2015年05月

2015年05月31日

雑感。市場の噂

昨日の小笠原の深層地震、M8.5からM8.1へ、震源の深さも590mから682mに変更と気象庁から発表されました。震度5強で大騒ぎでしたが、東日本大震災クラスの地震が、首都圏で起きたら天地がひっくり返ったような、狂騒がおきるのかもしれません。地震大国、地震には強い、が売りであったはずなのに、意外と脆い首都圏のインフラ。それを思い知らされたようです。
口永良部島の噴火は、実は安倍政権にとって最大の痛手となるのかもしれません。全島避難が長期化する予想であり、政府も万全の体制をとるとします。そんなとき、安保法制の審議でストレスの溜まる安倍氏が、その解消のためにゴルフなどしていたら、袋叩きに遭うでしょう。当面は自粛する、というのが自然な流れです。外遊もストレス解消法の一つとされますが、その外遊にも国会開会中であり、行けない。安倍氏のストレスが溜まる一方です。中谷防衛相も、岸田外相も、とんでも答弁をくり返し、委員会を空転させてしまう現状、安倍氏の健康面が不安となってきています。昔はヤジ将軍のような存在もいましたが、今や安倍氏がヤジ首相と呼ばれる始末です。ストレスで苛立ち、他人を攻撃して憚らない人物が、全島避難という事態に対しても無視してゴルフができるのか? そしてそれをメディアがどう扱うか? そんなことも次の政局には影響してくるのかもしれません。

株価は11連騰ですが、CME日経平均先物は米ダウの下落に伴い、大きく下げています。今週は週末の米雇用統計をはじめ、ギリシャ問題などが目白押しであるため、指数もどうふれるか分かりません。また6月の株主総会にむけ、期待値を高めているという欧米系のファンド勢の、その期待に添えるのかどうか? いずれにしろ6月は、米FRBの態度とともに振れ幅が気になります。
あくまで噂レベルで、個人的にも信じていない話ですが、米国が日本でバブルを起こすよう促している、というものがあります。それは日本のことを考えてではなく、中国のバブル崩壊を日本のバブルによって影響を緩和する目的がある、という話なので、さらに怪しげなのですが、中国のバブル崩壊は相当深刻になるとの試算があります。米Appleや中国販売で業績を回復させてきた米自動車産業など、中国経済の崩壊は、米国にとっても打撃となることは間違いない。米民主党としては、自動車産業保護のためにも中国に今、崩壊してもらっては困る。日本の中国との貿易量は、米国を上回る規模なのですから、日本でバブルが起きればさらに中国との貿易も増える。中国の金融改革がすすむのも、海外からの投資資金呼び込みという側面があるなら、そこに日本マネーを充てこむことも可能です。

噂の出元は、どうやら米高官がドル高牽制発言をしているにも関わらず、日本で円安誘導への懸念が示されない、それどころか更なる円安を促す追加緩和について、有識者が未だに期待する、というところからのようです。つまり日本でバブルを起こし、米中経済を下支えさせ、いずれTPPが執行される頃には円安を是正、日本はバブル崩壊で強烈な景気低迷に陥り、米中の投資家、企業により企業買収など、よい買い場となっているだろう。それを米主導で行おうとしている。日本にいるジャパンハンドラーや、そこと繋がるメディア、有識者が米高官の発言に追随しないのも、今は規制へと転換する時期ではない、と思い定めて動いている、というのです。
ある日突然、日本経済は規制、利上げ局面が訪れるのかもしれません。それはTPPの動向と不可分なのでしょう。もし日本でバブルが起きるなら、海外勢が円安にも関わらず買い立てているのも理解できます。コーポレート・ガバナンスの高まり、という話にしても、米主導で促され、企業が態度を転換させているのだとすると、ここに来て活発となったその背景も、読み解けるのかもしれません。いずれにしろ、こんな噂が出てくること自体、今の市場の強気が、うまく説明できないということでもあります。日本が米主導でバブル化し、その後の崩落が準備されているのだとしたら、日本の地下にある地震のタネは、金融部門でも仕込まれている、ということが発生して初めて分かる。そんなことになるのかもしれませんね。

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2015年05月30日

雑感。FIFAとAIIB

FIFA会長選、ブラッター会長の5選が決まりました。しかし会長選の2日前、賄賂事件が発発覚するなど、きな臭い動きもありました。米国が対抗馬であるアリ、ヨルダン王子の支援に動いたことは間違いありませんし、恐らくその中には18年開催の露国、20年開催のカタールW杯への影響も考慮したものなのでしょう。経済圧力をかける露国が、W杯で復活してもらったら困る。米国のシェール革命を保護する目的で、やや原油高に誘導しつつある米国にとって、それで露国まで復活させるわけにはいかないのです。一方、カタールのW杯は炎天下の中での試合となるため、冬に開催時期をずらす、との案があります。しかしそうなると欧州プレミアリーグの開催時期と重なる。欧州が困ったことになります。そこで米国が欧州での協力をとりつけ易くなり、今回の賄賂事件摘発を、会長選前という絶妙なタイミングを見計らって実行に移したのでしょう。
間違えてはいけないのが、不正や腐敗があったら、それは是正されるべきだということです。タイミングがどうだろうと、修正されるべきは修正する必要があります。ただ今回、再選されたことで、次の動きとしてはFIFAに代わる新たな組織の設立、という話になるかどうかです。カタールW杯に、欧州プレミアリーグは選手を参加させない方向ではないか? とも囁かれることから、金権体質により物事が決まってしまうFIFAとは異なる、新たな組織を立ち上げてW杯を開催した方が、欧米にとって利があることになってきた。米国の次の一手、元々サッカー人気が低く、興味のなかった米国が利を見て動かないはずもなく、新組織の話がいずれ出てくるかもしれません。

産経に面白い記事がありました。「中国の代弁者」として、中国主導のAIIBに参加を促すメディア、論者を批判しています。金融面での新たな世界秩序を構築しようとする試みにのるな、と。麻生財務相がADBの融資枠拡大について言及していますが、これが一筋縄ではいかない話です。発言権と、出資額はほとんど比例しますから、仮に新興国や日米以外の出資比率を上げてしまうと、日米にとって面白くない。かといって日米とも、財政負担は増やしたくない。日米以外の出資比率を上げた上で、影響力はこれまでと同じでいたい。そんな調整になるので、以前から困難な話として、ADBの融資枠拡大という話は伝わっていたぐらいなのです。
金融面での新たな秩序どころか、金融面での既存の秩序は、硬直化して極めて使い勝手の悪いものとなっていたのです。それどころか、中国の参加にも極めて冷淡な態度をとった。前出の、出資比率を引き上げても影響力は変わらないよう、日米が主導していたのであり、それを嫌って中国が新たな組織を立ち上げてしまった。もしFIFAで同じ話が出てきたとき、産経は欧米が主導するその組織に「既存の秩序への破壊だ」といって、反対でもするつもりなのか? 既存の組織が弱体化したり、腐敗まみれになっていたり、そうしたことになっているなら、それはもう変革を促すしかない。それが内部からか、外部からか、といった違いでしかないのです。

そもそも論として、AIIBのことを国民にほとんど知らせず、世論が反対している、というのも日本政府の要人が批判しているから、という理由に過ぎません。個人的には、AIIBに参加してもメリットが少ない、とは感じますが、少しでも収益機会を逃したくない、という産業界の要請にメディアが答えることは、これまでも多くみられたことです。それを批判し、封殺しようとするなら、両論併記を謳う放送法にも抵触します。まず行うべきは、賛否の前に国民に伝える義務を、政府や財務省からの圧力で、メディアが怠ってきた点にあるのでしょう。
FIFAとて、サッカー発祥国とされる英国に対抗し、仏国でできた組織です。既存の組織を打ち破ってきたものが、後に優勢となった際に、そちらに注力せずに孤立化したら誰が責任をとるのか? 既存の秩序などというものには、常にそれに挑戦しようとする者が現れるものです。これまでも、これからも。最後に、仏国の諺を記しておきます。「言葉は思うところを偽るために、人に与えられた」 今のメディアが、人を偽るために言葉を弄しているのでないのなら、まず利害得失をしっかり伝える、というところから始めるべきなのでしょうね。

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2015年05月29日

4月経済統計について

口永良部島の新岳が噴火しました。鹿児島以南にある鬼界カルデラは、縄文時代に九州から西日本にかけて人が消えたといわれるほどの、巨大噴火を起こしています。今回もかなり大きな噴火ですが、歴史上では小さな噴火であり、縄文人が途絶するほどの噴火となれば、数十年にわたって噴煙が太陽光を妨げるようなとんでもない規模でしょうが、そうしたものが起こり得る、という認識にたって、噴火警戒については考えていかなければいけないのでしょう。

日経平均は11日続伸、この間の上げ幅は1000円に迫る勢いです。5月全体でも2日しか下げた日がなく、そのほとんどが欧州から流れてくるマネーの所為と云われます。ECBの緩和でだぶついたマネーが、歴史的にみても高値圏にある米欧より、まだ余力のある日本へ、という流れもあるのでしょう。そんな中、今日は経済指標の集中発表日です。まず有効求人倍率が1.17倍、前月比0.02pt上昇しています。しかし求職者数が前年同月比5.0pt減、前月比0.7pt減、新規求人数が前年同月比0.1pt増、前月比5.4pt増。つまり求職者が大きく減る傾向がつづいており、これが労働人口の減少を映すなら、日本は重症です。しかも就職件数も前年同月比4.8pt減と大きく下がっており、求職、求人にミスマッチが起こっている。雇用形態別でみると、求職は常用雇用の方がパートタイムより大きく下がっているので、高齢者や主婦が短時間の就労を求めている傾向もみえ、数字による印象より、実態はかなり深刻な状況を示すもの、という印象が強くなります。
これが総務省の労働力調査をみると、補完されます。雇用者数は前年同月比29万人増ですが、医療・福祉30万人増、サービス業23万人増でほとんどを占め、製造業や小売、運輸などが大きく下げています。つまり年度末の需要の一巡が、4月に出てきた。ここ3ヶ月は順調だった正規雇用も6万人増と大きく下がり、非正規雇用が30万人増と大きく上がった。年度の切り替えで、雇用形態にも変化の兆しがみられます。しかも自営業者は右肩下がりで減り、一方で15〜64歳の労働人口は減り、65歳以上の就労が増えている。いくら賃上げしても景気、小売への影響が少ないのは、労働人口の増加のほとんどを高齢者が占め、賃上げに関係しないから。しかも正規雇用の伸びは低い。低賃金労働ばかり増えている現状が、指標と効果のミスマッチを生んでいるのです。

家計調査は深刻でした。消費支出が前年同月比実質で1.3%減、名目で0.5%減。つまり増税後の反動減だった昨年4月よりも、支出が下がってしまったのです。実収入は前年同月比実質で2.0%増、名目で2.8%増ですが、2014年平均の実質3.9%減にもとどかなかった。まだ一昨年並みの購買余力ほどにはもどっておらず、これが支出を減らさざるを得ない、最大の原因です。しかも勤労者世帯の収支をみると、世帯主の収入は実質1.3%減であるものの、配偶者の収入が2.4%増。つまりこの結果から、賃上げの結果、実収入が増えたわけではなく、パートタイムなどの配偶者の頑張りによって、家計の収入が上がったに過ぎない。これは上記、求職者数の動向や、労働力調査からも裏付けられ、パートタイム、契約社員などの形態の伸びが支えているのが現状です。
鉱工業生産指数は前月比1.0%増。ただし、製造業の雇用者が減っている現状で、若干の違和感もある数字です。ただ4ヶ月ぶりの上昇であることからも、低位反発といった印象です。消費者物価は前年同月比0.3%増ですが、円は対ドルで100円前後、WTIは1バレル100$前後だったことからすると、実は円安ほどには物価が昂進しておらず、それを中小企業や自営業者がかぶる形となり、日本経済を圧迫する一因ともなっているのでしょう。経済指標からみえるのは、労働者にとってより厳しい現状であり、それが消費にも悪影響を与え、構造的に日本経済を押し下げる要因となっている、ということです。ここで労働法制をさらに改悪させる安倍政権は、もう日本のことなど考えていない、とも言えてしまうのでしょう。官製賃上げの効果がこの4月ですら出ていないのなら、安倍ノミクスは家計に対して一貫して負担にしかなっていない、としか言えないのです。海外投資家が、内需の回復を期待して入れてきた買いが、いつ途絶え、逆回転するか? 日本は色々なところで最悪のマグマを溜めているのかもしれませんね。

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2015年05月28日

安保法制の議論

安保法制の議論が、国会で行われていますが、側面支援を是とする読売などは『首相の積極答弁』、『厳格な認定基準』、『後方支援範囲限定』と、国民の不安を払拭するような見出しをつけて報じます。しかしいくら答弁で、保証を与えたとしても法律の条文に書いていないなら、何の確約にもなりません。まさに、この安保法制は憲法の解釈すら歪めるための法案なのですから、一内閣の解釈など大して価値も、意味もありません。しかも安倍氏も答弁において、同じコトをくり返すのは法案の中身を知らないから。恐らくレクをうけたA4一枚ぐらいの答弁書を元にして、手を変え、品を変えして答弁しているから、に他ならないのでしょう。
しかしそんな安倍氏の努力を無にしているのが、中谷防衛相です。そのA4一枚ペラすら見ておらず、法律に書いてある『できそうなこと』をぺらぺら喋ってしまう。答弁が不安定なのではなく、安倍政権が準備した『表向きの答弁』を半ば知らないために、問題ある答弁が目立っているのでしょう。安倍氏が中谷氏にレクをするときにみせていたA4用紙が、まさにそれです。防衛大学校出身でありながら、防衛相に熱心でないのか、それとも安倍政権に非協力的で、統一した答弁をするためのメモすら見ていないのか。いずれにしろキモである防衛相に垣間見える能力不足が、安保法制にとって最大のネックにすらなりそうな気配となっています。

安倍氏も苛立ち、ヤジをとばしていますが、顔色も悪くなり、体調不良が見え隠れしています。元々、安保法制における自衛隊リスクを当初認めず、徐々にそのリスクを許容するといったダメージコントロールの戦略がみられましたが、それを台無しにしたのが中谷氏です。中谷氏を庇うため、安倍氏の負担が増える。安定感を買って防衛畑の中谷氏を起用したのに、見事に期待を裏切っているのですから、ますます安倍氏の苛立つ場面も目立ってきています。
下村文科相も、せっかく献金疑惑を闇に葬り、留任させているのに、国立競技場の問題では調整能力不足、物事の決め方のまずさを露呈し、政権のお荷物になってきた。第二次政権となり、次々とでてくる閣僚の醜聞、能力不足。これは経済政策で覆い隠されてきた閣僚の問題が、重要法案が目白押しとなってきて、改めて注目されるに及び、露呈する問題ともいえます。

そしてここには菅官房長官との距離感、といった問題もあるのでしょう。沖縄の問題をこじらせるように、菅氏の調整能力不足は、質疑応答のうまさを差し引いても官房長官としては赤点です。それが閣僚を機能させる際にも、同じように調整不足となってしまう。典型的な、組織としての機能不全といった状況に陥っているのです。上の指令が、下まで伝わっていない。安倍政権では安定感を求めて、各閣僚にもその道のベテランを充てようとしたものの、中谷防衛相しかり、下村文科相しかり、西川前農相しかり。目玉をねらった小渕前経産相しかり、松島前法相しかり。功労として就任した江渡前防衛相も、醜聞まみれで辞任しました。
心の弱い安倍氏が、支持率を背景としてもっとも強い存在となってしまった。その矛盾がこうして露呈している面もあるはずです。誰もが安倍氏の方を向く一方、安倍氏に気をつかうあまり、コミュニケーションが不足している。安倍氏の心的負担を増やして、倒れられたら元も子もない。安倍氏が独断で決めた閣僚であるだけに、遠慮と配慮の狭間で、閣僚が縮こまっている印象が拭えません。安倍政権が抱える最大の悩み、それが実力以上に評価された支持率と、安倍氏の心の弱さです。いつのまにか『安倍氏の心の保全』を揺るがすもの、という意味で『安保』になりつつあり、国会論戦で示される安倍政権の弱点、になりつつあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:23|PermalinkComments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2015年05月27日

日経平均が9日続伸

日経平均が今日も続伸し、9日続伸になっています。興味深い話としては「4-6、7-9月期は昨年の増税後の落ちこみからの反動で指標は改善してみえる。特に内需は堅調に映る。だから内需系を買う」 また「株主重視経営とは、麻薬のようなもの」というものがあります。ストックオプションなど、経営陣に報酬として株券が付与されている企業では、一度株主重視の経営をはじめると、経営陣が自らの資産価値が目減りするのを避けるため、上がった株価を維持するための自社株買いや増配などをくり返す、といった傾向があり、それを期待する買いで高値が維持されやすくなる、またさらに上値をめざす。そうしたものが株高を演出している、といいます。
例えば米国はもう5年以上、この株主重視の姿勢を貫き、それによって株高を演じてきましたが、若干の息切れも感じるところです。日本はこれからこの株主重視経営を強めるとみられ、また潤沢な内部留保を抱える日本企業は、それこそ株主還元への余力も相当なものであり、それを狙った資金が流れてきているのでは? といった話もあります。株主重視経営なのか、経営陣のための施策なのか、経営側と労働側との力関係が、非正規雇用の増加などで狂ってきている今、より経営側にとって都合のいい施策がとられる。その波及的効果としての株高なら、決して好感できるものではありません。米国型の格差拡大がより一層、日本ですすむのかもしれません。

そんな中、気になる記事が日本勢によるドル調達コストの高まり、というものです。円が過剰に供給されているばかりか、利回りも低く抑えられ、国内で資金運用できなくなった邦銀が、海外で資金運用するための円スワップ取引で、金利差以上の高い金利を要求されているのです。この流れは、昨年1年間で12兆円だった買い越しが、今年3月までにほぼその水準に達してしまった。ここにはポートフォリオを見直し、外国証券・債券の比率を大幅に高めた年金基金の影響もありますが、日本の投資家によるドル買いは、プレミアム金利を支払っても行うほどなのです。
明らかに日銀によるQQEの副作用であり、ここに来て円水準がブレイクしたのも、日本勢のドル買い、円売りに伴うものかもしれません。ただ、外国人投資家が株を買っている割に円を買わないのは、国内においている資金を回しているだけ、となるのかもしれない。それが先物売り、現物買い、という日本買いではなく、日本企業買いに現れるのかもしれません。それこそROE重視、株主重視の経営を強める日本は、全体としての成長は期待できないものの、企業の株価だけは堅調だろう。特にそれは、海外に軸足をおいた企業なら、その国の成長を企業収益に結び付けられる、との連想も働きます。そんな思惑が、ここ1ヶ月、顕著になっているのでしょう。

しかし円安が加速し、賃上げが円高によるインフレに届かなければ、このシナリオには見直しもかかります。またQQEをしてもデフレになるなら、明確に日銀の金融政策の失敗も意識されるでしょう。失敗しているQQEをさらに強めても、事態が改善する見込みはない。追加金融緩和には、実は意外な面からブレーキがかかり易くなっているのでしょう。市場にただよう追加緩和期待も、円安によって萎むのなら、それを充てこんで海外資産を買おうという本邦金融機関にも、影響がでてくるかもしれません。この辺り、複雑な事情が今後の円相場を決めるのでしょう。
しばらく米欧の株価、債券が堅調だったのも、1-3月で急速に増えた日本のマネーが影響していたのかもしれません。しかし米経済は減速、欧州も3月をピークに減速を示す経済指標が並びます。実は、せっかくプレミアム金利を払ってまで、海外に投資したにも関わらず、日本の投資家は海外では稼げていないのかもしれません。ならば、円安のうちに資金を引き戻したい、そんな思惑も働きそうです。日本株だけブレイクをつづける今の市場、不健全であることは間違いなく、日本の不動産もピークをつけたとみられることからも、その継続性には大きな疑問を残しながら、短期の需給だけで上げる、といった形が当面の流れになってくるのでしょうね。

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2015年05月26日

雑感。ものごとの決め方

対ドル、対ユーロでも急速に円安がすすんでいます。ギリシャ不安が理由として挙げられますが、それだとユーロに対しては円高になるはずです。先週末のイエレンFRB議長講演で米利上げ局面を意識した動きが、メモリアルデイ明けに急速に出てきたのか? いずれにしろ、ここからは思惑による値動きが出やすくなるのでしょう。それが米国の癇に障り、あらゆる圧力によって日本の金融政策、経済政策にも影響が出るか。影響は様々に出てくるはずです。

日本では安保法制の国会論戦がはじまりました。概念的なことはおいて、日本では物事の決め方に問題を感じます。安倍政権では、安保法制のリスクを説明せず、審議を深めないことで国会を通過させようとします。それはマイナンバー法案も同じ、リスクの説明が正しくされず、国民がそれを理解しないまま法案が通り、運用されて始めて不利益を感じ、撤廃や修正となります。
安倍首相自ら「グレーゾーンから集団的自衛権まで切れ目ない対応」と述べているのですから、当然のようにリスクも高まりますし、難しい判断を迫られます。安倍政権では「絶対にない」などとして、様々なリスクが起きない、起きるはずがないと封印しますが、その根拠は法案内には見えず、単にそう述べているだけ、に過ぎません。言葉は悪いですが、安倍政権は単に頭が悪くてそう言っているのか、確信犯的にそう述べているか。いずれにしろリスクを議論せず、実際に自衛官が苦境に陥る、死亡事例が生じたとき、始めてそのリスクについて国民が意識し、この安保法制の問題について知ることになります。しかしそれでは遅いのです。

インドの例でみてみます。モディ政権になって1年、モディノミクスと持て囃され、資金流入がつづき内需が好調、一見うまくいっているように見えます。しかし独裁色を強め、国会との調整がつかず、決めきれないことも多い。内需は堅調といっても、国内では負債の多い企業に対して、シャドウバンキングが融資する形で延命している、といった事情もあります。市場が期待したほど、経済改革もすすんでおらず、ここからはマネーの変調が起こるのかどうか? それによっては一気に景気も悪化する懸念すら漂うほどとなっています。
前政権は、逆に周りの意見に耳を傾け、調整するものの決めきれない、といった形も多かった。人種の坩堝であるインドでは、民主主義的であると多様な意見がぶつかり合い、難しいといった面はあったのでしょう。しかし逆からみれば、モディ政権がいずれシリアのアサド政権化する恐れもあります。独裁を強めていくと、必ず反対派の勢力が不満をため、何らかのきっかけで暴発する恐れもある。独裁により物事を決めてしまう、とは速さがメリットである一方、別の問題も孕む。特に、国の制度には利害が密接にからむため、尚更危険でもあるのです。

安倍政権はこれまでも、物事の決め方ばかりでなく、検討の課程から問題のあるケースが多い。直近でも、TPP要件を国会議員に開示する、といった後で取りやめる。東京五輪も同様、国立競技場の件など、地方自治体の了承を得る前に、安倍氏に都の負担は500億円と報告していたと伝わります。決め方、手続きからして素人、独善的であって、これで自分たちだけで決め、本来は必要なリスクについての議論を封殺してしまうので、法案にもまったくそれについてのケアが盛り込めない状況となっているのです。独裁、独善は後に抱える問題も大きい。安倍政権では、まさにこの愚を犯そうとしています。インドでトラブルが出てくるのはもう少し先になるでしょうが、安倍政権はすでに2年半を越してくるので、初期の経済政策でも、問題点が出てくるのでしょう。金融緩和をしても夏ごろにはデフレに戻るかもしれない。そうした金融政策、経済政策の失敗を意識して円安がすすんでいるのなら、止め処ない下落の、今は幕開けを迎えようとしているかもしれず、注意が必要な円安局面に入ってきた、といえるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:20|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2015年05月25日

株価の上昇

日経平均が7日続伸で、最高値を更新です。日銀の金融政策決定会合をすぎ、日銀プレイが終わったにも関わらず上昇した理由について、いくつか噂レベルの話をまとめてみます。欧州系の現物株買いが相場を押し上げている面は間違いなく、ギリシャ不安から欧州からの逃避マネーが入っている。上海株の上昇で、欧州系は中国へのコミットも多いことからアジアのリバランス買い。などですが、一番はドラギECB総裁の緩和発言で、余剰資金の振り向け先に日本を択んでいる、という話が信憑性がありそうです。ただここにきて急速にドル高、円安がすすむのと逆にユーロ安、円高がすすんでいて、欧州系は急速に日本での資産を増やしている状況です。しかし商いは先週末、週初と極端に減ってきて、いくら週初は少ないとはいえ、この水準で本当に居心地よいと考えているのか? 極めて怪しい雰囲気すら漂ってきています。
米国のGDP改定値はマイナス幅が拡大するとみられ、中国景気もHSBC景気指数など、低迷が示唆されます。空前の好況だった電子部品も、中国のスマホ需要一巡から、伸びは期待できないどころか、エコポイント後の液晶テレビのような状況すら漂わせる。ドルでは円安なので、多少の上積みがあっても、ユーロでは円高なので業績圧迫要因。日本の業績にも期待できない。しかしここに来て、その中国から、矢継ぎ早に市場対策とみられるものが発表されています。

株価指数オプションの取引開始、株式発行手順の簡素化、株価操作の取締り強化、などは金融市場改革の一環とはいえ、世界に溢れる投資マネーをいかに呼びこむか? それによって景気を安定させたい、といった思惑が透けてみえます。地方による公共投資も推奨するなど、鬼城などのゴーストタウンが頻出する中で、遮二無二経済を下支えするための策を打っているようにしか見えません。逆にいえば、それだけ景気に不安がある証拠でもあるのでしょう。
株高は七難を隠します。不動産投資から逃げる資金も、株高になって投資家に余力が増してくると、もどってくるかもしれない。逃げた資金が海外に流れるのも防げるかもしれない。そして中国経済がそうやって株高で好調になるなら、日本の景気も当面は支えられる。インバウンド消費も、日本の輸出先でもっとも多いのも中国なのですから、中国が必死で経済を下支えしようとし、それが上手くいっている間は、日本へも投資できると考えているのかもしれません。

安倍ノミクス期待も剥落し、日銀の金融政策でも景気押し上げ効果が限定される。それでもミクロが好調なのは、こうした海外要因で日本企業が左右されていることの証左なのでしょう。本来、昨年度マイナス成長に陥ったのですから、大きく売り込まれてもおかしくありません。しかしそれを気にせず、上昇できるのは、日本が相対的に稼ぐ力より、見かけの企業業績、それは海外で活動することで上積みされた部分を、より評価されているということでもあります。
日本企業が海外で稼いだ資金で、国内で株主還元を強めているのですから、何とも回りくどく感じます。そしてそれを目当てで、海外からの資金が日本の現物株を買う。この循環が上手くいっている間は、日本株も上げ易い状況にはあります。それを覆す要因が、今日の関東地方を襲った地震でも、一瞬売りが嵩んだように、マネーの変調をもたらすきっかけです。それが国内の自然災害なのか、海外の景気不安なのか、どちらにしても日本の経済政策、金融政策には関係ない、という点でみると、「色の白いは七難かくす」と云われますが、七難がおこると顔面が蒼白になる、となってしまうのかもしれませんね。

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2015年05月24日

外交と検証

核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、文書を採択できずに閉幕しました。結果的に、日本提案の「広島・長崎への各国首脳の訪問」は削除、代わって「核兵器の影響をうけた人々や地域との交流」となり、これだと核保有国で地上核実験を行ったところなら、ほとんどが含まれる形となります。唯一の被爆国という優位性は失われたばかりか、『人道の誓約』というオーストリア提案の核廃絶にむけた動きにも日本は賛同せず、日本の立ち位置がより曖昧にしかならなかった、という印象を色濃く残し、世界は日本をそれほど評価していない、ということが示されました。
唯一の被爆国であり、かつ大きな原発事故を経験した日本は、世界にむけて原子力の安全利用を訴えられる立場にありながら、その機会を逃した。これも一つの外交戦略上のミスでもあるのでしょう。中国が反対しても、世界の趨勢が日本の提案を支持していれば、文言が変更されることなどなかったのですから。さらに対米追従の結果、会議前後で70から107カ国と支持を増やす人道の誓約にも乗れなかった。日本がこの誓約と合わせ、被爆国の経験を語ったのなら、より浸透しやすかったはずです。しかし日本では被爆者の認定でさえかなり遅れるなど、行政がこれまで積極的でなかった面も、被曝体験という主張に力をもたない原因かもしれません。

そんな中、自民党が震災復興にむけた五次提案をまとめました。避難指示解除準備区域、居住制限区域を17年3月までに解除、それらの住民へ支払われている賠償を18年3月で一律終了が明記されました。また16〜20年にかけては国の全額負担とした復興資金も、一部自治体に負担とし、商工業・農業の再開にむけた支援組織の立ち上げ、を明記しています。まず前段、時期を区切って解除や賠償の停止を示すことに、正当性がありません。努力目標なら構いませんが、放射線レベルの低減が計画通りにすすむかどうか、不明でもあるためです。
さらに東京五輪でも始まった、東京都に一部負担と同じ構図が復興資金でも現れました。最初に大風呂敷を広げたものの、自ら畳むことができなくなり、地方へ負担を付回す。復興のための税金が、まったく関係ない事業に使われていた例が枚挙に暇ないほどなのに、その検証すらなく、弱い立場の地方へ、復興税すらもらっていない地方が負担しなければならない理由がありません。また単なる利権確保のためとしか思えない新たな支援組織などは、自民党らしい提言と言えます。震災復興と、少し他地域とは異なる部分もありますが、別けて考える必要性はありません。むしろ特別に枠を儲けた方が、予算が獲得し易いのと同時に、他の地域との利権とバッティングせず、自由に活用できる。正直、こうした組織が機能した試しもないのに、それこそ復興予算の流用と同時に、検証されないのですから、問題点すら意識されていません。

そうした問題と同じ位置づけにあるのが、ISIL人質事件における検証報告です。「人質救出の可能性を損ねるような誤りがあったとはいえない」とし、政府対応に問題がなかったとします。しかしそうなると、安倍政権では人質事件に対して、必ず救出できないと述べていることになります。誤りがない、問題がないのに、結果は最悪なのですからそうなります。問題があるから、そこを修正すれば救出できた可能性がある、ではないこの報告書は、滑稽極まりないものとなってしまっているのです。しかもISIL近隣諸国に渡航しようとするジャーナリストに、日本が裏で手を回し、規制をかけている可能性が多く報告されています。安倍政権の対応は、臭いものに蓋、君子危うきに近寄らず、でいれば事足りるとでも言いたげな対応です。
問題点を抽出、改善できない日本。これをつづけていく内、大きな過ちを犯すことにもなるのでしょう。外交でも、何が問題で今回、日本の提案が受け入れられなかったか? 単に中国を敵視するばかりでなく、世界の世論をどう集めるか? それを考察しない限り、同じことを繰り返します。地球儀を俯瞰するばかりで、地球を一つにまとめることができなかった。自らの過ちを認める真摯な態度から始めないと、『人望の制約』により、安倍政権は行き詰ることが確実なのでしょうね。

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2015年05月23日

雑感。安倍政権の大盤振る舞い

IMFによる対日経済審査報告書、円安でインフレ率は2015年末まで1.5%、ただし景気後退と物価上昇がおこる、スタグフレーションの可能性を示唆しました。すでに2014年度はマイナス成長と物価上昇によるスタグフレーションともいえますが、増税の影響が消え、反動の反動の影響が消える5、6月以後、成長率が鈍化し、マイナス成長に陥るようだとスタグフの声が海の向こうから聞こえてくるのでしょう。日本のメディアでは怖くて使えないスタグフレーション。米中の景気減速を示す指標がいくつも散見され、インバウンド消費と円安による輸出で支えられた日本の景気にも、深刻な影響を与えることが確実です。そのときまで円安が続いているようだと、スタグフについても考察する必要に迫られてくるのでしょう。

安倍首相が太平洋・島サミットの演説で、3年で550億円もの財政支援を約束しました。3年前の野田政権時代の400億円を上回り、強烈なインフレになっています。先に、アジア開発銀行やODAを通じて、5年間で13.2兆円の投資をめざす、なども発表されており、大盤振る舞いが次から次へと出てきます。こうした支援のケースで必ず語られるのが、中国と対抗という言葉ですが、そもそも対抗する意味などありません。日本だけが遮二無二、対抗心を剥きだしにして資金をベットしており、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の資本金も1000億$規模とされることから、短期的に3〜4倍に投資資金が膨らむアジアで、バブルが生じる恐れもあります。
しかしここまででさえ、先進国の緩和マネーが流れこみ、バブル化しているとの懸念もあるアジアで、投資資金が流れこんだらどうなるか? 正直、危険性しか感じません。米国が利上げ局面となり、流れこんでいたマネーが逆流すればバブルが弾けて景気が悪化し、インフラ整備もままならなくなるかもしれない。今のアジアは、資金の流れに敏感になっていないと、いつ資金ショートが起きるかもしれない。そんな不安定な市場になろうとしているのです。

この安倍政権の大盤振る舞い、安倍氏の対抗心というばかりでなく、財務省、外務省の利権とかぶっているだけに、日本が前のめりすぎるほど前のめりな点には、不安しか感じません。残念ながら、それほど優良な投資案件は残っておらず、AIIBと食い合いになるのが確実です。アジアで起きるプチバブルと、その崩壊と、世界経済を不安定化させる要因になりかねないのでしょう。欧州のギリシャと同じように、アジアのギリシャ探しが始まるときが危険となります。
安倍政権になって、急速に拡大する海外支援のための財源、それは国民の血税と国債による資金調達です。しかしその国債発行には限界説もあり、IMF報告書には「財政の持続可能性に疑問…」とあります。日本がスタグフに陥るとき、急速に国債の信認が失墜していくことにもなるのです。すでにその萌芽がみえる、日本の景気。日本の財政に不安が生じるということは、融資先も不安に巻きこまれる、ということにもなります。そうした世界同時景気後退の引き金を、中国がひくのか、日本がひくのか、今はその競争をしているようにしか見えません。融資先を募るというより、そうやって経済が同時に崩壊してもいい、そんな有志国をどう集めるか? そんな競争に陥りかけているのが、現状なのでしょうね。

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2015年05月22日

雑感。黒田日銀総裁の会見

国が主導し、核のゴミの処分地に関して有力な地を選定、地元にはかるという方針に変更する旨、伝わります。しかし本当に有力な場所などあるのか? 甚だ疑問です。しかし今回のように相対的に比較するなら、それはリスクの高低という形で表れる、ということにもなります。リスクが低いからといって、決してそれは安全、安心ではないのですが、この辺りは安保法制と同じ、国が指定した場所は「安全」などという暴論で押し切るのかもしれません。

日銀の金融政策決定会合が開かれました。株式市場では、前場から後場に失望売りが出ることを見越した動きがあり、むしろそうした層が買い戻すことで、上げた形となっています。おかげで株式の時価総額が最高値を更新、しかし今日は商いも低調、引け後の黒田総裁の会見と、今晩のイエレンFRB議長の講演待ちだったのであり、その影響は来週に出てきます。
黒田総裁の会見ですが、金融政策は現状維持、景気認識は「緩やかな回復基調を続け…」から「緩やかな回復を続け…」と、基調判断をやや上方修正したことについて、1-3月期GDPと個人消費の堅調さを上げました。しかし個人消費は原油安効果がフル寄与し、追加緩和効果もあったはずなのに、10-12月期から伸び率は横ばい。むしろプラス効果がなければマイナスに陥った可能性すらあります。4月の小売は伸びていますが、これは昨年の駆け込み需要の反動の、反動で数値が高めに出ているもので、一昨年と比較し、また5月以降の数値を見てみなければなりません。

4月以後、増税の影響が消えることで物価も下落、実質賃金もプラスになるとの観測もあります。黒田氏も増税のマイナス面は認めつつ、見守るという姿勢ですが、実質賃金がプラスになっても、消費が回復するかどうかは見通せないことが示されています。それは年金のマクロ経済スライドによって伸び率が押さえられた結果、拡大する年金受給層の購買力が低下しているため、ということです。しかも日銀が想定する物価上昇率に達すると、年金受給層はさらに苦境となり、消費を抑える。インバウンド消費が伸びても、現状程度になるなら、この年金受給層の消費意欲がどう回復して行くか、の方が日本経済にとって大きな影響を与えるのかもしれません。
潜在成長率も1%程度にもどる、と自信を深めますが、設備投資や女性の就業率をその理由にあげるのは、些か問題もあります。米中の減速、失速で設備投資計画は手控えられ、女性の就労も多くはパートタイム。今のところこの材料での伸び代は、限定的ともえいえます。それ以上に落ちて行く就労人口と、増えていく年金受給層と絞られる社会保障費、この兼ね合いから考えれば、別の手を考えない限り、現状の0%程度から回復することはないと言えるのでしょう。

現在の株価について、黒田氏は「バブルでない」と認識を示しました。しかし今、市場で起きているのは外国人投資家の先物売り、現物買いの流れです。増やし過ぎた先物買いを処分するのは当然として、欧州のギリシャ不安、米国の指標悪化、など投資先の減少によるマネーとみられますが、こうした需給のみの問題で上げている状況です。さらに日銀プレイとされる、日銀への思惑買いが相場を支えている。日本の将来性を買っている状況ではありません。
今回、日銀は追加緩和期待の収束を計りはじめた、というのが本音なのでしょう。景気認識を上方修正し、想定通りに経済が動いているなら、追加緩和をする必要がありません。それでも「躊躇なく調整」と述べ、追加緩和に含みを残すダメージコントロールを計ってはいますが、本音は米国の圧力が強まり、市場にも変動要因が散見される中、どう追加緩和期待を収束させ、それでも資金を逃がさないか? それを意識しているものとみています。日本の現物株買い、これが成長期待でないのは、業績の伸び率をみても明らかです。そうしたマネーの事情で上がっている株を、どう維持して行くか? これから本格的な市場監視という、日銀の仕事が始まるといえるのかもしれませんね。

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2015年05月21日

党首討論について

核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、文書案に被爆地訪問を盛り込もうとした日本に対し、中国が抗議している問題。中国の「日本は加害国ではなく、被害国として」振舞おうとしている、という理屈には同調せずとも、素直に日本案を支持する気になれないのは、この文言には観光を促す広告宣伝効果といった目的が、垣間見られる点です。日本が本気で核拡散防止を訴えるのであれば応援できますが、背後にある思惑が胡散臭い以上、単なる利害対立にしか見えません。
これは産業革命遺産でも同じ。韓国が主張する「強制徴用された朝鮮半島出身者がいる」との理屈には同調せずとも、観光ビジネスを念頭においている点で、日本側の意図を素直に応援できません。箱根にしろ、やたら風評被害や地元が困っている、といった報道も目立ち、さらに異変はGW前からあったにも関わらず、警戒レベルの引き上げを最終日近くまで待った、とされる観光産業への配慮。国民の安全は二の次といった態度に、経済優先の危うさしか感じられません。日本は何を犠牲にして、何を守ろうとしているのか? 訴えるべきはそういうことではない、日本が世界にむけてアピールすべきは、安全・安心ではないのか? 素直にそう感じます。

昨日、党首討論がありました。その中でまず気になったのは、安倍首相の「後方支援も戦闘現場」とし、「戦闘が起こったら現場責任者の判断で中止」とする点です。つづけて「安全が確保されている場所で輸送」とするので、ここには矛盾が生じ、戦闘現場である以上、安全などないのです。リスクの高低はありますが、非戦闘地域とするのは難しく、戦闘地域で行動、とした時点で明らかに自衛隊は戦闘を覚悟して出て行かなければならない、となります。
しかも安倍氏は、「他国の領土で戦闘作戦行動を目的に武力行使はしない」と明言しました。これだとほとんど後方支援は不可能です。希少な可能性としては、テロとの戦いを当事国が要請するケースで、それだと領海、領空の通過権を得られる形にはなるでしょう。付け加えるなら、イラク戦争における日本の非戦闘地域での活動も、この法律ではできなくなります。ただし、ここには逃げがあって「戦闘目的でないなら、他国の領土に入っていける」そして「戦闘があったら現場判断で応戦できる」となるのです。それが今回の安保法制の改正であり、集団的自衛権の意味なのですが、質問している岡田氏も前段に拘り、そこまで掘り下げなかったのは残念です。

維新の松野氏は明らかに準備不足、維新の態度表明に徹しましたが、共産の志位氏はポツダム宣言、カイロ宣言をもちだし、安倍氏の大戦の認識を問い質しました。驚いたのは安倍氏が「詳らかに読んでいない、承知していない」とした点です。少なくとも安保法制や70年談話など、戦後の戦争認識については深く理解し、洞察し、それに基づいて考えなければならないはず。しかも昨日、今日議員になったわけでもない安倍氏が、それらを知らずにこれらの問題を考えてきた、という点です。「詳らか」というより、明らかに何も知らない風でもあり、読んだらびっくりするかもしれません。それは極めて安倍氏の今後にとって不都合でもあるからです。
安倍政権になって、国民の安全や安心より優先されるもの。それは経済的側面だったり、国際貢献という名の下に行われる集団的自衛権の行使だったり。しかしそこで安倍氏の答弁にあるように「戦闘がおこったら逃げる」というなら、自衛隊はよい的です。応戦しながら撤収、撤退するのでない限り、多大な被害をだすでしょう。むしろ戦闘地域に行くなら、それなりの装備、覚悟をして、しっかり政治がその責任を負うのでない限り、自衛隊の負担が増えるばかりとなります。政治は逃げ、国民や自衛隊が危険に晒される。それがこの国が今、めざしている国の方向性である限り、誰もが「素直に支持する気にはならない」となってしまうのでしょうね。

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2015年05月20日

1−3月期GDPと、2014年度GDP

内閣府発表の1-3月期GDP速報、実質で前期比0.6%増、年率換算2.4%増。名目で0.7%増、年率換算7.7%増となりました。需要項目別では実質で、民間の最終消費支出が0.4%増、住宅が1.8%増、設備投資が0.4%増、在庫が0.5%増です。また公共投資は1.4%減、公的在庫はわずかな増加です。輸出は2.4%増、輸入は2.9%増となり、全体的に大きな伸びとなっています。
しかし在庫が曲者です。そもそも1-3月期は消費が活発化し、在庫が減るというのが通年の考え方です。そのタイミングで積みあがった。しかもこの数字、実は改定値、確報値になると大きく変化するクセがあり、調整弁のような役割をもつ項目。ではどうしてこれほど在庫が積みあがったか? 簡単にいえば、2014年度のGDP速報値で、実質で前年度比1.0%減と、マイナス成長に陥ってしまったこと。これを隠すため、嫌でも1-3月期を高く見せかける必要性に迫られた、というのが実情なのでしょう。何しろ、ほとんどの報道で年度のGDPについては見出しは勿論、ふれない、書かれていたとしても記事の最後の方に少しだけで論評を避ける、といった傾向もみられるのですから、いかに通年のGDPを隠したかったか、透けて見えるというものです。

安倍ノミクスが成功していたら、消費税を増税してもプラス成長は維持できたはず。しかも2四半期連続でマイナスとなれば、確実に失敗という形となる。そこで在庫を操作してプラスにしたのです。ただし今年度を高く見せかけるため、改定値、確報値になると在庫を下げて、1-3月期もマイナス成長にする恐れがあります。報道の扱いが小さくなればインパクトも下がる。しかも前年度が低くなれば、スタートラインが下がるのですから、尚のことそうした誘惑も働きます。
さらに1-3月期の国民総所得(GNI)は実質で0.9%増、年率換算3.7%増でしたが、2014年度を通してみると実質で0.5%減になった。つまり円安による海外で稼ぐ力がついた、といっても日本全体では稼ぐ力が衰えた形になったのです。また2014年度の雇用者報酬は実質で1.2%減。稼ぐ力が衰えたばかりか、日本経済がシュリンクしている現状も見え隠れします。国も稼げていない、国民にも還元されていない。海外からの実質純所得でさえ、円安ほどには増えていない。それがこのGDP速報から見えてくる日本の実態、ということになります。

3月の景気一致指数の改定値は1.5pt低下と、速報値の1.2pt低下からさらに悪化しました。某メディアで、日米首脳会談でオバマ氏が語った言葉は「海兵隊のグアム移転を前進」が、日本のNHKが当初「普天間基地の移転」と伝えられ、右よりメディアは「辺野古移設」と伝えた、と誤訳が拡散したことを伝えています。大手メディアがこれほど誤報を拡散するのも珍しい、というか、安倍政権で特徴的におきるようになった事象でもあるのでしょう。しかもNHKは誤報を認め、後に訂正したものの、その他のメディアは誤報を伝えていない。それほど速報のインパクトは大であり、事実かどうかより、その効果だけが一人歩きしているのであって、このGDPもそうした目的で、前期比0.6%増などという極めて高い数値が示されたと考えています。
GDPとはGross Domestic Productの略ですが、今やGimmicky Domestic Productと呼んでもいいのかもしれません。からくりの国内生産により、操作された数字で一喜一憂するのではなく、本質をみなければならないのでしょう。そのからくりが、何のために仕掛けられたのか? それを弁えておかないと、いつまでも騙されることになる。改定値、確報値までしっかりみておかなければいけないものとなってしまっているのでしょうね。

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2015年05月19日

雑感。日経平均2万円台回復

日経平均がふたたび2万円をつけました。これは色々と説明もありますが、先週末から緩々と始まった日銀プレイの所作です。週末21、22日に予定された決定会合で、サプライズがあるのではないか? 今回はそれほど期待が高くないものの、逆にそれがサプライズ好きの黒田総裁の好機ではないか? そんな思惑から買いにベットしているのです。しかもすでに先物、オプションは高水準に保有しているため、金融株などを中心とした現物を中心に買っているのです。
この取引が成立する一因は、下がれば日銀が買ってくれるから、です。つまり期待値で買っても損はし難いので、安心して買う。これが日銀プレイです。すでにマクロでの改革期待は存在せず、安倍ノミクスで買っているわけではないものの、ミクロの業績は好調だし、日銀プレイで安心して買える。最近、ファンドでもプログラム取引より、人間が自らの手で行う取引の方が、収益性が上回ったという話もあります。つまり計算上、不規則でプログラムには組み込みにくい『期待』に賭けた取引の方が、有利だということでもあって、それが日経平均2万円の背景でもあるのです。考えてみると、日経平均が2万円をつけるのは必ず日銀金融政策決定会合前、ということなのですから、この取引のボリュームの大きさが自ずと知れる、というものです。

昨年度の毎月勤労統計確報が、厚労省から発表されました。現金給与総額は0.5%増の約31.6万円となったものの、所定内給与は0.2%減であり、所定外および特別給与の増加が、それをカバーした形です。労働時間が所定内は減少、所定外は増加、という影響はあるものの、賃上げしてもこの程度の効果であり、また実質でみると3.0%減と、国民生活は統計開始の1990年以来、最大の苦難を迎えたというのが実態です。しかもこの現金給与総額、電気・ガス業が4.5%増と最大だったように、一部の事故以来、給与を控えめにしていたところが3年の禊をすぎて増やした結果、とみなすなら、実態としてはもっと悪かった、ということにもなってくるのでしょう。
国際労働機関(ILO)は、正規、非正規の差を是正すれば世界全体で440兆円の効果、と試算していますが、日本はこれと逆に非正規を増やす方向の労働法制の変更を、今は審議している状況です。ミクロの好調、マクロの悪化はこうした点からも、明確に示されていると言えます。

昨日内閣府が発表した1-3月機械受注統計は、前期比6.3%増で達成率101%となり、明るい兆しとも伝えられます。しかし4-6月期見通しは7.4%減となり、1-3月期は企業収益が拡大したことで節税対策としての設備投資が増えた、とみられます。昨年度の総労働時間が0.4%減となっているように、決して仕事が増えたわけでもない。増える見通しもない。円安で業績だけが好調な企業にとって、設備投資しておこう、ぐらいの軽い気持ちで1-3月に集中した、というだけです。
総務省発表の家計調査で、昨年度の世帯ごとの金融資産平均は、3.4%増の約1800万円となっています。上昇を続ける株価で有価証券は4.6%増ですが、それ以上に定期預金が4.7%増、普通預金が6.7%増となるなど、必ずしも資金が回っていない。投信設定も好調な中ですから、尚のこと預金が増えて行く現状を、総務省も説明できずにいます。しかし分かっている人からみれば、金融バブルの終焉が見えつつあり、不穏な動きに備えようと考えたとしても自然です。さらに高齢世帯となれば、資産を増やすより防衛に回そうと考える。もう十分な資産を形成した層にとって、この市場環境に付き合う必要もない、というのがこの結果にも現れるのでしょう。リスクの少ない日銀プレイ、といった取引に傾注するのも、市場が不安を感じつつ、とりあえず付き合っていくしかないと考えた結果でもあります。リスクの高まりと、株高と、その不安定さの中で誰もが損をしたくない、そんな行動が今後の主流になっていくのかもしれませんね。

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2015年05月18日

大阪都構想の住民投票による影響

昨日の大阪都構想への住民投票の結果が、維新を揺らしています。共同代表の江田氏も辞任を表明しましたが、これは責任をとるのと同時に、橋下氏が凋落することで江田氏の力が強くなり過ぎ、やっかみや反発が強まることを恐れたものと推測できます。後任に松野幹事長を推していますが、維新の国政進出時から携わっている松野氏に委ね、党分裂を避けたいといった意味合いもあるのでしょう。大阪維新、維新の党内にいる橋下氏に近い保守的思想をもつ層との折り合い。民主に近づきすぎても不満が溜まり、かといって自民との共闘となれば、使い捨てられるだけ。是々非々が一番難しい、というのをここから知ることになります。

安倍官邸にも激震の余波は、当然のように襲います。自民支持層が賛否で割れた原因は、明らかに官邸の曖昧な態度にあります。地方組織を切り捨てる、地方を大事にしない、という意識はこれまでも抱いてきた。統一地方選はそこそこ現職の自民党知事、市長、議員が勝利していますが、投票率が歴史的な水準まで下がるなど、決して安倍政権支持層が多くはない、ということを示しています。統一地方選前には地方創生など、色々と発言はありましたが、今となって地方への言及はほとんどない。そこに来て大阪府連を背後から撃つ。憲法改正という大義のためなら、小を切り捨てる。そんな態度を今回、露呈してしまった形になるのです。
今のところ自民党総裁選も対抗馬なし、として無風が予想されています。政治資金規制法違反や、公選法違反が問えそうな議員には、それを不問に付すことで恩を売り、支持を広げているため議員票は磐石、との見方が大勢です。前回の石破氏も、地方では上回ったものの議員投票で敗れました。この政権支持率、代える理由もない、というのが大方の意見でしょう。

しかし9月は、色々と節目が重なる時期でもあります。日銀の国債購入、ETF買いなども一時期よりペースが下がっているとはいえ、秋ごろには資金が枯渇する懸念が出てくるでしょう。FRBのゼロ金利解除も視野に入ります。ギリシャは6月にもデフォルト? との話もあって、米中の景気減速なども含めると、経済分野では大きな転機を迎えそうです。政治面では安保法制がいつ決着するか? その決め方次第では、安倍政権も急速に支持を落とすかもしれません。
最近、自民党内では二階氏の動きが活発です。本人が出てくるかは分かりませんが、魅力的な候補を統一して立てた場合、決戦投票までいかずにその候補が勝利する可能性も出てくる。実は今回の大阪府連切捨て、による地方の反発が大きくなるかは、安保法制で混乱すればするほど、その間に対抗馬の地方への根回しがすすめばすすむほど、可能性として高くなってくるのです。

今回、橋下氏の引退を惜しむ声が、記者の間から上がったとされます。メディアとは対立しても注目度が高く、視聴率がとれるからです。一方、ニュースに登場するとみるみる視聴率が下がると専らの、安倍首相。どちらがメディアにとって重宝する存在かは、一目瞭然です。今は放送法までもちだし、うるさく文句、苦情を言ってくるので大人しく従っている、とされるメディアが掌返しをするのは、些細なキッカケからかもしれません。大阪と抗争、安倍官邸がみせた大阪府連との確執、これが自民党総裁選で第二ステージとなるのか? それが安倍官邸の威信が揺らぐ、となるなら、自民党総裁選も注目を集めることになるのかもしれませんね。

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2015年05月17日

雑感。北朝鮮の処刑報道

大阪都構想の賛否を決める住民投票が開かれ、投票率が66%を越え、大きな関心のあることが示されました。住民生活に密接に関わる、ということ以上に、天井ナシのアピール合戦となり、デマも言いたい放題、誹謗中傷もやり放題、といった日本では珍しい投票戦術が展開された点に注目しています。誹謗中傷がやり放題、といっても人間性を疑われれば票を失う。そのぎりぎりで泣き落としあり、自民・共産まで共闘するという異例ずくめの展開となっています。
さらに異例なのが、安倍政権と自民党本部とのすきま風です。橋下大阪市長を利用したい安倍政権と、維新と対決してきた大阪府蓮と、それを支持する党本部との間で、明らかに温度差、賛否に対する態度の差が見え隠れした。出口調査でも、自民支持層の票に、意外と賛成票が多くなったことで、賛否が拮抗という形になっています。これは自民党内でも禍根を残すことでしょう。今後も安倍自民は地方選挙に弱いといったイメージとともに、地方の努力を蔑ろにするといったことで、地方から反発、反乱がおき易くなってくることにもなるのでしょう。

韓国の国情院が、北朝鮮の玄永哲人民武力部長を粛清した、と発表しました。しかも対空高射砲や、火炎放射器まで用いられた、との話も情報スジとして伝わります。ただこの話は懐疑的にみています。粛清については確実のようですが、金正恩氏の判断力が鈍っていたら別ですが、仮にも軍トップまで上り詰めた人物を処刑するとき、軍内の反発も考慮すれば、残忍な方法は取りづらいはずです。恐怖政治、とも伝えられますが、最も怖いのが軍によるクーデターのはず。しかも反乱罪という理由に、居眠りとしか伝えられないのですから、尚更その仕打ちには軍内でも懐疑的な見方が広がるでしょう。極めて問題ある処刑とみえてしまいます。
しかも国情院の正式なコメントではないようなので、尚更この情報には懐疑的です。個人的な憶測ですが、ちょうどケリー米国務長官の訪中が発表された折もあって、韓国側の事情として米国に自分たちに目を向けて欲しい、というのがあったのではないか? つまり人道的な犯罪には、強く反応しがちな米国の目を向けさせるための、虚報だった可能性を疑っています。

最近、韓国では米国内におきつつある、嫌韓の動きを懸念している様子があります。対日強硬路線を崩さない朴政権のせいで、アジア戦略も見直しを迫られており、忠誠を尽くして米国の言いなりである安倍氏の方が、重宝するとの見方に変わっているのです。韓国としては北朝鮮問題を殊更に大きく伝え、米国との協調を模索することで、その流れを変えたいと考えています。
さらに北朝鮮の危機感を煽っておけば、国内の引き締めにもなります。北朝鮮は何をしでかすか分からない、そう思わせて、首相更迭を事実上、矮小化したい。今の朴政権がそうした誘惑に駆られたとしても、決しておかしくはありません。今の韓国の事情として、こうした報道が有利になるのは間違いなく、北朝鮮が強く反発したり、未だに玄氏の映像が流れていることと合わせて考えると、韓国のスタンドプレーとも考えられるのです。北朝鮮としては、人民武力部長の粛清を、それこそ粛々と伝えることで国内の混乱を最小にしたかった。それが韓国側の戦略でそうもできなくなり、混乱している様子も垣間見えるのかもしれません。北朝鮮でも、反乱の目が大きくなってきたのかもしれない。韓国では、仮に北朝鮮が崩壊したとき、今の経済、財政状況では支えきれない。中国が北朝鮮支援にのりだせば、朝鮮半島の統一でさえ達成できなくなる恐れもある。韓国が、米国の目を向けさせたい事情には、そんな裏側もあるのでしょう。恐怖政治と云われますが、恐怖を利用したいのはどの国も一緒、そう考えると、何が正しいか、何に怯えなければいけないのか、自ずと見えてくるのかもしれませんね。

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2015年05月16日

日銀、黒田総裁の評価

黒田日銀総裁が、読売国際経済懇話会(YIES)にて講演を行いました。消費者物価2%への自信を示すとともに、量的・質的金融政策の効果を強調しました。黒田氏は雑誌で、個人的な経済人脈を明かしていますが、米元財務長官のサマーズ氏や、経済学者のスティグリッツ氏など、錚々たるメンバーです。最近、市場では黒田氏の無能ぶり、問題を指摘するような発言が目立ってきたので、先手をうって海外の権威を借りて、自らの正当性を主張し始めたのでしょう。

そんな日銀から、発言を否定するような指標が発表されています。4月企業物価指数が消費税増税の影響を除いたベースで2.1%下落と、デフレに逆戻りした印象すら受けます。前月比では、8月から一貫して右肩下がりでしたが、3月に0.3%上昇し、4月も0.1%上昇と、辛うじてプラスを維持しましたが、下げ止まったというより、年度末、年度初めの特殊要因で少し切り返した、とみています。原油が少し価格をもどしてきていますが、この影響が今後どの程度でてくるか。それによっては、デフレに逆戻りすることも意識しておく必要がでてくるのでしょう。
製品別では、石油・石炭製品の下落が大きいのはその通りでも、鉄鋼や製材など、素材関連の落ちこみが大きくなり、また電子機器なども落ちています。海外も含めた消費不況が原因なら、しばらくは過剰感からも生産が落ち込む恐れも出てきます。4月以降、軽自動車の落ちこみも目立ちますし、輸送機器までデフレ傾向を示し始めたなら、要警戒というところです。

内閣府発表の4月の消費者態度指数を「持ち直し」で、内閣府は判断を据え置きました。しかし前月比0.2pt低下し、41.5となるなど、下落傾向も示してきました。しかも5ヶ月ぶりに低下したということより、下がった項目が暮らし向き、収入の増え方、耐久消費財の買い時判断、というのが問題です。賃上げを企業に要請しつつ、収入の増え方に相変わらず実感がない。しかも暮らし向きが苦しくなっているのと合わせ、消費意欲の減退も示しています。これはWindows10の発売を控え、電子機器などに購買意欲が向かわないことと同時に、自動車増税の影響が出ているとすれば、やはり消費の減退を意識させる数字ということになります。
1年後の物価見通しについて、上昇すると答えた人が増えて89.2%となり、その中でも2〜5%が41.7%と、最大です。しかしこれはアナウンス効果であり、日銀や政府が2%に誘導する、といっているのでそうなる、と考えている人が多い、というに過ぎません。実際、インフレ予想が増えても、暮らし向きが悪化しているのですから、より家計は防衛的にならざるを得ず、それが消費意欲を減退させる一因になっているかもしれないのです。日銀の金融政策の結果、誰もがインフレを意識するようになりましたが、それで消費が喚起される、という説明だったはず。それが覆されつつあるのです。黒田氏が始めたイイワケ、著名人の名をだしてきたところをみると、そろそろ自身の政策の失敗についても、意識し始めているのでしょう。消費税増税の影響を「想定外」と述べていますが、量的・質的金融緩和の効果についても「想定外」だったとしたら、日本は舵取り役を失って漂流することになるのかもしれません。一部の経済の専門家は、増税の影響について正しく推計している人もいました。今となっては、そうした分析もできない人がこの一年、金融政策を担ってきたという事実だけが残りました。4月の経済指標がこれから出てきますが、まさに黒田氏にとって、政策の評価がでてくるタイミングという意味では、自身の評価が「持ち直し」で据え置けるか、にかかってくることになるのでしょうね。

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2015年05月15日

安倍政権のスネ夫外交

北方領土のビザなし交流が、露国側の事情で相次いで中止となっています。勿論、対独戦勝70周年記念式典の安倍首相の欠席も理由としてありますが、さらに安保法制の議論で、あれだけ親米、媚米を宣言すれば、露国が面白かろうはずもありません。冷戦は終結したとはいえ、ふたたび『強いソビエト』を目指すプーチン大統領が、安倍政権と付き合う気を失った、というのが本音でしょう。安部外交がまた一つ、行き詰ったことの証左でもあります。
また産経系のメディアで、北朝鮮とある大物議員が接近している、安倍政権の対北外交を蔑ろにし、拉致被害者の解放を遅らせる、といった論調の記事をみかけました。では安倍外交に任せていたら、拉致問題が解決するのか? 答えは否でしょう。議員が誰か、示されてはいませんが、少なくとも批判すべきはその手法、目的が単なるスタンドプレーで売名なのか? です。外交は、複数ルートをもっておく方が選択肢も広がり、戦術戦略も立てやすいのです。安倍外交以外は認めない、という意味不明の論説を立てて、批判するような話でもありません。

そもそも安倍外交が成功していて、世界から日本が支持されているのなら、なぜ来日する海外要人がほとんどいないのか? 直近ではメルケル独首相しかおらず、しかも日本にクギを刺しにきた印象の強い会談でした。安倍首相が訪れた国々の元首など、答礼としても日本を訪れても良さそうですが、そうでないのは個人的信頼感など、築けていない証拠でもあります。
そんな中、台湾が日本産の食品について産地により輸入制限したことに、安倍官邸が抗議しています。しかし消費者の要求に応えることで信頼を克ち得てきた日本が、相手を高圧的態度によって状況を覆そうとする。その様はまさに米国のようです。日本を米国型の国にする、こんなところにも安倍政権のめざす方向性、他国から嫌われる国になろうとする形が見えてきます。

日本が嫌われる国になる、とするとすぐに中韓を引き合いにだす向きもありますが、以前から指摘しているように中韓は抗日、反日を国の基にしてきたのであって、国が大きく転換するのでない限り、この態度は変わらないのであって引き合いにすべきものでもありません。それ以外のアジア、中東、アフリカ、オセアニア、南米などの国々とどう付き合っていくか? 今回のように米国流でいけば、ますます安倍政権への懐疑的な目が向けられることでしょう。
中韓が国を転換しない限り、反日の態度を改めないのと異なり、日本は国を転換して反中、反韓になろうとしている。しかもそればかりか、他の国々にも「強さ」と誤解した形で「傲慢さ」を押し付けようとする国になろうとしている。米国ほどの実力もないのに、威張り散らす国、それが安倍外交における日本です。以前も指摘していますが、まさにスネ夫外交と言えるのでしょう。ジャイアンが「お前のものはオレのもの」と、他国から奪っていくのを傍らで笑ってみている。むしろジャイアンに祝福の言葉を投げかける。そんな安倍外交では、今後も外交関係に行き詰るのは確実であり、だからこそ自衛隊を軍にして海外で殴る拳にしたい、というのが今の安倍政権の方向性、ということがうかがえるのでしょうね。

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2015年05月14日

安保法制の閣議決定

安保法制が閣議決定され、安倍首相が記者会見を行いました。まず「不戦の誓い」としながら、日本近海で米軍が攻撃されていたら、応戦するとします。他に適当な手段がない、必要最小限の範囲を超えてはならない、などと言いますが、現場を知らない人間の物言いです。米軍が攻撃されていようと、それは米国とどこかの国の戦争であれば、日本が参戦する必要はありません。もし本当にそれをするのなら、日米同盟を相互扶助に格上げするよう、新たに同盟を組みなおすのがスジです。ガイドラインのような軍事協力の運用方法の見直しでお茶を濁し、本論である外交関係の再構築から逃げた上で、『思いやり』で米軍に助力する、と述べています。
日本近海で米軍が攻撃されるのは、私たち自身の危機、と述べていますが、論理の飛躍です。例えば東南アジアでもイスラム過激派がいて、そうした組織が船を調達、米軍に攻撃する可能性があります。その場合、狙いは米軍であって日本ではありません。それにもし北朝鮮や中国、露国が米軍に攻撃するようなときは、間違いなく日本にある米軍基地にも攻撃を仕掛けてきますから、そうしたケースを除外する必要もありません。日本近海において米軍のみ攻撃するようなケースは極めてレアであって、むしろそうした場合は日本が参戦する意義も薄くなるのです。

「戦争法案といった無責任なレッテル貼り」と述べますが、「平和安全法案という無責任なレッテルを貼っている」のは、安倍氏の方です。安保条約改定も、PKO協力法制定時も「戦争にまきこまれる」と批判されたが、歴史的にみて否定される、と述べますが、偶々運がよかっただけです。自衛隊が他国で活動する場合、いつでも戦争に巻きこまれる恐れがあるのであって、それが安倍氏のいう「万が一への備え」でもあります。偶々運よくこれまで巻き込まれなかった、万が一攻撃されていてら、歴史的にみて肯定されるのですし、今後もそれは同様です。
紛争国から逃れてくる人を米艦艇が運んでいて攻撃されても、日本は守れないとしますが、そうしたケースは米軍が否定しています。PKO活動中にNGOの救援要請に応えられる、としますが、危険地域であれば退避勧告が出ているはずで、そんなところで活動している人まで守る、となると、それこそ自衛隊が危険に晒されます。PKO活動と、救出活動は装備や人員配置もまったく異なり、そう簡単に移行できるものでもありません。これも現場を知らないゆえの論理遊びです。

自衛隊は発足以来1800人が殉職しており、リスクは元々ある、という言い方をしていますが、どんな職場だろうとリスクがあり、安全対策があります。しかし上記のように、現場を知らないものがしゃしゃり出てきて、できるだろう! というのが最もリスクの高い行動となるのです。法整備をすれば、日本人のリスクが減る、ともしていますが、世界的にみても米国民のテロ被害のリスクは高く、法整備があったからといって何らリスクには関係しません。むしろ、自衛隊が海外で活動するようになると、日本への要求が強まり、誘拐などのリスクが高まるのであって、法整備により自衛隊が海外で活動できるようになることこそ、リスクには大きく影響するのです。
よく「平和、安全」と訴えるものは、逆にリスクが高いと言われます。まさに「平和安全法制」などの言葉はそれに当てはまるのでしょう。米国の戦争に巻きこまれることは「絶対にない」と述べますが、今回とて憲法9条があっても、自衛隊が海外で軍として活動できることを閣議決定してしまうのですから、「絶対」など有りえません。むしろそう発言するような人間に「不戦の誓い」どころか、「不信の目」しか向けられないのであって、ケース想定もできていないその甘さからも、「不正の匂い」しか感じられない、と言えるのでしょうね。

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2015年05月13日

景気ウォッチャー調査と国際収支

米フィラデルフィアで大きな列車事故がありました。車では最近ドライブレコーダーの設置がすすみ、タクシーなどの営業車にはほとんど必須の装備となっています。列車にも同様の装備をつけるような、そんな対策が必要ではないか? それこそ長距離輸送のトラックなど、居眠り防止用のドライバー監視のシステムまであります。列車への設置が遅れているなら、まずこうした装備を義務化するような、そんな法整備も必要なのでしょう。事故解明に役立つばかりか、転覆事故の防止につながるのですから、鉄道ばかりでなく飛行機、船舶に至るまで、営業用の輸送機には広く普及した方がよいのでしょう。

今日の日経平均は大幅高しましたが、最近主流のプレ‐イベントドリブンの動きとみられます。今日は欧米で経済指標の発表が相次ぐので、それを先どりして動く。かつてはイベント前には動けない、として商いも低調になることが多かったのですが、それでは稼げなくなった。リスクをとってでも、イベント前にポジションを傾けておく。それが今日の動きにも表れています。日経平均先物だけは上げますが、東証一部の騰落率は均衡。よくこうした上昇を「日本経済への期待」や「業績への期待」と述べる人もいますが、理由が不明なのでそう語っているに過ぎません。何の材料もないのに、思い出したように期待する、ということが本当に起こり得るか? 答えはNOです。今年は運用実績が上がらないファンドマネージャーにより、かなりの頻度でプレ‐イベ型の動きが今後も頻出することにもなるのでしょう。
イベントの一つ、欧州1-3月期GDP速報値が発表され、前期比0.4%増、前年比1.0%増となりました。1、2月は指標も好調で、良好な結果が期待されていただけに、若干の拍子抜けです。原因は快走をつづけていた独国の失速。むしろECBの金融緩和の恩恵をもっとも受ける、と見られていただけに意外感もありますが、逆にそれを期待した動きが事前に起こりすぎていたことによる反動なのかもしれません。そうだとすると、これもプレ‐イベの動きとなります。

日本では4月景気ウォッチャー調査が発表されました。現状判断DIは53.6と、1.4pt上昇していますが、中身をみると小売と住宅関連が伸びているだけで、雇用関連も1.3pt減となるなど、あまりよくありません。判断理由も「天候がよい」「賃上げ」「インバウンド消費」など、言わば景気の実相というより期待値で盛り上がっている印象です。先行き判断DIは54.2と、0.8pt上昇に留まります。関電などの電気料金の引き上げなど、賃上げを相殺する動きもあり、この期待通りに推移しないと、効果としては剥落することになります。今、すでに夏のような陽気ですが、夏物消費を先食いすると、息切れも早くなるので注意も必要なのでしょう。
2014年度の国際収支状況が発表され、経常収支が7.8兆円となるなど、黒字幅を拡大させました。金融収支も13.7兆円の黒転をしていますが、黒田バズーカ第二弾から増えた株式や金融派生商品などが伸びており、約半年がフル寄与したとみると、今年辺りはその転換が訪れるとみられます。プレ‐イベなど、日本で不穏な動きが引き起こされるのも、期待を先どりした動きを、そろそろ戦略的に見直す時期にきていることも、影響しているのでしょう。買い上がって期待を上乗せした後、仮に期待に副わずに下がるようだと、公的マネーが買い支えてくれる。安心してプレ‐イベの動きで、損を被らず運用できるのですから、そうしているのです。もしかしたら、日本経済にもそろそろドライブレコーダーのような事故防止、事故の原因究明をするようなシステムが、必要となってきたのかもしれません。市場が上がったと喜ぶのではなく、裏でおこる動きをよく見極めておかなければいけないのでしょうね。

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2015年05月12日

日銀の剰余金積み立て

昨日とり上げた安保法制の存立危機事態、ちょっと見方を変えると、現政権がだらしない、頼りにならない、となると自衛隊がクーデターを起こす想定もできることに、気づきました。勿論、法整備として禁止するのでしょうが、タイのクーデターを見るまでもなく、政治に失望したとき、軍がとって代わるケースは世界中でしばしばみられます。国の存立を脅かす、国民の権利を根底から覆す行為は、実は政治がもたらすことの方が多いのですから、そのとき自衛隊がそれを阻止する目的でクーデターを起こす。それがこの前提ならできてしまうのです。
東京の横田基地に、米軍のオスプレイが配備されることが発表されました。ネパールでもオスプレイや大型ヘリは着陸できず、物資輸送に役立たない、とされますが、日本でも着陸できる場所は少ない。もし飛行途中で不時着する事態となれば、多大な被害をだすことでしょう。自衛隊もオスプレイ購入を決めていますが、どこに配備しても厄介ものであるばかりか、メンテナンスに特殊技能がいるなど、維持管理にも費用がかかる。それでいて活用できる場面も少ない。これが議会演説というご褒美の代償の一つなら、まだまだこうした記事が出てくるのかもしれません。

日銀が当期剰余金の25%相当を、法定準備金として積み立てる方向で、財務相に認可を申請しました。総資産が333兆円と急拡大しており、価格変動リスクに備えるとしますが、実は世界的に不穏な動きが蔓延しています。米独など、金利が急上昇しており、日本にも小幅ですがその影響が及んでいます。これは緩和期待で膨らましすぎた国債投資を、ファンドなどが解消する動きと説明されますが、実は債券運用の旨みが低下し、債券運用ファンドの成績が軒並み悪化、資金流出がつづいていることも影響しています。株式ではセルインメイと言われますが、今年に限っては債券市場が強烈な調整局面にさらされている、というのが実態です。
しかも厳しいのが、金利上昇局面になると不動産市場が弱含みます。つまり日銀が購入している国債、J-REITが同時に資産価値が目減りする、となるのです。正常な市場環境なら債先売りが出ると、株先買いになるものですが、今は異常な市場環境であり、債先売り、株先売りとなるケースが多い。すなわち日銀がトリプル安で資産を目減りさせるケースも、今後は増えることが想定されるのです。そうした状況に、先手を打って法定準備金の積み立てを急ぐのでしょう。

元々、日銀は自己資本比率を8-12%を目安としていることから、今後も剰余金を法定準備金に回さざるを得ない傾向はつづくのでしょう。これは財政に返納する金額が減る、ということでもあり、財政運営上も厳しさを増すことになります。日銀、財務省が仕掛けてきたことの、マイナス面が拡大するばかりか、逆回転を起こすタイミングがより近づいてきたといえるのでしょう。
これで追加緩和などを打ち出せば、泥沼に陥ることが必定です。オスプレイが日本国内で着陸する場所が少ないように、日銀も着地点を見出すことは困難なのです。オスプレイは鳥のミサゴを意味しますが、ミサゴは脚をつきだすようにして急降下し、水中にいる魚を捕まえることができます。足がでる、は赤字になることですが、日銀が赤字となるとき、捕まえる魚は市場を席巻している『クジラ』なのか、それとも鰯なのか。鰯だとすれば「鰯の頭も信心から」というように、つまらない金融政策に手を染めて、ありがたがってきたことの報いを、いずれ受けるときのことをさしているのかもしれません。今は市場のクーデターを恐れている、というのが日銀の本音なのかもしれませんね。

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2015年05月11日

安保法制の自公合意

強すぎず、弱すぎず、市場にフレンドリーだった米5月雇用統計をうけて米株が上昇、日本も連れ高しています。しかし弱い経済指標で株が上げると、イエレン議長は「割高」と判断し、利上げを模索します。つまり利上げが遠のいた、で株高は市場が自ら首を絞めているようなものなのです。金融政策担当者の道を誤らせているのは、実は市場関係者なのかもしれません。米株はこの綱引きを、まだまだ続けることになるのでしょう。

安倍首相が米議会で今夏にも成立、と約束した安保法制に関して、与党内協議が決着しました。しかし自民党内からも「高めのボールを投げて、妥協したという形を作り易くした」との声が聞かれるなど、できレースの感が否めません。まず集団的自衛権を行使するために『存立危機事態』なるものを想定しますが、日本と密接な関係のある国への武力行使や、ホルムズ海峡の機雷掃海などとする事態は、言ってみれば時の政権によってどうとでも判断できる代物です。歯止めは政権の判断、という極めて曖昧なまま、運用が可能となっています。
「わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」としますが、これがandで結ばれているなら、イスラム国に誘拐されたケースでも自衛隊は出動できません。一方で、米国が攻撃されても「国民の権利」とは何の関係もないので、やはり自衛隊は出動できません。しかし恐らく自民はこれをorで結び、かつ後段は軽視していることが自明です。そもそも「国民の権利」とは? という段から曖昧です。領土を侵されたら間違いはありませんが、企業が海外で活動しているところをテロリストに襲われたら? 自衛隊が出ていける状況とはなりません。つまり後段は、自国内においてその利用方法が制限される一方、前段は海外であっても、政権が判断すれば自衛隊が出動できる。極めて前段が優位な運用方法となってしまうのです。

英国のトマス・ホッブスが書いた『リヴァイアサン』では「人間は平等であるがゆえ、複数が共通のものを欲し、全員がそれを享受できないとき、他人が敵となる」と述べています。諦める、という判断を一方が下せば戦争はおきませんが、そうでない限り、相手を屈服させるか、滅ぼさない限り、欲しいものが手に入らない。「人々を平和へと向かわせる情念は、死への恐怖」とし、それを回避するために、人々は全人格を代表する統治者をおき、多くの人々の人格が一つに統一されたとき、それを国家(=リヴァイアサン)とよぶ、というのが本の要旨です。
しかしこの国家を定義するところに、大きな瑕疵があるのが現在です。つまり統治者が、全人格を代表していない。これは各種世論調査でも、各政策については反対意見が多いこととともに、米議会演説でもそれが日本を代表する意見、とは思えないようなことを、平気で国家の代表として語ります。つまり今、ホッブスが定義する国家の体を為していないのが、日本なのです。しかも日本が戦争に突入するシステム、プロセスは平等から発露しているものではない。むしろ「国民の権利」は常にぶつかるものであり、人々が平等である以上、その戦争は「不正でない」ともリヴァイアサンでは語られているぐらいです。つまりいつ、どんな場所でも戦争できてしまう。それは国民の権利の衝突として「不正でない」のですから。実は「わが国の存立」をもっとも脅かすのが、暗愚な指導者の存在なのですが、そのことに気づけるほど人格に優れていない人がトップにつく、国のシステムがもっとも存立事態の危機とも言えるのかもしれませんね。

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2015年05月10日

中国の利下げと日中の差

中国が0.25%の追加利下げを発表しました。どうやら政策金利と預金準備率を、毎月交互に引き下げるといった形であり、景気に相当の不安がある証左なのでしょう。これで貸出金利が5.1%、預金金利が2.25%となりますが、預金金利の裁量幅を1.5倍まで認めるなど、自由化も強化します。この影響は様々な形で現れそうです。この預金金利では、いくら裁量幅をもたせてもインフレ率を少し上回る程度なので、預金はまず増えず、銀行の貸し出し余力も増えません。
貸出金利も引き下がりましたが、すでに投資主導型の経済成長に翳りも見える中、貸し出しを増やしても不良債権が増加しそうです。しかも中国は個人投資家による株、不動産、債券等への投資によって支えられた社会。預金から投資へ、の動きが加速する一方、金融機関による低利の貸付が拡大すれば、社債等への投資の旨みは減ります。不動産市場はすでに崩壊しかかり、株価はすでにバブル化していますが、これらへの資金流入がますますすすむのかもしれません。それはよりバブルを深化させることでもあり、崩壊時の負の影響を強くすることでしょう。今はまだ金融政策を景気対策に用いていますが、中国がゼロ金利にまで陥るとき、また量的緩和にいたるようなときは、その数ヵ月後に要注意となるのかもしれません。

インドの州首相が、訪日をとりやめてモディ首相とともに訪中しています。理由は、恐らくAIIBです。決断が素早く、規模の大きい投資が引き出せますし、それは融資条件の甘さとしても意識されます。いくらADBが条件を緩和する、規模を増やす、としてもこれまでの経緯から使いにくさを意識され、敬遠されるのと逆の動きとして、日本より中国が強く意識されるのです。
しかも日本はこれから安保法制という難題もあって、景気対策や新興国へ目をむける機会が奪われる。今、訪日しても何かを期待することがない。だから訪日が避けられます。さらに安倍外交への不審もこの時期、日本を敬遠する一因なのでしょう。米議会であれだけ媚米宣言をしたのですから、親米国ならまだしも対米感情の悪い国にとって、気持ちいいはずもありません。中東や南アジアで米国の評判があまり良くない点も、インドの対日戦略見直しにつながっています。

さらに安倍ノミクスの失敗も意識されるところです。中国は言ってもまだ金利の調整と云った正常な金融政策により、経済をコントロールする段階です。一方の日本は、質的量的緩和などの異常事態における政策をとっています。それで昨年度はマイナス成長に陥ったた上、今年度から増大する防衛費、米献上予算などが積み重なり、財政は火の車になってきます。いくら中国の信用力が低いからAIIBの信用も低い、といってみたところで、格付け機関は日本の格下げについて、より前向きであって、いつ中国と逆転されてもおかしくありません。
投資主導型の中国が、景気後退局面を迎えれば一気に崩れる可能性は高い。しかし日本のように、ジリ貧に陥っている経済もまた、魅力には乏しいのです。中国が好調のうち、甘い蜜を吸っておこう、と考えるのと同時に、日本は一先ず見送っておこう、という判断が現状の世界の趨勢、ということなのです。中国の貸出金利の引き下げは、もしかしたらAIIBにむけた準備、という側面ももつのかもしれません。海外の貸出金利と、国内の貸出金利の差を埋める意味なら、着々とAIIBの設立にむけた体制の整備がすすんでいる、とも言えるのでしょう。中国と日本、それぞれの立場についてよく考えておかないと、世界との付き合い方すら間違えることになってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アジア

2015年05月09日

トヨタとシャープ

露国の対独戦勝70年式典、主要国の参加は中国だけ、ということで習主席を極めて厚遇していますが、プーチン大統領が演説で「ナチズムと日本の軍国主義と戦った国々…」とまで述べました。明らかに今回参加しなかった安倍首相への当てつけ、対日戦略の見直しを示唆したのでしょう。これはもう、安倍首相時代に北方領土の解決が遠のいた、不可能となったことを意味し、安倍外交がまた一つ行き詰ったことになります。米国に依存するばかりで、独自の戦略がとれない安倍外交の致命的問題、その延長上に対露外交も見直しが迫られているのでしょう。

企業の話題がいくつか出てきています。トヨタの決算、15年3月期の営業利益が前期比6%増の約2.75兆円、16年3月期も2.8兆円と絶好調です。しかし世界のSUVブームを牽引してきたのは、原油安と節約疲れで、その2つの効果が今年は剥落しつつあります。しかも円高も想定レートは115円と低めですが、16%も円安がすすんだ割りに、前期の営業利益の伸びは低い。売上高営業利益率が10%も伸びているのはその効果ですが、逆に北米以外の足の引っ張りが顕著です。
研究開発、設備投資を増やすのも、その危機感でしょう。さらに問題は、稼いだ金を株価対策、人件費や中小下請けに回せ、という政府の圧力をかわしきれない点にあるのでしょう。日本では主力のハイブリッドが、海外では売れない。こうしたギャップを何とかしない限り、官製コスト増圧力と相まって、将来は押し潰される懸念があります。純利益が日本企業として初の2兆円越えと、日本を代表する企業に成長しましたが、ここからの伸び代を考えると、新興国対策により積極的にならない限り、成熟企業の座にとどまることにもなってしまうのでしょう。

シャープが1218億円ある資本を1億円に減資し、欠損金を穴埋めした上で出直す案が、判明しました。すでに取引行との話し合いもついている、とされ、株主総会を経て決議される見こみです。中小企業となれば、優遇税制がうけられるメリットもありますが、今後は経団連から外れるなど、他企業との付き合い方も変わってくるでしょう。それは下請け事業者となることで、取引関係が変わることも同様であり、過去を捨てて未来をとった、という形になるのでしょう。
しかし減資の影響は、間違いなく株価にも影響します。要するに倒産した場合、取り分が減るのですから、これで再建し、堅調な経営にもどって倒産リスクが減ったとしても、保証が減ったことに違いありません。取引行がこの計画を容認するのは、恐らく倒産させないまま再建するには…と案を練ったのでしょう。そしてこの『倒産させない』には、官邸の意向が働いている、とされます。つまり安倍ノミクスを頓挫させないよう、倒産などに敏感になっている官邸が、『倒産させない』シャープ再建策を求めた結果、こうした異例の事態になった、ということです。

一方で、円安誘導という政策支援をうけて絶好調のトヨタ。一方で、液晶テレビ買い替え支援としてのエコポイント制度で一時期絶好調だったのに、その後のテレビ販売の不振で苦境に陥ったシャープ。対照的な姿にみえます。しかしトヨタとて、円安が終焉したら、先にも示したように負担増が重しとなって跳ね返ります。政策支援に浮かれ、次を見据えておかないと、どの企業も山の後の谷の深さから抜け出せなくなります。トヨタとシャープ、この明暗の裏に政治があるのであれば、まず経済政策から議論をはじめないと、この問題の根深さを浮き彫りにすることはできないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:22|PermalinkComments(6)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 企業

2015年05月08日

英国総選挙について

英国総選挙、与党・保守党が単独過半数をこえる勢いです。労働党が、スコットランド独立党とくんで…とのネガティブキャンペーンにより圧勝した、とも伝えられますが、もう一つ重要なのは、ウィリアム王子とキャサリン妃の間に、シャーロット・エリザベス・ダイアナが誕生したことです。お祝いムードのとき、何となく現状変更をを躊躇うのは、どの国の国民も同じ。それが与党への追い風となり、不人気とされながら保守党躍進のキッカケになったのでしょう。
日本では猿の名前にシャーロットとつけ、批判が集まっていますが、的外れです。日本と異なり、名前の選択肢が少ない海外、特に厳格なカトリックは聖書に登場する人物名しか名前にできません。米国はプロテスタントの国ですから、時折変わった名前も見かけますが、英国の正教会の名づけに関する考え方は、カトリックに近い。貴人と動物を同じ名前にするのはけしからん! などとしていたら、それこそ選択肢がなくなります。ちなみに、シャーロットはゲルマン系・カールから変形した名前です。カールの原義は『男、農夫』であり、奴隷とは異なる一般市民という意味になります。カールは英語ではチャールズとなり、伊語ではカルロになり、このカルロから派生した女性名でカロリーナ、シャルロッテ、それが英語名シャーロットとなります。日本人にはまったく別々の名前のようにみえますが、元は同じなのです。このように、欧州の名前はほとんど発音の差、訛りの違い程度でしかなく、日本名のように無限の組み合わせをつくれるわけではありません。だから三つ重ねたり、愛称を正式に通名としていたり、といった変化をつける。そうしたことも知らず、日本の常識を当てはめてみても、海外からは笑われるだけです。

英選挙で驚くべきは、スコットランド独立党の躍進です。労働党の地盤とみなされていたスコットランドで、圧倒的な強さを見せました。先にスコットランドの国民投票では、英国からの独立を見送りましたが、これは火種として燻る問題として残ります。英国のEU離脱、英国の分裂、と2つの問題を抱え、キャメロン首相は先のネガティブキャンペーンの後始末とともに、難しい政権運営を迫られることでしょう。これはここまで成功してきた経済運営にも影を落とします。
英国では、財政健全化をすすめるため増税、富裕層への減税という政策をすすめた結果、ロンドンなど大都市圏の不動産バブルを生み、それが経済成長を促し、リーマンショックを乗り切ってきた、という経緯があります。ロンドンなどでは一般市民が不動産に手を出せなくなり、労働者もルームシェアなどで、高い賃料を賄うほど。健全な状況からは大きく乖離しています。

そしてこうした富裕層優遇、労働層へ負担、という経済政策をとると、必ずといっていいほど賃金が低い水準に抑えられまる。理由は不明ですが、世界で同じことが起こっているので、必然といっても差し支えない。それが保守党への批判となって現れる、というのが今回の選挙の事前の読みでした。ごく一握りの富裕層は票になりにくく、圧倒的に労働者の数が多いからです。
しかし労働党は今回、対案を示せなかった。これも世界で同時に起こっていることで、この新自由主義的な手法に一旦手をだすと、巻き戻すときの負の影響もあって、簡単に変えることも難しくなり、対案をだしにくいといった問題もあるのです。この手法を終焉した途端、国の経済が破綻するかもしれない。そんな危機感もまた、与党への追い風となって機能したのでしょう。

現状はトリクルダウン理論を否定し、与党のとる政策に不満も高まるのに、選挙になると与党が強い。それはこうしたことからも起きていることであり、日本も同様といえます。北欧神話に『リーグの歌』というものがあります。リーグは旅をし、3軒の家に泊まるとそれぞれの家に子が生まれます。それぞれ奴婢、自作農、貴族に別れますが、その二番目の自作農の名が、カールです。英国では今、移民も問題視されていますが、中間層であるカールの名をもつ王室の女の子が誕生した。三つの階層が大きく分離されている今の英国を、一つにまとめられるか? 保守党もここからが正念場、ということでもあるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:58|PermalinkComments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 欧州 | 政治

2015年05月07日

中国の過剰生産性について

箱根の噴火警戒レベル引き上げで「風評被害」と語ることに、違和感があります。実際、レベルは引き上げられているので、これは実害です。箱根に観光にいくか、どうかを判断する消費者目線に立てば、何ら根拠のない風説にしたがって判断しているわけではない。むしろ、活火山の周辺で商業活動を行うような場合、火山活動による浮沈を保険として担保するような、そうした仕組みが必要なのかもしれません。そうした場所で活動する人がいなければ、観光地として成り立たないのですから、これは自然災害と同じ、国による保証を考えてもいいのかもしれません。

米国でイエレンFRB議長が「株は割高」発言を行っています。バブルではない、としていますが、金融担当者がバブルを示唆するはずもないので、これはすでにFRBはバブルと認識していることを示すのでしょう。利上げを急ぐのも、早めにバブルを退治し、傷口を浅くすることを企図しているなら、多少経済が悪化しても利上げする。そんな思惑すら想起させることになります。
そんな中、一部メディアに中国の自動車生産の過剰性がとり上げられました。中国ではシルクロード(一帯一路)構想に基づき、国内の過剰生産性を輸出によって吐き出す策が検討されていますが、気になる記事がいくつかあります。中国製の電子部品、電子機器などで初期ロットは高性能、低価格を謳い、それがメディアにとり上げられ、性能確認などを通してアピールされた後、仕様変更を伴わないバージョンアップとして性能が下がり、結果として不具合とは言わないまでも、満足のいく性能が担保されない、といった事例がいくつも報告されているのです。

安倍首相もアピールしていた米国高速鉄道も、中国側が安値を武器に競争をしかけています。しかし人件費が高騰し、資材調達の面でも苦しい今の中国企業に、価格競争をしかけられる体力はないはずです。先の事例のように、ver. X.xxxの、最後のxを一つ上げるだけで、こっそり割安にできるならそうしてしまう。中国企業のそんな体質が、今問題視されつつあります。
先にApple Watchでも中国製の部品でトラブルにみまわれたように、厳格な製品管理で知られるAppleでさえ、中国製品には手を焼きます。これは中国に進出しようと考える企業も、二の足を踏むことでしょう。確かに過剰生産性で、安価に部品調達はできても、実は質の低い製品だった。これは管理費用の増加を意味し、結果として旨みの少ない投資ということになります。また中国の製造業では、本業とは別に投資も業態として組み込まれている。本業が好調でも、ある日突然クラッシュする危険性があって、サプライヤーチェーンさえ維持できない可能性もあります。イエレン議長が指摘した「株は割高」は、中国上海市場こそ当てはまるのが現状です。

中国は、米国型競争経済がもっとも機能しにくい社会だった、ということです。省や市が、中央に成功事例を報告するため、競争する。その結果、過剰生産性が生まれ、それを解消する方向に動けば、経済の下押し圧力が一気に強まってしまう。産業による競争ではなく、行政による競争意識が、景気対策や金融政策の効果を著しく減殺しつつある、となっているのです。
ADBの機能強化も謳われています。AIIBに対抗するため、というと聞こえはいいですが、明らかに融資基準が緩くなり、返済能力の低い事業への投資が増えることが必定です。しかも中国型の高性能を謳いつつ、実は低性能で安価な公共事業と如何に対抗していくか? その戦略もなく、財務省利権を維持する目的でADBを拡大すれば、後に不良債権化するのもまた確実な状況です。中国の過剰生産性、という問題は実に深刻ですが、これが『中華が上』という意味での『華上』問題と捉えるなら、その付き合い方を間違えると、全世界を危機に導くほど深刻な問題であり、いつ爆発するか分からない事態です。これには保険をかけることもできないため、より難しい対応を迫られることになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:09|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アジア

2015年05月06日

雑感。日韓のナショナリズム

連休中、シカゴ日経平均先物が大変です。4日には19800円台近くまで上昇しましたが、5日には19300円台へと、一気に400円の急降下です。その間、米ダウは142$の下落であって、日経平均だけが右往左往しています。為替が大きく動いているわけでもなく、米経済への不安だけで、日経平均がこれほど動いてしまう。マネーゲームの仕儀が今後も続いてしまうのかもしれません。
日本では箱根の大涌谷で、警戒レベルが上がっています。水蒸気爆発? ともされますが、富士山も同様、箱根で大きな変動があると、東海道の大動脈が寸断される恐れのある点が重要です。これは東名高速道、東海道線ばかりでなく、空路も羽田、成田に影響があるかもしれません。首都圏の物流網、備えが改めて試されることになるかもしれず、注意が必要です。

安倍首相が米上下両院合同会議で行った演説を、『名演説』などと持ち上げる向きもありますが、これはそうした類のものではありません。あの演説にタイトルをつけるとすれば『米国と私』。安倍氏が米国とどう関わってきたか、どう関わっていくか、を一貫して述べています。
CMでも「I have a dream」だったり、「Fight for Liberty」などが流れていますが、名演説とは多くの人が共感したり、耳に残るフレーズがあってそれをくり返しつかったり、などで後世に評価されるものです。安倍氏の演説には、そのどちらもありません。発音がたどたどしいという以上に、心を打つような言葉もなく、閉塞した気分を一丸にさせるような中身もありません。もし安倍氏が演説で、ボルティモア暴動にふれ、人種間の対立やその融和に向けて何らかのメッセージを発したら、もしかしたら名演説になったのかもしれませんが、日米協力やTPPに関して話をしても、問題意識をもつ人が少ない以上は、その演説もスルーされるのが必然なのです。

一方で、韓国紙がこの演説をとりあげている記事の場合、注意が必要です。それはすでにダメ大統領と化した朴氏を攻撃するのに、うってつけの材料として利用されているだけ、だからです。それをとり上げる日本のメディアも、韓国が騒いでいる、と書き立てれば安倍政権の側面支援となる。つまり嫌韓も安倍氏の支持層にいることを見越して、それを利用しているのです。日韓メディアがそれぞれ、ナショナリズムを煽っているだけでもあるのです。
世界遺産登録に関しても同様です。韓国外相まで日本を非難し「人類の普遍的な価値をもつ遺産を保護」とする精神に反するとしますが、これがそれに合致するかどうかを審査してもらうための申請であって、韓国がそれを判断する立場にありません。しかし日本を非難することで、嫌日のナショナリズムを煽り、朴政権の失点を盛り返そうとする意図がミエミエです。

むしろ安倍氏は米議会演説で、ナショナリズムに頼って国家運営することの愚を訴えた方が、多くの賛同を得られたかもしれません。しかし安倍政権自身、その禁断の手法に手を染めている以上、空疎な言葉となったことでしょう。世界遺産における「人類の普遍的な価値」とは、人種も民族も、宗教も国家もなく、誰もが大切だと思えるようなことであって、それを後世に残そうとする試みが、世界遺産です。ナショナリズムに歪んだ人たちでは、すでに「人類の普遍的な…」の部分から分からない価値観であることが、こうした慮国の動きからも読み解けるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 22:55|PermalinkComments(12)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アジア

2015年05月01日

総務省発表の経済統計について

訪米中の安倍首相が、日本の中小企業200社をシリコンバレーに進出させる計画を明らかにしました。それだと米国の雇用、米経済への寄与は大きく、仮に成功して日本に持ち帰る技術がある場合のみ、日本経済にも恩恵がある形になります。200社も進出する手助けをするぐらいなら、どうして日本でシリコンバレー並みの開発拠点をつくる、と言えないのか? 視察したのですから、その成果を日本で実現できなければいけないはずです。どこまでも米国に従っていればいい、という発想から抜け出せない。それが安倍ノミクスの限界とも言えるのでしょう。

連休の谷間ですが、総務省が経済指標を発表しています。3月消費者物価が生鮮食品を除く総合で2.2%上昇。増税分を除くと0.2%とされます。日銀は原油安の影響を、物価低迷の主因としますが、食料及びエネルギーを除く総合でも2.1%上昇と、コアコアとコアの差がほとんどないことからも、原油安の影響は軽微か、ほとんどないと言えます。2014年度を通じてコアが前年度比2.8%上昇、コアコアが2.2%上昇。むしろエネルギーを除いた方が、物価上昇が鈍い。電気代が上昇をつづけるように、原油価格下落の影響は遅れてくるため、日銀が主因と見ている、原油安は物価低迷を現時点では引き起こしていない、ということが通年の指標からも読み解けます。
3月労働力調査は、完全失業率は前月比0.1pt下がった3.4%。就業者数も前年同月比21万人増と、良好な結果ですが、中身はそれほど楽観できません。パートが増え、アルバイト、嘱託が減っていますが、この多くを女性労働の構造変化、で説明がつきます。しかも業態別でみると、医療・福祉、その他サービスの雇用が大きく伸びている。以前から指摘していますが、これらは労働環境、労働条件が厳しく、離職率の高い職場であって、安定雇用につながるかは政府の施策次第です。製造業が下落し、輸出の伸びも期待できない中、インバウンド消費の本命であるはずの宿泊、飲食サービスの大幅下落は、中国春節明けの影響とするなら、外国人旅行者への高い期待もかけにくいのかもしれません。

3月家計調査は衝撃の内容です。実質消費支出が前年同月比10.6%減、実収入は前年同月比0.3%減。2014年は通年でも前年比、実質で消費支出が2.9%減、実収入が3.9%減ですが、やや回復傾向とはいえ、未だに減少からは脱け出せていません。4月からは前年からみると、比較対象が低いため、回復となるかもしれませんが、一昨年比にどこまで追いつけるか? が重要となります。
2014年度、通年の労働力調査をみると、楽観できる数字でないことがより鮮明になります。正社員は男性1万人減、女性10万人増。男性は減っていますが、特に15〜64歳は6万人減で、65歳以上が5万人増なのです。非正規は男性13万人増、女性21万人増ですが、男性に限ってみると15〜64歳が3万人減、65歳以上が16万人増。男性の15〜64歳の労働力は正規、非正規ともに減っているのです。家族を養うべき年齢層で、就業が減ったことは、日本の構造変化という問題にも直面します。つまり今、女性と高齢者の雇用が増えたことで支えられた数字でもあるのです。

男女とも、非正規の65歳以上が男女合わせて31万人も増えている。働き甲斐を求めて、という面が一部にはあるとしても、減った年金で働かざるを得なくなった、という層もいるでしょう。単純に数字を比較するだけでは見えない、日本の事情が浮かび上がってくる、そんな経済統計とも云えるのでしょう。シリコンバレーに進出する前に、日本で起業、操業する企業を増やしていかないと、日本は凋落の一途を辿っているだけ、ということがつづいてしまうのでしょうね。

GWの連休は、5日までお休みして、6日から再開したいと思います。

analyst_zaiya777 at 23:21|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般