0b4b3d11.JPG西武球団裏金問題、裏金渡したスカウトらの実名公表=調査委員会の最終報告

西武球団裏金問題で、西武ライオンズ調査委員会は25日、東京都港区の東京プリンスホテルで調査委員会を開き、西武球団に最終の報告書を提出した。同委員会は、同日午後5時から記者会見を開き、同委員会委員長の池井優氏は、調査の方法、ヒアリング対象者などについて詳細に説明した。さらに、清水勝仁選手・木村雄太選手に、西武球団関係者が金銭を支給した経緯などについて、報告書の概要を読み上げ、不正に関わった球団経営陣やスカウトを実名で公表した。

 調査委による清水勝仁選手及び木村雄太選手に対する金銭の支給についての報告はつぎのとおり。

(1)清水勝仁選手の案件について
 ア 支給の経緯
 平成15年8月、当球団においては、鈴木照雄氏(当時の当球団スカウト)は同選手を入団させた意向を有していたが、当時の上司であった楠城徹氏(当時の当球団スカウト部長)と相談し、同選手が進学を望んでいたことや、既に合格の内定を出している早稲田大学と当球団との将来の友好関係に支障が出ないようにとの配慮から、同年におけるドラフトでの獲得を断念した。しかし、同選手側の経済的事情を考慮して、同年11月、小野賢二氏(当時の当球団社長)及び浦田直治氏(当時の当球団編成部長)の決裁を得た上で、学費等を支給することとした事実が認められる。

 また、学費等の支給については、大学卒業後の入団を条件とするものであり、当該条件が記載された誓約書(以下、「本件誓約書」という。)に清水選手側関係者一同の署名がある(但し、本件誓約書には、学費等の支給については記載されていない)。なお、早稲田大学スポーツ科学部スポーツ推薦入学試験要領及び領収証の日付などから、学費等の支給は、同年12月1日から開始したと認められる。同日以降、後述の打ち切りに至るまでの間、同選手に対して合計1025万7800円の学費及び栄養費が支給されている。

 イ 打切りの経緯
 平成17年6月に倫理行動宣言がなされたが、その後も同選手に対するいわゆる栄養費の支給は継続された。しかし、同年10月に至って、先に受領した入団を前提とする上記誓約書を無効とし、入団を前提とした栄養費の支給を打ち切ることとした。そして、同選手らから誓約書を無効とする旨の同意書を受領し、毎月の支給を打ち切った。

 ただ、学費等の打ち切りにより同選手が経済的理由から大学を中退せざるを得なくなるという事態を避けるべく、星野好男氏(当時の当球団社長)、黒岩彰氏(当時の当球団代表)、前田康介氏(当時の当球団編成本部部長)及び鈴木葉留彦氏(当時及び現当球団スカウト部長)らが協議し、その決裁のもと、当初約束した金額の合計額から既払金を控除した残額を同選手側に一括して支払い、関係を終了させた。また、この時点で、同選手の獲得を断念した。

 このように、倫理行動宣言後も4カ月間支給が継続され、かつ、関係を終了させる際には残額全額を支払ったことになる。この間、当球団において、星野社長や前田編成本部部長及び鈴木スカウト部長等の間で、「倫理行動宣言が出たのであるから支給を中止しなければいけないのではないか」との協議が幾度かなされた事実はある。しかし、企業のコンプライアンスよりも清水選手側の経済的事情や支給の約束の方を優先させるという誤った判断がなされ、その中止に向けた協議が真剣になされなかった状況が明らかとなっている。実際、同選手との関係を終了させる際に、その獲得を断念したにもかかわらず残額全額を支払っていることからみると、よい選手を獲得するために倫理行動宣言違反をしたという側面よりもむしろ、経済的に苦しんでいる選手にいったん支払いを約束したことが影響している点が現れていると考えられる。

 このように企業コンプライアンスの観点で問題ある対応が取られた点は、当時、当球団では、親会社ないしオーナーの堤義明氏が平成16年の総会屋利益供与事件や有価証券虚偽記載事件で取り沙汰されて球団上層部が混乱していたこと、球団社長が平成16年の1年間に戸田博之氏から山口弘毅氏そして同氏から星野好男氏へと相次いで2名交代したこと、星野氏及び黒岩氏は長年スポーツ選手ないし監督としては、著名な活躍をし、功績を上げていたものの、企業経営者としての資質・経験は必ずしも十分といえるものでなかったと思われることなどの事情に起因すると考えられ、ここに不備・原因があったと思料される。倫理行動宣言を尊重する意図で中止したとはいえ、約束そのものが違反行為だと認識しながら、中止の判断が遅れ、その挙句、残金を支払う形で中止したことは遺憾と言わざるを得ない。

 ウ 社内決裁と会計処理
 同選手に対する支給は、当社内においては上記のように小野賢二氏(支給開始時の球団社長)等管理職の決裁を得て行われており、会計処理は仮払金として計上していた(その後、交際接待費として処理している)。この点、通常であれば、不正行為については、露呈した場合の社会的批判をかわそうとして管理職は保身目的から決裁印等を残さず、あるいは、会計処理も簿外処理とすることを考えやすい。しかしながら、当球団の場合においては、全社的に、コンプライアンスに対する意識の低さから、社会的な不正を行うことを避けることよりも、社内的に資金を不正・不当に支出することがないことへの気配りの方を優先していたとしか考えられない。

 エ 当球団側から同選手側へのいわゆる口止め工作の有無
 清水選手側の記者会見によれば、同選手は、当時の担当スカウトから同選手は知らないことにしてもらいたい旨申し入れがあったため、それに従った旨の発言をしているが、当調査委員会の調査によれば、以下のような事実が認められる。

 すなわち、本年3月9日の太田秀和氏(現当球団社長)会見の後、同選手関係者等から鈴木葉留彦氏(現当球団スカウト部長)及び前田俊郎氏(現当球団スカウト)に対して、何回も、「清水の将来のため、清水は何も知らなかったことにして欲しい。清水を守って欲しい。」旨申入れがあった。鈴木スカウト部長からもその話を聞かされた前田スカウトは、思いは同選手関係者等と同様であったため、同選手を守り、傷をつけないことを意図して、その後同選手と電話で話をした際、同選手に対し、「君は知らなかったことにするから」と申し向けて、同選手側の申入れを受け入れた。

 このような判断は、当時の当球団が置かれた状況に鑑みて到底許されることではないが、同選手の将来を守りたいという思いは同選手関係者と同じであったため、このような間違った判断をしたものと認められる。当球団は、この時点ですでに上記社長会見において、不正を認めていたから、同選手に上記のような口止めをしたことが当球団側の事情によるものでなかったことは明らかと思われる。

(2)木村雄太選手の案件について
 ア 支給の経緯
 水澤英樹氏(現当球団スカウト)は、同選手を高校2年生の頃から有望選手として注視するようになった。その後、同選手の母親との面識もできて、同人から同選手側の切迫した経済状況について相談されるようになった。そこで、水澤スカウトは、楠城徹氏(当時の当球団スカウト部長)と相談し、同氏は小野賢二氏(当時の当球団社長)及び浦田直治氏(当時の当球団編成部長)の決裁を得たうえで、3年後に入団することを前提として、栄養費を支払う方法もあることを同選手側に伝えた。その後、同選手側から承諾が得られ、平成16年1月から支給が開始された。その時以降、後述の打ち切りまでの間、同選手に対して合計270万円の栄養費が支給されている。

 イ 打切りの経緯
 平成16年9月の支給後、東京ガス関係者から、水澤スカウトに対して、栄養費の支払いを止めてほしいとの申入れがあったため、その支払いを打ち切った。

 ウ 社内決裁と会計処理
 清水選手の案件と同様、社内決裁を得た上、仮払金として計上していた(その後、交際接待費として処理している)。コンプライアンスに対する全社的意識の低さについては、清水選手の項で述べたとおりである。

【了】