2013年02月

2013年02月28日

安倍首相による施政方針演説

安倍首相による施政方針演説、所信表明とちがって、長文になりましたが、中身はこれまでの政権と変わらず、そこに安倍政権らしいスパイスを盛り込んだ、というところ。ただ成功事例をあげて、見栄えをよくする手法で冗長さを増したとも言え、重要な点は三点に絞られます。

経済面では、デフレ脱却にふれたのが一箇所。しかも、産業の空洞化の問題の箇所であり、そこにエネルギーの安定供給とコスト低減、の対策として原発再稼動に言及しました。論旨が破綻していますが、有効需要がないためデフレに陥るのであって、産業の空洞化も国内の需要低下にともない、海外の需要に頼るため工場を移すのです。では、需要を生みだす対策は? 特にありません。しかもコストの問題があるなら、賃金上昇を企業に要請すること自体、本末転倒です。
公共工事で無理矢理、仕事をつくったとしても、安倍政権でもすでに公共工事によるバラマキは長期的ではないと言明しており、一時的な需要なら職の安定にはつながらない。受身ではなく、ルールを創る国になる、と述べますが、だとすればTPPに参加するのではなく、それとは違う枠組みを目指してもよかった。TPPはフォーマットの決まった内容であり、日本が関与できる割合は低い。テクニカルな項目について、勝った、負けたを論じている時点で受身だといえるのでしょう。

さらに『世界一安全・安心な国』と述べますが、少し知恵の働く犯罪者がいれば、海外の組織と提携し、国内で日本人を誘拐。直接、国と身代金交渉する。断れば殺し、次を誘拐する。身代金の受け渡しは海外の組織、というルートを構築すればやりたい放題に犯罪ができます。それが『人命優先』国家の宿命です。テロリストに対し、人命優先などを掲げた時点でつけこまれる。それを安倍政権は分かっていません。私は今、日本人が未曾有の危機に陥っていると危惧しています。
さらに6年前に成立した教育基本法を挙げ、教育再生を訴えますが、その間にも起きているイジメ、教育界の責任放棄体質など、何をもってその基本法の優位性を唱えるか? が問題です。基本法は、あくまで大枠なので、細則は別の法律というのかもしれませんが、それとて中身の解釈論で変えられるとは思えず、実際に何をするかは6334制の見直しぐらいで、何をしたいか伝わりません。

総花的で、それでいて成功体験を並べる施政方針演説に、今や中身を期待するのは酷なのかもしれません。しかし矛盾がたくさんある点は、それだけ政権の力不足も露呈するのでしょう。例えば日本が、海外にもっていくカバンに詰め込む商品はある、として強い農業を訴えます。世界で豊かな人が増えれば…という前提で、人気が高まるとします。世界は今、未曾有の失業率に苦しんでおり、前提自体が間違っているのですから、その場合は安価に提供できる仕組みを構築する、としなければなりません。ただそうすると、薄利多売で農業関係者によく思われないから、と脚色しました。
こうした、虚飾を用いている限り、安倍政権の訴える施策に、実はありません。外交では、日米同盟を殊更訴えることで、若い層に『日米同盟は必要』という幻想を与え、今後もパックス・アメリカーナとしての日本を印象づけよう、という意図も透けてみえます。貝原益軒の故事をひきましたが、安倍氏にこそ問いたいのは、清新だった6年前の初心を忘れてしまったのではないか? ということです。官僚と財界と、それに米国と仲良くやっていくことが大前提なら、それこそ安倍政権は『期待に働きかける』虚飾でしか評価されない、ということになってしまうのでしょうね。

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2013年02月27日

雑感。政局について

高額消費が活発、という話があります。これを安倍ノミクスの効果、とする向きもありますが、それは異なります。これまでは消費税増税など、できる経済環境ではないと高をくくっていた層が、増税がみえてきたことから、上がる前に駆け込み需要を喚起しているのです。さらに円安で、輸入物価の高騰も懸念されるため、海外ブランドは今のうちに…との思惑も働くでしょう。効果といえば、効果かもしれませんが、これが一時的ならマイナス面の方が大きい内容だと云えるのでしょう。

伊選挙でも示されたように、既成政党への不満が五つ星運動の躍進につながりましたが、日本で同様のポジションにいる維新は、どうも動きが奇妙です。党首の個性が際立ちますが、維新は議員団と橋下共同代表との間に、大きな溝があります。そして仮に、橋下氏が参院選で出馬しても、その溝を埋められるか? 恐らくこれは難しいでしょう。政治としての経験も、力もない橋下氏が、イニシアティブをとれるような環境では、最早なくなっているというのが実相でしょう。
太陽がまぶしいから、と庇を貸したら母屋を乗っ取られ、離れで大阪維新はお粥をすすっているような状況です。脱原発の旗も下ろし、国政における政策はすべて太陽の党を基準としており、今から橋下氏が乗りこんでも、それは変わりません。つまり衆院選前の維新と、今の維新はまったく別物、それどころかその旗の下には、民主党より分裂気配が漂います。それでも勢いのあるうちは、離党など起きません。民主も同様だったように、勢いが衰えると名を捨てて実をとる人間が増え、四散していく運命にあるのでしょう。今の維新は、ただの自民補完勢力に過ぎなくなっています。

国民新党は、自見代表一人となりました。亀井氏を追いだしたときから、これは規定路線であり、自民への復党願いなど恥も外聞もありません。少なくとも一年は冷却期間をおかないと、与党から与党への渡りは難しい。しかしそれでは参院選に間に合わない。国民新は、郵政というシングルイシューで戦っていけなければ、もう役目は終わりです。浜田氏や野間氏など、自民や民主をとびだした経歴からも、受け入れ先は少ない。時宜をえない限り、どこか拾ってlくれる党もないでしょう。
与党ボケした民主も同様ですが、メディアの総安倍政権賛美に、野党も腰がひけている傾向もあります。一方で、国民新や維新のように、虎視眈々と自民党に色目をつかう党もあり、政局が自民一色に染まっている。これでは政策の点検もできませんし、議論もすすみません。補正予算の成立をうけ「決められる政治」だ、と安倍氏は述べますが、決めていい政策かどうかさえ、議論されていない政治になっています。伊選挙の結果は衝撃ですが、今の日本政治状況はもっと衝撃的です。

維新という言葉は「すべてが改まる」という意味をもちますが、確かに日本の政治は、そういう状況です。野党とよべる党がなく、総与党というこの状況に、参院選がどう影響してくるのか? むしろこのまま政治が「何でも決めてしまう政治」になったとき、その後でくる不都合に気をつけておかないと、駆け込み需要で喜んで事業を拡張してしまうような甘さでは、生き残れない時代がくるのかもしれませんね。

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2013年02月26日

イタリア選挙と市場

補正予算が、参院で賛成117、反対116で可決されました。しかしこの補正予算の内容で、大したチェックもなく通ってしまうのですから、今の国会のレベルの低さは、残念ながら筆舌に尽くしがたいものがあります。生活の党の藤原氏が「復興が…」と、棄権の理由を述べていますが、この補正が通って公共工事が実際に動きだせば、東北の人手が足りなくなり、逆に復興が遅れてしまいます。

伊選挙は衝撃の結果でした。選挙制度の違いによって、下院は緊縮派の中道左派連合が多数を握りましたが、上院はどの党も過半数をとれず。しかも後半、中道右派連合や五つ星運動の支持がのびたため、再選挙をすれば反緊縮派が多数をにぎることが確実です。しかも、中道左派と中道右派が手をむすぶと、恐らく緊縮型の政策はとりにくい。これに伴い、世界の株式市場は調整含みで、為替は一気にユーロ安に向かいました。極端な楽観に、一部で巻きもどしを迫られた形です。
実は、欧州で起きていることは複雑です。ESMやLTROによって、確かに金融機関は資金繰りが楽になりましたが、企業の資金調達は二極化しています。独仏などの財政が安定している国と、南欧では利回りに2%以上の開きがあり、調達手段も限られている。これにより、企業は益々雇用を手控え、余剰労働力の観点からも賃金を下げている。そこにきて増税で生活が苦しく、それが諸に結果として現れた形です。つまりESMやLTROがあっても、市民生活は一向に楽にはなっていないのです。
国や金融機関の破綻はなくとも、市民の不満は溜まる。さらに、汚職や政治家の醜聞が重なり、既成政党離れがすすみ、そこに平均年齢31歳の五つ星運動へ、票が集まりました。これは日本の状況に似ますが、異なるのは日本はすでに政権交代を行い、失敗したということです。しかし伊国にとって、マイナス成長と政治不信による影響に、国民が嫌気がさしていることが今回の結果であり、これは緊縮財政で苦しむ他国に、伝播していく可能性がある。それを市場も警戒しています。

日本の株式市場に少しふれておくと、昨日は12000〜12500のコール市場にポジションを組んだ層が多く、それが今日一時的にしろ、11500円にもどした原因と考えられます。4Tickも下がると、流動性が失われて処分も難しくなる。ポジション調整が覚束なくなる恐れを、先物の自己売買で解消した、といったところでしょう。さらに難しいのは、需給で上がる相場は、需給関係が悪化すると売り込まれる懸念があるため、大きな調整局面を迎えにくい。どこかがムリをしている相場なのです。
黒田総裁とTPP参加で一段高、ともされますが、以前もとり上げたように数量ベースの輸出は減っている。円安でもこれは変わらないですし、むしろ欧州がユーロ高で苦しめば、回り回って日本の輸出はさらに減少する恐れがある。その懸念をさらに強めたのが、伊選挙なのです。緊縮財政路線を見直すと、さらに国債利回りが上がって、企業は苦しくなる。国民は増税苦からは逃れられても、仕事もなく生活苦は続くかもしれない。それは益々、マイナス成長を強めることになるのでしょう。

日本は安倍ノミクスという壮大な実験期間に入りましたが、伊国はユーロ圏の中で、財政不安を抱えながら、財政出動にともなう拡大経済という路線に入るのか? そしてそれが、ユーロ圏の崩壊という局面まで導くのか? 欧州の情勢は、日本で語られるほど安定はしていない、ということを肝に銘じておくべきでしょう。それは景気低迷に転換点がみえない限り、そうなってしまうのでしょうね。

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2013年02月25日

日銀総裁人事と市場と支持率

日銀総裁人事に関して、黒田アジア開発銀行(ADB)総裁を提案する方針が固まりました。副総裁には日銀理事の中曽氏、学習院大学の岩田規久男教授で、財務省OB、日銀、民間とバランスをとった形です。総裁人事は、飲み物のオーダーに似ています。無糖(武藤)か、ブラック(黒田)か、ロックのダブル(岩田規、岩田一)なのか。注文の仕方は変ですが、このオーダーによって買える飲み物は、甘くないし濃い、という意味も含まれます。市場には大甘ですが、現実にはビターです。
今回の手法でも分かるのは、安倍氏は人事において利権団体双方に、それなりの配慮をみせるということです。経済面は財務と経産の双方を、産再会議や経財諮問会議などに入れ、意見をとり入れる。日銀人事は財務と日銀、それに民間の組み合わせで、調整したように見えます。しかしそれぞれをみると、財務も経産も利権と天下りポストの拡大でほくほく、日銀はリフレ派で占められ、緩和的な手法をとって、財政を痛めず景気対策を打てる、体のいい財布を手に入れたようなものです。つまり、経済よりも官僚にとって、かなり優しい内容を伴っていることになります。

一方で、安倍政権の支持率が上がり続けることが話題です。しかし、TPP参加で財界の意を汲み、官僚にこれだけ利権を準備すれば、批判がないのは当然です。むしろメディアは、そうした意志の代弁者でしかありません。最近、原発再稼動反対や、TPP反対を主張する論者はついぞテレビや新聞でも見かけません。それは広告主のウケが悪いからで、キャスターやコメンテーターは横並びで賛成です。そうしないと、テレビにも出演できませんし、意見を主張することもできない。そうして一億総賛成、という民意がつくられていく、今はその壮大な実験の過程にある、とさえ云えます。
どうしてそうなったか、は簡単です。メディアの発行部数、視聴率も伸びないどころか凋落の一途で、見てもらうための媒体から、広告主のための媒体に変わった。正論やしっかりとした分析に基づくものではなく、広告主が喜ぶような記事作り、番組作りになった。そしてそんなメディアに頼っているから、今の安倍内閣の支持率となります。しかし、これが国民の実態か? というとそれもまた異なる。それは世論誘導している側の調査であり、野田民主の選挙による大敗を見る限り、過去の選挙結果とは大きく異なることが示されており、それは支持率によっては計れません。

問題は経済です。今は市場が上がります。これは楽観ムードが支配し、いいニュースには上昇圧力があり、悪いニュースは無視します。それも米国で日本株ETFの投信設定が活発とされ、資金が流入している市場は需給要因で上がりやすい面があり、さらに先物などの取引が多いことも特徴です。一部では「安倍ノミクスは期待に働きかける」と云われますが、言い方を替えるとそれは「バブル」です。
バブルは需給で上がる。実体経済、ファンダメンタルはあまり関係ありません。企業が円高対策をすすめた結果、今となっては自動車産業ぐらいしか、業績に貢献しなくても関係ないのです。では、その期待が剥落するのはいつか? それは支持率の下落と同期するのでしょう。逆に云えば、高い支持率の間は市場にも好循環が働くけれど、危険水域に入ったらマイナス面が加速するのです。

ただ今回をみても、日本ではバブル礼賛者が多くいる点で順調な調整がしにくく、落ちるとどん底、浮かれると天井なし、かつての状況も想起されます。甘くないし、濃い。それを忘れて今は楽しい気分で飲んでいても、悪酔いして中毒になる日がいつかくるでしょう。そのときもまた、いつかのバブルを懐かしむのなら、日本の市場はいつまでも成熟度が低いままになってしまうのでしょうね。

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2013年02月24日

雑感。民主はどうなる?

昨日、書き漏らしたことを少し。日米関係を考えるとき、ロン・ヤスと呼び合った中曽根首相の時代が、よく引き合いに出されます。非常に良好な日米関係、ともされますが、その頃から米共和党系の、いわゆる知日派が日本へと大挙して押しかけ、自民、財界と太いパイプを結んだ経緯があります。そのため、日本の政界、財界、メディアなどはどちらかと云えば、共和党寄りの主張をします。
なぜオバマ大統領が安倍氏を嫌うかと云えば、主張で折り合えない以上に、自民を政敵である共和党系の団体と見なしているからです。これはもう、そういうものだと諦めるしかなく、自民が今から米民主と上手くやるのは不可能なぐらい、意見の相違は大きいのです。逆に、オバマ氏がビジネスライクであった点が、今回の日米首脳会談にも現れます。実利をとれるなら会う、ということです。

日本の民主党は、もう党の体を為していない状態です。参院から二名の離党者をだし、さらに離党予備軍がうようよいる、とされます。今日は党大会でしたが、やっと決まった党綱領でさえ、解党にむけた宣言かと間違えそうなほど、寒い内容です。参院で比較第一党、という肩書きも虚しく、野党のとりまとめさえできない事態です。メディアであれほど「決断力がある」と持ち上げられた野田氏は、今や党を壊したA級戦犯で、メディアはふれることさえタブー扱いです。つまり野田氏をとり上げると、自分たちが誉めそやしていたこと、20%以上の政権支持率を維持していたことと、選挙結果に整合がつかなくなるため、ほとぼりが冷めるまで無視を決めこんでいるといった状況です。
民主は三分裂する、と専らです。組合系、保守系、その他ですが、保守系は、いわゆる維新、みんな、自民との合流をさぐるといったところ。組合系は社民と合流、という話もありますが、弱者連衡では次の選挙も厳しい。そもそもケンカ別れしたところは、いくら永田町でも仲直りは難しいのです。よほど強みでもない限り、それはありません。恐らくここを狙っているのは生活と未来です。生活は、対等合併ではなく、合流という形で党勢拡大をめざしたいところで、未来も国政の足がかりをつくりたい。ただ、未来は国政において一つ選挙弱いとの汚点をつけたので、この判断もあります。

そして、解党の仕方も問題となってくるでしょう。野田政権は、党のカネを握って離さなかったのですが、今の執行部は海江田氏がトップです。分党ではなく、離党という形をとるなら、海江田氏が党のカネを握ったままでの分裂です。そして旧鳩山グループとして、小沢氏に近かった海江田氏にとっても、名を捨てて実をとるなら、そのカネをもって生活との合流になるのかもしれません。
いずれにしろ、支持母体は選挙区ごと、団体ごとに対応を変えるでしょう。それは政権政党を目指せるような党でないと、ついて来ない、という意味です。三分裂ともされますが、個人的には保守系の離党、生活や社民の合流という形で、野党第一党にならざるを得ない、と考えています。どういう形であれ、メディアが支持する、支持率が高い、などとメディアが政権をいくら称える報道をしても、選挙の結果がまったくその通りにならないことを、実験的に示したということが、民主が政権をとって唯一残した結果、でもあるのでしょう。民主が、自民に対抗するなら米民主と協調し、政治としての対立軸を考えていくような体質にならない限り、自ずと消滅は避けられないのでしょうね。

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2013年02月23日

日米首脳会談、メディアは高評価でも…

日米首脳会談をうけ、各紙一斉に『TPP交渉参加へ』の見出しで夕刊を発行しました。ここまで露骨だと、準備されていたとみて間違いないですし、隠す気もないのでしょう。結論から言えば、今回の成果はただ一つ『日本原案がベースになった共同声明が出せたこと』のみです。これが分かるのは『一方的にすべての関税撤廃を予め約束するよう求められるものではない』の部分で、requiredと受身になり、日本が主体になっています。これがrequireなら、米国が主体で文面がつくられています。
しかし前段で『すべての物品が交渉の対象』としていることからも、これは例外品目を認める内容にはなっていません。上記の文面を、少し変えると『一方的ではない関税撤廃を予め約束するならいい』もしくは『…求められるものではないが、結果としてそうなることもありうる』です。つまり日本が交渉で負ければ、すべての物品が関税撤廃となりますし、そうでなくとも内々に妥協することもある。むしろ玉虫色どころか、かなり日本にとって敗戦処理のような文面になっています。

それが分かるのは、最後の文面で『残された懸案事項』として、自動車部門と保険部門を掲げています。懸案とするのは米国側であり、日本が主体であるなら、本来は農業部門も入るはずです。つまり日本はこの部分に、米国に配慮して対応します、と述べているのです。つまり関税が撤廃されても、販売価格をわざと上乗せし、米自動車業界の要請に応えることが含まれるのかもしれません。
しかも、最大に重要なのは『2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していく』という文面です。この『TPPの高い水準』は、後段においても出てくる、二度も現れることから、これが重要であることは日米も認めています。その『高い水準』とは、大枠合意した「関税撤廃と非関税障壁を撤廃」が入るのですから、例外品目が入った時点で、それは高い水準ではなくなります。この一文を無視して、not requiredから、例外品目が認められたと書き立てる大手メディアは、明らかに正しくありません。

しかも日米会談は円満に、友好的に終わったという印象を国民に植え付けようと腐心していますが、今回は晩餐会がない。通常、大統領でなくとも国務長官当たりが開くものですが、今のケリー氏も日本には無関心。昼食会をまたいだから、それでいい、などというのは論外です。つまり米国は、どうしても…、TPPに参加するから…、という日本側の要請で、渋々会談をうけたのです。
さらに、安倍ノミクスが支持された、などと書くメディアもありますが、オバマ氏の発言は「日本国民が評価」です。米国としては感想を述べてはいないのです。これは強烈なバブル政策を現時点では、いいとも悪いとも云わない、という態度で、まだ成功するか、失敗するかを見極める段階だ、ということです。そしてこれは、TPPでも同様、日本のメディアは例外品目が認められた、と騒ぎますが、米国が他のTPP参加国に聞かれれば、例外品目を認めた覚えはない、と突き放されるでしょう。つまり日本国民は、メディアのうそを信じていると、海外の見方が分からないのです。

これでTPP交渉に参加し、いざ議会を通りそうもない、となればメディアは一斉に『国際的な責任を無視するのか』『日米同盟に亀裂が入る』と騒ぎ立てるのでしょう。自分たちが誤った記事で国民を誘導しておいて、国民が意に反して行動しようとすると、脅しをかける。2030年原発稼動ゼロ、の方針も見直すことを安倍氏は約束しましたが、まさに原発の稼動と同じ態度をとり、今回もメディアは世論誘導をかけるのです。記者から促されないと握手すらしようとせず、しかも安倍氏が一生懸命さしだした手を、オバマ氏は鷹揚に握り返しただけ。それが今回の日米首脳会談のすべてです。参勤交代、臣従どころか、媚態を示してまで関心を買いたかった安倍氏にとって、強い日本とは何か? そう問いたくなるほど、今回の会談は屈辱的だったと断じられるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:55|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アメリカ

2013年02月22日

雑感、外交姿勢。

某メディアでは、米メディアが日米首脳会談に関心、という記事を載せています。しかし米政府の扱いは低く、リアリストとされるオバマ大統領にとっては、何を手土産にするかしか、関心がないようです。辺野古移設にむけて埋め立てを申請、という話もあるようですが、TPPにしろ下手に米国とトラストミーして口約束を結んでしまうと、まさにいつかの政権の二の舞になります。
特に、今の米民主党にとって安倍政権はあまり好ましくない。穿った言い方をすると、安倍ノミクスで株価は上がっても、米国でもバブルに兆しが出るなど、極端に楽観にふれ過ぎると、逆に米国は引き締めにならざるを得ない。それならマイナス、と判断されます。例えばこれが、米共和党なら新自由主義の思想が強く、好感されていたことでしょう。しかし民主党はあくまで製造業、公共工事などによる経済回復を志向しており、この意味でもバブルを起こす安部ノミクスの方向性とは乖離しています。安倍氏の保守的な態度も同様に、中国を刺激するため、好ましいとは感じていない。安倍氏は、そんな相手の懐に飛び込まねばならない、といった難しさがあります。

竹島の日の記念式典で、韓国側の活動家により、一部で混乱もあったようです。政務官が派遣されることも初めてですが、大事なことはここにどんな戦略をもつか? です。例えば、小泉政権のときは、米国との親密度がマックスに達してしまい、その後は誰が対米外交に臨んでも、前者より後退した、とみられる宿命がありました。まさにそのときの首相が、安倍氏だったわけです。
では韓国と、ここで一気に関係を悪化させて、次にどこでそれを転換させるか? です。日本のメディアではこうした外交における強弱を弁えず、批判したり、賛同したり、を行います。しかし対米関係とて同様に、常に親密で、良好であることはむしろ異常です。山と谷があって、そこで国としてどう利益に結びつけるか? もし山と谷もなく、常に良好な関係というなら、それはもう従属するしかありません。しかし日本では対米関係が悪化すると、すぐ問題だと騒ぎ出しますし、安倍氏に至っては「絆をとりもどす」が主命題です。しかし、前の民主党政権が悪かったので、多少の改善はするのでしょうが、そこに安倍政権の明確な戦略性はみられません。これは韓国に対しても同様に、竹島問題をどう解決させるのか? という戦略性は特に感じられない点が問題です。

こうした点は、恐らく安倍氏に明確な外交構想がない点が、問題なのでしょう。戦略的には対中ブロックであっても、それを成し遂げるための、明確なアウトラインが米国と親密になる、では日本としての積極性は感じられません。そしてそれは、オバマ政権の意向とも反しているのですから、尚更です。オバマ政権は、むしろバブル崩壊が懸念される中国、韓国を無条件で支える国として、日本を位置づけているフシがある。だからこそ、今回の絆は非常に紡ぐのが大変だということです。
つまり安倍政権は、中韓と関係を悪化させている限り、オバマ政権からの評価も低いのです。つくづく、米国が共和党政権だったら、というところでしょうが、その意味でも安倍政権には試金石となってきます。『絆』という言葉には、人と人との関係を表す意味と、もう一つは動物をつなぎ止めておく、という意味があります。もしオバマ氏が、安倍氏を凶暴だと感じ、それをつなぎ止めておく鎖を考えるなら、この絆は『服従』という形態になるのでしょう。そうなると憲法改正も困難になりますし、まさに今回の日米首脳会談は、安倍政権の命数さえ決めかねない恐れがあるのでしょうね。

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2013年02月21日

中国の大気汚染と包囲網

森元首相がプーチン露大統領と会談しました。ロシアはBRICsの一角とされながら、資源頼みの脆弱な経済構造から、新興国の負け組ともされています。シェールガス革命でガス価格が下がり、欧州の混乱で投資も集まらず、厳しいというのが現状です。焦って何らかの妥協案を探るよりも、まだ先に好機がくる、との指摘もありますが、外交成果を焦る安倍政権が我慢しきれるか、がカギです。
安倍首相は、明日の日米首脳会談にむけて渡米しました。TPPは以前から指摘しているように、経済的メリットの最大化なら、TPPをベースとしたFTA、EPAの交渉をすれば例外品目も設けられ、安倍氏の主張にも合致します。しかしTPPは対中国包囲網という側面をもち、これを推進する人はほぼ例外なく、口にはせずともこれを意識しています。ただ、中国経済への暗雲はそれどころではなく、国を崩壊させかねない面があり、今後の経済においては一つの契機ともなりかねない問題を孕みます。

PM2.5については、越境汚染ばかり報道されますが、企業活動としては別の側面をもちます。中国は外資の工場が問題だとして、自社の努力で浄化装置を設けるなどしろ、という態度です。しかし企業は新たなリスクに直面しています。それは、悪環境の場所で働かせるのですから、中国で労働、もしくは出張し、後にぜんそくなどの公害に起因した病を発症した場合、労災認定をとれる可能性があります。中国での労働、それ自体が、日本企業にとって将来の負担になりかねないのです。
1月の対中投資が前年同月比7.3%減の92.7億$と、8ヶ月連続の減少でした。特に日本は20%減の6.4億$、米国も20%減の2.7億$と、大幅な減少であり、代わって欧州は81.8%増の8.2億$です。欧州は反動増ともされますが、ユーロ高がすすんだとはいえ、この時期に対中投資をするとは到底思えません。中国は、ギリシャなど破綻した国家に次々投資、それを還流させて付け替えたのではないか? とも疑われており、実際の対中投資はもっと低い、ともされます。そして上記のように、中国で操業することは、企業にとって労災になる危険を常に伴っている。これでは対中投資は益々減るでしょう。

中国では不動産抑制策をうちだしましたが、不動産価格だけが上がる、異常事態です。逆に云えば、賃金には上昇圧力があって、欧米が景気低迷する中、企業とて業績には期待できず、コスト増を吸収する術がない。そこであらゆる主体が不動産市場の闇取引に参加しているのではないか? そんな懸念すらあります。それはもう、健全な経済環境とはいえないレベルなのでしょう。
そんな中国に、経団連の米倉会長が渡ります。これは昨年、中日友好協会と中国人民対外友好協会と、経団連が合意した草の根交流の仕組みです。しかし民間レベルと云えど、かの国は中国共産党の意をうけており、これも手控えられる対中投資に、少しでも好材料を得たいとの思惑でしょう。安倍政権に対して発言が二転三転し、耄碌とも囁かれる会長ですが、春節のお祝いという形でこの時期に訪中するのは、安倍氏の訪米と合わせたタイミングと云い、中国の戦略に嵌っているのでしょう。

中国は今後、海外からの旅行客の激減という事態も起こります。包囲網をつくるのが先か、バブル崩壊が囁かれながら、中々崩れない中国が本格的に調整局面を迎えるのが先か? いずれにしろ、ここ最近の中国の暗雲、PM2.5はその息の根を止めるに充分な威力をもって蔓延するのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:18|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アジア | 経済

2013年02月20日

1月貿易統計で過去最大の赤字

麻生財務相の、G20での服装が話題です。個人の趣味なので、特にコメントするつもりはありませんが、新聞などがオシャレ、得意の英語でユーモアを交えて…など、やたらと誉めそやす態度が目立ちます。麻生氏の英語など、とても聞けるレベルではないですし、新聞の記事がBlogやTwitterレベルに堕している、と感じます。御用メディア、とも揶揄されますが、少なくともファッションセンスより、経済・財政政策についての正しい批評に努めるべきで、そちらの方が重要です。
これは安倍政権の要人が、為替水準に言及しなくなったことを『封印』とすることでも、異常さが際立ちます。やってはいけないことを行ったのですから、それを止めても『封印』ではなく、解けば再開できるものではないのです。G20では、日本に言及しなかったことで、禊が済んだかのような書きぶりも多いですが、相当釘を刺されたことは、安倍政権の態度の変化でも充分に読みとれます。

1月貿易統計が発表され、1兆6294億円の赤字で過去最大でした。輸出は前年同月比で6.4%増の4兆7992億円、輸出は7.3%増の6兆4286億円。半年から1年後には円安効果で輸出が伸びる、とする論調もありますが、残念ながらそのときの海外の経済環境の方が、円安より重要とさえいえます。さらに、少し気になるのが数量ベースで、輸出は6.0%の減少です。つまり金額ベースで伸びているのは、多少の円安効果がのった結果である、ということです。しかも盛んに世界経済はもち直しの兆し、と昨年末からの景気回復局面がアピールされ、それが株高と相まって真実のように語られますが、数量ベースをみると、昨年の債務不安に覆われていた頃と比べても、低迷から脱却していないことが分かります。
そして、輸入は数量ベースで1.0%減。ここにはじわり、円安の効果で貿易が手控えられた傾向も窺えます。日本が消費を手控えれば、それこそ安倍ノミクスは海外から失敗と断じられ、海外からの圧力が高まると予想されます。米国も、増税前の駆け込みが年末に起こったように、日本もそうした一時的な消費に頼るなら、それこそ景気低迷が深刻化する恐れに、今後は直面するのでしょう。

さらに、米国でも新たな懸念として浮上しているのが、QE3の解除時期についての議論です。今年からFOMCメンバーとなった地区連銀の総裁がかなりタカ派で、債券・農地・企業向けの信用市場などに、バブルの兆しがあることを指摘しており、すでに07年当時を上回るものさえあります。利益追求型の、ハイリスク投資が活発化した背景には、金余りがありますが、ここにも注視が必要です。
QE3が早期に解除されるなら、一時的にはドル安、円高局面が訪れることでしょう。ただし、それで米国の経済規模が縮小するなら、やはり数量ベースの貿易は減っていくことでしょう。それは行き過ぎたバブルとなる前に、早めに手を打つということであり、経済の一時的な減速があっても、バブル崩壊の方がより、経済にマイナスであると知っているからこその行動、ということです。

日銀の総裁選びが活発です。人事のことなので、あまり言いたくはないですが、06年当時、日銀が早期に緩和解除したことを悪、と決め付ける論調がリフレ派を中心に巻き起こります。ただし、円キャリー取引を通して海外で住宅バブルを拡大させたのは日銀であり、私はむしろもっと早めに手を打っておけば、一時的な減速で済み、世界が震撼するような事態は避けられたのでは? と考えています。日本は島国のためか、為替も、ファッションセンスも、金融政策でさえも海外の常識とは乖離して、独自のものをもつようですが、今の議論がそこでぐるぐると巡っているうちは、日本のデフレ脱却や成長軌道にのせるなど、まだ先の先の話、ということになりかねないのでしょうね。

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2013年02月19日

政治に関する幾つかのこと

小野寺防衛相が、民主党政権時代の『自衛隊施設内での民間人による政治的発言禁止』の通達を、撤回する方針を示しました。ただこの問題の本質は、政治的活動が禁止されている公務員に向かって、政治的活動をする是非です。禁止するのも奇妙ですが、そうした活動をすること自体が問題で、またそんな人物を呼ぶ、防衛省の見識の低さにあります。公で発言するのに、自説を滔々と述べる人もいますが、人を見抜く目をもつなら、そういう人物を登壇させてはいけないのでしょう。
きな臭い話としては、民主党幹部が公安がマークしていた某国のスパイ、と目される女性との付き合いに関する証拠を、政権のときに廃棄していたとの報道があります。しかし自民政権時代は、捜査そのものに圧力をかけていた話もあり、この事実で分かるのは、公安などが政治的な思惑も込みで捜査、証拠集めが行われているという懸念です。もし犯罪に関わる関節証拠でもあるなら、すぐにでも起訴すべきですし、それは本来与野党問わず、政治家に対して行われるべきですし、こうした出元不明な情報が流れる時点で、異なる意図を感じます。自民にしろ、民主にしろ、政権につくと国の力を自分たちのために使い始める、今回の一連の動きにはそうした印象しかありません。

一方で、国会同意人事に関して、事前報道ルールが撤廃される見込みです。事前報道による制限に何の意味もありませんが、このルールがあることで、政治家や官僚による不適切なメディアとの付き合い、情報の取り扱い方、等が詳らかになるとともに、世論誘導によって規定路線化する流れに、釘を打てる利点があります。一応、事前に漏洩した場合は調査し、議運に報告するようですが、罰則もなければ調査機関も事務方で行われるのなら、ほとんど形骸化しているとしてもよいものです。
さらに、選挙制度改革では、党首討論で受けると約束した安倍氏でしたが、比例議席の維持を狙う公明、定数削減を求める民主に、自民が頭を痛めています。簡単にいえば、自民は長い歴史があり、選挙区などの組み換えが容易でない。そこにきて、約束もしていないTPPには前向きで、約束した選挙制度改革ができない、となると国民から懐疑的な目を向けられます。党首討論でぐずぐずしたのも、この辺りに起因しますが、参院選にむけた党内外の火種になりかねない問題となりそうです。

そんな中、民主は崩壊寸前で「野田氏を除籍しろ」との声まで上がるようです。がん治療薬研究の中村教授が、野田前首相に医療イノベーション推進室の室長時代、権限もなく官僚による利権の綱引きに辟易し、野田氏へ直訴したときの対応が、某雑誌に載っています。これをみると、野田政権が如何に問題を抱えていたか、よく分かります。官僚を統制できないまま、官僚に丸投げする。問題を抱え、改善もできない組織にすべての運営を任せるのですから、国政も停滞するはずです。
しかし、実は安倍政権にも野田政権当時と、同じ匂いがします。政治はどんなに目標、意志が正しくとも、その制度設計を官僚に任せた時点で、すべてが画餅に変わるのです。様々な懐疑を立ち上げ、農業を成長産業に…など、別に安倍政権で目新しい話ではありません。これまでも発言し、停滞してきたのは結局、官僚の利権の綱引きによって実行力を失ってきたためなのです。安倍政権は、あくまで官僚と上手くやっていこう、という姿勢であり、最も嫌がる利権構造にまで手が入れられるとは、到底思えません。今は注目度も集まり、宣伝効果だけで騒いでいますが、本質的には官僚の力関係を脱却しない限り、安倍政権は野田政権と同じ轍しか踏めなくなる、ということになるのでしょうね。

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2013年02月18日

信用と安倍ノミクス

まず、経済評論家の宋氏が昨日、「隕石が尖閣に落ちれば…」と発言したことに対して、ユーモアとしていますが、元々この発言は中国共産党が発信元と考えられます。つまり、尖閣諸島がなくなれば、あの近辺は公海となり、中国海軍は堂々と太平洋にでていける海路を手にします。それは東南アジアにとっての脅威であり、米軍にとっても容認ならざる問題です。さらに沖縄トラフがあるため、中国は大陸棚を主張し、東シナ海においてかなり広範囲に領海を広げることができる。だから、中国共産党の一部は「尖閣などなくなってしまえ」と、発言していたことが背景にあります。
もし宋氏が、中国に落ちてPM2.5を吹き飛ばして…ぐらい云ったら、それはユーモアで通りますが、中国共産党の意見を代弁するなら、それはユーモアではありません。海外で活躍する中国出身の人間が、共産党の主張を踏襲するかどうかは、チベットやウィグル問題を聞けばすぐ分かります。ユーモアは、何か特定の意向に沿って発言することではなく、独自性やウィットをもって、むしろ権力に対して批判的精神をもたない限り、中々伝わることはない、ということになるのでしょう。

今日の市場では、G20で日本の主張が受け入れられた、との評が専らでしたが、今日は15日にマイナス材料が出ることを見越し、先物売りを仕掛けていた欧州系が買い戻したため、上値を追う展開だっただけです。為替も、午前は93円70銭辺りでうろついていましたが、安倍氏の外債購入発言に刺激され、94円を試す展開となりました。しかしこれも、一部15日に円高にかけた層が、処分したに過ぎません。逆にいえば、発言への感応度は低くなっており、それは売買高にも現れています。
参院予算委で、安倍氏が「日銀の金融緩和でお金があふれ、モノの価値との差でインフレになる」旨の発言をしていますが、インフレになる手順に誤りがあります。金融機関にお金を増やしても、バブル崩壊という危機を体験しているため、容易に貸付を増やしません。つまりお金は下流に行き渡らない。さらに金融機関はバーゼル靴瞭各があり、自己資本を手厚くすることが将来的に求められるため、長期の貸付はしたくない。つまり金融政策によるインフレ誘導とは、自己勘定取引による商品市場、株式市場への資金流入によるコストプッシュ型にならざるを得ない、というのが現在です。そしてそれは、閾値を超えると一気に進みやすい、だから市場は急速に上昇局面に転じたのです。

しかし賃金は上昇しない。これは先進国の新興国化、新興国の先進国化、という流れの中で、先進国がさらに新興国を引き離すような、賃金上昇局面は訪れないのです。そして企業も内部留保は吐き出さない。これは2%のインフレ局面でも、米企業などは内部留保を厚くし、Appleなどは1兆円を越し、株主代表訴訟が起きたばかりでも顕著です。つまりこれらは、信用が低下した世界において、金融機関にしろ、一般の企業にしろ、手元資金を厚くするのが至上命題ということであり、これに逆行するような企業は、まず長続きはしない。それでも賃金を上げますか? ということなのです。
安倍ノミクスを支持するリフレ派は、この逆がおきるとします。しかしそこに、理論的整合はありません。日本では中小企業に保証を与えてきましたが、中小企業金融円滑化法の行方が、信用面においてはより重要ともいえる状況です。もしこれが打ち切られれば、かなりマイナス面への影響を覚悟する必要があります。倒産ではなく、休業・廃業にして見掛け上の倒産件数を減らす、といった工夫もあるようですが、そうなると職場を失った労働者が、退職金もうけとれず、給与もなく、中途半端な身分のまま据え置かれる、という事態になりかねません。米国では財政の崖も懸念されますが、日本の崖は落ちたかどうか分からないまま、気がつけば落ちていた、という形になりかねない。それは信用の下支え、という国が本来やるべきことを怠る、その態度によって起こるのかもしれませんね。

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2013年02月17日

雑感。中国海軍のレーダー照射に関する情報公開は?

日テレの某番組で、経済評論家となのる中国出身の経営コンサルタントが「隕石が尖閣に落ちれば領土問題がなくなる」旨の発言をしました。尖閣は諸島ですから、吹き飛ばして海に沈めるようなクラスの隕石になると、大津波を引き起こして世界各国に打撃となります。それに発言自体、中国側の意をうけたようなもので、経営コンサルとしての手腕にさえ疑問符がつくといわざるを得ません。

しかし尖閣の対応に関しては、決して日本政府も褒められたものではありません。一時、政府高官の発言として、民主党政権時にもレーダー照射はあったとされ、数時間後には記事が削除されました。これは憶測ですが、レーダー照射は実際にあったものの、ちょうど選挙期間と重なり、また選挙に利用されるとの配慮から伝えなかったと見られます。そのため、それを民主党への攻撃、批判材料にしようとしたものの、防衛省側の問題になりかねず、後で記事自体を削除させたのでしょう。
中国側の対応が、かなり遅くなったのも、こうした日本側の矛盾した対応について、自分たちに有利となるよう戦略を練ったものの、レーダー照射自体が国際社会から批判されかねない、として全面的に否定した。これには防衛省も安堵したはずです。さらに日本政府は「証拠はある」としていますが、一向に公表はされません。中国を追い詰めず、何らかの交渉材料にしようとするなら、今のようにふたたび中国側が尖閣へ出てきた、このタイミングで公開に踏み切ってもよいはずです。

海自のレーダー探視能力を詳らかにしない、という理由があるとしても、明らかに動きが遅い。一部では、外務省が中国を追い込まないよう政権内で動いている話も伝わりますが、時間が経てば交渉カードとしての重みは低下します。少なくとも春を過ぎれば、それは中国の異常性を伝える目的だけで、ただの国内向けのイメージ戦略にしかならなくなります。先の漁船衝突のときと同じ、戦略すらないのなら、中国軍がふたたび活発化した「いつやるか? 今でしょ」ということになります。
漁船衝突のときは、現場の担当官までデータ管理に携わったため、流出という事態になりましたが、今回は司令室も絡んでおり、流出はないでしょう。ただ、菅内閣のときに情報開示がないことを批判した人が、今回はそれをしない点は不可解ですし、今回そうした声が大きくない点も、安倍政権への支持の姿勢をメディアが崩していないことをうかがわせます。ただ、先に示したように、安倍政権に戦略がないなら早めに公開しないと、すべて過去のものとして価値が低下することに注意も必要です。

安倍政権は官僚が幅を利かせており、経済面では財務と経産が、防衛面でも防衛と外務が、それぞれつばぜり合いをしている構図です。二兎追うものは…の格言通り、方向性が定まらないと、いずれ失敗することになります。安倍政権が一体、どちらを軸とするのか? 最近、ふたたび国防軍構想などを語ることも増えてきましたが、これを防衛省へのプレゼント、手を引かせるための材料とするなら、今回の件も外務省が主導し、情報公開はなし、ということになりかねないのでしょうね。

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2013年02月16日

安倍政権は短命をめざすかもしれない、の考察

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がモスクワで開かれ、共同声明を採択して閉幕しました。日本は名指しを避けられましたが、「通貨の競争的な切り下げ回避」「先進国の金融緩和による新興国への波及を懸念」「保護主義に反対」など、日本がこれから打とうとしている政策に、一定の歯止めになる項目が並びました。つまり、安倍ノミクスは国内のデフレ対策と説明しても、国際的にも新興国などの動向に、先進国が責任の一端を負う、とG20は明記したことになります。
これは妥協の産物ですが、グローバル化の中では国内問題だけに目配せする、という説明は通り難くなっています。リーマンショックやユーロ崩壊、などの緊急事態への対処ならまだしも、安倍ノミクスは長期低迷からの脱却であり、決して緊急事態への対応ではない。その点では、正当性も訴えにくく、また金融緩和がデフレ対策として、どう機能するかは不透明です。日本の壮大な実験を、今は各国とも見守りますが、時間があまり残されていないことになってしまうのでしょうね。

国交政務次官を辞職した徳田議員に、新たに政治資金規正法違反の疑いが持ち上がりました。徳田氏の資金管理団体が、政党支部に2千万円を寄付、政党支部が同日、同額を徳田氏本人に寄付しており、迂回献金の疑惑です。疑惑と云うより迂回献金は確実で、これほどあからさまに至急のカネが必要だった、その方に注目も集まります。先の女性問題では、女性議員団が徳田氏に対して議員辞職もふくむ、身のふり方について迫っており、尚一層の圧力が国会内外からかかってきそうです。
自民も苦しいのは、徳田氏は父親の虎雄氏の後継であり、切り難い一方で、この問題を引きずると参院選に影響する。特に、徳田氏を抱えていると女性票は逃げる傾向にあり、今はメディアも安倍政権へのマイナス報道を控えますが、夏ごろになると不明です。そのときまでには、何らかの対応をとる必要があります。今回、どういう経緯でこの記事が出たか? もしかしたら徳田氏への離党、議員辞職などを含めた処分をくだすために、こうしたマイナス報道を準備したのかもしれません。

そしてもう一つ、安倍政権の命数を左右しそうなのが、一票の格差訴訟です。今回、公選法に定める「100日規定」を遵守し、各地で起きている一票の格差訴訟はスピード結審、3月中には判決がでる見込みです。12月の衆院選、違憲判決が出ることはすでに大審院判例からも明確であり、問題は判決の中身です。違憲だけど、改善すればよいと認めて衆院選にお墨付きをだすのか? それとも違憲なので選挙の無効、やり直しを迫るのか? ほぼ政治の意向に左右されてしまう裁判所が、後者の判断を下すとは到底思えませんが、実はある仮定によってはそうなる可能性も指摘できます。
それは、安倍政権が支持率の高いまま、再選挙を仕掛けるという戦略です。即ち来年9月、衆参ダブル選挙を安倍氏が模索するのではないか? それは党内基盤も弱い安倍氏が、次の選挙で大勝すれば、それこそ党内基盤も安定するし、衆参で多数を占めることもでき、国会運営も楽になります。安倍氏が、海外からの批判も無視して経済運営をすすめるのも、バブルを起こしてでも経済を好転させ、早い段階で選挙することがその主眼ではないか? とも考えられるのです。

これはまだ確率の低い話ですが、維新の橋下氏がみんなの党との合流を焦るのも、参院選よりも安倍氏から内々に、衆院選の時期を耳打ちされているためではないか? ともとれます。そして自民、維新が多数を占めれば、改憲も楽になれば、やりたい放題に政策を打てます。この推論が正しいかどうかは、まだ予断を許しませんが、政治家なら次の選挙まで『時間がない』ということを認識しておかないと、また準備不足となり、足元をすくわれることになりかねないのでしょうね。


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2013年02月15日

公取、委員長の国会同意人事

ロシアのチェリャビンスク州に、隕石が落下しました。明日には2012DA14と呼ばれる小惑星が、衛星軌道の内側を通過する見込みです。気になるのが、今は無数に打ち上げられている人工衛星を、小惑星が弾き飛ばして、地球へと落下する懸念です。つまり小惑星がぶつからなくても、地球に接近する軌道をとる場合、人工衛星にはぶつかる恐れがあります。過去に打ち上げられた人工衛星は、電池など有害物質を含むともされており、そうしたものの飛来にも注意しなければならない。今回の件でも、改めてそうしたことを意識させられるのでしょうね。

そんなロシアのモスクワでG20が開かれます。未だにメディアから「安倍ノミクスの金融政策に理解」などの発言が伝わりますが、改めて指摘すると、金融政策自体には批判もありません。問題は、それと同時に政府要人が為替の水準を示唆するため、それが為替誘導と認識され、批判されているのです。何かの政策を打つ際、目標を掲げることはありますが、そこに円安をもってくるからダメなのです。金融政策を語る際は、為替を切り離して発言しない限り、問題は続くことになります。
しかしそれ以上に、日銀は2月の会合でも景気見通しを上方修正し、政府見解も楽観を示しますが、だとすると金融緩和をする大義がない。コアのインフレをターゲットにすると、エネルギーコストの上昇で国民生活の困窮がすすむため、金融緩和はしにくくなる。つまり今、楽観をばら撒こうとして色々と工作することが、逆に裏目となって大胆な金融緩和ができない恐れの方が強いのです。つまりデフレ脱却を、世界と約束すれば、それだけで金融政策には足かせともなるのでしょう。

公正取引委員会委員長に、元財務次官の杉本氏が提示され、議運で所信聴取が行われました。その中で新聞の再販制度、特殊指定を見直す考えはない、としました。これをみても、安倍政権と官僚による、新聞との一体の構図が窺えます。再販制度とは生産者、供給者が価格を決めて販売店に遵守させる行為で、特殊指定とは、全国同一価格を謳うものです。両者とも、競争を阻害し、消費者利益を損なうとして一般産業では禁止されており、世界各国でも出版物のみに制限され、それが日本では著作物として広く解釈されています。特に、新聞に認める例は希少だとされています。
杉本氏のいう「見直すべき状況の変化」、その流れをメディアがつくっているのですから、国民議論が高まるはずもありません。新聞には『押し紙』という問題もあり、販売店に発行部数の分担をきめ、それを押し付けることが常態化しているとされます。新聞社は高い発行部数を維持し、また売り上げも確保できる一方、販売店は泣き寝入りしなければならない。上記のことは、すべて新聞社と販売店、という力関係が生まれ、独禁法違反を指摘されつつ見逃されてきた項目となっています。

日本では多くの場面で、小売の方が強い傾向があります。それは生産者、企業より小売の方が規模が大きいために起こりました。しかし新聞は異なります。販売店は個人営業が多く、非常に弱い立場であり、新聞社には逆らえません。だからこそ公取の力でそこを変えなければなりませんが、財務次官というのは、即ちメディアと上手く付き合い、自分たちに都合のいい情報を記事にさせることで出世した、というものです。つまり新聞の改革など、端から考えてもいない、同じ穴の狢なのです。
日銀の同意人事にしろ、元財務官僚だからダメというより、利権団体と深く結びつき、官僚として出世した人間であり、そうした傾向から脱却できないために相応しくない、ということです。今後も国会同意人事は、事前報道などの本質論とはずれたところですすみがちですが、人をみたとき、利権とどう付き合ってきたか? そちらを議論することによって改革につなげていかなければ、日本の閉塞感など中々脱却できない、ということになるのでしょうね。

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2013年02月14日

日本のGDPと日銀会合

補正予算が、衆院を通過しました。奇妙な対応をしたのは維新で、7割賛成だから、と賛成に回っていますが、組み替え動議すら出しませんでした。石原代表のボヤキと愚痴で終わった、衆院予算委の質疑とともに、維新の手法には疑問符がつくものばかりです。橋下氏の手法ばかりに目がいきがちですが、維新という政党として、野党の体を為すのか、甚だ疑問と云わざるを得ません。

日本の10-12月期GDPが、内閣府から発表されました。実質で前期比0.1%減、年率換算で0.4%減でした。個人消費や住宅投資が伸びた一方、設備投資や輸出入が下押しした形です。民間予想は年率0.5%増なので、大きく裏切られた形です。一部、自動車の在庫調整がすすんだことを理由にあげますが、自動車はエコカー補助金の打ち切りで、販売は不調。輸出も、米国市場の堅調さがあったとはいえ、輸出が低下しているため、生産調整により在庫がさばけた面があり、あまりよい状況とはいえません。
タブレットを含むパソコンも好調、とされますが、スマホの伸びも一服とされ、Windows8も芳しくないとされます。これは安価なタブレットの登場で押し上げられた面があり、販売に比べて日本企業に恩恵は少ない。なぜなら、低価格タブレットはほとんど海外製だからです。GDPデフレーターは前年同期比0.6%減と、デフレ傾向は継続しており、今後はこの辺りの動向も注目する必要があります。

日銀の金融政策決定会合において、景気判断を「下げ止まりつつある」に上方修正しました。当面は横ばいであるものの、経済対策の効果と海外の減速からの脱却で、回復するとの判断です。白川総裁が3月退任を示唆していることもあり、金融政策は現状維持でした。ただ欧州のGDPなどをみると、未だに改善はみられず、更なる金融緩和を懸念される段階において、海外経済の回復という話も、まだ確定したものではありません。米国も増税の効果が現れつつあり、1月の消費はまだ底堅かったものの、ふたたび財政の崖問題などが取りざたされると、米経済へも期待薄となります。
昨日のオバマ一般教書演説で、注目したのが法人税減税と同時に、海外に課税するという一文です。詳細は不明ですが、企業が海外におく資産、工場、収益などに課税する。それで法人税減税分を補うとともに、企業の本国回帰を促す、といった手法です。企業が向上を米国内にもどせば、所得税も増えるため、例えば日本でも代表的な企業をピックアップし、海外の生産比率、売上高などを試算し、導入が可能となります。国内をメインで行っている企業なら、丸々減税効果があり、海外に工場を移転する動きにも歯止めがかかり、さらに歳入があまり削られない。これは効果ありそうです。

例えば、中国の大気汚染は海外企業のせい、という論調を中国がとるのなら、中国から工場を移転する流れもあるでしょう。日本では、賃金や雇用を増やした企業に減税としますが、これでは赤字決算の企業には意味がなく、効果が低い。しかし海外に工場があることで増税できるのですから、赤字でも増税でき、企業としては面白くない。二重課税の問題はありますが、仕組みを色々と現状に合うよう整えれば、そうした批判も出なくなるはずです。
しかも、TPPの中核国である米国が、この制度を導入するなら、日本が実施しても苦情がでない点もあげられます。他国の真似をすればいい、というものではありませんが、よいところは取り入れるべきでしょう。今、景気はそれほど楽観できる状況ではなく、日本が未知の手法に踏み出していることで、財政懸念は強まっています。今、日本は知恵を用いる場面なのですが、安倍政権にはそれが足りないのであり、こうした税制一つで打てる景気刺激を考えてみるべきなのでしょうね。

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2013年02月13日

市場と安倍ノミクス

オバマ米大統領の一般教書演説、非常に中身の薄い内容となりました。北朝鮮は非難してみせましたが、外交面で目立った文言はなく、経済政策も1期目とほぼ変わらず、中間層の拡充に終始する。財政の崖についての解決策も示しませんでした。『左のレーガン』なる言葉もありますが、人権派の色を滲ませつつ、内政において大胆なマイノリティ保護政策を打ち出し、名を残すつもりかもしれません。ただしそれは、政権運営を危うくし、停滞を生みやすい手法となるのでしょう。

春闘が本格スタートしましたが、その前に安倍氏が経済3団体に、賃上げ要請を行いました。しかし上場企業が今期、11月には経常利益で6.5%増を見込んでいましたが、2月には1.7%に低下しました。つまり安倍ノミクス、円安の効果は乏しく、業績改善はしていないのです。さらに為替なら市場で決定するので、企業も諦めますが、恒常的に政治から賃上げ要求があるような国からは、企業も逃げ出すことになる。つまり喧伝される効果と、正反対の結果しか安倍政権の行動はもたらさない。先のアルジェリアの事件と同じ、安倍氏のやっていることは数年後、非常に厳しい状況を日本にもたらします。
日本では、安倍首相が高い支持率を維持していますが、これだけメディアが阿諛追従すればそうなります。さらに安倍ノミクスに関して「株価が上がって何が悪い」という開き直りすら耳にするにつけ、現状に危うさを感じます。安倍氏はバブルを起こす、といっているのですから株価や不動産は上がりますが、問題はバブルが崩壊した後始末に、常に財政出動が伴うことです。日本の失われた20年も、欧米の緊縮財政も、発端はバブル崩壊です。つまり安倍ノミクスの後にくるバブル崩壊を、日本は覚悟しなければならない。これは未来への責任という意味で、深刻な状況が今と云えます。

そして安倍ノミクスを支持する傾向が、国民のみならず、政治の世界に広がることが問題の根を深くします。今の高い支持率をみるにつけ、「バブルを起こせ」と暗に政治が考えがちとなり、経済政策を誤る恐れがある。それが安倍ノミクスの最大の弊害、と指摘することもできます。世界で安倍ノミクスを評価…という話も、それで潤う金融業界や、一時的に一息つける経済を好感したもので、バブル崩壊後の日本に厳しい意見が相次ぐことは、ほぼ間違いない。これも今だけを評価してはいけない、ということなのですが、それでも安倍政権にすり寄る意見が目立つ傾向にあります
黒田アジア開発銀総裁が、日銀はまだ緩和できると発言し、円安誘導を行いました。ただ日銀は通貨発行83兆円をすでに超え、別枠勘定の26兆円を加えると、すでに120兆円の資産購入を行っています。日銀では、資産は通貨発行枠を越えないとされており、すでに超過状態にあります。黒田氏などは、別枠勘定ならいくらでも増やせるといった論調ですが、この問題の厄介なところは、中央銀行の資産が、限界と市場が認識した時点で上限が決まり、そのときには国の経済は破綻していることです。日銀は裏技をつかえばいくらでも資産を増やせますが、ある日突然死する可能性は捨て切れません。つまり、市場で決定されるべきものを、安倍氏を支持する人たちは無視して、大丈夫と述べているに過ぎない。しかし為替にしろ、誰もその水準が正当である、とはいえないのに、安倍政権の要人は適度な水準として語ります。それは、自分にとって都合よいことで、いわば虚構です。

最近、世界で通貨戦争の懸念が持ち上がってから、為替に対する要人発言が減り、代わってコメンテーターやキャスターが「過度な円高の修正局面」なる言葉をつかい始めました。しかし「過度な円高」と、一体誰が決めたのか? 色々な指数をもちだし、正当化する向きもありますが、円安でも円高でも、それを正当化する材料はあって、都合いい側を用いているに過ぎません。安倍ノミクス支持者が、市場を無視して水準感をもちだす今は、将来市場に裏切られたときのことを懸念し、行動する必要もあるでしょう。安倍政権は『相場操縦内閣』と世界から看做されつつあり、これは日本が苦境に陥っても、誰も助けてはくれないことになります。今の安倍政権が、未来を犠牲にして高い支持率を得ているなら、日本は極めて危ない状況にある、ということなのでしょうね。

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2013年02月12日

北朝鮮の核実験

PC遠隔操作事件の容疑者が、逮捕されました。ただこの件は、警察とメディアの癒着を如実に示す、異常なものです。すでにメディアは容疑者を知り、事前に映像と周辺の取材を済ませており、恐らく3連休の中日の早朝でなければ、生中継されかねないほどでした。検察、警察の威信をかけた事件の逮捕劇を、隠さなければならなかった原因は、昨年の末頃から犯人の絞込みができている、という内々の情報が広くメディアに駆け巡ったことで、また本庁幹部の意図と反してリークした、捜査官がいたためでしょう。結果、メディアも逮捕までは容疑者に張り付くだけで、報道を控え、劇的なタイミングを狙っていたといえます。結果、警察は目立たないよう逮捕に至りました。
さらに問題は、恐らく今回の件、頻繁に捜査関係者から情報がリークされ、容疑者の心象を悪くするようなニュースが流れますが、実はまだ有罪を確実にするだけの物証に、乏しい段階です。つまりまだ、捜査本部も自信がなく、よってメディアも撮り溜めた映像を、流すことができない。そんなジレンマの中、現時点に至っています。検察が、状況証拠を垂れ流している段階で、この事件はまだ様子見しておかないと、ひっくり返される懸念を抱え続ける、となってしまうのでしょう。

北朝鮮が核実験を行いました。詳細は不明ですが、小型化、高性能化ともされており、ミサイルに搭載可能なレベルかどうかが、今後において重要です。北朝鮮と中国が、条件面で実験の時期について、協議したともされますが、恐らく北朝鮮は食糧支援など、かなり大掛かりなものを要求したとみられ、その点で折り合える部分はないでしょう。北朝鮮の食糧事情の悪化は深刻らしく、様々な情報が苦境をつたえます。今回も、米国との2国間協議に持ちこもうとする中には、国際支援を念頭におくとみられ、それが受け入れられない場合、連続して実験をする可能性も指摘されます。
森本前防衛相が、日本の対応について「米国と緊密に…」と述べますが、対策ですらありません。北朝鮮は日本をみておらず、米国との関係強化をしても、何の効果もない。もし行うなら朝鮮総連絡みの資産を凍結、またその幹部の資産も含めて凍結、などをすれば、北朝鮮も日本に関心を払うかもしれません。ただこれは、国際社会との協調の中で実施した方がよく、その意味で制裁決議を、どこまでの範囲で実効性をともなうか、その協議をどう主導するか、がカギになるでしょう。

北朝鮮に、軍事オプションが可能だとすれば、それは米軍が基地などに空爆をしかけ、それに伴って、人民解放軍が北朝鮮防衛の名目で鴨緑江をわたり、北朝鮮の重要拠点を占拠。北朝鮮軍が金正恩氏の身柄を拘束、軍政による変革といった形を想定できます。つまりこの場合、米中、それに北朝鮮軍が連携する必要があり、かなり大仕掛けです。ただ、混乱は短期で収束、また双方のダメージも少ない上、当面は中国の傀儡となった北朝鮮が、恭順のまま経済再生をめざすことになります。
ただ、オバマ政権はこうした対応に消極的でしょう。一番損をするのが米国で、朝鮮半島に根深い『恨』の文化、それが米国のみに向かう。一旦は大量破壊兵器を捨てさせても、次に核武装を計った場合、狙いは米国になります。つまり北朝鮮が民主化され、今後は軍事力強化を目指さない、といった確約が必要です。一方、中国は北朝鮮という手駒をえて、韓国は当然、併合を求めて米国に要求してきます。南、東シナ海の緊張は、一旦は緩和されて日本や東南アジアには好感できても、中国が力をつけてふたたび海洋権益の拡大をめざすなら、それこそ北朝鮮とタッグで挑んできます。

ただ食料危機を幾度迎えても、北朝鮮が瓦解していかないのは、結果的に軍や秘密警察が未だに国民統制に、強い影響を与えているからです。逆に、そこを変更しない限り、北朝鮮に手をだすことも困難なのでしょう。制裁決議より、実効性を伴うのなら上記のような手法が考えられますが、どの国も経済が不安定な中で、危機意識の捉え方にも差があり、中々対策も難しいといったところが、今後も続いてしまうのかもしれませんね。

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2013年02月09日

中国と北朝鮮の動き

共産党の志位委員長が総会で、尖閣を巡る中国の対応を批判しました。ただ、恐らくこれは中国共産党というより、人民解放軍にむけたメッセージで、中国共産党への援護射撃、軍は暴走するなといった類でしょう。共産党は、中国に不都合なことになると口を噤む傾向もありますが、中国内部の分裂、中国共産党の危機意識は、こんなところにも現れるようです。

中国は太古は禅譲、といった国家継承が主流でしたが、ここ最近は軍事による反抗によって国家が転覆、体制が変わります。特に、今回の人民解放軍の暴走には、経済が開放されることに伴って生まれる富裕層と、人民解放軍の兵士との身分の差、貧富がその不満の背景ともされます。
共産党と、それに類する親族、一族は潤うのに、人民解放軍にはそれほどメリットはない。また鉄道省など、軍部と近い省が、事故などの影響で地位を低下させていることも、軍部の不満ともなっています。さらに、益々デモの暴徒化が激しくなる中で、人民解放軍が矢面にたって国民に向き合うようになると、それこそ軍部の不満は頂点に達するでしょう。今は、天安門事件ですら起こせない、中国共産党はそう考えているはずです。しかし一方で、人民解放軍の役割は益々増えている。そしてまた、対外的にトラブルを起こすことで、勢力を増強しようとの目論見も軍部はもっている。それを政治だけで統制するのは、今の中国では困難なのかもしれません。それは現世利益の最大化、という信条をもつ国民性にとって、今の中国共産党がその任にない、と意識することから起こります。

そんな中国の、もう一つの懸念が北朝鮮の核実験です。今回は小型化が可能なブースト型を試す、ともされています。強気に、米国へ挑発を続けていますが、その背景には北朝鮮内部の統制の問題もある、とされます。未だ金正哲氏が完全掌握したとは思えず、内部には鬱積した不満がある。今回、瀬戸際外交よりもっと危険な賭けに出ているのも、これが成功すれば核保有国として世界と対峙できる、といった思惑があるともされます。しかしこれは中国にとっても不愉快なことです。
今、北朝鮮は中国に媚び諂いますが、未来永劫そうとは限りません。むしろ近隣に核保有国が誕生すれば、韓国ももつかもしれない、日本も…となります。それだけは中国も絶対に避けたい。そして、中国の国家体制すら危うい現状では尚更、北朝鮮の暴走は避けたい。それは東アジアの体制転換のドミノ、その一つを押すことになりかねないのです。恐らく、2月半ばにも実施されるとみられる核実験は、その端緒となりかねない。ステージが変わってくることを意味しているのでしょう。

日本はレーダー照射の証拠をだすか、検討していますが、その後の戦略に留意しておく必要があります。今の中国を刺激すれば、確実に歪みは大きくなり、さらに屋台骨を揺さぶることが可能です。しかしその場合、日本とて無害ではいられません。そして、中国がどういう経済、外交姿勢をとるかによっては、北朝鮮すら暴走しかねない、ということです。そして米国は、日本がそうすることを望んでいない。米国とて、今アジアでトラブルを抱えることは、絶対に避けたいと考えているためです。ただそれは、現世利益を最大化しても、解決できない問題であり、長期的な視野にたって判断すべき、ということになってしまうのでしょうね。

明日と明後日はお休みします。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アジア | 政治

2013年02月08日

経済の話。市場の急変動

射撃管制レーダー照射を、中国は日本の捏造と指摘しました。わかり易い反応ですが、認めてしまえば軍を批判することになる。軍にそれだけ気を使わなければいけないほど、共産党は怯えている。一方で、『東京大爆発』という爆竹を制限するなど、国民世論を反日に誘導しすぎると、軍の暴発にお墨付きを与えることになります。反日、抗日ドラマも荒唐無稽な内容が増えているように、極悪な日本を印象付けすぎたため、攻撃してもよい、という機運が高まることは中国共産党にとっても危険、ということです。軍を統制できない国は、遠からず不都合な事態に直面するのでしょう。

昨日のドラギECB総裁の発言で、市場の流れが変わってきました。独国のみの発言では、介入などの強硬姿勢はとりにくいですが、ECBが昨今のユーロ高に苦言を呈すと、実行力がともなってきます。円はドルで1円以上、ユーロで3円程度高くなるなど、円安にして株高、という戦略の見直しを迫られ、持分を高めすぎないよう調整をはじめた。これはヘッジファンドの90日ルールも影響しています。
市場では、54年ぶりの12週連続上昇、SQ算出日を除くと2番目の売買高、などかまびすしいですが、SQ前に11500円の水準にむけ、先物とオプションで大仕掛けを打った米系の動きに、かなり影響された面があります。さらに裁定買い残の急増は、海外でもっていたポジションを戻したため、とみられ、さらにそれが今日のSQで多く処分されたとみられることから、市場が高いうちに売り抜けよう、という魂胆も重なっていたかもしれません。結果的にマイナーSQは11151円とかなり低い水準で、これも市場にはサプライズになりました。潮目が変わった、そう意識されたことで株式市場は急落しました。

円安でも、春闘は厳しい見込みで、賃金への反映は少ないとみられますが、これは世界的な傾向です。米国は消費者物価が2%でも、賃金は1%にも満たない伸びで、日本のみ賃金が劇的に伸びることはありません。これは、労働市場がグローバル化したことで、先進国は新興国へ、新興国は先進国へと鞘寄せする流れの一貫です。安倍氏が経団連との会談で、賃上げを要請したところで、この流れは変わりません。もし人件費が上がるなら、企業は日本から出て行くようになります。今、問題なのは単純労働はコストの低い市場へ移す、という流れの中で賃金が決まる、ということなのです。
日本は円安になるとエネルギーコストが上がるため、それが安倍ノミクスの弱点です。昨年の国際収支は、4.7兆円と前年より50%以上減りました。貿易収支の悪化が原因ですが、円安で輸出が増える、といっても輸入も同時に増えるので、数量効果が出ないと意味がないのですが、問題は中国、欧州向けの輸出が減ったこと。これでは数量効果も見込めず、円安は害の方が大きくなるかもしれません。

海外の見方も『日本は悪いインフレが進行する』が大勢を占めます。今回、裁定買いを手仕舞うのも、日本は短期勝負との思惑からなのかもしれません。今回、企業決算をみるとマチマチどころか、悪い面が大きいように感じます。日本の産業とは、先進国には珍しくバランスがとれている、とも云われますが、今回の為替の急変動次第では、そのバランスすらおかしくなるかもしれません。それは、円安でも素材、人件費が上がってしまう国に、企業が残るのか? という根本的な問いに対し、どう答えをみつけるか、ということでもあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2013年02月07日

TPPと防衛と、

国会で、小野寺防衛相が2月5日にレーダー照射の報告をうけたことを、明らかにしました。ただその理由として「分析していた」は赤点で、もし自衛隊のレーダー解析力がその程度なら、逆に心配になります。明らかに防衛省は、野田政権時の対応と同じで、公表もされないからと報告する必要性を感じていなかったのでしょう。この国の自衛官の認識にも、甘さを感じてしまいます。
ロシアも領空侵犯してきました。北方領土の日なので、尖閣で中国と衝突する日本の対応力を確認するため、ということでしょう。米国にばかり目をむけ、北方領土交渉が後回しになっている安倍政権の、出方をみる面もあります。大体、ロシアは日本の政権が変わると、しばらく様子見をするか、鞘当のように突っかけてきます。今回は後者であり、それがロシアの焦りなのか、それとも自分たちに目を向けさせるための誘いなのか、という両面で検討しておく必要があるのでしょう。

自民党の外交・経済連携調査会で、TPP議論が再開されました。TPPに関しては、これまでも検証してきたので、詳しくはやりませんが、これは成長戦略ではありませんし、経済に関してプラス、マイナスで言えば、マイナス面の方が大きいでしょう。関税撤廃ぐらいで、輸出が伸びるのなら、それぞれの製品の関税率を割りだし、輸出がどれぐらい増えるか試算すべきなのですが、推進派はそれもしません。ナゼなら関税より、通貨の強弱やそのときの経済環境の方が輸出への影響も大きいのです。
TPPは米国型経済の輸出、パックス・アメリカーナの拡大、第2のNATOを目論む米国の意図、その達成が主眼であり、経済的な功罪など、推進派には微々たるものなのでしょう。だからメリット・デメリットは、経済より軍事面を重視して考えなければいけない。特に、中露が活発に動いてくる今、日本もこれまでの対応では、正直振り回される恐れがあり、戦略を練り直す必要があります。

ただ、米国に頼るのは限界があります。明らかに、米国の財政はすでに対外的な活動が制限される状況です。さらに、無人機による空爆が、人道的見地から問題視されており、これが米軍にとって痛い。安価で、熟練パイロットも要らず、他国に脅威を与えられる兵器の使用を制限されることで、米国も新たな戦略、兵器開発を迫られるのです。つまり今後、米国に期待するレベルの応対は政治的な部分に限定され、軍事面における貢献は、期待できなくなる可能性が高いのです。
もし経済的なメリットを最大化したいなら、以前も述べたように、すべてのTPP参加国と、TPPベースでEPA、FTA交渉をすれば、除外品目を入れられてウィン・ウィンの関係が築けます。つまりTPPに拘る時点で、経済は無視されているのです。それを考慮すると、今の議論が的外れで、本質を隠してすすめられているか、が分かります。つまり自民の会合など、すべて不毛ということです。

日本は、外交とのセットで防衛、軍事を考える必要がありますが、恐らく今のNSC議論にみられる展開では、多くを期待できません。まず政治家が官僚を統制できていないのに、外務省と防衛省の縦割りをなくし、統括的に扱えるはずもないからです。今回の報告遅れ、などまさにその典型でしょう。NSC設置に、閣議決定ではなく法的整備にするようですが、その法律を官僚がつくるのなら、まず政治の関与を低くするよう、画策するでしょう。それを見抜ける政治家もいないので、今から失敗が予見できてしまう点が、非常に残念ですね。

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2013年02月06日

中国艦艇によるレーダー照射問題への対応

ソロモン諸島付近の海底で、M8の地震がありました。あの付近の島々は満潮時にあちこちで海水が涌く、といったこともあり、津波の被害が心配されましたが、今回はそれほど大きな津波は発生しなかったようです。日本に限ってみれば、あの地域で起きた地震の津波の伝播、ソリトン波の到達時間など、色々なことが研究資料となります。それを集め、後世に生かしていかなければなりません。

中国の艦艇の射撃管制レーダー照射の問題で、やはり中国共産党からの指示ではなさそうだ、ということが判明しています。ただ、これはあまり良くない情報で、即ち軍部が暴走しているとなれば抑制的ではないため、小競り合い程度でも武力衝突の可能性が高まってきました。米国要人などから「米国なら確実に反撃」などと勇ましい話も聞こえますが、米国とてソ連やホルムズ海峡において、自制的に努めており、レーダー照射をうけて反撃したという話は、イスラエルぐらいキレやすく、また軍事力に差がある国の間でしか、聞いたことがありません。
むしろこれは、中国側の行動を牽制するものであり、その意味でも米国側は、日中の衝突をのぞんでいないことが窺えます。また「平時では起こりえない」との意見も、あれだけせまい海域に軍艦、哨戒機が集中していることはなく、あの海域はすでに平時ではない。緊張をもって対応しなければならない海域になった、ということであって、特段の意味はもっていないのでしょう。

しかし米国の懸念は、それよりもっと深いところにあります。それは汚職、癒着など腐敗のすすむ中国共産党が、軍部や人民を統制できなくなると、軍部のクーデターが極めて起こり易いことになります。逆に云えば、中国軍がこれだけ緊張を高めても日本との衝突が起こらず、時間ばかり経過すると、軍内の憤懣は中国共産党にむかう。経済の失速が強まると、人民の声をうける形で軍部がクーデターを起こす、それが正当化されやすいのです。それはこれまでの厄介な隣人から、好戦的な隣人になりかねない、ということであり、日本にとっても深刻な問題となります。
今回はっきりしたのは、中国共産党は人民解放軍を統制できていない、ということ。先進国では選挙もあり、体制転換は選択的にしか起こりませんが、中国は選挙もなく、体制転換は強制的にしか起こりません。中国は、軍部が対外的にも、対内的にも暴発しかねない懸念を抱えた。逆に、これは日本にも挑発が増えることを意味しており、応射などの反撃に移ることは、厳に戒めなければなりません。開戦の通達もなく、戦闘行為にいたる現場判断は慎むようにする。それが最善ということです。ただこれは、自衛隊がこれまで築いてきたことでもあり、その点は安心できます。

経済的な側面からは、企業は中国のクーデターから新体制へ、といったリスクと向き合わざるを得なくなりました。軍政だと、接収などの、通常の企業活動が阻害される懸念を想定すべきとなります。さらに中国で政変がおきると、世界経済が一気に崩れる懸念も強くなる。それが起きる時期を想定するのは困難ですが、近くはないが遠くない未来、という想定はもっておいた方がよいのでしょう。今の中国共産党が、軍部も人民も統制できない点は、対戦前の日本とも重なってきます。軍が前のめりになっている、今は非常に不安定であることに、戦略的に対応しなければいけないのでしょうね。

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2013年02月05日

雑感。中国のレーダー照射と白川総裁の辞任

中国海軍の艦艇が、海自艦艇に射撃管制用のレーダーを先月、照射していたことが判明しました。ただ今回、中国が意図的に緊張を高める、と考えるのは早計でしょう。なぜなら緊張を高めた結果、日本から抗議されても、言い返せないでは逆に中国側が弱気と看做され、国民からバッシングを受けます。公海上ですから、イイワケもできません。恐らく中国軍上層部の独断か、一部の人民解放軍内の強行勢力が、海軍力増強を狙って演習気分でしかけた、というのが本当のところでしょう。
中国共産党も、日本との緊張を高めた結果、打撃は中国の方が大きかったことに気付いています。観光ばかりでなく、直接投資の拡大が経済成長につながってきた中国では、チャイナ+1で日本企業が中国回避を強めたことが、ボディブローのように利いています。鳩山元首相などの親中派の人物を招いたのも、外務省チャイナスクール経由の要請があったためかもしれません。国賊と罵る人もいますが、鳩山氏は象徴となっているだけで、根は外務省内にあります。
今回少し気になるのが、ナゼこのタイミングなのか? です。1度目は19日、2度目は30日、2回続いたためともされますが、この程度のことは、多少の緊張がある国家間では、稀ですがあることです。日本の方が、緊張を高めておく必要性があった。それは徳田議員の醜聞など、政権に打撃となるニュースを出来る限り小さくするような配慮、とも思われます。このケース、どちらも政治的に利用しよう、というせめぎ合いの中で、一つのタイミングが今日だったのかもしれません。

ただそれ以上に、日銀の白川総裁の自爆テロの方が、政権には重石となります。副総裁と同時に後退した方がいい、という尤もらしい理屈ですが、本音は後任人事でもめ、3月19日に空白となれば、それは政権の責任となります。国会の同意人事で、もめそうな人物を政権が選んでしまうと、空白の恐れが強まる。留任を求めた副総裁に、自民党側がニベもない態度をとったことが引き金ともされますが、圧力をかけ続けたことで日銀側が、ついにキレ気味の対応をとり始めたことが理由でしょう。
白川氏の発表をうけ、一気に円安がすすみましたが、これはサプライズ効果のみです。実際には空白期間ができる恐れや、リフレ派でも日銀側の人材になると、やや市場にとってはマイナスです。今は、マイナス面で円安になる流れではなく、早くリフレ派の総裁になることを好感していますが、ここからの流れはまだ予断を許さないところであり、市場の傾きがどれぐらい続くか、です。

スペインのラホイ首相が率いる国民党が、不正献金疑惑で揺れ、それが世界の株式市場を急落させました。今は各市場が高すぎるので、ちょっとしたことで急落を演じます。そして遅ればせながら、日本もその『高すぎる市場』に参入したのであり、今後も海外との連動性を強めた展開が予想されます。それは最早、互いの国の政局ですら、強く材料視される世界になったことを意味します。
安倍氏の創生・日本が、保守系議員を集めて一大勢力、と話題です。維新や民主からも合流を募る、と強気ですが、安倍政権は敵をつくりやすく、またその敵を攻撃することで劇場型の政局をつくりだすことも、戦略としては想定が可能です。それこそ、射撃管制用のレーダーばかりでなく、身内の自爆や、醜聞を爆弾のように投下されることも、また増えるのでしょう。日本発で世界を動かす、というと聞こえはよいですが、安倍政権の一挙手一投足が世界から注視される中で、その監視に耐えられるかどうかによって、安倍政権の評価は決まってくるのかもしれませんね。

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2013年02月04日

安倍政権の安全運転はいつまで続くか?

徳田国交・復興政務官が辞任しました。政権運営への打撃は仕方ありませんが、『女性問題』の中身が分からず、影響は判然としません。これは想像ですが、世襲議員の脇の甘さなのか、女性問題程度を、自民でもみ消せなかったか? それ次第では、議員辞職や離党なども含む処分を、覚悟するほどかもしれません。いずれにしろ、安倍政権もとんだところで躓いたことになります。
しかし躓きの根は、もっと別のところにあります。電気自動車(EV)の普及に、多いもので100万円近い補助金を国がだす、検討が始まりました。この施策は、米国でもEV販売が大きく落ち込んだように、これがエコでもなければ走行距離も短く、インフラも整っていない。多額の開発費をかけた割りに、売り上げも低く、自動車業界にとっては悩みの種となって泣きついた。だから経産省が検討に入ったのです。つまり安倍政権では、歳出はジャブジャブ、チェックもゆるゆるが容認されているため、産業界と省庁の癒着が、確実に進行している、それが躓きの根になりそうな気配です。

1つ、安倍氏が参院選まで安全運転で、その後は態度を替える、といった話が語られますが、私は最近これに懐疑的です。安倍氏は、小泉氏の手法を踏襲するとともに、人材も小泉政権からの流用が目立ちます。手法のみ、安倍流で拙速にことを進める、とは到底思えません。憲法改正も、国防軍も達成できれば政権は歴史に名を残します。逆にいえばそれだけ難しく、またTPPを初めとした党内を2分するような政策もあり、そう簡単に我を通せる状況ではありません。小泉氏も、郵政民営化は後回ししたように、党内で着実に基盤を固めない限り、安倍氏の望むような施策は通しにくいのです。
また、安倍氏の望みを、必ずしも米国が好感していない点も影響します。郵政民営化は、対日要望書にもあったように、米国からの要請だった。しかし国防軍、憲法改正、それこそ武器基準の緩和も、オバマ政権にとって重要事項ではない。安倍氏が、米国の後ろ盾を欲しいと思えば、後4年経って共和党政権の誕生を待たなければなりません。その間は、選挙に勝ち続けて党内基盤固めに努める、とみられます。その場合、国論を割るような選択肢は、当然後回しと考えられるのです。

一方で、F35の部品を輸出する際は、武器輸出三原則に抵触しない、となし崩す方向です。恐らく安倍政権の安全運転とは、問題の本質を突かず、如何に流れを規定路線としてすすめていくか、にあるのでしょう。結果的にそれは時間もかかりますし、慌てる必要もない。自民が3分の2を抱えても、安倍氏が安定政権になり得ないのは、党内の基盤が脆弱、という点が否めません。今回、安倍チルドレンという言い方がないのも、安倍氏によって当選した、という実感が新人議員にもないためです。安倍氏はまず、自民党内にむけて存在感を示し、絶対的なポジションにつく必要があります。
ただ、安倍氏は安全運転に務めすぎているため、余りに官僚と近づき過ぎます。4Kテレビにむけた新たな組織作りを容認する方向だったり、EV普及補助金だったり、と官僚が利権目当てで蠢いているのに、それを政治の側から咎めもしません。バブルを生み出し、経済が好調な間に、気が付けば官僚がつくった組織、利権の構図が無尽蔵に増えているのかもしれません。国債整理基金から、繰越金を引き出したのも、すでに安倍政権が消費税増税を規定路線としない限り、財務省が出さないお金です。安倍氏は安全運転を続ける気かもしれませんが、その行く道には、官僚がボコボコと穴を開けている。そんな道で、陥穽にはまらないよう進んでいくには、高い運転技術が求められますが、安倍氏が前回と比べてそれを身につけたかどうかで、走行距離が変わってきてしまうのでしょうね。

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2013年02月03日

雑感。柔道の騒動と体罰

女子柔道の監督交代騒動で、谷議員が園田監督を擁護する意見を発しています。以前は、メディア向けに「田村でも金、谷でも金」などと、見出しになる言葉を発して重宝がられるほど、空気を読むのが上手かったのですが、最近は谷議員も世論と乖離した意見がみられます。恐らく、園田氏の妻との関係もあるのでしょうが、こういう場合は体罰に限って批判し、知人に対して個人攻撃にならないよう配慮するのが、政治家としての正しい態度です。相手を庇えば自分にも火の粉がかかってくる。それは、正しいことをしているなら敢然と擁護すべきですが、体罰は次元が違います。
本人も、体罰そのものは認めており「真意が伝わらなかった」としていますが、真意が伝わらないほどの、指導方法だったのです。そこに弁解の余地もありません。日本のスポーツ界は、セクハラの教育はしても、パワハラの教育は怠っている面があり、それでは世界のどこにいっても指導者として通用しない。だから、日本チームに海外の指導者が来ることは多くても、海外のチームに日本人の指導者が就任する、といった機会が少ないのです。そして海外の指導方法にふれた者は、日本の指導方法を批判する。当然ながら、日本は特殊であることを、海外にいくと痛感することになります。

同じ体罰問題では、橋下氏が盛んに発信していますが、彼の場合は教育改革のいい機会、と捉えているフシがあり、その分説得力に欠けます。中には、体罰容認派の石原共同代表が橋下氏を諌めろ、などの意見もあるようです。石原氏が沈黙しているのも、橋下氏が行いたいのは体罰の一掃ではない、と分かっているためです。もし体罰をなくすことが第一義なら、入試の停止までは示唆しません。学校改革に主眼が置かれているため、入試の停止をチラつかせてそれを迫ったのです。
体罰容認派には、権威主義的な側面があります。端的には「目上の者を敬え」という言葉にも表れますが、上には従順であれ、という意識がない限りは体罰を行えません。体罰を行ってもやり返される恐れがあれば、そう簡単にそれはできません。相手が同列の人間であれば、またそれもできません。相手が未成年であれば目下、などという区分けも奇妙です。導く立場にある人が目上、などというのは思いあがりに過ぎないでしょう。ヴォルテールの言葉を借りれば「どんな人も、他人の経験によって学びとるほど利口ではない」となります。つまり、日本では『指導者は経験者』と、暗黙に決められているフシがありますが、経験や実績はそれほど指導者にとって重要ではないのです。

指導者には、指導者たる資質がまた別にあるのです。人がもっている資質、考え方などに合わない指導者とあたり、つぶされたスポーツ選手は山ほどいます。それは権威主義をもつ指導者であればあるほど、その可能性は高いといえます。「人が賢くなるのは、経験ではなく、経験に対処する能力である」との言葉もあります。指導者は、選手が壁にぶつかったとき、その経験に対してどうすべきか、それを一緒に考えてあげるというぐらい、互いに謙虚さをもって付き合うべきでもあるのでしょう。
今回の件は、早速海外でも報じられ、批判の声も聞こえます。日本のスポーツ文化が恥ずかしいものでない、と早期に示すことが大事です。五輪招致と重ねる向きもありますが、直接的にはあまり関係なくとも、選考委員の心理に残れば、それは日本回避の流れとなります。ただでなくとも、今回はトルコが有利とされます。米大使館のテロ騒動もあり、トルコへの見方も悪化している中、日本まで評判を落としているようでは、次の次を待たないといけなくなるでしょう。今後も『指導者は経験者』ではなく、『指導者は経験への適切な応接者』であることが、求められるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 社会 | 一般

2013年02月02日

世界経済の見せかけ

米株市場が、史上最高値に迫っています。ダウ指数は後155$上昇すれば、07年10月の14164.53$を突破します。1月雇用統計は15万7千人増と、予想に届かなかったものの11月、12月が大幅上方改定されたこと、及び消費者信頼感指数や、製造業景気指数が好調で、楽観が広がったためです。10-12月GDPは予想外にマイナスでしたが、これは財政の崖を巡り、緊急事態が宣言されていたため、歳出が手控えられていたため、との説明もありますが、7-9月は大統領選もあって高く見せかけていた、そんな原因もあるのでしょう。今は経済が堅調、と見せかける傾向が世界的に広まっています。
IMFが、アルゼンチンが経済統計を操作することに警告を出しましたが、さすがにインフレ率などは公表値との間に10%以上の差があるとされ、これでは目に余ります。アルゼンチンは再び財政破綻が懸念されており、少しでも統計をよくしようとの意識が働きます。しかし、ここまでいかなくても、数%のズレは中国を初めとした国で、最早常態化しているとさえ、言えてしまうのでしょう。

見せ掛けの経済は、ユーロ圏のLTRO返済にも現れます。LTROは資本不足に陥った金融機関に、半ば強制的にECBから入れられた資金であり、1回目の返済では1370億ユーロと、実に第1弾で投入された資金の25%にも上りましたが、2回目は35億ユーロと、予定にも届きませんでした。これは欧州の金融機関が、信用不安などない、という見せ掛けのために、1回目は頑張ったことがうかがえます。LTROは第2弾とあわせると1兆ユーロに及ぶため、簡単に流動性を消失するわけにはいきません。
その思惑を引き出しているのが、世界同時株高です。今は、流動性を抱えて各市場を爆騰させて収益をえる。バーゼル靴瞭各延期で、当面は自己資本の改善に努めずともよく、リスクをとった取引も可能です。わざわざ早期償還に応じて、チャンスを逃す必要がない。逆に云えば、この間に大きく儲けよう、との思惑が世界的に働いている。なので各国とも失業率は07年当時よりかなり高い水準でも、株高を演じられるのです。つまり今回は、雇用なき景気回復となっているのです。

しかし各国とも生産は活発で、消費も驚くほど堅調です。英国のように、手厚い生活保護などがある国なら別ですが、世帯の10%以上に職がないような国で、消費が活発ということがあり得るのか? さらに中国などの新興国が、07年当時よりも供給体制を整えて、いわゆる供給過多の時代にも関わらず、さらに生産が好調になるほど、資産効果が顕著に消費に反映されているとは到底思えません。
中国など、今年からPMIの統計のとり方を変えており、従来の比較もアテにならないばかりか、統計の信憑性も疑われます。米国の年末商戦も、昨年と比べても伸びは低かったばかりか、今はネット販売が増え、臨時雇用がそれほど増えるとも思えない。今回の改訂で13万人も増加するほど、特殊要因があったとも思えません。今は何となく、景気が良さそうという雰囲気があって、疑問視する向きも少ないですが、しかし11月から始まった上昇相場が、1月に効果あり、とは明らかに早すぎです。

今の世界は、見せかけの楽観を楽しむ感覚でないと、付き合えないということでしょう。政治がそれに加担するのも、今がまだ非常事態のまま、ということを示します。いみじくも、この前とり上げた、米ブレイナード担当官の言葉「今後もゲームのルールが守られると信じる」が、虚しく聞こえるのは、今がゲームのルールを守り、みんなが参加しているとは思えないためです。ゲームのルールを破って、独自ルールをつくりつつある現在、そのゲームがつまらなくなり、放り出す日が来ないよう、今は祈るしかないのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:26|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2013年02月01日

原発の新安全基準、その骨子案

中国の大気汚染が、日本にも流れてきており、大きな問題になっています。以前から重慶などでは酸性雨が問題視されましたが、やっと中国政府も大気汚染を認めて対策を考え始めた段階です。深刻なのは、経済活動が阻害されること。医療費が嵩み、外出が控えられるなど、消費にも影響します。工場の稼動停止、物流の阻害、中国PMIは50を超えて、一時的には堅調さを示しますが、実はこうした公害問題による経済活動の停滞が、今後は増えそうです。中国共産党の命運さえ、濃い霧に霞んでいるのでしょう。経済活動の停滞は、致命傷になりかねない失策に映ります。

ただ、この問題で感じるのは、PM2.5の拡散予測はすぐ出るのに、福島原発事故の際の放射性物質の拡散予測は中々でなかった、ということです。原規庁の職員が、原電に資料を渡したことが発覚していますが、原子力ムラの人間は資料はもらえて当然、方針に自分たちの意向が反映されて当然、との考えです。そして放射性物質に関する報道は、操作されて当然と考えています。
鳥取で、放射性物質が付着したゴミが廃棄されていましたが、すぐ『健康上すぐ影響ない』との文言が付け加えられても、知らずにその付近にいる人が被曝した場合、有為な健康被害が出てしまいます。今は、放射性物質を封じ込めておく機能が壊れており、どこに線量が高い場所があるか分かりません。被災地の砂がつかわれたセメントが、高い線量を出していた問題もすぐ報じられなくなりました。公共工事が増えようとする中、まさに線量の高くなった材料が、裏で安価に流通する恐れが高いのです。今、行うべきは線量を徹底的に調査し、無用な被曝を出さないような対策なのです。

原子力規制委が、新安全基準の骨子案を発表しました。フィルター付きベントの設置や、第二制御室の義務付け、抜け穴も多い活断層の定義など、色々とありますが、実は大事なことが抜け落ちています。それは『全停電』の考慮です。こうした施設で、重要なことは多重事故にどう対策を打つか、です。全停電になった際、運転が確実に停止することを義務付ける。ナゼなら、ベントにしろ人が入って作業しなければいけない以上、運転中であれば危険ですし、原子炉の溶融を早めてしまえば、線量が上がって作業員すら入っていけない、決死隊になってしまう可能性が極めて高いのです。
早くも『弾力運用』や『経済に打撃』と、原子力ムラ特有の記事が散見されます。しかし弾力的に基準を適用した結果、甚大な事故を起こした場合、誰かが責任をとらなければなりません。メディアが無責任なことに例外はありませんが、原規庁ができて、責任範囲が明確化されている以上、規制を弾力化するには誰かの判断が必要となります。大臣なら首をかけねばいけない。それは首相であっても同じです。その判断を下せ、などと安易に語ることに、大義はまったくありません。

前述したように、重要施設は多重防護の考えが必要なのです。バックアップをどこまで備えるか、それ次第で、施設の安全性は左右されてしまいます。ベントの設置は、あくまで施設内が健全であること、第二制御室も、施設を遠隔操作することが可能な状態か、センサーなどの出力がある場合には有効ですが、施設全体の健全性が損なわれていれば、あまり機能しないと云えるでしょう。むしろ、全停電になっても運転が確実に止まっている、という安心感をもって対応する、そんな施設であることが求められるのです。そうでない以上、このままでは原発をリスクの高いまま動かす、ということになってしまい、今までと何も変わらない、ということになってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:07|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 原子力 | 社会