米国防長官の訪日雑感。米金融規制改革法の見直し

2017年02月03日

日銀の指値オペで初の実弾投入

マティス米国防長官が訪日し、安倍首相と官邸で、岸田外相と外務省で、それぞれ会見しています。尖閣諸島にも安保適用、と大々的に報じられますが、これまでの米国の態度と変化がないので、これは重要な記事ではありません。問題は米軍の駐留経費の負担増をトランプ大統領が求めていること。今回、その話は出ていないようですが、来週の首脳会談では必ずでてくるでしょう。地均しするなら今回でしたが、逆にマティス氏と話をできないようだと、トランプ氏マターということでもあり、大統領選のときの主張をそのままぶつけてくる可能性が高い。他国より負担している、などという説明は愚です。日本がこだわる尖閣を取引材料にされたとき、ぐうの音もでなくなってしまうでしょう。

日銀が指値オペを実施し、初の実弾投入となりました。1月の国債買入れ額が減少、年間の買い入れ額が減少する見通しとなり、長期金利が上昇。さらに昨年12月の日銀会合の議事要旨で、金利誘導目標の上下幅を画一的にするべきでない、との意見がみられ、目標範囲が幅広い、との見方が広がり、また今日の日銀の国債買入れ額が、1月31日より400億円増えて4500億円になったことも、緩和規模が不足していると見なされ、午前には長期金利が0.15%まで上昇しました。そこで12時30分、日銀が指値オペを実施、7239億円をかけて長期金利は0.1%以下となり、為替も113円にもどしている、というのが今日の流れです。
今回の金利上昇は、上記したように日銀の対応の変化をよみとったものであり、決して不自然ではありません。それを強引に抑えこみにいった日銀、強い決意を示した、との見方もできますが、理不尽な介入との見方もできます。これは逆に、トランプ氏による恰好の攻撃材料を与えた、とも言えそうです。市場が暴走しているから抑えこむ、これは世界的にも批判をうけませんが、動きそのものを制限すれば、金利差を抑制して為替操作する目的だとみなされます。健全な市場を阻害しているのですから。

ではこんなタイミングで、どうして日銀が動いたか? それはもう2月10日を越えたら動けなくなるから、なのかもしれません。もうすでに強いコミットを受けていて、実際には出来なくなっていても、今回の実績により幻影は市場にみせられる。その幻を市場にみせるためだけに、7000億円もかけてたった一度の指値オペを敢行したのかもしれません。
そもそもこの指値オペ、万能の剣ではありません。2度、3度と行えば市場は慣れ、儲かるなら応札しますが、そうでなければ見送り、市場で売った方がよいからです。今回も指値の利回りが0.110に対し、平均して0.087%で落札しており、売却した側は損をしている。もしかしたら、日本の金融機関が日銀の要請にしたがって応札したため、予想以上に利回りが低下して損をした、というのが実体かもしれません。つまりそれだけ今回の指値オペを成功した、という形で終えたかった。この1回に賭けていた、とも読み解けます。

日本に為替操作を止めさせた、というのはトランプ氏にとって極めて大きな成果になる。そしてそれは、中国の為替操作を止めさせるトリガーにも使える。中国は実弾を人民元安の防衛のために投入していますが、そうしたことは間違い、と世界に喧伝するためにも、まず日本を転ばせる必要がある。日本の妥協点としては、それを公表せず、市場には幻影だけを見せ続けて何とか円高防衛をしたいところなのでしょうが、公表しないとトリガーにはならない。10日は公表を見送ったとしても、いずれ日銀は緩和縮小に向かわざるを得なくなることでしょう。
米国は、尖閣の防衛は約束してくれても、円安の防衛は約束してくれなかった。それが今回、明らかになったことなのかもしれません。米国防長官が来日している最中行われた日銀の指値オペは、何を守り、何を守れないのか、如実にそれを示したのでしょう。お金も実弾、と表現されるように、相手への攻撃にも用いられますし、そのダメージが計り知れなくなることもある。今日の指値オペが、節目オペになるのなら、今後の日本には相当のダメージがでてくることにもなりかねないのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:21│Comments(6)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

この記事へのコメント

1. Posted by hayate   2017年02月04日 00:08
今、NYダウをみたら再び20,000ドル突破。
しかしドル円は112円台。

これまでとは異なる動きのように思いますが、これから日経平均は円高株安に突入?
2. Posted by ジニ―銀河   2017年02月04日 00:42
マティス国防長官に感謝ということでしょうか?とにかくアメリカの立場はこれまでと変わらないということですからね。
3. Posted by 管理人   2017年02月04日 00:44
hayate さん、コメント有り難うございます。

雇用統計が好感された、などとされますが、今の米国市場は完全に壊れていますからね。少しでもよい情報だと、アルゴリズム取引で『買い』と入力してしまいがちです。しかしリスクオンで株買いをしているわけではなく、僅かな好材料を元にしているだけなので、非常に脆いともいえます。かつてのように、リスクオンなら、その方向で2ヶ月動く、といった投資行動ではなくなっているのですね。

逆にいえば、トランプ相場に移行してから、売りがリスクとして認識されてきたからこそ、買い一辺倒になってきた。しかし今、高い買いポジションがリスクになりつつある。トランプ氏が市場にとって不都合なことを言い出したら、その高いポジションを一気に撒き戻さざるを得なくなりますからね。どうもトランプ氏は、市場についてあまり知識がないようです。こんな不規則な行動をする首長のいる時代に、楽観しかしていない市場、それが最大のリスクと考えられるのですね。

今でさえ、円安メリットを受けていない業績発表が相次ぐ中ですから、日本の株価も正当化できる額ではないですね。それが円高になれば、ますます株安の方向となるのは仕方ないでしょう。米国ファーストの時代ですから、米国以外の企業は厳しい時代がくる。今はそれをまったく織り込んでいないだけに、日本の株価がそれを織りこみはじめたら、間違いなく下落するでしょう。今はまだそのタイミングではありませんが、いずれ必ずくる、と思っていた方がよいのでしょうね。
4. Posted by 管理人   2017年02月04日 00:56
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

いえ、マティス氏はあくまでこれまでの関係を確認しただけですから、これから変化させるのは、それこそトランプ氏に委ねた、ということなのでしょうね。そこには在日米軍の駐留経費や、在日米軍の位置づけなども含めて、です。それはいくら在日米軍の駐留経費を、独国や韓国より払っている、といってみても同じです。そうした交渉ごとは、トランプ氏に委ねたからこそ、マティス氏は今回の会談で議題にすることすら拒否したのでしょうね。

恐らく、マティス氏はトランプ氏の暴走を抑えられる唯一の人物、として日本側も最大限に配慮してみせたのでしょう。しかしトランプ氏の、国民との約束は守る、という姿勢まで変えられるほどの強い権限はもっていない。最大限、マティス氏の意見を忖度はしてくれるでしょうが、トランプ氏がそれで意見を違えるはずもなく、駐留経費の話などはマティス氏も口をはさめないのでしょう。だからこそ、トランプ氏との直接会談に委ねられた、ということですが、今のところ日本に打開策はない状態であることに、変わりはないのでしょうね。
5. Posted by ジニ―銀河   2017年02月04日 01:16
トランプ大統領が日本に100パ―要求するなら、
当然韓国やEUにも100パ―要求ということでしょうね?
それは実現不可能ですよね?
最終的には世界から米軍が撤退するのでしょうか?
それではトランプ大統領の対中強硬策はできなくなると思います。
6. Posted by 管理人   2017年02月04日 23:56
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

そんなこともありません。応分の負担という意味では別だからです。例えば、自衛隊は海外で実績がないから割高、ということもあるでしょうし、日本は守るけど米国は守ってくれない、ということでも負担割合は高くなるでしょう。少なくとも独国や韓国は、要請すれば米国の防衛にも駆けつけることができます。日本だけが法律でできないのですね。

だからと言って、改憲して自衛隊を海外に派遣できるようにしたとて、トランプ氏の意向は変えられないでしょう。トランプ氏の基準がよく分からない以上、何をしてもムダ、ということはありますが、貿易黒字国からは多くとる、という単純な思考パターンであるのなら、貿易黒字の割合に応じて負担させられるだけでしょうね。

米軍が完全撤退することはないでしょうが、規模は縮小する可能性は高いです。それは常駐軍を減らす、ということでもあり、そうなれば負担は減らせますからね。そもそも、トランプ氏が本気で中国とケンカする気があるのか? 中国でも事業を立ち上げようとして失敗した、という経緯もあり、それで恨みをもって…という可能性はありますが、入国制限でもトランプ氏が事業を行っているところを外したように、彼にとっては敵か、味方か、で判断を変えてくる可能性が高いのです。中国がすり寄ってくるなら、味方として遇する可能性があり、それまでの強硬路線であるなら、しばらくしたら対中融和姿勢に転じることも、考えておかないといけないのでしょうね。

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