欧州

2019年04月11日

雑感。ブラックホールの映像

ブラックホールが撮影…少し期待しすぎたのかもしれませんが、ちょっと拍子抜けでした。ホーキング輻射によりブラックホールは光る、もしくは落ちていく情報が表面に貼りつく、などという推測はこの映像では確認できなかったからです。しかし電波望遠鏡が発達し、それこそ宇宙空間にいくつもの観測衛星が浮かべば、いずれこうしたナゾも解明されるかもしれません。今は地球上でできる最善のことをした、という意味でこの映像の意義は大きいのでしょう。ただガスの濃度差など、新たなナゾも生まれてしまいました。

Brexitが10月31日まで延期されました。トゥスクEU大統領とメイ英首相とは、言葉は悪いですが同じ穴のムジナ。Brexitを骨抜きし、影響を最小限にするのが目的であり、期限を1年延期と提唱したのもトゥスク氏です。ただ、メイ首相はすでに辞任カードを使い、野党とも協議を始めるなど崖っぷちであり、1年延期したとてトゥスク氏とメイ氏の描いた通りの決着にはならないでしょう。メイ案以外の選択肢として議会で投票を行った際、EUから離脱も関税同盟には残る、が僅差の否決でしたが、そんな都合のよい決着にはEU側が断固反対するでしょう。それが許されるのなら、EUから離脱する国が続々と現れるはずです。
ただ今回の決着先送りでも、EUが混乱を恐れて弱気になっていることが読み取れ、EU各国の中で離脱を訴える政党にとって追い風となるはずです。EUは強気にでられない、今が交渉のチャンスだと。EUの恩恵を最大にうけている独国が、トゥスク氏の提案にのったのもEU離脱派が、まだそれほど伸びていないため。逆に仏国をはじめ、政治的に不安定な国は、自国内の離脱派が伸長するのが怖い。この延長が吉とでるか、凶とでるか。個人的にはEUの終わりの始まりで、どんな形にしろEUに変化が生じると考えます。

世界の指導者が混乱を恐れ、何とか物事を丸く収めようとする中で、株式市場でも大量のVIX指数売りが溜まっている。何か弱気材料がでても、VIX指数を低く抑えることで株式の下落を防ぎ、上昇させるといった取引が今年に入ってから活発です。それが3ヶ月もつづいたことで、すでに維持するのが難しくなっているのです。いつそれが買いに転じ、VIX指数が上昇するか分からない、それに伴い株が下落するか分からない、という状況で日本は10連休を迎えてしまう。非常に懸念される状況が近づいています。
今の世界は力業で不安定要因を排除しようとする一方、その歪を溜めていく。昨年10月から起きた急激な下落も、実はその一環とさえいえるのです。ダウ、NASDAQ、S&P500、これらのうち一つでも最高値を更新したら要注意なのでしょう。その歪が一気にふきだし、現状の環境でこの価格はあり得ない、という思惑が一斉に広がる可能性があるからです。そして今、ヘッジをかけずにリスク資産に投資し、わずかな利回りを得るような投資をしていた層が慌ててポジションを巻き戻す。そんな動きを引き起こし易くなります。

Brexitも同じで、不安定要因を排除しようとするばかりに、歪みが大きく溜まっています。そしてそれは日本も同様なのでしょう。昨日取り上げたように、安定が望まれるとして長期政権をメディアと財界も推奨してきたら、その腐敗が歪として溜まってしまった。今や世界は、ブラックホールが空間を歪ませて映像を屈折させるように、溜めこんだ歪みによって現実すら見えなくなっている、そんな状況なのかもしれませんね。

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2019年03月12日

雑感。Brexitは不透明

英・EUによる「法的拘束力をもった」離脱合意案が合意されました。ただし1月に英議会で否決された、アイルランドとの国境管理の問題では『回避策がみつかるまで英国全土を関税同盟に残す』としていたものを、今回は『永続的に拘束しつづけない』と付け足しただけ。『20年12月までに回避策をみつけられるよう努力』とも記しましたが、ただの努力目標。メイ英首相は「必要な見直しを勝ち取った」としますが、実は何の変化もありません。言葉だけがマーチからワルツに踊りを変えた印象で、これでは議会の同意も難しいでしょう。
そうなると期限延長を議会で可決し、EUと協議しないと『合意なき離脱』ですが、EU側も延長したとして2、3ヶ月が限度。むしろ延長することで、EU内の英以外の国の離脱推進派を後押ししかねず、今後の混乱を誘発しかねません。一旦、合意案を発表してしまった後では、そこからの妥協は英・EUともに弱腰とみられ、リスクを伴う。これは短期で決着しなければいけなかった問題で、この時点まで引きずる時点で双方とも敗者です。

米国では2020年度会計の予算教書がでてきて、歳出は5%以上も増やすよう要求しました。米国では予算は議会が決めます。予算教書はいわば、トランプ政権が議会へのお願いとして出すもの。中露への備えとして国防費の増加、メキシコの間の壁建設費用など、何でも盛り込んだ印象で、財政赤字は1兆$を越えます。すでに景気拡大局面は最終段階、とされる中で財政赤字が止まらない。26年度には政府債務が30兆$を突破するとの試算もありますが、もしここから景気後退が始まったら、加速度的に債務が拡大することになります。
怖いのは、金融緩和をつづけても景気が拡大しない、日本型の経済情勢に陥ると、世界各国で不都合な真実が一気に噴出することです。政治の場では、一人の政治家の名スピーチにより情勢ががらりと変わることもある。しかし経済はマインドが悪化すると、一気に悪くなってしまう可能性もある。特に各国の債務状況が悪い現状では、一度悪くなると崖を転がり落ちるように悪化が続く可能性がある。だから今、意味不明な楽観をばらまいてでも、景気悪化を食い止めようと相場が上昇する、ということをくり返しています。

英国王ジェームズ一世(1566〜1625)は読書をよくする博識でありながら、王権神授説を唱え、国民に対しては神から王権を授けられた王への服従を求める、といった暴君でした。そのため「キリスト教世界随一の賢明な愚人」とも評され、議会とはたびたび衝突した。知識人といっても賢者ならず、といったことを体現した人物であり、英国ではシェイクスピアでも「知恵の数より毛が多い」などと人を小バカにする言葉が格言としてつかわれるほどです。ちなみに、このジェームズ一世の時代は、シェイクスピアが活躍した時代でもあります。シェイクスピアの歴史劇の一つ、リチャード三世の最終盤、ボズワースの戦いに挑むリチャード三世の言葉「I have set my life upon a cast,And I will stand the hazard of the die」があります。意味は「この命、投げた賽に賭けた。死の目が出ようと」です。まさに今の英国、死の目がでることも厭わないのかもしれません。知識が集まったはずの議会が示す混乱、経験のないことに挑む困難さ、国民投票が決めたことという暴君により振り回されていると、改めて意識せざるを得ないのかもしれませんね。

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2019年01月20日

仏政府によるルノー、日産の統合提案

北朝鮮の金英哲党副委員長が訪米し、トランプ氏と会談。一気に2月米朝協議の機運が高まります。しかし立場の違いが埋まっておらず、外交で成果の欲しいトランプ氏が安易な妥協をするのでは? との懸念もある。ただ日本にとって、もっとも懸念すべきは拉致問題を提起してもらえるよう、米国に依頼する安倍政権の態度です。もし仮に、北朝鮮問題で進展がない場合、成果の欲しいトランプ氏が日本に対してその成果を求めてくる可能性があるからです。つまりトランプ氏にとって、北朝鮮問題で成果をだせないとき、日本を保険とできる。これからも拉致問題を取り上げてやるから金を出せ、と言われかねないのです。

安倍首相がダボス会議で、日本が自由貿易を主導する立場をアピールするようです。しかし早くもそれが試されるのが、仏政府によるルノーと日産の経営統合要求です。仏政府はルノーの筆頭株主、ルノーは日産の筆頭株主であり、仏政府には口をだす権利があります。問題は日本政府で、許認可権という権利をもっていても、企業買収に口をだす権利がない。メディアや通信インフラなどのように法律で守られているわけではないからです。空港や水道事業など、外資の参入も容認しようとする安倍政権が自動車産業だけは守る、という理屈も成り立たない。安倍政権がゴーン前会長の逮捕以来、日産を守ろうという態度を貫くのかどうか? それ次第では、自由貿易を主導とはいえなくなるはずです。
日産には拒否する権利があります。そうすると敵対的買収に発展するのか? 日産の株主構成比率からみても、臨時の株主総会でもルノーが勝てるかどうか、厳しいとみられるためです。日曜にこうした報道がでたのも仏国の戦略でしょう。もし日本政府が財界を焚きつけて、日産株の防衛に動こうとしても間に合わないタイミングです。ただ実際、仏国が買収に動く可能性は小さいとみられます。いくらルノー経由とはいえ、そこまで資金をかけて持ち分比率を上げるメリットがあるのかどうか? イベントドリブン型の動きはでてくるとみられますが、今後の仏国の戦略は不透明といわざるを得ません。

ルノーが日産に送った書簡、テレ東がスクープとして一部報じていますが、日産による不当な捜査を訴える点からみても、ゴーン氏が釈放されたのち、海外へと逃亡して不当な捜査を訴える材料としての根拠を遺した、といえます。逆にいえば、ゴーン氏が日産に復帰できる可能性も、これで残したことになる。ゴーン氏が日産・三菱と欧州につくった合弁会社から不当な報酬、という話も複数の国にまたがっており、それを追及しはじめると国際的な司法の判断にももちこめるかもしれない。そのとき日本の捜査が不当だった、とすればゴーン氏の復帰への障害はなくなります。後は、ゴーン氏の復帰とともにルノーとの統合を決定してしまえばいい。無理して買収に動く必要もなくなるのです。
自由貿易は標榜しておきながら、企業の買収などに関しては閉鎖的、そういう態度が果たして国際社会で通用するのかどうか? ダボス会議の安倍氏は特に注目されるのでしょう。今年のダボス会議はトランプ氏が出席せず、注目度も下がっていますが、なぜか今年のG20議長国だから、としてやる気満々の安倍氏。むしろ国際関係はいっそう複雑に、難しくなっている中で、立場を悪くしているという現状すら理解できていないから元気なのだとしたら、安倍氏にとっては自らのダメ、ボスぶりを示す駄ボス会議として、きっちりと(悪い意味での)爪痕を残してくるのかもしれませんね。

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2019年01月16日

英国の戦略、ゴーン氏の戦略

英国でメイ首相が提出したEU離脱案が圧倒的多数で否決されました。市場ではEU側が期限を延ばし、その間に英国が何とかするだろう、という期待であふれていますが、私は懐疑的です。EUが妥協すればそれは欧州内でEU離脱をめざす各国の政党に力を与えるだけ。EUが配慮してくれるので、EU離脱をすすめてしまおう、という動きが高まります。なので、3月29日までに英国側が何とかするしかありません。
1つの案は、メイ政権は来週までに自主的か、内閣不信任かで退陣、与野党合意の下で暫定政権をつくり、国民投票をすることです。メイEU離脱案か、EU残留か。これは議会内の離脱派、残留派、双方に受け入れやすい。残留派は残留できれば御の字ですし、離脱派は仮に残留が決まってもメイ氏の合意案が悪かったと責任転嫁し、離脱は仕切り直しとしてしまうのです。恐らくこれだとEU残留が多数となるでしょう。そして議会で残留を決めた後、改めて解散総選挙する。そこで改めて離脱派が勝利すれば、ふたたびEUとの離脱協議を開始する。英国では大混乱になりますが、EUとしては一旦、小康が得られますし、改めて離脱協議をしても条件は変わらない、と強い態度を示す形になります。この順番を逆にしたり、おかしな先延ばしやこれ以外の変な動きをすると、3月29日には間に合わなくなり、合意なき離脱が現実味を帯びてくるのでしょう。

ゴーン日産前会長の保釈請求を、東京地裁はみとめませんでした。ゴーン氏側の戦略を読み解くと、保釈をみとめられない事情も透けてみえます。勾留理由の開示手続きでも、まったくやる気のない反論でしたが、恐らくゴーン氏は日本の司法で争うつもりはない。なぜなら、仮に無罪となったときには日本は多額の賠償をゴーン氏側から請求されるので、政府とべったりの司法が、今さら無罪になどできるはずもないからです。
なので、ゴーン氏は保釈されたらすぐにでも国外に脱出するでしょう。そして公判にも出廷せず、不当逮捕、不当起訴を訴えて日本側を民事で仏国において提訴。多額の賠償を勝ち取った上で、日本側と司法取引する。ゴーン氏を無罪、日産側の損害賠償請求も一切みとめさせず、代わりに多額の賠償を放棄して、この一件をすべてチャラにする。その意味でも、仏国でルノー取締役を解任させられることも、戦略的には一貫します。日産、ルノーで今後もうけとるはずだった報酬、年金はかなりの額になるので、賠償金の上乗せになるからです。それをさせないためには、日本側は保釈金をかなり釣り上げるか、犯罪人引渡協定をつかって仏国に身柄引き渡しを要求するしかありませんが、それを拒否する事情が仏国などにはあります。

ゴーン氏の資産は海外にあります。欧州、中東などで、もし仮にこのままゴーン氏が有罪、日産の損害賠償が成立してしまうと、その資産が日本に奪われることになる。それを各国とも容認できない。なので不当逮捕、日本の異常な司法制度というのを殊更に喧伝し、国民世論を煽っている。ゴーン氏が駆け込んできても、日本側の非を鳴らして保護する口実をつくるため。そうして自分たちの国にある資産を守ろうというのです。
英国にしろ、ゴーン氏にしろ、他に取るべき道がない。そしてその背後に、どちらも仏国の思惑がちらちら見え隠れします。仏国は自国が苦境に陥ると、政治力によって逆境を覆してきた歴史もある。ナポレオン没落後に行われた、戦後賠償を話し合う会議で活躍し、仏国を守り通した政治家、タレイランのように。しかしそのナポレオンの甥が選挙に勝利して大統領となり、ナポレオン三世と名乗って皇帝をめざすと、女流作家であったジョルジュ・サンドが放った言葉が、今でも民主主義の欠陥をよく示すものとして知られます。「フランスの半分は、他の半分を告発する」つまり、半分の意思により決定されたことが、本当に全体として幸福なのか? 政治力を駆使してきた国で問われた民主主義、これは今の世界におきる危機、国政の衰退にも通じるのでしょう。そんな仏国に政治力で勝ることができるのか? 英国も、日本も試練に立たされているのかもしれませんね。


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2018年03月05日

欧州の2つの選挙

加藤厚労相が、安倍首相が裁量労働制を『完全に』削除、とした意向を踏まえたのか、労働者保護に関するものまで『すべて』削除、という方針を示しました。改めてやり直し、としますが、新入社員らが裁量労働制の対象とならないよう『勤続3年以上』や『有給休暇の付与』などは、むしろ今現在の適用者にも当てはまるのですから、法案に盛り込んだとして決して不備はありません。やはり安倍政権の目線は財界側からのみで、労働者に権利を与えるのは、同時にもっと厳しい制度を課すときだけ、ということなのでしょう。
そんな安倍政権が成果として語ってきた、野村不動産への特別指導が、実は過労死自殺が出た後で遺族からの告発をうけ、それで特別指導が為されたことが判明しました。それに対して加藤氏は「職員の数も限られ…」と、事実上監視機能は利かないことを暴露、要するに違法な裁量労働制や、高プロによる被害は、労基に告発し、かつそれが取り上げられて初めて調査されるしかないことを示してしまった。自分の労働契約についてきちんと把握しているかどうか? そうしないと自分の身が守れない、国は頼れないのでしょう。

イタリア総選挙、確定はしていませんが、第一党は右派の五つ星運動、ただしベルルスコーニ氏率いる中道右派連合が、連立して最大になる見通しです。残りは中道左派なので、連立は難しく3つの勢力が並び立つ構図となりそうです。これは中道右派にとって厳しい結果であり、法案ごとに連携先を変えるしかありませんが、政策の停滞感が強くなり、支持を落とす結果にもなるでしょう。正直、この結果通りなら、次の選挙では間違いなく五つ星運動が最大政党となり、政局の主導権をにぎってくるでしょう。
独国では大連立も成立しましたが、メルケル首相が望まぬ閣僚人事をうけいれているように、指導力の低下が懸念されています。今、市場は何となく波乱なく過ぎたことを好感する向きもありますが、次の選挙は大変なことになる。それは政権をとったら苦労する、という悪循環に入りつつある世界の、その一歩手前というのが現状です。つまりこれから政権をとる政党は、須らく苦労するのでしょう。それは日本も同じ、ここまで金融緩和という滅茶苦茶をやってきて、中間層が総崩れとなった世界の結果、かもしれません。

つまり経済が好調、としながら政治の世界が混乱するのは、多数がまったく幸福感を得られていないから。その結果、極右とよばれる政党の伸張が著しく、既存政党が多数をとりきれない、という状況をうんでいる。同じ状況がつづくなら…むしろこの状況が改善することもなくつづくなら、次の選挙では間違いなく欧州は極右政党によるEU崩壊、という事態がみえてくるのでしょう。中間層の復活、これが喫緊の課題かもしれません。
日本の場合、極右とみられがちな安倍氏のめざす方向性は極左、と分かり難い構図です。自民若手に、安倍氏が「日本の習近平になる」と語った、とも報じられていますが、左派国家の方が独裁を生みやすく、そういう国に日本をしたいのでしょう。日本の場合、政治が国民を守ってくれないことは、裁量労働制の『完全な』削除を指示しただけで、労働者保護の部分までカットしてしまうことでも、顕著です。

欧州の場合、EUが崩壊しても国は残りますが、日本の場合は国が崩壊すると、江戸時代のように藩政にもどるのか。なるほど明治維新を礼賛する安倍政権が、明治時代の藩閥政治をめざすことも道理なのかもしれません。自衛隊強化を急ぐのも、叛乱する地方を抑えこむための兵力、明治維新のころでいえば御親兵とするつもりかもしれません。NHKの大河は西郷どん、実は薩長は権力争いをしていた間柄であり、決して山口県、長州サイドの安倍氏にとって、好ましい人物とはいえない面があります。もしかしたらこれが西南戦争、長州派閥への反抗を促すことの暗喩だとすれば、日本も否応なく動乱の時代に入ることになるのでしょうね。

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2018年01月19日

欧ウラン濃縮企業を日本政府が買収?

日本政府が国際協力銀行(JBIC)を通じて欧州のウラン濃縮大手、ウレンコ社を米エネルギー会社と共同で買収する交渉をしている、と報じられます。中国などに経営権が移るのを防ぐため、などといいますが、ウラン濃縮などは既知の技術であり、今さら技術流出の懸念などの心配はありません。うがった見方ですが、この買収には英国への原発輸出と、東芝によるウェスティングハウス(WH)の売却、が密接に絡むものと考えています。
世界は脱原発へと向かい、当然のようにウラン濃縮産業も廃れていく。淘汰され、寡占化された段階で中露に企業の経営権を握られていたら、原発どころか産業、兵器の分野でもウラン化合物を使えなくなる恐れもある。しかしナゼ欧州のウラン濃縮に対して、日本が拠出しなければならないのか? 不安があるなら財政に余裕のある独国や、原発依存の強い仏国でもよいはずです。日本が参入せざるを得ないのは、WHの売却をすすめる上で、今後も世界的な原発推進の姿勢をとるよう、日本政府が約束させられたためなのでしょう。WHは製造、開発というより特許ビジネスに近いとされ、世界中で自分たちの特許が用いられた原発が稼働しつづけることが重要、とされます。日本が原発を推進し、世界中の原発を支え続ける、それが売却の条件だったら、買収に日本政府がのりだしたことに説明もつきます。

福島第一原発の2号機の内部映像が公開され、溶け落ちた燃料が圧力容器を突き破って、格納容器に達していたことが判明しました。後はコンクリートをどこまで削っているか、どの程度の範囲まで広がっているか、その調査が待たれます。それは溶融燃料をとりだすばかりでなく、放射化されたコンクリートまではつらないと終われないからで、汚染の範囲は通常、コンクリートで止まりますが、燃料の溶け落ちた場所だけはコンクリート部まで汚染がすすんでしまっている。すべて取り去って、やっと完了となるのです。
しかし事故から約7年も経って、やっと2号機の内部が確認された。2021年から溶け落ちた燃料をとりだす計画を始める予定ですが、取りだすにもこれまでの2倍程度、時間がかかるとみてよいでしょう。それは内部を確認しながら、とりだしの作業をする何らかの遠隔操作のマシンを準備する必要があるためで、計画、製造にも時間がかかるためです。これまでの比でないほど、格段に難しくなり、これからが本番ともいえるのでしょう。

東日本大震災の津波被害の語り部、それを聞きに来る国民が減り、風化が心配という声があります。しかし今、もっと風化が心配されるのは福島原発への無関心であり、何となく原発を再稼働することを容認してしまうこと、なのでしょう。福島原発のニュースがほとんど取り上げられない。それは事態が何も動いていないから、つまり福島原発の処理がすすんでいないから、ニュースの扱いが小さいのであり、由々しき事態といえます。
日本政府がウレンコ社の買収に参加するのは、衰退産業への投資、という二重の意味で問題のある行為です。もしかしたら、国内で処分先の決まらない高レベル放射性廃棄物を、欧州で処理してもらう、という魂胆でもあるのか? そんなことになれば、日本は未来永劫、非難されることにもなるでしょう。ウレンコ(売れん子)社をあえて日本が買う理由、その理由はどんな想定をしてみたところで、日本にとって不都合なことばかりで、国会にも諮らず、こうしたことを進めてしまう安倍政権の慢心が、また一つ見え隠れするニュースでもあるのでしょうね。

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2017年11月21日

独国の政局不安定と、市場

米国でトランプ政権が北朝鮮をテロ支援国家に指定しました。ただ、これは米国内の位置づけが変わっただけで、特に何かが変わるわけでも、圧力が強化されるものでもありません。北朝鮮はメンツが…と報じるところもありますが、メンツに拘るぐらいなら、まだ相当の余裕がある、という裏返しでもあり、圧力が利いていないという話になる。
そんなことより問題は、中国特使が北朝鮮と何を話し合い、北朝鮮がどう返答したか? です。タイミングからみても、中国から報告をうけてトランプ政権が動いたとみられ、それは悪い情報だった可能性が高い。今はテロ支援どころか、核で戦争できる国になりつつある北朝鮮。中国の仲介を蹴った先にどんな戦略をもつのか? それが重要です。

独国でメルケル政権が連立に失敗し、少数与党による単独政権になるか、再選挙の公算が高まりました。移民政策の不一致…などと語られますが、どちらかと言えばメルケル疲れが顕著ということなのでしょう、これまでの12年に及ぶメルケル政権で、ドイツ社会民主党、自由民主党、緑の党、どこも一度はメルケル連立政権に参加し、離れてきました。離れるにも理由がある、ということです。一方で、ドイツのための選択肢や左派党は政策がまったく違うので、連立は組めない。まさに選択肢を失った格好となりました。
しかし欧米の株式市場は落ち着いています。これには理由もあって、経済のステージが低迷から回復に向かう過程では、政策出動のような政治による手立てを必要とします。なので政治の安定が求められますが、今は回復からバブルへ、という過程にあり、すでに自立して成長できる経済です。なので重視されるのは金融政策や、市場調整能力の喪失といった問題です。トランプ政権が無策でも、安倍政権が無能でも関係ありません。政治が不安定でも、むしろ市場に余計なことをしない、という意味では好感される材料といえます。

ここに来て経済が絶好調な欧州ですが、理由は英国のEU離脱に伴い、資金シフトが欧州に起こっていること。本来、そうなると英経済は弱含みますが、ポンド安により輸出が堅調、という効果により相殺され、見かけ上ウィンウィンになっている。ただし英国はインフレが止まらず3%に達し、今月には10年ぶりの利上げを実施するなど、混沌としてきました。将来的に英国はかなり危険なのですが、今は台風の目に入ったような穏やかさを、英国と欧州は享受できている、といえ、一時的な陽だまりのような状態です。
英国のように、インフレ昂進で利上げせざるを得ない、という金融政策の歪みが、今の市場ではもっとも不安視されるところでしょう。さらに日本でも、景気はまったく良くなっていないのに、緩和状態を止めて引き締めに転じれば、景気への悪影響は計り知れないものとなるでしょうし、緩和の限界によって自動的に止まった場合は、その比でないほどの下押し圧力がかかることになります。市場には政治の安定が…などという論を語る人もいますが、独国の事情がそれが必要条件でないことを示します。今の市場、北朝鮮問題も同じかもしれませんが、ナポレオンに負けたプロイセンのシル中佐の言葉がもっともふさわしいかもしれません。「終わりのない恐怖より、恐怖のある終わりがよい」 生き永らえて恥をさらすより、潔く死ぬ方がマシ、という意味ですが、この金融肥大化市場の行きつく先、恐怖のある終わりでなかったとき、もっと悲惨な状態がその後で待つことにもなるのでしょうね。

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2017年07月06日

日欧のEPA

安倍首相による「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言について、色々と語る人もいますが、今一つしっくりくるものがないので、私論を残しておきます。安倍氏が「こんな人」としたのも国民であり、政治は国民を守る義務がある。自分に反対しようと、批判しようと、変わりありません。しかも、有権者に向けて「負けるわけにはいかない」とした。対立候補にむけた発言ならまだ理解できても、有権者に対して「勝ち負け」などという基準があるはずもない。有権者に負けるような政治家は、政治家ではありません。
ある組織、団体なら、自分と対立する者、批判する者を排除して、お山の大将として専制君主としてふるまうのもアリでしょう。しかし、得てしてそんなトップは組織を壊す。反対派も内包してこそ、組織は許容量を大きくしていけます。まして国のトップであれば、その主張は分断主義者、国を弱体化させる最悪の人物といえ、首相としての資質に欠ける、と言わざるを得ません。この件で、安倍氏を擁護する人物は、得てして「反対していた人物に向けての発言」だからよい、としますが、一般的な組織論と、政治ととの違いを弁えていない、と言えるのでしょう。かつての政治家はウィットに富む、反対派であっても傾聴するような演説を心掛けたものですが、自慢と他人を貶すことしか言わない、つまらない演説だから、誰もが聞いても仕方ないとしてヤジの声を大きくするのです。恐らく、その場にいた誰もが「こんな人に任せるわけにはいかない」と考えたことでしょう。ならばそれは、政治家としてすでに負けであり、自民党議員が大量落選して当然ということになるのです。

日欧のEPA交渉が大枠合意と伝わります。しかしこれを自由貿易協定、などというのはお門違いです。あえて言うなら、関税低減貿易協定とでもいうべきです。例えば、農薬の問題や排ガス規制など、日欧には差があります。もし輸出を拡大するなら、相手のルールに則った製品にするしかない。おかしな話ですが、そのルールを相手より厳しくし、製品対応を難しくすれば、貿易量をコントロールできる。決してすべてが自由ではないのです。
欧州の問題は、かつてのドーピング豚や狂牛病の問題を引き起こしたように、欧州の農産物の安全性にも疑問がある点です。チーズばかり注目されますが、日本としてどうやって輸入品の安全性を担保するか? そこにどんな障壁を設けるか? 米国からの輸入農産物でさえ、長距離の船便を考慮して、防カビ、防腐、防虫剤について妥協を強いられた。欧州ではさらに長い航路が予想されるのであり、どんな薬剤が使用されるか、それについてもきちんと監視していかなければいけないのでしょう。

それは日本からの輸出も同じです。今は量が少なく、プレミアム感もあるので輸出も航空便がメインで、割高でも捌けますが、量を輸出すればプレミアム感も失われ、価格競争に見舞われる。輸送費をけずるなら船便が有利ですが、そうなると長期保存の問題もかかる。その辺りのバランスを考えない限り、この関税低減による貿易効果をはかれない、ともいえるのです。
安倍氏は合意にむけて「安倍ノミクスの成長戦略の一貫…」と述べましたが、関税の多くを撤廃したとて、貿易量の変化は上記した通り、むしろ今後の政府の対応にかかっている、といえます。安倍ノミクス自体、成長戦略がないとされて久しいのに、これを成長戦略とすることさえ、的外れといえます。外交巧者の欧州は、様々な規制、ルールを駆使して日本からの輸入を減らすことを画策するでしょう。関税がない以上、研究開発費の補助も含めた、熾烈な政府による対応合戦の始まりでもあるのです。

安倍氏の勘違いは、貿易協定をむすんだこと自体を「よいこと」と述べてしまう点です。欧州ではここからスタート、相手を打ち負かして初めて「よいこと」とするのです。岸田外相が、ペーパーを読みながら「世界の3割の巨大経済圏が…」などと、成果を棒読みしている時点で「こんな人たちは負けている」のであり、まず安倍政権は有権者と勝敗を争うのではなく、諸外国との貿易競争に「負けるわけにはいかない」と挑むべきなのでしょうね。

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2017年04月24日

仏大統領選と北朝鮮情勢

仏大統領選、独立系のマクロン氏が23%後半、国民戦線のルペン氏が21%半ば、共和党のフィヨン氏が20%弱、メランション氏が19%半ば、と事前の予想通りにマクロン氏とルペン氏が決選投票にすすみました。しかしこれだけの大接戦にも関わらず、世論調査の結果通りであり、ごく僅かなブレしかなかったのは驚きです。というより、こんな接戦なのにマクロン氏とルペン氏で決まり、という事前予想を立てていることにも驚きます。
決選投票の予想はマクロン氏6割、ルペン氏4割の得票でマクロン氏が勝利、極右勢力の退潮を示す、とされます。しかし今回、マクロン氏に吹いた追い風は、トランプ米大統領によるルペン氏の支持表明でしょう。トランプ氏が何を考えて、異例な口先介入をしたかは分かりませんが、あんな大統領は嫌、と仏国民の多くも思ったことでしょう。直前のテロ行為を打ち消すほどのインパクトです。反グローバリズムなどとも言われますが、トランプ氏の言に従っていたら、EUから離れられても反グローバリズムというグローバリゼーションのグループに入らないといけなくなる。それは仏国民も嫌なのでしょう。
ただフィヨン氏の支持層も6割がマクロン氏、4割がルペン氏支持と伝わりますし、極左と極右という違いはあれど、反EUでは一致したメランション氏の支持層も、どれぐらいルペン氏に流れるか。それにマクロン氏、ルペン氏ともに議会対策には苦労するとみられ、議会選挙を経ないと政局が安定しない。経たとしても安定するかどうかは未知数、ということになります。極右の動きに歯止め、などとする人もいますが、明らかに極右政党が票を伸ばしているのであって、急進的な流れは一先ず食い止めた、というに過ぎません。一昨日も述べたように、政治がグローバリズムの恩恵を国民にもたらさない限り、反政府的な反グローバリズムの流れは止まらない、とも言えるのでしょう。

そんな余計なことをしたトランプ氏、西に向かわせるとした空母カール・ビンソンを含む米艦隊が、余計な豪軍との演習を終え、日本海の付近に明日、到着するとされます。そして明日は北朝鮮でも人民軍創設85周年を迎える。北朝鮮が核実験などしなければ御の字、ただし実験すれば米国としては攻撃せざるを得ない。ここまでの攻撃態勢をとり、相手が動いたのに何もしない、では米軍の沽券にかかわります。
恐らく中国も、核関連施設への攻撃は黙認する、とみられる。それが北朝鮮への威嚇となり、中国も北朝鮮の体制転換にむけた交渉がしやすくなるからです。しかし先に北朝鮮が中国を非難したように、中国ルートの交渉も怪しくなってきた。そうなると北朝鮮は反撃という手段をとるかもしれない。その攻撃が米艦船でとどまるのか、韓国や日本にまで拡大されるのか、それは北朝鮮の胸三寸ともいえます。

官邸からは「トランプ氏との電話会談ではこれまでと違う緊張」などと語られ、官邸メルマガではミサイル発射に対して国民が「身を守るためにとるべき行動」など、危機感を煽る報道はでますが、それは不誠実極まりないものです。まずメルマガ、国民の大多数がうけとっているわけではない情報ツールで発信されても、国民全員には伝わらない。内閣官房の国民ポータルサイトとの連携もありますが、こんな大事な情報を特定のツールで発信する、いわば誰もがその情報を受け取れ、という恫喝にも思えます。
さらにスノーデン文書として、米国家安全保障局(NSA)が、日本にメールやネットの情報を一元管理できる機器を日本側に提供、という情報もでてきた。むしろ共謀罪はそんな機器をつかって情報収集していることを、後追いで法的根拠をつけるためのものかもしれない。そして自分たちからの情報を積極的に得よう、とする支持層向けには情報を与える今回のメルマガといい、すでに安倍政権では情報を恣意的に扱い、自分たちに都合よい形で受発信する、といった形が成立しているのかもしれません。

仏国の哲学者、ベルクソンは『自由』という定義の拡張者としても知られます。欲望に囚われず、理性的な道徳命令に応じて為される判断が、それまでの哲学では『自由』とされましたが、それは選択の自由でしかないのだ、と。つまり複数の選択肢の中から選び取ったに過ぎない、真の自由とは『新しい可能性』という自由である、と『時間と自由』の中で述べています。仏国では、既存政党によらないマクロン氏、ルペン氏を決選投票に選びましたが、日本ではいまだに古臭い利権構造に執着した、古臭い流れに固執している。そして北朝鮮が『新しい可能性』という自由を行使したとき、日本がとるべき選択に自由などないのでしょう。米国のすることを全面的に支持、という安倍政権は、共謀罪といい、『自由』の縮退者という面が強いといえるのでしょうね。

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2017年01月17日

雑感。英国のEU離脱とダボス会議

安倍首相が4ヶ国歴訪から帰国しました。今回はバラマキとともに、トランプ米次期大統領と会った、との実績を誇るトラの威を借る…ならぬ、トランプの威を借る外交、といえるのでしょう。しかしTPPの早期成立を確認しあうなどしましたが、英国のEU離脱に対して「よいことだ」などと発言する人物が、日本政府の説得ぐらいで翻意し、TPPの成立に動くはずがありません。トランプの意を変えられない、もしくはトランプの意を理解していない外交、ということにもなるのでしょう。
そんな英国のメイ首相が、EUからの離脱にむけた基本方針を語り、英国の単一市場からの離脱がほぼ決定的になりました。今後はEU側とFTA、EPAなどの経済協力をむすびながら、新たな関係を模索するのでしょうが、それで済むならそうしたい、と考える欧州各国は多いはずで、それこそ今年相次ぐ選挙で、離脱派が勢いをもつことが確実です。かといってEU側としても、英国との関係を完全に切れるか、というとそんなこともできません。

問題は、EUというシステムは加盟国すべてが幸せを享受できるものではない、ということです。富が集中する独国のような国もあれば、ギリシャのように危機から脱け出せない国もある。伊国の金融不安はずっと燻ったままで、解決の道筋さえつけられない。金融政策と財政政策を切り離してしまっているため、有効な対策もうちにくく、逆に富が集中する独国が支援や解決に向けた手助けを拒否してしまえば、苦しむ国は泣き寝入りするしかないのです。これでEUが崩壊に向かうなら、それはグローバル化の失敗例として歴史に刻まれ、今後も折にふれてとり上げられることでしょう。
個人的には、保護主義とグローバル化、どちらも行き過ぎたら悪弊しかない、と考えています。そして好景気のときはグローバル化が、不景気なときは保護主義が有利にみえる、ということでもあり、今はまだ景気後退も起こっていませんが、それは超金融緩和によって支えられたためであり、金融にかかわる部分以外への波及が少ない。そのため多くの国民が不安、不満を抱いており、それが反グローバル化の流れを生む。結果的に、どちらもより過信して邁進すると、その反動も大きくなり、より保護主義の流れが強まるということでもあるのでしょう。

ダボス会議での要人発言が市場を動かしています。トランプ政権で上級顧問になる、とされる人物がドル高牽制発言を行い、ポンド売りの流れとともに円高が加速しました。しかし今後、トランプ政権になればより強くドル高牽制をとってくるでしょう。米国で売るものを米国内でつくらせても、コストアップにより売価が上がる。輸出してその分を稼がないといけないためで、それにはドル高がネックになる。金利が上昇しやすい米国では、ドル高にもなり易いのであって、それを口先介入で止めたい誘惑があります。
しかしそんなダボス会議で、中国の習主席が「保護主義は共倒れ」と述べたのは、皮肉といえば言えるのでしょう。これまで自由主義経済の恩恵をうけ、自国は保護主義をとりながら成長してきた中国が、相手の保護主義化により、最大の懸念が生じるのですから。しかし逆に見れば、保護主義と自由主義が斑模様になると、自由主義をとる国は富の簒奪に遭う、ということでもあります。それでも成長し、にこにこと笑って許してくれていた自由主義経済の国、米国が態度を転換する、このインパクトは計り知れません。

トランプの尾を踏むのを恐れ、企業は一見するとトランプ氏に屈したようにみえますが、トランプ狸の皮算用なのでしょう。米国の周辺の国々が低成長、マイナス成長に陥れば、その影響はもっとも米国が強くうけます。米企業や金融機関は、世界的に活動しているのですから。トランプは死して皮を残すのか? むしろISILばかりでなく、中国にも不都合な存在になったトランプ氏、皮を残す間もなく暗殺される、との見方もあり、それに怯えてますます引き篭もるのなら、トランプの穴に入って得られるのは、コジレを得ず、という世界を混乱させる要因だけ、ということにもなるのでしょうね。

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2016年12月23日

雑感。一人当たりGDP

来週、安倍氏がハワイ真珠湾を訪問しますが、何と現職総理として吉田茂氏、鳩山一郎氏、岸信介氏も訪ねていた、ということが判明しています。外務省は知らない、としますので、恐らく非公式なのでしょうが、安倍氏の真珠湾訪問がますます霞む事態になっています。政府が「安倍氏の訪問が現職初」と発表したのに、いつの間にやら4人目、しかも祖父まで…となっています。しかも政府が情報をつかんでいないため、足取りもつかめず、「祖父が歩んだこの地を…」といったテンプレートの挨拶もできません。今、政府は必死で当時の資料をしらべているところかもしれません。

伊銀3位のモンテ・パスキが増資計画に失敗、伊政府からの支援を仰ぐ、と伝わります。不良債権の証券化など、必死で財務健全化を訴えてきましたが、支援に前向きとみられていたカタール投資庁なども手を引き、大口投資家の賛同が得られなかった点も大きいのでしょう。しかし金融不安があった日本でも、米国でも公的支援はありましたし、驚く話ではありません。しかしこの増資をめざしていて失敗した、という一事が示すのは、世界の大口投資家が今後の経済を、楽観的にみていない、ということです。
トランプラリーでは金融株が上昇していますが、あくまで規制緩和と金利上昇がその理由です。しかし規制緩和が予想通りすすむ可能性は少なく、金利上昇が収益につながるかは不明です。これまで企業は金利低下もあって、資金を金融機関から調達していました。しかし今後は増資など、市場から調達するようになるでしょう。結局、金融機関からの調達は保険、もしくは市場から調達できないような企業が多くなるはずです。そして、そうした企業は経済環境の悪化に弱い。米国のシェールオイル関連企業がそうであるように、企業の業績悪化が金融機関にも打撃となる。金融機関の健全性は景気に連動するケースが多く、どうしても投資家は先の景気をみて、金融機関の増資に応じるか、応じないかを決めることも多くなってくるのです。

最近、日本の生産効率の悪さ、などが話題になりますが、内閣府が発表した国民経済確報で、2015年の国民1人当たりの名目GDPは、ドル換算で前年比9.6%減となり、OECD加盟35ヶ国中20位と、前年より順位を一つ下げました。14年10月の黒田バズーカ以来、強烈な円安が襲ったためですが、日本はそこそこ国民も多いため、1人当たりに換算すると非常に低く見えがちです。少子高齢化で生産年齢人口が下がっていることも一因ですが、もう一つの要因は非正規社員の拡大ではないか、と考えています。
かつての日本企業は、社員から積極的に、何を変えたら効率が上がるか、ムダがなくなるか、といった業務改善提案をさせていました。しかし社員であれば、褒賞目当てもあって提案もしますが、非正規だとそのインセンティブはない。ナゼなら、効率化したら自分たちの首が切られてしまうかもしれないのですから。非効率で、人手をかけて仕上げる方が非正規社員にとってメリットがある。つまり日本は非効率の方が労働者にとって都合いい、そう考える層が増えてしまったのです。

また現場を知らない経営者や、管理職が増えたことも要因でしょう。口では効率化、コストダウン、と言っても何をしていいか分からない。一つの工場で部品から最終製品までつくるわけではなく、また実情も知らないので、何をどう改善していいか分からない。経営層と労働者層の乖離が広がっていけば、ますます非効率な方法が蔓延するでしょう。
格差が広がる米国の場合、金融工学などの新たな仕組みを生み出して、この生産性の低下を防いでいます。その結果、サブプライムローンなどが未だに跋扈していますが、AppleやGoogleなどの巨大企業も、利益を拡大させることで生産性の低下を防いでいます。しかし残念ながら日本に、こうして高成長を維持できる企業がない。結局のところ、非正規の拡大や成長できない企業、という意味では、経営の失敗ということになるのです。そしてそんな経営者が高給取り、という最悪の問題とも重なってきてしまう。格差の拡大と、非効率性という問題と、そこに日本の病巣も浮かび上がるのでしょう。それは政治家でさえ、世襲が増えている最中、企業経営者に世襲をやめろ、などとは言えないでしょうから、日本はこの構造的な家重視、世襲という体質を見直さない限り、ここからふたたび日が昇るような成長を果たすことは難しい、といわざるを得ないのでしょうね。

明日は一日、お休みしたいと思います。

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2016年11月28日

自由貿易の旗を下ろす?

後3日と迫った国会会期が、12月14日まで延長されることが与党会談で決定しました。年金改正法案の行方をにらんだ、とされますが、TPP関連法はどうするつもりなのか。参院本会議ではポカンと俯瞰でもめていますが、問題は安倍氏の答弁で、TPPのみあたかも自由貿易だ、とする論調にあります。二国間のFTAやEPAも自由貿易ですし、米国が多国間交渉であるTPPを否定し、二国間の交渉に移すことも、別に自由貿易の旗を下ろしたわけではありません。安倍氏の答弁を修正すると「多国間交渉の旗を下ろしていいのか?」というだけの話です。自由貿易、などというよく知らない人にとってはそれが良い選択であるかのように誤解を招く表現にはならない。分かって安倍氏が嘘をついている点にあります。

仏大統領選の予備選で、中道・右派の統一候補にフィヨン元首相が選ばれました。日本では普段、見向きもされない仏大統領選が注目されるのも、トランプ現象が欧州でも拡大するのではないか? との見方が多いためです。しかしトランプ現象を、ただの大衆迎合主義と批判するのは大きな誤りです。民主主義ですから、より多くの意見を代弁した者が選ばれることは、ごく自然です。逆にこれまでの世界は、多くの国が一部の政治家とその取り巻きで決められていたエリート主義だったのであり、その崩壊を世界が怖れていることになります。
そんな中、イタリアで12月4日、憲法改正の是非を問う国民投票が行われます。その前に予算案が通過したり、伊銀のモンテ・パスキが債務を証券化できるよう承認をうけたり、と慌しく動いています。予算案には年金支出を拡大したり、販売税増税を阻止する条項が含まれていたり、とにかく国民ウケのいいものが含まれていますし、破綻が意識されるモンテ・パスキが市場から資金を調達できれば、一先ず安定します。そうやって国民投票前に不安を解消しているのです。

では伊国の国民投票で何が変わるか、というと上院の議席を315から100に減らし、ほぼ名誉職的な位置づけとし、下院に権限を集中させることを狙います。ただし、憲法改正に反対するのがポピュリズム政党を標榜する五つ星運動が、伊国では力を増しており、憲法改正が否決されるとレンツィ政権が崩壊する可能性もある。もし仮に五つ星運動が政権をとるようになれば、EUからの離脱などを強力に押し進める可能性もあり、EUすら崩壊させかねないのです。なので、これまで債務の圧縮を求められてきた伊国が、先に予算案を通したり、モンテ・パスキの経営を安定化させるなど、EU側からの改革要求を現政権でも受け入れてません、と示す必要がありました。
仏国のフィヨン氏が政権をとったら、どういう政策になるのか分かりませんが、独国のメルケル氏も来秋の選挙で勝利し、続投する意向を示したものの、かなり苦しいと言います。先にEU離脱を決めた英国からはじまったEU崩壊の流れ、どのピースが外れても、選挙で予想外の結果になってもそれが起きる状況です。その最初のピースが12月4日、どうなるか決まります。

来年はこうした不透明な年だからこそ、今の市場はそうなる前の束の間の上昇を演じている、とも言える状況です。EU崩壊にでもなったらどんな影響があるか分からない。独、仏、伊、どこもEUの主要国であり、インパクトはかなり大きくなる。しかし国民がそれを選択する以上、止めようがありません。むしろ、EUを存続させることのメリットを国民に説得しきれなかった、既存の政治の失敗という見方すらできるのです。
そして、来年はEUという、まさに自由貿易を掲げて統合した市場が、その存否を試される1年ともいえるのです。安倍氏が旗を下ろす、そんなことに一切関係なく、世界はその旗を下ろしてしまうのかもしれません。そして日本だけが旗振り役として残り、高い代償を払い続けて、それでも推進していくのかどうか、がまさに今国会でTPPを通すか、通さないかにかかってくる、といえるのでしょう。自由貿易という言葉をはき違え、自縄貿易ともなれば、もう泥縄にしかなりません。多国間交渉をめざしていた日本が、いつの間にか一国だけとり残される。今でさえすでにトランプ米国、プーチン露国から突き放され、そうなりつつある中で、来年の日本は極めて厳しい状況を覚悟しないといけないのでしょうね。

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2016年07月15日

雑感。仏国テロと中国経済

南仏のニースで、革命記念日の花火をみる群集にトラックが突っこむ、というテロがありました。詳細はまだ不明ですが、フランス革命は1789年、バスティーユ監獄にいる政治犯の解放を求め、市民と将兵の間でおこった戦闘が発端です。そのとき、ルイ16世が「叛乱(レヴォルト)か?」と訊ね、傍らの貴族が「革命(レヴォリューション)です」と答えた話が有名です。しかし今回をテロ、と決めつけていいのか?
仏革命でも「自由か、死か」を行動のより所としましたが、これは元々米国の政治家、ヘンリーの言葉です。英国から独立しようとするとき、「今は自由のために武器をとるべきだ」と演説、その言葉に励まされて米国は独立し、仏国は革命を果たした。今のテロリストも、訴えるところは「自由か、死か」であって、違いは権力に向かう集団の行動原理か、単独犯による国民に向かうか、です。言い換えると「自由でないなら死を」が行動原理になっているなら、テロの脅威や非難を訴える前に、まず国内の不満や対立をうむ構図を改めない限り、彼らがこれを叛乱や反抗ではなく、革命と考えている以上、供給体制がつづくことにもなってしまいます。

ASEMでは日本と中国が激しく対立、などとも伝わりますが、残念ながら日本の外交力など大したことがありません。中国はすでにASEANの動きも抑えており、今回も名指しを避けた議長声明で、お茶をにごすぐらいでしょう。中国が怖いのは、米国が多数派工作を仕掛けてきたときで、日本のように他国をまとめる力がない国に脅威は感じません。ASEANの諸国では、経済的結びつき以上に、華僑の力も大きいので政治力を行使できる。今回の仲裁裁判所でも、話し合いをしようと言っていたのに開発を止めなかった中国に業を煮やしたフィリピンが訴えを起こしましたが、もう当時とは政権も変わっている。仲裁裁判所の判決を無視して中比の二国間協議に持ち込もうとするのも、勝算をみこんでのことです。日本は外野、という中国の発想は、ASEANに政治力を行使できるのは自分たちだ、との自負がそうさせます。
中国はすでに一帯一路構想など、人、モノを通じ、また人民元を第2の通貨として流通させるなど、結びつきを強めている。ひるがえって日本は相変わらずODAだけで、親日国とされるバングラディッシュでも日本人がテロの対象になったように、世界からの信用が落ちているばかりか、どんどん行動範囲を狭められている。米国追従路線である日本が、米国への敵意を合わせて受ける形となり、かといって米国の先兵として動くにも、米国からの絶対的な信頼をうけているわけではない。中途半端に悪い形で外交力のなさ、また恨みを買ってしまっている、というのが安倍外交です。

そんな中国の第2四半期のGDPは前年同期比6.7%増、前期比でも1.8%増となりました。しかし消費の伸びの寄与率が7割越えで、資本形成は4割弱、一方で純輸出が1割減となるなど、消費に頼った成長だったことがうかがえる。その消費を促すのが、公共投資と不動産価格の上昇であり、また日本のインバウンド消費が消失したように、海外旅行の爆買いが減って国内で消費するようになった点、なのでしょう。内需を促す要因は心許なく、さらに内向き経済になれば、そのうち中国の外交力も減少して行くことになります。
ウルトラ…というと、日本ではウルトラマンがそうであったように、好意的に受け取られる言葉ですが、元々は過激な、を意味します。世界に拡大する過激な思想、行動。仏国ではかつてウルトラモンターニュ、仏王とローマ教皇との争いに際して、ローマ教会至上主義の立場をとる、国内勢をそう呼びました。つまり仏国からみて山向こうの人の立場、という意味です。19世紀にはウルトラ・ロイヤリストなる超右思想も生まれた。今の仏国にはウルトラ…の思想が広まりつつあります。そして中国とて、経済に傾きがみられる中、国内には深刻なテロ事件も起きている、とされます。「自由か、死か」そんな言葉がふたたび21世紀の現代、脚光を浴びている今、大国病に罹りつつあるのはどこの国でも同様であり、治療法もないのが現状なのでしょうね。

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2016年06月24日

英国選挙でEU離脱派が勝利

英国の国民投票でEU離脱が51.9%で多数となり、離脱が決まりました。今回、為替や株式が大きく変動しましたが、これはリーマンショック級の出来事がおこったわけではありません。証券会社や経済評論家から、残留で決まるだろう、との希望的観測で市場は溢れていた。その結果、個人投資家にいたるまで円売り、株買いと残留にかけた取引を蓄えており、結果が異なったことで慌てて反対売買を行った結果、相場は乱高下し、また買いポジションの大きさが、結果的に大きな値動きを導いた、というに過ぎません。
つまりミスリードで極端に楽観的シナリオに乗っかりすぎたのです。ブックメーカーの賭け率が残留優勢、などと煽りに煽った市場関係者に大きな非があるのであって、今日の先物をみても日系の狼狽売り、欧米の買戻しと二極化された。サーキットブレイカーが発動しても止まらなかったのは、売りの主体が個人投資家だったから、とも言えます。プログラムのヘッドライン取引なら、サーキットブレイカー後は戦略を変えることも多いのですが、個人は売れないとさらに売りたくなるものです。為替は対ドルで100円を割るとふたたび円売りを仕掛ける、といった動きもありましたが、為替の方が流動性が高く、個人向けということが改めて意識されたのでしょう。では今回、株式はどこまで下落するか? 企業の解散価値を示すPBR1倍割れまで後300円だから、ここから大きな下落はない、という人もいますが、これもミスリードです。日経平均が8000円のころは、PBR1倍割れの企業がごろごろありました。日本のように企業買収をしにくい市場で、解散価値を割れたからといって買う、という投資家も少ない。つまり日本は構造的に、PBRが下支え役にはなりにくいのです。

残留を訴えていたキャメロン首相が辞意を表明、しかし10月まで留任して後任に渡す、としますのでEUとの交渉はそれから、となります。今回、英国は大変だ、という意見が多いですが、実はEUの方が深刻な事情を抱えます。英国は分担金も多かったのに、それが消失すれば欧州安定メカニズムなど、ギリシャ支援や財政不安のある国への支援が滞る恐れもあります。英国の方が、EUとの自由貿易協定などを結べれば、移民の流入や分担金もなくなり、むしろメリットが多いのです。当然、交渉次第ですが、巷間語られるほど英国に不利でもない。ただし、国内に残った遺恨とスコットランド独立の動きなど、総合的にみるとマイナス面も目立つ。ただそれはあくまで国内問題。国際問題はこれから、です。
世界の金融市場に影響がでてくるのはこれから、です。ただそれも英国による交渉次第、中身で大きく違ってくる。今は単に楽観に傾きすぎた市場が、ゆり戻す動きに過ぎません。すぐのすぐ、ショックがおきるわけでもない。ただ楽観の水準を見慣れた側にすると今の水準が淋しく、もの足りなくみえるというにすぎません。問題は原油安でオイルマネーが巻き戻され、市場が震撼したように、ここで損失を被った側による手仕舞いなどの動きが余波のように何度もゆり戻しがくること、ということになるのでしょう。金融で肥大化した英国だけに、そこから流れでるマネーの量も多い。英マネーの動向次第で変動も予想されます。

日本は大変です。今回、為替介入できなかったとなると、事実上の急変動に対する発動のハードルは高くなります。しかも下手に円売りドル買いを入れると、金融機関のドル調達コストはさらに高まりかねない。FRBはドルの供給用意がある、としますが、日本の円の信認低下と、原油安による貿易統計の改善による実需の円買いの多さ、そして円高傾向になることによって外国への投資が目減りすることによる円売り要因の剥落と、FRBの利上げ観測の後退と、何重にも円高を促す要因が横たわり、かつドル調達コストの高止まりが日本企業を苦しめます。
政治的にも大変です。株安、円高は年金による株式投資、外債・外株投資のいずれも大きく目減りしたことを意味します。いくら英国のせい、と言ったところでリスク投資を拡大したのは安倍政権です。数十兆円が消えた…選挙戦でも、これまで与野党ともにこの話題にふれませんでしたが、野党のよい攻撃材料になるでしょう。リスク投資を増やせば、リターンが得られる機会もある一方、こうしたリスクを被ることにもなり、そのリスクを政治も負うのです。そして投票率の高い、高齢者層に年金原資の目減り、という情報はインパクトも大きい。麻生氏が「いつまで生きているんだ」と言った高齢者への風当たり、安倍政権に「いつまでやっているんだ」という怒りに変わる、そんな風が英国から吹き始めるのかもしれませんね。

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2016年06月20日

英国の国民投票と日本への影響

一部の世論調査で、自民支持が急減、政権支持率も5pt落ちるところもあるなど、選挙戦序盤とはいえ、かなり与党に厳しい結果がでています。舛添都知事の問題を、疑惑も解明せずに幕引きする自公、ということもありますが、安倍官邸が読み違えたのは消費税増税を延期し、景気に配慮したら、選挙で重視することが「社会保障の充実」だった点です。増税延期で、社会保障も一部執行の後ろ倒しとなるなど、逆行する形となった。安倍政権は安倍ノミクスを「前に」と争点にしようとしたら、有権者の判断はまったく違った、ということです。
財務省の代弁者、とみられることも多いIMFは消費税増税15%まで引き上げるべき、としました。一方で実質実効為替レートは現行が妥当、と日銀や政府とも異なる判断を下した。英国離脱なら介入も辞さず、といってみたところで、国際社会からまた一つ梯子を外された恰好です。今日の株式市場は大幅高で、英国によるEU残留観測といいます。ただ、今はそれを材料にイベントドリブンの動きをしているだけで、実態とはほど遠いところで市場が右往左往しているだけです。そんな英国の動きが日本に与える影響を考えてみます。

結論を先に書けば、離脱でも残留でも短期ではほとんど変化がありません。仮に離脱になったとしても、EU側との交渉が待ち構えますが、残留派のキャメロン首相が交渉の任に当たるわけにはいかないので、選挙になる可能性が高い。そこで残留派が政権をとり、EU側と交渉しますが、例えば通商政策は現行通り、となれば経済的な打撃はほとんどないでしょう。つまり交渉次第で、様々なパターンが想定されるので、いきなり23日から関係が変化するわけではありません。つまり経済、財政にどんな影響が出るかはその交渉の行方をみる必要があります。ただ、もし仮に甘い条件で英国が離脱するとグレグジット、ギリシャを初めとするEU離脱を画策する各国の国民、政党を勢いづかせるかもしれません。
仮に残留となった場合、これだけ国論を二分する罵り合いになれば、嫌でも遺恨が残ります。すると次の議会選挙で、離脱派が大躍進する可能性があります。そして離脱派が勝てば、離脱派主導で改めて国民投票の実施でしょう。今、残留派の国会議員が殺害されたことで、残留派が有利とされます。しかし容疑者はネオナチの思想に染まり、銃の製造方法を検索、とする情報が流れるなど、かなりの危険人物であったことになります。そんな人物が銃を入手し、議員を襲うなど、実はキャメロン政権の危機管理能力が問われるはずでもあるのに、そうした議論がおこらない。これは当初から残留派に都合のよい情報だけが真偽不明のまま垂れ流されるなど、残留派のキャメロン政権が、残留に都合よいよう世論誘導をかけている可能性が高いのです。しかし離脱派が政権をとれば、逆に離脱派に都合よい形で情報が操作される可能性が高くなる。離脱派が勢いづくことにもなるのです。

短期では、上記のようにすぐのすぐ、何か影響がでるわけではないのですが、長期に亘ってこれは尾をひく問題になり、離脱派、残留派、どちらが勝っても経路がちがうものの混乱はつづくでしょう。では、日本に与える影響、実は経済面だけの話ではありません。
国民投票の混乱、それは安倍政権を震撼させます。何しろ憲法改正には国民投票が必要です。特に憲法改正はハードルが高く、また国論を二分する問題になりかねない。政権が2、3とぶことは覚悟する必要もある。安倍氏は保守層の繋ぎ止めに、ネット討論では憲法改正に言及しましたが、英国の事情をみるにつけ怖くて仕方ないでしょう。安倍ノミクスという禁断の手をつかっても、この程度の支持率で、憲法改正には届かないぐらいの勢力にしかならない。しかも時間軸でみればもう限界、憲法改正の発議から国民投票までの期間を考えたら、もたないことは自明です。英国の大混乱は、事実上安倍政権の改憲をしばったとみることも可能であり、むしろふれられたくない事がらなのかもしれません。

さらに市場、という意味では23日をすぎるとアク抜け感といった話もありますが、上記したようにどちらに転んでも大きな情勢変化がない限り、また起こる問題です。つまり残留によるメリットを、どこの国も感じ難くなった。残留派が勝っても現状維持、それでは満足しない。一度、離脱を経験してそのメリット、デメリットをうけてからでないと収まりがつかなくなっているのです。なので、今後も市場を大きく揺り動かす問題になることが確実です。
イベントドリブン型の市場の動きは、金融緩和によって力をもった面があり、特に日本で変動率を高めているのは、海外の長期投資家を手控えさせているからです。安定的な投資とは縁遠くなり、安倍ノミクスを「前に」どころか、市場は上に、下に、と大騒ぎになるのでしょう。しかも上より、下につく方がメリットも増えてきた。民主主義における選択の誤謬、安倍政権の誕生そのものも民主党政権の批判が発端でしたが、その結果として安倍ノミクスという愚かな経済政策を行い、より市場を弱体化させたのですから、英国の国民投票を笑ってみることもできない、ということになるのでしょうね。

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2016年04月03日

安保の議論とギリシャ問題

自民の高村副総裁と、民進の岡田代表が安保関連法廃止案について、高村氏が民進の側から「議論しないでくれ」と言ってきていると聞いた、との話に岡田氏が「誰が言ったか明らかにしろ」と、NHKの番組で激しくやり合いました。それにお維の片山氏が「与党も野党も審議したくないとの噂」と余計なことを言ったので、さらにヒートアップ。まず片山氏は噂なら、ここでもちだすべきではありません。余計に議論をおかしくします。そもそも高村氏は自民国対から聞いた、としますが、名前を出せなければ根拠レスとされても文句は言えません。そもそも、保育園落ちたブログの野次も、国会で根拠レスな情報は取り上げない、との取り決めに違反したから野次った、と自民は説明しています。国会の場ではダメで、公共放送の場では噂レベルの話、股聞きレベルの話をしてもいい、などと使い分けだしたら、国民は混乱するでしょう。国会議員の言うことの、何を信じていいか分からなくなります。しかもそれが民進の悪評をうながす目的だとしたら、余計にその根拠を示さない限り、攻撃されても已む無しとなります。
大きな問題は、高村氏も公明の山口代表も述べていますが、安保法案の議論をするだけで「日米同盟に悪影響」として、議論を封殺しようとすることです。その程度で悪影響をうけるほど脆弱な関係だったら、その方が問題ですし、安倍氏はこれまで何度も「日米同盟は強固になった」と述べます。その程度で悪影響をうけるごとき関係の、どこか強固なのか? という問題にもなります。国内で堂々と議論し、論破してみせると米国に胸を張って、それを米国も頼もしいとみてくれる関係こそ強固です。一方的な関係で、日本が議論すれば関係が壊れる、というならそれはもう上滑りな同盟、敗北主義そのままに媚態を演じているだけ、ともなります。この問題を安倍政権が語れば語るほど、安倍政権は日本を貶めている、そう感じさせるものとなっています。

Wikileaksがギリシャ支援にIMFが参加しない可能性を示す、電話会議の内容を暴露しました。債務減免がなければギリシャを支援せず、IMFがこうした態度を貫けば、ふたたび欧州債務危機の再燃です。これはすでに危機がささやかれるドイツ銀の存続にも影響する話でしょう。債務を減免すれば、ギリシャにカネを貸し込んでいた独銀にとって、負債を抱える話ともなってきます。
堅調と言われつづけてきた独国。製造業は中国との関係を深め、金融業は高い利回りをもとめてギリシャ国債などに投資し、緊縮財政下でも堅調を保ってきましたが、その限界が見えてきた。メルケル政権も国際機関との調整には、正念場を迎えるのでしょう。安倍首相がクルーグマン教授との会議で、余裕のある独国に財政出動を促すには? と尋ねたところ、クルーグマン氏は「外交の専門家ではない」と断った。しかしこれは、独国も今年辺りは危機に陥るのでは? との観測があったとしたら…。欧州は下支え役を失い、一気に下落するリスクを追うのでしょう。

独国の景気が低迷すると、ECBが高い格付けとして買ってきた独国債にも影響し、ひいてはECBの資本にも影響を与えかねません。今年辺り、国債を自己資本から外す流れが本格化するのかもしれない。それは欧州債務危機のような状況になれば、国債の価値すら怪しくなってくるからです。
安倍政権では、G7の前に財政出動を発表し、議論のイニシアティブをとりたいと考えているでしょう。そこに教授に聞いた独国に財政出動を促し、日独で議論をひっぱる、との戦略があったはずです。しかし欧州債務危機が再燃すれば、そんな目論みもふっとぶことになる。しかも、50兆円というバカげた規模の財政出動を行った中国は、今やみる影もないほどに失速し、財政出動にも光陰があることは自明です。世界が陥りつつある、金融・財政政策の限界。互いの思惑が複雑に入り混じり、解決策をみいだせない国際関係。そんな困難な状況に陥りつつある現状で、安保法制を国内で議論するだけで関係が悪化してしまう、脆弱な日米同盟にすがりつく国では、まず舵取りに不安を残す、問いことにもなってしまっているのでしょうね。

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2016年03月11日

ECBの金融緩和と限界

東日本大震災から5年。未だに大きな揺れに匹敵する噴火がおきていない。このまま収まってくれるのか。エネルギーを蓄えたままなのか。小幅な噴火、もしくはその兆候だけでエネルギーの放出が終わるのか。安倍首相が自慢げに語るほど、原発周辺地域の復興はまだすすんでおらず、あらゆるリスクに対しても謙虚に、起こる前提で対応を考えていかなければいけないのでしょう。

昨晩、ECBが追加緩和策を打ち出しました。中銀預金金利を-0.3%から-0.4%に引き下げ、利ファイナンス金利を0.05%から0.00%に、限界貸出金利を0.30%から0.25%にそれぞれ引き下げます。資産買い入れ枠を4月から600億€から800億€に引き上げ、高格付けのユーロ建て債券にまで拡大し、買い入れの期限を17年の3月とします。また6月から期間4年で条件付長期資金供給オペを実施します。これらは市場予想を上回る緩和で、一旦はユーロ安株高にすすんだものの、ドラギ総裁の会見での発言で一転、市場はこれを緩和打ち止めとしてユーロ高、株安へと転じました。
「一段の金利引き下げが必要とは思わない」との発言ですが、これだけの緩和策をうちだせば、当面はその影響をみなければいけない。むしろ12月の緩和から3ヶ月で緩和したら、前回の効果への検証はできないことになります。また長期の資金供給オペも含むなど、当面のパッケージはすべて今回で盛り込んだのですから、しばらく金融政策に期待することはできなくて当然です。

しかし今の市場は中銀中毒の状況であって、薬の効果が切れかかるとより強い薬を求め、薬をもうくれなくなると、それだけで悲観してしまう。ドラギ氏が「マイナス幅を望むだけ拡大できるか? NOだ」と述べただけで、中毒患者である市場は失望する。実際、欧州ではこれまでマイナス金利の悪影響を吸収してきた金融機関が、これ以上の引き締めに耐え切れる保証もありません。事実、ドイツ銀はリーマンショック後、発行されたCoCo債とよばれる偶発転換社債の影響で、破綻を意識されて株価が急落するなど、金融機関の弱体化が顕著になっています。
マイナス金利は資金の借り手には優遇でも、貸し手には痛手。金融機関の破綻が相次ぐ、または大手が破綻すれば、その影響は計り知れません。金融政策を実体経済に波及させようとすればマイナス金利は有効ですが、その結果、肝心の金融が弱体化すると資金を貸そうとはしなくなる。結果、資金が回らないということが起こる。いずれにしろ金融政策の限界を露呈しました。

日本では金融政策の限界が主流となれば、金融機関には助かるとして、メジャーSQで大きく下がった株は切り替えした。一部、年金の買い観測もありましたが、SQ通過で愈々、機関投資家も年度末にむけてムチをいれだした、というところでしょう。またECBの追加緩和で、負けじと日銀が緩和に動く、との観測も入った。円買い、株売りに傾けていた層のポジション縮小もあった。ただ、メジャーSQの日にしては異例の、やっと売買代金が3兆円越えという低調は、日本経済への期待が大きく剥落している、それは国内からも、海外からも、ということでもあります。
法人企業景気予測調査も大きく落ちこんだ。マイナス金利で貯蓄から投資へ、という流れを呼びこむつもりが、逆に貯蓄は増える、タンス預金は増える、投資資金は一気に離れてしまった、というのが実体です。日本では黒田日銀総裁が、未だに金融政策の限界を示さず、まだやる、と吹聴しますが、そのたびに投資は先細りになっていくのでしょう。マイナス金利によって、ノルウェーの年金基金が日本国債の持分を大きく減らした、という報もあります。マイナス金利によって日本から逃げだす資金、下手をするとそこで溜まった膿が、いずれどこかで噴出するのかもしれません。金融政策の限界の前に、金融政策の幻覚に酔ったままでは、いずれ死に至る病にかかっていることさえ気づかず、気づいたときには手遅れ、ということもあるのかもしれませんね。

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2015年12月03日

ECBの追加緩和

露国のプーチン大統領が、年次教書演説を行っています。トルコ批判を強め、ISILからトルコへ原油が密輸され、それはトルコのエルドアン大統領も関わっている、とも。その映像も公開しましたが、残念ながらこれでは証拠にならない。ISIL支配地にある石油掘削施設、もしくは製油所から運搬している、確かな情報ではないからです。車列も映し出されましたが、これも同じです。物資の運搬との違いが分からない。昔のKGBなら、あんな不鮮明な空撮映像ではなく、確かな証拠がありそうなものですが、今ひとつすっきりしない説明に終始しています。
一方で、露国経済の悪化も認め、今年は-4%を越えるマイナス成長の見通し、とします。インフレ率も10%を越え、破綻の一歩手前のような状況です。トルコへの経済制裁は、まるで自国がされたことを他国にし返す、そんな態度に見えてしまう。ただこれは諸刃の剣で、トルコの経済規模はそれほど大きくないとは言え、自ら資源販路を縮めてしまうことにもなります。資源供給の一部は止めるものの、その他の経済協力は停止しない、なども露国の弱みと映るでしょう。プーチン氏は「課題に立ち向かうには団結」と、どこかの国と同じようなことを述べていますが、その団結の旗がプーチン氏の下でいいのか? ということが大いに問題となってくるのでしょう。

英国もシリア爆撃を決めましたが、実は英国も経済的には苦境です。不動産価格の上昇にも翳りがでて、インフレ率も低下、小売もふるいません。原因は様々ですが、その一つに米利上げに伴う資金還流があって、英国への投資が滞っている、とされます。経済が苦境に陥ると、対外的に攻撃的になる。仏国へのテロが契機とはいえ、その決断には様々な思惑もありそうです。
欧州ではECBが追加緩和を決めました。しかし緩和の期間を2016年9月から半年延長、マイナス金利を0.2%から0.3%と、小幅にとどまった。この記事を記載している段階では、ドラギ総裁の会見が伝わっていませんが、一段の措置を発表とはするものの、市場予想にとどかなかったためユーロ高、円安になっており、今後の予断をゆるしません。ドラギマジック不発、と受け止められれば、今後の欧州への政策期待が萎み、市場全体への悪影響も懸念されるところです。

英国や独国の11月のPMIが発表されていますが、概ね好調です。これは購買担当者に景気動向を尋ねる形であり、ドラギ氏の追加緩和発言で、マインドが上昇していたことが背景でしょう。しかしこの不発は、そのマインドすら悪化させかねない。欧州も露国への経済制裁に参加していますが、これも欧州にとって諸刃の剣です。世界は低インフレ、ほどよい景気上昇のゴルディロックスの状態だともされますが、こういう状態のときはどこかに歪みが堪っている状態でもあります。
ECBがこの程度しか緩和の規模が増やせないのも、その歪みが中央銀行に堪る、という構図を恐れたためでしょう。世界は管理、統制された自由主義経済に向かう、との観測もありますが、逆にその歪みを解消させるには、半ば強引にでも政府、中央銀行の介入が許容されるということでもあるのでしょう。国民に結束を呼びかける国々、それはやがて管理、統制された経済、社会に移行する前段階のように見えてしまいます。露国ではどんな困難でも「ニチェボー」(何でもないさ)というほど、大らかな気質だとされますが、かつての体制にもどってしまうなら、そう云うことすら憚られる社会に逆戻り、となってしまうのであって、欧州もそうした社会に近づいている。それがテロによって促進された、と考えると現状が少し、理解しやすくなるのでしょうね。

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2015年11月18日

雑感。仏国の動きと国際社会

維新の党を離党した小沢鋭仁氏らが、日本を元気にする会の山田氏と、政治団体を結成しました。民主党も解党でごたごたしますが、年末にかけて新党の動きが活発化する時期でもあります。そんな中、SEALsが政治団体の届け出をしたことに対し、一部の政治家や有識者が「国際的に通用しない」と批判の声をあげます。しかし、そう批判する人が総じて「国際的に通用していない」というのも、何だか笑い話のようです。保守層にありがちですが、これが国際的な常識、と自説の正しさを主張するケースが多いですが、大抵それは米国の常識であって、国際的? という広がりは感じられません。しかも米国がそれを日本にして欲しい、というのとは、ちょっと別です。むしろ米保守系の常識を『国際的』と銘打っているに過ぎない、とすら感じます。

仏国ではテロ容疑者のアジトを急襲するなど、今日も動きがあります。航空機へ爆弾を仕掛けた、との通報で混乱するなどもみられます。テロリストが秀逸なら、例えば今回のように一方のアジトを急襲され、治安部隊が集中しているときに別の地域でテロを起こすでしょう。また航空機、列車などへの脅迫をくり返し、実は何もなかった、と狼少年とみなされたとき、初めて本当の爆弾を仕掛ける。それが最大の効果を得る形になります。テロとの戦い、簡単に言いますが、こうした徐々に、徐々にダメージが蓄積して行くようなやり方は、国にとって深刻な影響を与えます。
仏国と露国が、ISILへの攻撃で一致しました。昨日は露国が航空機の墜落をテロ攻撃とみとめましたが、両国とも警戒しているのは、自分たちがテロとの戦いの先頭に立っている、と看做されることです。テロ攻撃の対象とならないためには、陰に隠れているに限る。露仏ともその認識では一致します。いつもは先走る米国が、今回は目立たないのもそんな思惑が強いのでしょう。

経済面では、欧州など景気が減速したら追加の金融緩和や景気対策、などを織り込んで株式市場は一段高しています。しかしまだ減速するとは限らない中、景気対策をおりこむなどは明らかに先走った印象です。ECBを前にして、金融機関には資金がじゃぶじゃぶ溢れる。独国債などはすでに高すぎる。仕方なく株式に資金を流すしかなく、不景気でも株高にせざるを得ない。そんな思惑で、テロという事態にも動揺しない、些か歪んだ形で相場形成がされているようです。
日米合弁系の買いも、欧州系ヘッジファンドでは? との憶測も流れます。国際的なリバランスの流れだ、ともされますが、この日米合弁系は欧州系の金融に強いわけではなく、仮に欧州系だとすれば新規の契約を獲得したことにもなる。今ひとつすっきりした説明ではありません。ただ、今週は日銀政策決定会合が開かれ、日銀の追加緩和期待が益々遠のく、といったことになればユーロ安がすすみ、資産を海外におくことも正当化されるかもしれません。それは今のところ、もっともテロの起こりそうにない国に資産をためる、という道筋かもしれず、そうなると安倍政権がもしテロとの戦いに前向きとなれば、逃避して行くような資金なのかもしれません。

フランスの詩人、ボードレールが「パリ、今やなし」と嘆いたのは、今から約150年前のことです。当時は道路が狭く、大規模な都市計画を実行、大きくて広い道路をつくろうとすることに反発し、昔を懐かしんだときの言葉です。しかしその効果は、市民がバリケードをつくって政府に抵抗する際、軍隊による排除を容易にした。今回、大きな道路に警察車両が何台も並び、銃声が響く。「パリ、今やなし」という言葉を改めて感じます。最後にナポレオンの言葉を引用してみます。「幸福とは、人間の希望と才能にかなった仕事のある状態をいう。不幸とは、働くエネルギーをもちながら無為な状態にあることをいう」 ナポレオンは約200年前の人物ですが、この定義が正しいなら「パリ、今やその状態になし」ということが、テロをうみだす土壌にもなっているのでしょう。むしろナポレオンの定義を『国際的』に常識とすることが、必要なのかもしれませんね。

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2015年11月14日

仏国のテロ事件

仏国のパリで、テロ事件がありました。ISILによる犯行声明がでましたが、依然として犯行の全体像は分かりません。仏国では、情報監視に対して議論が巻き起こっており、容認論さえ出ているとされます。米英に比べ、諜報機関としての活動が乏しい仏国を狙ってのことなら、理由は分かります。そして今回が露国ではなく、仏国だった理由もやはり、KGBという諜報機関を抱えているかどうか、なのかもしれません。シャルリ・エブド襲撃と今回と、二度も国内でテロを起こしてしまった仏国、情報力の差を監視強化で埋めるなら、観光産業には大きな打撃となるでしょう。
翻って日本も、安倍政権がテロとの戦いに突入しようとしている。情報戦でもっとも劣っている国として、スパイ活動すら禁止されていない国として、狙い放題といったことにもなるでしょう。後方だろうと、金をだすだけだろうと、テロとの対決姿勢を示すことは、否応なく危険にさらされる、ということでもあるのです。しかも、問題は仮に安倍政権がテロ事件で引責辞任することになったとしても、それで幕引きとはならず、日本が狙われ続けることになる、ということです。政治家も、国民も、その覚悟があるのか? それを理解した上で、安保法制や安倍首相が中東で行った演説を支持するのか? 改めてその覚悟が問われることにもなるのでしょう。

明日からトルコで開催されるG20も、主題が世界経済の減速から、テロ対策に割かれそうです。かといって、ISILが仮につぶれたとしても、テロとの戦いは終わらない。今回の仏国テロでさえ、その分派がおこした可能性を指摘されますし、露国の航空機撃墜も、シナイ半島のISILという分派がおこしている。ISILに空爆をしても、分派までつぶせるわけではありません。それこそ一人でもテロは起こせてしまう。各地にいるテロリストを殲滅しない限り、戦いは終わらないのです。
そして、これは経済的にも重要です。まず軍事費として、各国はテロ対策費用の上積みを迫られる。情報監視、諜報機関の拡充など、予算は膨らむばかり。国内でテロがおこれば、人命が失われるばかりでなく、経済活動も止まります。フィギュアスケートの仏杯が中止されたように、国際的な大会、会議すら行えなくなる。様々な面で打撃となり、それはテロの効果としてもっともテロリストが期待するところともなるのでしょう。つまり相手国の混乱です。いくら虚勢を張り、テロと戦うといっても、政権基盤が揺らぎ、国内が不安定化する。政治的、経済的、そして軍事的な面で、テロとの戦いは不毛で、生産性のない戦いとなってしまうのでしょう。

プーチン大統領はバカなことをした…国際的に、こうした認識も定着するでしょう。すでに政権基盤の揺らぐアサド政権に肩入れしたばかりに、自国が危険にさらされるのですから。ここに来て、プーチン氏が国際共闘を訴えたのも、テロリストに狙われたくない、という小心から来ています。それは自分のみならず、自国が狙われるだけで、自身のダメージになるのですから。
日本はどうするのか? 米国に従って、その不毛な戦いに足を踏み入れるのか? 難民受け入れには消極的なのに、テロとの戦いには前向き、という人道的にもどうか? という政治判断の中で、国民に覚悟をせまったこともない。真の危険を伝えず、今のままテロとの戦いに突入すれば、大きな混乱が日本におこることでしょう。安倍ノミクスで経済を壊した安倍政権が、安全な国家というイメージまで壊してしまうのか? ここから何が起こるか、仏国のテロ事件が日本に投げかける問題は、相当に厄介で、身につまされるものとなってくるのでしょうね。

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2015年07月13日

雑感。15日に何かあるか…

NHKの世論調査で、安倍政権への不支持が支持を上回ってきました。安保法制への説明不足に加え、安倍ノミクスの評価も大きく悪化しており、20000円を切った株価も影響したのでしょう。今日は2万円台を回復しましたが、そのキッカケはギリシャの支援合意です。最近、EU首脳会合は互いの頭が冴えているうちは合意できず、深夜でナチュラルハイになって、やっと合意する、と陰口を叩かれてきましたが、今回は朝までかかりました。しかも徹夜明けの朦朧とした意識の中で、正常な判断が働いていたのか? というとやや疑問が残る内容です。
今回はあくまで支援条件の合意であり、ギリシャが15日までに法案整備できなければ、元の木阿弥です。ギリシャでは緊縮策受け入れで議会の合意を得たときでさえ、与党から造反がでました。今回は更なる緊縮策であり、一つ一つ法案整備をしていたら間に合わない。そればかりか、世論は国民投票をした結果が反映されていない、としてチプラス政権に厳しい目を向け始めました。支持率の高さ、世論の声を追い風としてEUと対峙してきたチプラス首相が、世論の逆風にさらされてはじめて議会運営をする、という形になります。今週、世論の動向とともに、ギリシャ議会が台風の目になるのか、再び返ったボールを打ち返せるのか、要注目です。

日本株がギリシャ問題の前進を好感して夜間で上昇していますが、ギリシャ問題で下げた訳ではなく、特に米株市場などはすでに織りこみ済みの内容であって、決して上げるような材料ではありません。問題は、今週の政局です。15日にも委員会で採決、と噂されており、且つそこで衆院議長による補充審議で、維新を懐柔、24日に本会議採決、などともされています。
しかしその15日、日銀の金融政策決定会合が行われていて、ちょっとした噂ですが、ここで追加緩和があるのでは? とされています。注目されていない分、サプライズ効果が出せますし、不足しつつあるETF、REITの購入資金を充足させ、市場に安心感を与える意味でも、実はこのタイミングが都合よいのではないか? 米国が利上げした後で日銀が緩和すると、円安誘導との批判を招きかねませんし、それこそ政局が混迷してくると、政権への援護射撃か? と日銀への攻撃が強まる恐れもある。ここならその心配がない一方、最大の効果としては『自民、強行採決』の記事のインパクトを薄め、新聞の一面を『日銀、追加緩和』で埋めることができるのです。

経済指標をみても、消費者物価は0近傍へと接近、企業物価はマイナスです。つまりデフレ脱却がターゲットなら、ここで追加緩和しても差し支えない内容が並ぶのです。ただし、仮に追加緩和をしても、これまで誇ったような規模の追求はできません。債券市場への資金投入は、すでに限界を超えており、ETFやREITなどの買入れ枠増額しか提示できない、とみられるためです。
その布石なのか、日銀が今年の成長率見通しを、中国の景気減速を理由として下方修正する見通しです。つまり中国株の乱高下で、相場の混乱を下支えする、という理由としても追加緩和をし易いのが今回なのです。ただ、懸念はすでに支持率が低下した安倍政権の援護射撃では? という議論は今回ですら起きるでしょう。それは日銀の黒歴史として記録されることにもなります。また規模でサプライズ効果を出せなくなると、日銀限界説にも結びつき易い。かといってETF、REITに大量に資金投入すれば、最早市場に資金を流すことでインフレにする、という説明が通用しなくなってしまうのです。

あくまで噂段階の話であり、何を仕掛けてくるかは分かりませんが、意外なほど市場関係者から語られていないものの、かなり条件としては整ってきた15日の追加緩和。安倍ノタメノNHKを標榜する某国営放送とともに、安倍ノタメノ日銀が、ふたたび市場介入姿勢を強め、官製相場をさらに加速させるのか? 15日は7月の中日という以上に、日本の分岐点ともなりうる材料が色々と出てきそう、ということになるのでしょうね。

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2015年06月28日

ギリシャ問題について

ギリシャが7月5日に国民投票を行います。チプラス政権はユーロの緊縮財政への反対を掲げますが、世論調査の結果では緊縮策に賛成47%、反対33%とでてきました。しかし約半年前にチプラス政権の誕生を望んだ国民が、心変わりしたとすればそれは緊縮策に理解を示した、というより半年間のチプラス政権の無策ぶりに失望した、という点が大きいのでしょう。結果的に約束していた緊縮策を見直させ、経済を回復させるという公約は果たせず、再選挙により態度表明をしても、それでユーロ圏を離脱するとなれば、ギリシャの国民も考え直さざるを得ません。
しかし今回、1週間の短期決戦です。何が起こるかは分かりません。特に緊縮財政策を受け入れてしまえば、今よりも生活苦に陥ることは火を見るより明らかです。かといって、ユーロ圏離脱となれば国民生活にどう影響するかも不明です。分かっている苦しい未来か、分からない未来か、その二者択一を7月5日にギリシャ国民はしなければならない、となります。

しかしユーロ圏財務相会合において、6月30日の期限切れとなる財政支援について、延長を拒否。つまり国民投票に関わらず、6月30日にギリシャはデフォルトする可能性が高まっており、デフォルトした上で国民投票ともなれば、さらに結果は混沌とするでしょう。デフォルトした国をユーロ圏が抱えるのか? といった問題とともに、ギリシャ国民は判断しなければなりません。
資本規制についてギリシャ財務相は否定しますが、預金封鎖しないと収まらないかもしれません。ギリシャの金融機関とて、ギリシャ国債の保有比率は減っていますが、預金流出が起きればデフォルトする。ギリシャ金融機関がデフォルトすると、ECB、IMFが損失を被ります。規模が小さいとはいえ、ECBがどういった処理をするか? 今のところ不明です。預金取り付け騒ぎが週明けから起こるのか? 国内が大混乱に陥るのか? 今から不安もただよいます。

日本の株式市場は、こうした欧州の動きで不透明感が高まった中で始まります。ギリシャデフォルト回避、を半ば織り込んでいるだけに、ほとんどデフォルトが確実になった今、先週買った欧州勢の動きが注目されます。しかも今週は、米雇用統計が2日の木曜日に発表され、週末ではありません。思惑的な仕掛けも入りやすく、ギリシャデフォルトとともに、今週も海外要因で振り回される展開がつづくのでしょう。それは為替市場も同様になりそうです。
先週末の経済指標も、パッとしたものがありませんでした。国内経済も停滞、海外も不透明要因が強まってきた。しかも今回、ギリシャや中国といった経済の減速が指摘される国で特徴的なのが、高級品がよく売れる、ということです。経済が減速しているのにナゼ? と思われがちですが、預金をひきだして換金し易い、価値の変わらないものへ代えておく、といった行動原理なのです。日本も今、高級品が売れています。それも経済が減速している中で宜なるかな、ということなら、決して日本も楽観してばかりではいられないのかもしれませんね。


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2015年05月08日

英国総選挙について

英国総選挙、与党・保守党が単独過半数をこえる勢いです。労働党が、スコットランド独立党とくんで…とのネガティブキャンペーンにより圧勝した、とも伝えられますが、もう一つ重要なのは、ウィリアム王子とキャサリン妃の間に、シャーロット・エリザベス・ダイアナが誕生したことです。お祝いムードのとき、何となく現状変更をを躊躇うのは、どの国の国民も同じ。それが与党への追い風となり、不人気とされながら保守党躍進のキッカケになったのでしょう。
日本では猿の名前にシャーロットとつけ、批判が集まっていますが、的外れです。日本と異なり、名前の選択肢が少ない海外、特に厳格なカトリックは聖書に登場する人物名しか名前にできません。米国はプロテスタントの国ですから、時折変わった名前も見かけますが、英国の正教会の名づけに関する考え方は、カトリックに近い。貴人と動物を同じ名前にするのはけしからん! などとしていたら、それこそ選択肢がなくなります。ちなみに、シャーロットはゲルマン系・カールから変形した名前です。カールの原義は『男、農夫』であり、奴隷とは異なる一般市民という意味になります。カールは英語ではチャールズとなり、伊語ではカルロになり、このカルロから派生した女性名でカロリーナ、シャルロッテ、それが英語名シャーロットとなります。日本人にはまったく別々の名前のようにみえますが、元は同じなのです。このように、欧州の名前はほとんど発音の差、訛りの違い程度でしかなく、日本名のように無限の組み合わせをつくれるわけではありません。だから三つ重ねたり、愛称を正式に通名としていたり、といった変化をつける。そうしたことも知らず、日本の常識を当てはめてみても、海外からは笑われるだけです。

英選挙で驚くべきは、スコットランド独立党の躍進です。労働党の地盤とみなされていたスコットランドで、圧倒的な強さを見せました。先にスコットランドの国民投票では、英国からの独立を見送りましたが、これは火種として燻る問題として残ります。英国のEU離脱、英国の分裂、と2つの問題を抱え、キャメロン首相は先のネガティブキャンペーンの後始末とともに、難しい政権運営を迫られることでしょう。これはここまで成功してきた経済運営にも影を落とします。
英国では、財政健全化をすすめるため増税、富裕層への減税という政策をすすめた結果、ロンドンなど大都市圏の不動産バブルを生み、それが経済成長を促し、リーマンショックを乗り切ってきた、という経緯があります。ロンドンなどでは一般市民が不動産に手を出せなくなり、労働者もルームシェアなどで、高い賃料を賄うほど。健全な状況からは大きく乖離しています。

そしてこうした富裕層優遇、労働層へ負担、という経済政策をとると、必ずといっていいほど賃金が低い水準に抑えられまる。理由は不明ですが、世界で同じことが起こっているので、必然といっても差し支えない。それが保守党への批判となって現れる、というのが今回の選挙の事前の読みでした。ごく一握りの富裕層は票になりにくく、圧倒的に労働者の数が多いからです。
しかし労働党は今回、対案を示せなかった。これも世界で同時に起こっていることで、この新自由主義的な手法に一旦手をだすと、巻き戻すときの負の影響もあって、簡単に変えることも難しくなり、対案をだしにくいといった問題もあるのです。この手法を終焉した途端、国の経済が破綻するかもしれない。そんな危機感もまた、与党への追い風となって機能したのでしょう。

現状はトリクルダウン理論を否定し、与党のとる政策に不満も高まるのに、選挙になると与党が強い。それはこうしたことからも起きていることであり、日本も同様といえます。北欧神話に『リーグの歌』というものがあります。リーグは旅をし、3軒の家に泊まるとそれぞれの家に子が生まれます。それぞれ奴婢、自作農、貴族に別れますが、その二番目の自作農の名が、カールです。英国では今、移民も問題視されていますが、中間層であるカールの名をもつ王室の女の子が誕生した。三つの階層が大きく分離されている今の英国を、一つにまとめられるか? 保守党もここからが正念場、ということでもあるのでしょうね。

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2015年02月21日

ギリシャ支援延長で合意?

中国のレノボ社が発売したパソコンに、重大なセキュリティーホールが発見されました。NECとパソコン事業で提携するなど、世界的な巨大企業に成長した企業としては、あまりにセキュリティーがお粗末です。かつて台湾メーカーも深刻なトラブルを抱えましたが、パソコン事業は新規参入が意外と容易なだけに、メーカーの選別もまた、商品選びには重要なのかもしれません。ただ、ソニーから分社したVAIOがプロ仕様のパソコンを発表したように、安価でネット接続と簡単なオフィスが使えるようなものと、本格的な分野と、二極化がすすむのかもしれません。
心配なのは、世界的な大問題に発展しているにも関わらず、日本政府の反応が伝わってこない点です。政府機関に導入されていたら? 職員がもちこんでいたら? 民間企業でも同じように、機密情報が抜き取られる恐れがあります。こうした点にもお役所仕事、情報を得てから国民に発信するまで、時間がかかる体質が見え隠れします。国民に注意喚起することなく、これも自己責任で済ますなら、この政府の怠慢は、重大なセキュリティーホールと言えるのでしょう。

ユーロ圏財務省会合において、ギリシャ支援が4ヶ月延長されることで、ギリシャと合意がすすみました。週明けまでにギリシャから提出される財政計画案を欧州委員会、ECB、IMFのトロイカが認めれば…という条件つきですが、これを好感して欧米の株価は上昇しています。しかし正直にいえば、ギリシャの提案が満足できる内容、とはとても思えません。ギリシャ政府は緊縮策を含む内容を提示すれば、ギリシャ国内で暴動がおきるかもしれない。政府は転覆するかもしれません。一方で、緊縮策のない内容でもトロイカが認める可能性があります。4ヵ月後、その進捗をみて再判断する、という形ですが、その場合だと違う国に飛び火する可能性があります。
スペインも今年、選挙を控えています。ギリシャが甘い条件で支援をうけられる、となればスペインの反緊縮派を勢いづかせます。それはユーロ圏を崩壊させかねず、反ユーロ勢力すら育てかねなくなります。さらに、世界が一義的には通貨安、ひいてはバブルを起こそうと異常な金融緩和い舵をきる中、財政出動をくり返せば、いざバブルが崩壊したときの痛手は国すら破綻させるでしょう。万に一つの可能性にかけるなら、危険なギャンブルのようにも見えます。

しかしギリシャには切迫した事情がありました。資本規制導入が噂され、国内銀行の預金流出が起こっており、またギリシャ国債の担保価値の喪失から資金繰りに行き詰る。銀行倒産から、国内企業の連鎖倒産にいたる恐れすらありました。ただ仮に4ヶ月先送りしたとて、その状況に変わりないでしょう。独国をはじめとした、欧州圏はウクライナ問題でも合意を焦り、今回もまたそうなった。停戦合意が守られず、未だに火種がくすぶるように、安易な合意による時間稼ぎは、いずれ問題が深刻になったときは手遅れ、という状況に近づくだけです。しかし欧州の首脳とて政治家、言ってみれば国民から負託されたとは言え、仕事でやっているに過ぎず、問題を解決するよりは事なきを得ず、という方向でまとめたくなるのかもしれません。
しかしこの合意をうけ、市場が上昇したのには違和感があります。不透明感の払拭、といってみたところで、これまでギリシャ問題の悪材料でもみ合っていたならまだしも、各国の市場とも高値圏にあり、解決することを前提にそうなっていたからです。しかし例えば米国でも、原油安にも関わらず石油関連企業の株価は下落していないように、実情との乖離が顕著になっていることは、間違いありません。ギリシャを自己責任と切り捨てなかったユーロ圏。ただ、そこにぽっかりと空いたセキュリティーホールは、極めて深刻なトラブルを後に起こすことがほぼ確実なだけに、時間稼ぎの代償は今後、高くつくことになるのかもしれませんね。

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2015年01月23日

ECBによる量的緩和

ECB理事会で、欧州でも量的緩和の開始が決定されました。月額600億€を16年9月まで、効果がなければ継続、と無制限を示唆し、市場は好感しています。ただ実際には既報であった500億€に、既存の民間資産の買い入れと金融機関への低利融資を組み合わせたものに、プラスアルファする形で計600億€となります。また各国の国債購入は発行の33%まで、価格下落などのリスクは、20%をECBが、80%を各国中銀が負う、としました。月ごとの緩和規模は既報に近かったものの、このリスク管理の明確化と、無期限に近い緩和の継続ということが好感された向きがあります。
しかし早くも、この緩和規模では目標とする2%近いインフレには達しない、という見方が出ており、追加緩和を求める声が高まるかもしれません。さらに問題は、ECBの負うリスクが20%だということです。各国の国債、特に独国を初めとする優良資産の金利は、すでに歴史的な低水準にまで落ちこんでおり、景気がもどり、金利が上昇するだけでその損失の8割を各国中銀が被らなければならない。通貨発行権のない中銀が、国家の発行する国債の価格下落の8割負担を強いられるのは、景気回復の足取りを鈍らせる恐れがあります。総じて言えることは、ECBとしては体面を保った形でも、各国にとって素直に喜べるほど、この緩和は甘くない、ということになります。

しかも日本の例をひくまでもなく、量的緩和がインフレ率を高めた経験を、人類はもっていません。日本は円安インフレを招き、それが経済に打撃となり、逆に需要減からインフレ率が低下してきています。欧州も高い失業率や、賃金の伸びの低さに直面しており、インフレ期待が高まりにくい。そして量的緩和は、格差拡大を促す施策ともされます。これは失業率を高止まりさせ、低賃金は改善されない、という意味であり、需要の回復が遅れる恐れもでてきます。
市場予想の500億€から、600億€と発表し、サプライズを誘ったことはドラギマジックですが、これでは夢から醒めるのも早いのでしょう。世界同時株高の商状ですが、これは材料出尽くしで売られるとみた層が、意外と底堅いことをうけて買い戻す動きに過ぎません。発表がでた後はじまったNY市場が、朝方には弱含んだのも、この内容では好感できないためです。日本でおきている5年物までマイナス金利、長期債が0.2%割りこむ、となれば弊害も出てくる。量的緩和の負の部分も散見される中で、今回のECBの判断は一つの賭けのように思えてなりません。

ギリシャでは野党が優勢を拡大している、との世論調査も出ています。ギリシャはすでに発行の33%の国債を保有しているため、ECBの買い入れには入りません。償還分を再投資はできますが、規模が限られる。今後も各国が苦境に陥り、国債が売られだした後、ECBの保有が上限に達したら、その後どうなるのか? 一気に市場が崩れる恐れも出てきます。結局、この枠が今後どうなるかも分かりません。ギリシャのようにユーロ圏の離脱を議論したり、それこそ各国が分裂し、国の規模が変わってしまうと国債の価値がどうなるかも分からりません。ECBはリスクを切り離し、そうした政治の混乱の影響をうけないよう配慮しましたが、その結果ユーロの形も流動的になっている印象を、今回の金融政策で抱いてしまうこともまた確かです。
独国中銀をはじめ、ECB理事の1名を含めた5人が、今回の決定に反対票を投じました。独国では『金があるところ、悪魔がもう一山ひりだす』とも言われます。ECBは無尽蔵にお金を供給する、と宣言しましたが、各国中銀からすれば今のECBは悪魔に見えているのかもしれません。そのお尻からひりだされた金が、浄財なのか、不浄なのかも分からないまま、欧州はその使い道に窮する、というのが今後起こりうることなのかもしれませんね。

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2014年09月19日

スコットランドの独立選挙

昨日、年初の日経平均の水準を、なぜかダウ終値と勘違いしていました。正確には104.7円で日経平均は16121.45円。ドルベースなら153.98。今日の終値は109.1円で16321.17円。ドルベースなら149.60です。イベントドリブン型の買いが入り、株式市場はSQ並みの売買に膨らみましたが、やや盛り上がり過ぎの印象です。ナゼなら、スコットランド独立を阻止したからといって、状況は何も変わらない。現状維持にすぎません。不透明感の払拭だけで買い続けられるわけではありません。

そのスコットランド独立投票、賛成44.7%、反対55.3%でした。英政府は勝利宣言をだしていますが、これはここからが難しい話です。例えばアイルランドに存在したIRA、武装闘争により英国をアイルランド島から追い出す、との目的で活動し、テロを頻発させました。分離、独立には大きなエネルギーが必要で、そのエネルギーを厭わずかける、という意志をもつ人間は、鬱屈した感情をそうした組織に向けがちで、今回の結果は、そうした極右勢力を生む可能性があります。
さらに選挙期間中、英政府が約束した大幅な自治権の拡大。これから条件闘争、詳細について決定されますが、それがスコットランド側に不利とみなされれば、再び独立の気運が高まる怖れもあります。何度もくり返せば、独立賛成派が勝つ可能性も高まります。スコットランドの人々を納得させるには、それなりの産業支援、経済発展なども手を打たなければなりませんが、そうして実力をつければ、いずれ独立しても自主自立できるということにもなりかねません。

結局、根底にある差別意識、抑圧されているといった感情を払拭しなければ、同じことを繰り返します。今回、当初は3割程度とみられた独立派が、過半数近くまで伸びたことは脅威です。これで独立派が明確なビジョンを打ち出し、再選挙となれば簡単に結果は覆るのです。そのシミュレーションを今回、行ったのだとすれば、それは明日の脅威を持ち越しただけなのです。
しかも独立をめざす他の地区に、危機感が芽生えると、独立の動きにムチが入るかもしれません。つまり勢いだけで、独立を目指しているなら脅威は低い、今回のようにアメとムチでムードを変えてあげれば、結果が変わる可能性もありますが、腰の入った、戦略をもった独立の動きにつながると、それこそ厄介となります。他の地区にはそれぞれ独自要因もありますが、元々欧州は多民族、多国家が今の形に集約されているだけで、未来永劫現状のまま、ということもありません。

19世紀、自由党党首だったグラッドストンは「光栄ある孤立」と使いました。経済力をつければ国力も増す、として英国一強主義を貫いた際の言葉です。これから、英国は「興廃する孤立」に陥っていくのかもしれません。連邦制に移行するのでは? とも語られますが、経済面に不安を残す中、なりふり構わず独立を阻止したものの、そのツケを今後どう解消していくか? その結果次第では、英国の凋落が加速しかねない、ということになってしまうのでしょうね。

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2013年03月23日

キプロス問題について

大学による調査で、11年6月から1年4ヶ月で17兆Bqの放射性セシウムを含む汚染水が、福島の海に流出している可能性がでています。東電は地下水が流入、とは認めますが、流出は認めておらず、継続して調査している様子もありません。原発の最下層が、地下水位より上にあれば、当然のように流出の方が多くなります。海の汚染について、もっと抜本的な調査と、それに伴う対策が必要なのでしょう。東電の無責任体質に任せていては、いつまでも解決しない問題です。

欧州の小さな島国、キプロスの問題が尾をひいています。25日が期限とされる中、キプロス政府は的外れなことばかりしています。まず基金の創設、政府すら破綻している中、何を担保として資金を集めるのか? これを成立させるには、ユーロ圏かECBによる保証が必要となりますが、その保証をとるための材料に基金の設立、では本末転倒です。10万ユーロ以下の預金者には課税せず、という対応では、先に議会に提出された内容と同じですが、それでは規模が小さく、ユーロ圏と合意できるか微妙です。さらに年金基金を国有化し、財源の穴埋めにつかう案もでていますが、これは国民反発も大きく、将来不安を引き起こすので難しいでしょう。
ここからは、多少効果がありそうな話ですが、まずキプロスの銀行が海外支店をスピンオフし、規模を縮小する。またバッドバンクを設立して、破綻する金融機関を整理、一部の健全行に集中させて残す、といった形を模索しています。ユーロ圏としても、自国内のキプロス銀の支点が閉鎖、といった事態がなくなりますが、単純に預金のみが切り分けられるわけではなく、スピンオフする際の不良債権の持分、などが問題となる恐れがあります。さらにバッドバンクとして不良債権の受け皿をつくっても、そこに公的資金を注入しなければならず、政府が当てにならないため、やはりユーロ圏やECBに頼る形となります。支援をうける条件なのに、支援が前提の方法論で、小手先の対策に終始している印象は否めません。

ロシアとの調整が不調に終わり、日本は円高、株式市場は大きく下落しました。欧米は支援がまとまる、との楽観で小幅反発、しかし今のままだと、キプロスへの支援に合意できる見込みはありません。ドイツも選挙を控え、さらに与党が苦戦と伝わる中ですから、尚更です。通貨切り下げの切り札が使えないキプロスにとって、債務の圧縮が急務となるのですが、今は経済規模を縮小する話ばかりで、債務の扱いは支援頼みです。ドイツもこれでは合意できません。
今もっともありそうなシナリオは、期限の先延ばし、です。ユーロ圏は何度も、危機に陥った国との調整で、期限を延ばす措置を行ってきました。その間、各国も国内の合意をとりつけ、当事国もユーロ圏の要請に近づけるよう、国内の説得を行う。恐らく今回も、同様のパターンをたどるでしょう。その先に、薄氷の合意を得られるか、それはむしろ、国民の反発と政治決断との狭間で、どういった折り合いがつくか? それに関わってくるのでしょう。

未だに解決していない、国際的な問題としてtoo big to failがあります。大きすぎて潰せない、キプロス銀行の問題は、まさに国の規模を優に超えるだけの資産を、金融機関がもっていたこと。それによって、国ではどうすることもできない状況に追いやられたのです。そして量的緩和により、超ジャブジャブになった先進各国でさえ、同様の問題を抱えているといえるのでしょう。日本でも安倍ノミクスにより、実体経済を超える規模の金融肥大化が懸念されます。資産価値の拡大に浮かれていると、南欧の問題の波及も懸念されるところなのでしょうね。

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2013年02月26日

イタリア選挙と市場

補正予算が、参院で賛成117、反対116で可決されました。しかしこの補正予算の内容で、大したチェックもなく通ってしまうのですから、今の国会のレベルの低さは、残念ながら筆舌に尽くしがたいものがあります。生活の党の藤原氏が「復興が…」と、棄権の理由を述べていますが、この補正が通って公共工事が実際に動きだせば、東北の人手が足りなくなり、逆に復興が遅れてしまいます。

伊選挙は衝撃の結果でした。選挙制度の違いによって、下院は緊縮派の中道左派連合が多数を握りましたが、上院はどの党も過半数をとれず。しかも後半、中道右派連合や五つ星運動の支持がのびたため、再選挙をすれば反緊縮派が多数をにぎることが確実です。しかも、中道左派と中道右派が手をむすぶと、恐らく緊縮型の政策はとりにくい。これに伴い、世界の株式市場は調整含みで、為替は一気にユーロ安に向かいました。極端な楽観に、一部で巻きもどしを迫られた形です。
実は、欧州で起きていることは複雑です。ESMやLTROによって、確かに金融機関は資金繰りが楽になりましたが、企業の資金調達は二極化しています。独仏などの財政が安定している国と、南欧では利回りに2%以上の開きがあり、調達手段も限られている。これにより、企業は益々雇用を手控え、余剰労働力の観点からも賃金を下げている。そこにきて増税で生活が苦しく、それが諸に結果として現れた形です。つまりESMやLTROがあっても、市民生活は一向に楽にはなっていないのです。
国や金融機関の破綻はなくとも、市民の不満は溜まる。さらに、汚職や政治家の醜聞が重なり、既成政党離れがすすみ、そこに平均年齢31歳の五つ星運動へ、票が集まりました。これは日本の状況に似ますが、異なるのは日本はすでに政権交代を行い、失敗したということです。しかし伊国にとって、マイナス成長と政治不信による影響に、国民が嫌気がさしていることが今回の結果であり、これは緊縮財政で苦しむ他国に、伝播していく可能性がある。それを市場も警戒しています。

日本の株式市場に少しふれておくと、昨日は12000〜12500のコール市場にポジションを組んだ層が多く、それが今日一時的にしろ、11500円にもどした原因と考えられます。4Tickも下がると、流動性が失われて処分も難しくなる。ポジション調整が覚束なくなる恐れを、先物の自己売買で解消した、といったところでしょう。さらに難しいのは、需給で上がる相場は、需給関係が悪化すると売り込まれる懸念があるため、大きな調整局面を迎えにくい。どこかがムリをしている相場なのです。
黒田総裁とTPP参加で一段高、ともされますが、以前もとり上げたように数量ベースの輸出は減っている。円安でもこれは変わらないですし、むしろ欧州がユーロ高で苦しめば、回り回って日本の輸出はさらに減少する恐れがある。その懸念をさらに強めたのが、伊選挙なのです。緊縮財政路線を見直すと、さらに国債利回りが上がって、企業は苦しくなる。国民は増税苦からは逃れられても、仕事もなく生活苦は続くかもしれない。それは益々、マイナス成長を強めることになるのでしょう。

日本は安倍ノミクスという壮大な実験期間に入りましたが、伊国はユーロ圏の中で、財政不安を抱えながら、財政出動にともなう拡大経済という路線に入るのか? そしてそれが、ユーロ圏の崩壊という局面まで導くのか? 欧州の情勢は、日本で語られるほど安定はしていない、ということを肝に銘じておくべきでしょう。それは景気低迷に転換点がみえない限り、そうなってしまうのでしょうね。

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2012年10月12日

雑感。ノーベル平和賞にEU

iPS細胞の臨床応用の件で、誤報だったという話になっています。該当する人物の経歴が虚偽、手術も実際に行われていない、などお粗末極まりないですが、そもそももしこの事実が正しいなら、手術を行う前に大々的に報道されているでしょう。6件も手術を行った、とされることからも事実を隠蔽して何例も手術をしたとしか思われず、国際会議で発表する予定だったとしても、それは伏せていたかった何らかの事情が存在したはずです。その辺りの調査不足があったのでしょう。
平成22年の読売報道から、誤報が続いていた。その頃からメディアと付き合い、効果について認識していた該当人物がつき続けるウソを、検証もできなかった点は問題でしょう。研究者には常に、研究費を集めたい、名誉を得たいという欲望に駆られ、成果を大きく評価してしまいがちです。創薬の分野は、特に臨床試験の結果を捏造するなど、そうした不正に目を光らせなければなりません。科学技術の報道は難しいですが、だからこそ慎重さが求められているということなのでしょね。

ノーベル平和賞が、EUに決まりました。「戦争の大陸から平和の大陸」に変えたことが受賞理由だそうですが、いがみ合っていても、分裂気味でも、戦争さえしなければ平和ということなら、日本も受賞資格ぐらいはありそうです。南欧が離脱して欲しくない、それはノーベル財団とて運用がうまくいかず、賞金の捻出に窮しているように、世界経済の安定を願ってのことかもしれません。まさかEU安定のために、ノーベル財団まで賞金で支援するとは思ってもみませんでしたが…。
S&Pがスペインを格下げし、格付けの投機的水準にリーチがかかりました。ただし、今はESM、OMTなどの体勢が整い、逆に早くスペインに支援要請して欲しい、という立場です。しかしスペインが支援要請すれば、今度はイタリアにリーチがかかる。イタリアを狙い撃ちされたとき、それはESM、OMTでも支援するのは苦しく、無制限の支援としても限界を迎えることになってくるのでしょう。

世界経済の下振れが指摘される中で、IMFは最近、急激な財政再建に懸念を表明し、先進国が流動性の罠に陥り、金融緩和は利かず、財政再建が成長を押し下げる割合が強まっていると警告しています。一方で、新興国は金融緩和で経済を下支えするよう求め、IMFが望む成長率に、世界経済を維持するような提言が増えています。しかし非常に矛盾を抱えており、すでに資金が国境を越えて右往左往する時代、先進国が流動性の罠に陥っているなら、それは新興国の金融緩和効果も相殺します。
金利を下げれば通貨安となり、輸出が増えるとよく語られますが、その前に投資資金が引き上げられ、新規資金が流入しなくなるため、内需が悪化します。輸出で稼げる外貨より、投資資金を呼び込んで得る資金の方が、大きくなってしまった。新興国の金融緩和が行き過ぎると、それは通貨安から破綻へという道へ、一気に転がり落ちる可能性があり、バランス感覚が大事な局面なのです。

日本は世界に先駆けて、低金利、低成長という道を歩んでいます。しかし均衡してしまった日本は、今後それをどう変えるか? という点に注力すればよいですが、世界はこの均衡点を目指し、そこにタッチ&ゴーで離陸するという難しい道を模索しなければならない。失敗すれば墜落が待っています。IMFの発言は、どこか無責任に聞こえますが、それは具体策のない現状への、回答を持ちえていない証左でもあるのでしょう。先送りされてきた景気の減速、後退へと突き進む中で、EUの問題や米国の『財政の崖』の問題を、真剣に議論しない姿勢に、本気度を疑ってしまうのでしょうね。

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2012年09月29日

スペインの動きについて

スペインが来年度予算の方針を示しました。省庁の歳出を8.9%削減し、全体として7.3%の歳出を削減し、一方で付加価値税を引き上げることで歳入は4%増を見込みます。欧州が陥っているのは、歳出削減による景気低迷で、思ったような税収が上がらないことです。スペインも、その欧州のジレンマに陥ることは確実で、ギリシャでも同様のことが行われていました。さらに年金等、改革関連法案を半年間で策定、それを着実に実行することで、市場から信任を得る意向を示しました。
そこにきて、カタルーニャ州が分離独立を決める住民投票を、承認しています。カタルーニャ州はバルセロナを抱える主要な州であり、工業、観光ともにスペイン経済でも最重要です。スペインは、国としてまとまっていても、歴史的にみれば小国家のまとまりに過ぎず、それぞれの州に高度な自治権も与えられています。逆に云えば、経済危機をうけて、国家の意とは異なる方針を市民がもっていれば、分離独立という道にすすむことも案外容易に選択する、ということになります。

スペインは支援要請し、ESMからの資金供給をうけるかどうか、が市場からの注目ですが、一旦は予算方針によって見送られる方向です。スペイン経済は来年、0.5%の成長を見込みますが、この計画でいる限りは財政は健全化されていくからです。しかし残念ながら、今の世界経済にはけん引役が見当たらないため、この目論見は達成不可能でしょう。そして年末まで、若しくはもっと早い段階で、支援要請をするかどうか、そこに市場の焦点は当てられるのでしょう。
スペインの主要14行に対するストレステストで、593億ユーロが資本不足、と算定されました。今回は民間のコンサルタント会社がテストを実施していますが、中身の信憑性がカギです。つまり不足分は、国がすでに支援している4行がほとんどで、他はむしろ健全とされます。市場予想ともほぼ合致しますが、欧州のストレステストが失敗を重ねてきたことは、周知の事実です。最大の懸念は『市場予想とほぼ一致する』こと。実は、市場に隠れた負債、赤字がある場合において、最大の問題が潜んでいることがあり、市場予想と一致している限り、実は期待通りに数字を操作している可能性もあり、残念ながら完全に疑念を払底できるかは、まだ先になってしまうのでしょう。

今回のストレステストで、ECBによる国債買入れプログラム実施にむけ、1つのハードルはクリアした形であり、国債の金利低下がすすむかどうか、ここに短期的な目は向かいやすくなります。ただ、いずれにしろECBの買入れプログラムは経過措置であり、いずれはESMへの支援要請という形になると想定されるため、それがない間は金利低下も短期に終わってしまうのかもしれません。
しかし通貨ユーロは未だに100円程度を保っており、まだ本格的なスペイン不安は織り込んでいません。ECB、ESMなどの下支えが機能している間は、本格的なリスクオフを示すには至らない、というところでしょう。ただ、今回のスペインの対応は、及第点ではあるものの、カタルーニャ州などの独立運動、デモや暴動による景気下押しなど、不安定要因はかなり抱えている状況です。今後の、スペイン発の情報には、振り回されることも多くなってしまうのでしょうね。

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