2016年11月

2016年11月30日

カジノ法案と最近の市場

自民党が統合型リゾート施設(IR)整備法案、通称・カジノ法案を提出しました。カジノなどに頼る政治家は、海外の成功体験をみて真似しよう、とするばかりで他に有効な経済政策をもちえていないか、または海外のカジノ体験などを通じて、国内にあったらすぐにできる、もしくは自分もやってみたい、という邪な考えです。もしくは施設の建設から運営まで、そこには巨大な利権も眠っており、そこに政治家として許認可や事業の発注などで喰いこみ、甘い汁を吸いたい、といったところなのでしょう。正直、もう海外のカジノは乱立し過ぎていて飽和状態、今さら日本につくったとて競争に勝ち抜ける見こみはありません。特に、日本では規制をぎちぎちにかけないと法案が通らないことからも、成功する可能性は極めて低い、といえるのでしょう。

しかし今の株式、為替、債券市場もまさに博打の状況です。重要イベントを控え、株は小休止していますが、トランプ氏の大統領選勝利以来、落ち着きの無い展開がつづいています。まず株式で不可解なのは、日本株までトランプ相場で注目される業種が上がっている点です。日本は日銀が金利を抑えているため、金融機関の収益の伸び代はない。みずほは住宅ローンの固定金利を引き上げていますが、他行が追随しないことからも顧客流出が懸念されます。そんな日本の金融株が上昇してしまう。これはグローバル投資をする主体がコスト削減により、各国の個別の事情を加味することなく投資行動をとるために起こるのでしょう。その結果、収益性を無視した水準まで金融株は上昇しています。
これは日本に限った話ではなく、米国では「予想より悪くない」として減益決算にも関わらず株価が上昇してきたため、今ではPERが18倍を大きく越えており、割高水準です。そこにトランプ相場が勃発、さらに企業価値との乖離が広がるよう上昇しており、もし仮に米国が3%成長をつづけても、現在の水準を正当化できるようになるまで、後何年かかるか分かりません。

しかもトランプ相場で金利が上昇すれば、バブル懸念もある米不動産市場がどうなるか? また自動車サブプライムローンが弾けると、金融業界には打撃となります。これまで好調だっただけに、この二つが翳ると米景気にも悪影響がでてきます。さらに問題は、トランプ相場で語られる財政出動、完全雇用の状態では効果がほとんどない、とみられる点です。つまり設備投資や公共工事をするインセンティブが増えなければ、資金需要も限られる。そうなると金利が上昇したとて、金融機関の収益機会は限られることになるのです。そうなると、今の金融業界の株価上昇が正当化できる見込みもなくなります。
為替も、今の水準が妥当か? 正直疑問を抱きながら円安になっている状態です。欧米で高まるインフレ期待を理由としますが、需要がないのに本当にインフレに向かうのか? 米国では消費が堅調といいますが、もう車も大型家電も、家具もほとんど手にしている状態であり、これから一段と買う、という期待はほとんどもてません。さらにトランプ政権の誕生で国外移住が増えたり、移民流入が止まってしまえば、それも消費拡大にはつながらない。国債とて、もしそのままトランプ氏の財政出動、減税を採用したら、米財政赤字は5兆$を越す、との試算もあります。そんなことになったら米の財政破綻すら意識されかねなくなるのでしょう。

今の市場は、本来は深読みすべきもっと奥、その波及的なマイナス効果をすべて無視する形で、上昇相場についた、ともいえるのでしょう。恐らくそれを促す要因は、株式アドバイザーの寡占化、つまり有力な投資助言会社が確立され、多くの機関投資家などがそのアドバイスに従って行動するようになり、極めて画一的な、白となったら白にしか投資しない、という主体だらけになったことが、こうした相場を生み出しています。
しかし結果として、とても分かり易い、受け入れ易い材料で上げるようにはなったものの、そのマイナス効果についてはすべて無視してしまう、という流れも起こり易くなっているのでしょう。そして水準感も分からず、ただ方向性だけにつく。誰かがその嘘、実体と乖離した虚構であると気づき、相場が下落しはじめていくと、今度は下方向に大きな動きを招いてしまう、ということも起こり易い。言葉は悪いですが、とても頭の悪い相場になってしまっているのでしょう。このみんなが下りるまでは上昇相場につく、というのはまさにギャンブル相場ともいえる状況です。カジノなど作らずとも、このギャンブル相場に賭けたい人はそうすれば良いでしょうし、そんなリスクをとりたくない、というなら近づかないに限る。IR法案、などとカジノというネガティブなイメージを消そうと躍起ですが、IRregular法案としかみえず、不正規の印象の方が強い、ともいえるのでしょうね。

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2016年11月29日

10月の経済指標

韓国の朴クネ大統領が「国会が安定的に政権移譲の方法を考えてくれれば退任」と、条件付の退任を表明しました。弾劾訴追は嫌だけど、代わりの方法があれば退任する、しかも「安定的に」という如何にも国民を小バカにしたような、時間稼ぎの策を打ってきた。そんな印象です。正直、さらに国民の心証を悪化させた。名誉ある退陣、のつもりが迷路にはまったまま泥沼の中で退陣することになりそうです。
これで年内の日中韓首脳会談がとびました。日本からは朴政権の支援策がでるのでは? などの噂もありましたが、事実上レイムダック化したからには餞を贈る必要もなくなります。そうなると単なる口約束の日韓慰安婦合意もとんだ、とみて間違いないのでしょう。外交文書も残っていないので、引継ぎする必要もありません。次期政権がそんなことは知らない、と言えばなかったことになります。10億円を、言葉は悪いですがドブに捨てたようなもの。基金でさえ解体されるかもしれません。これもおトモダチ外交の弊害、相手を信用し過ぎても、その政権が消えてしまえば関係性も終わってしまう、ということにもなるのでしょう。

10月の有効求人倍率が1.40、都道府県別でもすべて1.00倍を超えた、ということが良いニュースとして報じられます。しかし前年同月比で有効求職者数は12万人近い減、となっており、新規求職申込件数も5万人以上減った。逆に求人件数はほぼ横ばい。つまり景気がよくなって有効求人倍率が改善したわけではなく、働こうとする人がいないから、有効求人倍率が上がったのです。しかも求人はいつもの宿泊・飲食、教育・学習支援、医療・福祉がプラスで、賃金が安くて離職率の高い業種に集中している。その構造問題を改善することを政府が怠っているから、高止まりしているというだけです。
さらにこの1年、就職件数は前年同月比でずっとマイナス。それは求職者が減っているのですから、割合からみれば成立するケースも少なくなるのかもしれませんが、人手不足の割りに賃金が上がっていない。これも日本の特徴であり、構造問題です。それなのに安倍政権は、有効求人倍率の改善を「成果」と語るのですから、呆れるばかりです。

10月の家計調査では前年同月比で、消費支出が0.4%減、勤労者世帯の実収入が0.1%減。完全雇用とも言われる状況であるにも関わらず、賃金は伸びず、消費も減退する。賃金が伸びないから、年金も下がるから高齢者も消費を抑える。将来に期待のもてない国、だから賃金も上げられない。働き方改革で非正規の待遇改善、を安倍首相は訴えていますが、正直パソナ竹中氏からの入れ知恵か? ともみられます。非正規が優遇されれば、人材派遣会社に入るマージンも大きくなる。正規雇用を増やすのではなく、非正規に焦点を当てるだけでは、将来不安に応えたことにはならないのです。
しかも安倍氏は「正規と非正規で賃金差がある場合、どのような差が非合理的で、どのような差が問題とならないか、実例を含んだガイドラインで議論したい」と述べます。ふと思うのは、自民は選挙でも「同一労働、同一賃金」を謳っていたはずですから、差がある時点で問題なのでは? と感じます。ガイドラインで議論する時点で、すでに差を認めているのも同じ、同一労働、同一賃金ではなくなっています。そういうなら、まず公務員と省庁で働く非正規職員との差を埋めるべきなのでしょうし、政治家の秘書も、公設秘書と政策秘書と、私設秘書との待遇を同じにしてはどうでしょう。安倍氏がそれをしていないのなら、隗より始めてもいないわけで、企業がそれに従うわけもありません。図らずも完全雇用状態となり、景気対策を打ってもますます効かなくなり、日本は自縄自縛のまま、成長できなくなっています。OECDが来年の日本の成長率を引き上げましたが、毎年ここの分析はいい加減で、当たった例がない。むしろ来年も成長しないことが、OECDにより約束されてしまったようで、今後経済的にいいことがない、という意味では、来年は安倍氏も朴氏の言葉のように「安定的に政権移譲できれば退任したい」気分になるのかもしれませんね。

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2016年11月28日

自由貿易の旗を下ろす?

後3日と迫った国会会期が、12月14日まで延長されることが与党会談で決定しました。年金改正法案の行方をにらんだ、とされますが、TPP関連法はどうするつもりなのか。参院本会議ではポカンと俯瞰でもめていますが、問題は安倍氏の答弁で、TPPのみあたかも自由貿易だ、とする論調にあります。二国間のFTAやEPAも自由貿易ですし、米国が多国間交渉であるTPPを否定し、二国間の交渉に移すことも、別に自由貿易の旗を下ろしたわけではありません。安倍氏の答弁を修正すると「多国間交渉の旗を下ろしていいのか?」というだけの話です。自由貿易、などというよく知らない人にとってはそれが良い選択であるかのように誤解を招く表現にはならない。分かって安倍氏が嘘をついている点にあります。

仏大統領選の予備選で、中道・右派の統一候補にフィヨン元首相が選ばれました。日本では普段、見向きもされない仏大統領選が注目されるのも、トランプ現象が欧州でも拡大するのではないか? との見方が多いためです。しかしトランプ現象を、ただの大衆迎合主義と批判するのは大きな誤りです。民主主義ですから、より多くの意見を代弁した者が選ばれることは、ごく自然です。逆にこれまでの世界は、多くの国が一部の政治家とその取り巻きで決められていたエリート主義だったのであり、その崩壊を世界が怖れていることになります。
そんな中、イタリアで12月4日、憲法改正の是非を問う国民投票が行われます。その前に予算案が通過したり、伊銀のモンテ・パスキが債務を証券化できるよう承認をうけたり、と慌しく動いています。予算案には年金支出を拡大したり、販売税増税を阻止する条項が含まれていたり、とにかく国民ウケのいいものが含まれていますし、破綻が意識されるモンテ・パスキが市場から資金を調達できれば、一先ず安定します。そうやって国民投票前に不安を解消しているのです。

では伊国の国民投票で何が変わるか、というと上院の議席を315から100に減らし、ほぼ名誉職的な位置づけとし、下院に権限を集中させることを狙います。ただし、憲法改正に反対するのがポピュリズム政党を標榜する五つ星運動が、伊国では力を増しており、憲法改正が否決されるとレンツィ政権が崩壊する可能性もある。もし仮に五つ星運動が政権をとるようになれば、EUからの離脱などを強力に押し進める可能性もあり、EUすら崩壊させかねないのです。なので、これまで債務の圧縮を求められてきた伊国が、先に予算案を通したり、モンテ・パスキの経営を安定化させるなど、EU側からの改革要求を現政権でも受け入れてません、と示す必要がありました。
仏国のフィヨン氏が政権をとったら、どういう政策になるのか分かりませんが、独国のメルケル氏も来秋の選挙で勝利し、続投する意向を示したものの、かなり苦しいと言います。先にEU離脱を決めた英国からはじまったEU崩壊の流れ、どのピースが外れても、選挙で予想外の結果になってもそれが起きる状況です。その最初のピースが12月4日、どうなるか決まります。

来年はこうした不透明な年だからこそ、今の市場はそうなる前の束の間の上昇を演じている、とも言える状況です。EU崩壊にでもなったらどんな影響があるか分からない。独、仏、伊、どこもEUの主要国であり、インパクトはかなり大きくなる。しかし国民がそれを選択する以上、止めようがありません。むしろ、EUを存続させることのメリットを国民に説得しきれなかった、既存の政治の失敗という見方すらできるのです。
そして、来年はEUという、まさに自由貿易を掲げて統合した市場が、その存否を試される1年ともいえるのです。安倍氏が旗を下ろす、そんなことに一切関係なく、世界はその旗を下ろしてしまうのかもしれません。そして日本だけが旗振り役として残り、高い代償を払い続けて、それでも推進していくのかどうか、がまさに今国会でTPPを通すか、通さないかにかかってくる、といえるのでしょう。自由貿易という言葉をはき違え、自縄貿易ともなれば、もう泥縄にしかなりません。多国間交渉をめざしていた日本が、いつの間にか一国だけとり残される。今でさえすでにトランプ米国、プーチン露国から突き放され、そうなりつつある中で、来年の日本は極めて厳しい状況を覚悟しないといけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(11)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 欧州

2016年11月26日

JA改革が農業の成長戦略?

キューバのフィデル・カストロ前議長が死去しました。キューバ革命、キューバ危機という世界を震撼させた出来事を招きましたが、日本では知らない人の方が多いぐらいです。キューバ革命はある意味、国民の分断を招いた。亡命が続出し、米国に渡ったキューバ国民はカストロ氏を悪と罵り、キューバに残る国民はカストロ氏の弟が政権を引き継いでいるように、概ね容認している。オバマ米大統領がキューバとの関係改善をめざしたときは、米国にいるキューバ人と、キューバに残るキューバ人との間の温度差が、極めて大きかったことが印象的です。
あくまで個人的な感想ですが、社会主義にしろ、資本主義にしろ、極端にどちらかに振れてしまえば反発もおき易くなる。社会主義体制をとったキューバもそうですし、新自由主義という資本主義の極に至った今の状態も、やはり社会的には不安定になっています。どちらが良い、悪いではなく、多様な人間を一方だけでまとめきることに無理がある、ということなのでしょう。キューバ危機を引き起こした一方の当事国、米国が今、分裂状態にあることでも分かるように、社会主義、資本主義どちらも欠陥、限界があると感じます。

政府・与党がめざす規制改革の本丸となっていたJA改革、政府の規制改革推進会議は抜本改革を求めましたが、自民党案はかなり農林族が巻き返し、骨抜きになりました。TPPがトランプ政権の誕生により頓挫したことも、農林族への追い風となった。TPPに参加しないなら、焦ってJA改革などする必要ない、ということです。当初、思いついたようにJA改革に前向きとなった安倍氏が、急にトーンダウンしたことも影響したのでしょう。法案策定に動いていた自民党議員は、孤立無援で形だけ整えた形です。JAの努力次第でえす、と。
問題は、JAの方がいい、という人もいる。JAには頼れない、という人もいる。その双方を機能させることです。つまりJAでない選択肢をとり易くしさえすれば、実はすべて事足りるとも言えます。JAとて加盟してくれる農家が減れば困るのですから、自分たちで何とかしようとするでしょう。JAとは別の組織をつくってもよいですし、民間企業の参入をしやすくするだけでも、JAは整理、縮小を余儀なくされます。今回のように外圧を頼った時点で、強引な改革にならざるを得ず、反発も大きくなってしまいます。

資本主義のよい点は、やる気をだした人に、成功するチャンスがある点です。一方で、JAのように農家を囲い込み、全体の計画性をもてば個々の生活は安定します。どちらもそれぞれ利点があって、欠点もある。成功するチャンスがあっても、失敗するリスクも高い。またJAが買い取ってくれるので生活は安定しても、高望みはできない。どちらを選択するかは農家次第、それで十分なのに、政治はなぜかどちらかに限定しようとします。法律が面倒になりますし、その方が統制もとれるからです。
これまではJAに偏り、不満がある人がそこを飛びだしているだけでした。JAにいないと補助金もうけられない、などもあって抜け出せなくなっていた面もある。それを変えてやるだけでよかった。安倍氏のJA攻撃から始まった今回の一連の顛末、結果として自民党内がまとまり切れていない、ということを俄かに露呈しただけだったのでしょう。農業を成長戦略にしたいのなら、一方だけのやり方ではダメなのです。JAみたいなものもあり、一方で自由経営による農業もあり、そういった形で多様性を保ちながら拡大していく形が、真の成長、拡大路線といえるのでしょう。二つの手法が鬩ぎあって、良い方法を模索しながら、日本の農業としてよりよい形をめざす。そうでない今回の動き、JAを目の敵にして規制改革という看板を果たそうとした、ジャパン・アベ化の失敗と捉えると、JA改革の別の側面もみえてくるのかもしれませんね。

明日は一日、お休みしたいと思います。

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2016年11月25日

年金改正法案の強行採決

米国では感謝祭の翌日からブラックフライデーとして、大売り商戦が始まります。ただし最近では前倒し、ネット取引など販売も多様化しており、ブラックフライデーの文言自体が形骸化しています。日本でも『ブラックフライデー』と銘打ち、年末商戦に突入する小売もありますが、なぜ外国由来の名前をつかうのか? 日本でも東では酉の市、西では誓文払い、として江戸時代から年末にむけて取引が活発化していました。
しかし誓文払いは「駆け引きの嘘を謝罪する」という意味で、安売りをしてきた経緯もあってスジ悪です。酉の市も、現在の新酉の場所に移る前の酉の市は、賭場とも密接な関係にあった、とされます。酉の市は11月の酉の日に開催されますが、一月で3回あると火事が増える、とも言います。これも月3回も賭場に行かれたら家計が火の車、または賭場で負けた者が憂さ晴らしに火をつけた、など諸説あるようです。11月からのセール、米国は感謝からですが、日本にはどこか後ろ暗さもある。だから海外の名前を使いたいのかもしれません。ただ黒字の金曜日とも訳されますが、日本ではどうしても『腹黒い』とのイメージが拭いきれないのは、歴史的な経緯ばかりでなく、大して値引きするわけでもないのに『爆安セール』などと銘打つものが、あまりに多いせいかもしれません。

年金制度改革法案が、衆院の厚生労働委で強行採決されました。自公、維新が賛成していますが、一方的に審議打ち切りを通告するなど、より良い法案にしようというより、安倍首相のトラウマである年金法案はさっさと片付けたい、という与党の都合しか垣間見えない。この改正案は「年金延命法案」でしかない。すでに死に体である年金が、後数年ぐらい生き延びようと、将来世代がもらえる年金財源が残っているわけではありません。年金財源がなくなったら、年金の支払いは「終了!」というわけではないのに、与党は「将来世代にも公平に…」と述べます。要するに現在、未来、公平に減らすだけなら、日本は将来不安によって消費など増えるはずがありません。
そんな中、GPIFが7-9月期の運用成績を発表しました。2兆3746億円の黒字、内訳は国内株で2兆234億円、外国株で1兆455億円の黒字だったものの、国内債券で6000億円以上の赤字となり、相殺した形です。しかし不可解な点がいくつかあって、国内株はこの間、6%近い上昇ですから、運用比率からみるとやや良好なパフォーマンスというぐらいです。問題は外国株、代表的な米株、ダウは2%少々の上昇しかなく、かつやや円高ですから、ほぼ相殺している。ただNASDAをみると7%台の上昇です。つまり収益の大半はNASDAQ銘柄で上げたとみて間違いありませんが、NASDAQはトランプラリーでもほとんど上げていません。ダウも19000$をうかがう展開、といっても3%ぐらいしか上昇していない。そうなると、10-12月期は円安分ぐらいしか外国株に期待できない、となります。

さらに問題は債券です。外国債券の比率は低く、資産構成で12.5%しかありませんが、それでも急落中です。国内債券の比率は36.15%もあって、短期債も長期債も、金利が上昇中で価格は下落しています。それでも日銀の指値オペにより、短期債-0.1%、長期債0.0%辺りにはありますが、日銀に支えられなければ、さらに国内債券の運用が悪化してもおかしくなかった。7-9月期のマイナス分、思っていたよりかなり小さい。6月末に資産構成で39.16%もあったものが、9月末に36.15%と急減している。この辺りにカラクリもありそうです。
しかし4-6月期までに被った損失のうち、半分もまだ取り戻していないのであって、しかも日銀が買いを止めた途端に、年金運用も急落することが、ほぼ確実な情勢です。日銀がいつまで国債を買い支えつづけられるか? それによって一気に年金不安が再燃することが確実です。安倍政権では、日銀に損を被らせることによって、年金不安を抑えている。そんな中、日銀が役員給与の増を決めました。臭いものに蓋をしつつ、自分たちだけ甘い蜜を吸っている人々がいる。そんなことが、実は将来不安へとつながっていることが分かっていないようです。米国のブラックフライデー、日本ではやはり『腹黒の金曜日』になってしまった、というのが今日の一連の動きでもあったのでしょうね。

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2016年11月24日

円安とトランプラリー

韓国で、朴大統領に対して来月初めにも弾劾訴追法案がだされる、と言います。国会議員300人中、200人の賛成が必要なので、与党が分裂しないと成立しない。また裁判官の賛成も3分の2が必要とのことで、高いハードルですが、おトモダチは続々と逮捕されているため、与党議員や裁判官も、反対に投じ難い雰囲気もでてきています。
しかし日本でも安倍首相のおトモダチが問題です。昨日のコメントにも記していますが、安倍氏はナゼか、自身が外交上手、人徳があると思っているらしく、プーチン露大統領やトランプ米次期大統領ともおトモダチ、またおトモダチになれると考えているようです。しかしこの外交手法の弊害は、安倍氏以外に関係の深さや、相手の言葉の信憑性を測る術がないこと。また安倍氏が信用できる、おトモダチだと思っている相手のことを「信用できない」などと周りが讒言しようものなら、安倍氏から疎まれ、政権から追い出されてしまう点です。つまりすべてが安倍氏の判断にかかっていますが、ここ最近の出来事でみれば見事に裏切られたのであって、外交手腕の無さ、人徳の無さを如実に示してしまいました。芸能界でも、おトモダチからの洗脳騒動で消えた人がいますが、おトモダチだからといって信用し過ぎたり、頼るばかりでは判断も誤ってしまうのでしょう。特にそれが、国益をかけた場であれば尚更です。おトモダチ外交のリスク、今後も現れることでしょう。

TPP特別委でも、安倍氏はトランプ氏が翻意する確信は無い、としながら日本では通す批准するといいます。もし仮に条件を変え、米国抜きでもTPPを発効する、となったら日本は大変なことになります。製造業は新興国にとって代わられるので、米国のように金融、知財で稼ぐ国にならない限り、日本は各国に利益を配るだけの国になる。しかし安倍ノミクスでは、黒田バキュームで金利を低く押さえられるので、金融業界は低調ですし、アニメは好調でも知財は弱い面があります。米国抜きのTPPにでもなったら、日本は「金融機関は儲け過ぎ」などといってバッシングするのではなく、金利を上げて収益性を上げ、新興国を金融で圧倒しない限り、利益は得られないといえます。
為替はついに対ドルで113円に乗せてきました。ここまでの動きで、米MMFベースで外国人投資家は円買いから、円売りに転じているとみられますが、問題はどこまで水準を積み上げるか、です。ただここから2円も上げる力はないでしょう。トランプラリーは、その上昇する理由、材料が胡散臭い。今は、金融で実体経済以上に市場がもち上げられてしまっているため、ムードによってふわふわと動きやすい。今はトランプラリーにつく、という取引も多いですが、いつか実体に目を向けないといけません。

そんな中、米FRBが来年から配当を減らし、インフラ整備に充てるための基金にします。FRBは株式会社、ほとんどを金融機関がその株を保有しており、またそれを売ることができません。これはトランプ大統領が誕生するから、ではなく、すでに昨年から決まっていたことですが、むしろトランプ政権誕生が後押ししたかに見えます。大統領選でも、富裕層はトランプ氏を支持する傾向があった。オバマケアを代表とする利益再配分に嫌気がさし、金融機関の利益となるはずのFRBの配当まで減らす、そんな民主党政権が12年もつづいては堪らない。それがトランプ大統領誕生の原動力、今のトランプラリーの一つの要因でもあるのでしょう。
つまり米富裕層にとって、格差社会などといって富裕層叩きをされることが疎ましかったのです。トランプ氏は白人中間層に支持された、というばかりでない。誰が味方で、誰が敵なのか、それを弁えておかないと、相手の政策すら見誤ってしまうのでしょう。米国では大統領選において、ハッキングされたのでは? との疑惑も出ています。証拠はありませんが、一部の電子投票所で周辺とは異なる結果がでており、調べる必要がある、というのです。トモダチだと思っていたら、いつの間にか消えていた。そんなことがあるのも国際政治の場です。おトモダチ外交のリスク、来年は確実に増えていくのでしょうし、旅は道連れで地獄までつれていかれるのは、勘弁となるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:30|PermalinkComments(8)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2016年11月23日

トランプ氏の100日行動計画と日本の対応

萩生田官房副長官がシンポジウムで、米大統領選についてトランプ氏の隠れ支持者がいたことを沖縄の状況に準え、隠れ基地容認派がいる、と述べています。あぁ、こんな人物が官房をつとめているから、安倍政権の情報分析能力は拙いのだな、と実感します。米大統領選は、世論調査によっては差が1%しかない状況で、NYT紙などはトランプ氏有利を伝えていた。つまり最初から接戦です。しかも得票率ではクリントン氏が勝っていたように、トランプ氏は重要州を上手くとったから勝てた、ということになります。世論調査と選挙結果に大きな乖離はありません。沖縄は心情的には基地に反対していても、基地に依存して生計を立てている人もいる。それこそ自民が組織をフル回転させれば、心情的には反対でも賛成に投票せざるを得ない、となります。
また「オバマ政権が始まったときよりも、ある意味では期待できる政権として、総理がお付き合いできる」と述べています。安倍-トランプ会談の感触をそのまま語ったものでしょうが、昨日その顔に泥を塗られているだけに、虚しく聞こえてきます。トランプ氏は米国ファーストなので、上手く付き合えるとしたら太鼓もちになるか、米国に貢物を献上しつづけるしかない。言葉は悪いですが、純粋無垢な乙女でもあるまいし、最初のデートが上手くいったからといって、すぐ仲睦まじくなれるわけではないのです。むしろビジネスライクなオバマ氏より、日本への要求は苛烈になることが予想され、それをどうかわすか、その戦略が必要となってきます。昔からビジネスという言葉は『美人ness』ともされますが、八方美人になったり、いい顔ばかり見せていると、相手から舐められてしまいます。時に厳しく意見対立するようでないと、米国ファーストの圧力に屈する場面が多くなってしまうのでしょう。

すっかり霞んだ感のあるAPECですが、「開かれた経済を実現することが重要」との文言が入った共同声明を採択し、閉幕しました。しかしトランプ氏は「TPPが米国ファーストではないから離脱する」と述べているのであって、決して保護主義ごりごりの人物ではありません。公正な2国間の貿易協定を、と述べていますから、強いていうなら米囲い込み主義を止める、ということです。それだけ米国に力がなく、囲い込んでおくだけの余裕が無い、ということの裏返しですが、もう米国による保護、庇護を期待するなよ、という意味では非保護主義といえるのかもしれません。
昨日のトランプ氏の100日行動計画、そこで注目されるのはシェールガスなど、エネルギー生産の規制を撤廃、という話です。選挙時に訴えていたパリ協定からの離脱、というのは見直すようですが、シェールオイル、ガス、石炭などの生産を加速すれば、否応なくCO2の排出は増えます。しかも今はOPECで減産される期待で、WTI価格がふたたび50$をめざす展開ですが、この行動計画をみれば米国の生産は増える。多少の減産ではその分を米国の増産が埋めるだけ、でしょう。今のところ、米国の財政出動で景気が好調、増産分を消費拡大で相殺できる、との見立てもありますが、そう上手くいく可能性は低いのでしょう。

しかもOPECではイランやリビアが減産に反対しており、また露国などはここにきて増産の兆しもある。どの国もどこかが減産すれば、その枠をとりに行く形の増産を待っている状況です。かといって各国で生産調整などをするなら、いつの段階を基準としてそこから何%削減、という計画をつくる段階で大モメでしょう。原油や天然ガスの市場は、今や過当競争の時代であり、そこに米国がさらなる緩和などをすれば、今後は大きく価格を落とす場面もでてきそうです。市場機能に任せていたら、きっと上手くいかない。かといってここに調整を入れることは、石油業界としての保護主義といえるのかもしれません。
「開かれた経済」というなら、実は日本はかなり閉鎖的な経済体制をとっている、とも言えるのです。企業への参入障壁、移民を受け入れない、等々数え上げればキリがない。軍事的には米国の保護を外れたら、立つ瀬もないとばかりの主張をします。巨大な経済圏をつくることは自由貿易ではなく、むしろ囲い込み政策である。トランプ氏の出現によって、世界はそんなことに気づきつつあるのでしょう。そしてトランプ氏の語るシェールオイル、ガス、石炭などへの規制緩和という話は、自由競争という意味で問題がある。こうした指摘をしていかないと、菅官房長官のいう「日本が先頭に立って米国を説得」など到底ムリでもあるのでしょう。こうしたことを分析し、安倍氏に忠言できる腹心のいないことが、安倍政権での不幸でもあるのでしょうけれどね。

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2016年11月22日

安倍政権の外交の行き詰まり

今日の朝、東日本大震災の余震とみられる大きな揺れがありました。スーパームーンによる影響? なども懸念されますが、これは潮汐力ばかりでなく、マントルの動きなども含めて解析する必要があるのでしょう。福島第二原発3号機の燃料プールのポンプが一時停止しました。揺れが来てから10分後に停止したのは「固有周期が合ったのでは?」としていますが、そうなると原発設計の根本を見直さないといけないのかもしれません。長周期の地震で振れ幅が大きくなるなら、設備の振れを抑えるガイドなど、炉心本体にも関わってくるからです。水を貯めていたタンクの広さも含めて、揺れの周期が合った、というならその他の燃料プールはどうなのか? そして今回より大きな揺れで、職員も非難してしまった場合は誰が復旧させるのか? なども含め、検討課題は多いといえます。
奇しくも今日、ベトナムが原発計画を停止しました。原発の高コスト、高リスクであることを知れば、新興国などは特に、二の足を踏むことが確実です。インドにしろ、原子力協定をむすんだものの、日本の高コスト、高リスク原発が導入されるかは不透明といえるのでしょう。まず日本の国民から、原発の安全性を説得できないようでは、諸外国は到底納得しない、ということを肝に銘じるべきです。

安倍政権の成長戦略が、原発輸出の頓挫という形で一つ消えていますが、今朝は米次期大統領、トランプ氏がTPP不参加を表明しました。安倍ノミクスの成長戦略はTPPだけ、とも言われていましたから、これは大きな痛手です。安倍氏はペルーで「米国が入らないと利益構造が変わる」と述べていますが、これは安倍政権の支持母体には自動車などの輸出企業があり、米国への輸出増、がTPP参加の前提でもあるからです。しかしそれ以外の弱小の産業は、当然のように新興国の企業にとって代わられる。米国では、それを投資、知財という形で補おうというのがオバマ政権のTPP戦略でした。しかし日本は投資や知財でそれほど強いわけではないので、米国が抜けてしまうと輸出増も望めず、産業の移転ばかりがすすんでしまうことになりかねない。日本にとって、米国参加が必須でもあります。
TPPのTをトランプに代えれば? などの提案もありますが、トランプ氏はその弱小の産業を守る、といって当選したのですから、TPPの利益構造全体を否定していることになります。先進国はより投資、知財へと移行し、新興国は製造業として輸出増を。それが米国ではもう米国民にとって容認できないのですから、いくら説得しても意味はありません。そして日本はそうした構造で成長戦略を描けていない以上、参加しても害が大きくなる。これで安倍ノミクス、最大の成長戦略が頓挫しました。

グレートな友人関係、と言っていた人物から、後ろ足で砂をかけられた形になった安倍氏ですが、北方領土でも露国は対艦ミサイルを配備するなど、まさに米露から小馬鹿にされたような仕打ちがつづき、新興国も安倍政権の提案にのってこない。なぜこうしたことが起こるか? それは安倍氏、安倍政権が、日本の強みを見誤っている上に、相手の顔色ばかりを気にして外交をしているため、でもあるのでしょう。
相手の状況が変化すると、途端に脆さを露呈する。日本が選択肢の上位にあるわけではないため、すぐに日本という選択肢が外れてしまう。これは相手にとってベストでも、ベターでも、マストな提案でもないために、日本の提案を受け入れてもらえない、ということでもあるのです。国民でさえ、なぜ原発を輸出するの? なぜTPPに参加するの? と疑問に感じている人が多いのですから、諸外国もそれをベストでも、ベターでも、マストとも感じない。安倍政権の利権構造、官僚の利権構造、そんなものに依拠した提案であり、そうした利益の代弁者としての提案であれば、誰も日本の提案を採用しようとはしないのが、現状なのでしょう。安倍政権の成長戦略が失われ、低調戦略になりつつある。今朝からつづく激震は、安倍政権にとって極めて不都合な真実をあぶりだした、ともいえるのかもしれません。TPP、原発、安倍政権がそうしたものに成長という夢を抱いたツケ、日本はそろそろそんな愚かな選択から、目覚めないといけないのかもしれません。今朝の余震はそんな日本の危機を思い起こさせてくれるのかもしれませんね。

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2016年11月21日

雑感。日経平均の18000円乗せ

今日の日本株は10ヶ月ぶりに18000円に乗せて引けました。しかし円安、株高という構図にも関わらず、上げているのは輸出株ではなく金融株です。これは米国株で、ボルカールールの見直し期待や金利急騰などで、金融株が上昇する流れをそのまま日本株に当てはめているだけで、日本株の実態に即した取引でないことを示します。日本は日銀が金利を固定する操作を行っており、また金融システムが緩和される見こみもない。業績拡大も期待できない金融株が上げてしまう、という異常さがあります。
米保険大手AIGが日本から撤退する理由にも「低金利が厳しい」と述べており、日本の金融、保険業態にはまだ曙光すら射していないのが現状です。今回の上昇相場を仕掛けているのは、原油相場の上昇を煽って失敗した米系大手が関与している、とみていますが、世界全体が同じ材料、同じ形で上げるわけではないにも関わらず、そうなってしまっているのは市場の劣化、としても良いのかもしれません。投資銀行の雄、とされている米系大手ですが、最近は投資家向けリポートも煽りのようなものが目立ち、今回の仕掛けにしても必死で収益をだそう、という意図しか伺えない。健全な市場の形成や、投資家層の拡大をはかっていかないと、金融の世界も縮小均衡の道を歩むのでしょう。

例えば、海外REITの減配報道があります。国内が低金利だから、海外REITを利回りの高い安全運用、として顧客を募りましたが、そうして資金が流入しているうちは不動産市場も上昇し、賃料収入も安定していたので利払いにも耐えられましたが、すでに米国では定職についていてもホームレス、という人が現れている。住居費がまかない切れないためですが、そんな状態が長くつづくはずもありません。ふつうに働いている人が暮らせない街、それも資金流入によって市場機能が壊れていることの証明です。
そして減配によって、資金流入が止まると米国など、不動産バブルで沸く国の経済が、今後どうなるか分からない。減配といっても国債で運用するよりは高い利回りですので、すぐに縮小する気配はありません。ただ、こういう情報が重なると不動産市場への見方も変わってくる。米国で本当にボルカールールが見直されるのか、金利上昇で不動産投資が細るのではないか、そうした情報には敏感にならざるを得ないのでしょう。

そんな中、日本ではみずほが私募REITに参入し、不動産投資を活発化させるといいます。日本でもそのうち、働いても暮らせない町ができるかもしれません。10月のスーパー売上げ高は前年同月比0.6%増でした。食料品が堅調…というより、生鮮食品の高騰などもあって、売り上げが上がったのなら、どこかの消費を削る可能性が高い。冬のボーナスも大手は0.3%増と伝わりますが、中小は横ばい、マイナスも目立つとされます。
不動産価格が上昇して喜ぶのは、保有することのできる富裕層だけ。賃料が上がっても賃貸に暮らす人にはマイナスですし、食料品の高騰で苦しむなら、ますます経済的には困窮することにもなります。日銀は不動産投資が増えていることを、マイナス金利の成果などと語りますが、それも日本が未だ富裕層優遇をつづけていることの証左でもあります。

日銀のマイナス金利による功罪、功は富裕層にとって、罪は庶民にとって、というのが実態なのでしょう。そんな歪みの中で、今の株式市場は上昇しています。1月の18000円以上つけていた頃は対ドルで119円、今は111円。ドルベースでみた日経平均では10$程度も上昇している計算になります。ただ、日本にとってトランプ氏の政策は何ら恩恵をもたらすものではなく、逆にマイナス面が多いにも関わらず、上昇してしまう。こうした歪み、市場機能の劣化が背景にあるのなら、トランプラリーどころかトランポリンのような上下動を激しくなるだけ、にしかならないのでしょうね。

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2016年11月20日

雑感。日露首脳会談

新潟県柏崎市の市長選、柏崎刈羽原発の再稼動容認派である桜井氏が当選確実となりました。先の新潟県知事選では反対派の米山氏が勝利していますが、この地元と周辺地域とのネジレ、は今後もつづくのでしょう。雇用や補助金など、恩恵をうけられる地元は賛成、補助金もなく雇用も生まず、リスクだけを被る周辺地域は反対、という構図です。安倍政権が本気で原発の再稼動が必要、というのなら、補助金の対象市町村を拡大するか、地域活性化策を広げるしかないのでしょう。しかし本質的に、原発の安全性は福島原発事故以前と以後、ほとんど変わっていないのが実情であって、リスクを金で押しつけている構図に問題があります。津波用の堰をつくる、電源車を常備する、これらは彌縫策でしかありません。原発のために財政を拡大させるのは本末転倒、というなら、炉心を改造してでも安全性を担保する。そうでない限り、大多数の民意はずっと原発反対のままでしょう。
円谷プロの特撮『ウルトラセブン』に、幻の12話があります。そこに出てくるのは被曝星人、というものであり、人間の血液を奪い、殺してしまうのでウルトラセブンが退治した、という話です。しかしそれが幻で、未だに再放送もできないのは、原子力ムラの影響でもあるのでしょう。放射線が白血球を破壊する、ということから連想されて脚本は描かれたのでしょうが、原子力に関するネガティブなものはすべて消す。しかし何が幻か? 現代においては『原発の安全神話』という、ドラマにすらならない三文芝居だった、というのが結末でもあるのでしょう。

ペルーで日露首脳会談が行われました。安倍首相は「解決の道筋は見えているが、簡単ではない。着実に一歩一歩…」と述べました。会談時間は70分、そのうち半分を通訳のみで2人だけの会談に当てた、というのですから、安倍氏から懇願したのでしょう。平和条約、及び北方領土解決にむけて、何をすればよいのか? と。そもそも日露経済協力8ヶ条は日本側からの提案ですし、露国が前向きであるために、日本側も前のめりになった経緯があります。しかし露国がそれで十分か、満足しているか、は別の話。それを安倍氏自ら確認したかった、というのがサシの会談の理由でしょう。
恐らくプーチン大統領の要求は途方もないものだった。「解決の道筋は見えている」は、それを意味し、しかし「簡単ではない」は、国家予算が傾くぐらいの要求だった。分割払いでお願いします…が「着実に一歩一歩」なのでしょう。しかし一般的な土地取引と異なり、契約をむすべばその土地は自分のもの、になるわけではない。例えば50年ずっと10兆円ずつ払いなさい、そうしたら50年後、2島だけ返還します。そう言われたら、最近安倍氏も傾いている2島返還につながるでしょう。しかし50年も米露が衝突しない保証はない。米露が衝突し、米国から露国への経済支援を止めろ、と言われたら、それまでの支援はすべてパァ、北方領土も返ってこない、となる。逆に、米国の要請を断ったら日米安保が揺るぎかねない。50年間も将来に禍根を残す、そんな決断をしたら、安倍氏が糾弾されかねなくなります。

露国からは親密度が足りない、貢献が足りない、との声が多いのですから、安倍政権で成果をだすためには、それだけのお金を一気に積むか、期間を長めにした契約をむすぶしかありません。期間を長くとれば、上記したように国際環境の変化に晒されたとき、対応が利かなくなる。お金を積むのは国会を通らない可能性が高い。それこそ国家財政を傾けるほどなら、尚更です。結果、値引き交渉をつづけることも「一歩一歩」なのでしょう。
旧ソ連では「将来の世代に希望託す」と言われていました。現状に絶望しかないと、子供や来世に希望を託そうとするのは仏教も同じ、洋の東西を問わないのでしょう。しかしタレスという、哲学の祖と呼ばれる実在の怪しい時代の人物は「もっともありふれたものは希望だ。他に何ももっていなくても、これだけはもっている」とします。現状に希望がもてなくとも将来に託す、との希望がある、ということでもありますが、極めてささやかな希望でしかない、と言えるのでしょう。タレスはもう一つ「もっとも優しいものは『成り行き任せ』だ」ととも語っている。日露首脳会談が『成り行き任せ』で、何も決められていないのか? すでに一ヶ月を切った山口会談の行方、気になるところなのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:15|PermalinkComments(21)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | ロシア

2016年11月19日

円安の方向性

昨日の安倍-トランプ会談、各紙は概ね好意的に報じていますが、これは安倍政権が好感触をもった、ということでメディアも安心してそう報じているだけです。ただ、安倍首相も「選挙のときとは別人」と述べていますが、自分が野党を攻撃するときの口調で、外国の要人とは会わないように、もし選挙のときと同じ態度で要人を出迎えたら、それはもう精神分裂の域です。「日本のことをよく勉強している」などとも語っているようですが、だからトランプ氏は日本を一番最初の会談相手に選んだ。80年代以後、対日感情の悪化していた頃の息吹をいっぱいに浴びたトランプ氏だからこそ、日本にも注目していたでしょうし、無知なまま選挙のときも発言していたわけではないでしょう。むしろトランプ氏はビジネス相手として日本人は厄介、と常々語っており、それはお世辞や忌避ではなく、米国への進出の仕方、同化のさせ方などをみて、日本企業の手法を感嘆したものでしょう。
もし安倍政権が、今回の会談だけで、本気で「信頼できる」なとど考えていたとしたら、むしろトランプ氏は「日本、与し易し」と感じているかもしれません。言葉は悪いですが、ちょっと甘い顔をすれば、尻尾をふって近づいてくる犬は扱い易いのです。エサすら与える必要がないのですから。安倍政権としては、不安が解消された、というところなのでしょうが、それはトランプ氏の組閣が終わるまで待った方がよく、それによっては対日強硬派が力をもってしまう可能性にも、留意すべきなのでしょう。

そんなトランプ氏が大統領選を制してから、日本は円安、株高です。しかし実際には株価は円安分しか上昇していない。ドルベースでみた日経平均は10日の終値が164$台後半、18日の終値が163$台前半、逆に下落してしまっている。つまりドルベースでみると株価が上昇したのではなく、下落しているのであって、円安分だけ株価が上がったように見えるだけ、でもあるのです。良くも悪くも、為替の動向が今後の株価を決めるのであって、日本の株価は相変わらず為替頼みでしかありません。

しかも、シカゴ日経平均先物が上昇し、日本市場に帰ってきて、日本市場では動かない、ということを最近くり返します。その結果、国内投資家でこの取引で儲けられる人は少ないでしょう。保有株が上がった、という投資家もいますが、取引自体の旨味がない。これでは正直、投資家層の裾野は拡大するどころか、むしろ縮小する方向でしょう。日本の株価があまりに脆弱な動きしかできないからです。
ではその為替、強烈な円安になっているのは、米MMFの動きをみるとロングが減ってショートが増えた。つまり買っていた投資家が売り、売っていた投資家が買う、その二つが同時に起きているため、円の弱さが突出しているのです。しかもまだロングの投資家がやや多い。つまり円売り、ドル買いの余力はまだ残っており、今後のポジションの組み方次第では一段と円安になることも想定されます。

しかも日本のミセス・ワタナベと呼ばれる為替投資家は、110円を前にかなり円売りのポジションを組んでいたとみられ、得意の逆張り戦術により、多大な損失を被っている恐れも出てきています。逆に損切りの円買いが出てくると、さらに円安水準になる可能性もある。111円に近づいて帰ってくる週初は要注意なのでしょう。
しかし問題は、このドル高が果たしてつづくか? です。米経済が堅調、FRB利上げ接近、トランプ政権で財政の大盤振る舞い、実は最後の項目以外、すべて織りこみ済みのはずです。しかし今の取引の中心材料は『方向性』。最後の項目が付け加わっただけで、利回り上昇、ドル買いの方向性を好感する。それを補完する材料には注目し、それ以外の材料は無視します。イエレンFRB議長の利上げ示唆発言なども同様で、市場ではすでに規定路線であるにも関わらず、その材料で110円を抜いてくる。今はその流れにつく、という意味では外国人投資家は極端な順張り、とも言えるのでしょう。

ただし、外国人投資家があまりに急激にポジションを組替えているため、今の市場は水準感を失った状態とも言えます。冷静さをとりもどすと、PERの高さなど株価水準でさえ首をかしげますし、為替も金利差以外の条件が抜けたまま、円安に傾いてしまっている。この順張りが転換するのは、要人発言などの材料があれば意外と脆い、とも言えるのでしょう。安倍-トランプ会談、選挙のときと別人、日本のことをよく勉強した、というのなら、選挙時の発言をそのままうけとって動いている市場が、間違いともなるのでしょう。何が正解か、最近では大きな世界的な出来事に、動物占いをすることも盛んですが、少なくとも日本のポチ予想はアテになりそうもない、ということだけは確かなのでしょうね。

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2016年11月18日

安倍首相とトランプ氏の会談

安倍氏が米次期大統領であるトランプ氏の自宅を訪問し、会談を行いました。しかしオバマ米大統領から、2つの政府があるような印象はよろしくない、との苦言をうけ、自宅訪問したのならスーツでなく、私服がよかったのでしょう。これまでも日米首脳会談後、別荘に招かれた際は私服で、ということがありました。スーツで表敬訪問となれば、どんなにイイワケしてもビジネスライクな関係にしか見えません。特にゴルフ用品を贈り合ったのですから、ゴルフウェアでよかったのかもしれません。
会談の中身については話せない、とし「私の基本的な考え方を話した」と、安倍氏は述べています。しかしトランプ氏の孫の話からはじまった、とする会談は予定の45分を越えて90分になりましたが、政策の細かい話はしていないでしょう。ナゼなら、トランプ氏は国務省や国防総省と一切調整していない、といいます。つまり何も知らないに等しい。国家安全保障補佐官に、会談にも同席したマイケル・フリン元国防情報局長官に打診、と伝わりますが、フリン氏も細かい数字や内容まで記憶してはいないでしょう。しかも、フリン氏は会談中、一言も喋っていないと伝わります。つまりトランプ氏はフリン氏から軽くレクをうけただけ、の状態であり、細かい話ができる状態ではありません。

しかも安倍氏も同様、官僚からうけたレクをそのまま話すことはできますが、自分の言葉で伝えるのは頗る苦手です。答弁は画一的で、同じ説明しかしない。つまりこう考えています、とやんわり伝えるぐらいしかできなかった可能性が高い。もしくは全く、何も伝えずに雑談で終わった可能性が高い。ナゼなら当選した相手に、いきなり選挙公約を破ってくれ、などとお願いするのは、グレートな友人関係とは相反するからです。
つまりトランプ氏の孫の話、ゴルフの話、国際的な会議などの話、そして日本の話など、通訳を除いて1時間ぐらいで話をしたとしても、中身をつめることなど到底できない。安倍政権としては、まず初めて会う、という実をとったので、後は親密さを深める。それが戦略なのでしょう。だから会談後の会見で「信頼関係を築いていける」と述べた。つまり信頼関係が築けた、ではなくて徐々に信頼を得るための努力をつづける、という意味であって、信頼を築くためには国益をむきだして論戦することなどできないのです。信頼を得るまでは政治に関係なく、共通の趣味などを話そう、ということなのでしょう。早くも次の会談をセットするよう、安倍氏が指示したと伝わるのも、数をこなして雑談をくり返すことが信頼を得る手段、と見定めたかのようです。

トランプ氏が米紙から袋叩きにあっているようですが、情報を一切ださない。会見もしないのでは仕方ない面もありますが、トランプ氏としては、日本のアベが喧伝してくれるから自分でやる必要がない、といったこともあるのでしょう。オバマ政権に配慮して…というイイワケができる点も大きい。記者会見をするか、コメントでもだせば、自分の手の内をさらすことになる。ツイッターで友好ムードさえ演出しておけば、今後も各国の要人から敬遠されることもない。この辺りは極めてビジネスライクでありながら、上手い手法だといえます。
困ったのは日本です。恐らくトランプ氏から引継ぎもない、何も決めていない、と言われてTPPの感触でさえつかめなかった。可決していいのか、再交渉を見すえて可決せずに見送るか、その判断に悩みます。在日米軍の負担問題も、日本では世界の各国からみて、日本の負担は大きい、と盛んに喧伝されますが、トランプ氏にとって何の関係もない。日本が負担している割合が高かろうと、だせる国はだせ、という態度がこれまでの発言からもうかがえる。下手に今の『日本の負担は大きい』キャンペーンが広がり過ぎると、いざ経費負担の再交渉になったら、日本は世論からも妥協できなくなります。国民をこんなに負担しているから、これ以上増やさなくて済むはずですよ、などと誘導し、落ち着かせようとすることが逆回転を起こしかねなくなるのでしょう。トランプタワーでの会談、安倍氏にとっては、まさにトランプのカードを三角に積み上げてつくる、トランプタワーの如き心境だったのかもしれません。軽く風が吹いたり、バランスを崩せばすぐに崩れてしまう。「二人の都合いいときに再び会い…」その「都合のいいとき」が来ない恐れ、そんなことに怯えているからこそ、早くまた会いたい、になっているのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:36|PermalinkComments(14)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アメリカ

2016年11月17日

日銀による指値オペ

日銀が初の指値オペを行いました。残存期間が1〜3年物を0.090%、3〜5年物を0.040%に固定する形で、国債を無制限に買い入れる仕組みです。しかし午前は利回りが大きく上回っており、応札なし。後場も応札無く終わりましたが、短期的にこの金利が、日銀が描いているイールドカーブのターゲットとして、市場に意識されるようになりました。しかし指値オペとは無関係の長期金利が急低下し、トランプ相場で急騰していた長期金利を落ち着かせる効果はあったようです。
ただ問題は、実際にこの金利水準に近づいたとき、でしょう。さらに利回りが上昇し、日銀のターゲットに近づくと、日銀トレードも出てくるでしょう。また短期金利を固定してしまうことで、長期金利が上昇をつづけるなら、結果的にイールドカーブが崩れてくる。そうなると長期まで指値オペで対応するのか? 日銀の資産買取枠は一気に埋まり、発行されている国債の大半を買い占めてしまうことになりかねない。無制限の買い、これを一部では黒田バズーカならぬ、黒田バキュームと呼びます。つまり市場から国債を吸い尽くしてしまう、という意味ですが、黒田バキュームが度々発動されるようになると、日本にも黄色信号が灯ることになりますし、この日銀の対策は、世界から非難されるかもしれません。バキュームカー、というと日本では汲みとり式のトイレなどの汚物を回収する車をさしますが、かつては悪臭を撒き散らしながら走るため、すぐに気づきました。ニュースではほとんど扱われませんが、その悪臭に気づいたときは手遅れなのかもしれません。

しかし疑問は、安倍首相の訪米と同時にこの対策が打たれた点です。トランプ氏は「日本が不当に円を安くしている」と主張しており、日銀が国債市場に介入することを快くは思わないでしょう。まさに今日、108円前半に突入するか、とみられる直前の指値オペの通告により、ふたたび109円台にもどりました。「不当に円を安くしている」まさにその言葉通りのことを、日銀がしてしまったわけです。
最近のメディアでは、実は安倍氏はトランプ氏と馬が合う、などとやたら語られる機会が多い。言葉は悪いですが、どうも「会っても怖くありませんよ」と、怖気づく安倍氏を慰めているようにしか聞こえない。実際、クリントン氏に肩入れしたり、麻生財務相がトランプ氏に対して悪態をついたり、日本政府はトランプ氏に対して好かれるような行動を、一切してこなかった。人見知り気味の安倍氏が、二の足を踏むのも当然でしょう。恐らく今晩の会談でも、円満だったとの話が喧伝されるのでしょうが、よほどのことがない限りいきなり敵対することもないので、当然といえば当然です。

しかし問題は、株や国債に介入する日銀、ひいては為替にも影響することを平気でする日本が、保護貿易の危険性を訴えたところで、笑い者にしかならない、ということです。関税をなくしても、中央銀行に市場介入させて為替を安くし、競争力をたもつ。まさに日本が保護主義をとっているではないか、と。そして、こうした行為は経済規模の大きさによって影響力も変わりますから、米国が同じ手を打ったら、一気にドル安がすすみかねない、ということにもなります。「安倍、いいことをやっているな」などとトランプ氏が言いだしたなら、為替の急変動すら起こりかねなくなる。禁断の手は、一国だけが打っていたら効果もありますが、複数の国が同時に行ったら、効果はなくなってしまうものです。
むしろこんな手法もあります…と、米国に手土産としたのなら、TPPを発行しても米国はこうやって儲けられます、ということを示したかったのかもしれません。黒田バキュームの悪臭、世界にそれが蔓延し、その悪臭に慣れてしまって気づきもしなくなったとき、世界の危機は深刻化することにもなるのでしょう。もう『水に流せない』レベルにまで、中央銀行の暴走は近づきつつあるのでしょうね。

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2016年11月16日

年金と富の集中と

年金受給資格を10年に短縮する改正年金機能強化法が参院で可決、成立しました。しかし本来、年金を資産として考えるなら、1年でもかけたら受けとれるのが当たり前です。積み立て保険とて、途中解約しても積み立て分はもらえ、全額没収などしたら非難されます。25年を10年に短縮したことは一つ前進ですが、年金をどう捉えるか? 今回とて、国民年金を10年払っただけの人は16000円程度しかうけとれないので、生活保護でうけとっていた分の一部が年金に置き換わるだけ、なのかもしれません。
野党が年金カット法案と糾弾する改正案では、物価上昇と賃金下落が同時におこったら、年金はカットする、という中身であるにも関わらず、そうならないようにする、と安倍政権は説明します。しかし今、1週間で8円も円安となり、悪い物価上昇がおこりそうな気配があり、今日は安倍政権が経団連と会談し、賃上げ要請していますが、これまで安倍氏の飼い犬とすらよばれている榊原会長も、傘下企業の反発をうけてか、苦言を呈する場面がありました。今期とて減益決算がめだち、来期も不透明な中で賃上げなどできるはずもない。円安で物価上昇、景気悪化で賃下げ、まさに来年はそんな状態に陥る可能性があるのです。円安しか安倍政権の目ぼしい成果はありませんが、円安による弊害の面が、実は物価上昇と賃下げが同時におこる点にある、とも言えるのでしょう。

安倍氏はTPP参院特別委員会で、TPPが発効されないとRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に、軸足が移るとして、日米が主導したTPPが望ましいとしました。その中で最大の経済規模は中国だから、中国が主導権を握る、とも述べています。しかしそうなると、TPPで最大の経済規模をほこる米国がTPPを主導したことになり、RCEPでも日本の国益を主張できないならTPPでもできていない、となります。TPPを日米が主導したなら、どうしてRCEPを日中で主導する、とならないのか? そもそもTPPですら日本が主導的立場にあったとはいえない、と考えますが、RCEPで肩身が狭い思いをするのは、米国の一本足打法で外交を展開してきた安倍政権の限界を示す、ともいえるのでしょう。
しかもトランプ氏に自由貿易の大切さを訴え、一部の人に富が集中しない仕組みをつくることが大切、とします。しかし今は一部の人に富が集中する仕組みなので、もしそうなら内容を再交渉しなければいけない、となる。今、批准にむけて協議すること自体が虚しくなります。自由貿易は、それを上手く活用した者に富が集中する。そしてそれができるのは巨大資本という構図に国民が気づいたからこそ、保護主義が台頭しているのであって、逆に富が集中しない仕組みの入ったものは、すでに自由貿易ではない。規制貿易とも云うべきであって、結果としてこの二択は成立しないのです。

今の円安、株高も一部では年金資金など、ロングの流入が観測されるといった話も聞かれますが、個人的な感触としてはそうしたものは入っていない。原油高に誘導していた某米系の金融機関が、原油価格の誘導に限界を感じて撤収、その資金をトランプ期待を煽って株式に流入させている、といった傾向もみられます。原油価格が下落しているので、ふたたびオイルマネーは資金を引き上げる可能性があり、その前に一暴れしている印象しかうけないのです。
しかも一週間で8円も為替が動いても、日本政府は動かない。すでにファンダメンタルズを無視し、暴走しているにも関わらず、日本政府は『急激な』動きですら、規制できない。金余りという減少を生んでいる、日銀の政策すら放置している状態では「富が集中しない仕組み」など、日本が率先してできるはずもありません。日銀は金融機関による不動産投資への貸し出しが伸びている、などと成果を語りますが、国民の大多数は低金利といえど借りていない。むしろ投資案件として、住宅や賃貸などへの投資が拡大しているのですから、日本は未だに富が集中する仕組みの渦中にある、ともいえるのです。

しかも日本では、年金が容易に減ってしまう仕組みがある。自国で富が偏在する仕組みはそのままに、他国には富が集中しない仕組みをつくろう、という。そんな言葉が響くはずもありません。安倍氏の語る薄っぺらな経済理論、ビジネスマンともされるトランプ氏がそれで靡いたら、ある意味で日米ともに先行きは暗いのでしょう。言葉は悪いですが、会談にむけて出発する安倍氏、トランプ氏の愚かさ加減を計りにいくのでなければ、富が集中しない仕組み、という保護主義的主張で、トランプ氏と衝突することになるのかもしれませんね。

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2016年11月15日

露国閣僚の更迭

露国のウリュカエフ経済発展相が、国営石油会社ロスネフチから収賄をうけたとして、身柄を拘束されました。日露経済協力として、世耕経産相と会談してから2週間と経たないうちの急展開であり、日露交渉にも影響することが確実です。露国では珍しいことですが、現役閣僚はプーチン氏の配下であり、よほどのことがなければ捜査はされません。政権への打撃となるからですが、それがこのタイミングで捜査をうける。良い観測ではありませんが、これが山口会談にプーチン氏が手ぶらでくる、理由になるのかもしれません。
そもそも安倍氏がここで山口会談を開くのも、日本側が提示した経済協力8項目に、露側が興味を示した。そこで一気呵成、とばかり安倍首相が前のめりになった、という事情があります。しかし露側も詳細に検討したところ大した効果もなさそうだ、と判断したとするなら、当初の興味を示すような判断を下した人物に、責任転嫁をする。もしウリュカエフ氏がそうであったなら、日露交渉全般の責任をとらされた可能性が高いのです。そして露側は新たな交渉担当を配して、さらなる増額を要求。そんなシナリオが想定されます。

露国で収賄など、日常茶飯事でしょう。権力の集中がある国では、須らく権力に対しては様々な誘惑も働きます。しかも、収賄などがあっても政治権力の弱体化を避けるため、報道も規制され、逮捕もされない。それが逮捕されたのですから、政権に何らかの状況の変化があった。それはもしかしたら、プーチン大統領と、米国の次期大統領・トランプ氏との電話会談であったのかもしれません。トランプ氏が親露的であれば、クリミア侵攻以来の悪化した関係は改善され、経済制裁は解除される。日本からほどほどの支援をうけてもあまり喜べない。もっと吊り上げるためには…それが今回の逮捕の引き金となった、そう考えるのが、極めて合理的でもあるのでしょう。
露国にとって都合いいのは、原油価格がふたたび下落傾向にあっても、経済制裁が解除される。これは米国に親露政権が誕生するよう、WikiLeaksまで駆使し、クリントン氏の中傷に加担した露国の勝利でもあります。そして米国が親露に転換したからには、日本に特典を与える必要もなくなった。領土を奪われるぐらいなら、一閣僚の首をとばすぐらいはやってのける。それが露国でもあるのでしょう。

しかも悪いことに、安倍氏の訪米直前。もし仮に、米露が電話会談で日本包囲網を組んでいたとしたら、トランプ氏は安倍氏に「露国の発展のためにもっと負担を」と言い出しかねないのかもしれません。夕方から露国との小規模会合をくり返し、着実な進展を確認、などともされますが、『着実』であって『迅速』でない以上、それは遅々としてすすまなくとも達成可能な目標、ともいえるのです。
安倍氏とトランプ氏と、馬が合うのでは? などと期待を語る人もいます。しかしトランプ氏は保守ではなく国粋主義、その上で大事なのは自国を如何に利するか、尊大さを示せるか、です。つまり組める相手とは組むけれど、下にみる相手は徹底的に攻撃する、もしくは毟り取る、です。米国にとって、露国とは組むけれど、果たして日本がその対象となりうるか? 大いに懐疑的ともいえるのでしょう。

露国も同じです。米国と組んでおけば、別に日本と直接交渉する必要はない。米国から後押ししてもらえれば、すぐに日本は首を縦に振るのですから。よく「米国にとって日本は重要だ。なぜならこれほど従順な国はないから」などと語る人がいます。しかしその関係は子分であって、友人にはなり得ません。友人なら困っていたら助けてくれるかもしれませんが、子分なら都合が悪ければ切られるだけなのでしょう。トランプ効果により、日本の外交の行き詰まりが一層鮮明になるのかもしれません。
しかし日本では、TPP担当閣僚が贈収賄の疑惑をむけられても、何ら説明もなく、起訴もされずに終わりました。露国のように、国益のためなら閣僚の首も飛ばす国と、どうやって立ち向かっていくのか? 国粋主義者同士が鼻をつきあわせても、結果として自国の立場を強く主張できた者が有利になるのです。数少ないおトモダチだから、と守ってしまうような一国の元首では、冷徹に立ち向かうこともできないでしょう。馬が合う、どころか、ハナムケ(旅立つ人の馬の鼻を、行き先に向けた)すら贈られかねないほど、窮地に陥ることになるのかもしれませんね。

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2016年11月14日

7−9月期GDP速報値とトランプ効果

日本の7-9月期GDP速報値が発表され、実質で0.5%増、年率換算で2.2%増と高い成長を示しました。しかしデフレで若干の押し上げ効果もみられ、名目で0.2%増、年率換算で0.8%増となっています。はからずも安倍政権で提唱していた「インフレで成長」ではなく、「デフレだから成長」となったわけで、それを示すGDPデフレーターは前期比0.3%減、前年同期比でも0.1%減。安倍ノミクス、黒田バズーカが打ち出されて以来、初のデフレーターがマイナスになったことで高成長、ということです。
しかも内訳でみると実質で内需が0.1%、外需が0.5%ですが、名目だと内需が-0.1%、外需が0.3%増。つまり内需は名目ベースでは縮小していることもうかがえますし、さらに民間住宅が実質で2.3%増となる中で、消費も設備投資もほぼ横ばい。内需の伸びはほとんど住宅投資ともいえます。しかもローン金利の低下をその理由に上げるところも多いですが、節税対策の賃貸住宅の建設が目白押しで、借り手もいないのに賃貸ばかり増えている状況です。一部には、東京五輪などもあり、外国人旅行客目当てで民泊の拡大をにらんだ動きもあり、今後はカラの住宅が増えるのかもしれない。今後は賃料の低下や、住宅価格の下落に備えないといけないのかもしれません。

輸出入の動向をみると、輸出は実質2.0%増、名目0.5%減。輸入は実質0.6%減、名目2.4%減。輸出デフレーターは2.4%減、輸入デフレーターは1.8%減ですから、それが実質を押し上げた形です。つまり実質でみると、このデフレーターの低下が大きく寄与しており、かつ内需の低迷によって輸出の伸びとの差が開いた。このことが外需寄与度の高さにつながった面があり、結局のところ内需の低迷とデフレによって、高い伸びになった、というのが7-9月期GDP速報値の実態でもあります。
しかも問題は、その外需が好調である原因です。中国の10月の不動産投資が前年同月比13.4%増と、1-10月を通してみても6.6%増と、高い伸びを示している。米国の不動産市場もすでにリーマンショック時の価格を越え、さらに伸びている。つまり今、世界は株や不動産がバブル的に高くなり、その資産効果で支えられている、という形が鮮明なのです。どの国でも、不動産バブルを抑制しようとすれば、経済的打撃が激しく、踏みこめない。市場が暴走をつづけ、一体どこまで行くのか? 誰もそれが分からないまま、ただ買うから上がる、上がるから買う、の循環の中で幸せな環境にある、と言えます。いつか、その循環が止まったとき、暴落という道を歩むのでしょう。

今日の株価も上昇しましたが、円安をみた動きです。しかもこの円安、日本経済が予想以上の成長を果たし、かつ輸出が高い伸びを示しているのですから、本来は円高に動くはずです。今はリスクオフで円安、などと語られることも多いですが、実際には異なるでしょう。トランプ効果で金利差が拡大している面もありますが、ヘッジファンドなどが戦略転換を迫られている。これまで日銀の金融緩和に限界が来て、規模が大きかったので引き締めも早い、とみて円買いに傾いていたものが、そのポジションの縮小を迫られている。トランプ効果の最大は、今は米国債の金利急上昇、という本来であればマイナス面の多いことであるにも関わらず、今は良い面しかみない。債先売/株先買のポジション構築と、金利差をみた外為取引、というごく一般的な取引を構築している状況が、この株高を生んでいるともいえるのです。
しかし米金利の急上昇は、当然不動産投資にも影響する。しかもこの急上昇は、駆け込み需要さえ許さないほどの速さであり、下手をすれば数ヵ月後、不動産市場の急変などとして数字にでてくるかもしれません。ただでなくとも不動産市場の好調さで、消費が支えられているのが現状で、その数字には重大な意味をもってくるのでしょう。今は良い面しかみない、そんな市場がそう長続きするはずもありません。世界で、カラの住宅が増えていく可能性も含む今回の動き、トランプ効果などともされますが、土乱富(土地が乱高下し、富が失われる)効果として現れるのだとしたら、ある意味で今の動き、崩壊前の最後の宴的な気分で味わっておくのがよいのかもしれませんね。

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2016年11月13日

雑感。日米関係の変化

スーパームーンの前後は地震が多い、とされていますが、NZでM7.4クラスの地震がおきました。月の潮汐力により海ばかりでなく、マントルでさえも満ち干きをしているのなら、必然的にその上にのる大地も揺さぶられる。目に見える変化ばかりでなく、目に見えないところでも何がおこっているか、見て行く必要があります。

米国ではオバマ政権がTPPの成立を断念しました。これまでは新大統領の就任までに、オバマ氏がレガシーとして通す、議会もみとめる、という意見が日本ではありましたが、これで完全にそんな説は却下されたことになります。しかしもう一つ、カーター米国防長官が12月に来日するのに合わせ、日米地位協定の捕捉協定に、年内署名を日本側はめざしています。ただトランプ氏の下、在日米軍の扱いすら変化しようとする中、地位協定の捕捉協定をオバマ政権下でむすぼうとするか? オバマ政権のレガシーにもならず、かつ後任のトランプ政権の足枷ともなりかねないものを、わざわざこのタイミングで結ぶかどうかは不透明です。
安倍政権としては成果ですが、オバマ政権には何のメリットもない。かつオバマ政権はブッシュ政権から引き継ぐとき、きちんと整理された形で引継ぎをうけたことを感謝しており、トランプ政権にもそうしようとしています。そんなオバマ政権が、わざわざ混乱を来たすようなことをするか? これは米軍属への対象範囲を縮小するというものであり、いくら軍属とはいえ、米軍の権利縮小に関わるもの。トランプ政権誕生は、その意味でも難しい様々な要因をはらんでいる、ともいえるのでしょう。
一方で、日韓でも軍事情報包括保護協定の合意にむけ、明日にも協議を開きます。しかし安全保障上の機密情報を共有する相手が、一民間人に国政への介入をさせていた。日本側から今はその時期ではない、と言うべきかもしれません。ほとんど米国から、日韓はもっと協力しろ、と云われたから結ぶようなもので、情報管理の信用できない相手とも情報の共有が必要なのか? 今一度考え直すべきでもあるのです。

岸田外相は、安倍―トランプ会談で「日本の立場を先手を打って伝えていく」と述べますが、伝えた結果、むしろ在日米軍の駐留経費を全額日本負担で、との結論になるかもしれない。正直、先手が効果をもつわけではなく、しかも安倍氏はこれまでも国内で反対する勢力を説得する、ということは回避してきた。むしろそういう相手を嫌悪し、まともな答弁をしなかったり、攻撃したりしてきたのです。そんな人物が、いきなりトランプ氏を相手にして、説得上手になるとは到底思えない。トランプ氏とて、いきなり日米で険悪ムードになる、などという愚は犯さないでしょうが、むしろ今週の会談次第で、米国の対日戦略を練り直すことにもなりそうです。
日本はこれまでの日米関係をつづける、ことを望みます。しかし米国の情勢が変化している、世界の情勢も変化している、そんな流動的な環境で、これまでと同じ、ということはあり得ない話でもあります。岸田氏は「日本の考え方をインプット」と述べますが、そのアウトプットは何ら保証されているものではありません。月と地球とて、常に隣に合っても近づいたり、遠ざかったり、をくり返します。日米関係だけ同じ距離感を保とうとすると、その裏側で溜まった負のエネルギーがある日、とんでもない影響を及ぼすこともありうるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:34|PermalinkComments(17)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2016年11月12日

日印原子力協定と、軍事

南スーダンで、PKO部隊からケニアが撤退します。民間団体が救援要請した際、UNMISS(国連 南スーダン派遣団)が動かず、それについてケニア出身の軍司令官が更迭されたことへの抗議です。ケニア軍はそこそこの規模があったので、それが撤退するのは大きな痛手でしょう。しかもその出来事は、南スーダンの国軍が暴徒化したもので、今後もそういう事態が多発するかもしれない。自衛隊の駆けつけ警護が適用されることになりましたが、そういう事例がいつ起きてもおかしくありません。
すでに内戦状態とみられるのに、未だにそれを認めない日本。衝突という言葉で誤魔化せる時間は、そう長くはないでしょう。問題は国連から要請された際、出動しなければ今回のケニア司令官のように、何らかの懲罰的なことがあるのか。それ次第では自衛隊員への犠牲か、懲罰か、その選択を迫られる場面がでてくるのかもしれません。

UNMISSにも参加するインドと、日本は原子力協定を結びました。核拡散防止条約(NPT)にも参加していないインドに、原発を輸出できるわけですが、インドが核実験などをした場合には停止する、としながら協定には入れていない。平和目的に限定する、としながら罰則規定もない。言ってみればお手盛りで、インドが核実験を行ったら日本から協定終了の手続きができる、としましたが、言ってみれば核実験を行ったり、軍事転用された後で協定を停止しても時すでに遅し、となります。
かつてNPTに参加していない中国や仏国とも、原子力協定をむすんだことがある、としますが、時代背景が異なります。北朝鮮が核保有国入りをめざし、NPTが形骸化する中で、さらにNPT非加盟国に原子力技術を輸出する。そうなればNPTを脱退する国が新たにでてくるか、加盟していても核保有国をめざす国がでてくるかもしれない。それこそトランプ氏などは日韓も核武装を、と述べているぐらいです。世界は核拡散時代に入るかも知れず、そんな動きを原子力協定は助長しかねないのでしょう。

安倍政権がここまで原子力ムラに配慮するのも、今井内閣総理大臣秘書官の影響、とされます。安倍政権が財務省の頚木をはなれ、消費税再増税を延期できるのも、今井氏が経産官僚として財務省の影響を排除できるから。『ご説明』と称して財務官僚が増税の必要性を説いても、同じ官僚である今井氏がそれを見抜いてしまう。経産省が福島原発の賠償費用や、廃炉費用を国民に負担をおしつけることでさえ、安倍政権では堂々と語られるのも今井氏がいるから、とされます。原子力協定も同じ延長上にあるのでしょう。エネルギー畑を歩いてきた今井氏は、今や原子力ムラの村長のような存在です。安倍氏が今井氏を頼り、今井氏がその力をふるう以上、日本の原子力政策は国民犠牲、諸外国の迷惑など顧みない形ですすめられる、とさえ言えるのかもしれません。
14日はスーパームーン、月が地球に大接近する日です。地震も心配されますが、噴火も警戒されるところかもしれません。それは日本に限らず、世界全体も同様です。そして地球が変動期に入っているのだとしたら、原発ばかりでなく、核兵器の安全な管理ですら、風前の灯かもしれないのです。トランプ氏が核のボタンを握り、その脅威にさらされる国が増える。世界に極右政権が誕生する、その勢い、先鞭を米大統領選がつけたのなら、ますます世界は不安定化していく。不安は恐怖を生み、そこから逃れようと核武装にはしる国が続出するのかもしれません。そんな折、日本がそうした流れも読まず、原子力協定に前向き、というのは世界にとってもリスクになるのかもしれないのです。今井氏は「1億総活躍」というキャッチフレーズの生みの親、とされます。しかし日本の原子力政策に関してみれば、すでに70億人を越えた、とされる世界の人口、「70億総迷惑」にすらなりかねない、とさえ言えるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:17|PermalinkComments(23)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 原子力

2016年11月11日

景気ウォッチャー調査と株価

米大統領の最中、日本で発表された10月の景気ウォッチャー調査で、4ヶ月連続の改善と示されました。あれ? と思ったら、10月から季節調整値に変更とのことです。要するに、これまで総合DIを算出してから季節調整としていたものを、項目ごとに季節調整値を算出し、それを総合するという形であり、こうすると4ヶ月連続の改善、となります。しかし例えば小売関連の数値は、季節調整値では47.0、原数値では42.0、月ごとの方向感はほぼ同じようですが、数値のブレが大きくなり、従来よりも変化を追いかけるのは大変です。
また偶然かもしれませんが、季節調整値は原数値と比べて、半年前はより低く、直近はより高くでる傾向がある。それはこの時点で、原数値から季節調整値へと、評価基準を変えるには都合よかったのかもしれませんが、しかしこうして10月の数値ばかり高くすると、今後の数値はそれ以上にならないと悪化の判断を下さざるを得なくなる。年末解散を考えていたから、年末の経済指標を高くみせかけたかった? とも勘繰れますし、そもそも景況感を訊ねるアンケートで、季節調整が必要か? という疑問もある。おかしな調整などせず、シンプルに数字を出してもらった方が、利用価値は高いはずです。どうにも政府の行うことは、ちぐはぐな感じがします。

しかし景気ウォッチャー調査で気になるのは、小売がやたら好調という回答が目立つ点です。9月の天候不順で、関東では生鮮食品が高騰、原油価格もじわりと上昇しているためガソリンも上昇。小売には好材料がなかったにも関わらず、何が押し上げたのか? 正直分かりません。企業関連をみると、荷動きが悪いとの回答もある。10月の株価は堅調でしたが、投資家層の裾野が小さい日本では、それほど小売に効果ないでしょう。何で小売が堅調だったのか? もしかしたら地元密着型のプロ野球チームによる日本シリーズ対決だったのなら、その効果は驚異的といえそうですが…。
10月は好調だった株式、11月は乱高下していますが、トランプショックを乗り越えて一時日経平均は17500円台を回復しました。しかし実はドルベースの日経平均でみると、10月は164〜167$程度で動いており、今日の106円台で17374円というのは、その水準を下回る。つまり外国人投資家には値下がりに見え、日本株は弱いとなる。今はトランプ銘柄への乗り換えが活発ですが、トランプ効果でもっとも弊害をうけるのが日本なのですから、外国人投資家からみれば当然の動きにもみえるはずです。

外国人投資家からも、安倍ノミクスはTPP頼みとされていた。TPPが発効されない今、安倍ノミクスはふたたび円安頼みとなりましたが、その円安もいつまで続くか? 今日はマイナーSQの算出日でしたが、17596円と高く寄り付いたことで、上値抵抗ができてしまった感もあります。トランプ勝利で円高、とみた投資家が、円安に動いたことで慌てて売り、ストップロスを巻きこんでここまで円安になりましたが、今後の動きはより経済の強弱に左右され易くなるのでしょう。
保護主義は悪、グローバル化をめざすべき、と安倍首相は語りますが、世界各国が保護主義に陥る場合、最後までグローバル化、市場開放を訴える国は、実は狙い撃ちにされる可能性も高まるのです。グローバル化は世界全体が同一条件になるから意味があるのであって、斑模様になったときは保護主義が強く、グローバル化をめざす国が負けるケースも増えるのです。あくまでトランプ氏がどんな政策を打つか、にもよりますが、米国が反グローバル化をめざすときは、日本も早期に保護主義に移行しないと、根こそぎ日本の富を奪われる可能性も否めなくなります。そんな中、TPPを通して「自由貿易をリード…」などと夢物語をかたる安倍政権。日本の弱さをみた円安、ドルベースでみた株安、というのなら、この値動きには要警戒でもあるのでしょう。そうなるのはまだ先の話ではありますが、米大統領選でも見通しの甘さを露呈し、世界の趨勢も読みきれているか、懐疑的にもみえる安倍政権。季節調整値などでも調整のつかない、世界の動きをつかめないのなら、グローバル化どころか、愚弄されるばかりか…、になってしまうのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:31|PermalinkComments(5)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 

2016年11月10日

トランプ氏勝利のその後の動き

読売が2つの大失態を犯しています。心臓疾患を患う甥のために基金を募るとして記者会見をした女性。その主幹事が読売で、読売、産経など一部のメディアが記事として紙面に載せました。しかしそれは詐欺で、読売がまんまと詐欺に利用された形です。他のメディアがとり上げなかったことからも、当初から疑惑があったにも関わらず、検証が不足していたのですが、保守系メディアのみとり上げたのが興味深い点です。
また『ヒラリー 女性大統領の登場』という本を出版すると、投票日前に告知。日本のメディアとしてはNHKと読売だけが同行取材を許され、生の声や今後の人事、対日政策まで分析し…と、新米メディアとしての面目躍如。まさに晴れの出版だったわけですが、トランプ政権誕生で、フライング発表がむしろ愚行になった。社説では米大統領選に恨み節ですが、読売の調査、検証能力の低下をはからずも露呈しました。

米大統領選のその後、の動きが注目されます。日本ではTPP関連法案が衆院を通過しましたが、これは委員会を強引に通過させた手前、宙ぶらりんでは政権の指導力が問われかねない。岸田外相の言葉「自由貿易を推進していくため、率先して…」と表現が変わったことでも分かりますが、安部政権の読みの甘さを、そうしたキレイごとのお題目で誤魔化すためのもの。17日には安倍氏自ら訪米し、会談するとしますが、昨日も指摘したように早くも朝貢外交をしに行くことになった。宗主国の顔色を伺いに行く形です。
株価は米国が上昇、円安も手伝って一気に日本も株高です。しかし今の米市場には多くのウソが含まれる。トランプ氏の主張の良い面しかみておらず、これは今年Brexitと2度も予想を外した、となると市場が見限られる恐れがあり、全員がトランプ氏でも良いことあるさ、と奇妙な合意を得たことで生まれたものです。FRB理事にタカ派を送りこみ、利上げ加速との観測もありますが、トランプ氏は「不当に金利を低く抑え、オバマ政権を利している」と述べていたのであって、自身が大統領についたら「金利を低く抑えて当然」と言い出すことが必然です。安倍ノミクスを評価している、とも伝わることから、財政出動と金融緩和、それに安倍政権ではできていない減税によって経済をもち直す、というのがトランプ氏の経済政策でしょう。つまり強烈なバブル化策になるはずです。

今は金利差拡大をみて円安に動いており、これには円買いをしていた投資家が、慌てた面も含まれます。しかしトランプ氏は製造業の復活を約束した、ということは必然的にドル安志向であり、それも金融緩和に動きやすい側面がある。日欧は金融緩和の余地がなく、米国には緩和の余地がある。それをみれば金利差は戻るどころか、むしろ縮小する方向になるはずで、それを織りこんだときは100円割れが見えてくるのでしょう。
勝利宣言で、トランプ氏がプロンプターをつかったことが話題ですが、ということは評価されたあの演説は原稿を読んだだけ。本音は異なるところにある、となります。つまり信用はおけない。それなのに市場が信用した、という。この点も市場の劣化ではあるのでしょう。誰もが「読み誤った」と言いたくないから、今はハッピーな印象を強くうちだす。しかしいつか、誰かが「王様は裸!」と言わないといけない。それまでは正直者には見ることのできない、美しい衣を着た米国の姿、という仮相の王様をみつづけないといけないのかもしれません。

今は誰もが「自分たちは負けていない」と、必死で表向きは平静を装おうとしています。しかし裏では誰もが慌てふためき、失敗を覆い隠そうと走りまわっている。その中で、最も慌てているのが『従来の米国』と、良好な関係を築いてきた人たち、なのです。そこには市場も同様なのでしょう。そのショックを織りこむのはしばらく後、ただそのハッピーな期間は長続きはしないはずです。これまでは、巨大な米国が動じなければ世界は安泰であったものが、その米国が動揺している。そしてまた、米国以外が動揺することでも、米国はもう支えきれない。分裂した米国が示すもの、それは米国が小国化することでもあり、その影響は今後計り知れないともいえるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:18|PermalinkComments(6)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2016年11月09日

米大統領選はトランプ氏勝利

米大統領選、トランプ氏の勝利となりました。FBIが訴追せず、となってクリントン氏優勢との見方もありましたが、個人的にそうみてはいませんでした。それは女性問題が発覚してから『トランプ氏=嫌な奴』となっていたものが、メール再捜査で『クリントン氏=悪い奴』としての印象が、ふたたび米国民に芽生えたためです。これは訴追されれば最悪ですが、訴追されずとも裏でFBIと取引したのでは? 民主党政権が手を回したのでは? との印象をもたれることでもそうです。それだけ、あのFBIによる再捜査は大統領選に影響したのであって、誰がほくそ笑んでいるのかは気になるところです。

市場はこれでBrexitと同じ間違いをくり返しました。民意を読みきれていない、これはメディアも同様ですが、市場もメディアも、言ってみれば富裕層の側です。明日をも知れない生活をしている人にとって、市場もメディアも触れる機会がない。格差が拡大していけば、必然的に彼らの影響力も弱まり、誘導しようとする世論が多数ではなくなる。そして富裕層のそうした楽観的見立て、誘導しようとする先が、また庶民の怒りを買う。その連鎖の中で、結果は予想を大きく覆した、となるのでしょう。
その市場、アジアでは大混乱ですが、欧州市場に移ってから落ち着きもみられます。トランプ氏の勝利演説が穏当なものだったから…とのことですが、これからトランプ氏の行う施策をみないといけない。何をするか分からない、手腕にも疑問、その不透明感は市場のもっとも嫌うところで、トランプリスクを嫌でも織りこまざるを得ません。もしトランプ氏が市場の期待に添うようなことがあれば、それは支持者の裏切りになるのですから、大統領選とちがう発言、行動をとるとは到底思えない。トランプ氏に変化を期待するのは虚しいだけですが、今の市場はそうした楽観を抱きやすい面もある。今は何とかもどしたとしても、トランプリスクは国内外で顕在化するものでもあります。

困ったのは日本が大きい。安倍首相が訪米した際、クリントン氏と会談するなど肩入れしたこともそうですが、最大の問題はトランプ氏が安倍氏と同じタイプの人間、ということです。味方に甘く、敵には徹底的に攻撃をしかける。日本では他の政治家や、メディアまで猫なで声ですり寄る点をみてもそうですが、トランプ氏にもそうやって猫なで声ですり寄らないといけない。これまでの米国は、そうやって従順な国には寛容でしたが、トランプ氏になるとそこに貢物も必要となります。話し合いが通用する相手でないのは、自身が他人の意見に耳を貸さない点をみても明らかでしょう。間違っている、正しくない、と言われても曲げるタイプではないのですから、在日米軍の駐留経費の増額、米農産物、工業品の輸入などの見返りをたびたび要求されるでしょう。
しかもトランプ大統領の下で、日本北方領土交渉がすすむのでは、などと伝わりますが、とんでもありません。トランプ氏は親露、嫌日であって、日本に貢献したいと思うはずもない。むしろもっと露国の発展に貢献しろ、との圧力がかけられるだけでしょう。日本にメリットが…などと考えない方がいい。そんな期待は、市場と同じで裏切られるだけです。むしろトランプリスクを最小にするよう、媚米路線をさらに深化させるのか、米国と距離を開けるのか。ただ、これまで米国の陰に入ることを是、としてきた安倍政権にとって後者は寄る辺すら失う可能性もあり、媚米にならざるを得ず、そのときは多大な貢物により日本の財政事情すら悪化させかねなくなるのです。

米国では議会選挙も行われ、上下両院とも共和がとりました。ネジレ解消ですが、共和党内にも嫌トランプはおり、議会対策がスムーズにすすむとは到底思えない。共和党政権で、議会も共和が多数なのに、打ちだす政策によってはレイムダックに陥る可能性喪高まってくるのでしょう。今後、トランプ氏が怖れるのは暗殺です。議会が混乱したり、利権団体に不都合な政策をうちだせば簡単に抹殺される、それが銃社会・米国です。なぜなら自分の身は、自分で守る。トランプ氏によりリスクが高まるなら、排除することさえ厭わないのです。この結果に誰がほくそ笑み、誰がほぞを噛むのか。それもまだまだ流動的であって、Trump氏が、Tramp(放浪者)を痛めつけるばかりで、富裕層の期待を裏切るようだとtroubleに巻きこまれ、自身がtrampled(酷い扱いをされる)ことになるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:19|PermalinkComments(23)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2016年11月08日

TPPと駆けつけ警護と、解散風

福岡の博多で、巨大な陥没事故がおきました。現在のシールド掘削技術なら、穴を掘りながら壁をつくっていくため、ほぼ崩落はおきません。しかし現場でそうした最新の掘削機械を投入していたのか? さらにそこに地下鉄の駅をつくるために、穴を掘るだけではなく、空間を広げる工事をしていたのかもしれません。しかし支柱が不足していたのか、想定以上の地下水で地盤が脆弱だったのか、いずれにしろ崩落がおきたのですから、工事計画全般の甘さ、が指摘されるところです。
岩盤がうねっていて分かり難い、ともされますが、道路の両脇にあるビルは高層なので、岩盤に杭を打っているはずですから、固い岩盤のある深さも分かっていたはず。むしろ岩盤のうねりより、それこそ駅にするために地上へと穴の位置を近づけ、そこで岩盤を突き抜けて地下水のある層に入ってしまったのではないか。脆弱な層でも地下構造をつくることは可能でしょうが、工法を変えなければいけなかった。やはり工事計画、全般の問題しか感じません。日本でもこうしたことが起こる…技術力を過信し、きちんと下調べもせずに工事をすすめてしまうことの恐ろしさを痛感させられます。

昨日もとり上げたTPP法案の採決延期、今日になったらその原因を自民党内の内輪もめ、という形で流布されています。野党との日程調整を重視する、大島衆院議長の顔に泥を塗った、というのですが、真に米大統領選前に決めることが国益だったなら、一人の面子になどこだわらず、さっさと決めてしまえばいい。これまで積極的だった安倍氏ですら、急にやる気をなくしたらしく、大島氏を説得しようともしない。野党に説明するより、よほど大島氏と話し合う方が楽なのに、です。野党の抵抗で採決できない、と思われたくない。外部の情勢変化、などと言ったらそれを読み切れなかった甘さ、を指摘されかねない。そこで自民内のトラブル、という理由に落ち着いたのでしょう。
しかしTPP関連法案を可決した委員会の議事録は、聴取不能ばかりで、言葉は悪いですが、発禁になった官能小説を無理やり出版したような感じです。つまり伏字ばかりで、想像力を必要とします。安保法案の可決時にも、採決時の委員長の発言は「聴取不能」とされ、その後の改訂で「可決」とされました。想像力でかなりの部分を補わなければいけないTPP法案は、恐らく自民党からの多くの加筆、訂正が加わることでしょう。

南スーダンに派遣する陸自への「駆けつけ警護」を加えた変更案を、15日にも閣議決定する見こみとなり、20日以後に派遣される部隊から適用されます。つまり今月末から、自衛隊が実戦に投入されることになります。安倍氏が本気で年末、年始の解散を考えているのなら、駆けつけ警護の付与は選挙後に回したかったはず。不測の事態がおきれば、自衛隊に死傷者がでた状態で選挙になるかもしれないからです。TPPの採決延期も、結局のところ会期延長となり、選挙に影響してくるでしょう。参院で可決されるのが遅れれば遅れるほど、有権者はTPPを通した自民、としての印象を残します。先の参院選でも東北は与党候補が壊滅したように、TPPは自民にとって地雷になりかねません。
最近、与党からも解散の言葉が聞かれなくなったのは、安倍政権のマインドの変化が意識されます。北方領土交渉が不調、大義がなくなり、しかもTPPや駆けつけ警護にしろ、与党にとっては厳しい項目が並ぶ。税収も落ちこんできて、いつまでも雇用回復が安倍ノミクスの成果、などという虚言を選挙でつかいつづけることもできない。そもそも安倍ノミクスの低成長が鮮明になってきて、インフレ誘導にも失敗。選挙で勝てるような材料、フレーズが見当たらないほど、実態の悪化が鮮明になっています。

解散したかったけれど、できそうもない。今の安倍政権には、そんなムードが漂うのでしょう。なので、悪材料となることでもリーダーシップをとる気すらなく、安倍首相本人はすでに忘年会モードなのかもしれません。しかし参院選で、安倍ノミクスは「道半ば」と言っていたはず。その道はどこにつながっていたのか? といえば、福岡ではありませんが陥没し、どこにもつながらなくなった。税収の落ちこみ、年金の運用損、何もいいことがない。選挙に打ってでるだけの材料がないのです。
来年の安倍氏は、1954年生まれですから一白水星、上り詰めた運気が転換するとき、ともされる運気です。政治家は占いなどを信じる人が多いですから、もしかしたら自分の運勢を聞き、急にやる気が失せたのかもしれません。解散はいきなり風が吹き始めることもありますが、安倍政権が直面する向かい風、トランプ氏は自身と重なるところもあるだけに、明日の結果には戦々恐々、といったところなのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(8)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 一般

2016年11月07日

米FBIの動きと、安倍政権の動き

FBIはクリントン氏を訴追せず、と報じられ、市場は一気にドル高、株高に向かっていますが、問題の本質を見失っているのでしょう。今回の再捜査により、米国民には「クリントン氏にはメール問題がある」と意識し、投票することになる。訴追されないからいい、ではなく、再捜査という事実をなかったことにはできない。またこれからも、新たな事実が判明すれば再捜査されるのでは…? そう疑心暗鬼になってしまうのです。
FBIは反響の大きさから徹夜で検証し、明らかにした、とします。しかしそもそも公務員は選挙期間中、影響を与えてはならない、という法律を破ってまでやったにしてはお粗末に過ぎる。反響の大きさに焦ったのは確かでしょうが、恐らくコミーFBI長官はどちらが大統領になっても議会から証人喚問をうけ、下手をすれば起訴され、裁判にかけられるでしょう。むしろ何か出た方がすっきりしたはずで、再捜査の大義が立ちました。怪しいのなら極秘裏に捜査をすすめ、訴追できるとなってから公表でもよかった。これでは単に大統領選に影響を与えただけで、FBIの行動が正当化できません。米大統領選は最早、トランプ氏を大統領にしたいか? したくないか? それが強い投票行動となって現れる、異常な選挙です。事前にクリントン陣営が有利となると、反トランプの有権者に油断が生まれる可能性もあり、最後まで予断をゆるさないことだけは間違いないのでしょう。

ここに来て、日本の政界も急に意気消沈したのが、TPP関連法の衆院本会議の採決です。大統領選の前に何としても衆院を通したかったはずの与党が、急に折れました。明日にでもいきなり決めてしまう可能性はありますが、そうなると強行採決の印象をさらに強くしますから、やるなら今日中に粛々と手続きをすすめてもよかったはずです。
あくまで憶測ですが、米知日派から「クリントン氏はTPP反対を取り下げるつもりはないようだ」との感触を得たのかもしれません。これだけ大統領選が接戦になると、簡単に公約破りもできないでしょう。しかも同時に行われる議会選挙は、下院は共和党が有利、上院も接戦と伝わります。つまりクリントン氏になっても議会対策は難儀するのですから、あえて国民に不評のTPPを、優先して通そうとするはずもありません。共和党は自由貿易の旗を掲げていますが、現状のTPPでは米国益に不十分と考えており、修正を要求することは間違いない。逆に、日本が先に通してしまうことで足をしばられ、再交渉ができなくなったら大変、そんな意図も働いたのでしょう。与党が大幅な戦略の見直しを迫られた形ですが、正直この程度は予想しておくべきで、遅きに失した感はあります。

もう一つ、日本で大きな動きがあり、電通に強制捜査が入りました。立ち入り検査でみつかった資料で、複数の社員に長時間労働を強いていた、としての強制捜査です。これまでも何度か社員が過労により自殺した企業もありましたが、今回の電通のケースではやたらと国は強硬で、前のめりな態度がめだちます。しかし逆からみると、働き方改革をすすめる安倍政権にとって、これほどよい宣伝効果もないでしょう。ブラック企業は許さない、という姿勢を、電通を悪者にすることで印象づけられるのですから。
穿ち過ぎですが、これが電通の考えた働き方改革の宣伝。そう考えるとすんなり受け入れられる。官製春闘とも揶揄されてきた安倍政権が、労働者を大事にしているんだよ、大企業である電通も免れないんだよ、というアピールができる。もしそうなら、不透明な形で電通への業務発注などが、政府から行われるのか、もう行われたのかもしれません。電通としてはこれから巨大利権でもある東京五輪までに、出直しが図れる。前のめりなほどスピーディーな対応には、そんなきな臭さしか感じられないのでしょう。

しかし安倍政権では、ホワイトカラーエグゼンプションなどの残業ゼロ、成果主義をめざしていたはず。つまり何時間残業しても、成果さえでなければ企業は給料を低く抑えてもいい。これはサービス残業せざるを得ない形であり、その見直しを大々的にアピールするとの意味でも、効果的なのかもしれません。そんな制度をつくってしまえば、いくら賃上げなどをはかっても景気は浮揚しない。安倍政権にとって、一向に上向かない景気への危機感を、働き方改革としてマインドの向上をはかる。電通ほどの力があれば、メディアに情報統制をかけることも可能なはずですが、頻繁にとり上げられるのは、そんな事情が影響しているのかもしれません。しかしいくら働き方改革に良いイメージをつけたとて、安倍政権のめざす方向性は企業価値の向上、です。どこまで労働者が恩恵をうけられるか、国民に広く行き渡るか、はまったく別の話です。
トランプ流の「偉大な米国をとりもどす」という発言は、安倍政権も以前していました。「日本をとりもどす」というのがそれですが、民主党政権からとりもどした後、どうなったか? それが現状です。物価が上がり、賃金が上がらず、結果的にはさらに非正規が増えて景気は失速。成功したはずの安倍ノミクスは、未だに先進国中、最低の成長率にしか達成していないのです。とりもどす、その言葉がもつ意味をもう一度考えたとき、基礎的な条件が変化した中でとりもどしたとて、実は悪影響になるかもしれない。日米ともに、そんな失敗が意識されるところに、今はあるのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:33|PermalinkComments(10)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | アメリカ

2016年11月06日

経済的なトランプリスクについて

米株は6日続落、日本株も2日間でそれをキャッチアップするように大きく下落。トランプリスクともされますが、日本では『もしトラ』などとも呼ばれます。米国では8日投票、その投開票が日本では9日の市場が開いている間に行われ、大勢が判明する可能性もあって『もしトラ』が直撃する可能性もあります。既成の政治への批判の受け皿が、人品に悖るトランプ氏であるのは不幸でしかありませんが、トランプ支持者によるとトランプ氏は既存のシステムを破壊し、自分たちのために政治をしてくれるヒーローということです。あまりに夢見がちで、現実をみていないとも言えますが、それだけ現状への不満がくすぶっているのでしょう。クリントン氏なら現状は変わらない、富裕層に牛耳られるだけ、それがトランプ旋風と呼ばれるものの本質です。

クリントン氏なら、市場はふたたびリスクに寛容となり、気が緩んで戻すことになりますが、問題はトランプ氏が勝利したケースです。来年まではオバマ政権がつづきますが、その後の経済環境をみて、市場も動かざるを得ません。むしろそれが、年末や年度末の株価にも大きく影響するのでしょう。しかし実は富裕層から多額の献金をうけるクリントン氏の方が、逆に富裕層への増税を訴えており、トランプ氏は自身が実業家で投資を主体とするだけに、市場には優しい政策を打ちそうです。むしろ、トランプ氏になったら市場のバブルを放置、助長する可能性は捨て切れません。
そうなると、恐らくトランプ氏の元ではFRBの利上げは難しい。来年はすでに1回、2回の利上げ確率ともされますが、それすら困難でしょう。しかも、公然とFRBの政策に口をだす可能性もある。市場としては先を読み易くなりますが、それこそバブルが止まらなくなる公算が高くなるのでしょう。今でさえ不動産、株、国債がバブルとの指摘もある米国で、来年はそれが暴走することも考慮する必要があるのでしょう。

しかしトランプリスクは、むしろ米国外で顕在化する恐れが高い。ドル安に伴うドルペッグ制からの離脱。米国への輸出で何とか維持されていた国が、対米貿易赤字となれば景気が危うくなる。ドル基準で決裁されるものが、ドル安で不規則な動きをするかもしれない。何よりドル安にするため、大量にばら撒かれたドルが向かう先、それが市場でどんな動きをするか予想もつきません。つまり米国内の状況はバブル化する恐れがあり、当面は安泰かもしれませんが、それを崩すのは米国外の景気の失速、となりそうです。
しかもその萌芽は、世界中に散見されます。エジプトが変動相場制に移行しましたが、これはIMFからの支援受け入れの条件であり、固定相場制にも関わらず、事実上はもう半値の価値しかなかった。ギリシャと同様、経済危機にある国は枚挙に暇がない。WTIで50$台にもどしていた原油が、ここに来て45$を割ってきましたが、産油国の経済も揺らぐでしょう。とにかく今、原油は過剰供給の状態にあり、潜在的な供給能力はさらに需要を大きく上回っているため、今後も上がるような材料もない。そうなると、さらに経済危機に陥る国が増えてくることになります。

そうなると当面は、トランプリスクを意識しつつも、当面は底堅い展開が予想されますが、その後の世界は読みにくさを増してくるのでしょう。アメリカファーストがもたらす弊害、それが米国を苦しめる。そんな展開に、市場が嫌気をさすことになるのかもしれません。年末はドレッシング買いと、それを期待した買いで支えられるものの、年初に急落と言ういつものパターンがくり返されるかもしれない。しかもそのドレッシング買いの勢いも、いつもより弱いと予想されます。何しろ来年、まったく良い兆候が無い中ですから、年末を越える前になるべく早く逃げないといけないのです。
バーナムの法則というものがあります。「毎分カモが生まれる」という、要するに騙される人が多い、との意味の言葉で、バーナムという人はサーカスを率い、様々なアイデアで客を呼びましたが、そのほとんどが詐術的だった、とされます。しかしウソでサーカスに呼びこむぐらいなら幸せな方で、今の米国はそのカモに多くの人がされているのかもしれない。もしトラの本当のリスクとは、ウソから醒めた後の米国人のマインドの変化、ということかもしれません。そのとき、バブル崩壊がおきるのだとすれば、来年か再来年のうちには、巨大な米国バブル崩壊という闇に警戒した方がよいのかもしれませんね。


analyst_zaiya777 at 23:44|PermalinkComments(7)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2016年11月05日

雑感。政治とメディアの距離感

民進、共産、自由、社民の4党が山本農水相の不信任決議案を8日にも提出する方向で調整に入りました。しかしこれは予定調和、つまり衆院本会議では賛成多数で可決、その後で舌禍の山本氏を辞職させ、すんなりと参院審議に入る。野党は閣僚の首をとった実績と、与党はスムーズな参院審議を手に入れる、そんなバーター取引です。
自民にとって、この山本氏は石破氏が閣内から出るのに伴い、安倍氏にも石破氏にも近いとして山本氏に白羽の矢を立てただけ。元々、農水相は重視していなかったこともあり、言ってみれば調整枠でした。TPP審議があったとはいえ、元々TPPは石原経済再生担当相が甘利氏から引き継ぐ形で担当することになっていた。石原氏も心許ないですが、山本氏の方が攻め易く、そのため悪目立ちしただけでもあります。衆院を通してしまえば、後は自然成立ともなるので農水相が交代し、所信表明などで審議に多少の時間がとられても与党には痛くもありません。4日の委員会採決は必須、その後の不信任も予定通り。ただし否決し、閣僚自ら辞任で幕引き、そんなシナリオが成立します。

韓国政界が大揺れです。朴大統領による崔氏への秘密漏えいから、国政介入疑惑へと広がり、さらに平昌五輪への口出しや利益誘導の疑惑まで。しかも崔氏に影武者疑惑までもち上がって、今や朴政権はレイムダックどころではありません。しかも、ここまで心理操作をうけていた人物が、この後まともに政治ができるとも思えない。精神的支柱を失い、寄る辺もなく漂流するのか。首相人事などを唐突に発表、与野党から反発を食うなど、朴政権にはもう打つ手すべてが裏目になる、という状況です。
しかし重要な点は、既存のメディアは崔氏の存在、行状を知っていたにも関わらず、それを報じなかったことです。今回のスクープはネットメディアの執念から暴露されましたが、既存メディアの権威は失墜。それどころか「信用できない!」の声も大きくなっています。しかしこの既存メディアの信用失墜、実は全世界的に同様の傾向もみられます。例えば米大統領選では、多くのメディアがクリントン支持を打ち出すものの、今やトランプ氏が猛追し、追い抜いたとの調査結果もあります。メディアが語ってきたこと、それが自分たちの置かれた状況、そして感じることと全く異なる。そう気づいた国民が、メディアに対して懐疑的な目を向け、記事に不審を抱いているのです。

しかし元々メディアもエリート層が牛耳ってきました。テレビ局員や新聞の記者の平均給与は、全産業の倍以上ともされます。つまり元々政治や富裕層と馴れ合い易い体質をもっており、しかもメディアの収益性が低下するに従い、余計な経費をかけずに記事をあげるためには、政治家や富裕層とつながることで情報を得て、その記事を書くようになる。記事の質で勝負し、購読者を増やすのではなく、何とか紙面を埋めて、その一部を広告としてつかうことで収益を得ようとする。政治と敵対し、情報がもらえなくなると記事も書けない。そんな切羽詰った事情が、逆にメディアの信頼を失わせています。
翻って日本は、まだそこまでメディアの信用は落ちていないように見えます。ただしメディアが自分たちのとる調査で、信用が無い、というはずもありませんし、メディアの調査だと知れば信用がない、と答える人も少ないでしょう。例えば、山本農水相に近いスジからの話として「ここで辞任すれば安倍政権も終わり」などと報じられるケースもありましたが、事実はまったく異なる。安倍氏としては、むしろせいせいする、ぐらいの気分でしょう。これも山本氏に近いスジ、という個人的に付き合いのある政治家からの情報なので、報じざるを得なかった、という事情からそんな情報が洩れたことがうかがえます。政治の信用とメディアの信用、今やそれは一体になっていますが、それもメディアと政治の距離感が狂ってきたことの証左でもあるのでしょう。レイムダックとは「足の不自由なアヒル」という意味ですが、足が悪くても翼があれば飛ぶこともできるでしょう。しかし今や、政治とメディア、双方が同時に失速することで、足も翼も折られたアヒル、の問題が大きくなっています。日本がそうなるのも、時間の問題かもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:35|PermalinkComments(14)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | メディア

2016年11月04日

米FOMCと雇用統計と株価

TPP特別委で、自公に維が賛成する形で、TPP法案が可決されました。これで9日の米大統領選前に衆院を通過させたかった与党の意向が通った形ですが、最後まですったもんだしたのは山本農水相の存在です。それに、最近のメディアは法案の内容をまったく報じないケースも目立ちますが、安保法案や今回のTPP法案など、国民にとって不都合な内容ではよりその傾向を強めるようです。今回の採決も、維新が加わっているので強行採決の印象は薄まりますが、結局のところ数で押し切った印象はより強まりました。山本農水相の追及でさえ及び腰のメディアに、与党批判をはできるはずもありませんが…。
しかも衆院で採決が予定されていたパリ協定の承認について、「遺憾の意を表して」採決を中止しました。すでにパリ協定の細目を決定する会議にはオブザーバー参加しかできないとはいえ、いくら何でもやる気がなさ過ぎです。しかもその国益を最大化する機会を喪失したことさえ、今のメディアは批判すらできないようです。パリ協定、TPP、どちらを優先して審議すべきだったか…。それが衆院の特別委と本会議とはいえ、同じ日に採決を迎えようとしたのは皮肉だったのでしょう。ダブルで国益を失うはずだった日、本当に「遺憾」とすべきだったのは、今の政府に対してなのでしょう。

米10月雇用統計が発表され、非農業部門の雇用者数が16.1万人増と予想を下回りました。ただし8、9月は上方修正され、時間当たり賃金は前年比で2.8%増など、総じて良好な結果です。しかし米国の直近の問題は、雇用が増えても時間当たり賃金が増えても解消されない、ワーキングプアの存在です。働きたいのに、月50〜100時間しか働けない。こうした雇用で企業にメリットがあるのは、スケジュールを組むのが容易、少人数が辞めてもリカバリーが可能、などで、日本のように企業に社会保障の負担がないのであれば、企業は従業員を抱えるだけ抱え、働いた分だけ給料を渡す方がメリットもあるのです。
その結果、米国でも消費に翳りが見える。資産効果も上値余地が限られ、手取りも低い中では、どうしても消費は停滞気味となります。製造業の雇用が減少しているのも気になる。米経済の真の実力は、張子の虎ほど脆いのかもしれません。FOMCでは「FF金利を引き上げる根拠はひきつづき強まった」とするものの、「さらに幾つかの証拠」を欲しています。しかしその証拠がそろう頃には、米景気も斜陽に入っているかもしれない。大統領選後の動きとともに、米国に残された時間は短い、ともいえるのでしょう。

日本株は2日続きで大幅な下落ですが、はかったようにドルベースの日経平均株価では、ほとんど変化がない。つまり株が下がったのではなく、円が上がり、それに株が追随しただけなのでしょう。ここのところ、日本時間に入ると円安に動く、といったことをくり返してきましたが、経常収支が黒字であるだけに、元々円高への圧力があります。それがヘッジをかけない海外投資や、日銀の引き締めが物足りず、米FRBは利上げに前向きとあって円安に動いていましたが、あくまでその動きは短期です。長期では未だに円高への圧力が強い状況であって、リスクオン、リスクオフとも語られますが、その言葉を正しく使うなら「気の緩み」、それがすすむと危機に鈍感になる、というだけなのです。
TPPが混乱したのも、政治家の「気の緩み」。米FRBの利上げが遅れるのも、市場にばかり気を使い過ぎ、まだ大丈夫だろうとするFRB理事らの「気の緩み」。そして市場が上がっているのも「気の緩み」です。なので上げるときは恐る恐る、ゆっくりと。下げるときは急激に下げる、といったことになります。その緩みに手を貸している日銀もまた、どれだけ資産を抱えても大丈夫、という「気の緩み」があるのでしょう。しかし人々の気は立っていて、米大統領選のトランプ氏支持をみても、既存政治への怒りが感じられます。緩まないと上げられない、しかし沸々と人々の間には、そんな緩みを許せない機運も高まっている。「遺憾」とは「憾みを遺す」と書きます。のこしている内は、まだ穏当にことも進みますが、恨みを晴らす、晴らそうとなったとき、不測の事態もおきてくる。「遺憾」と言っていられるうちに対処できないことも「気の緩み」なら、世界は大きなトラブルに見舞われないと現実をみつめられない、となることがほぼ確実なのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:29|PermalinkComments(24)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | アメリカ

2016年11月03日

混沌とする米大統領選

米大統領選が、クリントン氏へのFBIの再捜査で混沌としてきました。しかし1年間休眠状態だったFBIのツイッターが、突如としてクリントン政権時代の恩赦に関する記事の掲載を報告、予告通りに情報公開請求に基づき公開されました。この辺りの動きから読み解ける事情は2パターン、1つはFBI長官が隠れトランプ支持者である可能性。1つはクリントン氏のことを虫唾がはしるほどに嫌いか。いずれにしろ恣意的な動きに感じます。
特にこの恩赦の件は当時も騒がれており、FBIが捜査したものの2005年に問題なし、として捜査を終結しています。トランプ氏に関係する人物が情報公開請求したのか、FBIがそれもなしに情報を公開したのか。いずれにしろFBIは大統領選に介入する気満々であり、長官は下手をすれば大統領選に影響を与えてはいけない、という法律に違反したとして逮捕されるかもしれない。それでも、トランプ氏が大統領になれば恩赦がうけられ、見返りも莫大とでも考えているのかもしれません。銃規制に積極的なクリントン氏だけに、全米ライフル協会など、きな臭い動きが大好きなところも敵に回しています。そうした動きが背景にあるとしたら、米大統領選はまともな状態ではない、と言えるのでしょう。

米大統領選は日本にとっても、多大な影響を与えます。まず安倍首相は国連総会に出席した際、クリントン氏と会談しています。つまりクリントン氏に肩入れした。ただでなくとも在日米軍の負担をすべて日本に負わせてしまおう、などというトランプ氏ですから、これを怨みに思い、日本に対してかなり高圧的にでることが予想されます。元々TPPには反対していますし、日本から輸入される製品に制裁関税なども考えられる。実際に大統領として執務するのは先ですが、日露交渉にも口出ししてくるかもしれない。露国と繋がりの深いトランプ氏だけに、日本に金だけ負担させて見返りを求めないよう、クギを刺してくることは十分に予想されます。
これまで対米追従できた安倍政権は、いきなり梯子を外された状態になる。阿諛追従を文字って『安倍追従』などとも呼ばれますが、その米国から距離を開けられるどころか、敵意をむき出しにして迫られる。もう米国に頼ることもできず、日本は米国の後ろ盾もなく諸外国と向き合っていかなければいけない。安倍政権にとって大きな外交の転機となるはずです。ただでなくとも安倍ノミクスで失敗し、日本の将来に不安が漂う中で米国に見放されたとき、真に日本の外交が試されるのかもしれません。

経済的にも、すでに円高・株安がすすんでいますが、トランプリスクが顕在化するともっと大きな影響もでそうです。トランプリスクとは、それこそ何をするか分からない点にあります。トランプ氏が元気で、政策に口をだせばだすほど不透明感が高まる。その一方で、支持率が低下してトランプ氏が力を失うと政策実現力が低下する。どちらに転んでもよくない状況、それがリスクです。実業家とも言われますが、何度も事業をつぶしてきており、米国でさえそのリスクを免れないかもしれない。滅茶苦茶をやった挙句、米経済をとんでもない状況に陥らせることさえもあり得るのです。
世界的にも今は米経済一強。そして不動産、株、国債、様々な市場がすでにバブルの指摘もある。そんなときに、経済的にどんな思想をもつか、何をするか分からない人物が大統領になってしまう。それは悲劇でしかないのでしょう。FBIとは Federal Bureau of Investigationの略ですが、Bureauは事務局と訳される一方で、元々はタンスや袖つきの机、などを意味していました。FBIが開けた引き出しには、『希望』は入っていないのかもしれません。そこから飛び出してくる魔物が世界に満ちるのなら、日本もその影響はうけることを覚悟しないといけないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:22|PermalinkComments(8)このエントリーをはてなブックマークに追加 アメリカ | 政治

2016年11月02日

雑感。消費動向調査と農水大臣

10月の消費動向調査で、42.3と前月から0.7pt低下しました。暮らし向き、収入、雇用、買い時判断など、すべての項目で低下です。興味深いのは、項目ごとにみると安倍政権で民主党政権の頃を上回るのは、雇用環境だけです。民主党政権は間に東日本大震災を含むのですが、そこで大きく下がった雇用環境が、安倍政権で回復したのは自律的であるのかもしれない。むしろ収入の増え方、暮らし向きは民主党政権のころの方が高いのです。
世論調査と同じ、これは消費者へのアンケートです。民主党政権も、リーマンショックからの立ち直り期間、という側面があったとしても、東日本大震災を迎えるまでは、水準を維持することに成功した。安倍政権では景気がいい、民主党政権のころよりいい、と語られますが、実は消費者にそうした意識のないことが、この指標から読み解けます。

二階自民幹事長は、インドで開かれた津波防災会議で「民主党のセンスのなさ、経験のなさが為せる大変な失敗」と語ります。確かに原発事故では、菅元首相の介入により混乱したかのように感じますが、実はその手法は今の小池氏と似ます。ただし小池氏は人気の高いうちに、しかも東京都の利権に切り込んだため称賛され、菅氏は鳩山政権が失敗し、人気の落ちたときに原発利権、という巨大な闇にぶつかったため潰された、と見なすことも可能です。津波の対応だけであれば、恐らく自民だろうと民主だろうと違いはない。ナゼなら対応するのは官僚であって、緊急時の政治はお飾りに過ぎないからです。
それに、安倍政権で閣僚の資質を問われるケースが、また出てきました。山本農相が「冗談を言ったらクビにされそうに…」と語り、また「農家が農林にくるといいことあるかも」と、利益誘導のようなことを述べました。冗談をこれ以上言わない、とした後の言葉ですから、それは冗談でないことになります。「言葉のセンスのなさ、経験を重ねて馴れ合いになった、大変な失敗」ということが言えるのでしょう。TPPの4日可決というシナリオが崩れ、自民内では臨時国会の会期をどこまで伸ばすか、で頭を悩ましそうです。

問題はさらに解散シナリオにまで影響しそうなこと。TPPの問題が後ズレすればするほど、尾をひく期間に選挙を迎えることになります。衆院と同じ審議時間を確保するなら、参院の通過は12月第2週となる。不測の事態がおこれば3週目にかかりそうです。年内解散、のシナリオが崩れると、年始解散。そうなると予算審議にも影響します。1月いっぱいで選挙を終わらせて2月には国会を開いておかないと、予算の成立も危ぶまれるでしょう。
しかも来週、米大統領選が行われますが、仮に国会を通過してもTPPが有権者の頭に残っていることはほぼ確実です。つまり米国の動向次第では、TPPがすすむか、すすまないかも変わる。モヤモヤした気持ちがつづくからです。そして、麻生財務省がトランプ氏を「不思議な不動産屋さん」、クリントン氏を「メール問題のおばさん」などと揶揄し、「付き合うのは結構しんどい」と述べました。一国の財務相が、他国の大統領候補を揶揄したなどとなれば、どちらがなっても日米関係は悪化するかもしれません。

しかも生鮮食品の高騰で、学校給食が滞る事例がでてきました。気候の問題が大きいとはいえ、農水省の問題も大きい。TPPが発行された場合、日本の気候で左右されない食糧供給も可能とはなりますが、逆に諸外国の気候で日本の食糧が高騰する恐れも出てくるのです。それは今、南米の大豆不足に代表されるように、今後も世界の気候変動が大きくなる中で、どこで何が不足してもおかしくない。そんなとき、他国に頼ってしまっては取り返しのつかないことにもなりかねないのですが、国内の農家には「農林にくるといいことあるよ」などという大臣がいては、まずこの国の食糧事情は危ういと言えるのでしょう。
それは経済面も同じ。国内でいくら「いいことだ」と喧伝しようと、安倍ノミクスの理論的支柱であったノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン氏はすでに安倍ノミクスと距離をとり始め、諸外国も日本の失敗を意識しつつあります。諸外国の理論に頼り、国内の事情を無視した結果、ともいえるのが安倍ノミクスの失敗です。二階氏の言葉を借りれば、「自民党のセンスのなさ、経験のない異例の金融緩和などをしたことで大失敗」となるのでしょう。外交もここに来て、日露交渉をはじめ、急速に失敗が意識される項目が増えてきた。資本主義の限界、民主主義の限界、そして安倍政権の限界が、ここに来て顕著になってきた、ということもいえるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:34|PermalinkComments(14)このエントリーをはてなブックマークに追加 政治 | 経済

2016年11月01日

日銀会合と、黒田氏の会見

日銀の金融政策決定会合が開かれ、現状維持が決定しました。しかし展望リポートでは、16年度の物価見通しを+0.1%から-0.1%に、17年度は+1.7%から+1.5%に、18年度は+1.9%から+1.7%に、それぞれ下方修正。GDPの見通しは16年度は+1.0%、17年度は+1.3%、18年度は+0.9%と7月のリポートを維持しています。物価が下がっても成長が維持できる、というのですから、日銀も物価と経済成長には相関がない、と認めたかのようでもありますが、リポートの中ではやたらと「海外経済の下振れリスク」を強調し、それさえなければ潜在成長率を上回って成長する、と自信を示します。しかしその前提は政府による大規模な財政出動と、日銀による金融緩和で国内は安泰、というのですから、これまで達成できていないのに、同じことをしていたらいつの間にか達成、と些か都合よい結論に逃げています。
しかも幾つかウソもみられる。雇用者所得の改善がつづき…、消費は緩やかに増加…、(マイナス金利で)金融機関の積極的な貸出スタンス…、社債・CPの良好な発行環境…など、景気指標もみていなければ、実体もみていない。それで「フォワードルッキングな期待形成」で、中央銀行の物価安定目標に収斂する、とこれまでくり返した物価目標の先送りなどなかったかのように「収斂する」という態度には、もう頭を抱えるしかありません。

さらに「財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下する…将来不安により…経済の下振れ」としますが、マイナス金利により年金運用が困難となり、将来不安につながり、経済の下振れ…というシナリオには目を瞑ります。マイナス金利の悪影響はまったくこのリポートに出てこないのですから、手前味噌といった感じは拭えないのでしょう。
今回も政策委員の多数決では、佐藤氏と木内氏が反対しています。イールドカーブコントロールでは、佐藤氏は「10年物の国債まですべてマイナスになる」、木内氏は「短期金利は+0.1%が妥当」とし、資産買い入れでは、佐藤氏は「市場の価格形成や日銀の財務に悪影響」、木内氏は「資産買入れ額を操作目標とし、減額を」と主張します。反対派のいうことが尤もなのに、賛成側が7人と多数だから誤った政策をつづけてしまう、こんなところにも民主主義の限界が垣間見えます。上記のような展望リポートをだすぐらいですから「僕たちは間違ってないもん!」というイイワケをしたい、賛成した7人は小池都知事を応援した『7人の侍』に因んで、言葉は悪いですが『7人の詐術士』とも呼べるのでしょう。

そんな7人の内の1人、黒田総裁が会見していますが、ETF購入に関して「東証の時価総額は500兆円で、日銀の購入は6兆円にすぎないから、市場を歪めていない」とします。しかし年間で1%強も買う主体は日銀をおいて、他には値上がり益を狙ったときの外国人投資家ぐらいで、その外国人投資家も今は買っていませんし、そうした主体は上がったら売る。つまり買い切りしているのは昔も今も日銀しかいない。そんな主体が突然現れて、撤退することもできなくなっているのですから、歪みきっているのです。その歪みを、歪んでいる方からしか見ていないから真っ直ぐに見える、というに過ぎません。
黒田氏はまた、物価目標の先送りは「欧米も同じ」と、責任を回避する発言をくり返します。18年4月の任期についても再任論がでていますが、これまで「強いコミットメント」が「収斂」に結びつく、などとしてきた黒田氏が「欧米も同じ」という「強いコミットメント」を出せば、物価が上がらなくて当然、といった認識を広く与えたことにもなるのです。「長年続いたデフレマインドを変えるのは難しい」とも語りますが、そもそも手法が間違っているのであって、デフレマインドが変わるはずもありません。「デフレの方がいい、などということは絶対にない」としますが、今年に入って物価が下がり、実質の賃金が上がってきたことも、また事実です。雇用が逼迫、と言いながら賃金傾向に変化のないこともまた、「欧米も同じ」であるなら、インフレをつづける米国でも賃金への波及が小さい点をみても、インフレになったから景気が改善した、とは言えないのででしょう。

デフレマインドどころか、日本において最大の病巣は、政策担当者によるブレブレマインドなのでしょう。間違った政策を打っているので、改善するはずも無いのですが、そのことを認めず、イイワケばかりをして政策の本質をみていない。再任どころか、黒田氏は一刻も早く逃げ出したい、と考えているのかもしれません。最近のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のタイトルをみて、黒田氏も「これだ!」と思っているかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:27|PermalinkComments(10)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般