雑感。北海道5区補選とインドEPA経済の話。米追加緩和に関して

2010年10月26日

法人税減税と農業とFTA、EPA

民主党が企業・団体献金の受け入れ再開を決めました。再開対象は公共工事の受注が1億円未満の企業・団体とのことで、癒着や馴れ合いなどには一定の配慮を示します。ただ再開理由が国費依存、即ち政党助成金頼みの現状から脱却するとのこと。元々、政党助成金を支給する理念は企業・団体献金に過度に依存し、癒着を生み易い構図を改めることであり、再開する理由は逆行というより、単に理念通り進めてきたが活動資金不足で、より多く集めたいと聞こえてしまいます。
所信表明演説で菅首相が意欲を示した後、マニフェストでも掲げた旗を下ろせば、更に支持が減ります。幾ら野党が政治資金規正法改正に及び腰とはいえ、正論なら堂々と主張すれば良く、迎合がもっとも性質の悪い対応です。政治に金がかかる体質を改めること、それこそ最優先として政治家が喫緊に取り組まねばいけないことは、与野党問わず、なのですけれどね。

法人税減税の議論が活発です。法人税を5%下げることで、2兆円程度税収減となることからペイアズユーゴー原則、即ち不足分の税収を確保する議論が持ち上がります。租税特別措置法を廃止し、企業優遇としてとられた減税措置をやめ、税収減に対応する方針を示します。その中で研究開発促進減税と、輸入ナフサ免税は企業側が残して欲しい、と要望する項目となっています。
ナフサは原油を蒸留して作られ、石油化学品の原料となったり、燃料として利用されます。裾野が広く、減税措置が切れると広い範囲で売価に転嫁されるでしょう。法人税減税との代替措置であっても、企業は製品価格を重視しており、デフレ環境下であってもこの点は変わりません。それに法人税収は06年の15兆円から直近では6兆円に落ち込んでおり、企業の多くが法人税を支払っている状況ではない。税収減の恩恵を受け、減税分を吸収できる余裕のある企業は少ないのです。

FTA、EPA議論の中で、前原外相が農業生産はGDPの1.5%程度、残り98.5%が損をして良いのか?と疑問を呈していますが、とんでもない誤りです。日本のGDPは消費低迷と言われながらも、半分以上が個人消費です。生鮮食品は物価指標からも、除かれた形で判断されることが多いですが、恒常的に消費されるのは生鮮食品であり、また加工食品にまで拡大すれば、大きなウェートを占めます。逆に、日本の1次産業の比率がこの程度で良いのか?という議論にはなっても、98.5%全てが産業活動によるもの、という見方をこの数字に適用するのは、数字の誤用とも呼べるものなのです。
経済産業省はFTA、EPA促進、法人税減税、その果実は経済成長で税収増に寄与する、と述べます。しかし経済成長の具体像が単に企業が活発に投資する、というのでは過剰投資を生み、後に停滞するだけ。各国の購入支援策が打ち止めになり、しばらく低消費であることが鮮明な中、成長はしないと見た方が良い。見かけ上、諸外国と同じ比率まで法人税を下げておく、という議論なら経済産業省内でやはり減税分の穴埋めを処理することが求められます。

この問題、逆に考えれば農業に補助金が必要か?という見方もできます。現在、種苗は輸入に頼る作物もあり、また肥料なども購入する。そこに補助金を出し、減税措置を与えれば国際競争力がつき、経済発展に寄与するではないか?という言い方もできます。経産省と農水省は反目し合いますが、全ては国の形をどう描くか?ということで見れば、産業界に与えてきた厚遇と、農業に与えてきた厚遇、という二面性の衝突ということになります。そのバランスを間違えれば、国が長期の低迷に陥ると言う意味で、目先だけではなく長期戦略に則った農・産のバランスという視点で議論しない限り、全ては空疎な議論に終わりかねないことになるのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 23:36│Comments(6)TrackBack(0)政治 | 経済

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この記事へのコメント

1. Posted by おるおる君   2010年10月26日 23:58
政治とカネの問題が続いている時に
企業・団体献金を一部でも解禁しますかね? これは 公約違反でしょう?
何かこれは救いようのないミスのような気がします。
平均年齢65歳の日本の農業も救いようがない気がします!
企業や個人でも農業に新規参入できるように、規制を無くす必要があると思います。今のままではじり貧は目に見えています。
2. Posted by 管理人   2010年10月27日 00:36
おるおる君 さん、コメント有り難う御座います。

一応、民主党は暫定的、という表現を用いているようですが、政治資金規正法の改正が
進まなければ棚上げする方向ですから、公約違反というまでには至らずとも、長期では
批判の対象でしょうね。ただ野党にそれを指摘できる資格がない、という点ではあまり
問題視はされないかもしれません。しかし国民の目が厳しくなることは確実でしょうし、
これで政治資金規制法違反、などが出れば批判の矢面に立つことでしょうね。
農地法や農業法人のあり方、農協中心の個人農家をどう変えていくか、など日本の農業
には大変革が必要ですね。既存の仕組みを改正しているだけでは、衰退が目に見えている
ことはその通りで、抜本的な変革が必要ですね。しかし日本の農産物が、国際競争力を
得れば、そこから商社が活動できる場も生まれますし、産業界ばかり優遇するのでもなく
なります。農協に変わり、もっと大きな枠組みで地域の農業を統括、コントロールする
組織をつくり、生産から流通まで管理すれば、法人と同じ仕組みを作れます。全ては
産業ベースで成立させられるかどうか、なので、成立すれば若者の雇用も進むなどの、
プラス寄与度も高くなります。日本は多雨という世界的にみて、農業に適した地である
ことに変わりなく、品質管理に優れていると世界から見られているのですから、農業で
トップを狙う戦略ぐらいは、あって然るべきなのでしょうね。
3. Posted by けやき   2010年10月27日 09:14
企業・団体献金の受け入れ再開といい、法人税減税といい、よくも平気で人を愚弄することができるものですね。上に立つものが強欲に走る新自由主義、金権主義が世界にはびこっていますが、本来それを断ち切るべく選ばれた民主党がこれでは、自民党以上に罪が重いといわざるを得ません。菅政権の生みの親であるメディアともども退陣を迫りたいものです。
4. Posted by swallow   2010年10月27日 14:50
>FTA、EPA議論の中で、前原外相が農業生産はGDPの1.5%程度、残り98.5%が損をして良いのか?

10年くらい前に当時の奥田会長がそんなこと言ってましたね、ただし「そのくらい輸出産業が
だしてやってもいい」とも言ってたような。

そう出してくれれば良いんですよ、あるいは、輸出入の金額に応じて企業に食糧生産を義務付
ける。企業で参入するもよし、既存農家に委託するもよし、どんなカタチでも食糧生産は食糧
安全保障の意味でもまもるべき。

「金額ベースの食料自給率はそう低くない」なんてオバカなことをいう人もいますが、食料が
不足した場合、金額ベースの食料自給率なんて何の意味もありません。金額は簡単に何倍にも
跳ね上がるわけだし。

今現在は安いものが洪水のように押し寄せて、農業全滅みたいなカンジですけど、ブッシュ時代
のバイオエタノール騒ぎの事例もあり、食糧は自由に買えない場合もあるのですね。また、現在
でも、品目によっては爆食中国に買い負けるということが起こっています。

>日本の1次産業の比率がこの程度で良いのか?

野菜・鮮魚など1次産品全体に、市場の寡占化で価格決定が歪んだものになっていると聞きます。
生産者コストに関係なく、買い手側の言い値でしか生産者は売ることが出来ない。公取委マター
じゃないんですかね。

歪んだ価格構造が在るため、企業参入は起こらない。地方の土建屋などがやっている例もあるよ
うだけど「とてもコストに見合わない」そうです。
5. Posted by 管理人   2010年10月27日 23:44
けやき さん、コメント有り難う御座います。

献金受入れ再開は、利権型の政治を改める、その第一歩だったはずですが、衆院選マニフェスト
では一番地、参院選マニフェストでは扱いを小さくし、今回この体たらくですからね。
大政党になるために、様々な意見を含む雑多な政党になる以外、多くの有権者に訴えられない。
それが今回、菅政権誕生で自民党以上に自民党らしい政権になってしまった。財界に配慮する
形でメディアへの受けも良いですが、菅政権の抱える難題は多い。政権支持率が30%台になると、
応援すればそれだけメディアもリスクを抱えるので批判側に回ることになりますが、今のやや
甘い評価は「政権がコロコロ変わって良いのか?」という批判をぶって菅政権を支持してきた
メディアが自縄自縛に陥っているように見えますね。鳩山前首相が自身の政界引退を撤回した、
大きな記事で扱うところもありますが、政治家の出処進退など、ウソや詭弁がこれまでもまかり
通ってきましたし、特に重要ではない。有権者が判断することですからね。それ以上に問題は
政策、政権公約でウソをつくことです。菅政権が大した説明もせず、国民に裏切りと認識される
ことをすれば、意外に早く支持率凋落が鮮明化するでしょう。脱小沢だけで、人気が高いわけ
でもない。自身の態度に関わってくる、ということを菅政権は十分認識すべきでしょうね。
6. Posted by 管理人   2010年10月27日 23:58
swallow さん、コメント有り難う御座います。

国の形として、食料自給率をどの程度に保つのか?欧米ではそれを重要と見て、輸出して
得た資金を補助金に回し、大規模経営や大量生産効果を引き出し、農業を手厚く保護して
きましたからね。日本では個別農家の権益確保と農協の保護、それと世界戦略が全く合致
せず、世界の潮流からは出遅れ、農産物を輸出することも出来ない。一部、粉末状にして
生鮮野菜の保存を可能とし、輸出や加工食品に回すなどの手法も出てきていますが、日本
はこうした動きを活用して、世界を巻き込む戦略をとらねばいけないのでしょうね。
小売業界が大規模化し、販売ルートを押さえられた個別農家は、ほぼ言い値で買い取られ、
苦境に甘んじています。米は今年一等米の比率が下がり、やや不作でも価格が下がる。
一部に戸別農家補償を見越し、買い叩きの動きもあるとされます。事業仕分けの特会でも
備蓄米をエサとして放出し、450億円近い損失が出ると述べていますが、これを食料危機の
国に提供すれば、その分エサに回る米の量が減り、農家が助かります。また五年とした
備蓄米を三年にするなど、手法は幾つもあります。農業全体の改革が必要なのでしょうね。
地方で企業が行うのは雇用対策の面もありますが、土地を借りて、農機具も持たずに参入
しても成功確率は低い。本格的に市場をとる、ぐらいの参入でなければ、難しいことに
なるのでしょうね。バイオ技術をもつ米国、日本は品種改良、という面で先んじていた
はずなのに、いつの間にか後塵です。農業をどうするかは、早期に日本で戦略を練らなけ
ればいけない課題なのでしょうね。

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