雑感。仏国の動きと国際社会南シナ海への派遣検討?

2015年11月19日

日銀の現状維持

フィリピンのマニラで開かれているAPEC会合で、日米首脳会談が開かれました。米国がどこよりも長く時間を割いたのは、米外交が行き詰っているからでもあります。ISILの対応では露国と手を組みましたが、アサド政権の存続で一致したわけではないでしょう。そうなると、ISILをつぶした後はアサド政権と、反政府組織との戦争になる。新たな米露代理戦争の構図にもどるだけです。どの国もテロを恐れて突出することを避ける一方、ニワカ同盟でお茶を濁しているに過ぎません。
当初、オバマ政権は親中路線をとり、助長をゆるしてしまった。今、中国の封じこめに転じてみれば日本を巻きこんで、圧力を日米で分かち合おうとする。外交の失敗のツケを日本に押し付けるため、の友好です。会談後の記者会見で、安倍首相が語るときに厳しい目で見つめていたオバマ大統領。友人を温かく見守る、という目ではなく、余計なコトを言わないか、監視する目つきでした。この辺りに想いのすれ違いが顕著に現れます。安倍氏がぽろっと日米同盟を「利用する…」と口をすべらせましたが、こうした点、双方が利用するということだけが一致したのでしょう。

日銀が金融政策決定会合を開き、現状維持を決めました。わずかな変化としては、各種指標で予想物価上昇率が「弱含んでいる」とみとめた。また黒田総裁は16年度後半に予定通り物価が2%に達しても「もう少し緩和状態がのびても」問題ない、としました。一方で財務に影響があったとしても「追加緩和しないことはない」と、あくまで目標達成を最優先としましたが、非常に危険なことです。欧州債務危機でもそうだったように、危機とみなされればどんな対策も通用しなくなる。逆にいえば、市場に不安が生じる前に勝負を決しなければならないのに、財務への影響に懸念が出ても…という認識を総裁がもつことは、リスクに歯止めが利かないと示した形にもなります。
CPIが0%でも金融緩和の効果が出ていないということでは「全くない」と強く否定しましたが、否定せざるを得ないほど効果が出ていない、ということでもあります。すでに3年半もやって、効果が出ないものを続ける、拡大する、などという行動に正当性がないのは論を待つ必要がないほどです。さらに引当金制度の導入を公表したように、日銀は出口に向かっている、との認識を市場も強めています。もう効果がないのだから止めるべき、と考える人も多いのです。

市場関係者の間でも追加緩和のタイミングは来年の4月以降、との予想が増えています。しかしだからこそ、12月に追加緩和をすればサプライズ効果がでる、との話もあります。日銀は間違え続けているのだから、今回とて間違えないはずがない、という根拠のない話すら吹聴されるほど。今や日銀は、相場に変動を与える要因としかみられていない。仮に追加緩和をしても、以前ほどに相場を上昇させる力はなく、ふたたび円安、輸出企業の業績改善、という経路だけなら、早晩その効果が剥落することが確実です。なぜなら上積みにしかなっていない、全体へ波及しないからです。
今日の相場も、日米合弁系の強い買いで支えられる一方、朝高後に上値の重さを意識させました。中国が貸出金利を引き下げましたが、中国の景気の弱さをより強く印象づけます。米国は利上げを『米景気は強い』と好感して上昇しましたが、楽観市場だからこその解釈です。日銀が追加緩和をするようだと、今後は日本経済の弱さ、を意識させるのかもしれません。2四半期連続のマイナス成長、リセッション入りを強く意識させる日本が打つ追加緩和、今後はマイナス面を強く意識させる局面も出てくるのかもしれませんね。

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analyst_zaiya777 at 23:42│Comments(15)TrackBack(0)経済 | 一般

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この記事へのコメント

1. Posted by ジニー銀河   2015年11月19日 23:55
フランスやベルギーのイスラム系の若者達は現状に不満が鬱積しているとか…しかしその欧州にシリアやアフリカからイスラム系の難民が押し寄せています。
結論…
なるべく日本は関わりたくないですね…。
この世に天国はありませんから…。
2. Posted by 管理人   2015年11月20日 00:11
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

フランス、ベルギーに関わらず、今はどの国でも失業率が高く、ましてや移民に回す仕事はない、というのが現状です。かといって、自国にいても安全、安心な暮らしがおくれない。仕事すら戦争で奪われ、移住するしかない、ということにもなっています。

日本は関わらないようにする、という選択肢がありませんね。安倍政権では、お金だけだす、という方向性しか示していませんが、先進国の責任としてそれは許されない、という見方も拡がってくるでしょう。そもそも、安全保障では国際社会と積極的に関わるけれど、難民問題では協力できません、などという態度はとれないのですね。両方とも関わらないか、両方とも関わるか、それが国際貢献の正しいやり方です。そうでなければ、より大きな負担を日本は求められるだけで、さらに文句を言われることにもなるでしょう。それでは湾岸戦争のときと同じですね。

もう一つ、たとえば日本では非正規の拡大や、ブラック企業、ブラックバイトの問題も膨らんでいますが、同じ国民だから反発も、不満もそれほど顕在化しませんが、それをもし外国から来た労働者にそれをしたら、大問題に発展することになります。それこそテロリストを国内で育てていることにしかならないのでしょうね。仕事があっても、仕事をさせなくても、難民を抱える国に不安、不満がたまる。現状は、どうしたら働いて幸福を得られるか? という点に手を打たないと、どの国も問題を解決できないことになっているのでしょうね。
3. Posted by ジニー銀河   2015年11月20日 00:31
日本にも難民?というか外国人の人達が沢山います。しかし…麻薬で捕まる外国人はイラン人!

車を盗んで輸出なら…ベトナム人!

というイメージがあります。

そういう犯罪に多く関わっているから…そういうイメージを持たれるのです。
日本社会に溶け込めないのかも知れないですが…
自分で自分のクビを絞めている感もあると思います。
4. Posted by 管理人   2015年11月20日 00:42
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

日本は難民申請しても通りにくく、申請中でとどまっている人が多いのですが、外国人は日本の職場に夢をみてきます。円高の当時だったら、多額のお金を国に送金することもできましたが、いまや仕事もなく、また円安などで仕送りも滞りがち。犯罪に手を染めてしまう、という傾向ですね。これは欧州でおきていることも同じです。仕事がないから、武器を扱う死の商人だったり、麻薬の密売などに手を染めていく。これは今にはじまったことではなく、相手の国で生活するためには、仕事もほとんどない中で、どうしてもそうした人達に犯罪者も近づくのですね。「いい仕事があるよ」と。

そして自国民同士でコミュニティーをつくり、それが伝承されていく。麻薬の密売もそうしたコミュニティーで、代々イラン人が継いできた、ということになります。ヤードとよばれる、山奥に囲いをつくって自動車修理工場、などと看板をだして、裏では盗んだ車を解体し、輸送するグループも同じです。韓国や中国の犯罪グループは、短期ビザでやってきて、盗みをして国へもどる、という活動をしている。これらはもう、そうしたコミュニティーを壊さない限り難しいのですが、壊したところで、別の犯罪組織に流れては意味がありません。やはり国の為政者は、国内で仕事をつくる、ということを第一にしていくしかないのでしょうね。
5. Posted by 通りすがり   2015年11月20日 00:44
「江南の橘、江北の枳となる」という言葉がありましたな。
ネット辞書はその言葉の成り立ちまでは説明しないのですが

まぁ挙げた例はたいてい日本の犯罪組織が下請けとして外国人を使っているケースがほとんどですが。
普通に考えて馴れない異国の地で計画的な犯罪事業を行うなんて事そう簡単にできないでしょ?
6. Posted by 管理人   2015年11月20日 01:01
通りすがり さん、コメント有り難うございます。

外国人労働者は、どうしてもツテがないので、初めてできたツテを頼ることになります。これは一般の職場でも、外国人を雇っているところは同じような傾向らしいですが、一人を雇うと、次から次へと「紹介」と称してやってくる。そして同じ国の人たちで埋まる。それが偶々、イラン人は麻薬密売組織と、といった形になってしまった、に過ぎないのでしょうね。

結局、そうした人たちを雇う犯罪組織がいることがそもそもの問題で、それを解消しない限り、外国人がそうした組織に雇われる傾向は改まらないのでしょうね。また、仕事が潤沢にあって、犯罪に手を染めなくても生活できるようになれば、また変わっていくのかもしれません。日本に限らず、どの国も移民、難民には厳しいことが、結局テロリストを醸成しているのであって、移民、難民が悪いと一概に決めつけて排外主義をとっている、極右勢力の存在などが、さらに各国でも問題をややこしくしているのでしょうね。
7. Posted by pasta   2015年11月20日 04:28

日銀の制御外にあるドル調達金利が跳ね上がってきました。FRBの金利引き上げによる金利上昇時のデフォルト確率上昇を織込んでいるとの事。デフォルト確率は価値の著しい減価やデフォルト時の期待回収率も計算されるでしょうから、ドルの貸し手が本邦勢に要求するプレミアムには現政権の経済政策の失敗、今後の円安進行による円資産の減価、政権と中央銀行の財政規律の崩壊によるリスク、をようやく織込み始めたのではないかと思います。

時期的にもTPP合意と郵政二社の上場の後なので、日本資産を買い叩いて購入する環境が整ってきたのと同時なのも出来過ぎな印象を受けます。それでなくとも50パーセントも進んだ円安進行による日本国の国内居住者から海外の旅行者や日本資産購入者への所得移転が進み、民間消費支出の落ち込みを見るまでも無く国民生活が苦しくなっているのに、その本番はこれからと思うとなんとも無力感にさいなまされます。
8. Posted by swallow   2015年11月20日 21:10
不謹慎かと思うけど、日本企業には絶好のチャンスだと思う。
自動運転などに、需要を見出して、活気付いていた国内産業。
その需要は、そのままテロ対策に繋がる。監視カメラの高解
像度化や顔認証などは、既にある技術。日本のイミグレーシ
ションでは、覆面して受けるというのは不自然なシチュエーション
なので、テロリスト検出度は高い。売り込むチャンスだね。
移民登録でテロリストがパスとかそんなの防げる。しかもローコストで。
9. Posted by swallow   2015年11月20日 21:24
だって、スマホで指名手配犯ゲットって便利でしょ。
10. Posted by 管理人   2015年11月20日 23:48
pasta さん、コメント有り難うございます。

ドル調達金利の上昇には、様々な要因があるとみられますが、確かにそうした一面もありますね。日本経済の急減速、金利上昇局面を待つまでもなく、日本企業にはデフォルトリスクが高まっていることは間違いなく、いくら好業績といってみたところで、一部の企業にとどまるのであれば、やはり全体としてはデフォルト率が上がっていることになるんですね。

恐らく、消費税増税ができないことを織り込んだ財政再建策の見直し、財政破綻へと近づくでしょうし、この景気後退局面では税収が減ることもあって、さらに財政を苦しめる。日銀の拡大する資産も、マイナス状態に入ると、一体いくらぐらい毀損するのか? そうした試算はするのも怖いですが、いずれは織り込まざるを得なくなります。

残念ながら、国民生活の苦境はまだはじまったばかり、というのが現状なのでしょうね。賃上げ要請をしてみたところで、国内にはすでに節約志向が蔓延していますし、政治の圧力で達成された賃上げでは、苦しくなると企業側が見直すことが確実です。企業風土として、賃上げ、従業員への還元を優先する、という態度に転換するなら別ですが…。滅茶苦茶なアベクロ政策で、日本が陥る長期の景気後退局面は、深刻な打撃をじわじわと与えるのか? それとも破綻という道にすすむのか? 今はどちらかを考える方が、将来については正解なのかもしれませんね。
11. Posted by 管理人   2015年11月21日 00:01
swallow さん、コメント有り難うございます。

難しいのは、英国などすでに高度な監視社会で、監視カメラは高解像度化がすすんでいますし、顔認証、虹彩認証、静脈認証など、様々な手はありますが、犯人の捜索に有効か、は微妙です。特定なら効果もありますが、まずそうした方法をとるなら、テロリストの前に指名手配犯が先となるでしょう。しかし、街で誰彼かまわずスマホを向けていたら、それも問題ですし、人権侵害とのそしりもうける。一方で、監視カメラといってもオンラインでつながっているものは少なく、高速道路、主要道路の監視カメラなら、警察が押さえていますが、それ以外はすべてローカルです。オンラインのカメラも、道路を歩いている人より車のナンバーを確認するためのものであって、窓ガラスを通した車内までは確認し難いでしょう。

犯罪者がその付近にいそう、となったらローカルの監視カメラの映像を提供してもらって…ということなら現状でも十分です。指名手配犯に、カメラ映像による捜査ができないのは、結局そこに限界があるためなのですね。やっと洋服を透過する空港のセキュリティーシステムが、日本でも導入されますが、米国ではすでにはじまっています。期待するほど、日本企業の参入できる余地は、限られるのですね。

スマホで指名手配犯を捕まえるには、まずスマホに指名手配犯の情報を登録しておく、といったことが必要でしょう。警察に協力して、そんなことをしてくれる人がどれほどいるか? それこそ、警察に自分の情報まで筒抜け、といった恐れもある中ですから、意識変化の方が大変なのかもしれませんね。
12. Posted by 通りすがり   2015年11月21日 02:01
伊藤計画のSF小説「虐殺器官」思い出しますね

少しネタバレになりますが
高度に発達した指紋虹彩紋その他による個人識別システム
と監視カメラによる監視管理社会。
しかし対テロを名目にしたそのシステムも莫大な費用を必要とながらも、実はテロに対してはそれほど効果は無い。
一方で経済と一体化したそのシステムを破棄することは国内産業経済にダメージを与えるので
システムを維持のためテロを防ぐ手段は「国外において内戦、テロを供給し続けることに戦乱、不穏、不満を吸収っする」というのがオチでした。
13. Posted by swallow   2015年11月21日 04:27
街にばらまくものはローカルでいいんです。まぁ、目撃証言、wittnesくらいのもので事足りるんです。主要公共機関、駅とか交差点とかはプライバシーを侵害する程度は低いのでオンラインで監視するのは可能でしょう。顔認証や歩様認証はリアルタイムでなくともいいんです。
ローカルカメラのデータを人が目を凝らして探すという手間が軽減出来るだけで、コストが低減出来るでしょ。要するに動線を追跡するコストって話です。
スマホで顔認証は、技術的には簡単で、音声認識と同じ仕組みです。陣川さんじゃないですから、みんながみんな人相おぼえられません。
動線情報を元に警戒ターゲットを事前に流して、それらしいものを
確認するという流れです。
14. Posted by 管理人   2015年11月21日 23:49
通りすがり さん、コメント有り難うございます。

伊藤計画 氏の作品、最近話題ですね。残念ながら、SF作品は読むより見るもの、と考えているため、その作品を読んではいませんが、監視社会という形はよくSFの題材にされるように、きわめて深刻な問題であり、将来におこる可能性が高い世界なのでしょうね。

問題は、システムを構築したとてテロや、それこそ犯罪を防ぐ可能性は低く、抜け道、抜け穴を考え出しては手を染める。結局それは、イタチゴッコなのですね。パリのテロ事件でも、SNSは当局に監視されているため、PS4に搭載されているPSNをつかって情報を交換していたとのこと。例えば重要な情報は封書で、暗号などを決めて、SNSでふつうの会話と思わせておいて事件を計画する、といったことも可能でしょう。封書のすべてを開封することは現実的ではありませんし、受け取りを一般家庭にすれば、簡単にすり抜けられます。そうやって、犯罪組織の方が上をいくからこそ、そこにかけるコストは膨大となっていく。人間の想像力を、想像力で超えることを常に強いられるからなのですね。

それが分かると、テロの根絶に武力や、対策で応じようとすることの無力さを感じます。寛容だけではなく、また対立や高圧的な態度でもなく、相手のことを考えながら対応する、ということを心がけていかなければいけないのでしょうね。
15. Posted by 管理人   2015年11月22日 00:22
swallow さん、コメント有り難うございます。

確かに人の目でみて確認する、というのは大変で、そのコストダウンにはなりそうですが、逆にそうした点ならもうすでに導入していなければおかしな話なのでしょうね。ただ恐らく、歩行認証などは対象者の歩行パターンを事前に登録しておかなければなりません。前科者ならよいですが、単なる容疑者、指名手配犯だと、その情報はない可能性があります。また顔認証も、整形していたら、通用しない可能性があります。それで犯人を見逃して、実際に犯罪がおきてしまったら、捜査手法に疑問がもたれるでしょう。やはり人の目でないと…という議論になりかねない。虹彩認証、静脈認証、ですら手術によって変更が可能といいます。Aという人の虹彩、静脈をBという人のものに替える、ということは難しくても、Aという人のそれらをAの情報ではないようにする、ということは可能なのですね。

単純な犯人で、ただ逃げ回っているだけ、というなら動線情報にそれらの認証機能を用いて時短、手間を省くことができるでしょう。ただ本格的な犯罪組織と立ち向かうのは、まだまだクリアしなければならない課題が多い、そう感じてしまいますね。

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