2011年11月

2011年11月30日

野田首相は裸の王様

昨日の田中前沖縄防衛局長の更迭ですが、問題のあることが明らかとなっています。まず『犯す』発言の他に、当時の米大洋州司令長官の「レンタカーを借りる金で女が買える」を引用した、ともされており、歴史的経緯を踏まえた確信犯だということです。完オフ、と云っても『関係者』の発言として、匿名を条件に報道されることは予め承知していたはずです。軽口というにも当たりません。田中氏自身は人柄で択ばれた、とされますが、これでは自衛隊の人事考課さえ疑われるでしょう。更迭は当然ですが、問題はこれを受けても尚、環境評価書を変えない政府の姿勢なのでしょう。

党首討論が行われました。野田首相は、自民にはTPP、消費税増税を一緒にできるでしょ? という水平目線、公明には連立も見据えた低姿勢、というスタンスが垣間見えました。中身は薄いので論ずるに値しませんが、こうした政権の姿勢、野田政権の態度だけは明らかとなったのでしょう。
亀井氏の新党構想、なるものが話題になりました。ただ軸が分からず、しかも古い縁故を頼るようなやり方では、本気度が疑われます。しかし小沢氏が橋下氏に近い発言をすると、早速のように前原氏が大阪都構想に否定的な見解を示しました。前原グループにとって、反小沢の態度でいることがグループ内の引き締めであり、共有意識です。橋下氏の流れにのることが、大阪などの関西圏で票集めにつながることは認知しても、小沢氏と取り合っても負ける、ならば反対するということです。

少し政権のことをこき下ろすために、物語にしてみます。タイトルは『NO Dash Naked!』。
千葉ポーク工場(略してTPP)の工場長、ヨッシーは社員の意見を聞く、と云いながら取り巻きのカンリョーの云うことばかり聞き、取引先(国民)との約束(マニフェスト)さえ守ろうとしません。ある日、奪われたP(プライド、国益)姫を助けに、冒険に出ようとします。カンリョーたちが着せてくれたのは、愚者には見えないゾーゼイという鎧、ザイセーサイ剣という武器をもっています。
喜び勇んで冒険にでると、ユー権者から「どうして工場長は裸なの?」と訊ねられ、初めて自分が何も身にまとっていないことに気づき、自分の醜い姿を晒していることが恥ずかしく、慌てて自分の工場に戻ってしまった…というお話です。最後にTPPに戻るのは、寄って縋るのは88の頭をもつ巨大な竜、ということです。そこに普天間移設が踏み絵となり、計画が動かせなくなっています。

ギリシャでオリンピックを行なっていた頃、裸だったのは有名な話です。しかしこれは、たまたま落ちた腰布を拾わず、競技を続けたオルシッポスからとされ、衣服が発達していない時代、運動に邪魔だったことからとされます。しかし今、情報が発達してその政治家がどんな衣服を来ているか、どんな色か、模様かということまで明らかにされる時代ですから、裸はとても奇妙に見えます。
今回、オフレコ懇の内容が漏れ伝わりましたが、酒をのんで本心が表れた結果、としてみるとこれも裸者の愚だったのでしょう。人物がさらけ出されることを恐れ、野田政権では情報統制をしいているようですが、鉢呂前経産相の時も、オフレコの話が問題視されました。あの時は、明らかに歪んだ評価が目立ちましたが、今回は歪んだ価値観が明らかにされてしまった、という意味で甚大です。

一つ云えることは、野田氏は素で勝負していないということ。だから今回の件でも、呼び掛けにも応じず、取り巻きとよく話し合ってからしか自分の意見は云わない。それでは愚者でしかありません。裸一貫、という言葉もありますが、野田氏が身にまとっていると信じて疑わない、今の鎧が無価値であると気づけないようだと、野田政権の終わりは意外と早く迎えるのでしょうね。

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2011年11月29日

イタリアの「国債の日」

普天間飛行場の移設に関して、環境評価書を提出する時期を明確にしない件に関して、田中沖縄防衛局長が「犯す前に犯すというか?」旨の発言をしたとされ、更迭されました。当人は否定しますが、オフレコの懇親会の場で、酒を飲みながらの記者との会談なので、記憶はうろ覚えのはずです。
問題は前後の文脈をみるまでもなく、犯す側が国、犯される側が沖縄という構図。しかも犯罪的行為だと自ら認めている点です。つまり無理やり、相手を屈服させようという心根が見えてしまった。合意なき推進を印象づけたことで、更迭はやむ無しです。オフレコ懇を明かしたメディアも、重大な発言だからと述べていますが、そもそも酒の場で記者と語らうのが、常態化していることが問題です。こうして防衛相関係者によると…という記事の一部として引用される発言を聞き出すとしても、こうした日本的な馴れ合いを記者としているから、情報操作や、漏えいという事態が防げません。しかし10人も記者がいて、一部はオフレコを認めて隠蔽しようとしたのであり、問題は根深いですね。

伊紙で『IMFがイタリアに6000億ユーロを拠出』という記事が流れました。日本でも追随した記事が見られましたが、IMFは否定しています。そもそもIMFの融資枠は現在4000億ドルなので、円で云えば31兆円しかない銀行が、62兆円を融資するという大盤振る舞いになる。これはイタリアで、国債の日とされる「一般人が伊国債を買おう!」と題した一大キャンペーンが展開される前の出来事であり、そうした動きを促進するための、壮大なウソだった可能性が高いものとなっています。
このキャンペーンは投資家からの自発的な動きですが、それが奏功したのか、金利は一時1%近く低下しました。ただ、今後ふたたび国債の価格下落が続くと、損失を国民がかぶるという諸刃の剣です。しかも国債を買ったからといって、国の歳入が改善されるわけではありません。一部利払いの負担を下げても効果は限定的です。個人にとっても、長期で金利が低下すればローン金利も下がるのでメリットもありますが、こうした一連の動きは、イタリアの苦境を物語っただけなのでしょう。
欧州財務相会談で、対策が出されるとの期待もありますが、巨額の債務に関する対策はありません。一方で、ECBが担保基準を引き下げ、欧州銀行の資金繰りを緩和するとの期待が根強くあります。ただこれも、年内に資金をショートする金融機関が出てくる、という懸念を一旦は和らげても、それだけの効果しかありません。ECBの保有資産が劣化すると、ユーロの暴落も現実味を帯びてきます。

日本国債が売られ、金利が上昇しています。これを増税論者は独国債の札割れが、日本にも波及。日本国債も危ない、財政再建を…と訴えます。ただ売買方法の変化などのテクニカルな部分もあり、今日などは株先買/債先売が出たものであり、これを債券市場の動揺とする見方は早計でしょう。
株式市場は月末ドレッシングの先どりもあり、意外高を演じていますが、これなどは完全にテクニカルな動きです。当面、8千円を割るには材料も必要ですが、だからといって9千円台に回復できる力もありません。売りすぎると買い戻す、という流れの中で買い戻す期間が早くなっています。これはまだ長期の下落トレンドを脱しきれていないサインであり、楽観は禁物なのでしょう。

米国から大きなニュースが伝わります。アメリカン航空が連邦破産法11条を申請しました。航空会社には冬の時代ですが、これは世界の翼に影響します。約二ヶ月前、一旦破綻懸念が伝わりましたが、資金繰りに当時から苦しんでいたことは確かです。仮に再生させるとしても、経営の厳しさに変わりないので、米政府はまた苦しい問題を抱えました。AMRがどう決断するかはわかりませんが、こうした突然のクラッシュは今後、増える恐れがあり、OECDが欧州の景気後退入りに言及したように、全体に資金繰りの問題で、世界は一喜多憂の時代を迎えてしまうのでしょうね、

analyst_zaiya777 at 23:05|PermalinkComments(2)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2011年11月28日

大阪W選挙について

大阪W選挙は、維新の会の勝利となりました。大阪府知事選は53%、大阪市長選は61%、高い投票率が浮動票をよびこんだことを示します。民主、自民、共産、態度を鮮明にしなかった公明など、既存政党がこれだけ相乗りしても負けた。これを「大阪だけは特別」と切って捨てるようだと、次の選挙で既存政党は大敗するのでしょう。しかし党執行部は責任逃れで、こうした説明を繰り返しており、これも劣化という見方ができます。劣化と清新と、この二つに色分けされた形です。
この選挙で云えることは『肯定の力』です。郵政民営化、政権交代、ここ数年で大勝を導いた選挙はワンフレーズの、しかも改革を感じさせるものでした。大阪都構想を是か非か問うとするなら、是の側が肯定、つまり正の作用を促します。つまりそれが、プラス効果を何倍にも感じさせ、夢や希望を映せることになる。否定は現状維持、これは現状に満足できない人間にとって、余計に負担と感じられます。現状に満足する側は、変化を否定しなければならず、これはマイナスの印象です。

その危機意識が、討論番組の欠席という形になった。仮に、平松氏が橋下氏とは別の変化を示していたなら、自説を肯定することで相手との対立軸を打ち出せますが、そんな戦略はなかった。あくまで橋下氏を否定することしかしない。否定は、人のイメージすら悪くしますし、それが平松氏を追い込んだのです。これが『肯定の力』であり、否定する人間は必ずNOTか、疑問符をつけて語らねばならず、ディベートが非常に弱いのです。しかも人の長所は必ず短所に言い換えられるように、個人攻撃を始めたメディアがいたことで、それを良いよう捉えられ易くなった。この辺も橋下氏に追い風がふいた原因でしょう。総じて、反維新の会で烏合となった衆は間違え続けたということです。
府知事選における自民のドタバタぶりも、既存政党離れにつながったのでしょう。誰が立っても改革を打ち出す維新の会に、対案もない既存政党では勝負になりません。今後は既存政党の幹事長、選対など党執行部の脆弱化がすすみ、地方政党との距離感が試されます。次の総選挙では、こうした対立軸も出てくるのでしょう。そして大阪都構想は、政局の中で実現を目指すことになります。

フジテレビの偏向報道が話題です。私も帰宅後、情報が知りたくて見ましたが、酷いものでした。番組の中で、例えば北海道の国道、道道、市道と三つの行政に別れた道を除雪するのに、三つあるからきめ細かいサービスができる、合理化はマイナスと決めつけたのには唖然とさせられます。管理が一つでもやり方次第でサービスは維持できますし、むしろ向上する可能性がある。それより合理化して、他に回せる資金が生み出せれば、合理化は有用と判断できます。その他でも首をかしげる論説は何度もみられ、明らかに総務省関連の、何らかの意向に沿った編集がされていました。
韓国偏重もありますが、フジは当初、デジタル化の影響で、首都圏の新聞のテレビ欄では端に追いやられた。チャンネルを一つ一つ進めるワンセグなども8は端であり、途中でチャンネルを止め、番組を見てくれる可能性が低くなった。注目を集める必要がある。そこで否定派も視聴者、という戦略をとっていると考えていました。つまりテレビは視聴率でしか評価されず、否定派がアラを探す行為とて視聴率稼ぎ、と捉えることが可能です。しかしこれはテレビ離れを促し、長期でみるとフジテレビは沈んでいくのでしょう。テレビもコンテンツ産業であり、中身が伴わなければ、その内飽きられるだけです。劣化と清新、こうして分ければフジは明らかに劣化と云えるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:11|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | メディア

2011年11月26日

雑感。古川飛行士の帰還

阪大で、漢方に用いられる『カンゾウ』に含まれる成分を、酵母により作り出すことに成功したと発表されました。しかも医薬成分であるグリチルレチン酸を、ピンポイントで作れることから、工業的に大量生産できるとかなり有用なものとなります。油をつくる微生物、などのように酵母、菌などの活動も含めて、この分野が新たな食料問題やエネルギー問題を解決するのかもしれません。
今、熱帯雨林の乱開発を防ぎ、先進国から発展途上国への支援を促すために、見つけた微生物を利用した製品については、その権利を発展途上国にも認めるよう国際的な動きもあります。日本で発見された菌や微生物が、仮に医薬に利用できる成分が含まれていると、それだけで特許料が入るという仕組みです。こうしたものを利用することが、国益にも適うというものなのでしょうね。

国際宇宙ステーションから、古川氏が帰還しました。毎日0.5〜1mSVの被曝をしていた、と発表されていますが、これと原発作業とを比べてはいけません。古川氏は線量計で計測しており、恐らく体の前面、胸の辺りにつけていたと思われます。宇宙空間は太陽からの高い放射線の環境下にありますが、若干地球などの磁気で歪んでも、ほぼ太陽から直線的に飛んでくると思って間違いありません。つまり背中を太陽に向けていると、被曝は避けられるので、身体全体の被爆は恐らく倍になります。宇宙旅行が当たり前になると、もしかしたら今日の太陽活動予報で、活発が予想されるのでフライトは中止、などということが起こりえるという意味で、被曝の監視が必要かもしれません。
宇宙空間で人類が生活するには、これだけの被曝を許容するか、放射線を防護するための遮へいが必要です。国際宇宙ステーションを磁気で覆えば、今度は高い磁気による人体への影響、を考慮する必要が出てきますが、その実験は、実はリニアモーターカーでできる算段です。リニアを浮かすために高い磁力をかけており、乗っている間は磁気を浴び続けることになるのです。高い磁場を浴び続けるとどうなるか? それは運転士で出来てしまうということになるのでしょう。

福島原発の地域では、除染が難しいという話が聞こえてきますが、国は除染しても効果が低いことを知っていた可能性があります。14年前に爆発、火災事故を起こしたアスファルト固化処理施設の、除染のデータを知らないはずがないからです。つまり今、除染をすれば元の生活に戻れる、国は全力を尽くす、と云うことさえ、ウソである可能性が高いのです。雨として落ちてきてすぐ、洗い落とせば
違いは出るかもしれませんが、今となっては除染の効果は低いとさえ云えるのでしょう。
しかし毎日10μSv浴びるか、0.5〜1mSv浴びるかを比べ、問題ないと述べるのもまた議論が違うのでしょう。病気になり易さは一人一人異なるのですから、それは遺伝子の欠損等、個人的な要件が大きく関わってきます。古川氏の健康に問題が出るかは今後、明らかになっていくでしょうし、宇宙飛行士に択ばれた段階である程度、遺伝子の状態も調査されているはずです。今後、宇宙に一般人が行くようになるときまでには、きっと新たな治験として福島原発のデータも含まれてしまうのでしょうね。

明日はお休みしたいと思います。

analyst_zaiya777 at 23:24|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 社会 | 一般

2011年11月25日

経済の話。年末にむけた市場

最近、安住財務相になって良かったと思うことが一つあります。それは口が軽くて、思惑が漏れやすいということです。例えば欧州債務不安において、日本がEFSF債の購入など「米国の意向を確認した上で…」ないと決められない、と会見で述べています。米国も財政が苦しい中、体のいい財布として日本に期待する部分と、日本が単独で欧州でのプレゼンスを高めることを嫌っています。日本が主体的に、欧州に関与することは認められず、米国のお伺いをたてる必要がある。つまり今後、日本が欧州に関して何らかの支援を打ち出す場合、それは米国に了承をうけたということになります。

そんな米国では感謝祭(サンクス・ギビング・デイ)明けで、ブラックフライデーとなります。黒字の金曜日、として小売が一斉に値引きを行い、年間で2割近くをこの短い期間に売り上げる日です。米国では小売などの消費指標が堅調ですが、これはリーマンショックから3年、長い景気低迷を経験したことのない米国人が、節約疲れを引き起こしているため、消費を増やしていると推測されます。
11月は若干所得が伸びましたが、それまで下落を続けました。そろそろ景気が回復する、という期待の高まりが、貯蓄率の低下を伴って消費を増やす傾向となって現れており、ここ数日の小売の動向によっては、その動きを確認できることになるのでしょう。しかし来年からは増税が意識される中、米国人の楽観ムードに水を刺されるようだと、景気自体は大してよくないので、指標が一気に悪化することも考えられ、欧州債務不安と合わせ、来週の雇用統計が注目されるのでしょう。

日本の市場では、日経平均が年初来安値を更新です。ただ現在は売られすぎの水準で、月末要因もあり、買いの動きが出やすいタイミングです。それと、欧州系がポジションを下げる間、米系が買いを蓄えたので、安住財務相のような態度をとるなら、ここからメジャーSQである9日までの間に日銀や年金系が買いを入れ、市場を下支えする可能性も高くなっています。つまり苦しい米系が、損を出さずに利益をだすためには、日本に圧力をかけてドレッシングするタイミングと重なります。
これはオリンパスに対する動向でもわかります。オリンパス株を保有していた米系が、今回の問題をうけて全株売却した後、今では8%を越える保有をしている。つまりこの米系が態度を変えたタイミングと、読売が上場維持の推測記事を出したタイミングが、微妙に符合しています。米系に利益をだすよう、仕組まれた公算が高い。そしてこうなれば、オリンパスは上場が維持され、米系は多大な利益をだすことになるのでしょう。そして株主訴訟が米国で起きました。米市場に上場している株で損を出したとのことですが、米国は『オリンパス』で骨の髄までしゃぶり尽くす気かもしれません。

上記を考慮すると、日本市場は9日まで一旦は上昇波動に向かい、中盤だれて、年末にかけてはドレッシングが入る、という想定が可能です。しかし今日、日本の国債が売られたように、欧州の問題が波及してくると想定外の上下動も出やすくなります。特に、独国債が札割れ、伊国債も不調で、欧州の債券市場が崩壊しかかっています。債券が崩落すると、金融機関へと危機が拡大してきます。
株価の下落は今後、日本でも金融機関の損失や、年金の損失として顕在化するでしょう。年末にむけて、こうした思惑で買う場合、それは長期でみれば損失に変わる可能性が高いものです。日銀がTOPIXのETF買いで、数百億円の損が出ているという話もありますが、市場の下支えに現実のお金をつかうことは、為替介入と同じで実効性は低いとも云えます。そしてそれを、米系などにうまく利用されてしまう。今後もこうした傾向が続き、日本は従属的に米国に貢いでいかざるを得ないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:25|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2011年11月24日

放射性物質に関する話をいくつか

日米地位協定における米軍属の公務上の犯罪に対する扱いについて、米国の同意が得られれば一次裁判権を日本が有するよう、日米が合意しました。しかし、まだこの程度の進捗ということの方が驚きです。まず米側の同意が必要ですし、被害も死亡や重傷に関わるものとされるので、軽傷では適用されません。しかもこれは米軍基地に従事する人間を対象としており、兵士ではありません。兵士はもっと守られており、悪い観測をすれば、例えば兵士が上からの命令で、日本で誰かを暗殺をしても日本では処分できない、となります。捜査当局が、犯人を割り出しても逮捕できないのです。
日米地位協定は、有事と平時にわけ、平時にはすべて日本の法律を適用する、というぐらいの強い態度で十分です。そうでなければ、日本国民を守る、という最低のことができない国家との烙印を押されるだけとなります。米国も普天間問題があり、こじらせてはいけないと妥協はするでしょうが、この程度で円満解決するわけではない、ということを外交の場で伝える必要があるのでしょう。

厚労省が放射性セシウムの暫定規制値を年間1mSvとし、乳児用食品、一般食品、牛乳、飲料水の4区分とする提案をし、来年4月からの適用を目指すと発表しました。遅きに失していることは明白ですが、大体宇宙からの放射線と、地表付近にあるラドン等の影響で1mSvは浴びてしまうので、本来はなるべく低くする必要があります。しかも、モデルケース以外では規制値を超えてしまうケースもあり、また食品摂取は各自異なるので、あくまで目安でしかないという問題があります。
しかも阿武隈川で、日量525億Bqの放射性セシウムが海に流れていた、とする試算も公表されています。今後、海洋の生態系と、海洋でとれた魚介類への影響が懸念され、長期間に亘って漁師への支援など、幅広くやらない限り風評被害と、また実際に高い線量を有した魚などの処理に困ることになるでしょう。そんな中、横浜で検出されたストロンチウムが、過去に実施された核実験の際にふったもの、と発表されました。半減期が29年と長いストロンチウム90ばかりで、半減期50日のストロンチウム89が検出されなかった、としますが、ナゼ分裂後の生成物の確認しないのか? つまり放射性物質は、必ず崩壊後に生成物が残るので、検出されないではなく、生成物がなかったとしない限り、実際に半減期の短い核種がそこになかったのか、は判別できないはずなのです。

福島でお米からセシウムが検出されましたが、これなど安全宣言を出した後なので、余計にダメージになりました。本来、抜き取りでは意味がなく、例えば専門家も交えて線量の高そうな場所の米を早めに刈り、全農家に亘って検査することが必要でした。精米した後では、おおよその場所は確認できても、結局サンプリングに抜けが生じてしまいます。専門家が間違える可能性もありますが、このエリアでここをサンプリングする、と決めておけば、ほぼ全量を安全と宣言できたのです。今から何度試験をしても、国民の信頼が回復するとは思えず、マイナス面を大きくしてしまいます。
しかも環境省が、汚染土を捨てたことで、細野原発担当相が大臣給与を返納するとしました。実はこの問題は多くのことを示唆しています。汚染米を安く仕入れ、それを安全として売りに回す、いわゆる事故米のときと、同じ問題が起きる可能性が非常に高まっています。つまり処分に困って、捨てるようなものに価値をつけて売る。これは土、農作物、鉄などの廃材に至るまで及ぶ問題、と言えるのでしょう。つまりリサイクルして売れるものは、すべて放射性物質付きで、市場に出回ってしまうことがあり、監視する必要があるということです。それができなければ、国は国民を守れないと烙印を押されるでしょう。環境省でさえ、処分に困るものを一般人がそれをすることはムリです。そこに業者が介在し、持ち去ってどこかで売る。今からはこうした警戒を強めた方が良いのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:06|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 原子力 | 社会

2011年11月23日

経済の話。欧州債務不安が再び

年金制度にマクロ経済スライドを導入して以来、続いていた特例措置の見直しが行政刷新会議で示されました。累積で7兆円、その分が現役世代の負担増、しかも国庫負担が半分入っているので、国庫にも優しくないことになります。増税が議論される中でのムダ使いは、早めに解消することが必要です。これは世代間の不公平であり、選挙目当てで一方を厚遇すると現役世代の反発を生みます。自公政権時代の宿題でもありますが、そもそもマクロ経済スライドも自公政権で決めたことです。抜本改革で解消を待つより、100年安心プランに沿った行動が必要となってきます。

欧州債務不安が拡大しています。欧州共同債の話もありますが、この仕組みは非常に厄介です。AAA格の独仏などが保証をつければ、共同債はAAA格で発行できます。しかしB格、C格が入ると共同債の格付けが下がります。しかし入らなければ、発行枠が少なくなり、実際に融通できる資金量が減ってしまいます。特にイタリアを支える場合、資金不足との懸念をもたれれば、対応が不十分として市場の混乱を収めるには至らないでしょう。AAA格を維持しなければ、低利ともなりません。
IMFでは予防的流動性枠(PLL)が打ち出されました。IMFに出資している分の最大5倍の資金を、6ヶ月借りられる制度です。しかしこれは短期の資金繰りを支援し、突然のクラッシュは避けられても、それだけです。詳細は不明ですが、融資した国が破綻を宣言した場合、貸付を全額取り戻せるのか? 逆にそれがなければ、融資をうけた上でクラッシュさせ、金融機関を救済するという裏の手も使えますし、IMFの信用力に関わります。さらにこの与信枠を使えば、国家として破綻に近づいた、と見なされることが、この制度が存在することと、効果との間に乖離を生んでしまうのでしょう。

さらに欧州議会で、金融機関改革案を来年の早い段階で提出する旨が示されました。イタリア銀、ウニクレディトの社債がジャンク級という話もありますが、すでに株価は1ユーロ近辺で、破綻レベルです。短期の資金繰りにもかなり苦しんでいる、と噂され、その噂がまた状況を悪化させます。そしてこうした金融機関の破綻が、さらに国家への負担となる連鎖を生む。この連鎖を断ち切るためには、金融機関の監視、監督を強める方向が望ましいですが、金融機関の債券ホルダーに負担させる案などが提案される見込みなど、逆の方向へ向かっている気がしてなりません。結局それは、国家へと破綻を連結させないことを目指し、益々金融機関の破綻を早めるだけ、となります。
日本のグロソブが、欧州債券から手を引いた、という記事もあります。今回の急変の背景には、米国のMMFの資金引き上げが、短期の資金繰りを悪化させた、ともされます。どちらにしても、海外からの投資、融資をアテにして経済を運営すると、混乱期に自国で支えるだけの体力をもてない、ということになります。つまり規模に応じて、どう発展していたか? が現在問われています。

欧州の打ち出すものは彌縫策と評価されます。彌縫策とは、一時しのぎという意味ですが、元々は周の時代、その周と争った鄭の軍が彌縫策をとり、周を倒したことで国力が衰退し、春秋戦国時代に突入していきます。この彌縫策が、列強各国が争う時代への幕開けとなるなら、それもまた時代の要請ということなのでしょう。しかし春秋戦国時代が300年以上も続いたことを思うと、今回の彌縫策による混乱が、どの程度続くのかを思うと、悩ましい部分となってしまうのでしょうね。

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2011年11月22日

東証と大証の経営統合

オウム真理教の事件の裁判、継続中のものがなくなりました。この事件で、多くのエリートが麻原彰晃の言うがままに事件を起こしたのがナゾ、という人は、同じように大王製紙で前会長の命じるままに資金を拠出した子会社もナゾ、となるでしょう。組織依存型の人間は、組織から拒絶されることを恐れ、上の命じるままに違法なことでも行なってしまう。それは子供のイジメの加害者になる場合も同様、小さな組織か、大きな組織か、それが何を仕出かすか、犯罪か、ということに関わらず、人の集団心理とはそういうものです。それがマインドコントロールと呼ばれようと同じなのですね。

韓国で、米韓FTAが与党の強行採決で可決されました。台湾の議会が荒れるのはよく知られますが、韓国でも大荒れです。ISD条項が含まれ、不平等条約だと野党から攻撃される中ですから、今後もこの問題は尾を引きそうです。ISD条項で様々な問題が起こるのは、日本も同じなので、もう少しこの問題について考えてみます。東証と大証が経営統合し、13年1月に『日本取引所グループ』となります。実は今回の統合も、少なからずTPPの議論が影響しているものです。
投資、金融、サービスが同じになれば、例えば日本の証券会社から、普通にNY取引所などTPP域内の取引所にアクセスが可能となります。東証の売買は6〜7割が外国人投資家、しかも値動きが朝方で、ほとんど決まってしまうような、今の状況では東証に上場する意義はありません。MBOをかけて上場廃止にし、NY取引所に上場する。または最初から海外で上場をはかる、と考える企業も出てきます。東証に上場している企業の時価総額が世界3位、統合後で2位になりますが、そうやって規模を拡大し、流動性を維持することが肝要であり、統合に一気に傾いたのも危機感の表れ、なのでしょう。

この流れはNHKにも及びます。昔はアンテナ、今はワンセグの受信機さえあれば課金が可能と法改正され、裁判に訴えてでも強制徴収されます。しかしスカパーなど、他の契約を必要とするメディアとの違いはほとんどなく、逆にスカパーに投資しようとした際、弊害が生じます。国営放送だから、というイイワケは仲裁裁判に通用しません。制度で守られた組織は、公平性という点で常にこのISD条項に怯えなくてはならない。震災で、多くの民間放送の広告がACになったように、広告抜きでの放送が可能であることは実証しましたし、国会中継もネットで十分。NHKは他の民間放送と同様の仕組みを呑まざるを得なくなり、そうなると契約した人間だけが見られるシステムに変わります。
農業関連の関税撤廃で、農家に打撃という話が専らですが、8月に始まったコメ先物取引の方がISD条項の影響を受けやすい、と云えます。穀物商品取引所など、海外に広く門戸を開けば、投資ルールの平滑化が起きますから、海外から投資資金が流入する可能性があります。投資とは儲かる、上昇すると思われる市場に資金が集まるものですから、資源や食料などの現物を商う商品取引所には、株式などより余程資金が集まりやすい、とさえ指摘できます。そうなると需要以上の取引が出てくる恐れがあり、それを停止する動きをISD条項で崩されると、TPP域内で相手国のインフレになるかどうかを、外国人投資家が握れる、という事態にもなりかねないのでしょう。

ISD条項は投資が基準の対象となるため、歯止めをかけない限り、あらゆることが相手国の法制度で投資が阻害されたかどうか、が審議され、賠償や改正を迫られることが最大の問題です。実はまだより多くのことが、このISD条項で変化を余儀なくされるのでしょうが、東証・大証は先んじて動いた。TPPに参加するなら、まだまだ改革が必要な組織は山ほどあり、今後もこっそりと、それと分からぬようそうした動きが出てくるのでしょうね。

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2011年11月21日

来年は政局か?

今日から東証では前場取引が30分延長されました。しかし売買は7千億円と少し、今週は米市場がお休みモードで、閑散になりやすかったものの、冗長さを増してしまった印象です。これはあらゆる事業に云えることですが、基本は選択と集中です。経済の拡大期には広がるパイの受け皿を準備するのが正しいですが、縮小期は事業を集中させて活況を内外にアピールしなければいけません。タイミングが悪いと云えばそれまでですが、市場がさらに魅力をなくしかねないのでしょうね。

今日、少し驚いたのは大阪市長選で、平松氏が橋下氏を「激しく追い上げている」という表現をつかい、世論調査の動向が伝えられたことです。まず現在進行形をともなう、こうした表現が可能なのは無名の新人が、現職を捉えたときにしか使えません。毎日、もしくは三日に一度ずつ情勢を調査し、時間経過を追う以外、本来こうした表現は使えません。特に平松氏は現職であり、かつ与野党相乗り候補であり、基底票があることからこの表現は相応しくない。メディアが自ら応援したい候補が、負けそうなときに使う、こうした表現を地方選で使うのは都知事選以外では滅多にありません。それほど注目が高く、かつ橋下氏が当選すると都合悪い、と思っている層が多いのでしょう。
決算委員会で、国会版事業仕分けが行われました。公務員宿舎や、原発など当然の削減項目が並びますが、むしろこれまで決算関連で国会が機能していなかったのであり、与野党が協力し、超党派で行えば官僚が族議員をつかって切り崩す、そんな動きが防止できます。さらに、財務省に頼っていた民主党の事業仕分けでは、切り込めない部分に手を入れることも可能です。法的拘束はありませんが、超党派で行う限り、国会運営にも関わるので政権が無視することもできません。今後は国会の小委員会でもよいので、事業仕分け監視委員会をおき、提言と結果の確認をいれ込むべきでしょう。

そんな国会で、野党の動きが活発化してきました。親の影響も、経歴からも米従属が鮮明な小泉進次郎氏が、TPPにおける自民党の対応を批判しました。公明も再来年の都議選、衆参ダブル選挙は何としても回避したい。そこで来年の、消費税増税法案を通す代わりに解散を選択させる案が、俄に浮上しています。谷垣自民総裁がそれを実現できなければ、自民党内から交代の動きが出てきます。
民主党の野田氏も、支持率低下に焦り始めるタイミングであり、来年の代表選を乗り切れる見込みはない。TPP、消費税と選挙にはマイナスの材料を抱え、頭に担ぐに不都合な面が多い。そこで乾坤一擲で消費税増税法案を通し、合わせて解散、総選挙を行なってその勝利をもって代表選を戦う、という戦略を描くはず。つまり来年の夏に、総選挙案が極めて現実味を帯びてきたといえます。

しかし民主党内の動きはやや異なり、『野田で解散』は極めて深刻です。上記の通り、勝てる見込みがまったく立たないからです。恐らく夏ごろには支持率も10%台でしょう。野田氏はTPPも、枝野―カーク会談で、すべての品目を関税撤廃、というメモを手にしていたように有言実行をめざし、それを内向きには明かさない、という仲間としてみると、最悪の癖をもっています。消費税増税も、国内向けにははっきりと語りませんが、野田氏は通常国会に提出することは、既定路線でしょう。
その前に離党するか? その決断をこの年末に民主党議員は迫られます。つまりここから半年は、政局色が強まることになるのでしょう。スペインの総選挙は、与党の政権運営に不信が集まり、野党が圧倒的に勝利しました。野田氏はスペインの諺でいうと「閉じた口にハエは入らない」ということか、舌禍を恐れて沈黙を守ります。しかし来年の夏は、経済的に混乱している状況が想定され、まさに最悪のタイミングで、与党が総選挙を志向するということともなるのです。イタリアの諺をとると「法王さまが死ねば別の法王になる」のです。トップの交代など、それほど日常茶飯事であり、その時まで野田氏にしろ、谷垣氏にしろ、自分の首と総選挙を天秤で動くことになるのでしょうね。

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2011年11月20日

雑感。東アジアサミットの米中露

ASEAN10ヶ国と、日中韓に米露など、8ヶ国でつくる東アジアサミットが行われました。「海洋に関する国際法」を盛り込み、中国を牽制する文言をもりこむなど、米国の意図が俄にはまった印象です。中国が主張する大陸棚は自国の領海、というのは古い一時期に主張された案であり、現行では否定されています。南シナ海や東シナ海での、中国の動きを封じるには適格と云えます。
中国が反発もせずに、この提案を呑んだのは意外ですが、逆にASEANの中で、高圧的にでて孤立することを恐れた面もあります。この恐れ、が中国の変化であり、国際関係を気にせざるを得なくなったほど、国内経済が深刻な転換点を迎えていることを意味します。中国では、倒産は夜逃げを意味し、企業が痕跡を消してしまいます。不渡りを出して…と云った段階を経ないのは、ヤミ金融などの貸し手が多く存在しているためであり、資金繰りに行き詰まったときはもう逃げるしかない、といった状況となるためです。このため中国では、どこで、どんな形でバブル崩壊が意識されるほど深刻化するかは誰にも分かりません。ヤミ金融が駆逐され、事業継続が困難になったとき、かもしれません。

東アジアサミットに出席した、ロシアも深刻です。ロシア経済は、過度にガスなどの資源輸出に頼った構図です。そのため、現在WTIで1バレル100$をつける場面もありましたが、200$を目指した頃とは異なります。3分の2とは言いませんが、成長がその分抑圧された。景気が好調なときに財政再建を果たしているため、深刻な事態とはなっていませんが、成長が抑圧されたことでプーチン、メドベージェフ路線に不審がたまっており、政治的にはやや不安定。しかも経済が密接で、欧州からの投資資金に期待していた部分が、債務不安をうけて逃避する傾向にあり、景気は底に向かっています。
米国も23日に財政再建法案が、ぎりぎり成立するか、また先延ばしされるかは微妙ですが、昨日もふれたように、米国は急速に財政収支の赤字を膨らませており、伸び率は先進国中1番です。米国が深刻なのは、今後も赤字が続くと予想されており、歳出カットが必須となっています。そうなれば景気は低迷し、FRBの金融緩和に頼らざるを得ない、というジレンマを抱えてしまうのです。

米中露、いずれも自国の経済が厳しくて、アジアの成長を取り込みたい。東アジアサミットはそんなドロドロの様相を抱えています。しかも深刻なのが、中露が抱える外貨準備です。自国を通貨安に導くため、経済が好調なときに蓄えた外貨準備が、今や米国債バブルと呼ばれるほどの高値をつけていますが、これが巻き返って下落を始めると、その処理に困ることになります。今は欧州債務不安で、米国債の買いが高水準ですが、米国債の格下げ圧力が今後どう推移するかでも変わってきます。
現在、経済的側面から全面的な戦争は、先進国の間では起きにくくなっています。しかし仮に米中が争うとき、米国の戦略としては中国との金融取引を全面的に禁止し、米国債を市場に放出できなくする案もあります。迂回処分を徹底的に排除するため、米国が世界と協調姿勢を求めるのも、中国と関係の深い国を一つ一つ懐柔していく。それはミャンマーでも同様なのでしょう。

この東アジアサミットで見られた、幾つかの動きは総じて米中露の間で、経済戦争の一面をになっており、今後自国の景気次第では、益々その動きが強まっていく。その中で日本がどう動くかを、きちんと整理しておかないと、立ち位置に迷うことになります。東アジアサミットでも、米中の両にらみで、日本は立ち位置を見失った感じもありますが、米国が積極的にアジアに関与を始めた今、バランスだけを考えていると、日本は取り残される懸念も出てくるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:32|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 海外

2011年11月19日

日本の財政状況を考える

イタリアの状況が明日の日本、という記事を見かけます。対GDP比129%の財政赤字なので、100万円の収入の家庭が、129万円の借金をしているようなもの、とさえ指摘されます。しかしこれは誤りで、日本の状況を正しく認識するため、日本というお店を営む一家を例にして考えてみます。
一家でお店を営んでいますが、お父さん(一般会計)は働きが悪く41万円、お母さん(特別会計)は169万円をうけとっています。お店の売上(国民総生産)は450万円ありますが、調達費などの運営費にかかるため、一家には210万円の収入しかありません。ただしこの一家は、お父さんの収入をあてにして生活しており、祖父の生活費、子供の養育費などはお父さんの財布から出ます。そのため借金を重ねており、今ではその額が950万円にまで膨らんでいます。これが対GDP比の財政赤字の意味であり、お店の売上と、一家の借金を比べている、というやや滑稽なものとなっているのです。

お父さんは41万円しか収入がないので、44万円の借金をします。しかし他人にお金を貸しており、その利息(税外収入)が9万円あるため、一家の収入としては94万円となります。お母さんの収入は、一緒に暮らしている祖父の生活費や、昔の借金返済、地方にいる兄弟の仕送りに使われています。ちなみに祖父は昔貯めた貯金(年金積立金)が180万円ほどありますが、自分の生活費に取り崩しており、将来これはなくなる見込みです。そのとき、お父さんの収入から祖父を養う必要があります。
さらに、お店にも借入金(政府短期証券などの、債務とカウントされない借金)があり、これが150万円あるとされます。以上を整理すると、お店の負債は150万円、一家の負債は950万円、お店の収入は450万円で、一家の収入は借入金まで含めると263万円、といったところです。非常に単純化しましたが、これが日本という国が抱える正しい財政状況となります。

それでも日本が諸外国から問題視されないのは、お母さんがコツコツ他人に貸したお金(対外債権)があり、資産が大きいためです。つまり、国の債務と債権の状態を正しく把握しない限り、どれほど家計が苦しいかは判断できませんが、その情報は正しく開示されていないのが現状です。
さらに、昨年の財政収支の赤字は日本が対GDP比で8.7%なのに対し、米国は10.8%。日本の伸び率は一定である一方、米国の近年の伸びは非常に大きくなっています。イタリアの財政収支の赤字は3.9%なので、伸び率は大きくありませんが、債務残高が129%あり、対外債務が大きいために国として警戒される、ということです。これが日本とイタリアの差であり、これを説明しないと違いが分からないのです。単純に、対GDP比の債務残高を比較することは誤り、とさえ指摘できます。

日本は租税負担率が24.3%、社会保障負担率が16.3%。合計して40.6%であり、米国は32.6%、イタリアは62.7%もあります。これは低負担、低福祉なのか、高負担、高福祉なのかでも変わりますが、日本の財務省はこの40.6%をあげようと画策しています。安易な増税議論はこうしたところから発生していますが、少なくともこのお店は中負担、低福祉を目指しており、そこで働く人にとっては生きにくいことになっていくのでしょう。現状認識を正しくしない議論で、国の行く末を決めようとしていることに不安を感じますが、政治がその流れを是正できない、ということが最大の問題なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:55|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年11月18日

欧州ソブリン問題が拡大

来週から、東京証券取引所の時間が変わります。前場が30分伸び、TOPIX先物などデリバティブは休憩をはさんで、朝から晩までほぼ取引を続けることが可能です。ただ、ここのところ日中の売買代金が1兆円に満たず、CTA筋も動かないため、日中の値幅も出ない状況です。時間が伸びると、さらに閑散となり、相対取引のような状況となれば、益々投資家は敬遠するでしょう。以前から計画され、震災で延期されていた事柄とはいえ、冗長性を増す今回の件は良い方向性とはならないでしょうね。

市場では、欧州ソブリン問題は新たなステージに入った、と専らです。昨日はスペイン国債の入札が低調で、利回りが7%に近づきました。イタリア国債も7%前後、AAA格の仏国、オーストリアも利回りが上昇しており、欧州では国債全般に買い手がいない状況が続いています。キッカケはギリシャ債務の処理に、民間金融機関に自発的な債権放棄を求め、その際CDSによる保証は必要ないという見解をとったことです。このため、CDSによるリスクヘッジが利かなくなり、全体的に国債の持ち分を下げざるを得なくなった。このため借り換えに回さなくなり、国債から資金が逃げていることが原因です。
さらにこのタイミングで、米国が揺らぎ始めました。S&Pの格付け方法の見直しにより、従来より格下げされる金融機関が出ること。及びフィッチが指摘した欧州へのエクスポージャーの問題で、米銀に波及するとのリポートです。国際決済銀行によると英独仏のPIIGSへのエクスポージャーは1兆5千億$、米銀の英独仏へのエクスポージャーは1兆3千億$、とされ、間接投資による影響を排除できません。リーマン破綻時の債務は1500億$、イタリアはその20倍近い国債を発行しており、資産があるので単純比較はできませんが、イタリアが仮に債務処理に追い込まれれば、影響は甚大です。

一刻も早い対応が必要ですが、欧州で具体的に出ている案は、ECBの国債買取枠の拡大ぐらいです。一部では、欧州銀が手数料を払って不良資産と、優良資産を交換、もしくは担保として受け取ってもらえる交渉をしている、という話がありますが、抵当権のついた資産でお金を借りるようなもので、窮状が忍ばれます。ECBが量的緩和策をとる、という話にしても、国債をオペとして吸収するか? 買い切りで保有し続けるか? という転換ではあっても、一時的な安寧しか与えないでしょう。
しかも金融機関が傷み、経済規模がシュリンクしていく中ですから、強烈なユーロ安を引き起こしかねない。それが物価高に直結すると、経済が好調な独国でさえ景気後退となり、AAA格を失いかねない、という事態になれば誰も保証をつけられなくなります。欧州ではいつ不測の事態が起きてもおかしくない、そんな気配が漂う中で、欧州の債券は買い手がつかなくなっているのが現状です。

日本の市場でも、欧州系の動きが目立たなくなっていることが、資金の流れの変化を感じます。不良資産の売却に困り、優良資産を売って資金繰りをつける一方、自己勘定で動かす資金もないため、値動きすら出してきません。しかもカラ売り規制があるため、資産処分をすると売り圧力の方がどうしても強まります。年金系などの長期保有が前提の資金が消えていくようだと、年末にむけて一段安の局面もあるのかもしれません。とにかく、もしマイナス方向への強いバイアスがかかると、器から水が溢れるように、一気に悪い材料が重なることが予想されます。
米国人のベルが、資本主義の矛盾という文章の中で書いた一文に「困難は二重にある。一つは西欧社会は市民意識が欠けている。二つは政治的な哲学がない」と嘆いたものがあります。今の世界はまさにこの二つが支配的、とさえ云えるのでしょう。この流れのまま恐慌に突入するとすれば、かなり深い景気低迷となってしまいかねず、不安が増すばかりとなってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:28|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 欧州

2011年11月17日

米海兵隊の豪州への駐留

ブータン国王が国会で演説をしました。ブータンは親日国として知られますが、民族的にも近いとされます。かつてヒマラヤを超えて北方には、ナゾの多い弓月国があったとされ、一説では日本の古代史の一時代を築いた弓月君が、この弓月国の出身ではないか? とされます。そこまで考えなくとも顔立ちをみても、親近感が湧くことは間違いなく、ともに手を取り合うという姿勢は共感を覚えます。全体主義国家ですが、近年では民主主義へ移行しており、国民総幸福量を指標とするなど、スローな発展を目指す国家として学ぶべき点も多いのかもしれませんね。

オバマ米大統領が米豪協議で、アジア太平洋地域を最優先事項とし、2500人の海兵隊をダーウィンに駐留する、と表明しました。米議会による超党派の諮問機関、米中経済安保見直し委員会が、中国による先制攻撃の可能性が増大し、シーレーン封鎖や海洋資源の独占の恐れが強まった、とする報告書を提出し、オバマ氏もこうした流れに後押しされ、豪州に増兵を決めたとされます。
中国のミサイル射程の範囲外にある、という豪州の地理的状況があったとされますが、ここで一つの仮説が成り立ちます。沖縄駐留軍は射程に入っているため、実戦的かどうか? つまり沖縄駐留軍の位置づけは、やや変わってくる公算が高い。台湾有事ではなく、北朝鮮による韓国侵攻に対するものと考えても、北朝鮮も急速にミサイル防衛を拡大させており、沖縄も射程に入ります。精度がまだ足りないので懸念は低くても、今後は前線基地が必要なくなる可能性が高いのです。

現代の戦争で、艦隊戦はほとんど有り得ません。狭い海域に艦隊を集中させると、長距離弾道ミサイルで狙い撃ちされるか、空爆される恐れが高いからです。しかし海兵隊は特殊な作戦を担う部隊でもあるので、まさに出てきた中国の空母クラスの動きを封じるための部隊、ということなのでしょう。それは南シナ海、東シナ海も視野に入れているとすれば、沖縄の基地負担軽減になります。
沖縄は基地が集中しすぎており、ここに一発大量破壊兵器を落とせば、米国の大兵力を削れるのであり、まったく実戦向きではありません。米中露は核兵器の削減にむけて動き出した、という話もありますが、大量破壊兵器のある時代の戦争とは、小規模兵力を分散し、保有することが大前提であり、尚且つ前線基地などは必要なくなるのです。諮問機関の報告でも、中国の先制攻撃の可能性を指摘していますが、それが大量破壊兵器だった場合を考慮し、戦略を立てねばならないのでしょう。

一部で、TPPが国防の一翼を担うという説もありますが、やや早計です。それならば、東アジアの米軍の配置として重要な韓国も、TPPの枠組みに入れねばなりません。同じFTAを結んだメキシコ、カナダもTPPへと乗り換えを画策しているのなら、尚更そうなります。そしてこれが、軍産複合体に利用されないためには、経済と軍事は明確に切り離して考えなければならない、とも云えます。
豪州にとっては、核保有国でないまま米軍の核の傘を実感できる立場を得た、という意味では大きいのでしょう。野田氏が真に交渉で国益を目指すのなら、普天間の海兵隊を豪州に移す提案を東アジアサミットに出席するオバマ氏にすべき、と云えます。それができるかどうか? 真の意味で国益を考えて、TPPに参加したというのなら出来るはずですが、ここが試金石になってくるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:15|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2011年11月16日

雑感。裁判の話をいくつか

東京地裁で、一つの判決がでました。週刊新潮による郵便不正事件について、民主党の石井氏の関与を指摘する記事について、新潮側に550万円の賠償を認めた件です。すでに明らかなように、郵便不正事件に村木氏はまったく関与しておらず、従って石井氏も何の関係もありませんでした。元秘書だった人間が事件に関与していた、ということで、検察側が勝手にストーリーを立てたのです。
興味深いのは、裁判でも「間接的な情報にそって記事を掲載…」としますが、検察がたてたシナリオですから、検察しか情報の出処はありません。検察が行なった世論誘導、それを週刊誌が担ったことが、事件がまったくの架空だったことで鮮明に浮かび上がった形です。週刊新潮は控訴する可能性もありますが、何を争っても記事は捏造であり、検察―週刊誌という構図はハッキリしています。

そんな中、最近興味深いのは大阪府知事選、大阪市長選における橋下氏へのネガティブキャンペーンです。行政に不都合なことをする人間に対しては、必ず人格否定を伴う、こうした動きが広がります。複数の週刊誌で一斉にでるということは、情報提供媒体の存在を疑わせますが、特に複数で同じような記事の場合、同一の記者が関わったというより、媒体と考えた方が良いのでしょう。
大阪ダブル選については告示後でもあり、あまり言及しませんが、平松氏が「大阪市役所で働く人を守る」というニュアンスの発言をしたのは、驚きました。特定の便益を与える、としか聞こえないからです。政令指定都市には多大な権限があると同時に、二重行政の批判は常につきまといます。大阪都構想は、形を変えた小さな政府路線です。行政のスリム化は現代の趨勢であり、守ると宣すれば改革は遅れます。国は開国により改革を叫ぶ人も多いのですが、府や市にそれを求める流れは、それほど多くありません。しかし地方行政とて苦しいのが現状なので、本来は改革が必要です。

情報の扱い、ということではイレッサ薬害訴訟も、情報に関する扱いを問われたものです。副作用の注意喚起で、4項目に重篤な症状となる間質性肺炎をいれたこと、等が争点でしたが、高裁はこれを企業、国に責任はないとしました。ただ安全性の追求は常に必要であり、注意書きで済ませて良いのか? と素朴な疑問として感じます。患者側に、正しいクスリに対する知識、副作用の認識があれば素早い対処も可能だったのであり、全体の問題でもあるのでしょう。イレッサの効能が高いことも判断材料に含まれていますが、大事なことは効果とバーターのリスクをどう捉えるか? です。
最後に、ミルの言葉を要約して記してみます。「自分が誤ることは誰しも知っている。しかしそれに対して警戒策を講じたり、自分の意見が誤りの一例だという想定を受け入れる人間は、ごく少数」というものです。ミルは功利主義者ですが、だからと云って、誤りを恐れて行動するな、というのではなく、予防手段を講じるよう説きます。情報を正しく扱うことは、予防手段をとるための第一歩に過ぎません。その中で、上記に取り上げた内容は、いずれも情報が、どこかで捻じ曲がったような印象をうけます。それは『茶のしずく』も同様なのかもしれません。安全に生きる、という基本的な人権にすら影響することを、情報を蔑ろにすることによって、阻害されてはいけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:18|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 社会 | 司法

2011年11月15日

ユーロ危機は将来のTPPの姿

国会論戦もTPP関連の話が多いですし、一部のメディアでは米国を戦略的に利用しろ、などという暴論まで出ています。国防の主力を米国に頼っておいて、利用などできるはずもなく、日本がそう動けばしっぺ返しを喰らうだけです。米国と国益が一致するなら協調はできますが、多くの場合、日本は利用される側にあります。そしてTPPとは、将来的に第二のユーロ危機を生む、と断言すらできるものです。今、欧州で起こっていること、それは将来のTPPの姿を映し出していると云えるのです。

欧州ではイタリアのモンティ新首相が、暫定政権ではなく2013年の任期まで、政権を担当すると宣してもめています。ギリシャでは暫定の連立与党の一つが、緊縮財政への反対を表明し、波紋を広げています。財政再建を実行するのに必要なことは、強力なリーダーシップですが、国民を味方につけるためにはアメが必要、大衆迎合政策をとらざるを得ず、その二つで揺れていると云えます。
欧州は通貨統合後、基本的な経済政策は元より、各国が違う立場で国債を発行したことが今の危機につながります。金融機関は国債を保有し、それを準備預金として積みます。各国の国債は価格や利回りが異なるものの、同じ国債という位置づけであり、ギリシャのような国が大量発行しても、それを引き受けてくれる金融機関があった。これはイタリアも同じで、国内向けに良い顔をするために、国債を乱発してきたことで、国をデフォルトさせると金融機関の破綻に直結してきます。必要だったのは、通貨を統合するならそれを左右する、金融政策まで統合しなければいけませんでした。

TPPの最大の問題は、経済政策や投資のルールは統一されるのに、通貨や金融政策が各国バラバラなことです。このため優劣を決めるのは、人件費や労働者の習熟度の他に、通貨価値が強く影響してきます。つまりTPPは通貨安を目的に金融政策を誘導する、そうした政策を各国が打つと想定されます。その結果、過剰流動性がさらにひどくなり、各国は余った投資資金を外に流すよう仕向けてくるでしょう。投資ルールが同じなので、非常にそうなり易い。すると小国はバブルとなり、バブルに乗じてさらに投資資金が流入、はじけた途端に国家破綻のリスクに晒されることになるのでしょう。
TPPは通貨安競争→過剰流動性相場→どこかの国でバブル→崩壊後、離脱→TPP枠の動揺、という流れになることが必定なのです。投資ルールを統一するなら、通貨も金融政策も同じにしなければ、その歪みを市場に突かれるだけ。物の価値は同じでも、通貨の価値が変動してしまうこと。これが最大のリスクであり、その生殺与奪の権利は主に米国が握るのが資金量の点からも確実です。

TPPはこれまで9回の会合を開き、来年は5回ほど開かれて合意される予定です。TPPが承認されても移行期間があるので、3年ぐらいは先の話になりますが、人と物の流動化以上に、資金の流動化をどう抑制するか? それが最大の課題なのです。しかしこのTPPはむしろその逆で、資金の流動化を阻害すると仲裁裁判に提訴され、負ければ強制的に従わされてしまい、投資資金の流入、流出に対処する術を奪われてしまう。結果的にこのTPPは、小国を食いつぶすためのものとさえ云えるのです。
残念なのは、日本でほとんどこの議論がされないことです。仮にTPP参加国が破綻しかけたとき、TPPの枠内にいる国は、一つの決断を迫られます。追い出すのか? 支援するのか? それがギリシャの姿と重なってきます。関税を撤廃し、ルールを統一する。頭のいい人はそれが必ず上手くいく、最良という言い方をしますが、かつて多くの有識者に支持された共産主義が、今や一国も残っていないように、理想と現実には必ず乖離があります。その差を埋めるために予見性をもって、制度の不足を補わないといずれ破綻することになります。その予見性をもち得ていないとしか見えない、今のままではTPPは必ず失敗する、と断言しても良いのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:14|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年11月14日

日本の7-9月期GDPは大幅増

内閣府が発表した日本7-9月期実質GDP速報値は前期比1.5%増、年率換算で6.0%増となりました。4-6月期は震災後のサプライチェーン寸断、計画停電などで、生産計画がメチャクチャになった影響もありました。7-9月期も電力使用制限令はありましたが、実際に止まったことはなく、生産が計画通りにいったこと。及び遅れを取り戻そうと急回復に務めた、企業側の努力が大きいといえます。
個人消費が1.0%増でしたが、これは節電家電への買い替えが進んだこと、及び仮設住宅が続々と完成し、支援金の一部を生活必需品の給付にあてた、日本赤十字などの意向も寄与したと見ています。自動車購入も増えていますが、震災の影響以外では、集中豪雨により車を失った人の買い換え需要もあったのでしょう。輸入も天然ガスの輸入が増えて3.4%増ですが、これは震災で流された備蓄オイル、ガスなども徐々に復旧させる傾向にあり、一時的な押し上げ効果が顕著に働いています。

消費は堅調と言われながら、TV事業に関しては日立は一部撤退、パナソニックも再編、シャープは工場を閉鎖、ソニーも事業の見直しを迫られるなど、深刻な事態に陥っています。簡単にいえば、大画面でテレビをみる必要のないコンテンツ、バラエティやニュースが多く、ワンセグで十分という意識も働きます。例えばAKB48は大人気、と言われながら視聴率で苦戦が報じられます。これはAKB48のファン層がネットを主にしている人も多く、放送と同時に見たい番組でなければ、ネットの動画投稿サイトで十分、という意識も働くのでしょう。テレビはあくまで受像機ですから、コンテンツが面白くなければ売れない。それは3Dテレビのコンテンツがないため、売れないのと同じです。
今回の発表で、もう一つ顕著だったのがGDPデフレーターで前期比0.1%、前年同期比1.9%下落と、大きな下落を示したことです。これを為替に重ねると、昨年の7-9月期は中央値が85円、今年の7-9月期は78円程度なので、マネタリーベースの拡大などとの兼ね合いからも、それほど違和感のない数字、ということがわかります。日本は10月31日の為替介入以来、断続的に指値介入を続けているのでは? と観測されますが、効果が低いのもデフレに歯止めがかからない現状がよく示しています。

そんな中でAPECでは、カナダ、メキシコがTPP交渉に前向きな姿勢を示しました。これは米国とすでにFTAを結んでいるメキシコにとっては、条件を見直すチャンスに映り、カナダのように交渉に行き詰まっていた国は、活路を求めたということです。一つ云えるのはTPP=開国ではなく、TPP=解国になるということです。経済という枠において、国益を守るなどという形とはならず、国同士が解けてまじり合う。その結果、エコカー減税やエコポイントなどの、差別化する対策はバランスを崩すために一国では打てなくなり、非常に自由度を失ってしまう、という形になってしまうのでしょう。
各社の世論調査で、野田内閣の支持率が40%を切り、TPPに説明していないとの認識が80%を越すなど、この問題に対してはまだ尾を引きそうです。野田氏がISD条項に対し、国内法が優先するという誤った認識のまま推進を決めたように、実は野田氏本人が理解できていない、という問題もあります。なので推進派の語ることを鵜呑みにして、自分の口では説明できないという欠点を抱えます。

米国とは事前協議が必要で、カーク通商代表は早くもゆうちょ、共済などに開放を求めてきました。重要なことは、TPPにおいて国益を守る、という文言は通用しないことを早くみんなが認識すること、なのでしょう。FTAなら国益を守るため、諸条件を詰めることができますが、TPPはネガティブリストに載せなければ、自由化に文句を云えなくなります。TPPは分析すればするほど、日本の国益という点からは遠くなるので、野田氏のように米国に媚を売るため汗をかく、ということに邁進すると、いつの間にか取り残されて、国益を大きく損じてしまうことにもなりかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:24|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年11月13日

APECにおけること

ハワイ・ホノルルでAPECが開催されています。野田氏に想定外のことが起き、TPP交渉の場から除外されました。その場で大枠合意が示され、今後は細目の検討に入ることが示されました。しかし日本が参加できるからといって、情報開示が急に進むか? と考えるのは大間違いです。なぜなら、交渉三箇国が国内向けに説明ていれば、TPP協定の内容は伝わるはずだからです。
この交渉はあくまで極秘裏にすすめられ、各国が交渉に署名、調印した段階で国民は内容を知ることになります。もしくは、その前に解禁されるかもしれませんが、日本が2月に交渉参加できても、その内容が伝わるのはさらに先、になるのでしょう。大枠合意した内容ぐらいは伝わっても、その影響を推し量るまでに至るのは、まだまだ先の長い話になるのでしょう。

そんな中、米通商省からは早くも例外は認めない、牛肉は科学的検知で、郵政含めて…と対日要望書に列記された事柄を軸に、要求すると伝わります。政府関係者からは、今回TPP参加が表明できなければ、決定的な関係悪化を招いていたので、安堵しているとの声も聞こえます。そのためか、普天間環境アセスの提出や、牛肉輸入制限の緩和など、交渉に入る前の段階からすでに手土産ばかりを渡す形となっており、米政府の野田政権への期待は最高に高まったと云えるのでしょう。しかしそれは、実現力を問われるものでもあり、また米国にとって都合よい、日本にとっては不都合な内容です。
アジア太平洋地域における、米国のプレゼンスが高まっている…という野田氏の説明も不可解です。経済では中国の急成長、東南アジアでも成長が見込まれていることから、米国の地位は落ちてきています。軍事では北朝鮮を「ならず者」とし、攻め込む気配すらうかがわせたブッシュ大統領時代と比べ、今は戦争できる余力がない。米国のプレゼンスは高まっているどころか、相対的に低くなっており、こう述べたのは自身の行動を正当化するため、米国を持ち上げたというに過ぎません。

しかもこれだけ手土産を渡し、持ち帰る外交成果は今のところありません。米国は『すべての物品、サービスを自由化交渉のテーブルに載せる』という発表をし、後に誤解だったとしましたが、米国は初めからそのつもりであることが見えています。むしろTPPとは例外品目を認めていないので、除外できる項目はほとんどない。単に日本側への配慮で、誤解と認めたに過ぎません。
野田氏はこれを「各国と良い協議ができた」とその成果を語るのでしょう。しかし米国とは多くの約束をし、他の諸外国とも事態が前にすすんだものはない。APECなどの国際会議の場では、詳細の詰めを行うことはできないので、顔見世になることは仕方ありませんが、今回はただTPPに参加します、と云うためだけに参加した、というに過ぎないのでしょう。残念ながら、これが日本の外交力です。

一部で推進派が、諸外国と連携して米国と交渉できる。としていますが、逆に日本が米国と連携すれば、強力な推進力をもって、諸外国を従わせてしまうことになります。さらに細目では、諸外国と立場を異にすることも多くなるので、どこまで連携が可能かも不透明です。特に米豪は反捕鯨で一致する国、反捕鯨が日本バッシングの一面を担っている、ということも合わせると、TPPという枠組みで日本が有利になる展開までに至るには、相当骨の折れる、想定外なことが起きない限り難しい、ということになってしまうのでしょうね。

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2011年11月12日

経済の話。欧州不安は止まったのか?

東京讀賣巨人軍の内紛が話題です。経過を類推すると、コーチ人事を会長に説明して了承を得て、内示をだした。するとクライマックスシリーズの敗退をみて、会長が人事に口をはさもうとした。内示をだしていたGMの面子がつぶれ、怒って記者会見したということでしょう。会長が現場に口をだす最悪のパターンと同時に、これをコンプライアンスの問題? というGMの不見識です。日本のプロ野球の多くの問題、親会社が野球も知らずに口をだす、GMは経営を知らない、ということを今回の件は如実に表しています。こんなことではプロ野球人気は凋落の一途でしょうね。

欧米株価が堅調です。イタリアが財政再建法案を可決し、新たな政権の発足が期待できること。及びギリシャ新政権誕生を好感したものです。ただし不測の事態も予期されます。EFSF拡充に対して、1兆ユーロに届かないのでは? という観測が広がりました。元々、中国の外貨準備に大いに期待するものでしたが、その見返りに中国はWTOにおける市場経済国の認定、IMFの特別引き出し権(SDR)に人民元を加えること、欧州の武器禁輸措置の解除、のいずれかを求めたとされ、いずれの条件も欧州川にとって難色を示したことから、交渉の進展はほぼ望めない形になったというのです。
EFSFの4400億ユーロではイタリアを救うことは不可能であり、イタリア財政再建が軌道に乗らなければ、EFSFでは支えきれない。大前提はこの財政再建法でイタリアが本当に再建すること、です。少しでも疑義を生じれば、欧州は見る間に大混乱に陥るでしょう。しかも格付け機関S&Pによる、仏国の格下げ誤送信で、仏国債の利回りが急上昇したことは、債権市場の脆弱さを示しました。今回は誤送信でも、本当に格付け見通しが下がったら…欧州のすべてのシステムが狂うと予想されます。

そんな中、米国の11月消費者信頼感指数が、予想以上に堅調さを示しました。99%デモが起こり、米国内が混乱する中ですから、信じられない数字です。年末の消費も好調と伝わりますが、所得が下がり、貯蓄率も下がり、失業は依然として高水準。そんな中でどうして消費が堅調なのか? これがザ・アメリカということだとしても、ちょっと信じられないぐらいです。推測ですが、FRBが資金供給量を大幅に増やしており、ハイパーインフレに近づいているのでは? とすら感じられます。
元々、債券買い入れプログラムで2兆ドル以上が銀行に投入され、それだけでも莫大な量になります。さらにQE3が実施されれば、インフレの加速が米国で顕著になるのかもしれません。これだけ大量の資金が国内であぶれると、それだけで危険ですが、例えばTPPにより投資条件を諸外国と並列化することにより、その資金を外に向ける算段があるのかもしれません。それがさらにドル安を加速させ、米貿易は好転する。ただし、輸入物価の上昇がどの程度で抑えられるか? 諸外国がドル安で米国への貿易量を減らすのがいつか? などのタイミングが想定通りにいかないと、国内経済はインフレにより疲弊していくことになるのかもしれません。後は当局の読み次第、なのでしょう。

日本はオリンパス、大王製紙問題が尾をひくこと、また上記2社の問題が政界に飛び火するのでは? という国内の懸念もあって、上値余地が限られています。11月SQは8542円と、フラットで通過したためか、売買はまったく膨らみませんでした。日本市場の存在感は、今後も薄いのかもしれません。そんな中で為替介入に理解を求め、自己満足する政治家の姿勢が、さらに世界からみて奇異に映るのかもしれません。TPPにより、日本経済がマイナスとなり、米国経済は救われる、という観測がこの株式市場の値動きに現れているのなら、それもまた問題あり、ということかもしれませんね。

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2011年11月11日

野田首相によるTPP記者会見について

野田首相がTPPに参加を表明しました。まず冒頭で「TPP交渉参加にむけて、関係国と協議に入る」と述べました。これに反対派は参加ではなく、協議の段階だと安堵していますが、反対派もTPPの仕組みが分かっていない、ということが露呈しました。TPPは参加を表明しても、9ヶ国の承認が必要であり、米国ではそれが2月にずれ込むことになります。つまり野田氏は、この3ヶ月をいわゆる協議と述べているだけで、実質的に参加できるまでのタイムラグを、言葉でごまかしたに過ぎません。
しかも「断固として守る」対象として、農村、医療制度、伝統文化をあげましたが、何度も云いますがISD条項が入っている限り、裁判で負ければ終わりで、制度変更を余儀なくされます。野田氏の決意がどうだろうと、結果として制度、ルールは変わらざるを得ません。このTPPがFTAと異なる大きな部分であり、自由貿易圏とは異なる仕組みのすべてが、この内政干渉権にあります。ここがFTAは推進すべきでも、TPPはまったく違う、という理由であり、そのことに一切ふれませんでした。

しかも「アジア太平洋地域の成長を取り入れ…」と述べましたが、高成長の国はこのTPPに参加していません。その後のFTAAPを睨んで…ということだとしても、実現未定なことを今回の理由にすれば、それはゴマカシになります。逆に言えば、それ以外の理由がなかったので、TPPの利点は未だに国民向けに説明していないとみなされます。説明不足、それが野田氏につきまとうのでしょう。
閣議決定がない点は、外交交渉では決裂もありうるので署名、批准のときにするもの、という野田氏の説明はその通りです。ただしこれは多国間交渉であり、しかも項目が多岐にわたることから、一度の閣議決定で済むか? という問題があります。つまりより強い経済圏という枠組みをつくる初めての試みであり、前例、慣習に従う必要はなかったといえます。その説明もありませんでした。

しかも離脱はあるか? との質問には正面から答えなかった。これは離脱という選択肢はない、と述べていることになります。しかも協議は質問、要望を出し、それに次回交渉でアンサーをうけとる形であり、春先に参加しても交渉全体の3分の2が終わっており、日本がまともに交渉に参加できるムードではない。通常の交渉ならもう詰めの段階であり、日本の要望が受け入れられるとすれば、交渉がスケジュール通りに進んでいない場合に限られる、ということになります。これだけの問題を抱えながら、それを説明すらしない野田氏は首相として相応しいのかを今後問われるのでしょう。
反対派は矛を収めたようにみえますが、これで本当に支持勢力である農家、医師会などが納得し、矛を収めてくれると思っている人間はいません。反対派が勢いを失えば、支持基盤が離れることになるだけです。消費税増税まで、強いリーダーシップを発揮したい野田氏と、反対派の筆頭だった山田氏、鹿野氏が手を打っただけに見えますが、違う御旗が立ち上がるかもしれません。

今回、浮き彫りになったのは説明をしない野田氏というイメージです。初志貫徹、という強いイメージは1日延期したこと、また変な配慮をしたことで築けませんでした。また党内PTという議論の場から逃げ回ったことで、問題に正面からぶつからない、弱さしか見せませんでした。野田氏は米国が怖かった、という点も弱みとなるでしょう。来年の夏、仮にTPP交渉がスムーズにいくと、消費税増税議論と重なってきて、国論を二分する大きな問題が2つ重なることになります。そのとき、強権をふるってでも邁進するのか? 反対派が別の動きをみせるのか? 先送りができなくなって、行き詰まるのが今の世界経済ですが、それと同じような事態が、日本の政治にも起きるのかもしれませんね。

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2011年11月10日

野田首相による一日

野田首相がTPPに関する説明を1日先延ばししました。民主党執行部が、この1日はガス抜き、反対派に配慮した形で好感と述べていますが、民主党保守系の党執行部を引き継いできた人間の見方は常に誤ってきました。鉄を熱いうちに打つと、火の粉が散る。その火の粉をかぶりたくない、だから1日冷却を。という考えならこの決断はマイナスに働くでしょう。反対派の熱がその程度で冷めるぐらいなら、ここまで盛り上がってはいません。党執行部はその意味でもずっと誤り続けてきました。
背景には、強行しても離党は5人ぐらい、との見方が覆ったか? 国民新が連立離脱を宣告したか? もしくはその両方といったところなのでしょう。どちらにしても、消費税増税を推し進めるには数が足りない、党分裂を招いた責任論を抱えてのリーダーシップはかなり低下する、との思惑が働いたと見ています。米国と、財務省と、その両面をウィン・ウィンで結びつけることが困難。TPPを強行すれば、それだけで野田政権が終わってしまう可能性があり、消費増税を何としても推進した財務省にとっても面白くない。国会議員は7:3で反対が多くてもいいですが、国民は違います。

衆院も、参院の半分も任期は2年を切っており、与党にとどまり続けても、支持層が離れてしまえば当選は難しい。それなら亀井氏が受け皿となる、国民新に合流するという手もあり、と考える議員が増えた。これが年末で、来年の政党助成金の申請に間に合うタイミング、というのが微妙な判断となります。衆参で50名程度がTPP反対新党に流れると、もう法案は動かないとみて間違いありません。そうなると、国際的に決意表明した消費税増税は、確実に実行できないことになるのです。
さらに、この1日が反対派の切り崩しになるとは到底思えません。なぜなら党執行部には戦略も、お金もないからです。戦略があればすでに切り崩せているはずですし、党のお金に手はつけにくい。菅政権の頃はメディア向けの接待に積まれていた官房機密費も、使い道をしぼったとしても、まだ3回しか受け取っていないので3億円しかありません。しかも在京メディアのTPP推進論をみると、相当この予算がばらまかれた、との観測もある。貧乏宰相ですから、野田氏個人の余力も乏しく、思ったような多数派工作の手がない、というのが現状であり、それがこの1日に篭められているのでしょう。

後は、野田氏がTPPと、消費税増税と、どちらに軸足をおくかにかかってくるのでしょう。恐らく2つを強行するのはムリです。政治家としてどちらが重いのか? それと米国、財務省、どちらに寄りかかって政治をするのか? どちらが怖いか? と云っても良いですが、そうした決断を今晩ですることになります。拙速に判断するな、とこれまでも云われて来ましたが、決意を固めて様子見している間に、事態は抜き差しならないところまで迫った、と言えるのかもしれません。
明日、仮に参加を表明した場合、APECに参加している間に党が分裂気配になるなら、諸外国から指導力を疑われる事態になります。権勢をほこったベルルスコーニ伊首相が、一度の決議で辞任を表明するまで追い込まれる。これは大統領と異なり、首相という弱い立場にいる政治家は常に恐れていることであり、野田氏が権力にしがみつく気があるなら、もっとも怖い点なのでしょう。

米国ではアラバマ州ジェファーソン郡が、財政破綻しました。米国は中央政府より、地方政府の税収減がよりひどく、行政サービスを削り続けているのが現状です。TPPも、影響の大きい地方がより懐疑的、ということなら、中央と地方の差もこのTPPの考え方で食い違いを生むのでしょう。野田氏の1日は、『一日の長』としてではなく、『一葉の秋』の想いを強めるのかもしれませんね。

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2011年11月09日

経済の話。イタリア、米中緩和期待

イタリア国債の利回りが7%を超えてきました。ベルルスコーニ首相が辞意を表明したものの、同床異夢だった連立与党が、流動化する可能性もあり、EUとしては総選挙を回避したい。ギリシャには支援の条件として、次期政権にデフォルト回避に向けた署名、捺印を求めているとされます。しかし選挙前に、与野党全体が合意したとして、民主主義では緊縮財政反対、の政党が現れて多数を収めてしまう可能性は常に生じています。イタリアも選挙の影がちらつく中、事態は流動的です。
国債急落の背景は、証券決済機関の証拠金引き上げ、とされます。しかし本質は、ギリシャのような粉飾決算が楽天的で、政治への信用が低いイタリアでも起きているのでは? という恐怖です。ある日突然、破綻してしまうのでは? ギリシャのように、国債の償還に制限がつけられ、いきなり政治決着により50%の債務削減を迫られる。これを避けるには、早くポジションを下げるしかありません。つまり国債を売り急ぐ流れが、今のイタリア国債に起きていることになります。11月のECBで利下げが決議されましたが、国債買取などに言及がなかったことも、この動きを加速させます。

現在の世界経済は、米中の緩和期待で支えられています。そんな中、中国で10月の消費者物価指数(CPI)が発表され、前年比5.5%上昇でした。9月の6.1%上昇からは緩和したものの、予想5.4%をやや上回っています。中国では予想通りの経済指標が出ることも多く、予想を上回ったということは、実体はもう少し上だった、という想像もつきます。この結果で中国の緩和期待はフラットに戻りました。
米国では失業率が高止まりしますが、状況が悪化しているわけではなく、インフレも高い水準にあります。緩和期待を映して、資源価格が再び騰勢を強めていることから、事前に外堀は埋められており、ハードルは極めて高くなってしまった。それでも米金融機関に期待が広がるのは、年末に株価が下がると大変なことが起きる。当局はそんなことを望まないだろう、という期待です。世界経済は米中への期待が剥落すると、不安定さを増します。緩和を打てるのは年内であり、どこでそのタイミングを見極めるか? それまで欧州が対策を打てるか? それが今後のカギなのでしょう。

TPPに関して、民主党内で提言がまとまったようです。慎重派が守旧、推進派が改革とみられがちですが、こうしたものもイメージ戦略の所為です。例えば経団連も、たかが数%の消費税が排除されたとて輸出が増大するわけでもなく、効果が低いことは知っています。ただ、これはトヨタ問題が与えた影響であり、米国の意向に逆らうと、米市場で受ける嫌がらせが苛烈すぎて恐れを為したためです。事故前の電話、などがくり返し流されて危険というイメージを植え付けられ、当局からは議会に呼び出しをうけ、追求をうける。米市場で商売をするには、米政府に逆らってはいけないという経団連の判断であり、TPPが本当に儲かる仕組みなら、もっとそう宣伝しているでしょう。
米国では貯蓄率が下がっていること、また所得が下がっていることから、消費の伸び代は多くない。しかも高所得層は20年で200%以上の賃金上昇率がある一方、低所得層の伸びは20%を下回るなど、格差も広がってきている。そんな国と日本は、TPPで制度を合わせ、経済的に密接にならなければいけないのです。TPPに参加すると、日本の輸出以上に輸入が増えることになり、経常黒字も赤字に転じてくるかもしれません。そのとき、初めて日本の債務に着目されることになり、日本にも黄色信号が灯る。TPPがその扉を開くのだとすれば、確かにこれは大きな転換点になりうるのかもしれませんね。

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2011年11月08日

年金制度は大丈夫?

オリンパスが90年代の投資損失を隠し続け、それらを投資助言会社への報酬、企業買収などを巨額に膨らませ、相殺しようとしたことを発表しました。当然、これは粉飾決算ですから上場廃止ですし、監査法人の不信にもつながります。さらにこの仕組みを提案し、実行した指南役の存在も指摘されることから、問題はオリンパス経営陣にとどまらず、当時も第三者委員会がおかれて調査されていたので、そちらの責任という問題にも膨らみます。しかも20年近く、問題を引き継いできたのであり、経営陣のみならず、恐らくOBクラスに対してもかなり捜査の手が伸びることになるのでしょう。

上記にも関係ある話として、年金制度に関して、幾つか話題が上がっています。払い過ぎ主婦年金に対して、民主党が返還を求めない方針を決めました。記事の劣化が著しい読売は、これを有権者の支持をとりつけたいため、としますがそうではありません。元が申請主義であり、制度が理解されていないために起こる問題であり、誰も責任をとらないまま、たとえ返還でも手続きにかかる経費ばかりが膨らむことを、まず制限しなければなりません。返還しないと決めた長妻氏は、かねてより厚労省や年金機構の責任を唱えており、受益者ばかりが損することを容認していません。
つまり、こうしたものは年金機構職員や、厚労省の年金課の人間が損失補填をする必要があります。払い過ぎた分はその補填を、払い漏れで加算して給付する場合は、その手数料などをすべて職員の給与から差し引く。これは当然、暴論の類ですが、複雑な制度にしているために起きている問題で、責任を職員がかぶることになれば、現場から制度の簡素化を求める仕組みが生まれます。制度が複雑で年金機構職員でさえ、違う説明をすることはざらにあります。制度が簡素化されれば利便性が上がるのであり、制度の信用性を失わせたくなければ、現場が使いやすい、受益者が便益をうけやすくすることがまず必要なのです。失敗のツケを現場が負う、となればそれが仕組みとして機能します。

そんな年金の、昨年の運用実績は3000億円の赤字です。13年度からは23兆円の累積でプラスとしますが、年に直せば2兆円もプラスではありませんし、13年度はITバブル崩壊後の最安値付近だったので、それ以前からみると、実質的な運用は1.5%+程度の運用しかできていない計算です。しかも東電やオリンパスは、運用で組み入れていたはずであり、オリンパスの上場廃止は大きな痛手です。
しかも昨年のプラス幅のほとんどが国内債券の上昇分ですから、リスクOnで買われ、債券バブルとも云われる現状が変わると、状況もまた違ってきます。賃金上昇もマイナス、インフレは進まず、年金制度の改正のときに立てた試算と大きく乖離している状況です。給付年齢の引き上げ議論は、この試算が狂ったことから起きていますが、給付年齢を引き上げても制度としては機能しません。

見過ごされがちですが、1次補正で流用された年金への国庫負担分を、3次補正で補填します。しかしこの国庫負担分については、まだ財源が示されていないのであり、安定した給付とは云えない状況です。さらに自民党政権時代から、年金原資は年金行政の事務費に流用されてきました。これは年金原資を早く食いつぶす結果となりました。実に年金とは、行政がつくり上げてきた滅茶苦茶な仕組みの象徴でもあり、ここにメスを入れて抜本改正できないようでは、納付率55%がさらに下がる結果となり、安定しない制度のまま国庫負担ばかりが膨らむ結果となってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:10|PermalinkComments(10)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 年金 | 行政

2011年11月07日

TPP、紛争解決について

ギリシャでパパンドレウ首相が辞任し、与野党の連立政権が誕生します。ただし、2月19日に総選挙を行うことが決まっており、暫定政権です。支援を受け入れるための暫定、と認めているように、もし仮に支援を受け入れた後、緊縮財政に反対する政党が与党になると、またちゃぶ台返しが起きる恐れもあり、メルコジ(メルケル+サルコジというベルルスコーニ首相のつくった造語)が、今から圧力をかけ、そうした行動を抑えるよう働きかけを活発化することになるのでしょう。

TPPに関して今日も議論が活発化しています。どうも支持派の議論が拙いと感じるのは、概念論、抽象論に終始する傾向にあるため、なのでしょう。関税撤廃は世界の潮流、開国しなければ日本は凋落、などの概念的なものは語りますが、実体がない議論に終始します。これは郵政民営化のときも同様でしたが、詳細に語っても国民には伝わりにくい。つまりイメージ戦略で一致しているため、詳細にあえてふれない部分がある、また詳細を語ると内容の不整合をつかれて劣勢に陥るのを防ぐ、目的もあるのでしょう。内容を把握していない、という話もありますが、実際に民主党議員でも賛成の理由がこうした概念、イメージに留まる場合、誰かからの刷り込みと思って間違いありません。
また一部では、大して変化はない、という過去の経緯を語る人もいますが、これも大間違いです。今回、とりあげるのは紛争解決です。これは『協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する手続き』を定めた項です。実はこれがあるため、これまでの過去の外交交渉とは異なり、TPPは強制力をもった内政干渉権をもつ枠組み、として拡大解釈することを可能としています。

つまり公務員が都合よい法律を通しても、この仲裁裁判により敗北すれば、法律を変更して対応せざるを得なくなります。これは解釈論で逃げても同じ、それが参入障壁であったり、投資に不適格なものと認定されれば、TPP域内の公式な裁判に伴い、改善命令を出せる権利を有する可能性があります。これは経済における内政干渉、という理由が上記でもお分かりいただけるでしょう。
しかしこれは日本の硬直化した行政の業務にも、大きく影響します。応札経験がある、などの理由で入札を排除してきた仕組みは、この時点でアウト。国家間で参入させろ、と迫られればイイワケできずに改革を迫られます。実はTPPとは、農業は元より既得権益者に対して、大きな楔を打ち込める外圧によるパワー、という部分があります。その点はTPPに期待できる部分である一方、この裁判漬けにより、日本は非常な不利益を被ることが確実です。

米国のような訴訟大国では、予見性をもって法律や制度をつくることを求められます。日本の、特に官僚制度には司法に守られてきた長い歴史があり、日本の司法は行政を守り続けてきました。また国際紛争に、大統領権限で提出できる米国と、国会で審議の俎上にかけられる日本とでは、仲裁裁判へ提訴するタイミングを適宜得られるか? その点は甚だ不安と云えるでしょう。また国際的に圧力をかけられ、提訴の動きを封じられる可能性を考えれば、この項目があるだけで米国にとっては有利なポジションを占められる。これはTPPに参加する諸外国、例外なくそうなるのでしょう。
上記のように、日本の変革という意味でTPPに期待をかけることも可能です。しかし内政干渉権を付加した時点で、この協定は日本にとって『不利』と断じられるほどであり、これまでの外交交渉、協定とはこの点が大きく異なりますので、変化がないはずがないのです。そしてその変化は、日本が仲裁裁判で敗北をくり返すことで、徐々に国民にも明らかになっていくのでしょう。敗北し、変化を余儀なくされる、という形が良いのかどうか? それを問われることにもなるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:53|PermalinkComments(5)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年11月06日

TPPにおける投資、金融サービスについて

TPPに関連して、国家戦略室に掲載されている資料から、一昨日ふれた部分以外について章としては分けず、見ていきたいと思います。まず環境という項は厄介です。海洋資源保全が含まれることから、サメ、クジラ、マグロ等のいわゆる絶滅危惧種に関して、規制がかかる公算が高いものです。むしろTPPが締結されれば、国際合意をとって容易に圧力をかけてくることになるのでしょう。
労働に関しては、公務員の労働基本権の付与という形になるでしょう。国際労働機関(ILO)からは度々指摘あることですが、争議権、団体交渉権などの権利を、TPPを通じて達成できます。公務員がTPPに前向きな理由かもしれません。さらに労働ビザを発行するなど、移民受入れを強要される可能性があります。そうなると外国人労働者が増え、国内の失業が増える公算が強くなります。

ここからは経済に密接に関係する話です。まずは金融サービスに関しては郵政、共済、農協などの組合による金融サービスまで、統一的に扱われることになります。監視が統一され、例外が認められないことから、政府系金融も含まれるかもしれません。これは保険・金融などによる投資家、保険契約者保護なので、分断して監視されることがおかしいのですが、日本ではこの点に遅れがあります。
これが投資の項目にも当てはまります。国家と投資家の間の紛争解決手続き、が主要議題とされますが、投資家でも国家と争うのはごく少数、即ちヘッジファンド、買収ファンドなどの、大口投資家を対象とするはずです。しかも、投資障壁の撤廃を求めていますから、メディアの外資規制も削除されることになります。また、これは基幹産業だから外資に買収されては大変と、いきなり奇妙な法律をつくったり、といったことは厳に禁止されます。また上場されていない企業、法人に対しての投資、買収が可能になると想定されることから、事業体に対するそうした動きをどう事前にカバーするかは、各々の経営者の手腕が問われるのでしょう。国は障壁をつくれなくなります。

これが日本にとって有利に働くためには、資源関連企業などを買収できることが望ましいですが、ネガティブリストをつくり、それを保護対象とできるようですので、そうはならないでしょう。それ以上に、交渉の過程で参加できない日本は、そのリストがいため、狩場になる可能性が非常に高くなります。このタイミングで参加表明することは、投資に関してはネガティブでしかない状況です。
このネガティブリストは、越境貿易サービス、という項目にも適用されます。これは国家資格など、多岐にわたって変更を迫られる可能性があります。会計士が多国間に、相互に認証をうけるシステムとなるなど、運用面でいわゆるサービス部門を統一的に扱う場合、それぞれの国が設けてきた基準が変更になる可能性が高い。さらに郵便ポストなど、優遇的な措置に対しての固定資産税を求めるなどが想定されます。つまり外資が日本で郵便事業をやりたい、という場合にそれを阻害する要因は排除される、ということです。これはサービス業全般に云えるので、想定される範囲は相当に広くなりますが、前述のようにネガティブリストを日本は提出できないため、マイナスと捉えられます。

上記のように、日本がこの交渉の最終段階で参加しても、得られるものは非常に少ないと云えるでしょう。その代わり失う、変化が必要なものは相当多くなるので、その度に国内法を改正しなければならない。それが好変化をもたらすものならまだしも、マイナス面も多いのです。
歴史の分水嶺、飛び込む勇気を、という言葉が資料にも踊りますが、残念ながらその分水嶺の向かう先は、日本にとっての大転換である一方、それは開国というような生易しいものではなく、売国に近い形にならざるを得ないのでしょう。そして焦土と化した日本が、そこから復興するということなら、これは戦後復興に匹敵するほどの内容を秘めるとさえ云えます。ただし、敗戦から何クソと立ち上がった当時より、分かっていてあえて国益を損なった、という認識が拡がった後では、回復の度合いは大きく異なることになるのでしょう。確かに、中には改革につながるものもあるのは事実ですが、得失を論じると失の方が多くなることだけは、よく認識しておく必要があるのでしょうね。

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2011年11月05日

雑感。G20での野田氏の発言

西岡参院議長が亡くなりました。議長としては異例ですが、菅政権を面罵するなど、国を憂いた行動には敬意すら評するほどでした。スターウォーズのヨーダにも喩えられましたが、1期ではジェダイの暴走に最後まで気骨をみせるなど、その行動にも重なる部分もありました。正論を吐ける政治家をまた一人失ったことは、非常に残念です。ご冥福をお祈りします。
政局的にみると、参院では過半数をもたない民主党にとって、人選が難しいなど非情に厄介です。慣例では政治経験も長く、バランスに長けた第一党の議員から選出されますが、そんな人物が民主党には見当たりません。北沢前防衛相か、江田法相という話もありますが、どちらも野党の合意は得にくいでしょう。輿石幹事長という裏技もありますが、いずれにしろ混乱を生じそうです。

G20が終了しました。ギリシャ問題で振り回されたともされますが、これは今に始まったことではありませんし、今後も続きます。問題はいくら振り回されても、一向に解決策が出てこないことです。
そんな中、野田氏が消費税の10%増税を決意表明しました。「国民の理解を求めながら改革を進めることが必要不可欠」としながら、民主党代表選でもトーンダウンし、確約しなかったことを国際的に発言してしまいました。財務省の振り付けで踊る人形…。最近、野田氏の顔をみると、ヒゲをつけて野田マリオ(ネット)に見えてしまいます。この消費税発言は、まさに国内で通せない話を国際社会に向けて発言し、野田政権の死線におくことで決意を固めさせたに過ぎません。

しかも消費税増税を実施するタイミングで総選挙の実施を示唆しましたが、これは所信表明演説とも異なります。つまり野田氏は代表選から一貫してウソをつき続けた、という形になります。これは党内、野党からも批判の対象であり、理解を求める行動とも異なります。しかも松原国交副大臣の拉致問題担当相就任問題、元公明議員の内閣官房参与就任問題など、難題が山積みです。
この消費税増税は、野田マリオの冒険なのでしょう。上記のように、現行不一致の形になるためその整合性を問われれば、すぐ国会が紛糾します。代表質問でも自民、公明がすでに批判しており、この冒険の敵は野党全体です。しかもTPPも10日に結論と示唆したことから、党内も敵勢力になり敵だらけとなる。ただし、この冒険の結果救われるのはピーチ姫ではなく、財務官僚となります。

安全運転とされていた野田政権の冒険譚は、一度でも死ねば終わりという危険性をもちます。マリオにはヨッシーという仲間がいますが、野田ヨッシー彦にとって、財務官僚を救って得られるのは政権延命ではないのでしょう。恐らく、野田氏は消費税を通した後、総選挙をすれば諦めが先にたち、影響は少ないと考えているのでしょうが、むしろ大惨敗が待つのでしょう。この程度の読みすら、財務官僚の目に晦まされている時点で、野田マリオの政治センスはないと断言できるのでしょう。
ヨーダの振るった正義の剣がない今、この野田マリオの幕を引けるのがカメ(井)さんなのか、タニ(垣)さんなのか? ただし、自民も衆院の土地を使用していた問題が持ち上がっており、この国には正義の志士と呼べる人材が少ないのであり、この冒険譚でどこに肩入れして良いのか? それに悩むことになり、そのこともまた国民にとって不幸なことなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:42|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2011年11月04日

国家戦略室のTPP資料について

TPPに関して、国家戦略室にある資料が詳しいので、少しここから引用して考えてみます。まず11月に交渉参加を表明しても9ヶ国の同意が必要で、米国では90日かかるとされるため、11月のAPECで表明しても2月半ば、と書かれています。つまり交渉の3分の2は終了しているタイミングで、日本は参加することになります。しかもオファー、リクエストを繰り返して進められる交渉ですから、正味4、5回オファーを出せれば良い方で、実質的な交渉過程には入れないと推定されます。現状の交渉過程も聞き取りなので、この資料が絶対ではありませんが、政府の懸念はある程度示されています。

原産地規則では原産性の証明を自己証明としていることから、どこで作っても日本産と表記できることになります。また部材ごとに原産国が違う場合も、一国に限定できるようですので、原産国が不明という事態が起きかねません。
貿易円滑化も、窓口一本化は示されますが、日本のようにハブ港、ハブ空港がない場合、手続きの簡素化が進むかは不明です。電子証明は有利に働く可能性があります。
衛生食物検疫では、日本が輸入牛肉などにかけてきた規制が、影響を受けるのが確実です。口蹄疫、BSEなどの規制が米基準になると、発症前に屠殺して食肉にしてしまえば良い、という基準になるかもしれません。日本は厳格、米国は緩和的という形なら、米基準が適用されるのでしょう。

貿易の技術的障害、という問題はもっと深刻です。規格の統一により、例えば通信規格なども国際標準が適用される可能性が出てきます。これは国内でさえ、不統一の状況であり、技術的問題が顕在化する恐れも出てくるでしょう。政府は遺伝子組み換え大豆の問題を指摘しますが、その程度で済むはずもなく、貿易上障害となる技術的なものは、山ほどあると云って良いのです。
セーフガード措置は、唯一産業を保護することができる、一時的な関税措置ですが、むしろこれが発動されるとダンピング問題として認定され、外交上の圧力を受けることになります。事前通報などの制度も、厳密に運用すると交渉材料にされかねないので、運用は慎重にならざるを得ません。
政府調達の場合、防衛産業にはこれまでもねじ込まれてきましたが、外国企業を商社のように仲介して、物品調達を進めるよう迫られるでしょう。日本のように巨大な政府、政府調達が財団法人などを通して行われている国は、それを悪用される恐れがあります。

知的財産では、すでにアマゾンの電子書籍で問題になっているように、日本は著作権の管理を出版社がもっていない、など諸外国との違いがあります。ロイヤリティも55%を要求するアマゾン、といった形で問題が出てくるでしょう。
競争政策は公的企業、指定独占企業(日本で言えば独法?)の統一基準が検討されている模様で、唯一日本にとって改革が進められる、と期待する部分ではあります。ただし、米国とて保護的に扱われる産業があり、この部分で妥協は困難でしょう。

上記は項目ごとに示しました。まだ項目は残っていますが、金融サービス等は経済を語るとき、追追ふれることにします。ただ現状、これだけの問題点があり、またその交渉過程に入れるか不明な現状で、内容を聞いて「ハイ、やめました」では済まないことは確実です。今から参加しても受け入れるだけ、という覚悟を決めなければ参加の決断はできません。ただ野田首相は、消費税10%を国内議論も経ず、国際公約してしまうように財務省の操り人形であり、内容もよく分かってはいないでしょう。
しかも、その公約が選挙公約の「消費税増税前に選挙」ではなく、「可決してから選挙」ですから、もし選挙で負ければ、可決した法律を止めるための法律を作れ、ということなのか、理解に苦しみます。TPPにしろ、野田氏の首は太くてもよく回るようですが、国民は首をひねることも多くなりそうです。その首がつながっている限り、国民のこうした疑問は解消されないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:31|PermalinkComments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2011年11月03日

米FOMCとギリシャ

東電でキセノンが検出され、自発核分裂により放出されたもので、部分臨界ではないと発表されました。ただしこれは一週間前から圧力容器内の気体の検出を初めて、改めて確認されたものであること、メルトスルーが起きていれば炉内にどの程度留まっているかも分からず、また水は建屋内で循環しているため、キセノンが放出されている総量は正確につかめていません。この段階でそう判断しても、冷温停止にむけた日程を優先しているようにしか見えず、不審が募ってしまいます。
東京が被災地のガレキを受け入れましたが、放射線量の計測を18回行なったとしますが、サーベイはすべてかけなければなりません。抜き取り検査では、放射性物質の存在を確認したことにはならない、これは放射性物質の考え方の基本のはずです。白い防護服を着た人が管理区域から出てきたとき、全身を測っているのはそういうことです。今回、岩手のガレキで線量はないとされますが、今後ガレキ処理には、この放射性物質の有無が最大のネックになってしまうのでしょう。

ギリシャの国民投票は、歳出削減への賛否ではなく、ユーロ圏離脱という大枠にして実施されるようです。財政破綻しても、ユーロに留まることは可能なはずですが、ユーロ圏という虚か、緊縮財政を受け入れるという実か、どちらかを迫ることで国民支持を増やす狙いです。しかしパパンドレウ首相自身の指導力を問われており、内閣不信任が優先されて解散に至れば、緊縮財政を否定する政党が勝利する可能性もあり、国民投票ではなく総選挙が決議の場になる可能性もあります。政局絡みの話が広がると、逆に支援もしにくくなりますし、さらに破綻懸念も強まってしまうのでしょう。12月半ばには100億ユーロを越える債務借り換え資金が必要ですが、そこが一つのターゲットです。
米国ではFOMCが開かれました。ノーイベントで通過、2012年の成長見通しを2.5〜2.9%とし、前回の3.3〜3.7%から下方修正しました。失業率の低下も緩やかに変更し、一先ず緩和にむけた政策の自由度だけは確保した形となりました。為替、債券も市場は反応薄で、評価はできなかった。緩和を訴えたのがエバンズ総裁一人、というのも計ったような行動で、緩和に含みをもたせました。

米国でも財政赤字削減にむけて民主党は増税、共和党は税制改革、医療保険関連などの歳出削減、で1兆2千億$の歳出削減策を11月23日までに合意する必要があります。これは日本にも関係する話です。TPPに関して、米国では医療・保険制度の米国基準を、各国に適用させて米企業の進出を促す、という文章が確認されています。つまり共和党案が通ると、米国の歳出削減に向けて改革された医療保険制度を、日本も導入させられる懸念があります。政府はそれがTPPの議題であることを否定しますが、米国が主導した話し合いである以上、TPPにはこの制度改革が含まれる、とみて間違いありません。
日本とて社会保障制度の改革が訴えられますが、米国とはまったく異なる制度であり、米基準に合わせると混乱する恐れが強いです。また元々米国では社会保障は企業負担といった意味合いが強く、国民皆保険の思想はありません。外圧で改良されれば良いですが、改悪になる公算が強い場合、日本が主導して制度設計しなければなりませんが、今の力関係では到底それはムリでしょう。

米国の財政再建議論が、日本にも波及してきてしまう。それがTPPです。同一制度を適用すれば、こうして一国の都合で制度を変えることも難しく、逆に米国が制度改正するごとに巻き込まれる。世界で統一した制度を適用することには利点もありますが、それこそギリシャと同様、一国のワガママで世界が振り回されるのが必定です。しかもその振り回し役が、大国である米国なのですから、束になってかかっても敵わないのが現状です。様々な制度、国の形が異なるのに、制度だけを統一しようという考え方がそもそもムリ。この考えを基本にもたないと、今我々が目の当たりにしているユーロと同様の失敗を、TPPは繰り返すことになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:54|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 欧州

2011年11月02日

雑感。2つの裁判の話。

ギリシャ国民投票問題が、世界の株安を招いています。パパンドレウ首相にとって与党議員の離脱など、力が弱まっていることに加え、国民の支持もないとなれば、政治的な力を失ったも同然です。国民投票は最後の賭けです。ここで可決されれば緊縮財政に向けて大きな前進となる。しかしギリシャでも99%の慎ましく生きてきた人間にとって、財政を痛めたのは自分たちではない、との意識があることから、当然否決の可能性が高い。そこで各国も慌てて独仏ギで会談をセットしました。
国民投票の前に内閣信任案が議論されますが、仮に不信任となると、それも政局混迷のリスクを抱えます。国民から支持を得やすい、EU支援策の拒否を訴える政党が力をもっても、同じことが起こります。ECB理事会も開かれますが、ここで利下げになればユーロ安を招くでしょう。今、為替は円/ドルが78円前半で張りつき、ユーロも107円台です。ギリシャの動き次第では、このECB理事会も荒れる可能性があり、その動向を注視しておくべきではあるのでしょうね。

福岡の飲酒運転により、子供3人が死亡した事故において、最高裁が危険運転致死傷罪を認めた2審の判決を支持し、上告を棄却しました。この裁判では、事故を起こした要因が脇見なら、業務上過失致死に飲酒運転という道路交通法違反が付与された判決になり、1審では7年6ヶ月。2審は飲酒が主因として危険運転致死傷罪で20年の判決でした。1審の判決に違和感があるのは、脇見の原因が飲酒による注意力散漫だった場合は、結果的に飲酒が問題ではないか? ということです。それに、この被告は事故後逃げ、現場に戻る前に友人にもってきてもらった水を飲むなど、隠蔽工作ともとれる行為をしていることからも、飲酒を主に議論を進めなければならない事件でした。
最近ではあまり話題になりませんが、飲酒を証明できないと危険運転致死傷罪の適用が難しい、など運用上の問題を抱えつつ、飲酒に対する厳罰化をすすめてきた流れがあります。昨今でも、飲酒運転で事故を起こす。または逃げる、など飲酒しての運転が横行しており、大審院判例として飲酒運転の適用が拡大されたことは、大いに好影響を与えることになるのでしょう。

一方でパチンコ店放火殺人事件で、絞首刑の残虐性が問われる裁判が大阪地裁でありました。命を奪う行為のみが残虐、という考えに囚われると、死刑全体が残虐という話になりますが、刑罰はすべて残虐で非情です。生きていれば…と考えるのは勝手な思い込みで、夢や希望を絶たれてただ生きることは、やはり苦痛だとさえ云えます。ベンサムは刑務所の待遇改善を訴え、パノプティコンを提唱しましたが、そのことにより最大多数の幸福を成し遂げようとした、功利主義者です。
しかし彼は同時に「社会に対して有害な行為をした者に、さらに大きな苦痛を与えよ」つまり『制裁』による、犯罪抑止効果も訴えました。あくまで刑罰は厳罰にした方が、最大多数の幸福を成し遂げられる、としたのです。残虐性の問題は、事件の残虐性を鑑みて軽重を語れる話であり、殺す気はなかったとしても、殺してしまったという残虐な事件として、この2例は受け止める必要があります。後部から車に追突されて、川に落ちて沈むときは、絞首刑よりも残虐と云えるでしょう。放火されて焼き殺されれば、それは語る必要もありません。
未だに死刑反対論者が、このような個別事案で『残虐性』などの戦略を打ちますが、少なくとも感情論で刑を左右するようでは、人に頼った判断が強まる形になり、裁判官で刑罰の軽重が変わってしまうことの方が、より問題あるとしないと、裁判が長引くだけの弁護士の戦略に付き合うことになります。それもまた、最大多数の幸福とは云えない、手前勝手な議論になってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:12|PermalinkComments(8)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 司法 | 社会

2011年11月01日

ドジョウと冷めたピザとライオンハート

ギリシャのパパンドレウ首相が、財政赤字削減における国民投票を実施、と表明して欧州債務不安が再燃しました。ギリシャ国民の大多数は、慎ましく生きてきたのであり、政治家や富裕層がムダ使いし、そのツケを払うために緊縮財政を押し付けられている、という意識があります。それがデモ、暴動に繋がりますが、この国民投票で否決されるとEUからの支援が受けられなくなり、ギリシャがデフォルトします。ギリシャ国民にとっては、通貨ユーロの枠組みにいる限り、国債暴落によるハイパーインフレの懸念はないので、さっさと破綻して出直せば良い、と捉えられています。
米証券会社MFグローバルが破綻しました。欧州国債への積極投資で失敗、3兆円以上の負債を抱えての倒産です。GSで債券担当だった人物が招かれてから、ミニ・リーマンと呼ばれる積極投資の結果、投資資金の引き上げがおき、短期資金が回らなくなりました。こうしたことも、欧州債券への投資を手控えさせ、伊国、仏国などの国債は再び上昇気配です。ギリシャが仮に否決すると、これまでEFSFを通じて支援した資金すら扱いが難しくなる。ギリシャ国民投票の日程は、まだ未定ですが、今年から来年にかけての安定、という絵はすでに描きにくくなってしまったのでしょう。

園田政務官が、福島原発の処理水を飲む、ということを行いました。フリージャーナリストが追求した処理水を敷地内に撒いている。安全性は大丈夫か? との問いに答えたものです。この水は低レベルの放射性物質を含んでいますが、仮にミネラルウォーターで偽装したにしろ、充分に検査した上で飲んでいるので問題は出ないのでしょう。しかし敷地に撒き続けると、その場で濃縮されて線量が上がるので、逆にそこをチェックして雨水による線量の上昇についての知見を得た方が、余程有益とさえ云えます。今の問題は、検査もされていない場所、食べ物、飲み物に対して抱かれる不信であり、これは食品の基準を年間1mSv未満と定めても、拭えないものとなっています。
小渕優子議員が代表質問で「ドジョウと冷めたピザには天地の差」と述べました。地味さ、低姿勢が小渕恵三元首相に似ている、と揶揄されることへの反発です。しかしこのドジョウが泳いでいるのは『オブチ』という沼ではなく、『コイズミ』という池です。小泉政権が財務省、米国と密接に結ぶことでメディアとも良好な関係を保ち、高い支持率を得たことは指摘されますが、野田氏はこの小泉政権を真似る形で様々な政策を実行し、日本を導こうとしている形が鮮明です。

その一つがTPPですが、個人的に人事院勧告を無視した公務員人件費の7.8%削減、も含まれると見ています。公務員に不利益な策を推進するときは、必ず対日要望書の存在が危惧されます。そもそも、増税に向けた国民理解を得るための策、であれば議員歳費の削減が必要です。所信表明演説では、首相は3割、大臣、副大臣は2割の給与を削減としていますが、議員歳費にはふれられていません。つまり野田氏本人としては、公邸に住めて給与も上がった形であり、3割減でも従来よりは減っていない形です。しかもみんなの党の渡辺氏が指摘したように、国からの発注が一定水準を超えているような独法の役員給与を抑えても良い。天下りの基準を変え、渡りは天下りじゃないというような説明で乗り切れば公務員優遇との批判も再燃しますし、それこそ第二のギリシャになります。
ドジョウの泳いでいる『コイズミ』という池は、透明度が低くて澱んでいます。人が泳ごうとするとねっとりまとわりついてきて、不快である一方、拭えずいつまでも付きまとうような代物です。一度財務省、米国と結んだからは、ここを切ることはもう出来ないのです。前原氏が外国人労働者の受け入れに前向きな姿勢を示しましたが、タイの洪水におけるタイ人労働者への一時的な労働ビザの発給なども、前原発言の前哨戦としての準備段階、と捉えることが可能なのです。ドジョウが泳ぐその池が底なし沼のように、日本を奈落へと導くのか? ここ数ヶ月がカギを握るのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:23|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般