ギリシャ破綻懸念の波及雑感。脱原発派を調査会で増やすことについて

2011年09月15日

野田政権考、政権運営でムダを生む?

国会会期について、民主党が今月末に延長する案を固めたようです。当初、何らかの妥協を探るため4日という提案をしたと見ていましたが、追い込まれて延長するのみで、野党から条件を引き出せたわけではないようです。混乱させるだけで、結論が狂うのは普天間基地問題と同じ、平野国対の手腕のなさが目立ちます。周囲を動かすにはイメージ力、どこで横車を押すか、引くか、というシミュレーションが出来ていないのでしょう。融和型の野田執行部にとって、これは致命的かもしれません。

輿石カーテン、なる言葉が出てきました。閣僚人事で「漏れたら差し替え」と命じ、鉢呂発言に対する調査と、閣僚らにテレビ出演の際は政権の方針に沿って話をするよう、要請したことなどを指します。これを情報統制、として批判する向きもありますが、その批判は的外れです。なぜなら、この程度は云われるまでもなく、政治家であればそうすべきもの、であり、閣僚が政府方針と異なる発言をしたら現場は混乱します。人事を発表前に誰かに漏らすような人間は、信用できません。
そしてメディアを客観的にチェックできる機関は、一部人権委員会や倫理規定委員会などしかなく、実は正しさを検証できない仕組みとなっています。また、その程度のことで情報統制と感じ、萎縮してしまうようなメディアなら、存在する意味はなく、中国や中東などの国家統制がある国で、ジャーナリズムを名乗る人間は、もっと高潔に、正しいことを報道する気概をもって任じています。この国のメディアには、程度で情報統制と感じる程度の人間ばかりがいるのかもしれません。

野田氏が財務省時代に承認した、公務員宿舎が話題です。総工費105億円、なぜこれがムダに見えるか? それは被災者を一時的に受け入れられるほど、公務員宿舎が余っている、という現状を国民が知るため、です。昨年の12月に着工なので震災前とはいえ、今から止めて、土地も売れば復興予算が出ます。増税前にムダ削減、というならまっ先に止めるべきであり、八ツ場ダムに代表される、公共事業に歯止めがかけられない野田政権、という形をここでも露呈してしまいました。
しかも公務員制度改革には、菅政権時代の小幅な見直し、つまり官僚主導でつくられた法案を再提出する意向を示すなど、まったく後ろ向きです。これでは増税に理解が得られず、政権は早晩行き詰まることが必定なのでしょう。国対による野党対応も含め、この政権は情報発信力が弱いことが、ここ数週間で表れていますが、国連出席に向けた勉強会が忙しいとはいえ、上記のことを国民に理解するよう説明するには、相当骨の折れる作業であり、法案を通すことに支障が出てくるはずです。

しかも輿石幹事長、前原政調会長の対立が、今の民主党の喫緊の重要案件なのかもしれません。野田氏は明確に、仕事の棲み分けをしていないようであり、これが野党対策、方向性の乏しいことにも繋がっている。それは新たな仕組みの構築に向け、あらゆる勢力が生存ゲームを繰り広げ、その中で均衡するまでは綱引きが続く、ということを意味します。野田政権は適材適所ではなく、適者生存なのかもしれません。これが速度を求められる復旧、復興時、政権の座にあることで遅れに繋がるようだと、批判が集中するのでしょう。さらに、この適者生存の結果出てきた形が、不完全内閣ではなく不健全内閣、と称されるようになると、極めて難しい政権運営に陥るのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 23:15│Comments(8)TrackBack(0)政治 | 一般

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この記事へのコメント

1. Posted by おるおる君   2011年09月15日 23:53
テレビである経済学者が 日本は世界最大の債権国だから
日本を立て直すには 富の分配を改めてる必要がある。と言っていました。
しかしそんなこと可能でしょうか?
儲かっていない多くの中小企業は やりたくてもやれないでしょう? またその学者も大恐慌は来ると言っていました。
2. Posted by 管理人   2011年09月16日 00:14
おるおる君 さん、コメント有難うございます。

日本は確かに債権国なのですが、そこに手をつけると世界恐慌を引き起こした、と
して日本が指弾される恐れがあるので、そこは抜いて考える必要があるのでしょうね。
富の分配、という話が漠然としているので、その方の趣旨がわかりませんが、
日本は多くの面で制度を再構築する過程で、政府、企業、組織としての有り様を
全面的に変えていく必要があります。
小幅な手直しでは、もう行き詰まっている、ということですね。
その中で富の分配、という視点をおけば、実は労働者の側により多くの富がわたる
方が、景気の浮揚効果が高く、最大の景気対策になりますね。

2000年代の米国の増長は、間違いなく減税効果によってもたらされ、それがバブル
を生み、今に至っています。
グローバル競争、海外企業の買収を考えると、より大きな企業体を優遇する方が
良い、という発想で世界はこれまで来ましたが、中小企業が盛んである方が
技術力がつくので、国の貿易としてはより大きく寄与します。
実はこうした視点を政策に盛り込むこと、それが求められるのですが、野田氏は
既得権益者の上にのるため、経団連とも融和的であり、出来そうにない、という
判断になってしまうのですね。
今の大企業、中小零細企業との関係は、一頃の従属主義に近くなっており、それを
改めるだけで、大きな改革になります。

恐慌は、今のままでは来てしまいますし、今語られる対策は先送りはなっても、
時間の遅れは影響を拡大するだけ、となります。
回避するより、ダメージコントロールをどうしていくか? それを考えていく
方が、日本全体としては良い選択となりそうな点で今は不安とどう向き合うか?
となってしまうのでしょうね。
3. Posted by ケーイー   2011年09月16日 11:24
つい数ヶ月前にネット規制を目論んでいると非難されていた人権保護法?でしたっけ。マスコミがバイアスをかけて情報を流したのでしょうか?一番困るのは既存のマスメディアのようですね。
政界、財界、後は役人の腐敗を糺すのは、ジャーナリズムしかないと思うのですが、現在のマスコミに真っ当なジャーナリズムは有する所は少ないと思います。むしろ既得権を守る為に、情報操作するのが仕事みたいですよね。日本を立て直すには、真のジャーナリズムを再構築することが先決なのではないでしょうか?
4. Posted by あらいぐま   2011年09月16日 12:11
増税論を是とするマスコミの後押しで増税一直線の野田内閣ですが世界に逆行するこの行為やはり基地外なんでしょうか?
ドイツの富豪たちが金持ち増税を宣言した事に続いたのか?
アメリカ、フランスとビッグリッチが続々と金持ち増税論を提案しています。(パークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏がニューヨーク・タイムズ(8/15)への寄稿で、これまでの行き過ぎた資産家減税に触れ「億万長者にやさしい議会によって長い間甘やかされてきた」とし、大資産家への増税を提案しました。)
世界に逆行する日本のエスタブリッシュメントは守銭奴の集まりなのでしょうか?
おそらくはNO足りんなんでしょう。
欧米のビッグリッチは世界が滅んでは金銀財宝も塵屑になる事を知っているだけだと思います。
(国が滅んでも東電や財界を守る姿勢を一向に崩さない政経塾出身者ら反小沢の国会議員らの態度とがそうですね。)
放射能汚染で国土が失われれば日本人は第二のユダヤ人になる可能性があり、既得権者は全てを失いかねない事に気づかないという事を表しているのでしょう。

いま日本が手本とすべきはブラジルのルラ政権の政策でしょう。
これは田中康夫氏や森永卓郎氏の政策・提言が同じようなもので先進国全てが見習うべでしょう。

新自由主義は基本は詐欺と言える物と私は考えていますので現行の政策(欧米・日本・韓国など)はこのままでは大恐慌に飲み込まれる運命でしょう。
大量の資金供給で急場しのぎを続ける欧米は火事の大本であるガス管のガス漏れ、CDSの処理を早急にすべきです。
大企業を救済する為のみの政策はより深い落とし穴に嵌る物だと気づく?べきでしょう。(ヤッパリ無理ですよね)
5. Posted by いろいろな見方   2011年09月16日 16:45
たった4日で臨時国会を済まそうとする、逃げ!!の姿勢はなんとも・・・。
そういえば菅も参議院選の直前は篭って国民に対する説明責任を放棄してましたね。
一連の彼らの行動を見ていると、政治以前に人間としての基本的な資質に問題があると思います。
一言で言えば卑劣!。

輿石カーテン---こんなのが今の政権を仕切っているのですか、
この人は確か選挙違反でやっと当選したひとですよね、は〜なんだかな・・・。

復興増税(笑う)、復興と増税は別の話だろうに、復興と関連させれば国民の目をごまかせるとでも。
なんとも姑息で、陳腐なシナリオにあきれます。
しかし民主党の政権交代に大いなる期待をした民主党の基礎票以外の投票者(約2000万人)は、今となってさぞかし臍を噛んでいることでしょう・・・。

増税、聞いてないよ〜、確か10兆を超える埋蔵金を捻出するとの話はなしですか。
財政再建の大前提がもろくも崩れたので、今や現与党の大義はなく速やかな解散を望みます。
6. Posted by 管理人   2011年09月16日 23:45
ケーイー さん、コメント有難うございます。

人権擁護法案ですが、これは奇妙なことに、マスコミによる人権侵害は除くよう
動いていることもあるので、益々この法案の怪しさがありますね。
現状、日本でジャーナリズムを名乗れる人間は、数少ないと云えるのでしょうね。
恐らく、既存の大手メディアに属していない、しがらみのない人間でない限り、
そう名乗ると齟齬を来たすことになるのでしょうね。

メディア改革は必要ですね。
まずは、クロスチェックができるよう、新聞、テレビ、ラジオ、ネットなどの
資本提携関係をやめる、それぞれ独立性を保つ、といった形になると、相互で
牽制し合う形が生まれるので、偏った議論は少なくなるはずです。
今は一部週刊誌などが、反証記事を載せる程度で、反骨心をみせる場合もあり
ますが、ほとんど一方向に偏った記事になりますからね。
鉢呂発言など、まさに作られた世論という気がしますし、それを肯定的に語る
コメンテーターが多い、という時点でこの国にジャーナリズムはない、とさえ
云えると感じさせますね。

日本は戦後、復興を果たす過程で幾つも矛盾をかかえ、またそれを都合良く
利用することで、自民党長期政権が存続できた、とさえいえます。
テレビ、新聞などの媒体が、一体化することで議論を傾けて誘導することを
容易にしてきましたし、密約曝露の記者に有罪判決を下すなど、徹底的に
メディアをつかった国家の互助会体制を築いてきました。
その歪を、今は目にしているのであり、改革しなければ戦後史観のまま継続
する、という問題に、こうした組織も直面していくのでしょうね。
7. Posted by 管理人   2011年09月17日 00:01
あらいぐま さん、コメント有難うございます。

日本では組織に依拠しつつ、富を拡大するという傾向、思考が国民に根強いですし、
特に企業経営者、富裕層もそうした発想ですね。
米国ではアニマル・スピリットと呼ばれますが、個人で稼ぐ、が一般的な考え方
ですから、減税による恩典が受けられる間と、国家が疲弊して、今はそんな
恩典に甘えてばかりではいられない、とする機運も高まるところです。
日本ではまったくそうした発想がない、いつまでも甘えが抜けないのでしょうね。

新自由主義、小さな政府という提案には賛成できますが、市場機能に委ねれば
すべて解決、とする考え方は、いかにもアニマル・スピリットを大事にする欧米、
の考え方そのものです。
市場が示すのは心理であり、真実ではない。
欧米の市場機能が壊れていることが、日米欧のドル資金供給、でも表れており、
これを好感する向きもありますが、中銀からの資金供給をうけると、市場から
資金を調達できない不健全行とのレッテルを貼られ、また一歩破綻に近づく
ことになります。
この対策が機能するためには、強引にすべての金融機関にドルを渡す、ぐらいの
ものがないと、うまくはいかないのでしょうね。

ルラ政権も参考になりますが、その前に日本の既得権益の流れを変えないと、
政策が省庁、組織に都合良く中身を改変されてしまう恐れがあるのでしょうね。
大企業優遇も、高額所得の人間を守る、という一点にありますが、今の日本に
とって、真に必要なことは少し所得が増えると、消費に回してくれるギリギリで
生活している人たちであり、ここに手を充てることが内需拡大の一歩なのですが、
今の政権では難しいのでしょうね。
8. Posted by 管理人   2011年09月17日 00:13
いろいろな見方 さん、コメント有難うございます。

菅氏にしろ、野田氏にしろ、やりたいことがあるから総理になったのではなく、
総理になってから、やりたいことを創る。
だから増税、という財務官僚から云われたことを鵜呑みにして、代表選を戦う、
という逃れられないしがらみを抱えてしまいますね。

輿石カーテンは、そのこと自体が問題ではなく、むしろ閣僚の軽さ、質の低さを
どう補うか、ということですから、本質的には能力不足の野田政権をどう見るか?
ということになるのでしょうね。

鳩山政権を最悪と決めつけ、政権交代の意義を見失わせた段階で、民主党の掲げた
マニフェストはほぼ瓦解したも同然ですし、それは既得権を壊される、と焦って
いた連中にとって、まさに好事だったといえるのでしょう。
その後登場したのが、いずれも財務省の洗礼を浴びた、官僚主義的色彩の滲む
政権だけに、益々そう云えるのでしょうね。
菅氏は、最終的に官僚を敵視しましたが、掲げた旗が官僚によって書かれたものが
当初大半を占めた時点で、すでに短命は決まっていたと云えます。
野田政権は、ほとんどが官僚の作文、という事態をどうみるか?
政権の未来は決して明るくないのでしょうね。

来週の国連総会出席、そこで欧米首脳とどう話し合いの場をもてるか?
野田政権が外国とも融和型をめざすのなら、国益を失う、という見方も多くなる
のでしょうね。
今は各国も、甘い態度を示すような国から、いかに搾取するかと考えますから、
理念なき外交が通用する時代ではないのですけれどね。

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