雑感、厚生労働省に関する二つの話について公務員制度改革基本法案の協議について

2008年05月25日

米国とスタグフレーション

米連邦準備制度理事会(FRB)が08年の米GDP見通しを、1.3〜2%から0.3〜1.2%へと下方修正しました。4ヶ月で米成長率を低下させた原因は、住宅市場の下落に歯止めがきかないこと、及び2%前半としていたインフレ率を3%前半へと引き上げ、それによる個人消費の冷え込みに対応するものです。
インフレは米国が市場に資金をつぎ込むために起きています。大量の資金供給、FRBによる貸し出し範囲の拡大、市場に資金をつぎ込めばつぎ込むほど、インフレが進むことになります。景気後退を正常な景気循環の一つの期間だとして、それを緩和させるのではなく抑止に努める諸施策、インフレ誘導政策をとったことで起きているのが、今回のスタグフレーションです。

今回の景気後退は明らかに行き過ぎた金融緩和により生じた失策です。その一つが、現状米国を初め各国の金融機関の間でも論争のある、簿価評価と時価評価です。簡単にいえば、複雑な金融商品の場合、簿価は基準として決められた債券であったり、基になった不動産価格で評価されます。しかしこの価値基準は下落が緩やかであり、実態として取引される一般的な価格とは乖離しています。そこで米国の新会計基準として適用されたのが時価評価です。
時価ですから、今後は市場の取引価格にその評価は大きく影響されることになります。今回の金融市場の混乱で、急落した金融商品の値付は壊滅状態になりましたが、それでも金融機関の損失が軽微で済んだのは簿価だったからです。実際の各金融機関の保有資産の評価、それは簿価では正確に表しきれない、ということが今回の混乱でも明らかになりました。

各金融機関の間では、公表される損失以上に警戒感が強く、資金繰りが順調にいかないのもこのためです。ここからFRBの資金調達に依存することが多くなり、緊張状態が続いていますから、資金供給をFRBも止めることが出来ない、という更なるインフレを生む原因ともなっています。
FRBもこの事態は理解しているのでしょう。といって、このままインフレを放置すれば間違いなく景気は更に悪化していきます。米国で今、気にされだしたインフレとはこのような要因が背後にあります。一時の楽観が影を潜めたのも、金融機関が時価評価になることにより、更に総計40兆円の損失が新たに出されるという不安、一方でインフレだけは加速度的に上昇していく不安、この二つがFRBの描く年後半に回復する、というシナリオを描き難くさせているのです。
WTIに敏感に反応するのも、後者の影響を考えたものです。一方で、金融機関の4-6月期決算を見るまでは市場の不安も晴れませんので、このため米国市場は再び調整局面に入りました。日本はマネージド・フューチャーズによる先物取引で支えられていますが、世界経済に敏感に反応する日本市場の特性は、ほぼコモディティの特性とも似通っており、この辺りで運用が拡大しているために起きています。3月から市場が読み難くなりましたが、今後もこのヘッジファンドの動きが日本市場を決めることになるのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 23:05│Comments(2)TrackBack(0)経済 | アメリカ

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この記事へのコメント

1. Posted by ろっし   2008年05月26日 07:15
5  アメリカは、消費大国なので、不況でも購買意欲があまり衰えません(日本との比較)。また、投資意欲も日本に比べたら、落ち込んでいません。FRBの資金供給、ドル安、資源と穀物高、消費がそれほど落ち込まないなどのインフレ要因は、尽きません。また、世界的にインフレ傾向にありますからね。日本は、異常なくらいにインフレ率が低いです。やはり、国民性と社会保障不安でしょう。

 詳しいことは解かりませんが、会計の問題もあるでしょう。ちなみに、日本の企業会計は複雑で、海外に準拠するべきという声が大きいという話は、聞いたことがあります。また、ヨーロッパが、先行する基準に日本も合わせたらどうかということが、国会議員で検討されているようです。 
2. Posted by 管理人   2008年05月26日 23:21
ろっし さん、コメント有り難うございます。

米国消費は景気減速の期間により堅調さが確認できるかどうか、それが一つの
判断材料とみています。減速の初期には小売が顧客の囲い込みを狙い、
値下げ合戦やサービス品の上乗せで消費を煽ります。しかし小売が企業体力を
落とすと、サービスも減少しますし、今はそれを阻むインフレもあります。
今後、米国ではタームとの兼ね合いで数字が語られることも多くなるでしょう。

時価と簿価の違いについては、一般の方は詳しく知る必要はありませんが、
金融危機が夏頃に再び起きる可能性が高まった、と考えておけば良いものです。
日本の企業会計は複雑、というより海外基準と合致していないため外国人から
分かり難い、と指摘されています。米国の圧力があれば見直されるかもしれ
ませんね。

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