州債務問題は、金融機関による資金調達と、資産売却がダブルで景気には悪影響を与えるのであり、仮に今回の対策がうまくいくとしても、来年度の経済は相当程度、下方から始まるとみなければなりません。

そんな中、米国の7-9月期GDPが出てきました。年率換算で2.5%増、個人消費の2.4%増と、設備投資の16.3%増が牽引した形ですが、一方で家計の貯蓄率は低下、在庫投資は減少など、個人の楽観思考と比べても企業は悲観的である一方、内部留保が潤沢であるため使い道に困る、といった態度が見られます。米国では今、富裕層が消費の先食いに走っており、それは金融緩和、ドル安といったインフレをにらんだ動きであり、逆にその分の効果が剥落したときが問題の根を深くする、と考えています。
消費者信頼感が大幅に低下したように、中、低所得層はインフレと賃金低下、長引く失業などで生活に困窮する。まさに99%が苦しんでいるため、実体としての消費と、消費者信頼感の乖離といった形で米マクロ経済指標でも現れているのです。これはFRBがQE3に前のめりになるほど、この乖離は大きくなっていき、閾値を越えると実体の消費も低下する、長期の景気低迷に身構えることになります。

欧州の危機対応、米国の金融緩和、両者は対策として見かけは楽観を生じますが、負の効果まで含めると、決して抜本的な対策ではない。例えばギリシャの債務削減を、再び実行しようとすれば相当な抵抗があります。ここで大胆にバッサリいけなかったことはマイナスですし、特別目的機関とて、資金調達方法次第では、資金集めに苦労するでしょう。さらに米国の金融緩和では、せっかく新興国が引き締めから、緩和へと舵を切ったのに、再び引き締めを実施しないとインフレが景気を腰折れさせる懸念を生むことでしょう。この対応で、数ヶ月の延命は可能なのかもしれないですが、再び危機の荒波が世界を覆うことを意識しながら、市場を注視していくことしかできないのでしょうね。

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2011年10月26日

オリンパスと大王製紙

円が最高値更新です。ただ安住財務相が「欧州債務不安で投機筋が…」と述べていましたが、それならユーロ安になるはずで、やや的外れです。これは明らかに米QE3期待であり、資源が急騰するようにQE2相場の再現を狙ったもので、介入してもムダになるだけです。期待が沈静化しないと、円高は収まらないのであり、これはFRB理事等の発言が、次回のFOMCでどう反映されるかにかかります。

オリンパスは会長兼社長の菊川氏が取締役に降格し、高山専務が社長に就任する、と発表しました。英医療機器メーカー、国内メーカーの買収に関し、アドバイザリー契約を結んだ企業(FA)への高すぎる報酬に対し、米国などで捜査機関が動いているともされます。FAからのキャッシュバックがあったのではないか? 買収に伴い収益を低くみせ、脱税していたのでは? もしくは資産隠しに使ったのでは? などの様々な憶測から株価は下落基調をたどっています。これは上場廃止になるかもしれない、という懸念であり、実態がはっきりしない以上は投機筋の標的にされます。
FAに690億円の報酬を与え、一部を優先株とする。さらにそれを買い戻す際、3倍以上の高値になるなど、とにかく不透明なことばかり。この報酬は米国で相場とされる30倍以上なのですから、FBIが捜査に及んだとしても不自然ではありません。しかも英医療機器メーカーでは、監査法人が会計上の問題から監査を下りていた、とする指摘もあります。いずれにしろ、不自然さは満載ですから、株式会社には株主に対して説明責任を生じますが、一向にその責任を果たそうとしません。

しかもあくまで憶測ですが、これが企業の裏金作りに利用されていたとすると、政界にまで及ぶ問題となります。なぜ、これほど巨額の資金を必要としたか? しかも何度も…。そう考えると単に要りようだったと考えるのは難しいでしょう。今回の件、株主訴訟まで含めてオリンパスは長期にわたる問題となって、企業価値を損じる問題に発展していくことでしょう。
東証がガバナンスの強化を上場企業に求めましたが、もう一つ大王製紙の問題があります。元会長が連結子会社から計106億円を無担保で借入れし、遊興費に使っていたのでは? とされる問題です。これは10月に事件化しましたが、企業は9月に事実把握とし、メールから3月には経営陣に伝えられていた、などともされており、巨額な損失となって企業に降りかかる問題となっています。これも損失に対して、株主訴訟になるか? それとも株主総会で役員の解任決議が出されるか? 企業に対する多くの見方を悪化させたという点で、日本企業のもたれ合い体質を如実に示しました。

両企業とも、会長による個人的な決済が幅を利かせており、取締役会を経ずに従ってしまう、企業風土が問題です。こうした企業は日本に数多くあり、創業家一族の力が強かったり、企業内の派閥を強化するあまり強い権限を握ってしまったりと、横のつながりを重視する日本社会で、ぽんと上抜けた形で上層部が乗ってしまうと、暴走するケースが多々みられます。日本人は悲観論が多い、ともされますが、こうした傾向をみると、楽観になった途端、身の置きどころも分からず舞い上がってしまうということも云えるのでしょう。両社の損失が確定した場合、どの程度の回収が可能かを考えたとき、極めて困難とも云えるものであり、個人に委ねてしまう今の組織体系の問題点は大きいと云わざるを得ないのでしょうね。

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2011年10月25日

経産省のTPPに篭めた期待

内閣府がTPP参加によるGDPを2.7兆円押し上げ、とする試算を出しました。経産省は10兆円押し上げ、一方で農水省は4兆円の押し下げるとの試算を出しています。試算は条件や前提を変えると、如何様にも数字を操作できる、という見本です。また原子力安全員会が原子力発電にかかるコストに対して、事故による補償額を3.9兆円とすると、発電1kWに対して1円程度のコスト増にとどまり、まだまだ割安との試算を出していますが、一方で補償額を大体28兆円程度にし、廃炉などのコストも加えると、他のどの発電方式より割高になると試算を出したところもあります。
試算は、それを算出する組織、個人に至るまでその能力を正しく映す鏡のようなもので、逆にこの試算が正しくない組織は、それだけで能力不足と指摘できます。例えば、経産省内ではこのTPPによる意義について「アジア太平洋の新たな地域経済統合の枠組み…実質的基本ルールになる可能性」を見ています。つまりこのTPPによる制度を、将来的にはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に発展させ、そこに改めて中国を組み込むことで、利益を最大化する。その前提でGDP比による高い押し上げ効果を見込んでいる、というのが実相のようです。逆に、その前提が崩れれば当然その効果は限定されます。

しかし中国がFTAAPに参加するか? それは懐疑的です。中国ではすでに人件費高騰、ストが起きたことにより、企業は安価な労働力としてではなく、オートメーション化による差別化を図っており、中国国内に企業が留まる理由は、国内の高い消費意欲を期待して、という形になっています。つまり中国は巨大な人口による消費増が顕著になれば、輸出より輸入の方が増えてしまうため、安易に関税撤廃に舵は切れない状況です。さらに政府関与による経済運営ができなくなるため、今のように金融が政府の統制下にある中で、貿易のみその統制が外れるとも思えません。
TPPによる効果を、日米が高めに目論むのはこの中国包囲網によるところが大きいのでしょう。そして経産省の危機感は「日本抜きで…貿易・投資のルール作りがすすむ可能性」を懸念していると、はっきり述べられています。そして、「日米が主導する政治的意義」により、対中、対EUとの交渉をすすめる。これが経産省の試算に含まれる大きな効果、でもあるのです。

しかし米国では中国製品に高いダンピング関税をかけ、圧力をかけています。自由貿易が関税撤廃の意義に留まるなら、裏を返せば補助金競争となる可能性を排除できません。産業により高い補助金を出し、安価に輸出することで競争力をえるなら、これは財政支出の拡大という負の面をもちます。逆に補助金を撤廃するなら、単純なコスト競争に陥るので、これは日米とも安価な労働力を狙って新興国に産業は移転してしまうでしょう。実はこの辺りの試算は、ほとんどないのが現状です。
米の関税は778%、小麦は252%、これを全面撤廃すれば、恐らく補助金でそれだけの額を出さなければ産業としては成立しません。成立しないので、産業としては衰退する。農産物自体は4兆円の押し下げですが、農水省の試算では農業関連産業も含めると約8兆円の押し下げ、と試算されます。これも補助金ゼロ、もしくは戸別補償などを低下させた試算ですので、現実的かはやや懐疑的ですが…。

全国農業協同組合中央会が、国会議員356名によるTPP反対署名を提出しました。上記のように、TPPは日米連携という意味合いを篭めて、高い期待を抱く議員がいる一方で、正負含めた効果が正しく試算されていないため、疑念が拭えないという側面があります。ただ日米が連携することで得る効果に期待するのは、誤りと指摘できます。今後、米国は確実に消費が鈍化していきます。それはドル安により米国はインフレ期待が高まり、今までのような投資リターンを見込む、消費スタンスは成立しないためです。米国は消費鈍化する中で、関税撤廃をしたからといって効果は低い。それを相乗効果、という曖昧なものに頼るのなら、ほとんどの場合その試算は使い物にならないのでしょうね。

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2011年10月24日

EU首脳会議と市場の動き

EU首脳会議が開かれました。具体案が26日にまとまる、という期待感が市場の下支えであり、欧米株は上昇、つられて日本市場も上昇しています。EU首脳会議で、議論がすすんだ点は仏案が消え、EFSFの機能強化策が独案を軸にすすめられる、ということです。EFSFが保証をつける形で資金繰りを容易にする提案と、もう一つはIMFと連携して特別目的会社をつくり、そこが債券を発行する形で資金を集め、EFSFとは別枠で融資を行っていく案も浮上しています。ただメルケル首相は「26日が最終案ではない」ともしており、包括的提案でまとまる可能性も含めて、まだ予断を許しません。
一般紙ではIMFを手本にした欧州通貨基金(ESM)が2013年にも創設、という話やEU大統領の話もありますが、いずれも具体策ではありません。IMFは各国の拠出金で運営されていますが、ESM参加国も同様の仕組みになれば、各国の資金負担は重いですし、IMFとの二重の形にはしにくいため、今後ESMが欧州債務危機に対応する形になります。そのとき、資金の拠出規模はEUの方が小さいので、多大な支出を各国が迫られる可能性がある。これはEU各国に合意を求めずとも、迅速に資金が拠出できるというメリット以上に、デメリットが大きい。これはEFSFが独自に債券を発行できる、とする案でも同様ですが、独仏にかかる比重が増えるばかりなので、この提案でまとまることは難しいのです。

そんな中、日本ではTPPに関して「これは安全保障の問題」と、公然と述べる有識者が現れました。つまり米国の枠組みに残る、米国益を最大化するために交渉に参加する、と明確に宣言しろ、というに等しいものです。こんな国論を二分する話もはばからないのは、推進側の旗色が悪いと察したためでしょう。それでも野田首相は、APECで交渉参加を表明すると思われますが、与野党含めて議論が割れる中、保守勢力だけでも結集させておかないと、政権の勢威が保てないとの思惑です。
日本が配慮しなければならないほど、苦しいとされる米国は、それでも7-9月期GDPは好調と見られています。一方で、FRBからは緩和を匂わす発言が相次ぐなど、非常に読みにくい部分もありますが、リスクの高まりに、より意識を置いた方が良いのでしょう。つまり国内向けに好調、堅調と述べる米国と、諸外国に対する圧力として向かうものは大きく異なる、ということです。

経済面で気がかりなのは、為替と株式の動きが離れてきたこと。つまり欧州債務不安でユーロ安がすすむときは、株も下がるという展開が続きましたが、先週からユーロ下落でも株式は上昇。これは為替と、株の運用主体の差が生じ始めていることの現れ、なのでしょう。為替は比較的現実的な、危機を移す場面が多いものの、株式にはより期待値がのる形で、値を動かそうとしています。
これは株式では、実需の売りが一旦止んだ、との思惑が働いていること。日本では売買代金が減少しており、そのほとんどが東電とオリンパス、という状況の中で他の銘柄に売りは出ていない。閑散に売りなし、ではありませんが、今売らなければならない層は、多くないことを意味しています。このため楽観の層が動きやすい。それが欧米で期待から上げる相場です。EU首脳会議次第で、来月半ばにむけて解約売りが増えるかどうかが決まるので、ここ数日は様子見で十分、ということです。
ただ先にも指摘したように、EU首脳会議で結論が出ることはない。むしろ期待を先送りしている方が良い、との判断も働くことから、実効性のある策は出ないとみて間違いはありません。そのとき、期待値がどう動くか次第で、月末に向けた流れが大きく変わる可能性はあるのでしょうね。

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2011年10月23日

雑感。横浜ベイスターズの売却話

トルコで大きな地震がありました。地球が大きな活動期に入っていることは、もう疑いようもないことです。トルコは新日で知られ、またゴマなど貿易でもつながりのある国です。タイの洪水もそうですが、グローバル化が世界を狭くした一方、世界に責任をもつことも余儀なくされる。日本も震災で苦しむ一方、こうした国々への支援も考えていかなければいけないのでしょうね。

今年のプロ野球、実に色々なことがおきましたが、野球への興味の縮減とともに、記事の扱いも小さくなりました。低反発球によりホームランが激減、またベテラン、左打者の球をバットにのせて飛ばす打ち方が通用しなくなり、左打者は打率上位からも姿を消しました。一方で投手は完投、完封が増えて、防御率が軒並み上昇。震災の影響で特別ルールだったこともあり、延長、引き分けが増加。
さらにセ・リーグは残り試合が片手で足りなくなるまで、優勝、準位が決まらない。パ・リーグは三位争いが最終戦までもつれました。さらに監督交代が多く、まだ日本シリーズは終わっていないものの、来季はさらに変化が出てきそうな状況です。そんな中、横浜ベイスターズの親会社の交代劇、という話が俄に持ち上がっています。テレビ局のTBSからモバゲーを運営しているDeNAへ、ということですが、参加している4チームの同意がないと、売却ができない条件となっています。

パ・リーグの3チームが、すでに同意しないと表明しているようですが、その理由が親会社同士の業態がバッティングするから、ということのようです。パ・リーグはIT関連が2社ありますが、モバゲーの勢いがコワいのでしょう。携帯電話ではスマホの出荷台数が伸びており、パケットの使い放題の契約台数が伸びるなど、追い風が吹きまくっています。既存のIT業界が、パソコン離れがすすむことでシェアを落とすことを避けるため、広告宣伝に利用できるチームの買収を拒否する。
逆に云えば、この4チームの拒否でチーム買収を拒否できる、という項目も既得権益を守るための一条項に過ぎない、ということです。長期的にチームを持ち続けられるか? それがもっとも大事なはずです。変な話、毎日新聞は1950年からの7年しかチームを保有できなくとも、当時は認められた。それは読売、中日、という成功体験が後押ししたとはいえ、業態で適正を認めるという異常さでした。

チームの運営能力があるか? それが最も重視されねばいけません。例えば、楽天は昨年、野村監督の後釜はイヤ、という星野現監督の意向で、一年間別の監督をはさむという荒業をつかい、今年は優勝しないように、と優勝争いの途中で監督交代を宣言した中日が、優勝してしまったとされています。この両チームに、ファンのことを考えたチーム運営ができているのか? かなり疑問です。
かつてはヤクルトも、チームに優勝するな、と云ったとか、云わないとか。ドラゴンズの場合、当時の田尾選手会長が「球団の意向通り2位になった」と云ったこともあります。優勝を望んでいるファンのことを無視するなら、チームなどもつ必要はありません。TBSとて、某新聞の社主に球団をもつよう誘われた、とされますが、そんな消極的な意志ではチームを強くしようとすら思わないでしょう。

プロスポーツなので、勝ち負けよりファンの納得するプレイを、というのが本質であるかと思いますが、ファンはやっぱり勝つことを望みます。ファンあってのチーム、という考え方を失った以上、それはプロとは云えないと考えます。今回の騒動、どう決着しても親会社の意向、それは本業の儲けしか見ていない、という意味ではファンを蔑ろにしている、ということを晒したと言えるのでしょうね。


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2011年10月22日

政府による「円高への総合対策」

昨日、円が最高値を突破し、一時75円78銭をつけました。米国で相次ぐハト派理事による緩和発言、これを受けてドルがジャブジャブになるとの思惑が、一気に仕掛けてきた原因です。さらに3次補正に盛り込まれる2兆円、という円高対策予算も足元を見られた形となりました。
よく考えれば、これはドル安ですから、日本で対抗策をだすには円を過剰に市場に流すしかない。一方で、22年度の北米向け輸出は10.4兆円、アジア向け輸出は21.4兆円、人民元は最高値更新とも言われますが、傾斜は緩やかなので人民元はドルを透かしてみると安いと云えます。つまり北米向けの輸出は減っても、アジア向けが増えれば日本全体でみればプラスです。逆にいえば、北米からアジアに企業が軸足を移していけば、このドル安はダメージが少ないと云えるのです。
TPPが米国による対中国シフト、つまりドル安で米国離れを各国が起こす前に、関税撤廃で米国に軸足を置いてくれるよう促す策、というのもこうした背景があります。米国はドル安が既定路線、最近では「ドル高が国益」とさえ云わなくなりました。ドル安で米国は世界から見捨てられる、その前に対中国で日豪を囲い込む。そんな思惑が、こんなところからも透けて見えそうです。

しかしドル安より今はタイの水害の方が経済的打撃は大きい。すでに首都バンコクも浸水が始まっており、11月いっぱいは水がひかない、とも言われています。その後、工場の復興にとりかかるとなれば、12月まで操業停止が続きます。そのことによるサプライチェーンの寸断が、企業業績に与える方が数倍も大きいのです。浸水被害企業に対して、融資を計画ともされますが、タイに進出できるのは大手企業が多く、市場から懸念されるので、政府支援に頼るとはとても思えません。
ここのところ、政府の対応はちぐはぐです。円高対策では立地補助金など、雇用創出に資するとしますが、これまでも同じように設備投資は減税など、支援をしてきました。実はこの「円高への総合対策」は、昨年の補正予算における「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」の焼き直しであり、当時の野田財務相が財政演説した項目を、丁寧になぞっているだけです。つまり震災もありましたが、その効果が出ていないことを検証もせず、また補正予算に載せてきたのです。

先にも示したように、今はアジア向け輸出の方が大きいのですから、注力すべきはこちらです。ドル安が人民元安に結びつくなら、逆に企業にとっては好材料とさえ云えてしまう以上、ムリにドル安/円高を声高に叫ぶ必要もありません。円が独自要因で高くなるのなら、日本として対応を打てば良いのです。円高を強調する層と、TPP推進を訴える層はどうしても重なって見えてしまいます。
財務省が円高に有効な策をもっていない。それも足元を見られる原因です。来週のEU首脳会議次第では、極端な円高へと動く可能性すらあり、そこに向けた予断を許さぬ態勢を今からとっておく必要もありますが、米FRB理事のようなドル安誘導提案すら、何も出てこない状況です。日本にとっての不幸は、「円高への総合対策」ぐらいで『やった気分』になる財務省と、その文言をそのまま用いている政府という両面で悪材料と、市場から受け止められることなのでしょう。悪材料なら売られて当然なのですが、今は円高で儲けよう、という動きを見せていることからも、当分この円高が収束する気配はないのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:27|PermalinkComments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2011年10月21日

EU首脳会議にむけて

リビアでカダフィ大佐が死亡と伝わります。死亡の経緯が錯綜するのが、そこに隠したい事実の存在を疑わせますが、世界は既定路線との受け止めが多いようです。象徴を失った親カダフィ派が、当面沈黙することは想定できますが、暫定政権づくりはかなり難航しますし、当面は様子見といった形でみるしかないのかもしれません。ただ一つの転機にはなるのでしょうね。

EU首脳会議が23と26日に開催となりました。まだ独国と仏国の隔たりが大きく、1日だけ延長する形ですが、26日にも結論が出る形ではなく、努力目標程度ともされます。独はEFSFの活用に際し、保険方式。つまり債務に保証をつけることで、4400億ユーロの財源を活用する提案をしています。これだと実際に活用する資金より、多くの保証をつけられ、レバレッジがかけられる形です。ただし、連鎖倒産が起きると脆く、ギリシャ破綻、他の国も…となったときに保証費が莫大に膨らむことを懸念されます。リーマンショック後に、保険業の財務不安が囁かれ、米国で公的資金が投入されたように、波及効果まで含めて抑えるのであれば、4400億では不足していると云えます。
一方で仏は銀行方式、つまり貸出しという形を主張しています。これだと独自に機関債などを発行し、資金調達することができ、ECB、独、仏などの保証があれば資金集めは可能です。ただし政府保証のある、巨大金融機関が誕生すれば他の銀行を解約し、EFSF債に乗り換える動きも出ますし、何よりECBに当座預金を積上げ、融資する形になれば見かけ上、EU域内の資金量が拡大する形となり、インフレ抑制などに、別の手を打つ必要を生じるかもしれません。いずれにしろ独案、仏案とも今の資金量では足りない、という点では一致しますが、有効ではないと指摘できます。

銀行の中核的自己資本比率を9%に引き上げる案では合意できそうですが、破綻したデクシアは10%を越える水準だったのであり、9%がセーフティラインではありません。またデクシアが大株主に対して自社株を担保に融資し、それを増資引き受けに回してもらった件が発覚しています。発行株式を使って二度、資金調達している形ですので、これは違法です。すでに破綻しているので、責任は旧経営陣にかかりますが、他の銀行も同じ手法で資金調達していないか? 疑惑を生じさせました。
ギリシャは緊縮財政法案を可決し、EFSFからの融資の前提条件が整いました。ただ、今後も巨額の借換えで、EFSFに頼る構図は続くため、いつ破綻させるのかがキーになります。そんな中、EFSFのAAA格付けを下げる形で、レバレッジを利かす案も出てきました。不良債権をある程度抱え込むことを容認し、その分融資の枠を増やすことが可能。ただ仏国の格下げ、という話もあり、いずれにしろEFSFが最高格付けを維持するのは困難なので、この提案は呑めるのかもしれません。

欧州全体でみれば国家の債務問題も、銀行の中核的自己資本の増強も、不安の払拭にどういう手を打つか? です。残念ながら、EU首脳会議で出てくる内容が、上記で留まるようなら市場は一旦好感できても、時間が経てば悪材料とみなすことでしょう。LIBORが上昇し、国家のCDSスプレッドが上昇する中では、役不足の対策です。26日、何が出てきてもそこで解決することはないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:14|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2011年10月20日

臨時国会が召集

第179臨時国会が召集されました。会期は51日間しかなく、仮に延長しても越年を視野に入れるか、という短期国会です。しかも国際会議が多く、委員会が開けないことも多いので、第3次補正とその関連法案以外、ほとんど審議入りしても継続審議となります。また一つ、仮にTPPをAPECで表明する場合、議会を通すタイミングをいつにするか? 政府が拙速に推進で押し通した場合、もしかしたらこれが政界再編の引き金になる可能性もあり、各論になると相当もめそうな気配です。
最近では、平野防災担当相の「バカなヤツ」発言で、言葉狩りが起きそうになりました。しかし鉢呂前経産相があまりに酷い言葉狩りだったこと、また親米の野田政権を擁護する一部メディアがこの流れに乗らず、立ち消えになっています。ただ今回も最悪なのは、言葉の一部を抜き取って「どうですか?」と訊ねるメディアの姿勢です。またそれに乗った野党議員も、これは自戒が必要でしょう。自分たちが仮に政権政党になったとき、同じことをされても批判できなくなるのですから。

原子力安全委員会が、原発の周辺5km内を予防措置範囲として、すぐ退避する区域。周辺30km内を防災区域とし、周辺50km内を準備区域とする、とする案を提示しました。学者の案は、どうしてこうも画一的なのか? と嘆くほどですが、こんなことを提案すればその地域の地価が下落し、その分の補填を考慮する必要が出てきます。また原発立地交付金の配り方にも影響するでしょう。下手をすれば交付金の額が増え、電気料金にはね返る可能性すら出てきてしまうのでしょう。
今回の福島原発の事故でも、東京、神奈川までホットスポットが拡大しています。距離は関係なく、放射性物質は飛散しますし、それはSpeediなどを活用することで危険地帯を伝えられる。問題は事故の規模と、被害状況は千差万別であり、その時々に応じての対応になるということ。防災区域に指定されたから危険、安全という別はないのですから、行政上の区分けを作ったのみとなります。

最も悪いのは未だにSpeediは文科省、原発は経産省、事故が起こると原発担当相といったように原発行政が二重、三重になっていること。官僚依存型の野田政権では、行政の棲み分けが迅速に進まないといった問題があります。ここで政治力、リーダーシップをとって行政の一本化をはかることができない、そんな弱さがあります。一方で地方への出先機関改革の関連法案を、来年の通常国家に提出するこに前向きな姿勢を示しましたが、1ヶ月と少しでじりじり下がる支持率に、何か手を打とうと考えたのかもしれません。しかしこの関連法案を官僚が書く限り、期待はできないのでしょう。
もう一つ、神奈川でポリオの不活化ワクチン投与を開始すると宣言し、小宮山厚労相が反発しています。動きの遅い国に対して地方行政が先に動きだす。製薬会社の対応を待つ厚労省と、利用者に近い立場の地方行政、という差がこの行動に現れています。少し失礼なことを云えば、この問題で記者会見した小宮山氏の首が少し震える、老年期にみられる特徴を示していましたが、能力、資質の面からみても広範な厚労行政に耐えられるとはとても思えません。タバコ増税で公明が妥協という話もありますが、厚労相はタバコと同時に、年金や労働環境などまで担当しているのですから、むしろそちらに注力しないと、自民党の政権末期のように年金不安で政権が行き詰まる事態が、すぐそこまで迫っているということなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:20|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年10月19日

中国の7−9月期GDPについて

野田首相が最初に択んだ訪問国は、韓国でした。その中で朝鮮王朝儀軌の返還とともに、一つの話題が通貨スワップの規模を130億ドルから、700億ドルへと拡大することで合意しました。円とウォンのスワップは30億ドルから300億ドルへ、チェンマイイニシアティブで合意している100億ドルは据え置き、新たに300億ドルの枠を追加して、合計700億ドルという形となっています。
韓国ウォンは投資資金流入とともに上昇、一転して9月半ばからは投資資金引上げで急落しています。通貨安は貿易面では有利ですが、金融機関がドルや円を調達するとき、通貨安は足かせとなります。そこで中銀同士がスワップし、国内市場に還流しますが、リーマンショック時を越える規模のスワップを結んだのは、韓国経済の脆弱性を垣間見せたと云えるのでしょう。つまり韓国では、サムスン電子や現代など、一見すると輸出が好調なようですが、国内経済のパイが小さいため、金融機関は非常に弱い。それは現在、韓国でも問題視される格差などもあり、貯蓄率という問題となって、金融機関の資金調達力に跳ね返ります。外需が弱含むと、この金融の脆さが露呈するのでしょう。

昨日、中国国家統計局から7-9月期GDPが発表され、前年比9.1%と前期の9.5%から鈍化しました。一方で固定資産投資は24.9%増と、高い伸びを示しています。中国で懸念される迂回融資、安全とされる企業、相手に貸し、そこからま又貸しされることで、実際のリスクが見えなくなるという問題を解決しない限り、この固定資産投資の伸びは止まらない。これは金利や預金準備率などを引き締めても変わらない、ということです。一方で、不動産価格は伸び代も小さい。そうなると高い金利負担が、投資の環境を変えるので、急激な景気悪化を招きやすいという状況を生みます。
中国政府系ファンドが、国内の金融機関の証券を買った、というので一時金融緩和期待も膨らみましたが、9月消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.1%となり、その期待もしぼみました。食品価格は13.4%の上昇と、これは極めて厳しい数字であり、より低所得者にとって生活を苦しくする内容です。生産者物価も6.5%上昇と低下する傾向は見られず、金融緩和は当面難しくなったのでしょう。

さらに中国にとって問題は、欧州債務問題が影響し、来年の中国貿易収支が赤字では? という試算を政府系シンクタンクが出したように、来年にかけての経済見通しが読みきれないこと。7月から貿易黒字は着実に減少しており、9月は145億ドルと、このままいけば来年の早い段階で単月では貿易赤字に転落する、と見ています。米国では対中制裁法案が可決されましたが、人民元高に誘導する施策にも限界があるとされ、貿易収支と重ねてみると、それが一層鮮明になってきます。
アフリカでも、中国型の人、モノ、金を出して開発する手法にたいし、各国で反発も広がっていますから、中国は内外で、急速にその経済モデルを否定されかねない。そのとき、中国のハードランディングが見えてきます。今回のGDPは、減速は示しましたが、それ以上の悪化は示していません。ただ周辺で起きていることは、確実に中国のハードランディングを予感させます。インフレを無視して、金融緩和へと舵を切るのは、相当のリスクを伴うでしょう。約1年で9回の預金準備率引き上げを、7月以降実施していませんが、まずここから打診的に緩和へと向かうのか? そのときは中国経済に対して、当局がかなりの警戒心をもっている、ということを示すことになるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:09|PermalinkComments(2)TrackBack(2)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アジア

2011年10月18日

雑感、携帯電話の冬モデルが出そろう

NTTドコモが冬春モデルを発表し、これで携帯電話各社のモデルが出揃いました。今期は4G通信による高速化が話題ですが、NTTドコモのLTEに割安価格を設定するなど、3Gから4Gへの以降をスムーズに進めたい、そんな意図が透けて見えます。しかしiPhoneが販売開始からすでに300万台達成など、こうしたau、ソフトバンクの追い上げで、人口カバー率100%を達成し、通信品質は良いとされたNTTドコモも、お尻に火がついてきたのかもしれません。ただ携帯電話各社にはやや疑問を感じています。
某所の試算によると、iPhone4Sの部品を総合すると、大体200$程度の製造原価とされます。またKinddle Fireはそれ以下、とされますので、日本のスマホとて製造原価は3万円以下となってきます。現在キャリアごとに端末価格は異なり、NTTドコモは4万円台、他は7万円台のものもあり、それをサポートとして各月の支払いから割り引くサービスを、各社導入しています。

携帯電話各社は、キャリアごとに市場競争はありますが、端末間の競争は拒否している形です。通信規格が異なり、端末の製造会社は各キャリアに卸すだけ、後はキャリアごとに自分たちの規格やソフトを組み込んで売る。このため端末価格は製造原価、プラス製造会社、プラスキャリアと3つの上乗せがされている形で、原価から考えるとかなり割高な、競争が効きにくい構造に陥っています。
しかも家電量販店などでは、やたらと携帯電話の販売員が多くて、店舗の3分の2がそこに集中するのではないか? と疑うほど。そうしたサービスを支えるのが、端末価格として上乗せされているとすれば、販売促進費まで購入者が負担していることになります。これが端末ごとに競争原理を働かせるようになると、実はiPhone4SやKinddle Fire、それに今月にも出てくるとされる、2万円を切ったタブレット型端末などと同様、価格はぐっと下がってくるのであり、これも規制の甘い業態の一つ、と指摘することができます。しかもショップの多さなど、携帯電話はあくまでぜいたく品として、高付加価値、高サービスを目指す方向性のまま、未だに継続していると指摘できます。

そんな中、サムスン電子がAppleのiPhone4Sを提訴し、販売差し止めを求めました。これは韓国型社会における負の影響を感じています。当初、デザインが似ているとしてAppleが提訴、元々Appleはデザインにこだわりがあり、そこを冒したサムスンへの懲罰的な意味合いがあったと見ています。しかしサムスン電子は、攻撃されると反発する韓国人の気質をそのままに、敵対の道へと突き進みました。
日本でも90年代の自動車メーカーMは、欧州のデザインを真似て問題視されたことがあります。ただし日本的『和』を尊ぶMは話し合いによる解決を求め、事態は沈静化しています。つまりサムスン電子のような対応をしていたら、国際問題化した恐れすらあった当時、妥当な判断だと云えるでしょう。サムスン電子は、半導体部門ではAppleが顧客であり、今やAppleはサムスン電子からの調達をやめ、日本や台湾製半導体に切り替えている、とさえ云えますし、謝ってデザインを変更していれば、こんなことにはならなかったのでしょう。中韓は新興メーカーの戦略として、シェアをとるため海外で人気のあるブランドに似せることは、往々にして起こりえます。ただし、その後で対応を誤ると、禍根としてその後のシェア争いにまで影響する、ということになるのでしょう。

またAppleの販売圧力は相当キツイ、ともされる中でApple株価は好調です。ただ、1国1キャリア主義を捨て、販売拡大戦略に出ているのですから、増えて当然です。ただし、ここから更なる上積みを求めるのは苦しい。それは今がピークで、今後は台数拡大効果を見込めない、ということを意味します。ハイテク株の動向、その象徴的な扱いでAppleは見られることも多いですが、ジョブズ氏亡き後の戦略が、ただの圧力による販売拡大では、凋落がすぐそこまで迫っていることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:27|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 社会 | 経済

2011年10月17日

雑感。郵便不正事件で国は認諾

郵便不正事件における、国や当時の地検幹部に対し、村木元局長が違法捜査による国家賠償請求訴訟で、国が全面的に『認諾』し、3770万円の支払いを受け入れました。精神的苦痛に関する330万円は継続しますが、国が問題の拡大を恐れて早めに手を打った、とみられても仕方ない決着です。
まず驚くのが逸失利益として3770万円、という額の大きさです。逮捕から復職まで、約1年と3ヶ月の間に局長から自宅待機となり、裁判の準備や資料集めに奔走すると、これだけの額が支払わされる。逆にいえば、これが裁判所が有罪に傾きやすい原因ともいえます。裁判所が国家よりの判断を下すのは、今に始まったことではありませんが、違法捜査というツケは結局税金で賄われます。

小沢氏の政治資金収支報告書の虚偽記載に関する第二回公判が開かれ、石川議員の再聴取の隠し撮りが流されました。和やかなムードで問題ない、とする指定弁護士の意見もありますが、これは一度目で威迫、強要をうけて精神的に操作されていた状態だとした場合、和やかさは何の価値もありません。マインドコントロールを表面上でのみ判断すると、新興宗教に入信して穏やかな表情で話す人たちは、まったくマインドコントロールにかかっていない、と断じることになります。
検察官、警察官、それぞれの肩書きはそれだけで威迫です。検察は何でもできる、逆らうとイタイ目に遭う、という精神状態におかれてしまうと、人は容易に抜け出せません。むしろこの隠し撮りの資料は、警察が取調べにおいて、どういった方法で供述を誘導するのか、それを明らかにするのみです。そして郵便不正事件の早期幕引きは、それらを覆い隠してしまう意味もあるのでしょう。

警察庁の安藤長官が退任し、片桐次長が昇格します。安藤長官は暴力団との徹底抗戦を訴え、暴力団対策法の強化を打ち出しました。その流れをうけ、島田紳助氏が芸能界を去ったことは記憶に新しいですが、実は政界の方が暴力団とのつながりが深い、ともされており、注目されています。
小泉元首相はヤクザの家系だった、という某週刊誌の記事もありますが、政治家は出自より今が大事です。問題は今、地元への根回し、人集め、集票マシーンとしてそうした組織とのつながりがあるのかどうか? そしてそれが、公共工事の受注という形で、地元還元に結びついていないか? といった事実を解明しなければなりません。実際、往々にしてそうしたことはあり、それが暴対法で利益供与とされると、今後の選挙活動にも影響がでてくる、そうした問題となってきます。

安藤前長官は、愛知出身で暴力団問題に元々積極的だった、とされていますが、退任前に各所に要請をだし、一気に動いた後始末は後任がしなければなりません。本気で政治家の活動にまで踏み込むか? これは政治資金規正法にかわる、新たな政治家に対する規制になるのかもしれません。ただ、郵便不正事件を早期に幕引きしたことといい、取調べ全面可視化に後ろ向きなど、未だに検察、警察は改革に対して後ろ向きであり、かつ政治の流れに追随する点が、こうした見方を否定します。
足利事件の供述場面など、諭されて泣きながら自供した犯人が、実は無罪だった。部分的にこの点だけを抜き取れば、有罪確定だと誰しも思うでしょう。しかしそれ以前に、どれだけ警察の恐ろしさを叩き込まれ、染み込まれたか? その解明が大事なのです。警察が作り上げてきた冤罪は、枚挙に暇がありません。暴対法にしろ、警察の本気度とどこまで独立性を保つのか? その両面で考えると、これらの件が何ら日本にとって、好材料であるとは思えないのが残念ですね。

analyst_zaiya777 at 23:10|PermalinkComments(9)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2011年10月16日

G20と安住財務相と、米国

G20が閉幕しました。声明ではEFSFの再拡充など、EU首脳会議までに欧州債務危機に関する包括策を求める。また、IMFの拡充については来月のG20首脳会議の議題とする、という内容です。要するに先送りであり、財務省、中央銀行総裁では手に負えない、といったところなのかもしれません。
安住財務相は消費税10%を公言し、さらに円高是正には欧州の安定が必要、という欧州債務危機に軸足をおいた形で、円高対策に理解を求めました。ただし、消費税議論は党内ですらまだ合意されておらず、昨日も述べたように円高に為替介入という姿勢は、単に財務省の都合によるところが大きいものです。まさに、安住氏は財務省の手の平の上で踊らされている、会議以上に踊っているような印象しかもてない内容です。つまり逆にみれば、野田政権は死線に消費税をおいた形となりました。

米国から、世界へと拡大する格差是正のデモ。ギリシャでは過激派が破壊行為、として記事が一斉に流れましたが、これは日本でも起きた格差是正デモへのネガティブキャンペーンです。つまり過激派と間違われるから、参加するな、というメッセージがメディアから流れているのです。
ただし、米国がブッシュ政権時代から、日本でも小泉政権時代からの流れは、富裕層を拡大することにより、その投資で成長を達成するというもの。つまり10年近く富裕層への減税を続け、税制を変えてきた結果として今があり、成長の果実を受け取れなくなった、つまり失業率が拡大すれば流れは確実にかわります。そして、その流れに逆行するのが消費税増税だと指摘もできます。つまり逆累進性を考えると、消費税増税は富裕層優遇、という指摘すら可能とするのであり、日本で格差是正デモの拡大は、消費税増税に前向きだったメディアにとっても、容認せざるものだということです。

例えば、9月米小売売上高が前月比1.1%増と高い伸びを示し、消費は堅調として米株は上昇しました。しかし内訳をみると、自動車、家電、家具などの高額商品が伸びている一方、食品・飲料などが低迷しています。これは即ち、富裕層が規制をうけることを察知し、早めに高額商品を買い向かったとみることができます。さらにインフレ懸念が消費を後押ししており、また低所得者や失業者の購買意欲が低下していることは、10月米ミシガン大消費者信頼感指数が57.5と、前月より1.9pt低下となったことでも伺えます。つまり実質消費支出は下がっていく傾向が見られるのです。
米国では、恐らく富裕層に対する課税が加速するでしょう。それは来年の大統領選にむけ、茶会系に対抗するためにも、民主党はこの格差是正でもに加担するしかないためです。しかも、この消費傾向がより鮮明になれば、関税撤廃で生じる税収減に備えるためにも、富裕層課税という形で進みやすくなります。日本はこうした流れとも逆行し、消費税増税を論じていることになります。

G20財務相・中央銀行総裁会議では、一旦問題を先送りしたので、市場には23日、来月3、4日にかけて何らかの対策が打たれる、との楽観が続くかもしれません。ただ為替にしろ、売りがポジションを下げて今の水準があるとすれば、新たな売りポジションを組むのを容易にした、ともいえます。新たな買い材料がない限り、買いの手がいつまで続くか? その継続度合いのみが市場を決めることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:30|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2011年10月15日

米韓FTAと、日本

パリでG20(20ヶ国財務相・中央銀行総裁会議)が開かれています。来週のEU首脳会議と合わせ、何か対策がでるのでは? という期待が世界の株式市場を押し上げています。EUではストレステストで中核的自己資本(Tier1)を厳格化し、7%から9%にすると、半分以上が不合格との試算もある中では強い相場です。日本では昨日マイナーSQは8799円でした。ただ売買高は1兆円強と、SQとしては異例の少なさです。今週、急減した売買高からみて、売り方が減ったために買い支える必要がなくなり、その分SQでの処分も減った、とみることが可能です。それにしても欧米の切り返しは急激で、悲観の極と楽観とがせめぎ合う、狂気じみた乱高下相場がさらに拡大しそうな気配ではあります。

米国で韓国とのFTAを議会が承認しました。これをうけ、日本は出遅れ、韓国勢にシェアを奪われる、などの論調を多くのメディアはとっています。ただし、韓国は圧倒的に外需依存型経済であり、国内市場は小さい。韓国では35万人の新規雇用、GDPを5.6%押し上げ、と鼻息も荒いですが、話はそう単純ではありません。韓国国内に流入する米国製品でその分押し下げられます。ナゼ米国がこのFTAを承認するか? 答えは単純で、関税障壁がなくなった後で貿易比率を変化させるのは、為替です。これはより大きい経済規模の国の方が、為替誘導による影響は大きい。つまり米国が本気で韓国との貿易赤字を嫌気すれば、ウォン高に誘導すれば良い、という計算が成り立ちます。
これは日本のTPPも同様です。すでにAPECで参加を表明するための工程表をつくり、野田政権は動いている、との資料が流出していますが、こうした資料が出ると大抵は失敗します。反発が大きくなるためですが、先にも指摘したように、関税障壁がなくなれば為替がより大きく影響します。例えば米国で自動車にかかる関税は2.5%、77円/ドルの為替だとすれば、2円程度で相殺できてしまいます。つまり為替操作に長けた国が、関税のない世界ではより有利になる、ということになります。

そんな日本では安住財務相が「政府短期証券を165兆円程度に増やす」と発言しました。この政府短期証券は、国の債務としてもカウントされておらず、すでに120兆円近い規模がある。つまり45兆円の余裕を得ると宣言した形です。では、これは何に使われるかと云うと、為替介入のためです。最終的には外為特会に移されますが、この政府短期証券により一旦資金を調達し、介入資金に充てます。野田政権では為替介入を口実に、国会にも提出する必要のない、財務省が自由に裁量できる政府短期証券の枠を増やしす、そんな意図でしばらく動くことが想定されるのです。

TPPに参加しても日本は損をするだけです。内向きの経済が、逆に海外の急変動に耐える抵抗力となるため、世界がリセッションに陥ったときは、円高へとふれるからです。財務省は円安へと誘導する策もなく、為替介入で損失を膨らませています。だからTPPに参加しても日本にとって損、と指摘できるのです。経産省はGDPをかなり下押しする、との試算を出しますが、工業製品の関税はすでに小さく、影響は軽微。一方で、農業は保護政策をとってきたため、より高い関税をかけてきたため、こちらの影響の方が大きいということになります。そこに為替の影響、ここに注視する必要があります。
欧州で公的資金を大量に金融機関に注入すれば、それだけでユーロ安となる。それは米銀とて同様です。先にJPモルガンの7-9月期決算でDVAと呼ばれる利益が相当程度のっている、として決算発表から数日後に株価は急落しました。DVAとは、債務評価調整機能として、市場が悪化すると利益として計上できる、帳簿上の利益であり、すなわち架空です。これが乗るということは決算自体は良好にみえても、実質的な儲けはない。米銀とて、バンカメなど破綻を意識するほどの株価となっています。米銀にも公的資金、などの話が出てくると、さらに円高に向かいやすくなる。この段階で、関税撤廃などの議論をするのが妥当かどうか? よくよく考えないと日本は大損することになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(6)TrackBack(2)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2011年10月14日

雑感。世田谷のラジウム問題

欧州では、スロバキアがEFSF拡充策を議会が可決し、生みの苦しみを経てEFSFの機能が強化されました。ただこの資金の使い道をめぐって、EUの基本法である欧州連合条約の項目を見直すか、あくまで金融機関の救済は国単位で行うか、市場調達かのルール作りに着手します。バローゾ委員長が欧州債務危機の脱却にむけた、スキームを打ち上げて市場は楽観に傾きましたが、総論賛成、各論反対の現状をどう解決するか? これからが正念場という見方が大勢です。

世田谷区で発見された高線量が、ラジウムと確認されました。この記事で隠されたのが、横浜でストロンチウム発見、の記事です。前者の原因はわかりませんが、後者は福島原発由来です。1号機にやっと覆いが完成し、水蒸気とともに立ち上る放射性物質が、やっと防げる形となりました。ただこのペースだと、4号機まで終わるのは来春以後となるので、まだ放射性物質の放出は続きます。
世田谷区の問題はラジウム、ラドンなどの放射性元素に対する忌避、という影響を与えます。温泉にはこれらの名称を関し、健康によいと詠うものがあります。被爆する、という認識が拡大し、そうした観光地には打撃となるでしょう。低放射線量が健康によい、とするホルミシス効果について簡単にふれれば、免疫は免疫系と、免疫抑制系があり、免疫系は常に一定、抑制系が量を調節することでそのときの体調に合わせ、身体を維持するとされます。この抑制系は活性細胞に由来し、低放射線の被爆をすると毛が抜けたり、胃壁が再生されず、胃がムカムカするといった症状がでるのも、活性細胞の働きを抑えてしまう影響とされます。つまり抑制系の働きが低下し、免疫力が高まる、というのがホルミシス効果とされるものです。
上記のことは、学者の講演で聞いた話ですが、原子力に関する学者の意見は信用できない、ということが露呈しており、正確さには欠けるかもしれません。

ただ街中でも高線量地域がある、との認識が疑心暗鬼を起こすでしょう。そもそも線量や半減期ばかりが問題視されますが、崩壊後の生成物とて毒性を有すものもあるのですから、自然界にない物質が広範囲に飛散した、ということが問題なのです。ここを間違えると、低線量だからよい、という誤った認識となります。学者でも容認論をとる人は、この説を採用しているようです。
ホルミシス効果にしろ、ではどれぐらいの量なら良いか? 超えたら問題があるか? 誰も判断できません。それに、花粉症やアレルギー、リウマチなど免疫が過剰防衛するような病気には、逆効果なのですから、何でも健康になるというものでもありません。放射線に関しては、実は何が正しいかを誰も判断できない、統計学上の問題でしか今は語れないので安全、安心というのは語弊がありますし、またリスクの度合いも統計的なものでしか表せないのが、現状といえます。

今回、身近に放射性物質が存在し、高線量地帯が点在している、という認識の広がったことが良かった点といえます。しかし九電など、原発推進派による情報隠蔽ともとれる、第三者委員会の報告書をつまみ食いした報告書のようなものがあると、結果的に原発は危険という認識が強くなります。むしろ現在は、正しい情報に基づかないと、信用はされない時代に来ている、ということをまだ理解できていないようです。一連の動き、原子力全体としてはマイナスになったと言えるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:06|PermalinkComments(4)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 原子力 | 社会

2011年10月13日

野田内閣の政調会長

野田政権になってから目立つ動きがあります。それは前原政調会長です。前政調会長である玄葉氏はほとんど表にたたず、形骸化していた役職ですが訪米、訪韓と立て続けに外交をこなし、事前協議の段階ですが、米国では自衛隊の武器使用の緩和を、韓国ではEPA締結や、従軍慰安婦問題については基金などの提案を行なっています。党の政調会長、という立場からは大分踏み込んだ、まるで外相にでもなったかのような、権限を大きく逸脱した発言に聞こえてしまいます。
恐らくこの振り付けは仙谷代行が行なっています。特に従軍慰安婦問題は、元々仙谷氏が積極的であり、日韓基本条約における戦後賠償の放棄、という項目を無視するのが持論です。ただし、この発言は前原氏を支持していた層の離反を招きます。日韓基本条約という、明文化された根拠すら否定したことは、彼にとっては致命的なミスです。元々が右とみられており、仙谷氏の振り付けで踊る彼に指導力や、自ら判断する力が見られない点も、これまでの支持層からは不興を買うでしょう。

民主・前原氏と自民の茂木政調会長が会談し、3次補正の与野党協議をスタートさせることが決まりました。野田政権は強力な根回しのプロ、財務省がバックにいるため、こうした協議は得意と見られます。タバコ税増税案を、あっさり撤回する姿勢を示しましたが、これは増税に反対する党内を抑えるために入れられた項目で、しかも小宮山厚労相のゴリ押しもあった、曰くつきのものです。与野党協議で見直された、という論拠で党内に説明ができる。財務省にとっては、自分たちに不都合なことを通さずに済みます。さらに野党に対しても、事前に説明にお伺いをしていることでしょう。自民の若手でも有望株とされ、政策通を自認する茂木氏も、簡単に篭絡されたようです。
野田政権は『低姿勢』。そういう認識でいると、判断を誤るのでしょう。官僚の振り付けの下、政治家が前面にでなくても、調整が済んでしまう。これは小泉以前の自民党政治のようであり、決断する段だけ政治家が出てくる形です。さらに野田政権が一歩進んだのは、決断する段まで政治家が不要になりそうなほど、官僚に依存していることです。その中で異彩を放つのが前原氏、しかしその前原氏のことを振り付けするのが、官僚から一目おかれている仙谷氏、という構図なのです。

そこで出てきた年金制度改正議論。まだ案なので詳細は避けますが、国民の誰も得しない制度改悪とされており、これもまた年金行政を担う厚労省の思惑が、先走った形です。野田政権は上記のように官僚依存であり、支持は当然のように低下します。それを補おうと、外交を積極的に展開しようとしている。その尖兵が前原氏なので、中韓に甘くなる形がより鮮明になります。一見、前原氏は中国に強気な発言を繰り返していますが、米韓に行った前原氏が中国に行かず、仙谷氏が中国に向かう予定だった、というのが二人で役回りを分担している、よい例でもあるのでしょう。
最近、読売の社説が話題であり、TPPが東アジアの安定につながる、という暴論に近いことまで言いだす始末です。対米追従をすれば日本安泰、TPPのために農業改革しろ、とやりたい放題。小沢氏の国会での説明を国民の80%以上が望んでいるからそうすべき、としますが、読売の世論調査は最近、他メディアの世論調査と数字の乖離が大きく、逆に世論調査の正当性が疑われるところです。
しかし読売は、前原氏などの民主党内の右的勢力、いわゆる小沢対抗馬として肩入れしてきた部分があります。ただ、前原氏らの背後に、中国に頓首する仙谷氏がいるとより鮮明になったとき、この社説がどんな暴論を打ってくるか、見ものでもあります。野田政権はまるで糸で釣られた操り人形、表面上のものより、その背後で誰が糸を引くかを見定めないと、正当な判断もできないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:13|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年10月12日

欧州でスロバキアがEFSF拡充策を否決

タイの洪水被害が深刻で、日本企業の工場も大打撃を受けています。タイを初め、企業は安価な労働力をもとめて新興国などに工場移転をすすめましたが、実はこれが株価低迷の一因にもなっています。新興国の悪天候、政策変更、インフレなどの諸事情により、業績に変動が生じてしまう。それを個人投資家がすべて情報としてカバーすることは難しく、よく分からないから投資できない、と手控えがちになります。グローバル化の功罪として、世界経済が堅調なら恩恵を幅広く享受できるため、工場移転は好感されますが、今後新興国の経済破綻などが起きると、その考え自体が見直されます。

欧州の小国スロバキアが、EFSF拡充策を否決しました。GDPの1割にあたる77億ユーロの拠出をせまられ、世論も否定的であるため、連立与党内で合意できなかったためです。これは先に欧州首脳会議で合意しているため、現首相の辞任はやむを得ない。問題は野党が総選挙の提案をのんで、賛成に回るか? です。しかしそうなると、野党も国民に不人気な議案に賛成した、として糾弾される恐れがあり、票読みに今は躍起となっているところでしょう。市場では再採決で賛成される、との見方が大半ですが、実はこの票読みで野党不利、が確認されると再採決でも否決される恐れがあります。
しかもこの負担は、GDPで1割でも国の租税収入からみると、2割を越す恐れがあり、日本で云えば一般会計がすべて注ぎ込まれる計算です。それを賄うために増税か、国債増発か、短期証券による借り換えをくり返す、という政策を打たねばなりません。これを通すために、再びもめる可能性が大です。

しかもこの策でEFSFの資金が2500億ユーロから、4400億ユーロに拡充されますが、IMFによる欧州金融機関の資本不足は2000億ユーロとされますから、拡充されてもEFSFの資金だけでは足りません。そこでレバレッジをかけ、1兆ユーロ程度に資金枠を拡充する案などが語られますが、いずれにしろユーロ圏で財政移転を禁じたルールなど、今度は27ヶ国の承認を得なければ政策合意できない、というジレンマを抱えます。さらにEFSFの資金を金融機関に拡大する案には、独・仏で意見が割れており、市場調達派の独国と、EFSF活用を目指す仏国で、合意できる見込みが現時点では立っていません。
国の格下げにより、金融機関も引き下げられる。最後の砦としての国家財政が、信用を失うと影響は甚大です。しかもこの動きをうけ、米格付け機関の支社に投石などのデモが起きており、今後は治安悪化による経済への打撃が、格付けを落とす原因にもなりそうです。失業率が高いとは、生産力の低下とともに、生活補助による資金の拠出、治安悪化による抑止としての警察権の機能強化など、国の財政には大きな負担がのしかかってきます。今後、拡大していく失業率の流れは、大企業に対する攻撃へと向いやすくさせ、それが工場移転に伴うリスクとして、意識されることになるのでしょう。

今日の日経平均はやや下げて終えましたが、タイの洪水とともに、週末のマイナーSQでやや買い超、均衡点は8600円程度、とされたのが嫌気されたようです。海外要因に振り回され、日本独自の要因では動けない中、売りが優勢になると支えが利きにくくなっています。それは日銀のETF買いの低下とともに、個人投資家が動かない状況が影響しています。
朝方の外国人投資家が3日買越し、25日移動平均線を抜いた、売り一巡でしばらく買い方有利、などの情報も伝わりますが、急変動により退場を余儀なくされたヘッジファンド、信託等の動向がはっきりしない限り、新たな買い方を見つけるのは難しいのでしょう。ここからは我慢比べ、いつ欧州債務不安や、米景気後退懸念が払拭されるか? それまでは上昇も、下降も相場の流れとして大局を変えるものではなく、奇妙な楽観論にはのらず、逃げ足を早めた戦略を立てなければいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:20|PermalinkComments(0)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2011年10月11日

TPPに関して

仏・ベの金融大手デクシアが破綻しました。バッドバンクを切り離し、一部を国有化する形での処理です。詳細は不明ですが、それが明らかになると仏・ベの国債格付けに影響してきます。さらに独・仏で金融機関の資本増強、という話が出てきました。これを好感して株式市場は上昇しています。
資本増強策が困難なのは、公的機関の債券を主に運用していたデクシアが破綻したように、金融機関でも選別が起こること、です。欧州ストレステストがすでに不信任されたように、査定結果によっては市場調達が機能しない恐れがある。そこに公的保証をつけるなら、やはり国債格付けに影響してきます。ドミノ倒しの防波堤を国が賄いきれるのか? 一旦過剰流動性にしてしまった結果、金融機関は資産規模や資金取り扱いを増やした。それが焦げ付いたら、最早さらなる流動性を供給する以外、解決策はありません。その副作用としての高インフレをどう防ぐか? 難しいのでしょうね。

日本では野田氏がTPP参加に前向きで、APECまでの1ヶ月で結論をだすよう、検討を指示しています。TPPは関税撤廃を、10年かけて行う経済連携協定ですから、結論から先にいえば10年後に加盟しても同じです。例えば関税撤廃項目を、各国との二国間FTAにしてしまえば、参加しているのと同じ条件を得られるため、です。つまりTPPベースで、二国間交渉をするなら焦って結論をだす必要はありません。むしろ個別交渉ができるため、TPPベースのFTAは非常に有用性が高いのです。しかも今から参加を表明しても交渉できる余地はありませんから、尚更このタイミングで動くことは奇異です。
個別にみれば、農林水産業は、国産は放射能汚染を気にしなければいけません。基準値があるばかりに、逆にゼロではない、という意識が海外産の需要を増すでしょう。このタイミングでの導入は死活問題、一度産業が衰退すると、その何十倍もの予算をかけなければ復興できないので、まさにTPP参加で復興需要すら失いかねない状況です。しかも高圧水の除染を行えば、河口に放射性物質が流れ着いて、そこに滞留するだけなので、漁業に長期間にわたる影響を残すのですから、より深刻です。

国内の公共工事に影響は少ないでしょう。今は過当競争ですし、何より外資が進出してきて基盤を固めるまでに、今は円高でハードルも高いからです。ただ、政府調達のパソコンはDELLやMacにすべて置き換わる恐れがあります。つまり米国が圧力をかけ、日本国民にバレないよう政府機関の調達を米国製品に変える、といった方向は、政府調達による備品、消耗品等ですすむはずです。さらにODAなどの海外で展開する事業に、欧米の参入を許す形となり、それは正当な競争ではない形になるでしょう。
つまり、関税撤廃とは名ばかりで、このTPP交渉の背後には『政府圧力』という目に見えない形での、新たな利益誘導が見え隠れするのです。民間企業は損得で動きますし、政府が圧力をかければ問題視される恐れがあります。一方で水面下の外交交渉なら、ウィキリークスが暴露した外交公電のように裏で、いくらでもムリを通せます。牛肉の検疫など、当然のように米国基準を押し付けてきます。

投資にしても、米国の紙くずのような投資案件、信託などが日本で売られる恐れもあり、ルールが統一されるということは、情報をよく精査もせずに投資してしまう、日本の個人投資家に警鐘を鳴らさねばいけません。日本政府、金融機関とてよく分からないまま米国債、米銀の株を大量保有しているのですから、個人などその比ではありません。特に海外からのゴリ押しに規制が遅れるのが常である日本、TPP参加のハードルを、時間切れで押し通す気なら、野田政権は亡国内閣として歴史に刻まれることになるでしょう。その好悪をろくに検証もせず、参加一辺倒で報じているメディアにしろ、この国では『分析』、『検証』という機能が著しく低い、と云わざるを得ないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:06|PermalinkComments(4)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年10月08日

情報保全に関する検討委員会について

民主党の仙谷政調会長代行の訪中が見送りになりました。中国側からの通達で、事前報道があったことを理由としていますが、これは問題ある動きです。中国としては野田政権とも気脈を通じるため、政権内部に親中派を確保しておきたい。しかもそれは極秘裏に…と考えています。仙谷氏は中国を語るとき、敬語になるなど媚中派の筆頭として面が割れていますから、それ以外の人物が欲しい。
代わって山口外務副大臣が訪中し、野田首相の訪中についての日程などを調整する見込みです。中国としては山口氏ではやや物足りないでしょうが、外務官僚出身ということでは、納得しやすいかもしれません。一方で、仙谷氏と中国との関係には、別の見方もできます。野田政権では政調がさほど力を持ち得ない、つまり仙谷氏の力にも限界があり、かつ早めに勝手に動いて、野田氏の代表選への出馬を危うくしたことなど、野田政権では『仙谷氏は閑職』との評価になれば、この時期に仙谷氏には来て欲しくない。そうした力のバランスを考えている、との事情も想定できます。

野田政権で「政府における情報保全に関する検討委員会」の動きが出ています。これは先の尖閣衝突における映像流出をうけ、菅政権時代に立ち上がったものです。これは議論の過程で期待1、不安9と評価できます。期待は現在、メディアとの間でリークにより情報操作が行われ、それがミスリードを生んでいる場面が多々あり、これを抑止できる可能性があることです。小沢事件では『関係者』という存在が登場し、検察が考える事件のストーリー、にぎっている証拠とをメディアに垂れ流し、それをそのまま報じる、といったことが行われていました。その他でも、閣僚の行動や発言など、リークによってしか書けない記事が多く散見され、これらに罰則を課すことが可能となります。
しかし、野田政権ではこの期待は乏しいものです。議論が官僚に主導されると、先の個人情報保護法による、過度の隠蔽体質をひきずることになります。独法の役員報酬やメンバーなどを隠蔽したことさえあります。公と私の別なく、個人であるからと情報を保護する姿勢は、株主を相手にする私企業とも異なりますし、統制の利かない機関による隠蔽体質を助長する恐れがあります。

悪用の一例は、議事録の非公開。有識者を含めた検討委員会など、一部の会議では議事録を非公開とし、政府内の情報を流さない、といった行動をとる恐れがあります。事実、そうした動きも一部ではあるので、情報保全という名を借りれば秘密主義に陥る可能性は否めなくなります。問題は行政執行上の、秘密にすべき項目と、流して良い項目の線引きですが、それは非常に曖昧で、難しいものとなるでしょう。さらに、その曖昧なものに罰則を課すとなると、相当困難になるはずです。
漁船衝突映像の流出で、罰則がないことが問題視されましたが、公務員の情報流出には所管の大臣が厳正に対処すれば良い、ということでもあります。当時でも、人事権は大臣が有するのですから、北沢前防衛相が処すべき課題だったのですが、そこに媚中派の仙谷元官房長官などが絡んで、話がややこしくなりました。それを検討委員会をたちあげ、議論をするのは遠回りした上、結局改悪になりそうな気配です。官僚にとって都合の悪い法案は、現行政権ではまずムリでしょうね。

最近、某紙では『バカボン』を意識しているのか、「〜なノダ」とつける癖があります。もし野田氏が「バカボンのパパ」ならば、世の中をはちゃめちゃにしてくれそうですが、それとは正反対に何も変えてくれそうにはありません。閉塞感のある日本で、変化の期待を抱かせてくれない。それだけで支持率が低迷する理由ですが、野田氏がそれに気づけないようだと、まさに『バカボンのパパ』という評価が定着してしまうのかもしれませんね。

少し遠出をする予定なので、明日と明後日はお休みしたいと思います。

analyst_zaiya777 at 23:37|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年10月07日

経済の話。海外の情報について

週初から大きく下げた株式相場、水曜から切り返す展開が続きます。キッカケは仏・ベルギーにまたがる金融機関デクシアに、両国から支援と伝わったことです。デクシア株は0.845ユーロで取引され、破綻寸前でした。現状、破綻ではなく両国による均等支援であり、これが株主保護と受け止められています。取引は停止していますが、これが前例となれば、市場は金融破綻はないとみなして一段高できます。しかしリーマンショック後、米国でも対応が割れたように、これは国家的な判断であり、統一された法の執行ではありません。リーマンのように突然死が発生する可能性は捨てきれません。
英・ポルトガルなど欧州金融機関の格下げ理由の一部に、国家的支援が受けにくくなった、という理由が含まれました。逆に、独国は自国金融機関の支援を表明する一方、金融機関はこれを拒否する態度を示しています。しかし独国と同じことを、他の国が表明すれば、金融機関の負債を国の負債とカウントされ、格下げ懸念を生じてしまう。来週12日、EFSF拡充に対して最大の懸念であるスロバキアで、議会承認が行われますが、金融機関に求められる資金調達方法の順序は、市場、国、そしてEFSFです。市場は頼れない、国もあてにならない、EFSF拡充が通らないと防波堤を失う形となります。

注目の9月米雇用統計は、10.3万人増でした。市場予想6万人増より良い数字ですが、内需関連が強い一方、製造業が1.3万人減と、外需の低迷を示す形となっており、これは好悪別れる判断ができます。特に現在、米で起きているデモにみられる政府関連部門の人員削減は、3.4万人減と収まる気配がありません。失業率は9.1%で横ばい、米国経済は横ばいという見方で正しいと見ています。
例のデモですが、リベラル系が合流してオバマ大統領も一部、容認する見解を示しています。しかしこの動き、きな臭くもあります。高額所得者に対する課税を訴え、職を求める動きは、共和党内の茶会系を意識し、民主党内の党内勢力として台頭する可能性がある。この勢力は、今は富裕層への課税ですが、いずれ投資全体を悪とみなし、圧力をかけてくる可能性が高いものです。米国では、投資は是認されており、むしろ規制は少ないのですが、その流れが変わるのかもしれません。

そしてNY証券取引所には10日、アノニマスの攻撃が予告されています。証取は問題ないと自信を示しますが、標的型で大量アクセスがあった場合、証取にアクセスしているファンドのアルゴリズム取引に影響あるのでは? とやや懸念しています。大量の売り、買いが入ったと誤解し、急変動を引き起こすことで、不規則な動きを示すのではないか? 欧州のCO2排出権取引所が不正取引に利用されているように、システムに絶対はありません。予想を越える攻撃を受けた場合、やはり何らかの影響がでるとみて、警戒しておいた方が良いのでしょう。
そして日本でも、日銀の市場支援策が半分を使い、残りは慎重にならざるを得ません。ここ数日は規模を落としていますが、このペースなら年内もたずに打ち止め。一番重要な年末のドレッシングさえ利かない恐れが出ています。欧州で始まった規制、ECB、BOEによる流動性供給策の拡大など、なりふり構わぬ市場対策。金融機関の支援。国家が少しずつ疲弊しながら、何とか経済を保持している段階は、決して健全とは云えないものです。しかも急騰、急落のリズムがやたらと早くなってきた。これは近いうち、何らかの動きがでる予兆かもしれません。欧州金融機関の破綻など、不測の事態に備えるためにも、海外から伝わる報道には敏感になっておいた方が良いかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:15|PermalinkComments(6)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2011年10月06日

小沢氏の公判が始まる。

Appleのスティーブ・ジョブズ前CEOが逝去しました。革新者、革命者などの評もありますが、私は彼を提案者だと考えています。iPodにしろ、似たような製品、サービスは泡沫として幾つかありましたが、規格が統一されておらず、認知度も低かった。それをAppleという規格で統一、使い方や未来がこう変わる、と提案することで爆発的ヒットにつなげた。その手腕が信仰を生んできました。
デザイン力にすぐれた作品を生み出すこと、それもまた提案です。そして最良の提案者を失ったことはAppleにとって痛手でしょう。昨日は、iPhone4SもあってApple株価は上昇していますが、巨星墜つとの報は、ジョブズ氏の残影がある、一定期間後には不安を残すことになったのでしょうね。

小沢氏の公判が始まりました。3つの立場から見ています。まず小沢氏側は、情状酌量をとりにいく立場ではないので、全面対決は自然です。しかも検察批判を繰り広げ、記者会見でも検察リークをそのまま垂れ流す、既存メディアに「検察に聞いて」とチクリ刺した。小沢 VS 検察、メディアの構図を作り出しました。これは一面マイナスです。裁判所が検察と抜き差しならぬ関係にあることは、周知の事実です。しかも冒頭陳述は、有罪にするならしてみろ、といった傲岸な態度に見えます。
司法の立場からみれば挑戦を受けた形です。しかしこれは、秘書3人の公判で『推認』を使い、小沢裁判に道筋をつけた。即ち『推認』が通れば『疑わしきは罰する』という、裁判官の裁量一つで有罪にすることが可能です。つまりこの裁判は、司法の側がこの事件を国策裁判として処理するか? を問う意味しかなく、裁判官の良心を問われた形で、法と証拠の意味を確認する形となったのです。

そして、国会では証人喚問の動きが再び起こっています。しかしこれは困難です。偽証罪に問える証人喚問と、裁判所の証言と、その2つを抱えることは異例中の異例、政治家であっても限界に近いものです。司法の流れが異例の裁判ですが、これは疑惑により始まった事件ではなく、検察の強制捜査により始まった事件であるため、諸々の手続きがすべて異例であり、証人喚問がこれまでも事実の立証に寄与しなかった点をみても、あくまで政治のカードといった意味合いが強いのでしょう。
そしてこの事件を是とすれば、与党が選挙前に、野党の有力政治家を強制捜査により凋落させることを、容認することになります。今回の事件がただの政治資金規正法違反に対する、政治家の指示があったか、ないかという瑣末的なものだけに、実はそうした懸念が常に政治家につきまといます。出る杭は打たれる、この裁判は先に述べたように、国策捜査をどう封じるかの方が課題なのです。

さらに、国会においては先の秘書3人の裁判官に対する、弾劾裁判の動きが出てくる可能性があります。判決はかなり踏み込んでおり、検察が立証していないことまで認定した。かつ『推認』を連発したことで、正当性に疑義を生じている。実際、弾劾裁判は1例しかなく、有名無実化していますが、あからさまな司法への圧力と受け止められても、それが起こる公算は出てきます。
つまりこの事件は白黒がつくものではなく、どこまで行ってもグレーでしかない、物証もない水掛け論に対する裁判です。これまでも、裁判により国政、財界に不都合と思われる人物を心証のみで有罪としてきた裁判所。小沢という未だに勢力を保ち続ける政治家と争う、という意味をもっています。これまでのように、訴追してしまえば勢威を殺がれ、力を失ってきた流れと様相を異にしているということは、裁判所による行動にも監視に似た注目が集まっている、とさえ云えるのです。

裁判官訴追委員会の委員長は民主党・小沢鋭氏で、委員にも民主党が多い。小沢グループではない人物もいるので、すんなり通るとは思えませんが、裁判官が何らかの指示を受けて3人の秘書の判断に、何らかの手心を加えたと『推認』すれば、46年ぶりの弾劾裁判が開かれることになります。本当の意味での司法改革とは、三権分立の中では聖域となってきた司法の場に、新しい風を吹き込むこと。それはおかしな判決を下す裁判官を、罷免する力を有する、ということでもあります。小沢裁判とは、あらゆる形で異例なのであり、展開を読み間違えると司法も、メディアも一気に苦しくなる。それを今後、確認していく作業になるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:00|PermalinkComments(12)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 司法

2011年10月05日

来年度の概算要求は98兆円超

iPhone4Sが発表されました。特筆なのはSiriの音声認識による応答システム。ただ対応は英語、仏語、独語のみです。これは米企業が開発したから、というより日本語など微妙なニュアンスを含む曖昧語、ポルトガル語やスペイン語など南米にも広く普及している言語は、変質も始まっており、訛りのようなそうした変化に対応するのが、難しかったからでは? と推測しています。それに、同じ発音で意味が異なる字の多い中国語にも、対応は難しいと云えるのでしょう。
画面サイズは3.5、日本ではauでも発売されますが、スペックでAndroid端末に見劣りする部分もありますから、Apple信仰を取り去ればさほど魅力ある端末ではないのでしょう。昨晩のApple株は乱高下しましたが、特に材料視する点はないので、期待の剥落といった形で今後下落を続けそうです。

財務省が、来年度の概算要求を98兆4686億円と発表しました。震災からの復興費が約3兆5千億円、経済成長や地域活性化をめざす日本再生重点化措置も約2兆円と膨らみ、昨年度の要求の1.8倍になっています。しかし世界は同時不況、すなわち恐慌に突入する一歩前にきており、財政にそれほど余裕はありません。むしろこの段階で尚、ムダ削減が進まない硬直化した予算要求に不安を覚えます。
国の出先機関の統廃合により、合同庁舎の新設を止めていた計画が、野田財務相時代に推進され、今年度の要求に入っている旨、明らかになりました。底流には、政権交代のときの公約を少しでも守ろうとした鳩山政権を失脚させ、菅政権になってから官がやりたい放題になった。しかし震災という事態にも尚、我欲を通そうとしたため、その愚劣さがより際立ったとみるべきです。

公務員の給与も、民主党案の7.8%引き下げに対し、人事院は強気の0.23%下げを求めました。以前なら人事院も世論に押され、政治に妥協する態度を示してきましたが、自治労を抱える民主党には要求を通す腹のようです。しかも公務員に労働基本権の付与など、今行えばギリシャと同様、今後行財政改革を進める中、公務員の給与引き下げ、リストラなどでストが頻発する恐れが出てきます。野田政権ではたかだか7.8%で労働基本権の付与、などという弱気の態度ですが、これが限界なのでしょう。
増税はゴリ押ししても、公務員制度改革は条件を取引材料に使わないと、何も進められない。本来、公務員は政治活動が禁じられていますから、自治労が連合に加わること自体、問題があります。欧米で今、頻発するデモの一部には公務員の解雇をすすめたことにより、失業率が上昇した面が否めません。辞めさせると今は問題を大きくしますので、やるなら大胆な給与削減しかないのです。

安住財務相がNHK記者時代に「生活が苦しかった。多少の便宜供与は必要」と述べ、社宅を容認する発言をしました。平均給与が1千万円を越すNHKで生活が苦しいような人間に、ムダ削減など出来るはずもありません。さらに云えば、公務員給与が下がれば、NHKにしろ国から補助を得て運営しているような媒体にも、それが波及する可能性があります。国民が高待遇の公務員に嫉妬し、声を上げるように公務員がそうした準公務員に嫉妬し、働きかけをすることなどが想定できるためです。
実はメディアも高額所得層の部類に入っています。米国で「我々は99%!」と叫ぶ声は、日本でも広がる恐れがあります。公務員、準公務員、メディア関連の人間も含め、今この国を動かしていると思われる層は、総じて高額所得者であり、国民の怨嗟をうけやすい。結果的にそれらは、自ら統制の利かない、甘い体質をもつとみられているのです。国破れて山河あり…という事態になって初めて気づくことがないよう、予算の段階できちんと統制をかけなければいかませんが、今の野田政権にその期待がかけられないだけ、国民の不幸は続いてしまうのでしょうね。

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2011年10月04日

民主・自民の円高対策?

民主党・前原政調会長が、円高を生かした策として、外為特会から国際協力銀行(JBIC)への融資枠を8兆円から、10兆円に増やす提案をしています。日本に買われてしまう、という心理が円高の抑止効果を生む、としていますが、今の市場は民間投資の規模が大きく、実需として為替を扱っている企業はそれほどメインではありません。中国に買われるぐらいなら、日本の方が利点も大きいとして、むしろ好感する流れにもなるでしょう。円高で資源など、抑えることは吝かでありませんが、それは産業界の意図であり、円高抑止効果として語られると違和感があります。
また、自民党が円高対策の緊急提言として、追加的な為替介入、金融緩和、物価目標の設定、外為特会の剰余金の活用などを求めています。これをみると、日本は与野党ともに、円高に効果的な策をもっていない、そう感じます。ユーロはPIIGSの問題をうけ、101円台に突入しています。企業の想定為替レートでユーロは114円、ヘッジが利きにくく、この水準はかなりの危険水域とされますが、日本国内でユーロ安を騒ぐ人はいません。あくまで為替介入はドルベースです。

これを正当化する理由の一つが、貿易統計です。2010年で対米輸出は10.4兆円、輸入は5.9兆円、約4.5兆円の貿易黒字でした。ユーロ圏は輸出7.6兆円、輸入5.8兆円で1.8兆円の貿易黒字、中国は輸出13.1兆円、輸入13.4兆円で0.3兆円の貿易赤字、このことからみても、米ドルが1ドル動くと貿易黒字がその分減殺される、という連想が働きます。しかし例えば韓国は輸出5.5兆円、輸入2.5兆円で約3兆円の貿易黒字、台湾も輸出4.6兆円、輸入2兆円で2.6兆円の貿易黒字。実はこうしたアジア圏の貿易黒字もかなりの額を占めており、新興国の通貨下落とて大きな問題を生じやすいと云えます。つまり、米ドルに限って為替介入する必要性は皆無である一方、通貨の強弱という意味で、現在の弱い通貨がそのまま経済の不安を示している、ということでは為替介入できない通貨ともなっています。
日銀が発表した9月マネタリーベースは、前年同月比16.7%とかなり高い伸びを示しました。ただこれは、日銀が通貨発行を増やしたのではなく、当座預金の積み上がりであり、手元資金をより厚くしている傾向が窺えるのみ、です。邦銀は預金超過の状態であり、手元資金は潤沢である一方、欧州不安から始まる連鎖破綻の懸念で、企業への貸出しも伸びない。マネタリーベースの伸びは、通常インフレと連動することも多いのですが、これは逆の傾向を強くする方向性を示すのでしょう。

ユーロ圏はインフレも上昇しており、9月の消費者物価は3%を超えてきました。通貨安もこれには寄与しており、金融政策の足かせとなり始めました。ユーロ安を防ぐ手立てはなく、日本の貿易黒字は政策当局者の無策により、変化の兆しすら見られない。このままでは1ユーロで90円台に突入するのは、意外と早いかもしれません。後は心理的節目である100円をいつ割るか? です。
一方で、ドルは欧州不安によりリスクオフ、米国から流出していた資金が還流していることもあり、強い通貨となっています。今は円高ではなく、ドル、円が強い一方、他通貨が弱すぎるといった印象で市場が動いています。しかしギリシャ破綻になどなれば、更なるユーロ安も不可避であり、結果的にそこを睨んで市場も動いているのでしょう。今は売りが溜まり過ぎている面もあり、10月半ばのEFSF拡充案が欧州で通過すれば、一旦は買い戻し基調にはなるかもしれません。ただ、今は変動要因が売り圧力に強く影響される、という面でみれば、まだ円高基調はちょっとした思いつき、のような政策では何も変えられない、ということもまた確かなことなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2011年10月03日

日銀短観と世論調査

三つの調査について。まず9月日銀短観が発表されました。業況判断指数(DI)で大企業製造業が+2(11pt改善)、非製造業は+1(6pt改善)、中小企業製造業が-11(10pt改善)、非製造業が-19(7pt改善)と、軒並み大幅な改善を示しました。日銀短観は9月前半までに調査をまとめることが多く、震災からの生産ラインの立直り、QE3期待などがあり、マインドは上向きでした。先行きDIも改善を示していますが、世界経済の減速は充分に織り込んでおらず、為替も81円15銭と現状よりやや円安など、不安要因が多くなっています。残念ながら、この結果が市場に与える影響は小さいでしょう。
同じ日銀の生活意識に関するアンケート調査ですが、個人の景況感判断指数(DI)は-62.4(2.9pt悪化)でした。こちらは物価が1年前に比べて上がった、と感じる人が51.9%になるなど、肌実感としての悪化を感じています。ボーナスは3月の妥結が寄与し、小幅に昨年より上向きですが、増税観測など、これから厳しくなる生活実態が、より反映されたのかもしれません。

最後に、内閣支持率。各社まちまちの数字ですが、概ね一致するのが支持率下落です。さらに一部では、復興増税に反対が賛成を上回ってきました。これは野田政権の批判に、メディアが増税反対の論調をとったことで、そこに批判が集中した面もあります。朝霞の公務員宿舎も、最低5年の凍結が示されましたが、建設を途中で止めれば違約金が発生しますし、土地を眠らせればただ維持、管理費がかかります。政府はこれまで他の宿舎を売却すれば、売却額が建設費を上回る、と説明してきたのですから、その通りにすれば良かったのに、迎合型政治である野田氏は、財務相時代の自分の行動に対する批判にも迎合し、凍結期間を延長させただけで、解決能力は示しませんでした。
一方、産経・フジテレビの調査で高い数字だった『定期的に記者会見すべき』ですが、この聞き方では当然イエスです。『定期的』は一ヶ月でも、半年でも『定期的』です。また『小沢元代表は議員辞職を』は、メディアは説明責任を果たしていない、との論調をとりますが、同日ネットメディアでは語っており、これはネットメディアをメディアと認めない既存勢力による批判であり、メディア改革への批判が、そのまま小沢批判として展開されていることに、影響されています。

欧州でデモが頻発しますが、米国でも金融街の暴利、高額所得に反対するウォール街へのデモで、700人が違反として処分される見込みです。一方、米国では富裕層への増税に反対する、茶会のような動きも拡大しており、議論が二分、三分される傾向にあります。これはリーダーシップを求めて、政治に期待する動きとは異なり、正論と信じることを各々が始め、議論が別れる小政党時代が来た、とも意識されるものです。国家が衰退し、経済が混乱すると必ず起きる帝政ロシアのナロードニキ運動や、仏国のアナルコ・サンディカリスム、世界的にはマルクス共産主義なども、これに当たります。
この動きが一巡すると、国は新たな形を決めてすすむことになりますが、今は過渡期にあるのでしょう。そして目立つのがメディアの誘導、その影響を強く受けていることです。それはメディアの思惑が、そのまま世論として反映されやすい、という情報の専横化とさえ呼べます。

ただし、ブログ、ツイッター、フェースブックなどの米国発の情報共有化、これは国民を見える化し、統制力を強めようとする一つの動きでもあったはずですが、これがアラブの春を生み、デモを頻発させやすくしている、という部分も否めません。より繋がりやすい世界が、情報を混沌にさせますが、他方で一つの流れを生む。世論調査が抱える問題点とは、数字ではなく、そのもつ意味を正しく意識することであり、それが数の力となったとき、次の潮流となるのでしょう。いみじくも小沢氏が「どの政党も多数はとれない」としましたが、底を意識し、何かを為さねば…と国民が思い定めない限り、世論調査の結果とはただサイレントマジョリティによる気持ちのぶれ、としてしか受け止められなくなってしまいます、小政党時代に突入した今は、当面の政治の解決能力は期待できないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:38|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2011年10月01日

欧米不安と世界経済

昨晩の米市場は大幅反落しました。7-9月期で1500$下落は10%を越える、大幅下落ですからこれは資産価値に影響してきます。米国は05年辺りから、収益の多くを株主還元として自社株買いに当ててきました。それを償却せずに保有している場合、多くが損失として計上されることになります。
そしてギリシャ国債のエクスポージャーに関して、売却可能有価証券と呼ばれる評価手法で計上している可能性があり、実現損失のうち49%がこの評価手法で計上されている、ということ。即ち、欧州銀の損失額の不透明感はこの辺りにありそうです。独国がギリシャ支援に関して、民間関与を執拗に求めるのは、欧州銀は償還を迎えると資金が還元される形になり、借換えに応じる必要はありません。そしてその借換え分は、EFSFにより付け替えられます。現状、EFSF拡充に関して欧州各国は議会での合意をとりつけていますが、反対票の多い国もあります。12月に償還を迎えるギリシャ債は100億ユーロ以上。10月のEFSF拡充案の欧州各国の合意、12月の償還期限、ハードルは続きます。

米国もさらに深刻です。米市場で巷間語られるのが、中国市場の最安値を嫌気…、中国PMIの悪化を嫌気…、とするものです。米景気減速を市場は織りこみにいく中で、中国の景気を気にしている。そんな中、米議会では対中為替法案の可決に目処がつきそうな気配です。人民元安是正をめざすための法案ですが、大統領が署名するか? 成立までには紆余曲折ありそうですが、米国市場が気にする中国景気に、政治の側から冷水を浴びせることになりかねない。中国が対米輸出で稼げず、貿易赤字に転じればそれも一つの、契機として意識されることになるのでしょう。
そんな中国は、国家開発銀行がポルトガル大手銀に3億ドルの融資で、合意しました。中国は欧州銀というより、それを透かしてブラジルに手を伸ばす計画のようですが、いくら成長が期待できると云っても、中国とブラジルでは成長原資が似ている面もあります。ブラジルは外貨流入、という特殊要因もありましたが、今やその反対の流れが起きています。しかし貿易黒字という側面は似通っており、ブラジル産原油の獲得が目的かもしれませんが、ウィンウィンでの成長は難しいと云えます。

韓国を初め、新興国もブラジルと同様に投資資金引き上げが、経済の波乱要因となってきた。欧米の株安で資産価値を下げたことで、余力をなくして投資資金を引き上げにかかっている。世界は負の連鎖が起きている、といっても過言ではありません。個人的には、すでに恐慌は確実視していますし、後はそのタイミングと深さ、期間の問題と考えています。
日本の株式市場はTOPIX先物が大商い中です。27日に日系2社の7000枚、29日に同じ系1社からの6000枚の買いの傾きがあり、それが月末ドレッシングか、日銀のETF買いに支えられたものか、わかりませんがとにかくこれが市場を下支えしました。30日は米系の2000枚を越える買い、これは米月末ドレッシングで、週初の上昇分を先取ったとみられ、月曜日はやや不安定な値動きを引き起こしそうです。日本とて、日経平均は7-9月で1100円の下落です。下落トレンドには確実に入っており、好転の兆しは当面ないのでしょう。欧州不安のハードルは徐々に高くなっており、もうこの問題の解決なくしては、上昇相場への回帰はない、と見ておいた方が間違いが少ないのでしょうね。

明日は1日お休みし、3日から再開したいと思います。

analyst_zaiya777 at 23:44|PermalinkComments(8)TrackBack(3)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 |