安倍政権の支持率下落雑感。安倍ノミクスの痛み

2015年07月11日

GPIFの昨年度末の運用比率

ギリシャが再建策を提出し、EU側も肯定的に評価している、とされます。ギリシャ議会も承認しており、後はEUの承認待ちですが、問題は支援したからといって再建できるかどうか分からない点です。これでギリシャから多くの国民が脱出し、経済規模が縮んでしまえば例えプライマリーバランスが改善しても、返済計画が滞ることになります。債権カットをどの程度EU側が認めるのか? ただでなくともこれまでの緊縮策で、規模が小さくなった経済で、今の借金を返すことはほとんど不可能でしょう。債権カットの問題となったとき、EU側も政治的な決断を必要とすることになります。明日にそれが決断できるか、その辺りがカギとなってくるのでしょう。

中国株も落ち着きをとりもどしたかに見えますが、今回は一旦の小康であって、問題は何も解決されずに先送りされただけ。シカゴ日経平均は2万円台を回復していますが、日本はギリシャ不安で株価が下げたわけではないので、週明けも中国株の動向に注視する展開がつづくでしょう。
そんな官製相場の日本市場で存在感を増す年金積立金管理運用独立法人(GPIF)が、3月末時点の運用比率を発表しました。14年度末の国内債券39.4%(53.4%)、国内株券22.0%(15.9%)、外国債券12.6%(10.7%)、外国株券20.9%(15.0%)。カッコ内は13年度末の数字なので、国内債券を大きく減らす一方で、国内、海外の株を大きく買ったことがうかがます。運用益は15.3兆円規模にふくらみ、これを成果と捉える向きもありますが、見方を変えるととても危険です。

外国株を大きく増やす一方、外国債券は微増の域です。これは外国債券を買うと、金利差が縮まって円安に誘導できない。またこれだけ外国に資金を移しているのですから、GPIFだけで円売り需要がかなりあった、ということになります。つまりGPIFは外国債券を買えず、外国株だけを買う、という構図には強烈な円安誘導をはかっていた、という疑いすら生じてしまいます。
甘利経再担当相などは「意図的に円安に誘導したことはない」と述べますが、GPIFの運用だけみても円安に誘導していたことは明らかです。安倍政権で運用比率を35%、25%、15%、25%に変える、と決めたのですから、まさに円安誘導をはかったのです。そして恐らくこの水準はさらに目標に近づいていて、夏場以後のGPIFは逆張り運用しかできなくなった、ということもわかります。

そしてこれは円安要因が一つ消えた、という為替市場の動きも読みとれるのです。目標まで残りの運用比率で考えると、外国債券は2.4%、外国株券は4.1%、つまりこれだけをみても、今までと同じ円安要因が生じ難い、ということもうかがえる。米利上げなども想定されますが、需給要因の一つが剥落した、という事実が円の下値を抑える要因ともなってくるのでしょう。
リーマンショックと同じ規模の株価の調整がおきると、GPIFだけで30兆円の損をだすといった試算もありますが、中国で400兆円が吹き飛んだ、という報道も対岸の火事ではありません。個人の損なら自己責任で済みますが、年金の損はさらに税金投入を促そうとする政治的圧力にもつながりかねません。2万円割れとなった日経平均、これが今以上の円安が見込めなくなり、業績の重しともなってくれば、さらに調整してもおかしくない。まさに悪循環に陥る懸念すら出てくるのです。GPIFがクジラから撤退した、この事実を短期で運用している主体がどう捉えるか? 木曜日には1日で700円以上の急変動をおこしましたが、下支え要因が消えつつある日本、ギリシャの年金カットも、明日は我が身と思っておいた方がよいのかもしれませんね。

analyst_zaiya777 at 23:28│Comments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 年金

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この記事へのコメント

1. Posted by ジニー銀河   2015年07月12日 00:37
来週15日 自民党は安保法制案を採決するでしょうか? 80時間ルールは軽くクリアーしていますし…平行線は永遠に交わることはありませんし…いつまでも議論をしていてもキリがありませしね…。
ギリシャ支援は…砂漠に水をまくような感じがします。同じことの繰り返しが続くことになるのでしょうか?
2. Posted by 管理人   2015年07月12日 00:51
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

80時間に、ルールはありません。あくまで安倍政権が勝手にそう決めているだけです。以前から指摘もありますが、イラク特措法は複数の国会をまたいで100時間は優に超えていますしね。別に80時間でなくともよいですし、イラク特措法を前例とし、今回のように複数の法案を束ねているのですから、3倍ぐらいの時間をかけて審議しても、決しておかしくない、というか、それぐらいしないと本来はおかしいのですね。

安倍氏の取り巻きが、ここで採決できないとレイムダック化する、と安倍氏を煽り、安倍氏もその気になっているとされますから、採決はするでしょう。恐らく今のままなら強行採決ですが、支持率は30%台に突入するでしょうね。それで参院の60日ルールをつかえば、もうレイムダック化がはっきりします。安倍政権が安保法制とともに討ち死に、という事態になりそうです。いつまでも議論をしていても…の前に、議論を打ち切ったら、その時点で安倍政権はキリになってしまうのでしょうね。

ギリシャ支援は、以前も指摘したように返済計画がまったく機能していない点が問題です。増税して国の経済規模が縮み、それで負債を返すのですから二重苦どころか三重苦です。ムダ遣いは徹底的に洗い出さなければいけませんが、増税して返済、という安易なところにもっていくと、結局は支援してもムダ、と言う話になるのでしょうね。
3. Posted by 通りすがり   2015年07月12日 04:19
イラク特借法は、その是非はともかく、
まだ期間や場所に制限がありましたからね
今度の安保法案はそれが無い。
そのことだけを考えてもかなり無謀なことと言えるでしょう。
国民が大多数が反対している法案を強引に押し通す政権は
国民が反対している派遣でも強引に押し通す可能性が高いわけですから
4. Posted by けやき   2015年07月12日 13:44
支持率が低下してきた安倍首相はそろそろ用済みですか。アベノミクス、秘密保護法、TPP推進、マイナンバー制、原発再稼働、国立競技場問題、そして安保法案と、よくこれだけ悪いことを立て続けに推進したと思いますが、戦争国家アメリカと国内買弁勢力は、これら悪いことは全部安倍のせいにして、安倍退陣で一件落着と幕引きにしようと企んでいるのでしょう。安倍も祖父岸元首相と同じ末路を辿るならまんざらでもありますまい。でも形は同じでも岸は売国というわけでなく、安倍は不肖の孫ということになりますかね。
5. Posted by いろはのい   2015年07月12日 19:58
GPIFの運用が円安誘導というのは、初めて知りました。とても勉強になります。
 ところでこの先、円安誘導がないとすると、米利上げとの関連はどうなるのでしょうか。アメリカは日本のそういう状況を考えに入れているのでしょうか。

それにしても、どのマスコミでも内閣支持率は不支持のほうが多くなってきましたね。これで強行採決すればさらに支持率は下がります。
安倍氏は国民を敵にまわして一体何がしたいのかさっぱりわかりません。自民党ではなく、日本をぶっ壊したいのでしょうか。(まさかその為に首相になったとは考えたくないのですが。。。)
6. Posted by 管理人   2015年07月12日 23:42
通りすがり さん、コメント有り難うございます。

安保法案は、それこそ何が歯止めなのか、未だに政府の答弁が二転、三転しており、よく分からない部分もあるのですが、その状態で採決につっこめば、間違いなく安倍政権の支持率は10%以上、落ちることになるのでしょうね。今でさえ50%を割ってきましたから、存外そこから加速していくのかもしれません。

支持率の再浮上をめざす、としますが、株価も2万円割れとなってきて、2万円台でとられた世論調査ですら、その数字では不安心理の方が強まってくるでしょう。年金の買い余力が乏しくなり、日銀も緩和マネーの枯渇が意識されるようになってきた。政治からのさらなる緩和要求が、支持率下落とともに、今後一層強まってくるのでしょうね。そして株価対策をする間に、安保法制を通す。国民が反対していても、目晦ましさえすれば通せる、と思っているなら、安倍政権は歴史上まれにみる国民をバカにした政権、と呼ばれることになるのかもしれません。イエスマンばかりになりつつある安倍氏の周りでは、今や諌める者もおらず、国民の敵になっても気づかないほどになってきているのかもしれませんね。
7. Posted by 管理人   2015年07月12日 23:56
けやき さん、コメント有り難うございます。

安倍退陣後、麻生財務相の再登板辺りを、知日派の人間は考えているところでしょうね。逆にいうと、安倍政権が退陣するときは、混乱のうちであって欲しい。つまり副首相から首相へ、という流れのままで通過して欲しい、とでも考えているのかもしれません。逆にいうと、それ以外の知日派のいうことを聞いてくれそうな人間で、首相の座に近い人間が見当たらない、ということでもあるのですが。つまり、岸内閣は居抜きで誕生しましたが、その孫である安倍内閣は、居抜きで交代させられる、という皮肉になるのかもしれませんね。

岸氏は売国、ということでもないのかもしれませんが、岸政権の間に結ばれた日米間の取り決めでは、後に多大な悪影響となっていることも多く、外形的にというより内容的にあまり評価できない人物です。安倍政権は内容ばかりか、外形的にも評価できないので、劣化ということならその通りなのでしょうね。

岸氏は「妖怪」とも呼ばれましたが、安倍氏の場合は
「幼怪」なのかもしれません。まともな大人の判断やイイワケとは思えないことを平気で言う、行う。幼形進化は、生物界では飛躍のジャンプとされますが、安倍氏の場合は政治界での劣化、という捉え方をされる時点で、今後も評価が高まることはないのかもしれませんね。
8. Posted by 管理人   2015年07月13日 00:11
いろはのい さん、コメント有り難うございます。

あくまで「安倍政権が円安誘導したことはない」という反証の部分でもあって、GPIFの運用でも円安にする方向で動いていた、ということです。為替は取引量も多く、実需と投資と、様々な要因が絡みあうものであって、決してGPIFの動きで大きな影響があった、というほどではありません。しかし一つの要因が消えた、という意味では、円安の下支え要因を失ったと考えた上で、他の投資家がどう動くか、が問題なのでしょうね。

米国はドル高を望んでおらず、ここで日本が円安誘導の一つの要因が消えたことは、好感するでしょう。米利上げは、米国の国内要因で始めると考えますが、すでに為替市場では、一度の利上げは織り込んでおり、年内に二度目があると、ドル高に動くのかもしれません。しかし長期的にみると、世界の景気が失速していくことになるので、ドル高要因がつづくのか? そんな不安も出てくるでしょう。有事の円買いになるかどうか、そんな要因もドル円では関係してくるのでしょうね。

安倍政権は、米知日派の意向をそのままなぞることしかしていない、という点が問題なのでしょうね。それを応援する一般紙の存在もあるのですが、主体性はあまり感じられず、だから自分の言葉に直して説明する、ということもできない。官僚もそれを実現するため、手を変え、品を変え、答弁なども工夫しているようですが、それが利きにくくなってきていることが、支持率低下の原因でしょうね。国民も、安倍政権の態度に危うさしか感じなくなってきた。支持率はさらに低下していくことでしょうね。

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