米国が北朝鮮のテロ支援国指定を解除経済の話。欧米の公的資金注入について

2008年10月13日

経済の話、欧州の対策について

今日も世界経済の混乱を受け、矢継ぎ早に経済関係の対策が各国で打たれています。英国では370億£の公的資金を注入します。ロイヤルバンクオブスコットランド(RBS)に200億、ロイズTSBに55億、HBOSに115億ドルを投入し、普通株を購入して実質国有化の発表です。
ドイツでは800億ユーロの公的資金を使って、金融機関に公的資金を注入し、また金融機関に対する債務に政府保証4000億ユーロをあてるという、救済策の発表です。更に欧州では中央銀行によるドル供給強化策が発表されています。ECB、イングランド銀行(BOE)、スイス国民銀行が金融機関に対し、入札を行って担保範囲内ならば固定金利でドルを供給するという、公開市場操作の発表です。入札額に対して全額を供給するという内容ですから、ドル不足に陥るという不安はこれで解消されることになります。

G7では差異の見られた項目、内容は削られたようですが、欧州は機動的に動くという態度をこれで示したことになります。公的資金の注入を普通株で行うことは、政府が価格変動リスクを負うことになり、かなり危険性もあります。これらは政府系住宅金融機関(GSE)の救済で、米政府が採った公的資金注入が既存株の毀損に繋がった、という経験を踏まえているのでしょう。
一方で、三菱東京UFJがモルガンへの出資を全額優先株としたのは、価格変動リスクを極力抑えようとする態度です。転換社債型の優先株としてもリスクが完全に消えるわけではありませんが、転換後に議決権の21%を有することが出来るので、モルガンが破綻しなければ有利な条件を三菱東京UFJは勝ち得たようです。ただモルガン側としては、将来経営権を握られ、尚且つ90億$が全株転換されれば1株辺りの希薄化に繋がるものです。今後の株価の推移は、モルガンの経営にも影響してきそうです。

欧州は経済政策が出てきつつありますが、米国では議会との調整という難関が待っています。更にドイツで金融機関の債務に4000億ユーロの保証、という額を見ても分かる通り、米国の7000億$は単なる不良債権買取の金額のみであり、不足する可能性が高いものです。
米国がどう動くか?が次のカギになります。アジア、欧州が上昇して今週始まっていますが、米国の対策にはまだ具体性がないので、早晩失望も出てきます。今は一旦下げ過ぎた水準を取り戻すことが急務ですが、その後は米国の対応に関して敏感に反応することになるのでしょう。

ダウ平均は最悪5000$を割れる可能性もあります。これは相対的に見て米国市場の下落率は低くなく、それでも期待値の高い状態が続いているためでもあります。早めに他国の株は売っても、自国の株を売るのは最後、という米系ヘッジファンドの流れもあるのでしょう。ただここがポジションを崩すようだと、大きく売り込まれることになります。ブッシュ氏の発言を見る限り、金融安定化法に依存してそれ以上の対策を打ち出して来ないようにも見えますが、そうした態度で乗り切れる状態ではもうないのでしょうね。

このエントリーをはてなブックマークに追加
analyst_zaiya777 at 23:07│Comments(4)TrackBack(0)経済 | 欧州

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by おるおる君   2008年10月14日 22:18
中川大臣は、銀行が保有する株を買い取る用意があると発言しましたが、まさか簿価ということはないでしょうね?これはまったく米国と同じ問題ですが…
簿価で買い取るなら、個人投資家は当然反発しますよね!やっぱり銀行は特別なんでしょうかね?
2. Posted by 管理人   2008年10月14日 23:38
おるおる君 さん、コメント有り難うございます。

金融機関の株買取に関しては、金融機能強化法の再検討と同様に、かつての成功体験を
経て今回の危機に対応しようというものです。なので簿価ということはないはずですね。
いわゆる損失を抱えた金融機関からの処分売りという事態を回避するため、公的機関が
買い取るという方向になります。昨年辺りからこの公的機関からの売りが随時市場には
出ていましたが、それも一旦停止していますし、売りで稼いだ額もありますのでこうした
発言になったのでしょう。簿価なら反対ですが、株式市場にとっては下落リスクを回避
出来ることになるので、好感材料なのかもしれません。ただ、内容はまだ発表されて
いない、私案の段階でしょうから、どうなるか分からないことも事実でしょうね。
3. Posted by ルーシー7   2008年10月15日 00:47
ダウ5000割れなら
単純に日経も5000割れですかね?
4. Posted by 管理人   2008年10月15日 23:22
ルーシー7 さん、コメント有り難うございます。

米国の対応が今のままなら5000$割れを試すでしょうが、その水準までくると流石に
日本も米国離れをするでしょう。水準は測り難いですが、7000円は当面の下限に
置いておいても良い水準だと考えます。
市場で少し気になるのは、欧米でも若干見られますが、引け間際30分の急騰という
手口です。昨日と今日、日本市場でも発生しましたが、これは先物の手口が大きく
影響しています。買い一本で数社からまとまった買いが入る。リーマン破綻後、
保有していた先物を放出する際、それを買い取る為と見られる証券会社からの買い、
その頃から目立ち始めた手口です。特定筋の買い注文なのか、よく分かりませんが、
3千枚を越える場合もあり、複数社が並ぶと昨日のように大きな値動きとなります。
これらが新たな手口として、相場の波乱要因になりそうですね。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
米国が北朝鮮のテロ支援国指定を解除経済の話。欧米の公的資金注入について