米国バーナンキFRB議長が再任か?明日の総選挙の前に

2009年08月28日

雇用悪化に見るデフレスパイラルへの懸念

米自動車買替支援制度は日本車が最大の恩恵を受けました。GM、クライスラーが民事再生法提出の時期であり、生産を絞った影響もあったようです。但しこの結果、同種の支援制度は今後、米議会で承認される見込みがなくなりました。低燃費支援を銘打てば、現状アメ車は不利であり、仮に復活するとしても条件付、米国内生産車などになる可能性があります。
そんな中、トヨタが米自動車生産工場NUMMIの閉鎖を決めました。25年来のGMとの共同生産でしたが、GM撤退により採算が合わなくなったことが理由です。NUMMIはトヨタが米国で有する工場の内、唯一の全米自動車労組(UAW)に加盟する工場です。UAWが強くとも、逆に強いからこそ撤退してしまう。コスト削減が急務の企業において、労組に縛られて経営自由度が低いと、激変する世界の需要に対応できず致命的になります。GMと折半できる今しか、決断のタイミングがなかったと見ています。

厚労省発表の有効求人倍率0.42倍も、総務省発表の7月完全失業率5.7%も、実質消費支出2.0%減も、総合的には雇用・消費の悪化を示しています。昨年の原油高と重なり、前年比で見ると厳しい面はありますが、明らかにデフレ・スパイラルの傾向を示しており、対策が必要です。
しかし企業支援を強化してもリストラ費用に代わるのみであり、人件費削減で得たコストを販価の低下に回す、悪い循環が続きます。この点は今回の選挙でも、どの党も触れていない視点であり、一旦スパイラルに陥れば外部環境が好転するか、しか手がない状況です。職業訓練や失業保険拡充も、雇用に直接結び付くものではなく、経済の拡大という実がない中で企業が採用に踏み切らない限り、それだけでは有効な手立てではありません。

新興国と競争する、とは即ちそういうことであり、先進国の低成長はそのまま労働環境の新興国化を進めます。トヨタがNUMMI撤退のみではなく、世界の生産台数を減少させる意向であるのは、結果的に世界経済の縮小規模に対応するものであり、企業判断としては間違いではありませんが、そこで失われる雇用と、設備投資の低下は今後の経済にも影響するのでしょう。
経済対策が総選挙でも焦点でありながら、雇用対策は目ぼしいものがないのが現状です。政治の無策、というより世界規模の課題となりつつありますが、まだ欧米では認識できていない。経済が拡大し、その内雇用も良くなるというのがコンセンサスとなっています。日本が優秀な人材で世界を席巻する、そうした方向性を持つのなら、いち早く先進的な雇用対策を打ち出し、世界に範を垂れることも必要なことなのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 23:23│Comments(2)TrackBack(0)経済 | 政治

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この記事へのコメント

1. Posted by おるおる君   2009年08月29日 22:57
アメリカでは、住宅価格の下落よりも
商業施設の下落が、これから大問題になってくると聞きましたが
本当でしょうか?
だったらアメリカの景気回復はなかなか難しいですね?
2. Posted by 管理人   2009年08月29日 23:30
おるおる君 さん、コメント有り難うございます。

米国ではすでに春先ぐらいから、商業用不動産に関して懸念が広がっていました。
ある試算では、米銀の不良債権は今後も着実に増える傾向にあるともされています。
問題ある金融機関について、FDICが監視対象リストを305から416に拡大していますが、
どれほど金融を緩めても、改善されない分野は存在し、結果的にそれが景気回復の
足を引っ張ります。それが地方行政であり、金融機関の不良債権であり、個人への
雇用、賃金などとなります。そこに目ぼしい手当て、政策が出ない間に楽観論を
ばら撒くのではなく、政策対応が出来て初めて好感すべきであるのでしょうね。
日本では、批判はあれど竹中氏が銀行に厳しい査定を課し、それが不良債権の切り
離しに繋がりました。不良債権買取機構が宙ぶらりんのままでは、米国の景気回復は
まだ先と見ておいて良いのでしょうね。

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