原子力

2016年07月20日

川内原発と大飯原発

自民党がHP上で、参院選における「学校教育における政治的中立性についての実態調査」を6月25日から実施、自民党は「公選法に抵触するような明らかな事例も含め、相当数集まった」として、7月19日に閉鎖しました。しかし違和感だらけなのは、まず記名投稿であり、具体的な内容を入力するよう求めていたこと。これは独裁政権が行いがちな、秘密警察の前身になる可能性が高い。つまり密告社会の到来を予感させます。投稿者には素質あり、として自民は連絡をとり、こうした若者をネット巡回させて自民に厳しい意見をする者を報告させ、また自民に都合よい情報をばらまくための人材として育成、組織する気かもしれません。
次に、公選法では教育者の地位利用の選挙運動の禁止、があって、選挙運動ができない決まりである一方、啓発はしなければいけない、という矛盾があります。模擬選挙などを行う場合でも、教員が助言しただけで選挙運動と見なされかねない。逆に言えば、公選法を盾にとり、政権に都合よい教育をした場合のみ、罪には問わないとする流れを助長する恐れがあります。余計なトラブルを起こしたくなければ、与党のいうことに従えよ、という無言の圧力となって教育現場を覆う。安倍自民は日本を息苦しい国にしたいのか、とさえ感じます。町を歩いても、どこに密告者がいるか分からない北朝鮮のような国にする気かもしれません。

その参院選と同時に行われた鹿児島県知事選挙、テレビのコメンテーターを務めていた三反園氏が当選、川内原発を停止する公約を掲げていたことから、8月中にも再点検を含めて一時停止を申し入れる見込み、と伝わります。三反園氏自身、原発に対して反対とはみられていませんが、県知事選における野党共闘として、反原発を掲げる候補の主張をとり入れて、統一候補として立っていただけに注目されていました。「再点検すれば信頼性を増す」という意見は、明らかに公約を優先したもので、停止に対する思い入れはないのでしょう。しかも10月には停止して定期検査を行う予定であり、これは夏場の電力需要を考えてのこと、それを覆して2ヶ月早めに停止し、夏場の暑い時期をどう考えているのか? その判断には疑問を感じます。
そもそも川内原発は熊本地震でも注目された、列島を横断する活断層群の西端に近く、また日本でも有数の巨大噴火をおこした地帯でもある。さらにトラブル続きで、九州電力に安全に運営して行く力があるのかどうか、すら疑われる。再点検で一体、何をどう改善させていくのか、その具体策はよく分かりません。鹿児島や熊本県民の避難計画とて、中々安全に誘導できる案が策定できていない現状で、一旦止めるけど再稼動を前提、という立ち位置で本当に大丈夫か? そんな不安を禁じえません。

しかも原子力規制委員会の島崎委員長代理が、関電の大飯原発に対し、関電の計算方法では垂直に近い断層の揺れを大幅に小さく評価する、と指摘。しかもその後、原規制委が再計算した結果、関電より低い数字だったとしたものの、再度の島崎氏の指摘により、再計算はムリにだした数字だった、と認めました。つまり島崎氏が執拗に計算方法がおかしい、と言い続けなければ、関電の過小評価を、原規制委が追認しようとしていた、という異常な状態発覚しています。これは看過できない問題で、そもそも関電の計算式が誤りであるという以上に、それを規制する側もその能力を有していない、という重大な問題を含みます。原発の再稼動にむけて、原規制委のお墨付きなどザル、ということを示したのです。
原規制委員長の田中氏は「改めて協議する」と述べていますが、その前にお手盛りの計算をした、その職員と指揮命令系統について、しっかりと調査して詳らかにし、再発防止策を講じる必要があるのでしょう。そうでない限り、原規制委の存在自体が電力会社の追認機関であって、お墨付きは安全を意味しない、という認識が広まるだけです。安倍政権では「学者の判断…」云々と、原発再稼動の判断はあくまで科学的知見に基づくもの、という立場です。しかしその学者が任にふさわしくない、能力不足と同時に、恣意的に結果を改竄するのであれば、それはもう論理として破綻しているのです。教育機関における政治的中立性をいう前に、学識経験者、有識者におけるその知識の欠乏、能力的欠陥、そして政治的中立性を保って判断できる高潔な態度、そんなものが不足していることが、この国では顕著になってきているのでしょうね。

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2016年04月02日

核安保サミットの安倍首相

核サミットで訪米中の安倍首相が、記者との懇談で消費税再増税について「適宜適切に判断」と、ついに再延期に言及しました。新年度入りした株式市場が急落するなど、何らかの下支えをしなければ…と考えたのでしょうが、株式市場にはほとんど関係ありません。逆に絶対に増税する、G7や参院選までに言及がなければ、逆に売り材料にはされますが、今の判断は相当に織り込んでいることもあって、フラットです。そもそも、増税延期では景気押し上げ効果がありません。

そんな核サミットですが、安倍氏は演説で「日本は二度と(福島原発のような)事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と述べました。世界でもっとも厳しい規制基準をつくった、と胸を張りますが、送電を開始した途端に緊急停止した高浜原発4号機や、海底の活断層も考慮すべき、として大津地裁に稼動停止命令をうけた高浜原発3号機、それに朝日新聞に指摘された川内原発のモニタリングポストの問題など、日本が世界でもっとも厳しいのなら、世界はどんな甘い基準で原発を動かしているの? と不安にさせる事例が相次いでいます。逆に、本当に日本が厳しいのか? と疑わしいものでもあるのでしょう。
安倍氏は「高水準の透明性をたもってプルトニウムを管理している」「利用目的のないプルトニウムはもたない」としますが、政治が「高水準」などという程度の知れない言葉を用いるときは、大抵は基準が曖昧なときです。そもそもプルトニウムはIAEAの査察事項なので、高水準も低水準もありません。査察を逃れてプルトニウムを所有していたら、それは国際規制の違反であって、国際的な監視対象になります。今の北朝鮮や、少し前のイランと同じです。低水準の透明性でプルトニウムを管理していたら、それこそ国際社会から非難されていることでしょう。

それに日本のプルトニウムは、利用価値がありません。高速増殖炉の計画は、もうほとんど頓挫したも同然ですし、MOX燃料もその処分方法や受け入れ自治体の少なさから、利用はすすまないでしょう。それに最大の問題は、MOX燃料程度の処理量では、今のプルトニウムの量をまったく捌ききれないことです。それこそプルトニウムの平和利用先が新たに開発されない限り、日本はプルトニウムを未来永劫、管理するコストを負いつづけることになるだけなのです。
さらに凍土壁に着手した福島原発。東京五輪の招致時「under control」と安倍氏は述べましたが、未だに放射性物質の漏洩は止まらず、汚染水の処理もすすまず、もはやタンクの新たな設置場所にも困る始末です。下手をすれば福島原発の敷地をでて、避難地域までタンクで埋まって行くのかもしれません。安倍氏は世界がプルトニウムの「完全な透明性の確保」のため、支援して行くつもりだとします。「事故で得た教訓や知見を、世界に広げていくことが日本の使命だ」とも。しかし国民の耳はunder controlしているつもりでしょうが、世界の検証に耐えられるとは、福島原発の惨状はとても思えません。under controlは「制御下」という意味ですが、最近の安倍政権の支持率、世界的な評価をみるにつけ「支配力の低下」にみえてくるのは、単なる間違いという言葉では片付けられなくなってきたのでしょうね。

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2016年03月18日

原発周辺のモニタリングポストにおける朝日と原規委の対立

川内原発の周辺に設置された線量計について、朝日新聞の報道に対して、原規委が「防護措置がとれないかのような誤った解釈を招きかねない」としてHP上で抗議し、原発賛成派のメディアも巻きこんで朝日叩きをしています。簡単に朝日の記事をまとめると「原子力災害対策指針において、原発から5〜30kmの住民はポストで毎時20μSvが1日つづいたら1週間以内に退避、毎時500μSvなら即退避。ただし、川内原発周辺の48のポストのうち22が80μSvしか計れない。判断につかえない。鹿児島県原子力安全対策課は近いポストで計る、もしくは可搬型のポストを備える、とするものの、県が所有する可搬型ポストも44台のうち30台が毎時100μSvしか計れない」というものです。高浜原発でも41箇所設置する計画のポストが、3、4号機が再稼動した時点で、まだ27箇所が未整備とします。つまり、この指摘は朝日新聞側に完全に正当性があります。

再稼動を焦るばかりに、川内原発も高浜原発も急ごしらえで様々な準備をしても、モニタリングポストという住民を守るものに、落ち度があったのです。田中原規委員長が、朝日の指摘を「無用な不安を煽り立てたという意味で犯罪的」とまで述べ、モニタリングによって判断するのに十分かどうかが問題、とします。しかし考えてみれば分かりますが、500μSvまで計れないものは、即退避の判断には使えない。つまりムダです。確かに計測の範囲が広ければ精度が落ちる面はあるものの、500μSvと480μSvを別けて考える必要はありませんし、20μSvなら1日後に退避でも、19μSvなら退避は必要ありません、などと杓子定規に考える必要は、まずないでしょう。だとしたら毎時500μSvのものをすべて設置しておけば、各所で退避判断ができることにもなります。
それと、可搬型ポストをもっていけばいい、としますが、県の職員が無用な被曝をしてしまうことにもなります。放射性物質の漏洩がおきそう、という段階ならまだしも、すでに気密が破れている場合は、近づくだけで被曝する恐れが出てくる。わざわざそんなことをせずとも常設しておけばよい。ますます500μSvを計れないポストの存在は疑問で、計れるようにしておくべき、と思えます。

さらに、全国でモニタリングポストの設置が500μSvで統一されているとしたら、川内、高浜原発の周辺のみ、適用外にする意図が不明です。各自治体の担当者は「500μSvで当然」と述べるので、恐らく500μSvまで計れない方が特殊、なのでしょう。そうなると、各自治体が過剰スペックなのか? 本当は混在させておけばよかったのか? という問題にもなります。
いずれにしろ「判断に十分な」数があればいい、というのなら、それこそ3つで十分です。一方は海ですから、残り3方で5kmのところに1つずつ設置すればよい。一番危険な場所で、線量が確認されたら全員が逃げた方がよいのですから。緊急時に人為的判断を交えることはミスリードを生み易く、ここは退避、ここは待機、などと別ける方が混乱を生みます。むしろ常設型のポストを細かく設置するのは、退避する際のルートを考える上で重要なのでしょう。こちらは線量が高い、こちらの線量は上がっている、だから線量の低い方に退避する、というケースです。しかしそうなると住民の避難計画そのものが破綻し、渋滞が発生したり、混乱も生じるでしょう。ますますモニタリングポストが大量にあることの弊害、が意識されることにもなります。

川内原発も高浜原発も、その中途半端さが最大の問題です。他の原発立地地域との横並びも含め、必要なことと、不必要なこととの説明が曖昧。それを指摘した相手に対して「不安を煽る」などと述べるところが、規制主体であるからこそ、逆に不安にもなります。安倍政権になってから、指摘や批判に対し、とりあえずカウンターパートとして相手を攻撃する、という機会が増えています。公的機関ばかりでなく、企業も同様、見苦しいまでのイイワケと、説明になっていない説明で言い逃れしようとする。こうした悪意ある対応をするところには『善良計』を設置して、それが国民のためになっているのか? きちんと計ることが必要なのかもしれませんね。

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2015年08月11日

川内原発の再稼動

中国が人民元の対ドル基準値を2%切り下げてきました。一部で輸出回復を狙って、という話もでていますが、輸出競争力は得られても回復するかどうかは、相手国の経済次第です。日本でも円安になると輸出増…と述べたところで、現実的にそれが起きていないように、価格据え置きで単価を上げる戦略であれば、企業業績は回復させても国内経済への寄与は小さい。仮に単価を下げ、数量効果を狙っても、相手国の需要が縮んでいれば大した効果がありません。
むしろ今回の狙いは、単価を下げることによって、相手国にデフレ圧力をかけることではないか? とみられます。昨晩のフィッシャーFRB副議長発言が的を射ていますが、低インフレ率では利上げできない。この言葉に集約されるように、資源価格の下落、通貨高によって欧米にデフレ圧力をかけ、金融緩和状態をつづけさせる。それがひいては中国景気を下支えする。中国企業の見かけの業績も改善すれば、高すぎる株価も正当化されるかもしれない。そんな思惑が透けてみえます。日本への影響は、インバウンド消費の減退は必然ですし、人民元建ての取引は少なくとも、輸入物価の上昇をもろにうけ、中国内の競争は厳しくなります。株式でも、インバウンド関連の高PER銘柄が下落したように、円安メリットの低下という意味のインパクトも出てくるでしょう。

九州電力の川内原発が再稼動しました。原油価格が下落し、イランの核合意による原油市場への復帰で、一部では供給過多の現状から採掘所の淘汰がおきるまで、1バレル30$も割れるのでは? とも語られます。つまり火力発電には追い風が強く吹く中、準備ができたからの再稼動です。一部メディアでは「原発ゼロ解消」とかかれます。これは原発ゼロを問題だ、とする意識から書かれるもので、原発ゼロを正しいとする意見では「〜に幕、〜途絶える」という表現になります。
しかしこの表現の問題は、そもそも「原発ゼロ」にあるのではなく「原発稼動ゼロ」にある点です。つまり「原発がゼロ」になったことは、福島原発が臨界状態に入ってから、一度も日本には起きていない。ただ稼動していなかった、というに過ぎません。原発がすべて廃炉になり、更地になって初めて「原発ゼロ」が日本に達成されるのであって、むしろ「原発ゼロ」が目指すべき方向性であり、それと逆行する動きが今日おきた、という意味で節目ではあるのでしょう。

さらにこの川内原発の問題は、九電が「責任はある」と認めても「責任はとれない」ことです。福島原発の事故以後、原発事故時の保証のための積み立てもできましたが、事故の影響を鑑みれば、まず電力会社の能力を越えます。国は「責任は事業者で、国にない」という態度ですが、結局「責任をとらざるを得ない」のであり、そこに投入されるのは税金です。政治家が、自身の責任逃れをしたとしても、国が「責任を放棄」すれば、電力会社が潰れるか、国民が多大な被害をうけることになる。どちらにしろ国が傾くほどの甚大な問題を引き起こしてしまいます。
国は「責任がない」から、地方自治体の避難計画策定にも関与しないのか。事業者は「責任がある」のに、事故を起こさないというだけで、起きたときのアフターケアまでは「責任を負わず」、やはり避難計画には関与しないのか。原発の問題は、国や事業者がいかにその態度が信の置けないものか、を浮き彫りにするのでしょう。それは如何なる問題においても相手を信用できるか、に関わるのであり、国会開会中にも関わらず、また国民が様々なことに不安、不満を感じている中で休暇をとった首相、という面からも信用に足りなくなってきているのでしょうね。

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2015年07月20日

原発、使用済み燃料棒の処理は国に移管か?

安倍政権の支持率が、各社世論調査がでそろったところ、凡そ支持37%、不支持50%ぐらいになっています。しかも今後、政権にとって厳しいスケジュールが並ぶ。70年談話は、中韓に厳しい形の談話とすれば、中韓との関係改善はおろか、米国からもにらまれます。保守層への支持を勝ちとることも困難で、逆に失敗すればさらに支持率下落を招きかねない。川内原発の再稼動問題も、反対運動が広がれば、それも政権への打撃となる。株価も中国バブル崩壊が直撃すれば、18000円ぐらいは簡単に割ってくる。米国で相次ぐ消費意欲の減退の記事も、米中という二大消費大国の失速は、株価という面ではじわじわと利いてくることにもなるでしょう。

そんな中、さらに政権の打撃となりそうなのが、電事連による下北再処理施設の運営を、国に所管して欲しいという話です。すでに総事業費は3兆円を越えているとされながら、一向に稼動する目処すら立たず、事業体としての収益が見こめない、それが下北再処理施設と云われます。これほど無駄で、金くい虫の事業がこれまで包み隠されてきたのは、まさに電事連が出資し、経営されていたからで、民間事業体としての位置づけだったからです。しかしそれが、国が出資するのか、経営に参画するのか、どういう形になるかは分かりませんが、そうなれば国会での審議、決議という国民の目にも広く晒される形になります。原発再稼動に前向きなところは、この無駄で、金くい虫の事業体の扱いに、頭を悩ませることになるのでしょう。
これまで原発容認派は、すでにある使用済み燃料棒をどうする? 原発技術が停滞するから原発政策はつづけるべき、が合言葉でした。しかし再処理が確立された技術でなく、また膨大な予算がかかる、となれば、国民の反対論が一気に噴出しかねない。こっそり電気代として徴収されてきた再処理費用が、税金負担となった途端、原発容認派への逆風が一気に強まりかねません。

燃料棒を再処理する理由は、原発を再稼動することが前提です。再稼動しなければ、再処理してウランをとりだす理由がない。一方で、国の方針一つで負の事業となりかねない再処理施設を、抱えておく余裕もない。しかしそのせいで、再処理施設の存在そのものが白日の下に曝され、事業計画が頓挫しかねない。苦境どころか、死に体のような状況で国が引き取ることになります。
深地層への核のゴミの処分の目処もたたず、再稼動する。その無責任さは、将来への不安を解消できない、政治力の欠如をさらに印象づけます。安倍政権ではそれを嫌がり、ますます電事連との話し合い解決を先送りし、かつ核のゴミの問題も封印するでしょう。報じられないことは、国民も知らないからです。しかし地下へと隠すはずの核のゴミの問題が、原発の高コスト体質を浮き彫りにします。やりたくないことからは逃げ出したい、安倍政権の体質が、ますます問題の根を深くする。原発再稼動が、安倍批判を再稼動させる恐れとなり、闇へ隠そう、隠そうとしていたものが表に、まさに白日の下に曝されたときは、安倍政権も批判にさらされます。

電事連が投げたサジを、政治が拾ってすくうスープの味は、毒の味しかしないのかもしれません。青森県とかわした雇用の問題等も含めて、再処理施設とは銘打っていますが、この施設そのものは処理も再利用もできないものです。機雷処理には積極的な安倍政権、自らのすすむ航路にばら撒かれた不支持増大という機雷の処理に、ひどく腐心することになるのでしょうね。

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2015年04月23日

電源構成比の中の原発

東京豊島区の公園で毎時480μSvという高い線量が確認されました。昨日の官邸ドローン事件でも、放射性物質が用いられており、関連性も疑われます。理由は分かりませんが、ただ原発に限定するまでもなく、日本では医療、検査装置でも放射性物質が用いられます。通常なら管理もしっかりしているでしょうが、そうした企業が倒産したら? 処分に困って捨てることも考えられるでしょう。それこそ会社がつぶれたことで、社会に恨みをもって…と、フィクションにはありがちなケースも想定されます。かなり高い線量だけに、もしこれがテロだった場合、日本はあらゆる場所で定期的に線量をチェックする、といった対策も必要となりかねません。

そんな中、経産省が2030年の電源構成比として、原発を20〜22%とする案を提案しました。これだと寿命を迎える原発以外、すべて動かすことになりますし、仮に経済成長をつづけて電力需要が増えるなら、原発を新設しなければ達成しない、ということにもなりかねません。一方で、省エネ対応がすすむなら、原発を稼動せずとも国内の電力を賄える可能性もあります。そもそも、2030年には超高齢化社会を迎え、国内の生産性は低下しますし、高齢世帯でそれほど活発に電気をつかうか? という問題にも直面します。電源構成比とともに、必要電力量がカギです。
しかしいくつか新技術も出てきています。水素元年とも呼ばれますが、太陽光発電は日中しか発電できませんが、その電力で水素をつくり、夜間はその水素を電気に変える。そうした発電方式が、災害時の非常用として発売されるのです。これだとエネファームと同様に、廃熱を利用してお湯がつくれるため、システムの効率化が図れます。一般的な住宅用の発電で、水素燃料車を年間1万km走らせる程度の水素がつくれる、とされますから、家庭用としては若干もの足りないかもしれませんが、悪天候や不足分のみ電力会社から購入する形になれば、家計も助かるはずです。

今、住宅用の蓄電システムもありますが、電池は劣化の問題もあり、必要性の面からも一般には購入し難い。しかし水素の形で溜めておけば、くり返して利用しても劣化はしませんし、それこそマグネシウム電池と組み合わせれば、家庭ですべての電力を賄えるようにもなるでしょう。すでに非常用で発売されたことからも、常用の発電として活用できるはずです。むしろ、これを売り出したのが原発メーカーであるだけに、非常用に限定したのも電力会社との馴れ合い、といった面があるやに推測されます。しかし技術があるなら、いずれ新興国に真似さえ、安価に一般家庭向けが入ってくるかもしれない。そのときは原発など不要になるかもしれないのです。
原子力発電は、経産省としても肝の利権の一つです。電源構成比などで、原発を最大限活用する、などとだすのもその一貫でしょう。しかしそんなことに拘っていると、日本は世界の競争に出遅れるだけであり、再生エネの先進国としても見劣りし、国家百年の計を誤るともいえます。原発に嫌悪感がある日本、さらに放射性物質がテロに利用されるとき、ますますその管理の厳格化が迫られ、高コストの発電ともなっていくことでしょう。原発やめますか? それとも再生エネの技術革新を止めますか? という二者択一にしようとしている経産省に、日本の経済や技術の推進役は相応しくない。電源構成比ではなく、経産官僚の脳内構成比を変えない限り、こうした提案がくり返されることになるのでしょうね。

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2015年04月15日

雑感。高浜原発差し止め訴訟

昨日、東電福島第一原発1号機の格納容器内に投入されたロボットが、3時間で停止した件。東電の説明は、グレーチングの隙間にはまった、とのことですが、これには違和感があります。機器はキャタピラー方式に見えるので、かなり大きな隙間となりますが、それだと地震の際、すでに外れていたか、水素爆発の際に格納容器内に大きな圧力がかかったことになります。前者だと地震で炉心が損傷していた可能性まであり、事故の原因が地震となるため、これまでの東電の説明とは異なります。後者だと他のグレーチングまで影響している可能性があり、2機目を安易に投入してしまって大丈夫か? という東電の判断に疑問符がつきます。
英紙で、高放射線の影響とするものがありますが、可能性としては耐放射線性能の低い部品がつかわれていた、といったことが考えられます。その場合は、投入された2機目が答えを出してくれるのでしょう。いずれにしろ、想定不足により壮大なムダになったばかりか、一つの侵入経路を不意にしたことにもなります。最初からグレーチングの上を走らすのではなく、まず内部の状況をファイバースコープのようなもので確認していたら、こうした事態は回避できていたかもしれない。つくづく想定の甘さ、技術者の能力不足を感じさせる事例といえます。

福井地裁が高浜原発3、4号機の再稼動を差し止める仮処分を決定しました。基準地震動は地震における最大の揺れを意味せず、それを上限として設計されること自体、意味がないこと。また耐震補強もなく、基準地震動だけが引き上げられたこと。多重防護の考え方も1重目が貧弱であると指摘したこと。高浜原発のみ、基準地震動を超える地震がこないとはいえないこと。使用済み核燃料の保管については耐震クラスBであること。重要免震棟の設置に猶予期間があること。そして新規制基準が、緩やか過ぎて合理性を欠く、とまで言及し、住民の人格権が侵害される恐れ、被保全債権の存在をみとめ、原発再稼動は認められないという判断にいたっています。
原規制委も反発していますが、そもそも原規制委は「安全」を約束していないので、安全上の問題を争った公判に言及することはできません。「この新規制基準で安全だ」というなら反論に意味もあります。原規制委の新規制基準と、真っ向反対の判断だからです。しかしこれは対立しない、平行線の議論であって、新規制基準とは今ある原発を動かすための基準です。政府も原規制委も、「国際的にもっとも厳しい基準」という言い方のみをして、絶対に「事故を起こさない」、「安全」とは言わない。そんな逃げ口上しかしないのなら、絶対に再稼動すべきではありません。

「国際的にもっとも厳しい基準」だろうと、国際的にみてもっとも地震の多い国である日本の基準が厳しいのは当然で、逆にいうとこれまでそうでなかった方が問題です。またそれを金科玉条の如く連呼されても、安全は担保されないのですから、尚のこと規制基準とは名ばかりで、ことのほか悪いものです。それにこの判決は一石を投じた。その意味は大きいのでしょう。
関電は大飯原発の運転差し止めを決めた樋口裁判長が、今回の公判も担当したことで交代を求めるなど、かなり露骨な行動に出ましたが、新規制基準自体を否定されたことで反論も難しくなりました。基準地震動など、それこそグレーチングを支える梁に支持があり、もし福島原発で、地震でグレーチングがずれたのなら、根本から設計を見直さない限り、福島原発の二の舞が起こりかねない、ということでもあります。福島原発がどのようにして事故を起こしたのか? それすら分からずつくられた新設計基準に頼ることは、限界があります。少なくとも、政治家や原規制委が「安全」と言わないような施設を動かしてはいけない、ということだけは確かなのでしょうね。


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2015年03月17日

原発廃炉と株式市場

日本の株式市場が、ふたたび活気を失っています。朝高後、値動きが止まってしまい、日中は売買も低調。今日も売買代金が2.5兆円を切るなど、SQ後の高所恐怖症と、「上げる」と思っている層も朝高で出動機会が減るなど、閑散商状です。すでに米市場離れを起こしているので、これは単なるFOMC待ちではなく、市場参加者の減少を感じさせます。個人投資家が好む銘柄、新興市場がまったくこの上昇についていけてないように、「上げる」層がいない市場の低迷ぶりは、日本市場への魅力が薄れていく、その過程の一つということなのかもしれません。
一つ、川柳を紹介しておきます。『安倍が(嘘を)つき、黒田が(屁理屈を)こねし、バブルもち、すわって食うは、外国人投資家』というものです。途中に『かんぽ、年金が味付けし…』を付け加えると、現状を示すのかもしれません。詠み人知らずですが、結果として天下をとるのではなく、食った後に逃げられる、という意味ではより深刻な状況であり、笑える状況でもありません。

原発が廃炉、と一斉に報じられます。廃炉にしても放射化し、高レベル廃棄物となった圧力容器を処分することもできないため、現地に置かざるを得ません。また低レベル廃棄物をどう処理し、再利用するつもりなのか? それを監視しておかないと、日常生活に低レベル破棄物が入り込んでくる恐れもあります。例えば、山奥にある高圧電線用の鉄塔など、安全性さえ確認できれば、電力会社としては再利用もしやすいので、使用される恐れが拭えません。
しかも気になるのが、電源三法交付金が消える地方都市に、別の財源を政府が検討し始めていることです。原発には寿命があり、補助金はいつまでも受け取れない。原発立地自治体は、それを見据えて将来に亘って収益になるような、そうした事業をつくらなければなりません。しかし豪華な保養施設をつくったり、市庁舎だったり、分相応の贅沢な暮らしを享受してきたことも事実です。それを維持するための補助金なら、日本国民は何のために高い電気料金を払っているのか? 『かつて』原発を立地していた地域を養うために、ずっと補助金を払い続けるなら、日本は今後も増えていくその負担で、自滅の道を歩むことになるのでしょう。

日銀の緩和マネーで、じゃぶじゃぶになった株式市場、補助金で財政規律が緩み、原発が廃炉になった途端、苦境に陥る原発立地自治体は、実は明日の株式市場の姿なのかもしれません。公的マネーが消えたとき、自立できる姿をみつけておかないと、今のバブルは将来の負担になって、日本の株式市場ばかりでなく、日本経済全体を襲う災厄となってしまうのでしょう。
賃上げで来年度の消費が活発…という理屈は、トリクルダウンと同じぐらい、実証性は何も証明されていない話です。原発が、安全を重視するとどんどん高コストとなり、実は他の発電方法よりも効率の悪い発電であることが議論されていますが、それと同じ。日銀の緩和が、高コストの経済政策であるかどうか、あったのかと後に証明されるかどうかは、この株高が実体経済とどう整合するのかを、今からよく見ておく必要があるのでしょう。原発にしろ、日本だけが特殊な状況におかれ、議論がすすまないように、日銀の質的、量的緩和もまた世界からみると、かなり特殊な状況なのに、それの成否については未だに冷静な議論が為されません。この国は、お金があると気持ちが緩み、浮かれて使いまくる、という他人の金を扱う行政や、市場関係者の体質そのものに、問題の根があると云えるのかもしれませんね。


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2015年03月11日

雑感。東日本大震災から4年

東日本大震災から4年です。安倍首相はつい先日も福島に視察に行きましたが、仮設住宅は立ち止まって説明を聞いただけで、すぐに立ち去ったと言います。仮設住宅は断熱性能が低く、また湿気も高くてカビがひどい、と言います。しかし復興予算が余っている、という記事もありますが、ならば仮設住宅の上に住宅の駐車場のような屋根をかけるだけでも、大分違ってくるはずです。雨や雪が直接当たるので、水が染みこむのですから、それを避ける。仮設住宅同士を屋根でつなげば、雨が降っても人々が外に出てくるのが容易となるので、コミュニケーションもとれ、寂しさを感じなくて済むようにもなるでしょう。そうした提案をするのが政治家の仕事です。
もっとも、政府は仮設は仮設、長居する場所ではない、早く出て行って欲しいというのが本音でしょうから、問題や苦情があっても放置します。しかし生活再建もできず、住宅ローンも組めない、家賃も高いとなれば仮設住宅から出ていくのも困難です。ではそこに政治の知恵があるのか? 公営住宅の話もありますが、家賃の問題はずっと付きまといます。津波、原発など家を失った事情は様々ですが、少なくとも生活再建を難しくしているのは原発が主因です。国ばかりでなく、東電がもっと積極的にこうした問題に関与してもよいのかもしれません。

その東電では、昨日も汚染水タンクの堰に溜まった雨水が750tも洩れ、しかも高濃度の放射性物質が発見された、と発表されています。まず驚くのは、タンクの周囲にある堰に、まだそれほど高濃度の放射性物質がある、という事実です。堰には人が近づけることからも、安全対策は万全にしなければならないはずです。一度、洩れた後でふたたび舗装された、とされますが、そもそも地下水の多い場所で、その流れを変える作業をしています。地下水が減ると、それだけで地面が沈降するなど、問題が出てくるはずで、単なる舗装ではすぐにひび割れが生じるのでしょう。
事故時、水溶性セシウムと不溶性セシウム、その両方が飛散したとされます。水溶性は水に溶けるため、一時的に体内に取りこまれるととどまりますが、汗や尿から排出できます。一方で不溶性は、胃に入ってもそのまま排出されますが、肺に入ると体内から排出するのが難しく、ずっと線量をだしつづける、被曝しつづけることになります。福島原発の敷地内は、未だに線量が高い場所が多い。それは不溶性セシウムがそこにあり、ふたたび舞い上がる恐れも示唆するのでしょう。今、屋外の作業では口にマスクをするだけで、目は露出した状態ですが、目から入った砂埃などが、鼻を通ってノドへといたることなども考えると、不安にもさせられます。

メディアでは思い出したように、廃炉の話や高レベル廃棄物の話が取り沙汰されますが、原発そのものの再稼動については、あまり特集としては報じられません。電力会社に配慮した姿勢が滲みますが、再稼動の前に、改めて福島原発で起きていること。そこにあるセシウムなど、放射性物質の問題などを再考しないまま、再稼動を前提にしていることは危険に過ぎるのでしょう。
新聞の発行部数が下がった、という話もありますが、読売の大幅減には政府に阿諛追従する態度や、原発再稼動を推進しようとする態度に、読者が辟易した面も大きいと考えます。慰安婦問題で部数を落とした朝日新聞、原発再稼動の推進派とみなされる読売。国民の方を向いていないメディアは、結局のところ衰退産業にしかなりません。原発について、改めて中立的に考える契機にも、こうして震災、事故をとらえる機会が大事なのでしょうね。


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2015年02月26日

雑感。政治と原発の問題

国会は今日も『政治とカネ』の問題です。西川前農相や、下村文科相への追及もでていますが、とばっちりは小渕前経産相でしょう。せっかく隠忍自重し、沈静化したと思っていた「ドリル優子」の異名まで、ふたたび取り沙汰されてしまう始末です。説明責任を果たしているわけではなく、責任論がもち上がれば再浮上する話となります。堅忍不抜という言葉は、じっと我慢して心を動かさないことですが、堅忍不罰となるかは安倍政権のクリーン度ともかかわってくる問題です。もし小渕氏、松島前法相、西川前農相がシロなら安倍政権が『政治とカネ』でクリーンなイメージを失うのであり、そのために誰が生贄になって、安倍政権のイメージ作りで政界を去ることになるのか? そのために穴を掘って頭を隠しておきたい心境なのでしょう。

しかし東電が汚染水を外洋に排出していた件も、1年近く東電は事実を交渉していなかったばかりか、原規制委も報告をうけ、そのままになっていたことが判明しました。当事者意識の低さ、一般の感覚との乖離は指摘するまでもありませんが、しかし一方でもしこの雨水とされる汚染水を東電が溜め込んでいたら、とっくにタンクが許容量を越えていたのかもしれません。つまり東電は、計画的にこの汚染水を外洋に排出することが、地下水のバイパスより重要だったのかもしれません。地下水のバイパスで海洋放出を初めてから、何度か海水のトリチウムの濃度も上がりましたが、もう一つこちらから汚染が出ていたのなら、経路は複数あったことになります。
しかも原規制委は「排水溝は雨水などがあり、コントロールできない」と認めました。菅官房長官は記者会見でも、むきになって「コントロールされている」と否定しましたが、原規制委の言うように、敷地内にもホットスポットがあり、それが雨で洗い流され、外洋へと流れてしまうことをこれまでも規制して来なかった。ノーコントロールだったわけですが、約1年公表が遅れた原因として、安倍政権に配慮した可能性があります。なぜならそれを認めてしまうと、制御できないことを認める、安倍政権の顔に泥を塗ることになると、東電側が気を使った面があるのではないか? そんな疑いさえ、今回のことは想起させる内容といえるのでしょう。

ここもと日本では、安倍政権の批判はするな、がメディアの合言葉のようになっていますが、東電とてそれは同じです。安倍政権が困ることはするな、それが汚染水の外洋排出を「公表すべきことと思わなかった」というイイワケにつながるのでしょう。最近、注目もされませんが、福島原発の事故から4年、山間地に降った雨で流された放射性物質が、川をたどって海へ、それが河口から浜へと打ち寄せているタイミングです。計測値をどこも公表しませんが、継続したモニタリングが必要ですし、こうして度々外洋放出があると、尚更その必要性を感じます。
農水族の西川氏、文科族の下村氏を、それぞれ大臣にすえ、顔を立てたつもりだったのが大失敗だった。顔に泥を塗らないよう配慮したつもりが、逆に政権にとって福島原発の問題を再考させるきっかけとなり、原発再稼動でさえ正当性を失いつつある。そんな安倍氏は首相として、日本の顔なわけですが、ヤジで沈痛な面持ちで昨日は答弁に努めていましたが、「面目次第もない」というぐらい、お粗末な内容ばかりが政界をはじめとする日本全体に今、広がってしまっているのでしょうね。



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2015年02月22日

雑感。使用済み燃料棒の中間貯蔵に関する提言

福島第一原発で、港湾へとつながる排水路に、高濃度の放射性物質が流れる警報が鳴りました。一部は流出した恐れがあるとされます。東電は上流で泥をとりのぞく清掃をしたことが原因、としますが、そうなるとそこの泥には元々高濃度の汚染があったことになります。作業計画はどうなっていたのか? 被曝の管理からも明らかとなるはずですが、そうした情報は出てきません。それに、泥にそれほど高い汚染があるなら、施設全体のサーベイをもう一度やり直す必要があるのではないか? 線量管理の杜撰さによって、毎回こうした排出騒動をおこすようでは、漁をする人もたまったものではありません。外海に洩れたかどうかは確認できませんが、風評被害ばかりでなく、実害としても放射性物質が度々漏れ出しているのですから。

日本学術会議の検討委員会が、使用済み燃料棒を電力会社ごとに一箇所以上、保管場所を確保し、当面は地層処分を見合すよう、提言しました。事実上、地層処分については再処理すらめどが立っていない状況ですが、使用済み燃料棒を50年、空冷で管理するという提案も、若干の不安を感じます。燃料棒の被覆管も劣化しますから、空中で湿気にさらされると、その分酸化がすすみ、脆くなります。水中なら酸化は遅いので、被覆管の劣化という面では有利です。また燃料棒の間を広くとらなければならないなど、施設の大きさも問題となってくるでしょう。
一方で、水冷だと福島と同じように汚染水の問題が残ります。トラブルがおきて漏洩した際の影響は甚大です。空冷だと揮発する可能性もなくはないですが、フィルターを設置すれば防げるなど、トラブルの対応は楽になります。一長一短ありますから、慎重にする必要があるのでしょう。ただ問題は、原発の敷地以外で保管施設をつくれば、地方自治体への補助金も大量に必要となるでしょうし、それ以上に安全な立地があるのか? という問題があります。原発よりリスクは高くない、といっても未だに明らかとなっていない活断層があったり、噴火の危険が高まったり、とどこも安全を担保しつつ設置できる場所がありません。

また地元の理解が得られるか、という問題がつきまとうでしょう。原発なら関連産業で街の活性化が図られても、保管施設ではそうした恩恵は微々たるものです。福島原発からでた汚染土の中間貯蔵施設でももめたように、単なる貯蔵施設にはリスクに見合うだけの補助金がないと、受け入れるメリットがない、という問題がつきまといます。結局、そうした施設をつくれば、原発はさらに高コストの発電方法となり、続ける意義も失われます。そうまでして原発を使い続けるのか、という問題との兼ね合いから議論しなければならないのでしょう。
原油安で、火力を使う方がメリットも高まりました。原発の再稼動を急ぐ必要性も薄れたのです。安全対策をすればするほど高コスト、という現状を考えると、安全をほどほどにして動かさなければいけないほど、日本のエネルギー需要が逼迫しているわけでもなく、兼ね合いで考えるなら、今は火力で十分という話になります。福島原発で度々おきる漏洩の問題を考えると、安全対策をきちんと行った上で作業するより、ほどほどの対策で少し洩れるぐらいなら仕方ない、という考え方が透けてみえます。原発のコストが低いのは、安全性が低いから。そうしたバーターで発電を正当化するなら、リスクの高騰によって、原発関連施設の建設は、住民から拒絶される原因ともなってくるのでしょうね。

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2015年02月15日

雑感。水素社会と原発

政府が水素発電所、液化水素用の輸送船、石炭からの水素抽出、などを支援する方向を示しています。2030年までに自家用発電や、事業用発電を導入する見こみですが、気になるのは石炭から水素を抽出する点です。これだと化石燃料を使っているのと同じなので、水素社会を実現しても、二酸化炭素の排出量は増えてしまいます。実際、発電するときは水しか出さずとも、その分の石炭を地中から掘り出さなければならないのですから。日本には多くの『使える樹木』があるのですから、バイオ技術などをつかって、水素を抽出することを研究した方が、より環境への寄与も大きいはずです。安価で水素が抽出できるとなれば、より安く製造できる新興国などに技術移転がすすむ恐れもありますが、環境破壊となる森林伐採には、国際的に一定の歯止めをかける。そうした合意をつくるまでが、日本の務めでもあるのでしょう。

高浜原発の3、4号機の安全審査の合格証にあたる審査書を決定しました。微妙な言い回しなのは、これで再稼動できるわけではないためです。関電だけに、今後の手続きに遅れが生じる可能性は否めず、秋ごろを目処とする再稼動もどうなるかは分かりません。ただ、電力会社には今、かなりの追い風が吹いています。それが原油安です。火力発電用の燃料価格が大幅に下がったため、実は今後、原発を再稼動しなくても収益は自然と改善していきます。今はまだ高値で契約した分をさばいていますが、春ごろにはその効果も出てくるはずなのです。
しかし、電力業界からも最近、原発は高コストとの発言が相次ぎます。1年間に1度は定期検査をしなければならない。実は、政府が公共工事を乱発したため、原発作業員が激減しており、しかも福島原発の処理で、多くの作業員が被曝量をオーバーしそうなほどで、今年から再稼動などをすすめても、来年の定期検査をうまくこなせるか? といった不安が残ります。どんどん再稼動をすすめても、1年後に続々と止まるようでは、それこそ高コスト運転となるでしょう。

さらに、原発はウラン燃料を用いますが、再処理を日本で行えば、それもまた高い燃料費となります。技術の進歩で、それこそ水素社会が実現すれば、原発の高コストは浮き彫りとなるでしょう。しかも高レベル廃棄物は溜まる。低レベルの中間貯蔵施設でさえ、あれだけもめるこの日本で、高レベル廃棄物を今以上に増やしても、処理できるとは到底思えません。それこそ一体どれぐらいの処理費用がかかるのか? これは原発につきまとう業です。福島原発では、トレンチの埋め立てもすすみますが、凍土壁の前提としても、その凍土壁ですら成功するかは不明です。汚染水処理施設ALPSも、トラブル続きでぎりぎり運転している状態ですが、原発は完成された技術ではなく、常に新たな事象に対処せざるを得ない点も、高コストと言えるのでしょう。
水素社会が実現するまで、とりあえずで使うにしては、原発はそれに見合うレベルの発電方法ではない、というのが現状です。一時期さわいでいた原発輸出が頓挫しているように、世界も原発へ懐疑的となっています。原発に利用されるウランは、極めて重い原子ですが、それがもっとも軽い原子である、水素に置き換わる。物質も崩壊してより軽く、小さくなっていくのなら、水素を効率的ににとりだし、有効に利用できる社会が、軽くてソフトな社会という物事の本質にはあっているのでしょう。そうした社会をいち早くつくることが求められるのでしょうね。

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2014年11月26日

原発に関していくつか

今年、流行語大賞にもなりませんが、目だったのが『おトモダチ対応』です。俗に、企業がすばらしい応対をしたときに使われる『神対応』と同じ使い方で、企業がおトモダチのことだけ厚遇し、ほめそやし、友達以外に辛くあたることをさします。安倍首相のおトモダチである読売、産経など、自民の公約はわざわざトップに掲げるものの、野党は準備不足だったり、野合だったり、とにかく貶めるのに躍起です。安倍氏は安倍氏で、朝日排除で産経系の単独インタビューはどんどん受ける。おトモダチ間でもちつもたれつ、そんなことが目立った一年でもあります。
新自由主義者が、安倍ノミクスは成功ということも同様です。増税しただけで10%もGDPが下がってしまう、これは脆弱な経済構造を作った失敗であり、トップの判断ミスであり、財政出動も金融緩和も、増税するために財務省が協力したものですから、安倍ノミクスそのものが増税を含めた施策であるにも関わらず、増税のみを失敗とします。これもおトモダチ対応の一端です。

自民の公約でもベースロード電源とされ、自民が政権となれば再稼動される原発に関して、このところ相次ぐ報道があります。福島原発のトレンチの冷却、凍結を諦め、特殊なコンクリを流し込んで固めます。これは遮水凍土壁の設置に影響するものですが、気になるのは、各党の公約でも『国が責任をもって』福島原発に対応するとあり、東電との線引きが曖昧な点です。トレンチ凍結に失敗し、すでに凍土壁も設置が困難、との指摘もある中で、東電がそれに固執するのはまるで国の事業のようです。予算がついたら止まらない、失敗しても痛くない、多額の損失、ムダ作業を生み、企業体としての東電には体力も残っていないはずですが、国が支援するので生き残る。言葉は悪いですが、ゾンビになったら思考は停止するのであって、トレンチ凍結などまさにその一例なのでしょう。事業の失敗は、本来なら経営交代ぐらいの重大な問題です。
福島で汚染米が確認されたケースは、がれき撤去の影響でない、と原規委が結論付けましたが、では福島でつくる農産物は、ある日突然こうした被害が発生する恐れがある、ということになります。原因不明で、基準値越えという事実だけが残った。これでは福島の安全、安心にはほど遠い。農業ばかりでなく、漁業であっても全数検査しなければ出荷もままならない。これも東電のがれき撤去が原因、とすると東電の責任になることを慮った対応、といえるのでしょう。

しかも原発廃炉の費用を、電気料金に上乗せする検討に入った、と報じられました。原発をつかった挙句、生産性のない廃炉まで、負担を強いられる。しかも再処理が始まればその費用が、地下貯蔵が始まってもその費用が、電気料金に上乗せされます。さらに気になるのが、原発で使用されたコンクリ、くず鉄の行方です。以前、家を新築したら本来なら廃棄されるべき、放射性の廃土が使われ、家自体が高い線量になったとして問題になったことがあります。コンクリもくず鉄も、原発由来のものは線量が高く、それを管理し続けなければならないため、そのコストも上乗せになるのか? 管理はせず、再利用となればそれがきちんと報道されるのか? それこそ住宅の床の配筋や鉄骨住宅に使われ、線量が低いから大丈夫、と言い出す可能性もあります。
政府、メディア、電力会社、このおトモダチ関係が強固に、互いに支え合う構図は、国民にとって一つも幸福なことがありません。しかも、こうしたおトモダチ関係は、組織を腐らせる最大の要因です。廃炉もまだ研究段階のもので、福島原発の対応同様、これからもムダ作業が多く出てくることでしょう。それらもすべて、国民負担になることです。自民、民主、維新とも、原発に関しては腫れ物にさわるような扱いで、具体策はありませんが、国民はこの原発に関して、どこともおトモダチになりたくない、というほどお粗末で杜撰な内容が散見されるのでしょうね。

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2014年08月21日

原発訴訟に重要証拠

やっと安倍首相が官邸にもどりました。2日つづけて同じ書き出しなのは、安倍氏が昨日、別荘にもどり、休暇をつづけようとしたためです。読売などは『ゴルフを1時間で切り上げたこと』を正しい判断としますが、違います。『ゴルフを始めたこと』が問題なのです。今は朝6時ならすでに明るく、目視による状況判断ができますし、広島市などは夜通し対応しており、行方不明者が多数でていることは、朝の時点で官邸も知っていなければならない。それでも『ゴルフを始めた』。
古屋防災担当相などは「死者が確認されたのは朝8時半で問題ない」という言い方をしますが、死人が出ていないなら、あれだけ家が壊れ、泥が堆積していても構わないのか? 激甚災害指定もしていないのに、再び休暇をとる、という神経が分かりませんし、その行動は非難されて当然です。奇しくも天皇家の方々は、静養をとりやめ、哀悼の意を示されました。国民の心に添う、とはまさにこういうことです。天皇家の方々は、指揮命令系統にも入っておらず、むしろ静養しても構わないのに、指揮命令系統のトップにいる人物が、公邸につめて対応、対策にあたりもせず、休んでいる場合ではないのです。言葉は悪いですが、爪の垢でも煎じて飲ませてもらわなければ治らないレベルの人間性の低さ、という言い方すらできてしまうほどです。

凍結工法が困難となり、先行きが不安となる福島原発に関する裁判で、重要な資料が国から提出されました。1997年7月、津波対応WGで福島原発の危険性について、すでに指摘されていた、というのです。しかし電事連などはその資料の公開を渋り、自ら土木学会などに働きかけ、独自の緩い基準を策定しようと画策していた、というのですから東電も確信犯となります。国、東電もこれまで津波は想定外、という言い方をしていたので、これは判決にも大きく影響します。
ここに来て、国が「ない」と言っていた資料を提出したのは、隠し切れなくなったことと同時に、原発再稼動の判断が一つ、山を越えたことがあるのでしょう。逆に言えば、ここまで隠し続けていたこと、自体が問題であり、「ない」と言いつづけた人間は糾弾されねばなりません。

産経が、朝日新聞の『吉田証言スクープ』に対する反論検証を行っています。『慰安婦報道』につづけて…と考えるより、まずこの吉田証言は非公開資料です。産経は政府からのリークで記事を書いており、それは朝日スクープへの懲罰的対応、という点が重要です。朝日も産経も、どちらも偏った主張をするメディアであり、国民にはどちらが正しいか、さっぱり分からない。であれば、全面公開し、国民に何が正しいか伝えるべきですが、政府は未だに拒否しています。
今年2月、国境なき記者団が毎年発表する『報道の自由度ランキング』で、日本は59位と先進国最低、韓国より下、という屈辱的な地位に甘んじています。原発関連の報道で情報公開がすすまないこと、及び政府とメディアの癒着から報道に自由度がない、と世界から認定されている。しかも安倍政権になって53位、59位と徐々に順位を落としている点も問題です。それは今回の裁判に提出されたWGの資料でも、都合いいタイミングにならないと公開されない、そんな事情も影響します。

今年の夏は、真偽不明の情報がでて市場の株高を演出する、そんな株価を維持するPKO。確定でもない、組閣情報を小出しにして内閣支持率を維持するCSO。そんな危機管理ばかりで、国民の安全に関する危機管理は、まったく落第というのが安倍政権の現状です。そして情報が政府によりコントロールされる恐怖、それは原発、放射線に対する情報でさえ、国民は知らされないまま危険に晒されている、という恐れを抱かせるものです。奇しくも安倍内閣、『安全の倍返し』で危険を意識させる、それが真の不安として国民にも浸透しつつあるのでしょうね。

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2014年07月16日

政治日程と川内原発

自民党、神奈川県議が逮捕されました。先月、現行犯でそのとき確認された薬物が、違法と認められたため、今月に入って逮捕されたとのこと。その間に辞職願が受理されており、前職となりますが、またしても自民の緩みが露呈した形です。これは憶測ですが、薬物使用が確認されたのが6月26日、それから20日もかかっての逮捕、というのは些か首をかしげてしまいます。
どんな薬物かは分かりませんが、違法として登録されているなら、早々に成分は判明したでしょう。6月末から、政治日程的には集団的自衛権の問題、それに滋賀県知事選などが重なり、しかも閉会中の集中審議もあった。それが終わった途端、逮捕というのは出来すぎたスケジューリングに感じます。しかも30日に提出した辞職願を8日に許可され、晴れて前職となってからですから、尚更この日程が先にありき、の逮捕には疑問を感じるところです。しかし情報操作に余念のない安倍政権ですから、当然のように、政治日程を睨んだ逮捕だった、ということかもしれません。

九州電力川内原発が、事実上の再稼動容認となりました。原子力規制委は、安全審査ではなく基準審査だ、と述べており、基準そのものの不誠実さを追求はしない、と断言したことがまず驚きです。基準地震動の選定にも問題がある、とされ、日本有数の活火山が並ぶ地域にも関わらず、火山への対応の甘さ。さらに、原規制委の審査対象ではない、避難計画さえもない状態です。
さらに地方行政が、避難計画策定を、民間の個々の対応に委ねてしまった。これは原発周辺のさらなる過疎化を促すものです。つまり個人であろうと、事業者であろうと、避難経路を自ら決め、その手段を有しておくことはコストアップであり、土地の価値は目減りします。さらに手段のない人は暮らせない。リスクを自ら被る覚悟をもたないと、暮らすこともできません。

福島で、がれき撤去により新たな汚染が拡散され、基準値を越えるセシウムが米から確認された、と7月14日に農水省から発表されました。しかし今年3月には確認され、東電に対策を講じるよう要請、とされるので、約4ヶ月も事実が伏せられていたことになります。これは重大な問題であり、今後も福島原発の作業次第では、新たな汚染が発生する可能性がある。それは除染を行った地域でさえ、定期的に線量を確認しなければならない、ということを意味します。さらに検査する食品はいいですが、原発から20km以上離れていても、自家用に野菜を育ててはいけない。検査していないで基準値を越えた野菜を、すでに口にしてしまった人もいるかもしれません。
そしてこの日程にも意味があるのかもしれない。そもそも、先々週には原規制委の安全審査を通過、という話があったものの、先送りがあったとされます。滋賀県知事選に影響しないよう、との配慮があったのではないか。福島原発の再汚染の話も同様に、政治日程ありきで発表が遅らされている。情報封鎖、情報操作の疑いを強くします。そして今後も、都合の悪い情報は伏せられ、国民に不利益が降りかかるかもしれません。先にも示したように、すでに汚染された食品を食べた人もいるかもしれない。原発再稼動でも、実は危険であっても動かし続けるかもしれません。そういう疑念を抱かれざるを得ない中での、再稼動です。原発は再稼動すれば電気を生みますが、安倍政権の支持率低下も、再稼動しかねない。そんな動きになってくるのでしょうね。

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2014年06月17日

エネルギー白書について

22日の会期末にむけ、国会が慌しくなってきました。会期中に閣議決定をめざす自民と、時間稼ぎをして一定程度、抵抗したというスタンスをとりたい公明と、時間軸の勝負となっています。国民の権利が根底から覆される『おそれ』…の部分で、『おそれ』だと時の政府により解釈が変わる、などと語られますが、『日本の存立が脅かされ』や『他に適当な手段がない』、『必要最小限度』でさえ、主観に頼った判断になります。時の政府が無能なら、他に適当な手段がなくなりますし、必要最小限度も銃を一発撃つのか、ミサイル一発撃つかもそれは判断です。
例えば、日本では警察官が発砲すると、その是非について警察から「適切だった」と発表されるだけで、検証機関はありません。自衛隊も、武器使用について一々軍事裁判を開くことはないでしょうから、必要最小限度を判断するのは、主に現場となるでしょう。過度に怖れれば武器の過剰使用が懸念されますが、全員が口を噤めば、証拠もなく行為そのものが『他に適当な手段がない』、『必要最小限度』だった、と発表されるでしょう。この文言では恣意的にならざるを得ないのです。


閣議決定されたエネルギー白書、自民の見方が強く反映されています。LNGなどの輸入費が震災前とくらべ約10兆円増、とする一方、原発停止による穴埋め火力による増加分は3.6兆円と試算します。つまり6.4兆円は円安のせいで増加した、と読みとれます。それを端的に示すのが震災前と比べ、足元をみられたLNGのドル建て価格は1.4倍、円ドルはその間に1.3倍なので、量ではなく価格で約1.8倍になったと試算されている。しかも電気料金はその間に2倍、新規火力の導入ばかりでなく、動かせない原発維持費まで国民負担に回っている、ということが白書から読み解けます。
だから原発を動かさなければ、という論調で彩られており、しかもウランも自給ではないのに、エネルギー自給率が悪化としています。価格で比較すれば、上記のように輸入が増えたように見えるため自給率は悪化しますが、エネルギーを国外に頼る構図は原発を稼動させても変わりません。再処理が動けば別ですが、そのコストを考えると、逆に自然エネルギーや再生エネルギーでも十分ペイできてしまう。原発再稼動に、まともな正論は垣間見られない白書になっています。

CO2排出量の問題も、日本は発電時の脱二酸化炭素装置も海外に売り込んでいる。古くて設置できない設備もあるでしょうが、新たに設置できるのなら装置を組みこめばいい。原発が解決策では決してないのです。北米でもエネルギーが自給できるようになったのは、価格の高騰で、内製する方が安くなったから。今後も円安が継続するなら、国内でメタンやバイオマスを活用した方が、安上がりになる可能性もあり、その場合は自給率も改善するでしょう。
ソフトバンクが米ベンチャーと組んで、電力小売にのりだします。原発が本当に割安な電力か、それは自由化がすすめば、益々国民の目が厳しくなるでしょう。今でさえ嘘で固められた原発神話には、安倍政権の手法と似通うものも垣間見える。真実に堪えられる内容でないのは、エネルギー白書も同様です。化石燃料の可採埋蔵量は示しても、ウランの埋蔵量は併記しない。そんな形では、一向に原発の必要性は感じられない、となってしまうのでしょうね。

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2014年05月22日

原発と安全

タイの混乱が、軍のクーデターに発展しました。治安維持が目的であり、政府派、反政府派との話し合いをしたものの不調に終わり、デモや暴徒化の動きを軍が押さえこむ形になります。タイも日本と同じ、国王がいて、首相が統治するという体制です。タイ軍も国王の軍、という意識が高い。なので、何度かクーデターもおきていますが、比較的落ち着いた形に収まります。

昨日の福井地裁による、大飯原発の運転差し止め訴訟について、原発推進派の新聞は一斉に『科学的でない』と反論を掲載。与党からは「原発再稼動は原規制委により決定され、司法判断に従う必要はない」との発言まで。この国では、司法も立法府の人間が牛耳る、という考え違いが多いようで、また司法も立法府や行政の言いなりになってきた、というのがこれまでです。
福島第一原発では、地下水の海洋放出がはじまりましたが、気になるのは水も遮へい物ということです。汚染は基準以下、としますが、水の表面だけを検査していると、沈殿している放射性物質は検出されませんし、流水なら常時監視か、定期的に計測するか、によっても違います。国が語る「安全」が信じられない以上、徹底した情報公開が求められますが、寡聞にしてニュースなどにそうした情報はなかった。ALPSも停止したようですし、今後は高濃度汚染水が混じって海洋に流れ出していた、という話が出てくるかもしれません。それは政府でも検討がはじまった、作業員の待遇不満による自爆テロ、という事態も今後は想定されてくるためです。海に放出する経路がある限り、そこをどう監視していくか、それは放射線ばかりではないのでしょう。

さらに以前も指摘したように、集団的自衛権を行使した時点で、日本の原発も攻撃対象になる、ということです。動いている艦船や航空機は攻撃しにくくても、動かない原発はいつ狙われてもおかしくない。戦争になった時点で、近隣の住民に退避指示をださなければなりません。そうした人々を受け入れる施設、原発停止に伴う電力不足、集団的自衛権の限定行使の検討を与党内ではじめていますが、米国に向かうミサイルを撃ち落としたり、といった項目が乗るなら、米国に撃つ前に日本を攻撃する、というオプションは必ず発生します。そのとき、数発で日本を大混乱させることができる、恰好の攻撃目標が、原発です。北朝鮮がミサイル実験をするとき、首都圏などには迎撃システムが準備されますが、実はもっとも危険なのが、原発ともいえるのです。
漫画『美味しんぼ』の休載問題で、国が圧力をかけた、という話もあります。そうやって国が、原発安全神話をつくりだそうとしても、いざ戦争に巻きこまれるときは、原発は最大のリスクになる。欧米のように、自国が攻撃される危険性が少ない、という国ならばまだしも、北朝鮮や中国のような、どんな無法をするか分からない国が隣にあるような日本では、テロも含めて、安全対策は万全でなければならないのです。しかし安全保障の話で今までそうした話題が出ることは、これまでありませんでした。そうしたものも情報統制で、国は隠しているけれど実は検討している、というならば、国民はいつまでも居心地の悪さを抱えていなければならないのでしょう。この国の為政者が、誰のために政治をしているのか? タイは混乱しているように見えますが、日本が情報を操作して安全と平穏を担保しているのなら、どちらの国が本当にリスクがあるか? その国の安全を、原発を通してみると、あらためて再考させられることになるのでしょうね。


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2014年05月18日

原発推進と、集団的自衛権議論との矛盾

米ニューヨーク・タイムズ紙が安倍政権の集団的自衛権にむけた動きを「民主主義的な手続きを完全に損なう」と報じたことに、駐米大使が反論文を投稿、菅官房長官も批判しています。独善的な体制、体質をもつ政治をしていると、他国の声に敏感になるのはどの国でも同じです。
中国がベトナムの反中の動きを「避けることのできない責任」と批判しました。中国の言い分は、尖閣も南シナ海も、すべて自分たちのものだから、それに対する反対の動きはすべて悪、という論調です。これが独善的で勝手な言い分であることは論を待ちませんが、中国も国際社会の声には敏感です。後ろめたいことをしている人間は、正論を怖れるか、正論に強弁で対抗する、というのが人間の性です。その一方、自分をもち上げ、チヤホヤしてくれる相手には相好を崩す。蝋人形館として、世界的に展開しているマダム・タッソーが、安倍首相の蝋人形を作成、展示します。フジTVの日枝会長との関係も揶揄されますし、議院内閣制の日本で個人がフィーチャーされるのもどうか? と考えますが、権力者はわが世の春を、像として残すのが大好きのようです。

昨日は『呪い』などとしましたが、原発と安全保障は相反するものであり、その両者を推進する安倍政権は、大きな矛盾を抱えています。例えとして、北朝鮮から日本の民間人がのる米艦船攻撃、そのときでも海自は米艦を守れない、と記者会見で語りました。民間人が脱出のために乗船しているなら、それを通告し、安全に航行できるよう相手に諮ることも可能です。それも無視し、攻撃してくるような相手を想定する、というケースは極めて稀な例といえるのでしょう。
一方で、日本が原子力協定を結ぼうとする越国の場合、仮に中越戦争になったとき、真っ先に狙われるのは原発でしょう。攻撃の費用対効果が極めて高いからです。しかし人道的見地からすれば、そんなことは起きそうにないレアケースです。つまり北朝鮮は、民間人ののる船に攻撃する、中国は原発へ攻撃する、というのは、ともに人道的見地から可能性の少ない話なのです。しかし安倍氏は、一方は起こる可能性を指摘し、もう一方では起こらないと仮定しています。

国際的に緊張が高まっているのなら、原発輸出などできないのです。中国のようなWスタンダードの国と、安倍氏の語る安全保障と原発の話は、Wスタンダードという意味で実によく似ています。そしてそれは福島の双葉町も協力した、岡山大などの調査グループがとったアンケートで「鼻血が多い」という結果が出ていたことも、同様です。つまり学術的にも正式に発表されているデータと、国や双葉町がとった行動には、矛盾が生じている。そうなると、国が無知なのか、知っていてデータを隠しているか、どちらかしか疑われない。今度は、国がそのデータの信憑性や正確さを証明しなければならない状況に陥った、ともいえるのでしょう。逆に、それができなければどうして漫画を批判したのか? ということに説明がつかなくなってしまいます。
国際的に緊張が高まっているのに、どうして原発を輸出するのか? 原発が攻撃されない保証があるのか? それは国内とて同様の話です。民間人をも攻撃する国が、どうして原発を狙わない、と言えるのか? 軍艦だから攻撃される、というのなら、民間船をチャーターするか、赤十字船だとはっきり示して航行すれば済む話です。可能性の軽重をもって政策を変える、というのは最もリスクの高いものであり、そのバランスが崩れたとき、大きな人災を引き起こすことにつながります。

マキャベリの君主論でも、巧言令色の徒を側近にすること、を戒めるべきとします。翻って安倍政権に協力するのは、そんな人物ばかりです。蝋人形をつくられ、喜んでいるばかりでなく、自分の主張することの矛盾、不整合について説明しなければなりません。それがなければ、利権者の操り人形として、使い捨てられて終わり、安倍氏の春はそんな懸念が強まってきているといえるのでしょうね。

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2014年03月21日

安倍政権の国際公約の動き

オランダのハーグで開かれる核サミットで、安倍首相が核燃料サイクルの推進を表明する見通しです。高速増殖炉もんじゅは、再稼動が困難なばかりか、ウィルス感染で情報漏洩など、コンプライアンスへの疑いがあります。青森の再処理工場も、未だに稼動の目処が立っていません。福島第一原発のALPSは、放射性物質を除去できずにタンクに送るなど、原子力技術全般に不信感が募る中、何を根拠にしているのか? 恐らく、安倍政権では目立つ、国際的に発言してしまってから、国際公約だからと強引にすすめる、ということを今回も適用したいのでしょう。
しかしその結果、起きているのは不都合なことばかりです。国内の有識者からもコンセンサスがとれていないことを、一部の学者、有識者の論を採ってすすめるには、半ば国際公約にしてしまうのが手っ取り早い。そもそもコンセンサスがないのは、不安や疑義があるためです。そして早くも、そんな不都合が顕在化してきたのが安倍ノミクス、すなわち経済政策です。

外国人投資家が、週ベースでリーマンショックに匹敵する売りを入れたことが話題です。単にウクライナ問題というばかりではなく、法人税減税を政府要人が公言する中で、この下落が起きたことが深刻です。つまり外国人投資家は、安倍政権の発言や政策に期待しなくなった。日本に置いていたポジションを軽くする必要性に迫られた。閑散に売りなし、とは言われますが、今は『閑散に買いなし』といった状況です。消費税増税を控え、外国人投資家は逃げ出し始めた。配当課税などが議論の俎上にのぼったことも、ここで株売りを加速させる要因でしょう。つまり企業減税の代替財源が、配当課税となってはもう投資していられない、というわけです。
しかも株売り、円売りのダブルパンチでした。債券は比較的落ちついていますが、これは日銀の市場占有率が高いためです。外国人投資家が今後、どれぐらいポートフォリオを見直すのか? それ次第では株、為替、不動産のトリプル安が襲うかもしれません。安倍ノミクスはバブル発生装置ですが、そのバブルはすでに弾けている、外国人投資家は日本をそう看做し始めたのです。

機関投資家の換金売りが止んだ後、期末ドレッシングがどれぐらい入るか、もありますが、4月以降は日経平均の水準が14000〜10000に切り下げられそうな気配です。これは需給要因であり、その他の要因が重なると、もっと下げるかもしれない。外国人投資家はもう買わない、それ以上に売りたいのですから、安倍ノミクスという宴の終わり、とでも考えているのかもしれません。
つまり安倍氏がいくら国際的に発言しても、誰も信じない、公約とならなくなったことを意味します。ナゼなら実現性が低い、と看做されるためです。TV出演で、長続きの秘訣を聞いていましたが、政権が長続きすることではなく、発言に責任をもち、その持続性をもって信頼、信用をかちとるべきなのに、政権延命のための小手先の策を弄しようとしているようにしか、今回のTV出演はみえなかった。その軽さが、逆に鼻につき始めたところでもあるのでしょう。

しかし市場が急落すれば、政権に大きな打撃となるのが必定です。消費税増税を国際公約にして、規定路線化しましたが、その消費税増税が安倍ノミクスにトドメをさそうとしている。理論的にも危ないことを、国際的に約束してしまうことが如何に危険か? その愚をしっかり意識していないと、原子力政策にしても、経済政策にしても、国際社会から日本は『笑っていいとも』という目でみられることになってしまうのでしょうね。

明日、明後日はお休みしたいと思います。


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2014年03月16日

川内原発の安全審査、その前に

川内原発の安全審査を優先、と原子力規制委員会が決定しました。基準地震動を540ガルから620ガルに引き上げ、基準地震動では問題ない、という判断を下されたことが大きかった、とされます。しかし16日のNHKスペシャルの放送は、衝撃でした。炉心溶融をした後、格納容器まで破壊される恐れ。ベントをすると、放射性物質を多く含んだまま大気中に放出されてしまうこと。東電がいうベントでは、0.1%まで低減した状態で大気に放出するので、問題ないという説明まで否定されたのです。つまりこのままでは、どの原発でも過酷事故の際、ベントをすれば大量に放出されてしまう可能性を指摘したのです。その場合、ベントの仕組みを見直さなければ、ベントをするときには住民が避難していなければならない、となってしまいます。
しかし避難計画は道半ばの自治体も多い。それこそ住民避難に、特攻隊をくんで救出しなければならない、となりかねません。自分や、自分の家族でさえ避難が必要なとき、住民救出に割ける手があるのか? それも永続的に、となるとさらに難しくなるでしょう。ベントをするようなときは緊急ですので、尚更もう原発が事故、となった際には逃げだす準備が必要となります。

しかも、エネルギー基本計画で示された「原発の運転コストは低廉」とされた根拠、民主党政権時代のコスト等検証委員会で示されたキロワット辺り8.9円は、福島第一原発事故の対応費用を5.8兆円と試算した上でのことですが、自民党の原子力災害対策本部がまとめた昨年のデータでは、賠償5.4兆円、除染2.5兆円、汚染土の中間貯蔵1.1兆円、廃炉2兆円となり、10兆円を越えます。しかももっと費用がかかる可能性もある。その場合、コスト等検証委員会の試算、石炭火力10.3円、LNG火力10.9円、風力17.3円も上回ってくる。つまりここから分かることは、原発の安全基準が低ければ、低廉に抑えられますが、高い安全性を考慮した途端、原発の運転コストは他の発電方式を優に上回ることとなり、決して経済性では原発を選択できない、となるのです。
そこでNHKスペシャルのメルトダウンで示された、炉心溶融で格納容器損傷の可能性、ベントで放射性物質を大量放出の可能性、について、各原発は対策をしなければなりません。ナゼなら、原発は絶対に炉心溶融しない、というシステムではないからです。炉心溶融する前提で、封じ込めを考えられていたのに、封じ込めを否定されれば、溶融しないようにするか、新たな封じ込めたい策をしなければならない。それも、原発再稼動にむけた新たなコストとなり、キロワット辺りのコストは、17円どころか20円を越える水準にまで跳ね上がってくる可能性があります。

原発再稼動には、大義も何もない。火力発電にかかる輸入額の上昇、と言ってみたところで、新たなウラン供給元と期待された中央アジアで政変がつづけば、ウランとて高騰するかもしれません。再処理しない以上、今はかつて輸入したウランで賄えますが、将来的には同じことのくり返しで、輸入額の上昇要因となってしまう。結果的に、唯一の大義は原発関連の特許をもつ日本企業が、再稼動や原発輸出をすすめると潤う、という程度のことでしかないのです。
昨今増えている、自爆的な悪質事件。アクリフーズで起きた農薬混入事件のようなことが、原発に携わる作業員でおきたら、一体どんなことになるのか? 今はベテラン作業員の被ばく線量が上がり、休職を余儀なくされているという中で、作業員の質は保たれているのか? 甚だ不安です。今、東電で「単純ミス」と語られていることのいくつかが、待遇に不満をもつ作業員だった場合、これは自爆テロにも等しくなてきます。それが定期点検の原発でおきたら? 大事故につながったら? そんな不安にも直結してきます。原発政策は、根本から考え直さないと、本当の姿というのは見えて来ないにも関わらず、再稼動にまい進する安倍政権の姿勢には、本気で不安を感じてしまうのでしょうね。

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2014年03月08日

雑感。維新の原発政策

日本でもやっとChromebook搭載のパソコンが発売されます。それ自体、まだ大ヒットするほど認知度が高いわけではありませんが、世界から出遅れていた部分に、やっと追いつくという点では評価できます。日本のメーカーは未だに15.6インチクラスのWindowsパソコンをメインにすえますが、今の日本ではほとんどが買い替え需要しかとりこめません。新規の市場を開拓する、という気概に欠けており、Chromebookのような安価でそこそこの性能でも新市場開拓の期待はあります。
ただ今のパソコン市場は過渡期で、現時点で最新の第四世代Coreiより、すぐに出てくる第五世代が30%の省エネ性能や、来年には次のWindowsが噂されます。消費税増税の駆け込み需要といったところで、当分は安価で性能の高い新Atom搭載のタブレット端末が噂になるぐらいでしょう。

維新の石原代表が、党の方針に反対して原発推進を訴え、党内の亀裂が深刻です。石原氏は代表なので、学級崩壊というより、生徒が全員一致で『鶏を飼う』と決めたのに、先生が『俺はそれを食う』と言い出したようなものです。耄碌というよりは、蒙昧という形であって、福島原発の事故で既設の原発の危険度は自明になったのですから、仮に原発推進を訴えるなら、事故を起こしたときにどうするか、の対応ではなく、事故を起こさないような原発に造り替えるべきなのです。今の規制基準は、ベントや防潮堤など、原発自体が事故を起こすことを暗に認めており、そうしない、もしくはそうなっても被害を最小に、という対応でしかありません。
現在の技術であれば、仮にトラブル、事故があっても自然冷却し、原発自身が人の作業を介さず、電力さえ失った状態でも安定状態までもっていく仕組みに変えることは、可能なはずです。古い原発にはそういう仕組みがなく、事故を起こす可能性が高く、また起こしたら甚大な影響をもたらすので、再稼動してはいけないのです。もしかしたら、これから新設する原発には、そうした仕組みが導入されるかもしれない。しかし今の規制基準ならまずムリです。それは既設の、安全性の低い原発を再稼動させよう、とするからそうなるのであって、そのため原発の危険性は一向に除去できない、となってしまうのです。

震災から3年が経ち、福島原発は未だに1日400tの汚染水が増え続けています。これでも放射性物質除去装置ALPSが稼動し、正常に処理できてのことであり、できなければ800tの汚染水がでます。しかもそのALPSは停止が目立ち、安定的に処理できているとは言い難い状況にあります。さらに汚染水漏れは、定常的にくり返されており、それがなければもっと汚染水は増えていたのですから、未だに持続可能な状態にある、とはいえない状況でもあるのでしょう。
維新にしろ、自民にしろ、原発再稼動に前向きな勢力は、今ある現実にさえ目を向けようとしません。原発は決して成熟した技術ではない。むしろ古臭くて、最新の安全技術からはほど遠い施設になってしまっているのです。維新とは『すべてがあらたまり、新しくなること』という意味ですが、維新から『異心』がでて、『威信』が損なわれるというのも、既設の原発という古臭いものを礼賛するその姿勢が、すでに時代遅れというところから来るのかもしれませんね。

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2014年03月01日

雑感。はじまった値上げの動き

集団的自衛権の行使にともなう諸法案を、秋の臨時国会で改正する方向で、安倍政権は動き出しました。あくまで閣議決定に拘り、国会審議は経ずに、質問があれば答弁するということで押し通す安倍政権ですが、国家安全保障基本法という理念、骨格をつくるより前に、関連法の整備にかかるようです。ただ先の報道のとおり、内閣改造を夏にするなら、この関連法は踏み絵として、閣僚になるためにはその法案をのむ、ということが条件となりそうです。

すでに始まっている消費税増税前の値上げ、これは明らかに便乗であり、価格決定権は供給側にあるとはいえ、不透明感の強いものとなっています。しかし政府は、この動きを増税後の景気のおちこみをカバーできる、として容認する姿勢です。この一月の増税に関係ない値上げは、増税後におちこむ企業の売上げもカバーするのなら、騙されているのは消費者、となるのでしょう。
共同通信の世論調査で、原発30km圏内の自治体で、再稼動容認が2割との結果がでました。未定も4割ですが、地元の同意という大義名分は剥落した形です。事故を想定した場合、退避経路を複数準備しておかなければなりませんが、元々が過疎地に原発は立地されているため、そんなところに道路を何本もひくことは、現実的ではありません。空中搬送にしても、風向きによりヘリが汚染される可能性も考慮すれば、ヘリポートも複数必要になってくる。それもまた費用対効果で否定できますし、そもそもそのヘリポートまで行く足も問題となってしまいます。

原発再稼動をしないと電気料金が上がる、というのは嘘です。今でも原発が動いていないので、これ以上の上乗せはなく、原発再稼動をした場合、電気料金が下がるのかどうか? です。しかし電力会社はそれを約束しません。本当に下げられるなら、電力会社ももっと大々的にそう喧伝しているでしょう。ナゼなら、それが原発再稼動の近道だからです。逆にいえば電気料金は下げたくない。ただでなくとも廃炉費用の積み立て不足で、それを補わなければならず、また再処理費用、核廃棄物の処理費用もあって、原発再稼動をしても電気料金は引き下げられないのです。
人間は、価格が上がるときには敏感ですが、下がるときには鈍感です。良い材料より、悪い材料に反応しがちなのは人の性でもありますが、すでに上げ始めた消費税分の価格も同様に、電気料金も決して下がる方向にはない。上がると言われると身構える、それを利用して、国民に政府、企業にとって都合のいい形でのすり込みを行っている、というのが最近の流れとしてあります。もう上がってしまったから、4月の増税のショックは緩和される、電気料金も仕方ないと諦める、というのなら、今後も国民は政府、企業に騙され続ける構図はつづいてしまうのでしょうね。

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2014年02月25日

エネルギー基本計画の政府案

日経平均が15000円にのせてきました。どうやら米系短期スジが先週辺りから仕掛けをうっているらしく、日米欧で同時株高商状をつくりだしているようです。特段の材料もなく、凪の状態を好感して、一時的な演出をしている形です。しかも、追加緩和が期待される日欧ばかりでなく、中国を初めとする新興国の動揺に、FRBがテーパリングを停止してくれる、との観測もあるようです。つまりG20での合意を考えれば、年内にテーパリングで資金供給をしぼることは現実的でない。米政府とのパイプをもった、と噂される主体だけに、米国で何か動きがあるかもしれません。

韓国が、中期の経済財政の目標をだしました。2017年までに潜在成長率を4%、就業率を5%、1人当たりの所得を60%、それぞれ上げるとします。しかし数値目標は勇ましいですが、具体策は何もなく、空手形とも指摘されます。むしろ、財閥系の企業がどれだけ海外で稼いでくれるか、ですべてが決まってしまう韓国にとって、ヘルスケアや国民への給付などのような、当たり障りのない、耳ざわりのいい施策を掲げるしかない、という事情も透けてみえます。国内では何の成果もない、とされながら、支持率だけは高い朴政権ですが、強気の外交という以上に、数値という夢を与えることでしか国内の不満を抑える術はないのかもしれません。
同時に家計債務の削減もかかげていますが、政策で無理やり家計債務を減らすなら、強引に不動産価格をあげるしかありません。原発がデータ不正で停止して以降、企業活動には不適として投資もすすまない。頻繁に停電の恐れがあるため、安定した活動ができないのです。外から入ってくる資金もなく、それを目指すなら朴ノミクスでも行い、量的、質的緩和をするしかないのです。

日本でもエネルギー基本計画の政府案がまとまり、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけました。日本では、原発がなくても停電の恐れもありませんが、この言葉は、常時発電できる、という位置づけだそうです。しかし実は、そこにこそ大きな問題があります。つまりエネルギーを常にムダにしている、また原発は消費地から遠く、送電ロスも大きな問題です。それに核のゴミまで含めると、原発はとても非効率な電源、という言い方もできるのです。
つまり現時点で、原発を再稼動させずに問題がある、とすれば高い原油、天然ガスを買っていることしかありません。しかし以前から指摘していますが、国内で核のゴミを捨てる場所のない日本は、いずれ核のゴミを、高いお金をだして輸出し始めるでしょう。そのとき、恐らく原油や天然ガスなど比べ物にならないぐらい、日本から富が海外に散逸することになります。結局、今はそのコストを伏せているため、奇妙な言葉をつかって、原発再稼動ばかりでなく、新増設にまい進する、ということになるのです。

かつてはシルクロードを通って、当時のローマとも日本は交易していた、とされます。将来的には、ベースロードという言葉をつかって、核のゴミを発展途上国に押し付けることになるのかもしれません。むしろ原発に死線をにぎられる韓国をみると、日本もいずれ辿る道、としてベースロードという言葉はあるのかもしれませんね。

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2014年01月13日

都知事選で脱原発は争点か?

いくつかの世論調査で、普天間基地の辺野古移設を「よかった」とする回答が、「よくなかった」を上回るケースがあります。おや? と感じるのは、仲井真沖縄県知事は「驚くべき提案」としましたが、確約のない空手形ばかりで、法的根拠も米軍と調整した形跡もない。実は、何も進展していないのに、よかったとするのか? ただ、質問の仕方にも問題があり、普天間基地の移設が進展したこと、を「よかったか?」と問われれば、よかったと答えざるを得ず、こうした設問をしているメディアも多々あります。沖縄県内移設をどう思うか? という質問ではないのです。
鳩山政権以来、世論調査でも辺野古への移設には反対、の方が多い。しかし今、国民に反対意見が多いとすると、名護市長選で移設容認派には不利。そんな思惑が透けてみえます。もし仮に、辺野古移設を国民が歓迎しているとするなら、わずか数年で、政権が交代しただけで、ろくに国民へ説明することもないまま、また沖縄負担は残ったまま、国民はころっと趣旨替えした、ということになります。最近、メディアの世論調査には首をかしげることが益々増えましたが、ビッグデータならぬ、ビックリデータの活用は政府、メディアの至上命題のようです。

安倍政権からは、都知事選で原発問題を争点にすることを、否定する発言が相次ぎます。しかし東京都は東電の大株主であり、都知事選には東電の電力政策をどうするか、という選択権があります。つまり東電は擬似的に国営化していますが、株を上場する民間企業であり、株主の意向を通せます。それが嫌なら、東電を国営化するか、もしくは都に株をすべて売却させ、株主提案権を放棄させるか、そのどちらかとなります。つまり半官的な扱いである電力会社を、そのまま存続させたツケで、都知事選で原発政策を争点にしても違和感がない、となっているのです。
電力政策は国策だ、という意見もありますが、日本のように地域独占を許し、国と電力会社がなぁなぁで電力政策をすすめるような国は、ほとんどありません。また日本原燃が下北の再処理施設の安全審査を申請しましたが、実はここにも大きな問題があります。申請されたのは再処理工場、ウラン濃縮工場、MOX燃料工場、貯蔵センターです。高レベル廃棄物を処理する施設は含まれていない。この施設は完成したにも関わらず、トラブル続きで動かせる目処が立っていません。つまりこの4施設だけ、稼動を早めても高レベル廃棄物がたまり続けるだけなのです。

原発は、確かに国策ですすめられましたが、国はきちんと最終処分までの工程を決め、国民に提示したわけではない。現在の技術ですら、ガラス固化体にして、地下に埋設できるかどうかは不明なのです。ならば、そこに国民の選択があってもまったく自然です。むしろ国政選挙において、きちんと道を提示し、選択権を与えていないのですから、株主という立場からそれを選択できる道があってもよいのでしょう。結果的に、今のように電力会社を民営なのか、国営なのか、曖昧にしたままきたツケにより、国民の選択できる道が増えた、ということです。これにきちんと説明がつけられないようでは、口先介入で争点化を避けても、逆にそれが争点として注目されるだけ、ということになるのでしょうね。

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2013年11月18日

福島原発の燃料棒とりだし

昨日も取り上げましたが、韓国では今、日本の週刊文春に取り上げられた安倍首相の発言「中国はまだ外交できるが、韓国は愚かな国」に反発し、メディアも世論も沸騰しているとされます。日本人だと一々週刊誌に…というところですが、国会でも取り上げられるなど、週刊誌の価値を今ひとつ理解しないと、こうした動きになるのでしょう。そもそも、この程度の発言は与党の保守系議員をヨイショしながら質問すれば、すぐに答えてくれる程度のもので、中身があるとは到底思えませんが、敏感な時期だっただけに、この問題は長引くのかもしれません。
福島市長選でも、自民推薦候補が無所属新人に大敗しました。これだけの政権支持率、政党支持率があって地方選に負け続けるのですから、疑うべきは世論調査の結果でしょう。以前も指摘しましたが、世論調査は高齢者の回答が多く、高齢者は注目度の高い国政しか選挙に参加しない。国政選挙は世論調査の結果に近くなることからみても、そうした傾向が読み解けます。逆にいえば、世論調査は決して国民全体の支持を反映していない、ということになってくるのです。

福島第一原発4号機で、燃料棒のとりだしが開始されます。まずは未使用のものであり、損傷も少ないとみられますが、問題は使用済み核燃料の方です。放射線の影響で核燃料を詰めている筒もかなり劣化しているとみられ、一部はすでに損傷が確認されています。3本が取り出し困難、また70本が事故前から放射性物質の漏洩が確認されていた、とされます。持ち上げた瞬間ぼろぼろと壊れたら、燃料プールの汚染が深刻になり、今後のオペレーションにも影響がでてきます。
さらに運搬用のキャスクの耐衝撃性においても、試験はしておらず、安全性にも疑問があります。落下時の損傷は重大ですが、損傷しなくても蓋を開けることすら困難になれば、キャスクごと保管、管理しなければならず、そのスペースとキャスクが錆びついて壊れたときのことも考慮しなければならない。プール内でラックから詰め替えるため、中には水が入っており、少しでも損傷すれば中から水が洩れてくる。そしてそれは、キャスク内で熱が高まることを意味し、中でぼろぼろに崩れる恐れがある。その場合はキャスクごと廃棄物として処理することになります。

廃炉にむけた一歩、というより、今回は取り出しながら、様々な事象が起こることを知見として収集する、という目的の方が大きい。1〜3号機の方が、よほど燃料プールにある核燃料のとりだしも困難であり、4号機の経験を生かしてさらなる困難に向かう、という位置づけになるのでしょう。
公益財団法人、環境科学技術研究所が事故当時に福島で、呼気でとりこんだトリチウムによる内部被曝は最大3μSvと発表しました。しかしこの財団法人は原子力ムラの住人であり、発表には信がおけません。そもそも空中に浮いて、落ちて、また舞い上がるといったくり返しの中で、どの程度かは地域によっても、天候によっても異なりますし、空中に放出された量とまったく見合っていないからです。韓国では危険を煽り、日本では安全を煽る。原発の報道は、利害関係者でない第三者機関によるものでない限り、偽装の多いこの国では最早、誰も耳を貸さなくなったのかもしれません。福島三大都市の現職市長の敗北という事態は、震災以降の対応における国民の不満、そうしたものが如実に表れており、それは福島原発の処理における東電の態度も、まだ国民の支持は得られていないといえるのでしょうね。

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2013年11月11日

除染に国費投入?

フィリピンで台風30号が大きな被害をだしています。4m級の津波のような波、とされており、これは日本の防災にも色々な示唆を与えてくれます。津波はソリトン波とされる孤立した波ですが、台風だと連続して波が襲います。それだと決壊する恐れも高くなる。日本の経験を生かして、フィリピンの復興と防災に関して、できることをともに模索していくことが大事なのでしょうね。

自公の提言により、政府の福島第一原発の処理を転換する方針を、政府が示すようです。除染、中間貯蔵施設の建設、管理に国費を投入する方向です。また提言では、原子力損害賠償の時効を停止、もしくは延長すること、帰還可能地域から率先して除染、インフラ整備をすすめること、東電の分社化なども含まれています。しかし問題は、すべてが東電生き残り策に見えてしまうことです。
分社化にしても、いわゆる不良資産の切り離しであり、利益を生まない組織をつくれば国費投入が増えます。今は労務管理など、東電が行っていますが、新組織として独立すればそうした経費をすべて国が負う形になる。電力会社の収益の一部が、新組織に流れる制度でもあれば別ですが、逆にそうした形になるなら分社化する意味はありません。分社化の利点は責任の切り分け、管理の明確化がありますが、逆に分社化の難点は、人の融通が利かない点です。もし今後、新たなトラブルが生じて人を増やさなければならないとき、電力会社は知らないと、逃げてしまう恐れもあります。

帰還可能の問題でも、原子力規制委員会で20mSv以下でも可能、空間線量ではなく個人線量で、といった提言がありましたが、本来放射性物質が存在し、線量が高い場所は、放射線作業従事者による区分ではグリーン、イエロー(オレンジ)、レッドという三段階中のレッドに該当します。つまりマスクをして、全身を覆う白いカバーのついた服で作業するレベルです。個人線量を計るためのバッジも、内部被曝によるα崩壊、β崩壊は計測できません。放射性物質がある地域にいる、ということはそれを吸い込み、内部被曝することを本来は考慮していなければならないのです。
しかも、作業従事者は線量の高い空間にいる間、バッジをつけ続けます。しかし日常生活においては、ちょくちょく外す。線量を正しく計れていない恐れが、この計画ではまったく抜け落ちています。24時間、線量の高い地域にいる、呼気から放射性物質を吸い込んでしまう恐れがある、ということに何ら答えていません。それこそ20mSvに引き上げるなら、住民を定期的に内部被曝まで含めて調査し、また作業従事者と同じように、手当てについて考慮する必要もあるのでしょう。

政府、自公の動きは、費用や困難さが色々とわかってきた。また安倍首相がIOC総会でついてしまった大言を、何とか辻褄あわせしよう、という感じに見えてしまいます。しかし政府も自公も、税金を投入する、ということに対してあまりに軽すぎますし、説明が尽くされているとも思えません。住民や国民を踏みつけにして、それで電力会社とそれに投資する金融機関が安寧を得る、対外的にも胸を張りたい、という思惑しか見えないのです。きちんと東電に責任をとらせる、といった形が示されない限り、国民の納得はえられないことをもっと考慮するべきなのでしょうね。

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2013年10月29日

核廃棄物の処理施設の行方

東電が、国が肩代わりしている除染費用について、支払いを渋っている件について、環境省が延滞料を課す方針です。340億円に対して年利5%なので、月で1億円以上の負担が増える形です。これは、経産省が検討をはじめた除染費用の国費投入、という動きに対する環境省のカウンターであり、経産省の策動が成功すれば、これまでの、これからの除染費用免除という特典がつきかねません。しかし破綻もしていない企業に、年利つきで貸している費用まで、減免されるという形は困難です。最悪、環境省はこれまでの除染費用は徴収する、という姿勢を示したことになります。

小泉元総理と、社民党の吉田党首が会談しました。社民党は退潮する党勢を、小泉人気にあやかりたい。小泉氏は自ら動くことで、それが記事となり、脱原発の機運を高められる。そして、脱原発を唱えていると、講演の依頼も増えることになります。さらに、以前も指摘したように、子息である進次郎氏への深慮遠謀の援護射撃でもあるのでしょう。
一部で、米国のブッシュ前大統領との親密ぶりから、石油利権とも結びつけて語られますが、小泉氏は自然エネルギーと述べており、直近の発言からは石油利権と直接には結びつかないようです。米国との繋がりなら、安倍氏嫌いのオバマ政権の主張に沿う、という形の方が、今回の動きには説明がつき易い。ただ、その可能性はやはり低いでしょう。原発特許利権は米国が多く抱えており、それに反して動くことになります。小泉氏の主張にそこまでの深みは感じられません。

フィンランドのオンカロ廃棄物貯蔵施設が、高レベル廃棄物の唯一の処理施設となっています。新興国で新設される原発でも、処理まで一貫して計画されたものはなく、事業計画としてみると、どこも中途半端なまま、計画だけが推進されているかに見えます。しかし恐らく、この流れの先には開発途上国に対し、多額の補助金とともに核廃棄物を、世界から押し付ける計画が、裏にあるのではないか? と考えています。特に、アフリカなどで王族支配をする国では、住民の反対など関係なく、事業をすすめられます。またこうした国は国立公園が多く、それは動物の保護区になっています。その地下、数百メートルに埋めてしまえば、どこからの苦情もありません。
核廃棄物の世界的な協定をつくり、そこに参加する国が増えれば増えるほど、こうした動きを通し易くなる。米国もヤッカ・マウンテンへの処理施設建設を頓挫し、核廃棄物の処理には苦慮している。新興国での原発建設が決定されれば、こうした動きを加速してくるでしょう。今はその下準備期間であり、安倍政権は国内の原子力ムラのみならず、米国の期待を負って、世界にむけて原発建設を進めようとしているのです。そこに小泉氏がNOと言い出した。なので、安倍政権は小泉氏に強く反発している、ともいえます。国内の原子力ムラなら、宥め空かすことができても、米国相手ではそうもいきません。国内問題を一挙に解決する、核廃棄物を新興国へと押しつけてしまう計画、それが明らかになるとき、果たして世界はそれを喜ぶことができるのか? それを考えて今の動きを見ていく必要があるのかもしれませんね。

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2013年10月23日

原発建設と原発再稼動の動き

汚染水の問題、安倍首相の発言が徐々に変わります。IOC総会では「完全にブロック」、16日の本会議では「全体として状況はコントロール」、22日の予算委では「モニタリングの結果、すべて基準値をはるかに下回る数値しかでていない。そういう意味で完全にブロック」となりました。しかし原規委員長の田中氏が、同じ予算委で「検出されている」と述べるなど、矛盾も露呈しています。
そもそも、外洋のモニタリングはしていませんし、一部でサンプル調査をしているだけのはずです。モニタリングは継続的な監視であり、もし外洋でそれをするならブイを浮かべ、計測した上で24時間監視する必要があります。恐らく安倍氏はサンプリングと間違えていると思われますが、これだけを見ても、安倍氏が内容をよく把握していないことがうかがえてしまいます。

英国で、新規の原発建設が決まりました。しかも、一部で中国企業が参加する見通しであり、寡聞にして中国の原発事情については分かりませんが、裏では安価な受注合戦があったものと見られます。太陽光パネル、製鉄、などの過剰設備と生産、それによって値崩れを起こし、結果的に産業としては衰退している中国で、原発輸出は一つの国策産業でもあるのでしょう。
しかし韓国で、全発電量のうち、原発の比率を40%台まで高める計画が、20%と現行水準のままとなったのは、偽装や性能不足により、原発の信頼性が著しく低下したためです。では、中国企業に信頼性があるか? は依然としてナゾです。トラブルがあっても隠してしまう国で、性能不足、試験結果の捏造などが起こりうる可能性を、十分に示唆するものです。残念ながら、日本の原子力ムラのみならず、アジアの原発産業への信用は、極めて低いと言わざるをえないのでしょう。

自民が、原発再稼動推進の方針をうちだし、原規委の対応を遅い、と批判しました。しかし元々原規委の設立時、政治、行政からの独立をもって、これまでの原子力行政の失敗を見直す、という趣旨があったはずです。しかし自民は、それも民主党政権時代のこととして、変えてしまうつもりかもしれません。自民とて原子力ムラの住民なのですから、しばらく選挙がないこの時期、態度を鮮明にしてくることは容易に想像できましたが、これも高い支持率で増長した結果かもしれません。
IAEAが、1mSvの除染を「現実的でない」として、見直すよう提言しました。IAEAも広義では原発推進です。各国の原発の査察が役目であり、逆に言えば原子力産業がなくなるなら不要な組織だからです。しかも、除染がある水準以下にはならないことも知っている。それは日本の東海村にあるアスファルト固化処理施設で、火災爆発事故を起こした後の実態をみても、明らかだからです。

新興国では、原発建設に前向きな国もあり、日本はその受注に務めています。しかしどこの国も、核のゴミをどうするか? という議論がないまま、単にクリーンエネルギーというだけで、推進しているように見えます。ある説では、地球は35年周期で、これから寒冷化するという話もあります。いつまでもCO2排出を目的とした議論から脱却できないと、それこそ世界中に処分できないゴミを抱え、もっとも弱い国に押し付けるということが現実味を帯びてくることもあり得るのでしょうね。

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2013年10月12日

小泉元首相の脱原発発言

一昨日、東電がついに港湾外の海水から、1.4Bqの放射性セシウムを検出、と発表しました。沖合い約1kmと近いですが、希釈された上でのことですし、またセシウム以外の放射性物質も含まれるため、薄くとも重大な問題です。潮溜まりのような場所ではさらに濃度が上がっている可能性、また海底に沈殿している可能性、等をふくめて広範な調査が必要になっています。
政府がやっと周辺海域の水質調査について、IAEAを含めた取り組み、に言及しました。しかしIAEAの調査、といったとてIAEAに調査用の人員はおらず、日本側のだしたデータを精査するぐらいで終わる恐れもある。東電と切り離した民間の調査機関が、IAEAの指示に基づいて行う、という仕組みづくりも必要でしょう。大メディアが誘導までして世論調査の結果を捏造する昨今、東電のような破綻寸前の企業が、調査を適当にやって、安全ですという不安は尽きないのですから。

小泉元首相が、脱原発についての行動を強めていることで、一部週刊誌では袋叩きの様相を呈しています。日本をダメにした政治家、とまで罵倒し、小泉政権の残党を多く用いて当時より人気もある、安倍政権に嫉妬しているのでは? との見方まで示します。しかしすでに政界を引退し、支持率の多寡で嫉妬するほど、小泉氏は軽薄な人物ではありません。首相になる以前から、政界では珍しく軽率に発言せず、歯に衣着せない物言いをしていたことで、首相にまで上り詰めた人物です。その小泉氏がとった首相時代の政策には、問題のあるものも多かった。そんな小泉政権の5年半を、安倍政権は短縮して突っ走っているだけで、嫉妬とはほど遠いはずです。
小泉氏は核廃棄物の海外視察の後、脱原発なら支持が集まる、として原発ゼロを声高に主張しはじめた、とされます。恐らく小泉氏は、息子の進次郎氏が首相になるのは存外早い、とみて今から援護射撃を打ち始めた、とみています。先にも記したように、安倍政権は短距離走のように、矢継ぎ早に小泉政権時代の手法を真似、突っ走っています。息切れするのも早い。そして安倍政権が失脚した後には、安倍政権を否定する形でないと、国民の支持が得られない。しかし安倍氏の行っていることは保守本流そのものであり、自民内での多数派です。安倍政権否定は、直接自民政治の否定につながりかねず、それでは党内をまとめることが難しい。しかし安倍氏の進める原発推進だけは、自民内でも反対派がいる。国民の支持も高い。脱原発なら、安倍政権が失脚して混乱した国、党をまとめあげて進次郎首相の誕生への最短コースとなるのです。

しかしそれは、別の意味で財務省派の小泉氏が、原発推進路線の経産省派の安倍氏との対立軸をもった、ということでもあります。だから経産省側が、ここで小泉氏をつぶさないと脱原発政権の誕生になる、と早くも潰しにかかった。それがここ最近の、週刊誌の報道なのでしょう。
脱原発は票になる、その嗅覚の鋭さは、政治家なら誰でも思うことです。それを思惑通りに、進次郎氏の援護射撃とできるか? 今回はメディアの協力が得られそうもなく、バッシングが増えることは覚悟しているでしょう。しかし政界を引退した後の、悠々自適だからこそとれる行動でもあり、その成否については、今後の政局や社会情勢次第、ということにもなってくるのでしょうね。

明日、明後日はお休みしたいと思います。

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2013年09月22日

汚染水の問題

福島第一原発で、今月下旬から多核種除去装置(ALPS)が稼動します。しかし漏水、腐食の問題があり、海水が混じったゴミの多い汚染水の処理には、不安も残ります。逆に、6月の試験運転より、地下水により希釈されているから、大丈夫かも…という甘い期待もあるのでしょう。しかし震度5弱の地震もありましたが、揺さぶられると再び沈殿していたゴミが浮いた可能性もあります。
そのALPSでも取り除けないトリチウムの問題で「健康への影響は少ない。どこでも希釈して海に放出している」として、放出すべしとする意見があります。また、トリチウムを除去できる装置が福井にある研究炉ふげんや、柏崎刈羽原発にあるものの、処理費用の高さや輸送の難しさから、現実的でない、とする意見もあります。しかしどちらも奇妙な意見であることは云うまでもありません。

まずトリチウム、水と同じ性質であり、対内に滞留しないので影響が少ない、とする意見もあります。またβ崩壊なのでエネルギーが弱い、とも。しかし対内でβ崩壊すれば、透過せずにとどまるので、着実に周りの細胞を傷つけます。それに半減期が12.5年と比較的短いので、1日で対外に排出されても、少数でも崩壊する確率は高い。逆にいえば、トリチウムの崩壊による健康被害を正確に把握するのは困難。だから影響が少ないのではなく、影響したかどうかは判別がつかない、が正解です。処理費用の高さは、本来であれば海水に放出される量ではないのですから、東電が負担すべきものであり、現実的ではないなどの理由でそれを否定するのは、東電擁護というだけです。
もう一つ、健康に有為な被害がないので、少数の被曝や線量を気にする必要はない、というのも奇妙です。もしそうなら、主に原発で行われている、管理区域における管理を、一切やめてもいい、となってしまいます。つまり福島第一原発は、安倍首相の重装備でも分かるように、今は環境モニタリングにおいて、施設外に有為な量もれていないことを確認していて、外部も管理区域になっています。ならば、他の原発施設も同じ管理でいい、となってしまいます。つまり、有為な影響がでないのですから、原発の厳重な管理のコストは、すべてムダです。それをやめて、福島第一原発と同じ管理にすれば、かなり運営費が削減できます。福島第一原発に関する部分だけ甘くしろ、は事故を起こしたから仕方ない、という納得だけでしかなく、科学的にも、現実的でもないのです。もしそうした管理で十分だというなら、全原発で同じ管理をする方が、よほど合理的判断といえます。

ALPSの成否は、極めて重要ですが、逆にいえばALPSが失敗すれば、福島第一原発の汚染水処理は行き詰まります。こういうとき、東電は何となくうまくいった、と誤魔化して、後でとんでもないことになっている、ということをくり返してきました。さらにALPSでない処理装置も検討していません。綱渡りどころか、迷路なのに一つの道を選択して、行き止まりならジエンドという状況です。
海外からは、どうして日本、東電は国際的な知見を集め、海外から応援を呼ばないのか? と不思議がられています。しかし今の福島第一原発の現状を、海外の有識者が知ったら愕然とするでしょう。だから海外の有識者を呼べない、情報を詳らかにできないのです。むしろ海外から有識者を呼び、日本式の隠蔽に染まらない技術者たちが実務を担当するとき、どうした判断を下すのか? そのことの方に興味があります。under controlできない技術者の登場が、今は望まれる状況なのでしょうね。

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analyst_zaiya777 at 22:51|PermalinkComments(0)TrackBack(0)