2014年09月

2014年09月30日

8月経済指標も悪化の一途

8月有効求人倍率が1.10倍と前月から横ばい、新規求人倍率は1.62倍で、前月から0.04pt低下となりました。ただ今回、見た目以上に悪いのは、業種別の前年同月比の割合でみると、宿泊・飲食サービス、医療・介護、製造業などで増えているものの、他は総じて下落している。これらの業種は人の流動化率が高く、労働者が定着していない、割のいい条件をさがす傾向の強い業態であり、そこが人手不足に陥っていることです。これは臨時雇用を増やしたツケでもあります。
一方で、正社員の求人数が多いのは、これまで求人数が決して多い方ではなかった資源関連であり、住商のシェールガスの失敗もあったように、円安により割安な資源の獲得に動きだした、そんな傾向も見受けられます。それ以外の業種は、非正規の求人数も落ちていて、景気の低迷の影響をうけているようです。唯一、汎用機械、生産機械などの設備投資関連が頑張っていますが、これらは新興国のハイテク関連への新規参入の影響、ともみうけられます。

それを示すように、8月鉱工業生産指数速報値は前月比で1.5%低下の95.5。国内の生産はまったく盛り上がっておらず、在庫は前月比1.0%上昇とさらに積み上がってきた。出荷指数が1.9%低下する中ですから、さらに悪い状況です。国内の経済はまったく活発ではありません。
総務省発表の8月の労働力調査では、完全失業率が3.5%に低下とばかり報じられますが、対前年同月比で、正規社員は4万人減、非正規社員は42万人増。労働の質の低下は、8月になっても変わっていません。ここ4ヶ月でみても正規社員は11万人減、非正規社員は168万人増。これが安倍ノミクスの実態です。家計調査をみても、消費支出は前年同月比4.7%減。消費が盛り上がっていないのは火を見るより明らかですが、実質賃金は前年同月比で5.4%減。さらに名目賃金も1.6%減。つまり、安倍氏がよく引き合いにだす、名目賃金でさえマイナスに落ちこんでしまった。正社員が右肩下がり、非正規社員がこれほど増えれば、賃上げの効果は実質的にゼロとなるのです。

それを示すのが、毎月勤労統計です。8月速報値で、現金給与総額は1.4%増と報じられますが、一般労働者は1.4%増、パートタイム労働者は1.3%減です。3桁も増える非正規の給与がこれだけ落ちこめば、家計が苦しくなるのは当然です。そこには労働時間の減少、出勤日数の低下などもあり、固定給でない労働者は、国内経済の低迷の影響をもろにうけてしまう傾向にあるのです。
女性が輝く…どころか、女性の就業率の高いところに低迷の波が押し寄せた。今後もこの傾向が続くとなれば、消費低迷も長引くと予想されます。さらに、各統計でクセもあって、毎月勤労統計では正規、非正規とも雇用は増加と示しますが、ハローワークを通じた求職者数は前年同月比8.7%も減少している。前向きに働こうとする労働者は、益々減る傾向にあり、これは円安で資源の購入額が上がり、労働人口の減少する日本から、企業が逃げだす口実にもされそうな勢いです。

昨日、安倍首相の所信表明演説時、相場が上昇したことも報じられましたが、実はここ数日はTOPIX再投資、と呼ばれる配当を再投資する傾向にあり、これが影響力が低下したとされる安倍氏を応援する財界、国内勢の買いを誘発したと噂されます。しかし勢いはなく、今日も後場には国内の買いとみられるものも入りましたが、相場の停滞感はさらに強まった印象です。失速をつづける景気と、逆行して上がる株。逆に、日本経済の弱さを示すように下がる円。そしてその円安が、日本経済に更なる打撃を与える要因ともなり始めてきました。この負の連鎖、今止めないと将来的に、更なる深刻な影響を日本経済に及ぼすことになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:08|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2014年09月29日

安倍首相の所信表明演説

第187回臨時国会が召集され、安倍首相の所信表明演説が行われました。今回、特徴的なのは話をする順番で、復興、地方創生、外交、女性の活躍、経済になったことです。経済面が最後に来たのは、この国会の目玉でないからではなく、円安の悪影響、安倍ノミクスへの厳しい見方もあって、アピールできないと踏んだためでしょう。しかもあれ? と思ったのが、私が見逃しただけかもしれませんが「安倍ノミクス」の文言が一つも入っていなかったことです。経済最優先では? メディアでも今国会は地方創生と女性活躍、としか謳っておらず、経済面は後回しです。
実際、経済政策の成果を語っていますが、有効求人倍率が22年ぶりの高水準、といったところで非正規のみ拡大する状況は、決して労働の質が改善したものではない。賃金アップの話をしても、実質賃金が未曾有の低下をつづけている状況にはふれない。都合いい箇所を、都合よく解釈して伝えるだけであるのは、経済政策としてマイナス面しかなく、すでに年内の補正予算の検討を見送ったことからも、この政権では経済への目配せはできないことを、露呈しているのです。

しかも話の癖かもしれませんが、すべての項目で必ず限定的な、一部の成功例から話を始めています。政府が対策を打とうと、打つまいと、成功するところはするし、失敗するところはします。しかもその成功例は、ほぼ政策に関係ないものばかり。であるなら、むしろ失敗から何を学ぶか、が政府にとって重要であり、政策対応が必要となってくるのです。そこにスポットが当たっていないこの演説では、一体どんな政策を打ちたいか、はさっぱり不明となっています。
しかも自ら「地球儀俯瞰外交」と語りますが、俯瞰とは『上からみる』という意味です。言い方は悪いですが、上から目線外交、とも読み解けます。実際、49カ国訪問、200回以上の首脳会談、といってみたところで、条約の締結や協定への調印、といった事例はほとんどない。驚くべきことに、その数しか誇る点がないのです。逆に、600日も経ってこれほど外交成果のない政権も珍しい、というぐらい語るべき内容がない。そして将来についても希望を抱くような内容はありません。

実は、全般を通じて安倍政権で達成したことを、誇らしげに語ることが一切ない。それが今回の所信表明演説です。若者がチャレンジし易い環境、として創業10年未満の企業を優先する仕組み、と述べます。しかし老舗企業にだって若者は働いており、ベンチャーだけを支援する、という仕組みが正しいのかどうか。むしろリスク投資を、金融機関に変わって政府が行っているだけで、上手くいく確率は極めて低い、政府系金融機関のチャレンジし易い環境作り、を醸成しているように思えてならず、政府系金融機関とは、即ち天下り団体の優遇、ということでもあります。
最後に、日本には成長できない、人口減少は避けられない、といった悲観的な意見があるとした上で、地方や女性など、ありとあらゆる可能性を開花することで…と、それを輝ける未来とします。ここも首を傾げるのは、最初の安倍ノミクスの成長戦略にも入っていなかった、扱いが小さかったこれらの項目で「ありとあらゆる」? では、あの成長戦略とは何だったのか? 今さら気づいた、ということなのか? それが判然としません。低迷しているから伸び代がある、というならその通りですが、そこに具体策がなければ「ありとあらゆる」の説明にはなっていません。

経済の好循環、という言い方がお気に入りですが、始まってもいないものは循環しようもないのです。それこそ金融緩和が終わったら、日本経済の沈没は目も当てられなくなるでしょう。目ぼしい策もなく、目新しい部分もありません。円安などは目に余るほどとなり、L字の景気には目配せが必要です。メディアが安倍政権の応援でスクラムを組む中、日経の世論調査では内閣改造効果が剥落しました。国民の目、この政権を正しく見極める真贋の目が、益々大事になるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:59|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月28日

雑感。御嶽山の噴火

御嶽山の噴火後、政府は迅速に対応した、という旨の発言をする人物がメディアに多く登場しています。このタイミングで、検証の時間もない中で、なぜそんな発言をするかと言えば、広島の土砂災害時の政府対応の稚拙さ、に関して批判が集まったことで、ためにする情報を政府が流し、おトモダチがそれを発言するということなのでしょう。対策本部ができたとて、実効性があったかどうかは、しばらく時間をおいて、冷静に検証しないと判然とはしません。そもそも、今回は噴火予知がまったく機能せず、犠牲者をだした時点で行政としては失態となるのです。
一部では「気象庁は地震の頻発で、他に噴火の予兆となる情報を集めていたところで噴火した」と、あたかも気象庁を擁護するような発言まで。どんなに言いつくろったところで失敗したのです。活火山として最重要警戒をしている御嶽山で、観測の困難さを露呈した。だから噴火予知は難しい、ということを前提に、もう一度すべての制度を構築しなければならないのです。努力したけどダメでした、は何のイイワケにもなりませんし、メディアがわざわざ気を使って、そんな伝え方をする必要もありません。失敗を認めない、そんな体質を助長せずともよいのです。

そんな御嶽山の噴火は、水蒸気爆発によるもの、との見方を火山噴火予知連絡会が示しました。火砕流も発生したものの、木々が焼けていないことから、低温だったのではないか、と示されます。ここで重要なのは、水蒸気爆発は予知が難しい、という言説があたかも後付けのようにされることです。だとすれば、活火山への登山は細心の注意を払い、少しの予兆でも入山規制をするなど、予防的対応が必要だったのではないか? それができなかったことが、ムードを壊さないよう警戒レベルの引き上げを躊躇ったのでは? との疑惑にもつながってきてしまいます。
長野には白菜など、野菜の生産地が近く、今後は降灰の影響が懸念されます。ただでなくとも今年は野菜が高く、家計を直撃しており、噴石や降灰で傷ついた野菜の扱いなども考えていかなければいけないでしょう。どれぐらい噴火が継続するかは分かりませんが、長くなると影響も大きくなります。桜島のように、降灰を捨てる事業が継続的に実施されている自治体と異なり、長野や岐阜にもそういった問題が起きるかもしれません。これは早期に対策本部を立ち上げたから、というもので評価されるのではなく、長期にわたる対応で評価されなければならないことなのです。

安倍氏は米国で、年内の補正予算の検討を否定しました。それは消費税増税をするためには、景気がよいという認識でなければならないためです。しかし大雨、土砂災害などに続き、噴火という事態にも直面し、景気対策について真剣に議論しなければならない、そんな段階でもあるのでしょう。中身が問題ですが、何もせずに放置してよい状況でもありません。
しかし、景気の見通しでさえも、様々な予兆があるのに何の手も打たず、安穏と放置してしまう懸念が強まっています。安倍政権で感じる最大の不安は、予見性がまったくみられないこと、なのでしょう。こういうことが起こりそうだから、事前に手を打っておく、という長期的な視点、発想が皆無なのです。それこそ短期の成果を焦りすぎ、将来的におこることを予想、対策を打てないのなら、短命への道を歩むことになるだけ、とキモに命じておくべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月27日

安倍政権のリスク管理

御嶽山が噴火しました。今回、気になるのは気象庁が予知できなかった、という点です。地震微動はあるものの、地殻変動などがみられず、警戒レベルだったというのです。安倍政権になってから、行政のこうした対応が目立ちます。デング熱もそうですし、広義では豚流行性下痢でも殺処分があるのに、問題ないとしてほとんど報じられていません。どうも「危険!」ということさえ「ムードを壊すな」という風潮に封じられ、発言を抑制されている気がしてなりません。
少し穿った見方をすると、これで川内原発の再稼動にも影響します。火山学会の反発を無視して、火山は予知できる、対策できる、として川内原発再稼動に対して、原規委はGOサインを出しています。しかし御嶽山の例をみるまでもなく、噴火を完璧に予知することはできません。それこそ予兆があるとき、原発停止の判断ができるのか? 人の判断に委ねるのですから、間違いも起こります。まず噴火を予知できる、と判断を下す時点で、すでに間違いが起こっているのです。

さらにこの「ムードを壊すな」としてつっこんだ挙句、頓挫した例は枚挙に暇なくなっています。日米のTPP交渉も同様。日本が歩み寄ったのに米国が折れなかったことで、甘利氏など「誠意ある対応がない」と憤慨して述べていますが、元々米国に妥協、歩み寄ろうという考えはありません。交渉ごとは双方が妥協するもの、という誤った固定観念でつきすすんだ挙句、それがないことで戸惑っている、というのが現状です。米国としては、米国益に適う目的で交渉しています。妥協するぐらいなら、交渉をまとめる必要などありません。パワーバランスが著しく偏っているTPP交渉において、妥協の産物はないのです。嫌なら交渉打ち切り、凍結で米国としては十分だということです。一時期、TPPは経済政策、成長戦略と語られることもありましたが、年内合意に暗雲ただよう今、成長戦略の柱が一つ、ぽきんと折られた形になります。
北朝鮮との拉致問題交渉も同じ、当初は政府関係者から盛んに喧伝され、秋口には解決、と俄かに国民の期待を煽った挙句、報告は先延ばし、暗礁に乗り上げています。北方領土の問題も、森元首相がプーチン大統領と会談して「訪日を妨げているのは日本」という露国の認識を伝えました。日本が独自外交できないことに「失望」とも。交渉ごとで、相手の信頼を失うことが、如何に国益を損なうかは語るまでもありません。安倍氏の地球儀外交で、初対面の相手がおらず、スムーズに意見交換できた、などと外務省は語りますが、人見知りでもあるまいし、一国の首相が初見の相手と話もできない、というのなら、それは首相として不適格なだけです。

「ムードを壊すな」と云われても「もう実体が壊れている」、それが今です。経済も同じで、8月の全国消費者物価は前年同月比3.1%上昇。増税分を除くと0.8%の上昇とされますが、伸び率は鈍化した。これは実質賃金の低下をいくらか緩和しますが、9月以降はここ数日ですすんだ円安で、ふたたび騰勢を強めることが予想されます。しかし年内に賃上げ、賞与増もないので、消費はさらに悪化することが予想されます。為替予約が切れる月頃にはふたたび値上げの波が来ます。
ムードが壊れる頃には、未曾有の景気悪化が襲っているかもしれない。海外勢が気にする「予想以上に増税の影響が大きい日本経済」に、さらに増税で財政再建をめざすのですから、ムードを壊しているのは安倍政権、ともなるでしょう。ムードを壊さないよう、リスクに関して判断を鈍らせた挙句、大きな被害をだす。それが武器使用緩和で、PKOへの派兵をすすめる安倍政権で起きることで、後に大きな犠牲を伴ってしまうのなら、より罪深い政権とも云えるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:04|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月26日

安倍首相の国連演説

安倍首相による国連の一般討論演説、総括すると当たり障りのない内容となりましたが、その中でも特記すべきは国連改革にふれた部分です。日本が常任理事国入りをめざし、相応しい役割を担う、とさえ述べました。ただ注意すべきは、これまでの常任理事国と、国連改革後の常任理事国は、似て非なるものになる、ということです。単に数を増やすだけなら、拒否権をもつ国が増えるだけで、物事を決めきれなくなる恐れがあり、安保理なども決定システムは大きく変わります。
一部のメディアでは、日本の常任理事国入りで、中国が既得権益を失うと誤った報じ方もされますが、常任理事国は総じて権益を失うのです。アジア枠に日本、印国が増える、というだけではありません。それこそG4と呼ばれる日本、独国、印国、ブラジルでは、アフリカ枠がありませんし、東アジアに二ヶ国という配分も偏っていて、それなら東南アジアでは? という話にもなりかねません。実は骨格を固める過程で、極めて難しい問題を孕むのが国連改革であり、それは国益のぶつかり、特に米国がそれを望むか? という点にも大きく関わっていくものです。

上記に絡んで、積極平和主義を唱えましたが、これこそお題目だけで実体が見えない内容に留まり、安倍政権に漂う懸念には真っ直ぐ答えませんでした。これは海外紙が積極的にとり上げる、安倍政権とヘイトスピーチを行う団体とのつながり、に関してであり、積極的平和主義が意見の合わない他者を排し、同じ意見の者だけの世界を創ることで安寧を得る平和であれば、それこそ少数はテロ組織や、犯罪組織へと変貌するだけで、何ら平和とは呼べない世界が訪れます。
日本が獲得した旗、という言い方をしますが、日本人でさえその意味がよく分かっていないのに、誰の上に立てた旗なのか? それこそ日本会議の旗だというなら、とんでもないことです。安倍氏の見ている世界は非常に狭く、それこそヘイトスピーチ団体も、その世界に入っているのでは? との疑惑に、この演説では何も答えていません。積極的平和主義を唱えるなら、もっと積極的に、国民に分かり易くどういうことか、それを説明する必要もある、ということになります。

女性が輝く社会に関して、国連演説前にクリントン女史と15分会談し、「安倍氏のコミットメントに夢中」との発言を得ました。夢中? というのはおかしな訳語であり、原文は分かりませんが、通訳も交えると10分も話をしていないのに、1人の女性を夢中にさせたら、大したものです。
しかし国連演説で、早くも齟齬が露呈します。「子育てや介護と仕事の両立が可能な環境を整備」。パッと聞くとその通りと思わせますが、なぜ女性が「子育てや介護と仕事」を両立させなければならないのか? それは男性がしてもよいですし、女性だけに両立を迫る、というのは極めて日本会議的な発想といえます。「21世紀こそ女性の人権侵害のない世界に」と述べてみたところで、女性だけが家事、仕事の両立という話をもちだした時点で、すでに権利意識が希薄なのです。

最後に、気になるのがエボラ出血熱、ウクライナ、イスラム国対策に資金拠出をアピールした点です。金満体質、お金だけの支援を誇らしげに語るのは、やはり他国からは厭らしさしか感じないところでしょう。安倍首相の価値観に大きく偏ったこの演説、当たり障りのない内容、と最初に述べましたが、当たるものと障るものを間違えると、とんでもない内容となる点には注意が必要な、そんな中身になっているのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:00|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月25日

中国企業の上場と、マネーの事情

新型iPhoneが不評です。曲がりやすいボディ、アップデートの不具合。設計段階の問題だけに、企業価値を著しく下げた、と言わざるをえないのでしょう。サムスンの凋落も同様に、スマホブームも一巡し、伸びが鈍化する中でのことですので、より打撃も大きくなるとみられます。
一方で、アリババなど中国企業の海外市場への上場が話題ですが、業績開示やコンプライアンスの問題が解決しないまま、熱狂するのはマネーゲームです。特に、中国で成功している企業は、中国共産党と必ず結びついており、不都合となればいきなり倒産、違法認定されて上場取り消し、ということも起こりうる。今の過熱は、マネーゲームも極点に近づいている、といった雰囲気すらあります。10月になれば否応なく流動性供給の一部が、FRBにより停止される。最後の駆け込みで、どう稼ぐか? それを互いに競い合っているような、そんな動きにすら感じられます。

日経平均が上昇し、年初来高値更新です。ただ今日までは配当権利とりの商いが多く、イレギュラーなものです。一部で、9月末のドレッシング期待、という話もありますが、この水準でお化粧買いを入れる必要はなく、むしろ次のターンを考えるとスタートは低い方がよい、と考える層が多い。年末までに日経平均が2万円、と勇ましい声も聞かれますが、実体を伴っていなければ、単なるマネーゲームで終わります。今はその見極めが非常に重要となってきています。
安倍首相がNYで「円安には功罪ある」と述べ、やっと円安牽制発言を行いましたが、これまでの常識を覆すことが起こりそうです。円安になれば、輸出数量が増えて国が潤う。そうなれば企業も国内で設備投資する。これが景気循環を生む、が一般論であり、安倍ノミクスの鍵です。しかし通貨安インフレは、どこの国でも景気には打撃でしかありません。特に日本は人件費が高く、資源もないので材料の調達コストも高い。国内でモノが売れないのですから、設備投資はしない。よって輸出も増えない。行き過ぎた円高は危険ですが、実は行き過ぎた円安はさらに危険なのです。日本はそのゾーンに、すでに入っているという見方すら出てきているのです。

円安は海外で活動する企業の業績を見かけ、押し上げる。ならば益々国外へと製造拠点の移転をすすめる。業績が上がれば賃上げ、という構図もない。ナゼなら、米国でもそうであるように、自社株買いによりPERをよくみせることが株高要因であり、設備投資よりも自社株買い、が主流です。海外投資家は、見かけ上業績のよくなった企業が、自社株買いを通じた株高対策を打つことを望み、日本に買いを入れるのであって、今の株高はそれが主因とみて間違いありません。
そうして日米欧の企業が流動性を低下させる中、それを補って株券をばら撒くのが中国企業、という構図なのです。だから買いが殺到する、実体を伴わずとも株価が上がる。中国経済が斜陽と云われながらでも、株価が堅調になるのはそんな理由です。これは非常に危険で、株価が実体経済を反映せず、グローバル化が主因でもない。すべてマネーの事情、というのが現在です。

なので、年末2万円もマネーの事情がそうしたければなるでしょう。しかし、そうならないと見ています。マネーの事情は、それを覆す大きな材料には脆いものです。今のところ、その材料は分かりませんが、戦争、パンデミック、環境変動、そしてバブル崩壊など、至るところに火種は燻ります。中国では燎原の火、という言葉もありますが、今はそれがマイナス方向には強く働き易く、市場がすべてを楽観的に捉えがちだからこそ、不意の変動には弱くなっている、ということでもあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:01|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2014年09月24日

国連の気候変動サミット

神戸の小1女児が最悪の形で発見され、容疑者が逮捕されました。先走るメディアは心理学者をよび、幼児性愛か? などとしているようですが、現状分かっている範囲でそれを疑わすものはありません。ただ少し気になるのは、元自衛官で無職という経歴です。通常、元自衛官は予備役として登録され、防衛省の斡旋で再就職できるとされます。元自衛官のすべてではないので、その選から洩れたのか? それが個人の資質、能力によるものだとするなら、武器を扱える人間であることを考えると、極めて危険人物だった、ということにもなります。警察も早くからマークしていたようですが、もっと防衛省と警察庁が情報共有を行って、元自衛官で素行に問題のあるケースなど、しっかりと管理していくことが国民の安全、安心につながると感じます。

国連の気候変動サミットが閉幕しました。俳優のディカプリオ氏が演説するなど、世界の流れがまた変わった印象ですが、12月のCOP20で新枠組みの草案を示す、としています。CO2の二大排出国である米中が、2020年以降の取り組みについて来年の早い時期、3月末と明確に時期を示して語るなど、環境悪化による経済の悪影響が、両国とも深刻になってきたことを窺わせます。
ただ気候変動にCO2が関わるのか、排煙、粉塵などが関わるのか、それとももっと大きな地球の流れなのか、今ひとつ議論が尽くされていません。そもそも、米国はシェールガスという、新たなCO2の排出要因を抱えており、今の米経済がシェールガスに頼っている以上、それを止めることはできません。中国とて、露国から天然ガスパイプライン経由で購入を約束しており、減らせるかどうか定かではありません。それ以上に、日本に対して無償で粉塵除去、CO2除去装置を求めてくる、そのために国際社会で結論をだすことに合意したのでは、とも読み解ける動きです。

一時期話題となった排出権取引も、今は下火です。結果的に、それはCO2削減ではなく、先進国からの富の移転にすぎず、経済活動の側面しかもたなかったから。それでは逆に、CO2を増やすことにもなります。日本ではすぐに原発再稼動と関連付けられますが、サミットでも原発云々の話がでた、とは伝わりません。製造から、最終的に高レベル廃棄物の保管、管理までを含めると、原発がCO2対策になるとは考えないのが、世界の流れです。それに、原発停止による電気料金への価格転嫁分は、電気料金のコストアップ分の2割にも満たないのが現状であり、残り8割は円安と原油、天然ガス高が影響します。経済的側面からも原発でCO2削減、とは謳えないのが現状です。
恐らく、もっともCO2削減に効きそうなのが、世界経済の減速です。実は、中国が前向きなのも、それこそ自国の景気悪化で目標達成が容易い。また、CO2削減を名目に、上記したように日本からの投資を国際協力という名目で、安く呼び込める、との算段があるとみられます。CO2削減、その効果も不確かな中、世界の流れにのって日本が強力などを約束すると、削減されるのは日本ではCO2ではなく、Companyになってしまうかもしれません。米国で本社移転を規制する法案も成立しましたが、CO2削減でさらに活動しにくくなると、新興国へと企業が移転してしまう可能性もある。地球温暖化の主因と、その対策という点への深堀りが不足した中、単に国際社会が前向きになったというだけで、喜べる状況ではない、ということなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 海外 | 一般

2014年09月23日

雑感。安倍首相の国連総会出席

米国がシリアへも空爆を始めました。イスラム国を世界の脅威と位置づけ、事実上容認とされるシリアのアサド政権を飛びこしての攻撃です。ただ空爆は誤爆、民間人の被害も想定すると、根深い米軍不信を生みかねず、泥沼に入ってしまったようです。中間選挙の前に、米国がスタンスを鮮明にした形ですが、中東をどう安定に導くのか、その戦略もなく一方を叩いても、雨後の筍のように別の組織ができるだけです。そうしてできるテロ組織が、徐々に拡大している傾向をみれば明らかなように、学習し、組織強化を図っている。そのいたちごっこは今後も続くのでしょう。

安倍首相が国連総会出席で、渡米しています。深刻なのは、当地でディスカッションした中で、経済成長に関して「女性、高齢者の活用」と掲げた点です。以前から指摘しているように、今はミスマッチが問題です。公共工事には若い男性が必要であり、女性や高齢者は事務職など、肉体的な負荷のかからない職場を好みます。労働人口の減少への手当て、という意味で述べたのでしょうが、ミスマッチ解消への施策を示して、初めて成長戦略と呼べるものになるのです。
外交面では、プーチン露大統領の訪日を延期する方針を政府が固めた、と伝わります。一方で制裁し、一方で北方領土交渉はできません。米国重視、の安倍政権が米国の意向に逆らえなかった、という顛末ですが、その軸を外さない限り、北方領土も拉致問題も前へ進めないことがはっきりしました。米露、米朝が仲良くするときでないと、日本は交渉もできないということです。

北朝鮮は核問題で、露国はウクライナ問題で、米国は制裁を科しています。外交交渉はギブアンドテイクですから、日本が何かを与えないと相手も交渉に乗ってくれず、米国の制裁をふり切って、日本は条件を出さなければいけません。それは極めて困難で、タフな外交交渉が必要となります。残念ながら、日本にそれだけの交渉をまとめられる逸材はいない。それはTPP交渉で結果がだせないことでも同じ。最初に期待をあおりすぎたことで、収拾がつかなくなり、折り合いがつけられない。それは露国、北朝鮮との交渉でも、同じことをくり返しているのが現状です。
安倍氏が日中首脳会談に意欲、と伝わりますが、交渉は確実な結果がみえてから、情報を開陳するのが原則です。この時点で、日中首脳会談はまだ何の進展もない、ということが読み解けます。恐らく、中国側からの接触があっても、双方で条件面に折り合っていないのでしょう。国連改革にも前向き、と伝わりますが、では日本からどういうプランが提示できるか? 実は、具体策はほとんどないか、あっても支持が得られない内容になるとみられます。結果的に、ここも米国を軸としている限り、多くの国から支持される計画を打ち出せない、ということでもあるのです。それが安倍外交の限界、期待値の煽り方は凄まじいのに、結果が何も伴わない。円安に誘導したことでも、海外からは不信感があるともされており、国際社会での日本の評価、という意味でも安倍氏の国連演説はより興味深いものとなるはずです。テロ組織でさえ学習し、生き残りをかけている今、日本だけがのほほんと外交している。国際社会の厳しさを痛感するのか、それが試されるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月22日

雑感。朝日叩きに一石?

8月全国スーパー売上高が前年同月比0.1%減となりました。7月の2.1%減より減少幅が低下した、といっても衣料品は3.6%減、食料品は1.0%増ですから、百貨店売上げのときも述べたように、食料品などは3月に買い溜めした分がなくなり、補充が必要になったことで山がきた、という形です。そのしわ寄せはコンビニエンスストアに来ており、既存店売上高の前年同月比2.4%減です。割引品の多いスーパーに客が流れ、コンビニで買い物を済ます人が減った。ついで買い、が基本のコンビニで、ついででも買わない、財布の紐がしまっている、というのが読み解けます。
8月食品スーパー売上高は前年同月比1.6%増、4ヶ月連続の増加です。これは食料品などに特に多い、昨年度までの税込み価格に、税抜き価格と書いただけの値札が影響しているとみています。税込み価格には5%の消費税がかかっており、実質的に便乗値上げですが、円安の影響もあり、価格転嫁の面も含まれている。売上げ数量は変わらない、もしくは低下しても、売上高は高く推移する、といった傾向もみられます。これがしばらく続いても、業績面では厳しいかもしれません。

朝日新聞の2大誤報問題で、新たな展開がありました。池上氏が週間紙上で、かつて他紙でも掲載中に打ち切りにあったこと、及び恐らく読売新聞の週刊現代の広告を停止する、といったことにふれ、批判できる立場か、疑問を呈したからです。一部で、朝日新聞を国会喚問する、と息巻く向きもありますが、私は基本的に反対です。以前から指摘しているように、保守系の一部には、中韓を敵視するのと同時に、中韓と同じことをして相手国を叩こうとする傾向があります。
まさに昨年の流行語「やられたらやり返す、倍返しだ!」とでも言うのか、ヘイトスピーチもその一環でしょう。しかしせっかく韓国が、産経のソウル支局長を取り調べ、世界から韓国は言論統制する国、とみられているとき、日本が同じことをして、わざわざ韓国と同じ、という印象を世界に喧伝する必要はありません。一部で、朝日社長を安倍氏が海外に連れていき、誤報の説明をさせる、といったプランもあるようですが、それこそナンセンスです。言論の自由が約束されている、とアピールをする絶好のタイミングを放棄し、朝日新聞と一緒に心中する必要はありません。

それ以上に問題は、先にもとり上げている「ムードを壊すな」という言葉で、正しい報道が封殺されていることです。北朝鮮の報告先送りに対し、安倍首相は「やっぱり」と思っているはずだ、とオトモダチの評論家が述べていますが、ではなぜ国民や拉致被害者家族の期待を煽る真似をしたのか? 下交渉でつめて、もう大丈夫となってから発表すべきではなかったか? 軽々しく期待を煽ったこと、それこそ罪深いのです。そうした批判を報じたところは一社もありません。
政治と同じ方向をむいていれば、一先ずメディアは安泰ではあるのでしょう。しかし裏で一体どれぐらいの情報が封殺され、原稿が廃棄されているか? その多寡について論じることなく朝日新聞だけを叩いても、メディアが改心することはありません。むしろ他社を批判し、発行部数をのばすといった手法をとるところは、自社の記事によほど自信がないのでしょう。新聞は、記事の正確さ、論評の正しさで評価されるべきであり、それはどの社も三流以下の状況です。

速報だけならネットで十分、新聞の情報伝達速度が、著しく遅くなった今、それこそ分析力が問われていますが、そこが不十分。経済指標などをみていると、それがとてもよく分かります。池上氏だけが今、日本のオピニオンリーダーで、そこに便乗して他紙叩きをしているような新聞に、矜持というものはないのかもしれません。その池上氏から突き放されて、新聞は放浪するのかもしれません。消費税増税の悪影響、新聞もうけているのだとすれば、購読者の減少がおきていてもおかしくありません。『消費税増税の悪影響』と書けない新聞の事情、愈々、メディア淘汰が加速していることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:05|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 メディア | 社会

2014年09月21日

雑感。G20の閉幕

G20(20ヶ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)が閉幕しました。ルー米財務長官が、日本に対し「経済活動の縮小により困難に直面」と語っています。これが海外からの日本の見方であり、「困難」という言葉が示すように、決して良い状態ではない。株高、などと日経なども囃しますが、ドルベースでは下落していたり、円安により持分が減ったから買う、という技術的側面のみが、株価を押し上げる要因です。その内、日本への投資比率を下げる、という話になれば、一気に売ってくるかもしれない。それが「困難」という言葉にも表れているのです。

IMFのラガルド専務理事が「それぞれに特殊性があり、処方箋も異なる」と述べましたが、当たり前です。財政規模も、経済政策も異なる国で、同じ手法が通用する、というような万能なものはありません。金融政策も日米欧で差が出てきたように、効果のあらわれ方は一様ではありません。基軸通貨としてのドルをもつ米国は、危機においても投資が集まる
環境にあり、それが好循環をうみ始めた。失業率が高い欧州、増税した日本、いずれも失速が目立ってきています。
簡単に言えば、金融緩和は資金の流れは生みますが、それは国内でなくともいい。欧州だろうと、日本だろうと、緩和をすれば成長しそうな国へと流れてしまう。なので、経済成長を考えるなら、金融緩和は意味がありません。金融不安があるときにのみ、効果のある対策なのです。一部で、国から資金が逃避するので通貨安は招きますが、その効果がでるかどうかは、国の産業構造に大きく左右される。残念ながら、サービス業が主要な先進国では効果は薄い、ということになります。

財政出動に関しても、何に支出するかによって効果は異なります。日本は未だに製造業を呼びこむための、インフラ整備などがメインで、サービス業への波及効果が低い。工業団地などをつくっても、日本から工場が減っていく中で奪い合いになるだけ。それではダメなのです。
G20ができること、それは国の事情ごとに異なる施策、経済環境を統一的に扱うことではありません。不公平、障壁について各国がとりくむ、という問題意識を共有するだけで十分です。逆に言えば、それ以上のことは話し合っても井戸端会議の延長程度のことにすぎません。

麻生財務相が、景気減速ではないと説明するのに苦心した、と伝わります。震災直後をこえる景気の落ちこみとなれば、どんな災害が? と各国も不審がるでしょう。消費税増税災害、スタグフ災害、とでも呼ぶべきなのかもしれません。世界は、確実に日本への見方を厳しくしている。G20の集合写真をみると、中央よりやや右よりに麻生氏、黒田氏は位置しました。右によっているばかりで、経済を蔑ろにしている。そう公然と非難される日も近いのかもしれませんね。


analyst_zaiya777 at 22:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2014年09月20日

8月の全国百貨店売上げ

8やはり、北朝鮮は調査報告を先送りしてきました。菅官房長官の会見もみっともないことこの上なく、安倍外交の戦略性のなさ、を俄かに露呈した形です。あれだけ国内の期待を煽れば、当然北朝鮮とて高い見返りを要求する。しかも日本をテコに、中国の支援を受けられそうですから、尚更北朝鮮は焦る必要がなくなった。完全に安倍外交の敗北、拉致問題解決は困難になりました。
問題は、中国が北朝鮮への支援を解除する条件に、六カ国協議の復帰を求めていることです。欧米の制裁で、ガスの販路を中国に求める露国、接近する韓国、六カ国協議は日米が蚊帳の外、中国主導となることが鮮明です。日本だけが浮く、そんな懸念すら漂う状況となりました。

日本百貨店協会が発表した8月全国百貨店売上高、前年同月比0.3%減でした。台風など天候不順が原因、としますが、昨年と比べて8月の台風の発生件数は半分、集中豪雨はありましたが、これは理由が異なります。内訳をみると衣料品1.2%減、食料品0.6%減、美術・宝飾・貴金属4.2%減、化粧品4.1%増。6月4.6%減、7月2.5%減より、減少幅が低下しているという意見もありますが、この内訳からみると、消耗品の減少幅が縮んでいる。つまり、3月に駆け込みで買った分がなくなり、控えていた購入を再開した。それが山と谷を生んで化粧品などが伸びた、ということです。
衣料品や宝飾品は相変わらず伸びていないので、購買余力は右肩下がり、が正しい説明となります。月例経済報告で示された天候要因でもない。いい加減、こうしたウソで糊塗した説明はやめて、正しい報道をすべきですが、安倍政権では無理。それは政権発足当初から、巷間でも語られた「ムードを壊すな」という、意味不明な言論抑圧姿勢にも現れているためです。

そのムードが本当に正しいのか? つくられたものではないのか? という検証、反論すらさせず、否定的意見を「ムードを壊す」といって、封殺したことは21世紀型の国民統治手法に他なりません。スポーツでも同様、みんなで応援しなければ「なぜ?」と不思議そうに訊ねる。別に、興味がない人はそれで構わないはずなのに、それを『悪』という空気でしばりました。
景気も「悪い」と言ってしまうことはムードを壊す。せっかく安倍ノミクスで盛り上がったのだから、と言って反論、批判は封じられます。しかし、そのムードが誤っていたら? 今のように実感なき景気回復、という小泉政権時代の二の舞になります。むしろ当時よりさらに悪化している。ムードに酔っていると、気づいたときには身ぐるみ剥がされているかもしれません。

外交も同様、北朝鮮との拉致解決が頓挫し、安倍外交の行き詰まりが露呈しました。地球儀外交どころか、北方領土も拉致問題も解決できない。喧伝されていたこと、ムードを壊さないようにしていても、実態はまったく異なるのです。かつて『空気が読めない』、KYと呼ばれた人物が、『空気を読めなくさせた』。それが「ムードを壊すな」という言葉です。言論抑圧された現代のことを、未来になって批判するとき『安黒時代』と呼ぶのかもしれません。安倍氏と黒田日銀総裁によって演出された、国民無視の経済政策が打たれた時代、国民の目を晦ます『暗黒』とかけてそう呼ばれるとしたら、今のうちから迷わないよう行動しておくことが大事なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:58|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2014年09月19日

スコットランドの独立選挙

昨日、年初の日経平均の水準を、なぜかダウ終値と勘違いしていました。正確には104.7円で日経平均は16121.45円。ドルベースなら153.98。今日の終値は109.1円で16321.17円。ドルベースなら149.60です。イベントドリブン型の買いが入り、株式市場はSQ並みの売買に膨らみましたが、やや盛り上がり過ぎの印象です。ナゼなら、スコットランド独立を阻止したからといって、状況は何も変わらない。現状維持にすぎません。不透明感の払拭だけで買い続けられるわけではありません。

そのスコットランド独立投票、賛成44.7%、反対55.3%でした。英政府は勝利宣言をだしていますが、これはここからが難しい話です。例えばアイルランドに存在したIRA、武装闘争により英国をアイルランド島から追い出す、との目的で活動し、テロを頻発させました。分離、独立には大きなエネルギーが必要で、そのエネルギーを厭わずかける、という意志をもつ人間は、鬱屈した感情をそうした組織に向けがちで、今回の結果は、そうした極右勢力を生む可能性があります。
さらに選挙期間中、英政府が約束した大幅な自治権の拡大。これから条件闘争、詳細について決定されますが、それがスコットランド側に不利とみなされれば、再び独立の気運が高まる怖れもあります。何度もくり返せば、独立賛成派が勝つ可能性も高まります。スコットランドの人々を納得させるには、それなりの産業支援、経済発展なども手を打たなければなりませんが、そうして実力をつければ、いずれ独立しても自主自立できるということにもなりかねません。

結局、根底にある差別意識、抑圧されているといった感情を払拭しなければ、同じことを繰り返します。今回、当初は3割程度とみられた独立派が、過半数近くまで伸びたことは脅威です。これで独立派が明確なビジョンを打ち出し、再選挙となれば簡単に結果は覆るのです。そのシミュレーションを今回、行ったのだとすれば、それは明日の脅威を持ち越しただけなのです。
しかも独立をめざす他の地区に、危機感が芽生えると、独立の動きにムチが入るかもしれません。つまり勢いだけで、独立を目指しているなら脅威は低い、今回のようにアメとムチでムードを変えてあげれば、結果が変わる可能性もありますが、腰の入った、戦略をもった独立の動きにつながると、それこそ厄介となります。他の地区にはそれぞれ独自要因もありますが、元々欧州は多民族、多国家が今の形に集約されているだけで、未来永劫現状のまま、ということもありません。

19世紀、自由党党首だったグラッドストンは「光栄ある孤立」と使いました。経済力をつければ国力も増す、として英国一強主義を貫いた際の言葉です。これから、英国は「興廃する孤立」に陥っていくのかもしれません。連邦制に移行するのでは? とも語られますが、経済面に不安を残す中、なりふり構わず独立を阻止したものの、そのツケを今後どう解消していくか? その結果次第では、英国の凋落が加速しかねない、ということになってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 欧州 | 一般

2014年09月18日

米FOMCと円安

米FOMC後、急速に円安がすすみます。功罪については様々な意見があり、様々な立場からの発言でもあって興味深いのですが、経済関係者の発言には注意が必要です。特に、円安になれば輸出増、と述べていた人物らはその見解を撤回しておらず、未だに円安容認論に傾き易いためです。
日経平均が上がった、という報道にも注意が必要です。昨日107.1円の終値が15889円、今日108.6円の終値が16068円、ドルベースなら148.36と147.96。実は、値下がりしているのです。年初の104.8円で16531円は、ドルベースなら157.74。海外からみると、まだ日経平均は年初の高値に届いていません。だから買い余力がある、と考えるのは誤りです。むしろ為替感応度が低下しており、外国人投資家も円安が日本経済にとってメリット、とは考えなくなっている。それ以上に、日本への評価が年初から徐々に低下している、そのことが今後、悪影響をもたらす可能性もあります。

FOMCの内容は、声明文はほとんど変えず、出口戦略についてより明確になり、しかも経済見通しからも市場予想からは前倒しされる見込みです。ただし出口戦略はよりハト派になり、債券償還分の再投資を利上げ前から、利上げ後に停止。MBSなどの資産は利上げ開始後、3〜5年で全廃、としていたものを縮小と言い直しています。つまり利上げ開始まで、景気に変動を与える要因はなくなり、それを好感する形で各市場がばらばらに動いている、というのが今日の流れです。
米10年債は若干売られたものの、短期債はほぼ横ばい、為替はドル高、米株市場も横ばいでした。株式市場、債券市場からみれば、本来は悪材料のはずですが、利上げ時期だけチェックすればよく、その前に債券再投資や資産売却とはならず、不透明要因は晴れました。為替市場は期待値で動いています。しかし本来、債券利回りが動いていないので、ドル高は単にイベントドリブンで動いているだけに見えます。実際、先々週はドル買いポジションを若干低下させており、軽くなったポジションをもう一度、今後のドル高にかけて買いを入れた、といったところなのでしょう。

しかし実は、米債券市場には若干の逆風が吹き始めています。最大の米債保有国、中国の減速です。不動産市場は値下がりが続き、景気減速は鮮明です。今、ドル高なので外貨準備として米債を買う必要はなく、むしろ予算確保にむけて米債を売りたい衝動があります。特に、今後金利が上昇するなら、尚のこと値下がりを避け、売ってくるという戦略が考えられるのです。
一見、堅調といわれる米国経済が足元を掬われるのは、世界経済の減速をうけた新興国の動向、ということになるかもしれません。そして本来、それは日本も同じです。今、円安が景気にどう影響するか? 観光客が増えたから、輸出企業の業績が増えるから、円安はいいことだ、という意見もあります。しかしそれは規模やそれが国内経済にどう還流するか、という経路次第の話です。円安で輸出企業が潤っても、賃上げに結びつきにくい点はこれまでも指摘していますが、それで株価が上がったとしても、潤うのは市場の7割を占める外国人投資家なら、やはり影響は軽微です。観光客の増加など、国内の中小企業や家計に与える影響を考えたら、やはり軽微なのです。

本当に円安が、日本経済に好影響があるというなら、それを納得のいく形で説明する必要があるのでしょう。残念ながら、それに納得いく説明をする人は未だに存じません。日経平均のドルベースのように、海外からは円安=害と看做されている。経済全体のパイをどう増やすか? といった全体像がなく、円安に頼ってきた安倍政権のツケが、ここにきて行き過ぎた円安に対応策を失わせている。もっとも海外要因でこれだけ振り回されている時点で、安倍ノミクスへの評価は自ずと知れてくる、ということでもあり、株高などと浮かれている状況ではないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2014年09月17日

日本の若者は増税賛成?

安倍政権では色々と異例なことも起きますが、安倍首相と菅官房長官が、同時に東京を離れています。両者がいなくても問題ない、と政府は抗弁しますが、だったらこれまでのことは過剰対応だったのか? その説明が必要です。多くの住民が亡くなっていても、別荘に行ってしまう首相ですから、何かあっても閣僚が対応すれば問題ない、というつもりかもしれませんが、以前も指摘したように、即応する必要があるとき、連絡している間に手遅れとなる恐れがあるので、指揮命令系統のトップは常在する必要があるのです。不意におこるトラブルより、福島、沖縄県知事が重要ということなら、それは国でなく党優先の姿勢、と批判されることになるのでしょう。

経済財政諮問会議で、消費税再増税議論がスタートしました。安倍氏は「収益を賃金に」と述べますが、頓珍漢です。数量ベースで輸出が増えていない以上、国内で賃上げする必要性は皆無です。ナゼなら円安による嵩上げだけで、円高になればその収益は消える。見かけの企業収益に騙されると、安倍氏のような意見になります。しかし逆に、安倍政権はそれを目指してきたのであって、効果がないのはおかしい、と考えているのでしょう。経済政策が根幹から間違えています。
最近の若者は、消費税増税に前向き、とされます。負債を抱えて引き継がれても困る、今のうちに財政再建して、という考えだそうですが、これは財務省に騙された論です。例えば国民が100万円の所得で、5万円を税としていたものが、8万円に増税されたとします。すると、経済規模は95万円から92万円に縮み、課税ベースが変わる。単純な足し引きなら増税して財政再建ですが、それは誤謬でしかなく、縮小した課税ベースを元に算出すれば、減税にすらなりかねません。実際、増税しても税収減というケースは多く、成功するのはそれを補う経済成長があったときです。だから安倍政権は昨年、財政出動、金融政策で無理やり成長しているように見せかけた。持続的に成長するか、財政出動などを継続的に行わなければ、税収はマイナスになってしまうのです。

安倍ノミクスには成長戦略がない。だから、雇用が回復と云いながら、実質的には非正規雇用が30〜60万人と伸びており、正規社員は横ばい。なので実質賃金はさらに低下する。企業も今が一時的な好景気と知っているので、賃上げは将来負担になるので行わない。結果的に、安倍政権では益々若者にしわ寄せがいっている、という構図なのです。政府はよく増税した分は歳出となるので、経済規模は変わらない、という言い方をしますが、その使い道が公共投資偏重で、今となってはメンテナンスに多額の予算が必要となった。また本来は92万円の予算規模なのに、借金を加えて100万円にして使っている。歳入が増えれば歳出も増える。これでは将来の負担が増えるだけです。
先に示したように、増税が成功するケースは成長している場合だけ。それを、諮問会議では13年10-12月より14年1-6月期は0.7%増えている、として増税賛成の論陣をはります。月例経済報告でも、4-6月の落ちこみの原因を天候要因にするばかりで、増税の悪影響については口を閉じます。そうした歪んだ発想がある時点で、経済財政諮問会議のだす方向性は疑わしい、となるのでしょう。

かつては上げ潮派、と目されましたが、自民のこの派は竹中路線の経済成長をめざす、という方向性であって、ここが最大の誤りです。そもそも、富裕層の消費、企業の設備投資で経済成長をめざす、という路線なのに、消費税を増税してそこに打撃を与えているのですから、本末転倒なのです。法人税を減税しても、今流行りの自社株買い、に消えるだけです。ナゼなら、それが経営者を評価する尺度だから。賃上げでは、経営者失格の烙印すら押されてしまう。堅調なのは物価と株価だけ、とも揶揄されますが、その評価基準をおいているからこそ、安倍政権では益々若者は搾取される立場にあり、増税もその一環、ということになってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:11|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2014年09月16日

雑感。野党の動き

英国のスコットランド独立の動きに関し、北海油田の将来性が話題に上ります。賛成派は石油利権を得られる、と喧伝し、反対派はいつか石油は枯渇する、といいます。しかし英国と連合王国をくんでいても、石油の枯渇は同じ。つまり枯渇するまでに対策を打つのが英国政府なのか、スコットランド政府か、の違いだけです。スコットランドの民が、自分たちのつくる政府を信じるなら独立するでしょうし、自分たちでは無理、と思えば英国に残るのでしょう。
しかし英国も露骨で、これまでの圧政が民族的に強固な反発心を生んできましたが、ここにきて懐柔策を、硬軟わけて使います。独立されれば、英国は二流、三流国へと転落するのですから、当然でしょう。北海油田と金融取引に頼りすぎた経済運営のツケですが、結果は考える以上に重大となるはずです。世界全体に流れる、民族独立の流れは国家の弱体化、という背景もある。イスラム国に若者が流れるのも同様です。リーマンショック後の世界が、未だその痛手の中にいる、ということの一つの結果でもあるのでしょう。

民主党の海江田体制の執行部が、全面刷新されました。代表代行に岡田氏、幹事長に枝野氏など、反海江田派をとりこんで挙党体制を演出、という体です。支持母体からも「党がばらばら」と苦言され、統一地方選で負ければ党が瓦解しかねない、との危機感から右も左も手を結んだ。決して褒められませんが、NO GAMEにならず、一応は戦闘体制を築けたということでしょう。
維新の党も、やっと結いと維新が合意しましたが、旧維新は旧太陽との曖昧な合流で、国会の党運営のほとんどを握られ、煮え湯を呑んだ経験があり、吸収合併という優越的地位を得たい。結いは対等合併を望む、という綱引きでした。しかし本来は旧政党には拘らずに、能力本意で党体制を築かなければなりません。結果的には縄張り意識を残したままの合流であり、期待値は下がります。それは民主と同じ、数合わせで勢力を拡大しても、いずれ「党がばらばら」になりかねません。

次世代の党は結党大会もありましたが、自民補完勢力であることを、あえて全面に打ち出しました。日本会議のメンバーが多く重なることからも、想定通りの動きです。一方で、みんなの党は自民との協力を模索する渡辺前代表と、浅尾代表との対立が表面化。内紛状態となっています。
ナポレオンの言葉に「私は二年先のことをしている」があります。今のことで政党がごたごたする姿を見ると、政治家の質が低下した、と感じます。与党との関係を「是々非々」と語ることもそうですが、時に応じてそうであっても、それを明言しておく必要はありません。結果的にそれが縛りとなり、意見、主張の隔たりがある人にとって、是々非々なのに自分が賛成する意見を党として否定した、という禍根にもなりかねない。対決姿勢を貫く、と明言しておけば、与党になる目的のために反対する、という態度をとれることになります。二年先のことも考えられず、目の前の統一地方選にむけた体制つくりに勤しむ。そうした政党に期待が集まるとはとても思えず、野党のごたごたに最もほくそ笑むのは与党だけ、ということになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:06|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月14日

日朝交渉の難しさ

北朝鮮との拉致再調査交渉が、どうも暗礁に乗り上げている印象です。前のめりな安倍政権の足元をみられ、高い見返りを要求されている、というのが正しいのでしょう。ここに来て、中国が今年に入り、北朝鮮への原油輸出を停止し、核問題における北朝鮮の妥協を求めていた、と報じられています。これは日本の交渉にも影響し、日本が安易に妥協すると、世界の潮流から浮く、ということになる。日朝が接近することに、中国側が楔を打ってきた形となります。
一方で、日中韓は外務次官級の会談を開催しており、また韓国外相が日本の大使と会談するなど、中韓は硬軟をつかい始めました。韓国にそんな戦略はこれまで見られなかったので、これは中国の振り付けでしょう。中国はこうして時折軟化し、懐柔策をとってきますが、今回は対日工作というより、対北へのメッセージという面が強いとみています。日中韓が接近すれば、日本として対北融和策はとり難くなる。日本に接近しても無意味ですよ、と伝えているのです。日本には足枷が、北朝鮮には足踏みを促す、そんな戦略をとってきたように見えます。

米国はイスラム国との戦闘を表明したものの、地上部隊は送らず、空爆のみで周辺国からの参戦を促す、という奇妙な作戦をとっています。いくら武器を供与されても、自軍の兵士を危険にさらすことを、そうそう納得はしないでしょう。特に、イスラム国はイスラム世界の多数派、スンニ派を母体にしており、自国に危険が及ばない限り、イスラム世界としては関わりたくないのです。
しかも米国がイスラム国との戦闘に明け暮れると、当然のように北朝鮮への圧力も減る。ウクライナ問題は、露国への経済圧力だけで、西側諸国も戦争しようとまではしませんが、これも米国の足を引っ張っている。米国が東アジアより、中東、中央アジアに軸足をおけば、中国の影響力が相対的に増してくる。日本はその中国と、北朝鮮問題では連携するのか、距離をおくのか、改めて考えなければなりません。日本への軟化姿勢とは、即ち中国にとっては日本をとりこみ、東アジアの主導権をにぎる、という目的もある。それにどう対応するか? 北朝鮮問題は、改めて東アジアの覇権争いとして、日本は戦略を立て直さなければいけないのかもしれません。

北朝鮮がベットを積み上げるのも、中国の入れ知恵でしょう。金体制としても、これまで疎遠だった中国が、日本への接近を起爆剤として軟化し、懐柔策をとってくれるなら御の字です。あえて拉致問題を解決し、日本との友好関係を築く必要もありませんし、中国から背中を刺される怖れが緩和される、となれば日中の綱引きなど、自ずとどちらにつくかは決まってきます。
安倍政権は北朝鮮問題の解決を喧伝し、政権浮揚に利用しましたが、ここにきてそれが裏目になり始めた、ということなのでしょう。解決に絶好のタイミング、などと語られ、国民の期待値は上がってしまっている。しかししたたかな中国は、日本がそういう状況であることを知り、北朝鮮を取りこみ、日本へと接近する。そうやって中韓の敷いたレールに日本が乗せられてしまうのか? そうなると拉致問題の解決は? 実は今、安倍政権に重大な試練となってきたのが、北朝鮮外交ということになるのでしょうね。

明日は一日、お休みしたいと思います。

analyst_zaiya777 at 23:04|PermalinkComments(9)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 アジア | 政治

2014年09月13日

増税しないリスク?

翁長氏の沖縄県知事の出馬会見で、辺野古移設阻止の具体策、などを訊ねる記者もいましたが、知事になっていないうちから手の内を明かしても、国に戦略を準備させるだけです。仮に止める手立てが乏しいとしても、時間稼ぎをして情勢変化を待つ、ということも可能であり、ここで「具体策語らず」などと書くのは、翁長氏が知事になっても移設は止められませんよ、という印象操作にすぎません。移設賛成のメディアにとって、手の内を明かしてくれれば対抗策をうち、明かさなければ「語らず」と書く。ためにする記事、ということになります。

朝日新聞による吉田証言の謝罪、訂正でも同様ですが、人の語る内容がすべて事実、などと考えるのは愚です。それは慰安婦の証言も同じ、度々指摘していますが、泣き叫ぶのを無理やり…などは、事実として起こる可能性はほぼゼロです。通常、犯罪に巻きこまれそうなとき、人は怯えて何もできず、感情も極力抑えます。抵抗すれば殺される局面で、泣き叫ぶぐらいの気概があるなら、逃げるか、戦うかします。そんな面倒な相手は、まず殺してしまうのが常套手段であり、よほどその相手を狙ったものならまだしも、生き残れていないはずなのです。
これには扇動家、私は振付師とも呼びますが、証言を捻じ曲げ、事実を歪曲させて相手に与え、それを証言させる人間たちの存在があります。扇動家の存在は、真に忌むべきであり、騙されると朝日新聞のようになります。しかし最近、別の意味で扇動家の存在を意識させるものがあります。

それは「増税しないリスク」と語る人物たちです。黒田日銀総裁、谷垣自民幹事長、経済評論家など、こぞって最近使い始めたこのフレーズ。実は財務省の振り付けによるものです。しかし、この言葉の真の意味は「財政再建できないリスク」であり、つまり増税しなくても財政再建ができれば、別に構わないのであって、増税は手段の一つ、例えば議員歳費の削減、公務員給与の引き下げ、ムダ遣いの削減などでも、財政規律に合うようにすれば、そのリスクは回避できます。
しかし概算要求をみても、消費税増税による歳入増の分捕り合戦になっており、ムダ遣いは一向に改まらないどころか、拡大傾向にある。歳出削減が不可能だから、歳入拡大を国際的に喧伝しないと、国の信用が低下する、と言いたいのです。その自分勝手な都合、財務省主導の言説に欺かれていると、それこそこの国は終わります。どう贔屓目にみても、今の日本に再増税に耐えられる体力はない。増税しないリスクどころか、景気後退に陥るリスクの方が大きくなるのです。

しかしここ最近、民主党政権の管氏、野田氏など、財務省の言うことを素直に聞く、と評価されて首相になった人物ばかりで、麻生財務相が財務省の代弁者になったのも、それが首相への道、と考えてのことです。上げ潮派と目されながら、増税にふみきった安倍首相とて、財務省の意に反するのが怖かったから。今、政治家が財務省と反目することは、権力から遠ざかるのと同義、と呼べるほどになっています。だからこぞって財務省の振り付け、「増税しないリスク」と語り、ご機嫌とりをしている。そんな人物たちに、まともな政治、経済運営ができるはずもありません。
財務省の吹く笛に踊らされていると、やがて日本は地獄の底まで連れていかれるのでしょう。ハーメルンの笛は、最初はネズミを退治して民から喜ばれましたが、最後は子供たちを誘拐して、姿を消しました。それは、高齢化した日本の姿にも重なります。「ためにする記事」に騙されていると、日本が国際的な信用を失う、どこかのメディアと同じになりかねない、となるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 22:54|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | メディア

2014年09月12日

雑感。朝日新聞の誤報について

昨日、内閣府から発表になった7-9月法人企業景気予測調査、普段はそれほど注目されない指標ですが、今回は増税判断に絡むため、7-9月の指標はどれも重要です。大企業の景況判断BSIは11.1、前回調査より2.3の悪化ですが、プラスを維持。中小企業は-10.0、前回より6.3悪化です。現状も小幅に下方修正ですが、先行きも小幅に下方修正であり、想定より回復が遅れていることが示されます。
ただしこの調査、注意が必要なのは『上昇、不変、下降、不明』のように多くが4択で、しかも上昇‐下降のように、引き算で算出される点です。経団連の要請があり、大企業は好調と答えがちで、それが結果にも反映され易い。今年度の売上高、経常利益とも小幅に改善する見通しを示しますが、BSIの悪化とは必ずしも合致しません。8月15日の回答ですから、まだメディアの安倍ノミクスへの懐疑的な報道が本格的に始まる前、この調査にはまだ期待値と、政府要望により協力する企業の思惑、という流れの中でとられた結果、ということになっているのでしょう。

朝日新聞社長の謝罪から、様々な反応があります。9.11ショックともされますが、恐らく朝日新聞にとって最も痛撃なのは、海外から『ゴシップ紙』との評価が定着してしまうことでしょう。これは連携や、記事の発信力という点で大きな影を落とします。つまり朝日の記事をつかって、何か記事をかくと誤報、捏造の可能性が高いとなれば、海外紙も用いなくなります。それがひいては朝日新聞の評価は低い、という国民の見方にもつながる。二流紙、三流紙は定期購読もされないため、長期契約が結び難くなる。今回、与える影響はそれだけ大きい、ということになります。
しかし政府を阿諛追従する記事をかくメディアが、海外紙でとり上げられるケースは極めて稀です。日本だと、自分たちの記事を補完するため、そうした斟酌もなく海外紙の論調をそのまま載せてしまうケースも多いですが、こうした点でも日本のジャーナリズムに遅れを感じます。政府も、今回の件で朝日新聞を叩きすぎると、さらに右傾化、言論統制の批判を海外からうけてしまうため、自重している面がありますが、保守系メディアは鬼の首をとったように朝日を批判します。しかし日本メディア全体の質が低い、は海外から受ける一定の評価であるのも事実です。

朝日が重宝されたのも、結果として政府批判、体制への反抗という面が強く、それがジャーナリズムとして認知されていた面があります。その朝日がジャーナリズムどころか、実はただのゴシップ紙となった。日本のジャーナリズム、海外発信力が衰える、という意味でも今回の件は重要なのでしょう。しかも、これまでその発信力が間違った方向に向かっていた。次に、その任を担えるジャーナリズムを育成しないと、日本は益々海外発信力を失う、ということになります。
政府に批判的だからといって、何でも批判する、という精神も誤っています。捏造や誤報はとんでもないですが、正しいことは認め、正しい分析と検証をもって、正確な記事をあげる。今回、政府も朝日叩きに手を貸す形でやっと誤報、捏造を認めましたが、それもまたいけないのです。この国は、特に安倍政権になってから、政府にべったりであるか、反発するかで評価される向きも増えましたが、本来は『記事の正しさ』で評価されなければなりません。朝日のように、『正しくない記事』を放置し、検証も反省もなかったメディアは論外ですが、もっとも大事な『正しい記事』をかくメディアが少ないことが、不幸だと捉えておくべきなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:07|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 メディア | 社会

2014年09月11日

黒田日銀総裁の強気

朝日新聞がスクープとしてだした福島原発の『吉田調書』記事、誤った解釈を伝えることになった、と謝罪する結果となりました。しかし本文を伝え聞いても、なぜ朝日が「命令違反で撤退」と解釈したか、は依然としてナゾです。情報共有が少ない、チェック体制も甘い、という理由は述べますが、これだけの大スクープをよもや上層部がチェックせず、流すとも思えません。海外でも『日本版セウォル号』と評されましたが、韓国への厳しい見方を、日本にも向かわせる目的があったとするなら、社長辞任では済まない問題です。先の吉田証言問題、そして今回の吉田調書問題、いずれも検証が遅くて、反省が甘い。池上氏のコラム掲載問題、読者の声に批判が載らないなど、自身への批判を回避する姿勢は、朝日新聞の消滅の危機をさらに加速するのでしょう。

安倍首相と黒田日銀総裁が、昼食時に会談しています。黒田氏は「2%の物価達成困難で、躊躇なく追加緩和」と述べるなど、従来と変わりない認識を示した、とされます。黒田氏は未だに「円安は日本経済にプラス」とも述べており、円安インフレも視野に入っていると見られ、つまり日本としては景気が失速しても、円安になれば物価高となり、日銀の目標は達成した、と主張できることになる。円安容認発言には、そうした日銀の立場が大きく影響していることになります。
市場では昨日、欧州系の1社がTOPIX先物を、期先で1.5万枚も買い越したことが話題です。これはロールオーバーではなく、また期近の処分、換金でもない、単なる買い越し。よく市場を大きく動かすCTAスジのイベントドリブンでも、1日の傾きは6千〜8千枚なので、実にその2倍。これが昨日から上昇基調を維持することにもつながっています。この主体はグローバルマクロ系とみられますが、大体SQの近傍まで傾きを維持する、少し特殊な取引も多いですが、今回は異例です。

あくまで噂ですが、英国のスコットランド独立問題で、先進国投資の一部を英国から日本に振り向ける意図があったのでは? ともされます。スコットランドが独立すると、英国がうける損失は計り知れず、経済面では先進国投資としては相応しくない条件になりかねません。いずれにしろ、不透明な市場から資金を逃避させる、その一部が日本のTOPIX先物となった。
昨年末の水準を意識するまで市場は上昇していますが、今日の安倍、黒田会談を囃して、という説もありますが、そんなことはありません。今回のメジャーSQは買い優勢の推移で来ており、ロールオーバーの過程で買いになっているだけです。株も為替も、会談前後でイベント型で動かそうとした主体もありますが、影響は軽微です。そして円安で株高、にもなっていません。大型株が主導する今回は、単にSQ要因の上昇と、この欧州系の動きで決まっているとも言えます。

世界は今、安全に投資できる先を探し、右往左往しています。今は日米ということになっていますが、日本が外されるのは時間の問題でしょう。再増税、円安による消費鈍化で景気後退、ともなれば、成長が限られてくるからです。遮二無二、物価高をめざす日銀は、マイナス金利になっても市場から国債を買う。日銀も、自身への批判を回避するため、先の言動、主張に拘泥する姿が見え隠れするのですが、それで失敗すると認めるのがいつになるか? それによっては日本の危機、に発展する問題となってくるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:48|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2014年09月10日

自民の選対は後ろ向き?

産経の記事で『ワシントンの人々』という曖昧な表現ながら、「安倍首相はいつまで首相のポストに?」と訊ねられた、というものがありました。海外で酷評、嘲笑される安倍政権の象徴的な記事として、高市総務相と稲田政務会長が、ネオナチ系の右翼団体と2ショット写真を海外紙がとり上げ、取材の付き人と記念撮影しただけ、と苦しい弁解をしています。そもそも、素性の怪しい人物を議員会館に招いた、という危機管理のなさを露呈しますし、何より背後に日の丸を掲げて記念撮影するなど、両氏が右よりの主張をすることを知って近づいていることが鮮明です。
高市氏など、出版社も思想は知らなかったとしていますが、そんな人物を政治家の取材に同行させるか? 考えればすぐ分かります。それこそ反右翼思想の人物なら、両氏とも命を狙われる可能性だってあるのです。極右思想、と海外から批判されて慌てて弁明した。今回の組閣、身体検査の甘さは常々指摘されますが、海外紙はもう安倍政権崩壊のカウントダウンを始めた。今後も続々と、安倍政権批判の記事をだすのでしょう。日本のメディアが安倍政権礼賛をつづければつづけるほど、逆に危険視され、さらに批判の度合いを強めてくることが予想されます。

自民党は福島県知事選を、不戦敗という形で終息させるようです。県連の推薦を蹴って、与野党相乗り、独自候補を立てないのは、滋賀県知事選の敗北ショックが冷めないから、ということのようです。さらに沖縄県知事選に敗れれば、トリプルショック。しかも辺野古移設にむけた名護市議選で、容認派が1議席増えたものの、反対派が過半数をおさえるなど、逆風がつづいています。支持率回復、などと報じられますが、自民党は驚くほど内向きの反応を示します。
経団連の榊原会長が会員企業に、企業による政治献金をよびかけるのに対し、谷垣幹事長が「議会制民主主義の発展のための必要なコスト」と述べ、歓迎の意を示しました。しかしタイミングが悪い。法人税減税と、企業献金が重なれば、本来国庫に入るべきお金を自民党の懐に入れてしまうようなもので、国庫に入るのなら国民に還元されますが、自民党の懐では、自民議員が喜ぶだけです。国民は増税で苦しむ中、政治家だけがぬくぬくと太っていく構図となります。

川内原発の再稼動、という流れも安倍政権には逆風。実は、支持率とは逆行するように、選挙情勢における自民は非常に脆弱なのです。モンテスキューは「民主制への愛とは、平等への愛、質素への愛」と述べます。つまり社会全体が質素なら、同じだけの幸福、同じ利益となるから、民主制は上手く機能する、という意味になりますが、まさに安倍自民はこの方向に突き進んでいる。低層の人間が増えれば、不満も少なくなる、とでも考えているようです。
最近、盲導犬が刺されたり、全盲の女の子が蹴られたり、拡大すれば虐待やイジメも、社会不安を色濃く反映する、という話もあります。最近、増えているように感じるそうした事件も、実は国民の不満を表したものかもしれません。モンテスキューの思想はあまり好きではありませんし、安倍氏がモンテスキューの『法の精神』を読んだとも思えませんが、政治家は余剰を吸収し、国民には質素ではなく貧困が広がる、ということなら、支持率とは別の社会不安という価値基準により、政権が行き詰ることになるのでしょう。質素とは、余裕をもって貧に生きるということ。今、その余裕すらない国民が増えている中、選挙は支持率と別の結果、ということも十分に考えられ、国内メディアと海外メディアとの、安倍政権への二極化の評価とともに、何かおかしい、という状況が現出されることになるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 22:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月09日

円安による悪影響

対ドルで円安がすすみ、106円半ばをつける場面まで。今回、SF地区連銀のリポートで利上げ時期の前倒しが示唆され、それを意識してドル高の流れがすすみましたが、特徴的なのは対ユーロも円安になっていること。QEが予想されるユーロに対して円安がすすむ、ということは今回、主因は日本経済の弱さ。GDP改定など、悪化する日本の景気に対して、追加緩和を織り込みはじめた動き、がその背景にはあります。そしてこれは、悪い円安ということが鮮明です。
麻生財務相が「一般論として急激な変動は望ましくない」、甘利経再担当相が「ファンダメンタルズに沿った為替を」と述べます。昨日、甘利氏は「それを国内に還流させて…」などと、円安に期待も含ませましたが、一夜にして態度を転換させたのは、経済団体からも悲鳴が上がり、日本経済にとってマイナスと判明したからでしょう。さらに今日の株式市場は上昇していますが、ソフトバンク1社の寄与率が高く、値下がり銘柄が1000を越えるなど、円安=株高の構図が変化した。これも市場が円安により日本経済はさらに悪化する、と看做していることによるものです。

円安でも輸出が増えない、そうなると円安はマイナス面しかありません。内需企業にとってはコストアップ要因でしかなく、輸出企業も、円換算の業績を押し上げたとしても、国内に還流させることもない。甘利氏の希望など、通るはずもないのです。ナゼなら海外の売上げが変化するものでもないためです。円安インフレによる消費鈍化、が愈々本格化する懸念すらあります。
しかも最大に困難なのは、日本の打つ施策が円安を促すこと。悪化する景気に対し、追加緩和をうてば円安を促します。塩崎厚労相のGPIF改革で、外国債、証券を買うということすら、手立てとしては困難になった。悪影響が顕著となれば、円買い介入すら視野に入る状況なのですから。さらに日銀の追加緩和は打ちにくくなった。円安への対策は、逆にマネタリーベースの縮小が必要となりますが、脱デフレを目的とする以上、それは困難な対応です。さらに増税を見送れば、財政規律の緩みを指摘されて、さらなる円安を引き起こし易くする。今回の円安は、米国のテーパリングがきっかけですが、日本にとって非常に厳しい状況を引き起こした、となるのでしょう。

内閣府が発表した8月消費者態度指数が41.2と、4ヶ月ぶりに前月から0.3ptの悪化となりました。安倍政権になってから、一貫してこの指数のトレンドは、景気情勢と逆を示してきましたが、下落に転じたということは、ここから景気が上昇するのか? 恐らく、これは消費者態度ではなく、政府がこうなって欲しい、という希望を示してきた指数であって、ここに来て、やっと景気悪化を政府も認めざるを得なくなった、というのが指数下落の背景なのでしょう。
今週はメジャーSQの特別な週ですが、円安、株安のダブルパンチとなれば、外国人投資家の逃げ口実にされかねません。債券安を必死で日銀が支える中、日本の更なるマネタリーベースの拡大が、円安を促していく。政府が景気対策を打とうとすればするほど、徐々にその泥沼にはまりこんでいく。今はその岐路に立っている、といえるのでしょう。かといって、安倍ノミクスを見直すことは、今の安倍政権には不可能です。内閣改造で、人心一新もできなかった。そんな思惑もまた、日本売りを促すのでしょう。安倍氏の経済ブレーン、3ダメンズ。本田参与、浜田参与、そして黒田日銀総裁、彼らの罪深さをこれから実感する局面がくるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 政治

2014年09月08日

4−6月期GDP改定と景気ウォッチャー調査

内閣府から発表された4-6月期GDP二次速報、年率で7.1%減となり、速報の6.8%減より0.3ptの下方改定となりました。数字以上に内容は悪く、国内需要はほとんど0.1ptの下方修正で、設備投資だけが前期比2.5%減から、5.1%減と大幅に下方修正されました。さらに在庫は1.0%増から1.4%増と、需要の縮みで供給サイドにしわ寄せが来ている構図が鮮明です。この改定値で、以前も予想したように震災越えとなったわけですが、実は確報値でさらに下方修正される、との不安もあります。
名目でも年率で0.7%減、速報の0.4%減より0.3ptの下方改定で、国民の肌感覚に近いとされる数字も悪化しています。どの世論調査をみても『安倍ノミクスを実感していない』が7割を越えている。安倍首相は「地方の津々浦々に安倍ノミクスを…」と、この7割が地方の人であるかのように語りますが、実態は3割弱の実感している人は、株高で沸く企業経営者だったり、株式保有者だったり、という構図であり、地域性は関係ない。逆にいうと、安倍ノミクスの実績は株高にしかありません。

今日は8月景気ウォッチャー調査も発表になっていますが、現状判断DIが47.4と、前月から3.9pt悪化しました。『やや良くなっている』が5.7ptも減少しており、『やや悪くなっている』『悪くなっている』に変わっている。7-9月期には回復、というシナリオが崩れていることを、数字が示してきました。先行き判断DIは50.4と、前月から1.1pt悪化です。こちらは『やや良くなっている』が2.9pt減、『変わらない』が2.2pt増と、景気が上向きでないと示しています。
地域動向の家計部門をみても、現状判断で南関東は4.7pt減と大きい。東海の0.7pt減、近畿の0.4pt減は小さいものの、先行き判断では南関東が0.3pt増となるものの、東海が4.9pt減と大きくなる。地域差という点では、中国地方は現状判断で6.2pt減で、先行き判断で3.1pt増となるなど、一進一退という形であり、都市部だけよくて地方が悪い、という構図ばかりでないことが分かります。

以前から、メディアが報じない景気ウォッチャー調査の中身にこだわって分析してきましたが、『変わらない』と答えることが大好きな日本人が、現状判断で『悪い』が増えている。先行き判断では期待もこめて『変わらない』が増えるものの、『やや悪くなる』も0.9pt増となっている。中身をみれば、一貫して増税後の落ちこみからの回復、という言葉は通用しないと見えます。
しかし政府は「反動減の影響は薄れつつある」と使います。薄れつつある、どころか悪化しているにも関わらず。天候や、燃料代の高騰を懸念要因としてあげますが、根本のところがおかしくなっている。雇用関連は現状判断で2.4pt減、先行き判断でも2.5pt減です。以前も指摘したように、日本の実質賃金が下がっているのは、増える求人数のほとんどが非正規であり、賃上げの影響がないためです。そのため消費は低下傾向であり、内需にまったく期待できなくなっています。

設備投資の大幅下方修正は、政府が抱いていた回復経路を否定するものです。7-9月期は公共投資の前倒しの影響がのる、と政府はみていますが、それが民間の建設需要を喰い、設備投資をさらに低下させる、という指摘もある。バランスの悪い施策が、その効果を見誤っていることで、さらに日本経済を泥沼化させかねません。補正予算などを打ち出しても、従来型の公共工事に頼るなら、それこそ効果がでるのは数年先、もしかしたら五輪特需がすぎてからでないと、本格的に寄与はしないのかもしれません。これほど悪化する経済で、支持率が総じて50%越え、というのもまた異例な話です。悪化していく経済指標とは連動しない支持率、政府の勘違いが続くことによる政策の見直しタイミングを誤る、という点で逆に不安を生じさせることなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:07|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2014年09月07日

ウクライナと北朝鮮について

ウクライナの停戦合意の内容が、欧州安保協力機構(OSCE)により公表されました。ドネツク、ルガンスク両州に『特別な地位』、捕虜の即時開放と刑事訴追しないこと、地元自治体の繰上げ選挙など、ウクライナ側がかなり親ロ派に配慮した内容であり、露軍が越境してまで親ロ派を支援する中、戦闘終結を優先した形です。今回、露国としてもかなり無理をしており、これから経済制裁の影響がでる、とみられていることからも、露国も妥協した形になりますが、この合意ではかなり露国が得をしたことになっており、今後への悪影響が懸念されます。
両州への自治権について、軍の編成権や州兵の設置など、細かい話は今後の協議で決まりますが、クリミアも常駐していたロシア軍がいつの間にか州を占拠、支配された中で投票を行い、圧倒的多数で独立、露国への編入を決めました。露国はその成功体験をもって、東部でも同じことを拡大しようとした。州の重要施設を占拠したのは、明らかに露軍の特殊部隊であり、そこで選挙を行って独立を認めさせようとした。いわば、電撃作戦によってコトを決しようとした。

しかし思いのほか、ウクライナ軍が抵抗して長期戦になった。国際社会もそれを認めず、民間機撃墜なども重なって、露国は窮地に陥りました。ウクライナがNATOに接近、緩衝地帯どころか、両州を強引に露国へと組み入れてしまえば、ウクライナはNATO入りし、最も嫌う直接対峙する場になってしまう。ウクライナ系住民も多く、治安維持も大変。経済的には価値が低く、逆に両州を維持して行くのが負担になってしまう。露国もその愚を冒したくはなかった。
一方で、将来的にはやはりクリミアと同様に、州兵により投票所を占拠した上で、不正選挙で露国への編入へという流れを残した。短期決戦を諦めて、長期戦略へと舵をきっただけで、ウクライナの火種は今後も残されるのでしょう。かつては露国の介入がはっきりした時点で、米国が動かなければいけないところですが、米国にもその体力がない、と判明したことが今回、露国としても長期戦略でも実がとれる、として戦略の転換を容易にさせた面もあるのかもしれません。

日朝による拉致被害者調査について、山谷拉致担当相が「今月中の報告」と言及しました。しかし若干、先延ばしになっているのは制裁解除などの条件で、折り合っていないことと同時に、北朝鮮が安倍政権の足元をみて、探りを入れている面があるのでしょう。国内で支持が高いとはいえ、国際社会では驚くほど支持がなく、ここで日本が独自で北朝鮮に支援できるのか? 交渉に失敗すれば、下手をするとゼロ、という判断も北朝鮮側はしてくるのかもしれません。
安倍首相はバングラディッシュを訪問しています。以前、単に海外旅行が好きな人が首相になったレベル、と評しましたが、今回も中身はなさそうです。それでも安倍氏が足繁く海外に行くのは、恐らくこれほど『日本を代表している』という気にさせてくれる、首相として晴れがましく感じる瞬間はないから、かもしれません。政府専用機にのりこむときの、嬉しそうな顔をみると、外交成果がなくとも海外に行きたい、という安倍氏の気持ちがよく現れているようです。

しかしウクライナ情勢でも、互いに合う、と言っていたプーチン大統領に何の連絡もしなかった。晴れがましいことは積極的に、極めて困難な状況では消極的に、といった安倍氏の行動が明らかになっています。北朝鮮問題でも、海外に日本の立場を積極的に訴え、理解をえるよう努めたのか? スイスで開く北朝鮮の人権問題シンポジウムで、何を訴えるかによってはそれこそ成果なし、という結果にもなりかねず、そこが安倍外交の評価を決めるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 22:55|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アジア

2014年09月06日

安倍政権の市場への神通力

石破地方創生担当相が、相次いでTV番組に出演していました。未だに反安倍勢力の一番手ではあるものの、党内では決して石破氏の人気が高いわけでない。それを痛感し、メディア戦略を考慮したものでしょう。討論番組には出られない、自分を誉めそやしてくれる番組にしか出ない安倍氏との違いを打ち出す、という意味もあります。仰々しい語り口調ですが、中身は大したことがなく、面白みもありませんが、彼の物まねをする人が現れ、それが国民的に広がるかどうか? もしかしたら、それが首相になるためにもっとも必要なことになるのかもしれません。

最近、安倍政権の神通力が途切れる事象が散見されます。昨日の麻生財務相の補正予算発言に、市場は何の反応も示しませんでした。一方で、急激な円安への動きを牽制、という発言に反応して円高になった、という説明も一部でされますが、タイミングがずれています。そもそも、105円台後半になったのは5日の日本市場が開く直前、相場操縦を狙った動きであることは間違いありません。しかし追随が少なく、上ヒゲをひいて失敗が鮮明となり、即座に売った。結果、麻生氏の会見の前後には動いていません。ドラギECB総裁の会見後、仕掛けて失敗した層が、日本の朝方に取引が少なくなる頃合を見計らって、もう一仕掛け打った、というのが実態でしょう。
重要なのは、昨年は市場を思い通りにコントロールした安倍政権が、今年度に入って急速に市場から無視されるようになった点です。塩崎厚労相のGPIF改革発言も同じ、昨年ならGPIF、年金と一言口にするだけで、上がった市場も感応度がすこぶる低くなった。これは売買のメインプレイヤーから、すでに外国人投資家が下りている、ということを意味するのでしょう。外国人投資家は、日本の増税後の反動減が予想以上に大きいことに驚き、日本で活動する気を失っています。

日本人は、安倍政権が口先だけということを知っている。それに、市場全体を動かすほどのマネーを抱えた主体でもない。結果、時折あらわれるCTAスジのイベントドリブン型の動きには過剰反応しますが、日本の安倍政権はそのイベントにもなり切れない。愈々、安倍政権が口先だけ、ということが外国人投資家にも知れて、化けの皮がはがれつつある、ということなのでしょう。
例えば法人税減税も、消費税の再増税に用いられる理屈、財政健全化とは逆行します。両者の効果を考えれば、減税による浮揚効果より、再増税による悪影響が大きい、と今回の消費税増税で判明した。つまり法人税減税が語られても、市場を押し上げる効果はない、と看做されることになったのです。すべては、安倍政権で実行、実現されたことで、外国人投資家は逃げていった。

奇しくも安倍氏は会見で「実行実現内閣」と述べました。まさに昨年の実績、実行、実現したことで安倍政権には期待がもてない、ということになったのです。市場は円安効果で15500円を越えていますが、以前も指摘したようにドルベースの102円台の15000円と、105円の15700円では、価値は同じ。一方で、円安による悪影響で今年の日本経済には、期待がもてなくなった。それを株価が織りこむのは、それこそ7-9月期GDPの発表のタイミングか、その前か、となるのでしょう。安倍政権は支持率が高い、と言ってみても、メディアでその物まねをする人もいなければ、人柄について話題にする人もいない。海外で、安倍ノミクスと同じことをしようとする人もいない。口先介入が通用しなくなったように、そのうち「虚像虚言内閣」と揶揄される日も、きてしまうのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 22:58|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2014年09月05日

危機管理に「想定通り」?

内閣改造をうけ、早々に行われた世論調査、おトモダチの読売と安倍政権に経団連がひれ伏す日経は、10%以上の支持率回復です。一方で共同は5%強、毎日などは横ばいと、結果は二分されました。総じて不支持率が5%以上の低下であり、これはそちらをみた方がよいのでしょう。ただ支持の理由に、女性閣僚の増加を上げるなど、世論調査の中身はスカスカであることが分かります。
そもそも平日の昼間に世論調査をとれば、より高齢者が応じる率が高く、言葉は悪いですが新聞に情報を頼る層、という言い方もできてしまいます。新聞による世論誘導の顕著な結果、とみると、新聞によって色の違いもよく分かるのでしょう。朝日を擁護する気はありませんが、例えば誤報問題でも『小渕幹事長』と一面トップでぶち上げた読売は、未だに謝罪、訂正文をだしません。人事なんてそんなもの、というなら、どうして断定的に報じたのか? それこそ東スポ得意の『〜か?』とでも書いておけば、憶測で済む話です。しかし逆に、一面トップに憶測記事を載せると、大新聞の矜持が許さなかったのか。結局誤報となっても、影響が軽微だから問題ない、という判断が働いているとするなら、大新聞としては極めて問題のある軽薄さ、とも指摘できます。

デング熱の対応に「場当たり的ではないか?」との指摘に、厚労省は「当初からの想定通り」と、どこかで聞いたような返答をしました。しかし感染の拡大、地域的な広がりに後手後手で応接していることは間違いなく、これもどこかの対応と似ています。安倍政権で広がる、「想定通り」と言っておけば、何か危機管理ができていたかのような手法は、正直に危険を感じてしまいます。
広島市の土砂災害も、想定通りだったからゴルフを続けたのか? つまり異例で、異常な事態が起きているとき、政府の要人がゴルフなどをしていれば、被害を軽視しているか、抜けているか、または想定通りというしかありません。つまり想定通りだから、訓練の通りに対応すれば問題ない、という態度です。しかも9月2日に市が避難指示を全面解除したのは、内閣改造前、防災担当の大臣が交代するためではないか? とも囁かれます。京都でも大雨が降り、まだ西日本の気象には不安も残る。地下水の流れも変わっていて、地盤も緩い中で、9月2日の想定通りに避難指示を全面解除して、本当に大丈夫だったのか? 結果は分かりませんが、不安に感じます。

米8月雇用統計が非農業部門で14.2万人増となりました。失業率は0.1pt改善したものの、やや悪い数字です。しかしFRBはすでに労働の質、に焦点をあてており、数字自体に意味はありません。問題は賃金上昇が緩やかで、インフレ率に追いついていかないこと。資産効果をドル高でとるなら、海外資産の還流がよりすすむかもしれません。米国としても次の一手はとても難しい。
そんな中、麻生財務相が補正予算の編成に言及、しかし市場はぴくりとも反応しませんでした。市場からみて補正予算は『想定通り』。むしろ打つことにより、消費税の再増税が確定するので、ニュートラルよりマイナスの判断となります。今回、海外投資家は日本の駆け込み需要の反動減、その大きさに驚いており、打てば来年はマイナス成長も予見しており、補正予算程度ではそれを補えないと見ている。これは政府としても「想定通り」とは言えない事態となっています。

安倍改造内閣の評価は海外でも二分されますが、総じて批判の方が多い。主要閣僚が変わっていないので、従来から批判してきたメディアは当然、批判的です。WSJなど、市場中心の媒体はGPIF改革を高評価する、程度です。安倍政権では、安倍氏の心の負担を増やさないよう、これからも「想定通り」と構え、問題ないという態度が増えるのでしょう。しかしそれが危機管理を危うくします。しかも経済面では、その悪影響が顕著になってきました。それも政府が「想定通り」と使い、対策が後手に回るためです。安倍政権のつかう「想定通り」、それを使っていれば安泰として、政治家から官僚までの口癖になってしまったことが、実は「想定通り」でない、ということになるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 22:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2014年09月04日

日銀会合と、ECB理事会

昨日の内閣改造でも、正式に発表がはじまった頃から株式市場は弱含み、改造期待はイベントドリブン型の、出たら終いという形となっています。それでも今週は日銀決定会合、ECB理事会、米雇用統計などつづくので、小幅な下落にとどまっていますが、今日の日銀決定会合でも売りが目立ちます。一部で、景気認識に見直しが入れば追加緩和へのきっかけとなる、ともされていただけに失望を誘った形です。そんな中、黒田総裁による為替への言及がやや気になります。
「今の水準から円安になることが日本経済にとって好ましくない、とは思っていない」というものです。円安容認とされる発言ですが、昨日の国際協力銀行の渡辺総裁が「かなりの産業でこれ以上の円安は、損益のマイナス要因」と発言しています。真逆のようですが、二人とも間違えています。黒田氏は日本経済を対象とし、渡辺氏は企業を対象としますが、対象が逆なら正解、つまり日本経済全体にとってはマイナス、輸出企業にはプラスです。輸出企業は一度も国内を通らない、もしくは国内で製造したものを海外で組み立てるだけなので、コストプッシュの悪影響は軽微ですみます。しかし内需系の産業、及び国民にとっては更なるコストプッシュ型のインフレが昂進し、打撃は大きくなるでしょう。残念ながら、この国の経済を指揮する立場にある人間の、これが能力です。

さらに黒田氏は、消費税増税の影響は「徐々に薄らぐ」、再増税に関しては「財政健全化に極めて重要」、「国の信用に関わる」と述べます。しかし翻ってみれば、日銀が大量の国債買いを続ける限り、日本国債の暴落はおきないのですから、今こそ増税を先延ばしできるチャンスです。逆に、再増税して景気が悪化した後、日銀で膨張している資産に懸念が生じて、国債買いを終了したとすれば、それこそ国債暴落を招きかねない事態になる、ということにもなります。
やっと景気が想定より下ぶれしていることを認めましたが、追加緩和を打ち消してきました。そんな中、ECBは政策金利を0.1%引き下げて0.05%に、マイナス金利も0.1%上乗せして0.2%としました。誘導効果はありませんが、ユーロは対円、対ドルで大きく下げています。デフレが意識され、先手を打った形ですが、量的緩和については今のところ、言及はありません。

欧州が厳しいのは、6月にうった緩和策以降もデフレの昂進が止まらないこと。だから効果がでる水準を探り、探り、対策をうっている。資産担保証券(ABS)の買取も協議されているとされますが、残念ながらマネタリーベースでは改善できない。結局、欧州がその成長にすがろうとした中国、露国が経済面で崩れているため、実は構造的にかなり深刻な事態に陥っているのが実状です。
日本が厳しいのは、経済政策の担当者がいずれも能力不足であること。増税の影響は徐々に緩和、と述べるなど、景気認識がおかしい。昨年は高い収益をあげた企業が賃上げしても、実質賃金が目減りしているのに、さらに再増税したり、物価が上昇したとき、一体誰が消費するのか? についてまったく整合性のある説明ができず、対策もない。円安にすれば、輸出が増加するという経路を想定したいたのが、すでに崩れたのに、未だにそれに変わる施策を打ち出せないことが、端的にそれを表します。黒田氏が、海外から批判され始めると、日本は海外から総崩れ、と看做されることになるのでしょう。今は緩和すれば何となく評価される中央銀行総裁ですが、その価値観がいつ変わるのか? 日銀が政策を変える前に、緩和=よい中銀の態度、という認識が変わってしまうことが、日銀が真に怖れていることなのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

2014年09月03日

安倍改造内閣について

安倍改造内閣が発表されました。以前も述べたように『安倍氏の心の保健をするための内閣』、略して『安保内閣』の様相を一層強めてきました。おトモダチのメディア、政治記者などは絶賛するこの改造内閣、しかし詳細にみると実はかなりの問題を抱えています。まず小渕氏を入れるために、額賀派からバーターされた竹下氏が復興担当相、おトモダチの麻生財務相が推した山口氏が沖縄・北方担当相。つまり復興、沖縄問題など、政権が重視するべき重要な担当相が、能力主義ではなく党内バランスによる人事考課になっている点。福島も沖縄も、安倍政権では重視されない、浮かばれない、ということがこれをみてもハッキリしてきました。
一方で、原発再稼動を控える経産相に、ホープである小渕氏。他の女性閣僚はいずれも安倍氏の取り巻きで、高市総務相、松島法務相、山谷拉致担当相、有村女性活躍・行革担当相が並びます。ここで松島氏、有村氏などは安倍応援団であることが評価され、入閣となりましたが、女性活躍は目玉の成長戦略のはず。ここにも人事として重視されない人材がついています。

西川農水相はTPPによる論功で、江渡防衛相は集団的自衛権による論功で、それぞれ入閣した。つまり安倍氏に協力する人を優遇した。これは安倍氏と距離をおくと、入閣できないことを暗に示します。そして党役員人事など、二階氏以外はすべて閣僚からの横滑り。おトモダチの、おトモダチによる、おトモダチのための改造という面が色濃くなっていて、おトモダチ以外は論功か、推薦をうけた人、という人事における安倍氏の性向が如実に現れているのです。
しかも、自らが弱体化させた派閥、その領袖クラスを役員に据えて抑えこみにかかる、という皮肉も露呈します。弱体化しているので抑止力もなく、谷垣幹事長をはじめとして、顔と名前で党の不満を抑える、という難しい課題を突きつけられた。しかも、これだけ重鎮を優遇するのですから、当然のように党の若手は面白くありません。一度でも安倍氏に逆らった人、敵対した人は安倍氏が首相でいる間、入閣は叶わない、そう見限った人からの反発も予想される形となります。

昨日も指摘したように、消費税10%への道は完全にでき上がった。経済重視でもありませんし、麻生財務相、甘利経再担当相が留任した時点で、日本の凋落は予告されたようなものです。仮に来年度から10%に上がるとしても、駆け込み需要は大して盛り上がらない。むしろ家計が防衛的になり、今年度の景気はさらに落ちこむかもしれない。GPIF改革程度でお茶を濁し、市場対策をしても日本の景気そのものが崩れたら、焼け石に水どころか、逆効果にさえなりかねません。
今回、はっきりしたことは安倍氏の盲目さ、です。確かに次期総裁候補をとりこみ、安定化したように見えますが、支持率が下がると閣内不一致の動きがでてくる。特に、党内で抑えこまれる若手、安倍政権の下では閣僚の目がなくなった待機組、それらは対抗馬の出現を望み、独自の動きを始めることが確実です。今回、もう一つ名前をつけるなら、安倍氏のシンパ、族議員にならなければ、自民党内で役にもつけない、ということで、『シン族内閣』ということになるのでしょう。シンは安倍氏の名前である晋三から、つまり安倍氏の『シン族』にならないと、党内出世もできない。おトモダチどころか、その上の関係までいかないと、閣僚の約束手形にならないとなったのです。

閣僚の布陣をみても、何に力をかけ、何を軽視しているか? それがはっきりします。最後に望月環境相・原子力防災担当をみると、安倍氏がやはりこの部門を重視していない、ということがはっきりします。安倍氏にとって、国民は関係ない。自分のストレスを如何に下げるか、を重視した今回の改造。『シン族内閣』が、身内ほど仲が悪いという世の常を踏襲するようだと、身体検査が甘いといわれる今回の組閣、この政権の弱点が早く露呈することも、想定しておいた方がいいのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:05|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2014年09月02日

内閣改造と市場の上昇

今日、自民党の次期幹事長に谷垣法相の名前が浮上しました。宏池会の重鎮ですが、違和感があるのは、安倍首相とは多くの点で主張が異なることです。政高党低が危惧される安倍政権で、谷垣氏の意向が通るのか? またただでなくとも福島、沖縄県知事選の苦戦が伝えられ、また統一地方選も危ないとされる。かつて総裁でありながら、首相が経験できなかった悲運の人である谷垣氏に、また泥を被せるつもりか? といった宏池会すら敵に回しかねない、これは博打にみえます。
親中派でもある谷垣氏で、融和路線か? とも囁かれますが、全く関係ないでしょう。外相が交代するならまだしも、岸田氏のままなら外交姿勢に変化がない。それより、財務省シフトが顕著になった、という方が重要です。党内を10%でまとめてくれ、という安倍氏の意向をうけて、谷垣氏が動くのなら、谷垣スケープゴート説が党内をかけ巡ることになるかもしれません。

市場はこちらのニュースに反応しました。塩崎氏の厚労相就任の話です。日銀出身でグローバリズム、GPIF改革にも前向きとされます。しかし政権が小出しにしてきた改革の中身によって、逆にそれ以上の内容は出てこない。ロードマップ通りに株式、海外の投資比率を上げるだけで、特段のサプライズが期待できるわけではありません。それより、今日の上昇は欧州系の事情、という点が大きいと見ています。日経平均とTOPIX先物のロングポジションが、過去最高レベルまで積み上がり、円売りポジションも10万枚を越えてきた。かなり重い状態になっていました。
実は明日、明後日ははねる、と見ていましたが、それはECBの追加緩和期待を狙うイベントドリブン型のCTAスジ、という流れです。昨日まで無視していた内閣改造を、今日になっていきなり材料視した理由は塩崎氏となるのでしょうが、1日前倒しせざるを得ないほど、ポジションが傾いていた。またGPIF改革で、年金が買わないとこのポジションを解消できない、待望論に市場の反応も大きくなった、というのが今日の大幅高の原因であり、日経ミニなどは欧州系による桁違いの買い越し、が目立ちますし、先物の買いこしにも欧州系が目立つなど、欧州祭りだった印象です。

厚労省から発表された7月の毎月勤労統計、現金給与総額が前年同月比2.6%増、という見出しが多く躍りますが、物価の影響を考慮した実質賃金は1.4%減。6月の3.3%減よりは小さくなったとはいえ、未だに生活苦を抱えた状況です。しかも今回、所定外給与が3.3%増、賞与が7.1%増と、その寄与度が大きかったのに、実質賃金が目減りするのは物価上昇と増税が、深刻なことを意味します。
幹事長に谷垣氏をおき、財務省シフトによる消費税10%路線を、厚労相に塩崎氏をおき、日銀シフトによるマネタリズム路線を敷く。寡聞にして、塩崎氏の労働法制の考え方は存じませんが、主義・主張から推測するに、雇用の流動化を推進する、いわば竹中路線に近いのか、と感じます。実質賃金の目減りがつづく中、GPIF改革よりももっと大きな、実は労働法制にどうメスを入れるのか。そこがもっとも大事なところであるべきです。もしこのまま、人事が断行されるのなら、安倍政権は益々市場重視で、労働者への目配りは期待できない、となるのでしょう。そもそも脱デフレとは語られますが、実質賃金の目減りについて、安倍政権からはこれまで何の言及もない。労働者の方をむいていない、国民の方を見ていない、その目は市場の上昇に一喜一憂するだけ、ということが内閣改造でもはっきりしてくるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:07|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2014年09月01日

雑感。ふわふわした日本

今日は防災の日ですが、デング熱対策という根幹がお粗末だったことが、今回露呈しました。1人確認、3人確認、22人にまで拡大しても厚労省は大丈夫、大丈夫とくり返しますが、何が大丈夫なのか? 代々木公園で消毒するシーンを流しますが、あの程度で蚊が駆逐できるのなら、東南アジアの蚊はとっくに撲滅されています。正直、今のままなら自然消滅を期待している、というのが厚労省の本音のようです。これではマラリアなど、より重篤な症状を引き起こす、蚊を媒介とした感染症への対応まで、心許ないものとなってしまいそうです。

読売が一面で、小渕幹事長との観測記事をあげました。その背景はただ一つ、党内に反安倍勢力が多数おり、来年の総裁選が危ないと見て、解散、総選挙を早めた方がいい。人気のある小渕氏を幹事長に据えるよう、おトモダチとして助言したのです。党内引き締めには、解散を匂わせる方が効果ありますし、小渕氏のような軽量級では、党内をまとめきれるわけではない。
しかし福島、沖縄県知事選などの厳しい地方選もあり、そこで2連敗して統一地方選も…となると、新幹事長に責任論が集中する。党期待の女性議員に、わざわざ汚点をつけるのは後見人である青木元参院幹事長が、面白かろうはずもありません。安倍政権の捨て駒につかう気か! と反発の声もあがりそうです。それに安倍氏を支持する保守系には、女性蔑視が根強くて、公然と家庭に入るべきと述べる人もいます。安倍氏側からの援護もなければ、小渕氏は孤立無援となるでしょう。これは単なる読売の観測記事で、トップ記事として報じるような話ではありません。

しかも驚くほど、市場の関心が低い。今日は米市場がレイバーデイで休場とはいえ、売買は1.5兆円さえ割りこむ低調さ。閣僚の観測記事がでても、ウンとも動きません。いくら重要閣僚は留任、とはいっても微塵も材料視されない。これが安倍ノミクスの現状です。一部で地方創生で公共工事、などという材料をみる向きもありますが、今でさえ入札不調、応札なしが頻発する公共工事を増やしても、景気対策にも、選挙対策にもならず、市場を押し上げる効果もありません。
大手百貨店の8月売上高が、増税後初めてプラスとなりました。日経などは、消費の落ちこみを天候不順の影響、としていますが、8月は急に冷えこんだために秋物衣料が好調、と逆の結果となっています。天候不順は予期せぬ増減を生む代わりに、全体をみるのは長期の視点にたつ必要があります。8月に秋物衣料の先食いをした結果が、9月以降どうでるかを確認しなければなりません。

しかも8月国内自動車販売は、前年同月比9.1%減と2桁にせまる落ちこみです。6月までは納期の影響もあって、増加をつづけていましたが、今後は厳しい状況がつづく。これも安倍ノミクス効果です。消費を先食いして終わり。しかも、新閣僚に期待値がないように、これほど経済環境が悪化しても、閣僚が代わらなければ対策を打つこともない、という事態に陥っているのです。
デング熱対策の厚労省ばかりでなく、景気対策すらも覚束ない。株価対策だけは、日銀のETF買いや年金の運用比率見直しのニュースを小出しにし、取り組んでいるようですが、そんなものは実体なき幻のようなものです。今の日本は、新聞記事でも真偽不明の怪しげなものが多く、対策をうつべきところに対策が打てないなど、地に足がついていない感覚に陥ることが多くなりました。今日も安倍首相の外遊が発表されましたが、首相が成果もないのに、ふらふらと外遊に出かけることも、まさに地に足がついていない対応、ということを象徴的に表すのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:10|PermalinkComments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | メディア