2017年04月19日

日銀の金融システムリポート

日銀が金融システムリポートを発表しました。「自己資本比率は規制水準を上回っており、安定性を維持」とします。「収益力が下押しされてもリスクテイクできる」とも。しかし金融機関が提供するサービスは「均質で代替性が高く」競争が激しいから、不安定化する恐れがある、とも。ひどい物言いですが、要するに日銀が長期金利をゼロにはりつけ、金融機関は収益力が低下しても大丈夫だろうけれど、金融機関の努力が足りずに同じようなことをしているから、破綻するところが出てくるかも、と述べているのです。簡単に言えば、もし金融システムが不安定化しても、自分たちのせいじゃない、お前たちのせいだ、とでも言いたげです。
それでいて金融機関が収益維持のために、過度なリスクテイクをとると過熱し、リスクだとします。また収益低下に歯止めがかからなくてもリスクだ、と。要するに、金融機関はほどほどのリスクをとり、新しい商品を開発するなど自己努力で収益を回復しろ、という何とも都合いい結論です。すでに地銀や信用金庫など、外債に手をだして厳しい環境にある、ともされます。リポートの中でも不動産投資の伸びが気になる、とはかかれますが、だからどうする? という提案はない。問題意識のもち方から対応に至るまで、日本の中央銀行としては些か心配になるほど、能力不足が否めない内容となってしまっているのでしょう。

最近の日本の株価は、米国株の動きを予想して売買がすすむ、といった傾向があります。為替の連動性を離れ、また売買が低調な中で、アルゴリズム取引はその日の晩の米株の動きを予想し、売りや買いを傾ける。しかもその予想が外れてもすぐに解消するのではなく、じっくりと取引する。当然、想定の範囲以上に動いてしまえば異なるのでしょうが、今はそうした市場環境にない。上値は重く、下値は日銀が控えており、底堅い。そこでそんな取引が増えているのでしょう。
金融機関はそうやって新たな仕組みを生み出し、収益を得ようとする。以前は株と債券との仕組みであったり、少し前は為替との連動だったり。そしてそれが広まり、対抗策が打たれたり、環境が激変したりするとそれが廃れ、新たな仕組みが生まれる。日銀の言うようなリテール部門だけをみて、均質などという話ではないのです。自己資本取引の部分は以前と比べると著しく低下しましたが、金融機関とて生き残るために必死なのです。

政府が日銀審議委員人事で提案したのは、緩和派の片岡氏と、バンカーの鈴木氏で、バランスをとったつもりでしょうが、今でさえ黒田日銀総裁の意を忖度した緩和派が多いにも関わらず、一人ぐらいの銀行出身者を入れたとて、状況が変わることはありません。安倍政権は今、黒田バズーカを見直されては困る、ということなのでしょうが、事実上日銀が緩和を継続するにも青息吐息のような状況です。
もし本当に消費者物価が上昇すれば、日銀は長期金利をゼロ近傍で張り付かせるために行っている買いオペにも、膨大なコストがかかる。そしてそれは事実上、日銀による財政ファイナンスとの指摘もある。しかも国債を高値掴みしてしまえば、日銀が買いオペを止めた途端、価格下落に伴う巨大な損失が生じることにもなりかねません。

実は、日本の金融システムを一番不安定化させる要因は、日銀がため込んでいる資産、その価値ともいえるのです。信用棄損にもなれば、それこそ日本の金融は崩壊することにもなるでしょう。米FRBではじまったバランスシート縮小、ナゼそれが必要か? それすら話題にならない日銀に、日本の金融をゆだねることこそ最大のリスクとも言えるのでしょう。金融システムリポートより、日銀の健全性についてのリポートを出す方が、よほど説得力もありますが、「ロクでもない黒だ」総裁では金融システムの改善すら望み薄、といえるのでしょうね。

analyst_zaiya777 at 23:34│Comments(12)このエントリーをはてなブックマークに追加 経済 | 一般

この記事へのコメント

1. Posted by ジニ―銀河   2017年04月20日 05:05
日銀に預けているだけでめしが食える
ゼロ金利以前の日本の銀行が、まともとは言えないのも事実だと思います。

2. Posted by 不自由民主党総裁   2017年04月20日 09:14
黒田バズーカって何の効果も無かったはず。見直しをしないといかんよ。
3. Posted by ジニ―銀河   2017年04月20日 18:39
金貸しは人に金を貸すのが商売です!
金貸しがどこかに預けて商売になるというのは、聞いたことがありません!
4. Posted by 不自由民主党総裁。   2017年04月20日 20:59
あのろくでもない黒田総裁が再任されることはあるんでしょうか?ある記事によると再任される可能性もあると書いてありましたが…
アベノミスと黒田バズーカ…どう見ても失敗でしょ?失敗を認めたくない気持は理解できますが、明らかに失敗していることをいつまでも続けるのもどうかと思いますが?


5. Posted by いろはのい   2017年04月20日 21:08
日銀は、金利ゼロ政策と物価上昇2%の整合性を説明してもらわないとね。
物価上昇が2%になるまで、金利ゼロ狙いを続けるのか。
しかし金利ゼロということは、将来も物価が上がらないということだから、
日銀は、「物価が上がると困るんですよ」と言っているのと同じで、
物価上昇2%狙いはウソということになる。

ところがいまだに日経は、
最近物価が上昇してきてアベノミクスの効果が、などと
見当外れの記事を書いている。
6. Posted by 管理人   2017年04月20日 23:54
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

それは本当に愚かな論です。安倍ノミクスを礼賛する御用学者とメディアが流したデマ。通常、金融機関は日銀の当座預金に預けたくありません。例えば、経済成長が3%あり、当座預金への付利が2%しかない場合、金融機関では1%の損失とカウントします。本来であれば3%増えていないといけないのですから。日銀とて、損を覚悟で経済成長より高い付利などをつけることもない。それでも金融機関が日銀に当座預金を積むのは、それでできる活動があったり、金融機関としての信用がつくためです。本来であればやりたくないのです。

そんな事情が一変したのはマイナス金利にしたから。マイナス金利にしたのは経済成長していない、ということ。それなのに付利により金融機関の当座預金には利息がつく。日銀に預けているだけで儲かる金融機関は許せない、などと盛んに吹聴されたのは、マイナス金利にしたことを正当化し、付利をなくす口実にされた、いわば恫喝にすぎません。つまり本当の問題は、マイナス金利になるような経済状況である、ということなのです。自分たちは悪いことをしていない。悪いのは金融機関である、というすり替えのためのデマ。そんな発言を信じ、使っていたら、ジニー銀河 さんがうそつきになるだけです。

今の金融機関は金貸し、リテール部門はたいして重要視されません。貸しても金利が低くて儲かりませんし、何よりリスクが高い。安全な投資先はもうほとんどメインバンクが押さえられ、貸せないのが実情です。だから運用だったり、手数料収入を重視する。そういうことも知らず、金融機関を金貸しとしか認識していないようでは、いつまでたっても嘘つきになるだけでしょうね。
7. Posted by 管理人   2017年04月21日 00:16
不自由民主党総裁 さん、コメント有り難うございます。

黒田氏の再任の可能性は高いでしょうね。なぜなら、誰もやりたがらないから。これから嫌でも出口戦略に向かうことになりますし、その終息のさせ方は相当に難しい。誰がやっても失敗する可能性が高く、よほど売名したい金融関係者といえど、次はかなり難しいことが始めから分かっているのですね。

さらに自民党にとって、今は黒田バズーカしか頼みの綱がない。今更、財政出動もできなくなってしまい、本当に自民は景気浮揚策がなくなってきた。最近では、補正予算の財源にさえ苦しむ始末で、埋蔵金とよばれたものも尽きてきて、日銀が出口戦略をはじめただけで、日本経済は大きな下落局面に入ることが確実です。しかもそれは、出口戦略の議論をはじめただけで、そうなる可能性が高い。自民党としては、何とかして黒田バズーカはさらに手がある、撃てる、という幻想をばらまくしかないのですね。そのために、黒田氏に代わってもらっては困るのです。ほかの人になって、より大きな緩和ができればいいですが、日銀とて余裕がない中、もう限界が近いのですから。新しい人ではダメ、だから黒田氏を続投させたいのですね。

しかし黒田氏もつづけたくない。後1年で辞めれば逃げ切り、つづければ嫌でも自分の責任で出口戦略を考えないといけない。次の日銀総裁、押し付け合いになる可能性も高いのでしょうね。
8. Posted by ジニ―銀河   2017年04月21日 00:33
ようはメガバンク以外は、危ないということでしょうか?
投資先が無いなら、銀行の存在理由がありませんよね?
9. Posted by 管理人   2017年04月21日 00:40
いろはのい さん、コメント有り難うございます。

困ったことに、黒田総裁はまだ2%には遠いけれど、確実に成果はでてきている、と意味不明なことを語るほど、自分のやっていることのわけが分かっていないのですね。円安により輸入物価が上がり、消費者物価が上昇する瞬間もありましたが、日銀が為したことで円安になった、というなら効果もあったのでしょう。ただし、それは国民にとって極めて不都合な結果でしかなかったのでしょうね。

マイナス金利にしたのが、単なる消費者物価2%達成のため、とは誰も思っていない。日本経済がそれほど悪いから、というのが実態です。それなのに政府は認めていませんし、むしろ日本景気はいい、という月例経済報告をだしている。しかしトランプバズーカはどうやら不発、大型の減税がなくなれば、今の減税を見越してもち上がった米経済が、ふたたび巡航速度にもどることでしょう。しかし、残念ながら米国も個人の負債が上昇しているように、巡航速度にもどるだけで、下押し圧力が強まることになる。そのとき、日本経済の化けの皮もはがされるのでしょうね。

恐らく、今年の後半あたりはもう大変なことになっているかもしれない。物価2%どころか、デフレに向かって一直線なのでしょうね。そのとき、一体日銀がどうするのか? どんな手が残っているのか? 想像するのも憂鬱になるような話なのでしょうね。
10. Posted by 管理人   2017年04月21日 00:53
ジニー銀河 さん、コメント有り難うございます。

要は…というか、そこをまとめてはいけないのですが、まず金融機関が今は金貸しではなく、運用、手数料収入を重視する、ということを理解しないといけない。投資先がないからといって、銀行がなくていい、などというのも暴論です。重視していない、とはいってもリテールは重要ですし、金融機関がお金を貸さなければ、企業とて資金繰りに窮するのですから、それも大事な役割です。なぜか、非常に簡略化した形で理解しようとされているようですが、そんな単純な世界ではない、ということなのです。だから要は…などとまとめてはいけませんし、そんな変な固定観念だけで語っていたら、すべて間違いになる、と指摘しているのです。

日銀に預けたら飯が食える、などということもない。そもそもたかだか0.5%の付利では、収益にすらならない。それこそ日本が1%の成長をしていたら、その分は損失にしかならないのです。日本がそんな成長をしていない、だから利息をつけると日銀が損をする、ということを「金融機関は日銀に預けているだけで稼いでいる」という意見にすり替えていた。これを正しく理解しないといけません。そうでないと、また同じことをくり返すことになります。念のためにくり返していますが、今度同じことを質問されても、恐らくもう説明はしないでしょう。だからこれは確実に理解してください。

正直、このデマは金融に携わる人間にとって、もっとも腹立たしいものです。だから安倍政権から金融機関は手をひいた、とも言えるでしょう。もう安倍政権に景気浮揚は無理、と諦めた言葉ともいえます。投資先がないから探さないといけない。だから地銀や信用信託は苦戦している。金融メルトダウンが起こりかけている、というのが現状なのですね。
11. Posted by いろはのい   2017年04月21日 20:58
そうやって銀行をこきおろして、体力のない地方銀行はつぶれてもいい
などと暴言を吐いているのが、某T氏ですね。
もはやネトウヨ御用達のエセ評論家になってしまったようです。

そのT氏は、日銀が国債を買っていれば
政府は利子を払わなくていい、としきりに言っていますが、
国家予算上は、利払い費として計上する必要があるのでは?
すると、実際は必要ないお金のために予算規模が膨らむことになります。
日銀が受け取る利子を政府収入に置き換えれば、
確かに支出と収入の整合は取れるのですが、
実際にはお金のやり取りをしないのに、
予算規模だけが膨らむのは、何かおかしい気がします。

国債利率が0%なら、そんなことは起こらないので、
利率0%狙いはそれが目的では? と疑っているのですが(笑)

※上で質問している人は、しばらくすると平気な顔で、
また同じことを言うかもしれませんが、
他の人には、非常に参考になっていると思います。
管理人さんに感謝しないといけませんね。
12. Posted by 管理人   2017年04月22日 00:21
いろはのい さん、コメント有り難うございます。

日銀が国債を買い貯めていても、一部は返納という形で国庫に返ってきますから、間違いではありません。ただ、それこそETFやREITの損失が増え、また国債価格も暴落すれば、せっかくの利子収入を国庫に返納することもしなくなるでしょう。つまり利払い費は、そのまま日銀へと消えていく。そんな日は近づいているのでしょうね。

正直、T氏の経歴は財務省辺りからしか知りませんが、非常に単純な理屈の上で物事を考えているとしか思えず、簡単な足し引きの計算しかできないような、そんな危惧を抱いています。埋蔵金をみつけたことで名を挙げましたが、それこそ表にでてきている、紙に書いてあることは目につきますが、その裏で何がおこっているか、それを見抜く目は残念なことにない、といえるのでしょうね。

これまでは利払い→返納→補正予算の財源、という形で回っていたのですが、それこそゼロ金利になれば、それも減る。さらに日銀が赤字を垂れ流したら金融全体がおかしくなるので、赤字にするぐらいなら返納しない。そうなれば、補正予算を組む財源もなく、景気対策も打てなくなり…という循環が起こるのですね。まさに昨年、3回も補正予算を組みましたが、最後は赤字国債になったようなものです。安倍ノミクスの限界は、もう様々な形で露見するようになってきたのでしょうね。

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