雑感。宗教と政治と北朝鮮の動き

2017年02月18日

雑感。規制緩和の功罪

トランプラリーのつづく米株市場ですが、新薬の承認をスピーディーにする、としたトランプ大統領のヘルスケア改革に、医薬品業界は後ろ向き、という話がでています。要するに簡素化された試験で、新薬が承認されれば、そこに政府のお墨付きがないため、保険業界がその新薬に保険を適用できない、というのです。薬は承認されて、販売されればそれで終わり、ではなく、販売後にも予期せぬ副作用などがあり、訴訟リスクを抱えます。そのため保険をかけますが、厳しい審査を経た方が信頼も増すので、業界としてもありがたいのです。
例えば小泉政権でタクシー業界の参入障壁が取り払われる規制緩和が行われましたが、過当競争に陥り、タクシー業界が疲弊した、といったケースがあります。そして今、初乗り運賃を引き下げましたが、規制緩和なるものも、やり方を間違えれば、行政が手をつっこんでいることになる場合もあるのです。トランプラリーなるものも、今はすべて経済にとって好都合、という見方しかされず、米株市場は連日の高値更新となっていますが、規制緩和は諸刃の剣になる、それを無視した形でしかないのでしょう。

欧州でも、ギリシャ支援にIMFは50億€程度の拠出を想定、と伝わります。欧州の債権国は160億€を望んでいるようなので、これは大きな乖離です。しかしこれは欧州側が望外の期待を乗せすぎており、一体いつまでギリシャに支援をつづければ、債務国の状態から抜け出せるのか? といった目処も立たないまま、ただ生き永らえさせている状態です。
例えば、日本の東電も同じです。再建計画には原発再稼動を入れますが、原発の稼動など目処すら立っていないばかりか、柏崎刈羽原発を主に担当した東芝は、もはや原発事業の巨額損失で青息吐息です。米国では原発が高コスト発電だとして、続々と廃炉が決まっているのに、ナゼか日本ではそれが経営再建の柱になってしまう。保有しているだけで稼動しなければ、ただのお荷物でしかありませんが、日本だと低コストで動かせる、というのなら、どこかに歪があります。そんなものに頼り、経営再建を模索する時点で東電はかなり危険な経営状態です。東芝と同じ、原発を抱えていれば国が破綻させない、という仕組みだから、赤字であっても原発産業を抱える、それで存続させられている、というのなら規制どころか、寄生によって生き永らえている状態ともいえるのでしょう。

安倍政権では、17年末の待機児童ゼロ、についても公約を見直しました。幼保の一体化も徐々にしかすすまず、必要なところの規制緩和、構造改革がすすまない。少子化にもつながるこうした分野に手つかずで、安保法制や共謀罪に邁進する安倍政権。日米の共同声明でも財政政策と構造改革を柱にふくめたのに、日本の最大の問題である少子化を解消するための施策を置いてきぼりにしていては、成長戦略も何もありません。
日本株が米株についていけなくなったのも、米国は経済が堅調でテーパリングを開始する、日本では日銀が行き詰って自然テーパリングが開始される、そのため日米の金利がともに上昇する形にしかならず、円安がすすみにくくなったためです。米MMFの取り組みをみても、円売りを徐々に解消しており、それは米国の事情だけをみてドル買いをしていたものが、日本の事情についても目を向け始めたことを意味します。日本の事情、それは安倍政権が自身の成果とするため、異常なことをしたそのツケを支払う段になって、何の経済成長もしていない、という現状をみとめることです。そして日銀がそろろそツケの清算に入る。日本では規制緩和どころか、季世(世の末)の状態に入っており、そんなムードが市場の勢いにも現れてしまっているのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 23:30│Comments(8)経済 | 政治

この記事へのコメント

1. Posted by hayate   2017年02月18日 23:44
ギリシャはフランスを始めユーロ圏から武器を買わされてる為、すぐには破綻させられないという記事を読んだ記憶がありますがどうなんでしょうか。

ある意味、病人の延命処置も納税する国民も『生かさず殺さず』アメとムチを使い分けて細く長く吸い上げる事が得策という事でしょう。
2. Posted by 管理人   2017年02月19日 00:17
hayate さん、コメント有り難うございます。

ギリシャは確かに、かつては中東の脅威の最前線、という面もあって武器が必要でもありましたが、そのことと今回の欧州の動きとは、また別でしょうね。債務の大きさも問題ですが、EU、ECBとしては域内で破綻がでてくると、それがドミノのようになるのを怖れているのでしょうね。今はあまり話題になりませんが、破綻懸念のある国は他にもありますし、破綻した国を抱えているEU、ECBの格付けがどうなるかも分かりませんからね。確かに武器という側面はあるでしょうが、個人的にはそうしたものは微々たるもので、むしろこうした金融の連鎖、不測の事態がおきることを怖れているのだと考えています。

今は多くの国が、国民を守ることより、国としての体裁を守ることを至上命題としてしまっているようです。結局、そこには国を守ろうという国民の意識も育たず、それこそ愛国教育のようにして、無理やりそうした意識をつめこむ、といったことしかできない国が増えているようにも感じます。日本までそうした国になっている以上、他国を批判したりもできませんが、国民が早くそうした国の搾取に気づかないと、いつまでも損をする側になってしまうのでしょう。生かさず殺さず、で成功しているうちはいいですが、生殺しをつづけていると、そのうち不平不満もたまってくる。世界は今、不安定化の方向にむかって、どこも突き進んでいるのが現状なのでしょうね。
3. Posted by ジニ―銀河   2017年02月19日 05:48
ギリシャを取り巻く軍事情勢は知りませんが、日本は間違いなく中国の軍事的脅威に直面していますし、北朝鮮の核ミサイルの脅威にも直面しています。よって日本は更なる防衛努力が必要だと思います。
4. Posted by ひまわり   2017年02月19日 13:38
こんにちは(^-^*)/
トランプ第2幕の始まりとか聞くのですが、経済に関して全然素人ですが、ただ、アメリカの自動車販売や住宅関連、雇用はピーク打っているように思えるのですが。株もそうですが伸びきっているのではないですか?とくに新車販売が2年続けて1700万台以上の売上は完全先食いですよね。
中古車の価格も下落しているようですし。去年、新車売上への報奨金が30万円以上とかで無理矢理売っていたのではないですか?先週発表された家庭の債務もリーマンショック時数字に接近とかですよね。
5. Posted by 管理人   2017年02月19日 23:11
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

そんなことを言い出せば、どこの国だって軍事的脅威に晒されていることになるのですけれどね。それこそ東南アジアもそうですし、チベットやインドだって中国の脅威にさらされている。だからと言って、軍拡競争をしているわけでもない。ナゼか日本でだけ、そうした中国脅威論で、やれ軍拡だ、と叫ぶ人がいる。それはどこの国でも、脅威、脅威といって軍拡を叫ぶ人がいることは間違いありませんが、そうなっていないのは多数派ではないからです。

そして今は、形骸化しているとはいえ、国連が機能している状態であり、第二次大戦前と異なり、国際連合が機能しなくなっていた状態でもありません。そうしたケースでは、国際社会と協力しながら、某国の暴走を抑える、ということが国際コンセンサスになっています。ナゼか、それが日本では米国一国しか頼れない、米国がいないと、日本が軍拡するしかない、と述べるのですが、世界の趨勢とも異なりますし、そんなことをしていたら、恐らく財政が破綻してしまうでしょう。まず一次打撃を防ぐには、国際社会の協力をとりつけるには、同盟は米国だけで本当によいのか、など様々な要件によって、軍事力の相対的な抑止効果が期待できるのですね。

軍事力を単純な足し算だけで考えていると、ひたすら軍拡競争をくり返す、となるでしょう。だからこそ外交が重要、ということなのですね。
6. Posted by 管理人   2017年02月19日 23:37
ひまわり さん、コメント有り難うございます。

米国の自動車業界は、販売奨励金によって販売台数を維持している状況ですから、間違いなく消費の先食いです。もうその競争を始めてしまったからには、他社に遅れをとるまい、としてほぼすべてのメーカーが手を染めている、というのも異常事態でしょうし、もう一つの問題は自動車サブプライムローンも横たわる点でしょう。つまり所得が低い人でも、サブプライムローンの仕組みをつかって車が買えるようになった。もうとんでもない状況で、米国の景気は押し上げられている、といった状態ですね。

トランプラリーとやらも、個人的にはバブルの最後に咲いた徒花、といった見方をしています。だから株式市場など、もう実際にはそうなるはずもない、といった期待まで乗せて、上値を追っているのが現状ですね。言ってみればこれは、日本でも安倍ノミクスラリーが起きましたが、景気によさそう、という官製相場を演出されると、今のアルゴリズム取引ではディーラーがスイッチを買い、で入れてしまうために起こります。上昇した理由は後付ですから、おかしいと思うような理由でもこじつけるしかなくなるのですね。

早くバブルをつぶさなくては、と焦るFRB。そうではなくバブルをつづけろ、というトランプ氏。当面はその綱引きもあって、市場がほどよい状況、つまりゴルディロック状態だと勘違いしながら上げる、といった展開がつづくことになってしまうのでしょうね。
7. Posted by ジニ―銀河   2017年02月20日 00:41
日本は軍事的脅威があるにも関わらず、軍事費のGDPに占める割合が低いのではないか?と言いたいのです。いつかトランプ大統領からも言われると思いますけどね。
8. Posted by 管理人   2017年02月20日 23:50
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

上記していますが、軍事的脅威はどこの国もあります。だからGDPのどれぐらいを軍事費にかければ、その脅威が緩和するのか? といった定量的なものは何もありません。そんなことを言っていたら、GDPの低い国は軍事費にかける予算もなく、攻め込まれてしまう、という話にもなるでしょう。そんなことは起こりえませんし、事実かつて中国はベトナムに攻めこみ、コテンパンにされて撤退した経緯もある。軍事費だけで計るのは、とても愚かです。

それに、米国が日本の軍事費増額をみとめたら、重大な戦略転換となるでしょう。これまで米国は、日本が戦力をもつことを極度に怖れてきました。日本国憲法に戦力の不保持、が示されたのもそうした理由です。太平洋戦争のトラウマで、米国は日本の軍事傾斜が怖くて堪らない。今は安倍政権が親米なので、問題ありませんが、仮に日本が軍事傾斜した後で、反米政権が誕生したとき、米国にとってはアジアに最大の脅威が生まれた、と感じるでしょう。そうした未来の可能性があるにも関わらず、米国が日本に軍備増強を提案するとしたら、それは米国の戦略局の意向をトランプ氏が無視するか、もしくはそれを上回る戦略を提案されたときぐらいでしょうね。いずれにしろ、それは米国による対日戦略の大きな転換点になります。

そうする理由もないのですから、米国がそれを望むとは思えません。ただ、兵器はいっぱい買え、と言ってくるかもしれません。F35を値下げしてやったから、こっちの兵器を買え、とは言ってくるかもしれませんね。

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